ヨウちゃんはキューピッド?(櫻 茅子 マスター) 【難易度:簡単】

プロローグ

●とあるペットショップにて
 青空と適度に冷たい風が心地よい、ある日のこと。
 神人のランは、パートナーである精霊・ルトとともにタブロス市街を散歩していた。ランとしては今こうして歩いている状況を「デート」と言いたいのだけれど、残念ながら想いを通わせるには至っていないのである。
 ちら、と彼の横顔をうかがう。
 短い眉に、鋭い眼差し。唇は手入れされておらず、冬が近づくとカサカサになる。強面、と表現するのが近いのだろうけれど、テイルスの証である兎耳――しかもたれ耳だ――が、見る者にちぐはぐな印象を与える。だが、整った顔立ちであることは間違いない。
 見た目だけでなく、中身も素晴らしい。ぶっきらぼうではあるけれど、常に自分のことを気にして動いてくれるし、任務で何度窮地を救われたかもわからない。
 けれど、彼ができた精霊であるからこそ、ランは告白ができないのであった。ルトのように立派な精霊の隣で胸を張れるほど、自分はできた神人ではない。
 いつか、彼に相応しい女だと自信を持てるまで、この想いは秘めておこう。大切に温めておこう――そんなことを改めて考えながら、ランはルトの隣を歩く。
 と。
「ん? ヨウムのヨウちゃん?」
 ルトが足を止め、そう呟いた。ランも倣ってその場に止まる。
 二人の目をひいたのは、ペットショップのカナデという店だった。その店先に、ヨウムのヨウちゃんという、店の看板犬ならぬ看板鳥の紹介があったのである。
「『おやつをあげると好きなものをあててくれます』だってよ。おもしろいな」
 その言葉に、ランは嫌な予感を覚えた。
「そ、そうだね。ねえ、ルト」
「せっかくだし、あててもらおうぜ」
 ――これはもしかして、まずいことになったのでは?

 そして、その予感はばっちり当たっていたようで――
『ルト、スキー!』
「はぇ!?」「あん?」
 ルトに促されておやつを与えたランに、ヨウちゃんは大声でそう話しかけた。いや、話しかけたのではなく、叫んだというのが正しいだろう。だが、それは些細な問題に過ぎない。
 こんなところで、まだ秘めておこうと決めた想いが暴露されたのだ。ランは顔を真っ赤にし、瞳を潤ませながらヨウちゃんを見つめた。この子が悪いわけではないのだけれど……他に気持ちをぶつける場所がない。
 ああ、これからどうすればいいのだろう。
 そう、絶望的な気持ちになったのだが。
「なぁ」
「……ひゃい……」
「今の、ほんとか?」
「え……あ、その」
 とにかくルトの問いに答えようと――誤魔化そうと、ランはおずおずと顔をあげた。そして、硬直する。
 彼の顔が、真っ赤に染まっていたのだ。
 恥ずかしそうにそわそわするルトの姿に、もしかして、と。小さな、けれど決して無視できない希望が顔を覗かせる。鼓動が早くなっていく。

 それから、二人が付き合い出すのは間もなくの話で――

●ヨウちゃんがずばり言い当てます。……多分
 というのはうまくいった一例で、もちろんうまくいかなかった例もたくさんある。のだけれど、それでもヨウちゃんに想いを託す人はじわじわと増えているのも事実だ。
 彼、彼女との関係を進展させたい『あなた』も、一度訪れてみてはいかがだろう?

解説

●ペットショップ・カナデについて
 タブロスにある小さなペットショップ。小動物を中心に取り扱っており、ヨウムのヨウちゃんが看板鳥を務めています。

●ヨウちゃんについて
灰色の羽に覆われた大きな身体と、赤い尾羽が特徴的なヨウム。五歳の男の子です。
おやつを与えるとお礼なのかはたまた全く別の理由からなのか、神人もしくは精霊の好きなものを口にしてくれます。ただし、必ず当たるわけではないようです。
詳細は以下をご覧ください。

6面ダイスを2つ振っていただき、
・2つの数字を足した数が奇数なら成功。正しい気持ちを口にする。
・2つの数字を足した数が偶数なら失敗。見当違いなこと言いだす。
となっています。
(2人で試す場合は神人分と精霊分で、2回振ってください)

※ちなみに、プロローグでヨウちゃんが「ルト」と精霊の名前を口にしているのは、おやつをあげる前にヨウちゃんの前で「ルト」と名前を呼んでいたためです。誰かの名前が出てくる場合、ヨウちゃんが精霊の名前を知る術がないと「コノ人、スキー!」みたいな、ぼやっとした言い方になります。

●プランについて
・おやつを与えたのは神人か精霊か、それとも2人ともか
 神人が購入した場合はアクションプランに、精霊が購入した場合はウィッシュプランに「○」の記載をお願いします。

・ダイスの結果
 成功→「奇」、不成功→「偶」で記載いただければと思います。

上記2点の記載をお願いいたします。

●消費ジェールについて
ヨウちゃんのおやつ代として1個『300ジェール』消費します。
2人で1個ずつ買った場合は『600ジェール』です。

●他
ヨウちゃんが口にするのは「好きなもの」です。場合によっては好きな人じゃなく、好きな食べ物や好きな場所を口にします。
また、親密度によってはアクションが不成功になる可能性もございます。ご了承ください。

