プロローグ
「お久しぶりですっ、民放局のグルメ番組プロデューサーを務めているさわやか爽ちゃんです!以前はロポサ村のグルメレポート協力に尽力頂きありがとうございました!」
「説明口調で自己紹介どうもです」
本部受付の昼下がり、受付職員は冷静な対応で爽の名乗り口上を受け流していく。
「今度はなにをグルメレポートさせる気ですかね」
「ちょ、食レポ前提ですか!? 確かにお願いしたいのは山々ですが今回は特番の料理対決で使う食材に救助のご協力ですっ!」
「……」
だから今度は違いますーと小馬鹿にした態度の爽に対し、職員は無言で席を立とうとするが慌てて引き止められる。
「どうせオーガは関係ないんでしょう?」
「いやぁ、それが困ったことにデミ・オーガが出現しちゃったみたいで……こちらの食材調達ついでに救助して欲しいんですよぉ」
A.R.O.A.って対オーガ組織だよ、爽さん分かってる?なんでも屋さんじゃないんだよ?
「場所はヤゴナァーンっていうタブロスから車で1時間移動した先にある街で、その郊外にある養鶏場です! そこの責任者さんから食材提供したくてもデミ・ワイルドドッグの群れがたびたび鶏たちを襲うのでこのままじゃ壊滅状態になるとかなんとか……」
「予想以上に真面目な内容で驚きです」
「ちょ、いつでも真面目ですよ私!?」
職員の言葉に対してぷりぷりと怒りながら爽は勝手に話を進めていく。
「ヤゴナァーン名物でもあるテーバサーキーっていう種類の鶏は脂身でもある皮は薄くサッパリとした肉が味わえる高級食材なんです! スパイスで炒めても良し、茹でてチキンサラダにしても良し、燻製にしてあっさりとしてコクのある味わいを引き出しても良しなんです!」
力説具合から察するに特番でのメイン食材に使いたいのだろうと職員は予想する。
「責任者さんに確認したところ、ぱぱっと片付けてもらえたらお腹も空くでしょうしテーバサーキーの唐揚げを用意してくださるそうですよ!」
当日は私が直々に車でお連れしますので是非に是非に!とゴリ押ししてくる爽を押しのけつつ、依頼は正式に受理された。
***
「……という訳でヤゴナァーンのテーバサーキーをデミ・ワイルドドッグから救い、唐揚げも楽しんできちゃってください。デミオーガということなので、まだ戦闘に慣れていないウィンクルムでも対応できる相手ですが油断は禁物です、確実に倒すことを念頭に置いてください」
職員はそのまま募集をかけ、爽から受けた依頼を集まったウィンクルム達に説明していく。
「デミ・オーガはトランスせずとも倒せますが、もしジョブスキルを使いたい場合は事前にトランスを行ってください。ジョブスキルは強力ですが慣れないうちは何回使えるかも確認しておくと良いでしょう」
事前に精霊のMPとジョブスキルの必要MPは確認しておいたほうが良さそうだ。
「それでは、お手数をおかけしますがよろしくお願いします」
解説
※初心者の方に向いた内容ですがどなたでも大歓迎です!
●目的
デミ・ワイルドドック3体の殲滅
●目的地
タブロスから車で1時間の場所にある街・ヤゴナァーン
テーバサーキーは名産の一つらしい
●戦闘エリア
ヤゴナァーンの養鶏場にある放牧エリア
芝生が敷き詰められており、柵で囲われていますがデミ・ワイルドドッグは容易に突破してしまいます
テーバサーキーの匂いに惹きつけられて突入してくるので囮などは用意しなくても大丈夫です
戦闘エリアに入って待機していればそのうちやってきます
●デミ・ワイルドドッグ
野犬が瘴気に当てられてデミオーガ化した姿です
通常の野犬より強化されていますが強力な敵というわけではありません
習性などは普通の犬と変わりません
●テーバサーキー
ヤゴナァーン名物の鶏の一種で、脂身が少なくサッパリとした鶏肉を味わえる高級食材
デミ・ワイルドドッグがたびたび捕食しているため養鶏場内から徐々に数が減っている
殲滅後にテーバサーキーの唐揚げを養鶏場の主が用意してくれるらしい
(その他の鶏料理はお願いしても出てきません)
食材調達は爽ちゃんが裏で済ませるので関わらなくても大丈夫です
●その他
『どのような行動をとりたいのか』をハッキリさせつつ
『全員でどんな作戦で挑んでいくのか』を考えてみましょう
前衛か、後衛か?武器はなにを使うか?スキルはなにを使おうか?
誰かの提案があった場合に『はいorいいえ』を伝えるだけでもとても大事です
作戦を無理に立てずとも意思表示をするだけで相談の進みやすさが変わってきます
また『連携をとる』という記載だけでなく『どんな見せ場を作りたいか』書いてみましょう
「3匹を一瞬でカイシャクするのでハイクを詠ませる」
「ラブラブパワーで瞬殺」
「全員の力を俺の拳に収束し必殺のらぶてぃめっとボンバーを行う」など
無理のある行動は出来ませんのでご注意を
戦闘後にテーバサーキーの唐揚げも食べられるので感想があると良いです
ゲームマスターより
木乃です。鳥の手羽先食べたい。
爽ちゃんは過去のエピソード『ファンタスティックなレポート求ム!』にも出てきたNPCですが
前作のエピソードと今回の内容には関連がございませんので読まなくても大丈夫です!
今回はヤゴナァーンのテーバサーキーがデミ・ワイルドドッグの脅威にさらされているので退治してくださいませ。
初心者の方でも向いている内容ですので、
プロローグ内や解説に書かれている内容をよーくご確認して頂けると幸いです!