ゲームマスターより

こんにちは、櫻です。
ペットショップに行くと必ず挨拶してくれる子がいたなぁとふと思い出したので、こんなエピソードをば。その子は九官鳥だったのですが、こちらではヨウムでございます。
珍しくダイスを使用したりとちょびーっとだけ(自分の中で)新要素を入れたのでちょっとどきどきしていますが、興味を持っていただけた際はどうぞよろしくお願いいたします。

リザルトノベル

◆アクション・プラン

かのん(天藍)

  精霊共にアドリブ歓迎
○奇
ヨウム?オウムではないのですね
天藍の説明に頷きつつ
「好きなものを当ててくれます」ですって、何だかおもしろそうですね
天藍からおやつ受け取り
ありがとうございます、天藍

てんらんだいすきー
ヨウちゃんにおやつをあげた途端のご機嫌な発言に思わず赤面
隣で嬉しそうな天藍の様子に間違ってはいませんけれど……と

天藍がおやつ渡した時の発言に嬉しく思いつつ
当然だなと余裕たっぷりの天藍が少し憎らしく思い、ちょっと拗ねた振り
私は大好きなのに、天藍は好きなんですね
何だかずるいです

慌てた様子の天藍にもう一言位と思っていたら、ヨウちゃんの様子に苦笑が先に浮かび思わず天藍と顔を見合わせる
本当に賢いんですね



夢路 希望(スノー・ラビット)
 



ペットショップを見つけて彼の方をチラリ
あの…少し、見て行ってもいいですか?

わぁ…!
お名前は?…ヨウちゃんって言うの?
ふふ、可愛い

「好きなものを、ですか?」
好きなもの…、と考えて
彼の顔が浮かぶと同時に目が合い赤面
おやつはあげてみたいし…
「せ、せっかくなので」
スノーくんは?
尋ね、返事にますます顔赤く

彼の気持ちは嬉しい
そういう関係になれたら幸せだと思う
…好き、だけど
憧れか恋愛か好きの意味はまだ曖昧
(もしスノーくんの名前が出たらどうしましょう…)
ドキドキしていたら
『ヨウチャンスキー!』
…ど、動物は好きですから、当たってます
彼の行動と言葉には赤面しつつ
…でも、一番は…兎、です
ぽそり呟き俯いて照れ隠し



瀬谷 瑞希(フェルン・ミュラー)
  ○偶

ヨウムのヨウちゃん。可愛いですね。
おやつを上げても良いんですか?何を食べるの?
「ヨウちゃんは何食べたい?」聞いてみましょう。
喋ったら「ミュラーさん、ヨウちゃんに喋ってもらえました」と笑顔。
ヨウムは賢いので、喋る内容は結構解っているのかも、と個人的に思っています。
お店の人にお願いしヨウちゃんの食べたいおやつをあげます。頸を動かす動作が可愛いです。
「パンプキンケーキ、スキー!」
ビックリですよ。
確かに好きですよ?
でも今言われたら、私が何よりもケーキ大好きみたいに聞こえちゃう。と内心大慌て。
「ミュラーさん、私、ケーキだけが好きって訳じゃないですよ」
彼の耳元で囁き。
「ミュラーさんの事が大好きです」



ニーナ・ルアルディ(カイ・ラドフォード)
  おやつ購入
奇数

道に迷ってたどり着いた先が面白そうなところで
よかったですねカイ君っ
悪いことばかりじゃないですねっ!

カイ君の好きな物って何でしょう?
普段あんまりお話してくれませんし
ここはヨウちゃんの力をお借りするしかないですねっ!
カイ君の好きな食べ物教えてくださいっ!
…あれ?

えっ、カイ君って兄妹の方がいるんですか?
そういえばカイ君のこと今まであまり聞いたことなかったですね…

…ああ、やっぱり。
カイ君って二人でいるとたまに寂しそうな顔をするんです。
えっと…元気ない時に頭を撫でられると少し元気になりませんか?
わ、私だけ…?

カイ君のこと少しでも聞けてよかったです、
今度お茶でもしながらお話出来たらいいなぁ…




秋野 空(ジュニール カステルブランチ)
  ◯奇
ジューンさん、なんでそんなに楽しそうなんですか?(少し困惑
この好きなものって…食べ物とか色とか、そういうの…ですか?

お、お先にどうぞ!
(ジューンが言い当てられ
?!
(蕩けるような微笑みを向けられ、赤くなって一気に目を逸らす

てっきり、パートナーとしての厚意だと…思ってたんですが(ボソッ
(まさか自分もと不安がよぎる
変なこと言われなければいいんですけど…

おやつ、上げなきゃダメ?(ジューンの期待の籠った視線と目が合う
…です、よね

(当てられて硬直、真っ赤になり同じく硬直するジューンが視界に入る
あ、あのっ…これは…(言い訳も何も思いつかない

もう…っわかりましたからっ…
(真っ赤になって声を絞り出す


●あなたの好きなもの
 温かな日差しが心地よい、気持ちの良い日のこと。『フェルン・ミュラー』と「お昼はなにを食べようか」なんて話していた『瀬谷 瑞希』は、気になる立て看板を見つけて足を止めた。
「あら?」
「どうしたんだい、ミズキ?」
 灰色の鳥が描かれたそれを、瑞希とミュラーは二人で読み進めていく。
 なんでも、このペットショップ・カナデには、子猫や爬虫類という動物のほかに、おやつをあげると好きなものを当ててくれる、かもしれないヨウムがいるというのだ。
 瑞希の瞳がきらりと輝いたのを見て、ミュラーは「入ってみようか」と提案する。「! はいっ」と頷く彼女は本当に嬉しそうで、ミュラーは自分の心が温かなもので満たされるのがわかった。
 ミズキの笑顔は、自分を幸せにする不思議な力を持っている。
 彼女の笑顔を増やしてあげたい。そう思っているミュラーだから、こうして無邪気な笑みを見られるのは心底嬉しかった。
 店内に入ると、ペットショップ特有の匂いが鼻孔をくすぐる。
 真っ先に目についたのが、小さな人だかりだ。その中心からは『ピョロロッ』という、甲高く可愛らしい声が聞こえてくる。そこにヨウちゃんがいるのだろう。
 瑞希は胸の高鳴りを隠し切れないように、きょろきょろと周囲を見回した。
「色々な小動物も居て、可愛いね」
 ミュラーも瑞希に倣って、子猫のケージを覗きこんだ。
「ミズキはこういう動物達も好きだものね」
 ミュラーの透き通った、ターコイズブルーの瞳に興味を惹かれたように、子猫はころころと寄ってくる。愛らしいその姿に、ミュラーはふと頬を緩ませた。隣の瑞希も同じように、「わあ……」とため息をついている。
 だが、他にも興味をそそられる存在がいるらしい。
(おや。鳥にも興味深々な様子?)
 瑞希はヨウちゃんが気になって仕方ないようだ。それだけでなく、ヨウちゃんの面倒を見ている店員の肩に止まるセキセイインコにも熱い視線を送っている。
「小鳥とか飼うのを考えた事は?」
 そう尋ねると、瑞希は苦笑して「お世話しきれる自信が無いので飼う勇気はないです」と答えた。そんなことないと思うけれど、彼女はしっかり者だから、いろいろ考えているんだろう。だとすれば、自分が否定するのもおかしな話である。
「せっかくだから、おやつあげてみようか」
「ぜひ!」
 ミュラーの提案に、瑞希は嬉しそうに頷いた。いそいそと人だかりへと寄って、順番を待つ。
 そしていよいよ出番となると、瑞希は優しく語りかけた。
「可愛い。ふふ、ヨウちゃんは何を食べたい?」
『オヤツ、クダサイナ~』
「わあ! ミュラーさん、ヨウちゃんに喋ってもらえました」
 ばっちり会話をこなしてみせるヨウちゃんに、瑞希は花が咲いたような、そんな華やかな笑みを浮かべる。ミュラーも、瑞希の笑顔につられるように笑ってみせた。
 ここにいると、似たようなことを聞かれることも多いのだろうな、と瑞希は思う。もしかしたら、今の返事も『近くに来た人間』に話しかけただけで、『返事をした』のではないかもしれない。
 けれど、ヨウムはとても賢い。喋る内容は結構わかっているのかも、なんて考えていると、ミュラーがおやつを二つ分――瑞希の分もまとめてだ――購入していた。
 おやつは、数種類の種を蜜でまとめたという、小さなボールだった。
「ミズキ、これ」と渡されたものを恐縮しつつも受け取って、ヨウちゃんへと視線を戻す。ちょうど、ミュラーがおやつを差し出したところだった。
「めしあがれ」
『ヤター、スキスキー! オイシー?』
 ちょっと不思議な言葉遣いは、けれどしっかり状況に適したもので、ミュラーは「すごいな」と感心する。
 ぽりぽりと食べ進めていたヨウちゃんは、るんるんと楽しそうに身体を揺らし、口、ならぬ嘴を開いた。
『ミズキ、ダイスキー!』
 よく通る声で宣言され、ミュラーは「おお」と思ったけれど――
「知ってますよ、いつもミュラーさん言ってますからね」
 瑞希はといえば、そう言ってにこにこと笑っているだけだ。露ほども動じていない――ほんの少しであれ、期待していた反応がなかったことに苦笑する。
 そんなミュラーには気づかず、瑞希もヨウちゃんにおやつを差し出した。
「はい、どうぞ」
『アリガト、ガトネー』
 軽妙にお礼を言って、ヨウちゃんはおやつを受けとった。
(頸を動かす動作が可愛いです)
 可愛らしいお店のアイドルを微笑ましく見ていたのだが。
『パンプキンケーキ、スキー!』
 まさかの展開に、瑞希は目を丸くした。
 確かに、パンプキンケーキは好きだ。だけど今言われたら、自分が何よりもケーキ大好きみたいに聞こえてしまう。
 内心大慌てする瑞希の隣で、ミュラーは笑顔を凍りつかせた。
 順番待ちをしていた人たちに場所を譲ったあとも、なかなか元に戻らない。
(俺、ケーキに負けてる? 実は彼女、スイーツの方が……?)
 ははは、そんな馬鹿な。
 そう思うけれど、好きなものを当てるというヨウちゃんが口にしたのは紛れもなくパンプキンケーキで……。
 と。
 くい、と控えめに服の裾をひっぱられ、ミュラーは視線を下にずらした。
 恥ずかしそうに頬を染め、だがまっすぐにこちらを見つめる瞳に、とくりと胸が鳴る。
 瑞希はちょいと背伸びをすると、ミュラーの耳元でそっと囁いた。
「ミュラーさん、私、ケーキだけが好きって訳じゃないですよ」
 こっそり、秘密を打ち明けるように、瑞希は続ける。
「ミュラーさんの事が大好きです」
「ミズキ……っ」
 ミュラーはたまらず、彼女を抱きしめた。
「ミュラーさん!?」と悲鳴が聞こえたけれど、離すつもりは毛頭ない。ぎゅ、と音がしそうなほど、腕に力を込める。
 まったく、ミズキは俺をこんなに喜ばせて、一体どうするつもりだろう。
 そんな気持ちを込めて「俺も瑞希が大好きだよ」と囁く。
「あ、あう……」
 瑞希は恥ずかしくてたまらないというように、黙り込んでしまった。そんな姿も愛おしい。

 それから。
 ペットショップから出ていないことに気付いた二人は、ざわつく店内を抜け出し、また陽光の下に出て――頬の熱がひかないまま顔を見合わせ、ふと笑いあい。
 想いを伝えるきっかけをくれたヨウちゃんにまた会いに行こうか、なんて話しながら、昼食を……パンプキンケーキがあるカフェに行こうかと、タブロスへ繰り出すのだった。


●お近づきになりたいのです
 澄んだ青い空を、わたあめのような白い雲がゆっくり流れていく。注がれる陽光はぽかぽかと温かく、歩いているだけで気分が上向くようだ。
 そんな気持ちのいいある日、『ジュニール カステルブランチ』は、タブロスを歩きながら、ちら、とパートナーである『秋野 空』の様子をうかがった。
 ふんわりとウェーブがかかった銀髪をサイドアップにして、紫の蜻蛉玉の簪をつけている彼女の口元は、いつも通りきゅっと引き結ばれている。
 空と仲良くなりたいけれど、彼女はあまり、自分のことを話したがらない。あの手この手でお近づきを試みてはいるものの、嫌われているのかと思うほど、クールな態度を崩さないのだ。
 彼女のことを知りたい。些細なことでもいいから。
 ジュニールがそう考えているときだった。
「ねえねえ、ヨウちゃんって知ってる?」
 と、そんな話が耳に届いたのは。
 行儀が悪いと思いながらも、ジュニールはその話に耳を傾けた。
 なんでも、『カナデ』というペットショップに好きなものを言い当てるヨウム――ヨウちゃんがいるらしい。
(彼の力を借りれば、ソラの好みがわかるかもしれません)
 そうすれば、ソラの望むような男になれる!
 ジュニールは早速、空を促しペットショップへとやって来た。彼女はといえば、急に勢いを増した精霊に驚きながらも、素直に後をついてくる。
 道を聞きつつやってきたカナデの店内へ足を踏み入れる。すると、小さくはあるが人だかりができているところがあった。その中心から『スキヨー!』と、気の抜けるような、それでいて可愛らしい声が聞こえてくる。
「ヨウムのヨウちゃん……?」
 近くに立てられていたヨウちゃんの説明が書かれた看板に、空は興味深そうな声をあげる。
「ソラもおやつあげましょう、俺が買いますから!」
「ジューンさん、なんでそんなに楽しそうなんですか?」
 いつになく盛り上がっているジュニールに、空は困惑を隠せない。それに……。
「この好きなものって……食べ物とか色とか、そういうの……ですか?」
「それだけじゃなくて、好きな人とかも当てることがあるみたいですよ」
「!?」
 ジュニールの補足に、空は目を丸くした。まさか、そんなに範囲が広いとは!
「お、お先にどうぞ!」
「では、俺から……」
 ジュニールはおやつを二つ購入すると、空に一つ、手渡した。
 おやつは植物の種を蜜で丸く固めたもので、ヨウちゃんはそわそわともらえるのを待機している。
 そんな様子がおかしくて、ジュニールは頬を緩めながらそっとおやつを手のひらの上に転がした。
 ヨウちゃんはのそのそと大きな身体を乗り出すと、ひょい、とおやつを加えて木の枝に戻っていく。ぱりぱりと上機嫌におやつを食べている姿を、落ち着かない心地でジュニールは待っていた。
 彼は、なんて言うだろう。
『ピョロロッ、スキ! ソラ、スキスキー!!』
「?!」
 身体をゆすり、楽しそうにそう言うヨウちゃんに、空は驚いた後――頬を赤く染め、左手首に巻かれた皮のブレスレットを触りながら、高鳴る鼓動をなだめようと必死だ。
 一方、言い当てられたジュニールはといえば。
「……あ、はは、当たり前です、俺、ソラ以外要らないですから」
 紅が差した頬は、彼も少なからず恥ずかしいと思っていることを伝えている。だけれど、その顔には微笑みが――とろけるような、甘く魅力的な、極上の微笑みが浮かんでいた。
 いかにも『王子様』な容姿をした精霊が、あまりにもきれいに笑いかけてくるものだから、空は顔を赤くして、目を逸らしてしまう。
「てっきり、パートナーとしての厚意だと……思ってたんですが」
 ボソリと漏らした言葉に、空は(まさか自分も……)と不安がよぎる。
「ジューンさん、おやつ、上げなきゃダメ?」
 羞恥に震える空は、小さくそう尋ねる。ちらりと見上げると、期待のこもった瞳と目があって――
「……です、よね」
 言葉よりも雄弁に語りかけてくるその瞳に、空はがくりと肩を落とした。
 覚悟を決め、渡されたおやつを差し出す。
(変なこと言われなければいいんですけど……)
『ジューンサン、スキダヨーダヨー』
「……っ!」
 空は思わず硬直した。
 ヨウちゃんは自分が何を言ったのか理解していないようで、ご機嫌におやつをかじっては鳴いている。
 空はちらりと、ジュニールを伺った。
 そしてまた――息を呑む。
 ジュニールも、空と同じように硬直していたのだ。それだけではない、顔もりんごのように赤く染まっていて……。
「あ、あのっ、これは……」
 何か言おうとするけれど、言い訳は思いつかなかった。
「は、はは……まさか、こんなに嬉しいことを言ってくれる、とは……」
 と、我にかえったジュニールがぽつりとそう呟くと、「ソラ」と名を呼び、片膝をついた。
「じゅ、ジューンさん!?」
 周りのお客さんも、何が始まったのかとわくわくしている様子である。
 空はとてつもない羞恥心に襲われながら、なんとか立ってもらおうと言葉を尽くす。が、ジュニールに手をとられ、ぐっと閉口してしまう。
「ありがとうございます、ソラ。誰よりも大切なあなたを、命に代えても守り抜くと誓います」
 騎士が姫に忠誠を誓うような、その言葉と姿勢。
 涼やかで――けれど隠し切れない甘さがこもった瞳から逃げたいというように、空はわたわたと落ち着かないようだった。
 けれど、返事をしなければ動かないということを察したのか、
「もう…っわかりましたからっ……」
 と、真っ赤になりながらもなんとか声を絞り出した。
「ウィンクルムとして、その……よろしく……」
「――はいっ」
「わかりました」と、誓いを受け入れた空にジュニールはふわりと笑みを浮かべた。空は「行きましょう」と、外へ出るようジュニールを促す。
 ウィンクルムとして、とついたけれど――最高の返事だ。
 
 早足で太陽の下を歩いていく。
 そんな二人を祝福するように、軽やかな小鳥たちのさえずりが聞こえてくるのだった。


●ヨウちゃんのエール
「道に迷ってたどり着いた先が面白そうなところでよかったですねカイ君っ。悪いことばかりじゃないですねっ!」
 穏やかな空の下、『ニーナ・ルアルディ』の言葉にため息をついたのは彼女と新たに契約した精霊、『カイ・ラドフォード』だ。
 ウィンクルムになってまだ日が浅い二人は、ニーナの提案で親交を深めるべくタブロスの街を歩いていたのだが――特に目的を持っていたわけではないのが仇となり、迷子になってしまったのだ。
 だが、ニーナの言葉の通り、面白そうなところ――おやつをくれた人の好きなものを当てる看板鳥・ヨウムのヨウちゃんがいるペットショップ・カナデへと辿り着いた、というわけだった。
 早速店内へ足を踏み入れたニーナは、運命の飼い主が現れるのを待っている動物たちに「わあ」と歓声をあげた。うさぎや小鳥といった小動物のほかに、じいっと動かないながらも独特な存在感を主張する爬虫類も並んでいる。
 可愛らしいその姿に心を奪われていたニーナだけれど、カイの「……ヨウムはいいの?」という冷静なつっこみにハッとする。
「そうですね、噂のヨウちゃんに会わなきゃですね!」
「別に会わなきゃいけないわけではないけど」
 うきうきとヨウちゃんの元へ――人だかりができていたのですぐにわかった――進んでいく。
『コンニチーチハー』
 ご機嫌にお喋りを披露するヨウちゃんに、ニーナはぱあっと顔を輝かせた。
(カイ君の好きな物って何でしょう?)
 普段、カイはあまり話をしてくれない。仲良くしたい、けれどなかなかチャンスがつかめない……そんな現状を打破するチャンスがやって来たと、そう思ったのだ。
(ここはヨウちゃんの力をお借りするしかないですねっ!)
 何かを言いたげな目でじっとカイを見つめると、カイはまた、呆れたように吐息して口を開いた。
「信じがたいけど……やってみたいならやってみれば?」
「! はいっ」
 ニーナは嬉しそうに頷くと、傍に立っていた店員からおやつを購入した。
「カイ君の好きな食べ物教えてくださいっ!」
「いや、それわざわざヨウムに聞かなくても……。普通に俺に聞けばいい話だよね、俺あんたにどんな風に思われてんの一体……」
 呆れたように、ではなくはっきりと呆れたカイ。だが――
『ネーサンスキー? スキー!! チュッチュ!!』
「……あれ?」
「わーわーっ!」
 ヨウちゃんの言葉に、思わず取り乱してしまう。
(何言い出してんのこいつ!!!)
 というかどこで覚えたんだそんな言葉!
「今のなし! 俺のおやつやるからもう一回……!」
「えっ、カイ君って兄妹の方がいるんですか?」
 なんとか流せないものかカイは奮闘したけれど、ニーナはせっかくの話題を逃すことはしなかった。
 彼女の視線に、カイは肩を落とした。どう誤魔化しても、もう忘れてはくれないだろうとわかったからだ。
「ああ、いたよ。元気で、馬鹿が付くほど素直で、いつだって笑ってた、そんな姉さんだったよ」
(……ああ、やっぱり)
 話を聞いて、ニーナはすとんと納得した。
(カイ君って二人でいると、たまに寂しそうな顔をするんです……)
「そんな姉さんだった」と、彼は言った。それはつまり、そういうことなのだろう。
「……で、何で急に俺の頭撫で始めてる訳?」
「えっと……元気ない時に頭を撫でられると少し元気になりませんか?」
「それで喜ぶのニーナくらいだから」
「わ、私だけ……?」
 そんなはずは、いやもしかして……と悩み始めたニーナに、カイはふ、と身体から力が抜けるのがわかった。
「ま、呆れたおかげでやなことは忘れたけど」
「……カイ君、今何か言いました?」
「いや? それよりもあんた、他に見たい動物がいるなら行ってくれば?」
「カイ君……っ、ありがとうございます、行ってきます!」
 カイの気遣いに――それだけではないのだが――ニーナは顔を輝かせると、うさぎたちの元へと早足に向かう。
(カイ君のこと少しでも聞けてよかったです、今度お茶でもしながらお話出来たらいいなぁ……)
 そんなことを考えながら、もひもひとご飯を頬張るうさぎに頬を緩める。
(ニーナが席外してる間に、と……)
 一方、カイはニーナと距離を置いたことを確認すると、ヨウちゃんにおやつを差し出した。
「……ニーナの好きなお菓子言える?」
『アマイノ! オイシイ! スキ!!』
「全然参考になんないんだけど」
 自分で聞けってこと?
 零された言葉に、ヨウちゃんは『カモネ~。オヤツ!』なんてのんきに答えてくる。賢いんだが適当に答えてるんだか……いまいち判断がつかない。
「……分かったよ、逃げずにちょっとずつ向き合ってみるよ」
 けれど、そんなヨウちゃんの言葉に背中を押されたような気になったのは確かだった。
 カイは店員に頭を下げると、ニーナの元へと足を進める。
『ガンバッテネ~』
 なんて、ヨウちゃんからのエールを背中で受け取って。
 まずは何から始めようかと考えながら。


●一番好きなのは、
 その日、『夢路 希望』は『スノー・ラビット』に誘われ、タブロスの街を歩いていた。デートに行こう、と言われたときは恥ずかしかったけれど……断る理由なんてあるわけがなかった。
 少し雲が多いけれど、冷たい風もなく、過ごしやすい。
 そんな天気の中歩いていると、ペットショップが見えてきた。
(ペットショップ……)
 希望は動物が好きだ。彼らについて詳しくなろうと、一歩進んだ知識を手に入れているほどに。
(どんな動物がいるんでしょう)
 気になった希望は、ちら、とスノーをうかがった。
「あの……少し、見て行ってもいいですか?」
「もちろん」
 笑顔で頷いてくれたスノーに、希望は「ありがとうございます」と顔を輝かせた。
 ぱたぱたと気持ち早足で店内へ足を踏み入れる。お店にいる動物たちに、希望はきらきらとした目を向けたけれど――
「あれ? なんだろう、あの人だかり」
 スノーの呟きにつられて見た先に、興味をひかれる。
 二人で近くに行くと、彼らに囲まれているのは灰色の羽とつぶらな瞳が可愛らしいヨウムだった。
『コンニチハーダヨーダヨー』
「わぁ……!」
 楽しそうにお喋りするヨウムに、希望は小さな歓声をあげた。ヨウムを囲む人に混ざり、そわそわと話しかける。
「お名前は?」
『ヨウチャン! ヨウチャン!』
「ヨウちゃんって言うの?」
『ソーダヨ~』
 難なく会話をしてみせるヨウム――ヨウちゃんに、希望は「すごい」と笑顔を浮かべる。
「ふふ、可愛い」
 スノーは立て看板に書かれた説明を読み、「へえ」と感心の声をあげる。
「オウム? ……じゃなくて、ヨウムっていうんだ。あ、おやつをあげると好きなものを当ててくれるんだって」
「好きなものを、ですか?」
「うん。ノゾミさん、どうする?」
(好きなもの……)
 その時、希望の頭に浮かんだのはスノーの顔で……。
「?」
「……っ」
 同時に、彼と目が合い希望はさっと顔を背けてしまった。頬が熱い。きっと、今の自分はタコのように真っ赤になっているだろう。
(でも、おやつはあげてみたいし……)
 この機会を逃すのは惜しい。
 そう考えた希望は、スノーの顔を直視できないまま口を開いた。
「せ、せっかくなので。スノーくんは?」
「僕は……きっとノゾミさんの名前が出るから」
 さらりとそんな返事をされて、希望の顔はますます赤くなってしまう。
 彼の気持ちは嬉しい。『そういう関係』になれたら、それはとても幸せだと思う。
(……好き、だけど)
 けれど、その『好き』が憧れなのか、それとも恋愛の好きなのか、意味はまだ曖昧だった。
(もしスノーくんの名前が出たらどうしましょう……)
 ドキドキしながらおやつを差し出す。ヨウちゃんは『ワァーオ!』と喜びの声をあげながら受け取り、種がまとめられたそれを楽しみはじめる。
 そんな二人――いや、一人と一羽の様子を眺めながら、スノーはぼんやり考えた。
(ノゾミさんの好きなもの…僕、だったらいいのにな)
 なんて。
 と。
『ヨウチャンスキー!』
 スッキャネーン! とご機嫌に話し始めて、希望はがくりと肩を落とした。
「……ど、動物は好きですから、当たってます」
(……ちょっと残念)
 そう思ったスノーだけれど、希望がペットショップを見つけたときの反応や、今までの動物への反応を思い出し、素直に「すごいね」と感心する。
「でも」
 スノーは希望に寄り添って、にこりと――ただの甘い笑みではない、牽制を含んだ笑顔を浮かべた。そして、つん、と嘴に触れると、口を開く。
「ノゾミさんは渡さないからね」
 半分本気、半分冗談。
 軽くむくれながらそう言って、スノーは苦笑する。
 スノーの言動に赤面しつつ、けれど希望はぽそりと呟きうつむいた。
「……でも、一番は……兎、です」
「えっ……」
 聞こえた「一番」に、スノーの鼓動がとくりと跳ねた。
(単純に好きなのか、僕を意識してからか……期待しちゃうよ)
 ずるいな、と思う。
 けれど、どうしようもない喜びに包まれるのは確かで――
 スノーは希望の手をとった。ぴくりと驚いたように跳ねたけれど、振り払われることはない。そのことにほっとしながら、そっとその場を後にする。いつまでもヨウちゃんの前を陣取っているわけにはいかないし、何より、彼女をこれ以上皆の目に触れさせたくなかったのだ。
 手の平から伝わる温もりに、スノーの――希望の胸は、温かなもので満たされていく。
『アララ~』
 後ろから、気の抜ける声が聞こえてきた。
 ――ヨウちゃんには感謝しなきゃ。
 ヨウちゃんに教えてもらうのもいいけれど……彼女に直接、想いを伝えてもらえた方が嬉しい。
 これからどこに行こうか、とそんな話をしながら、陽光の下へと戻っていく。
 二人の背中を押すように、優しい風が吹き抜けていった。


●あなたの口から
 気持ちのよい、とある日の昼下がり。
 タブロスを歩いていた『かのん』と『天藍』は、とあるペットショップに興味を惹かれ足を止めた。
 というのも、なんだかペットショップにしては珍しい、賑やかな声が聞こえてきたからである。
 そのペットショップ――カナデの入り口付近には、灰色の鳥が描かれた立て看板が置かれていた。そこにはカナデの看板犬ならぬ看板鳥・ヨウちゃんについてまとめられている。
「ヨウム? オウムではないのですね」
「ああ、ヨウムの方がおしゃべりらしい。色味がオウムより地味だけどな、5歳児位の知能があるとも言われている」
 すらすらと、しかもわかりやすい説明にかのんは「なるほど」と頷いた。
 天藍は、動物について驚くほどよく知っている。それだけでなく、レンジャーという職業柄、狩りやサバイバルについてもかなり頼りになるのだ。
 植物にはあまり得意じゃないようだけど、そこは自分がいるし――彼と二人なら、窮地に陥ってもなんとかなるだろう。なんて考えて、かのんは小さく頭を振った。今はタブロスにいるのだ、そんなことを考える必要はない。
「『好きなものを当ててくれます』ですって、何だかおもしろそうですね」
 興味を惹かれたかのんがそう言うと、天藍は「寄っていくか」と声をかけた。かのんがわかりやすく笑ったので、天藍もたまらず破顔する。
 店内に入ると、可愛らしい小動物や、静かながらも味のある表情で存在を主張する爬虫類たちが出迎えてくれる。
 ヨウちゃんがいる場所は、とてもわかりやすかった。人だかりができていたからだ。
『コンニチハー。ヤッホー』
 ヨウちゃんは周りのお客さんと一緒に、気ままにお喋りを楽しんでいるようだった。彼の周りには大人から子供まで幅広い年代の人がいて、楽しそうに話しかけている。彼らの言葉を、ヨウちゃんは少しずつ自分のものにしているのだろう。
 傍に立つ店員に、天藍は声をかける。二人分のおやつを、という注文を受けた店員に渡されたのは、ボール状のおやつだった。大型の鳥が好む種数種類を蜜でまとめたものらしい。
「ほら、かのん。これを渡すらしいな」
「ありがとうございます、天藍」
 天藍からおやつを受け取ったかのんは、早速ヨウちゃんに話しかけた。
「はい、どうぞ」
『ウワァー! シュンゴーイ!』
「ふふ」
 大げさとも言えるくらい嬉しそうな声をあげ、ヨウちゃんはぱくりとおやつを受け取った。
 たしかに、灰色の羽は地味と言える。けれど、感情表現が豊かなその姿は可愛らしい。
 かのんが微笑ましく見ていると、ヨウちゃんはふと顔をあげ、
『テンランダイスキー』
「あら」
『アイシテルゼ~』
 続いたご機嫌な発言に、思わず赤面してしまう。
「へぇ、よくわかってるなお前。そうか、愛してるか……」
(間違ってはいませんけれど……)
 嬉しそうな天藍に、かのんの頬がぽっと染まる。まさかここまで言われるとは。
 天藍もかのんをならい、同じようにおやつを差し出した。恥ずかしがっている彼女も可愛いけれど、あまり長く引っ張るのは良くないだろう。
「ほら、こっちも食べるか?」
『タベテヤルカー』
「くっ……随分口が達者だな」
 おかしそうに笑うヨウちゃんに、天藍もかのんも頬が緩む。
『カノンスキー!』
 零された言葉に、天藍は「当然だな」と笑う。
 かのんもその言葉を嬉しく思ったのだけれど……余裕たっぷりの天藍が少し、憎らしい。
「私は大好き……愛してる、なのに、天藍は『好き』なんですね」
 ふいと顔を逸らし、拗ねたふりをしてみる。
(何だかずるいです)
 愛してる、のところは聞こえるかどうかわからないくらい小声になってしまったけれど、天藍にこの不公平だと思う気持ちが伝わればいい。
 そしてかのんの思惑通り、天藍は慌ててしまう。
「かのん、そこは真に受けなくても良いだろう?」
 弁解しようとする天藍に、何かもう一言くらい言おうかと思っていたかのんだが。
 ばさっ、ばさっ、と。
 なかなか迫力のある羽ばたきが聞こえてきた。犯人はふわふわと羽を舞わせるヨウちゃんだ。
『ケンカヨクナーイ、ナカヨクナカヨシ~』
 そして、落とされた言葉にかのんと天藍は思わず苦笑し、顔を見合わせた。
「本当に賢いんですね」
「そうだな」
 二人はヨウちゃんと店員にお礼を言って、店を出た。暖かな光が心地よい。
 と。天藍がかのんの腕をひき、歩みを止めさせる。
「天藍?」
 不思議そうに首を傾げるかのんに、天藍は顔を寄せる。そして、耳元で――
「俺も愛してる、からな」
 そう言って離れると、に、と笑ってみせた。
 ぽぽぽ、とかのんの頬が染まる。あの小さな囁きも聞かれていたなんて!
 ――だけど、嬉しい。
 胸のあたりがぽかぽかする。その温もりは、太陽の光が原因でないことは明らかで……。
 かのんはふわりと、彼女が愛する花のような笑顔を浮かべた。
 天藍は見惚れたけれど――だからこそ、この彼女の笑顔を道を通る人々に見せるのは惜しくて、彼女の手をとって歩き始める。
 
 ヨウちゃんに、今度お礼を言いに行こうか。
 なんて、そんなことを考えながら。



依頼結果:成功
MVP

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター 櫻 茅子
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 女性のみ
エピソードジャンル ハートフル
エピソードタイプ EX
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 簡単
参加費 1,500ハートコイン
参加人数 5 / 2 ~ 5
報酬 なし
リリース日 10月07日
出発日 10月14日 00:00
予定納品日 10月24日

参加者

会議室

  • [11]秋野 空

    2015/10/13-22:43 

    ジュニール:
    先ほど、プランの提出が完了いたしました
    あぁ、なんでしょう…
    変ですね、妙に緊張してきました

    それでは、みなさんに良い時間が訪れますように

  • [10]かのん

    2015/10/13-20:39 

  • [9]ニーナ・ルアルディ

    2015/10/11-01:07 

    ねえ、きっとこっちが近道だなんて言い出して
    あんたが適当に道入るから正直もうくたくたなんだけど…

    え、俺もやるの?
    …まあ、おやつあげるくらいだし別にいいかな…

    【ダイスA(6面):1】【ダイスB(6面):6】

  • [8]ニーナ・ルアルディ

    2015/10/11-01:03 

    お買い物の途中で面白そうなところ見つけちゃいましたーっ!
    せっかくなのでおやつあげてみましょうよ、ねっ?

    カイ君の好きな物が分かったらもっと仲良くなれるかもしれないですし、
    ここは何としてでも教えていただかないと…っ

    【ダイスA(6面):5】【ダイスB(6面):4】

  • [7]瀬谷 瑞希

    2015/10/11-00:22 

    ミュラー:
    ミズキのパートナー、フェルン・ミュラーだ。よろしく。

    喋る鳥ってこちらの言っている内容が判っていそうで。
    色々と見透かされそうな気がするね。

    【ダイスA(6面):6】【ダイスB(6面):3】

  • [6]瀬谷 瑞希

    2015/10/11-00:12 

    こんばんは、瀬谷瑞希です。
    ヨウムはとても賢いと聞きました。
    どんな事を喋ってくれるのかとても楽しみです。

    おやつにどんな物を食べるのでしょう?
    (興味深々)

    【ダイスA(6面):4】【ダイスB(6面):4】

  • [5]秋野 空

    2015/10/10-21:56 

    空:
    …空、です

    ジューンさん、なんでそんなに楽しそうなんですか?(少し困惑
    これが…ヨウム、ですか、初めて見ました
    変なこと言われなければいいんですけど…
    (いろいろ見透かされる気分…少し、怖いかも…)

    おやつ、上げなきゃダメ?(ジュニールが期待のこもった眼差しで微笑むのと目が合う
    …です、よね

    【ダイスA(6面):1】【ダイスB(6面):6】

  • [4]秋野 空

    2015/10/10-21:56 

    ジュニール:
    初めまして、ジュニール・カステルブランチと申します
    こちらに不思議なヨウムがいると伺いまして…あぁ、このヨウちゃんですか!

    実は、まだソラと行動を共にしだしてから日が浅いので
    お互いのことをもっと知る良い機会ではないかと思い立って参りました

    おやつを差し上げれば良いんですね?(興味津々な様子

    【ダイスA(6面):6】【ダイスB(6面):5】

  • [3]かのん

    2015/10/10-09:16 

    かのんのパートナー天藍だ、改めてよろしく

    ヨウムのヨウちゃんか……
    (看板鳥してるんなら変な言葉とか覚えてそうだよなと思いつつ)
    俺もおやつ渡してみるかな

    【ダイスA(6面):5】【ダイスB(6面):4】

  • [2]かのん

    2015/10/10-09:12 

    こんにちは、かのんです、よろしくお願いします

    鳥さん、オウムじゃなくてヨウムというのですね
    まずは、っと(ダイスころころ)

    【ダイスA(6面):6】【ダイスB(6面):5】

  • [1]夢路 希望

    2015/10/10-00:28 



    【ダイスA(6面):1】【ダイスB(6面):1】


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