そのため相談期間も長めに取らせて頂きました、予めご了承ください。
また所持品以外の道具申請は可能ですが『申請が通らない可能性もある』ので
頼らずに作戦を組めると良いです、装備品はそのまま所持している形となります。
それでは皆様のご参加をお待ちしております。
リザルトノベル
◆アクション・プラン
ハロルド(ディエゴ・ルナ・クィンテロ)
【トランスタイミング】 開幕ハイトランス 安心してください 唐揚げちゃん…いえ、ごほん テーバサーキーは必ず守って見せます 守るのはいいんですが、まさかそんな時まで放牧してないですよね…? 唐揚げちゃん、いえ、テーバサーキーがいるなら鶏舎内に戻しておいてほしいかなって…、誤爆が不安なのです。 放牧エリアの形状を確認しておく もし全体を見渡せる場所があるならそこに陣取り 丸い放牧エリアなら中心に陣取り 鞭を構えシャルティさんとイズミさんの護衛に努めます ワイルドドッグが襲撃してきたら攻撃を受け止め、反撃する。 ワイルドドッグが群れではなく一体ずつ襲撃してきたら 周囲の警戒、精霊の視覚外からの襲撃があれば大声で知らせる。 |
シャルティ(グルナ・カリエンテ)
戦闘は精霊に任せるわ テーバサーキー、頑張って守りましょ …あんたは周囲をよく見て行動しなさいよ ・行動 テーバサーキーが養鶏場から出ていくことと、 敵が養鶏場へ入らないよう、 神人でテーバサーキーを見張る 「良い子だから外には出ないで」 ・戦闘 戦闘は精霊に任せ、敵に近づかない 精霊の邪魔にならないため、養鶏場へ 戦っている間、養鶏場でテーバサーキーが誤って出て行ってしまわないように見張る もし、敵が神人で見張る養鶏場へ来たら、協力し、食い止める 敵が精霊の視覚外からの攻撃に備えて養鶏場から敵を監視 なにかあれば大声で精霊に知らせる ・戦闘後 あ…すごく美味しい へえ…テーバサーキーってこんなに美味しいものだったのね |
イズミ=リチャードソン(カムイ=スチュアート)
養鶏場に近づく前にすぐトランス 敵との戦闘は精霊達に任せるわ 私達は安全な場所からそちらを見て、敵の動きを把握する 無いとは思うけど、敵がこちらに来たら応戦 まだ戦い慣れてないから、避けることだけ考えるわ もちろんテーバサーキーに手は出させないけど 終わったら唐揚げを堪能、さっぱりジューシーで美味しいわね! 食べ過ぎ? 遠慮してたら人生損するものよ |
●ウィンクルムの到着
「皆さんっ、こちらがヤゴナァーンのテーバサーキー養鶏場ですよっ!」
タブロスから車で一時間ほど、依頼人である爽の運転でやってきたヤゴナァーン。民放局のプロデューサーである爽は料理の特番で起用するという高級食材であるテーバサーキーを襲撃してきているデミ・ワイルドドッグを退治してほしいと依頼し、出没するという養鶏場まで討伐にやってきたのだ。
「あー……腰いてぇ」
グルナ・カリエンテは長時間座りっぱなしだったこともあり、固まりかけていた体をグイグイと捻ってみる。
「……思ったより、大きいところね」
「高級食材にして名産ですからね、蝶よ花よと成育されちゃってます! それに健康状態を維持したり、衛生管理を徹底したりしていることもあってそれなりに設備は整っているのですよー」
シャルティが車を停めた脇に見える鶏舎を見つめてポツリと呟くと爽が解説を入れてくる、予想外に防衛対象が大きいこともあってシャルティはわずかな不安を感じて溜息を吐く。
「まぁまぁ、ちゃちゃっと終わらせちゃえば大丈夫! カムイ、今のうちにトランスしとこうよ」
「イズミちゃん、いまトランスして大丈夫かな……? 戦闘中にトランスが切れちゃったら困ると思うんだ」
イズミ=リチャードソンの提案にカムイ=スチュアートがちょっと待ってと一声かける。準備しておくに越したことはないが、トランスが発動している時間も無限という訳ではない。まだ親密でなくとも2時間は維持できるがその2時間の間にデミ・ワイルドドッグが現れるとも限らないのだ。
「敵が近づいてくる際にトランスしても遅くはないだろう、戦闘中に切れてしまうと次にトランス出来るのは翌日になる」
ディエゴ・ルナ・クィンテロもカムイに口添えして、もう少しだけ待つように提案した。
「そ、そっか。戦闘中にトランスが切れちゃったら意味がないものね、焦りは禁物……っと」
イズミも助言を受けてもう少し待とうと思いとどまる。
「皆さん期待していますよー……おや?」
ふんすふんすっと何故かイズミ達のやる気に感化されて鼻息を荒くする爽、そこへディエゴ達の到着に気づいた作業着姿の係員が慌てて駆け寄ってきた。
「お、お待ちしてました! デミ・ワイルドドッグが出現するのはこちらの放牧地です」
「安心してください、唐揚げちゃん……いえ、ごほん。テーバサーキーは必ず守って見せます」
ハロルドは唐揚げちゃん……もとい、テーバサーキーの死守を宣言しつつ後についていく。
(……なるべく早い時間に終わらせよう)
先程から黙っていたハロルドの様子に『一刻も早く唐揚げを食べたい』という気迫を感じ取っていたディエゴは早々に終わらせてしまおうと心の中で呟く。ディエゴ自身も高級食材と言われる鶏の唐揚げが気にならなかった訳でもない。
「ところで、さすがにこんな時まで放牧していないですよね?」
「さ、さすがに放牧はしてないですよ。鶏舎にも侵入されないようにこちらでできる限りの防護をしておきました」
しかし柵や建物を補強しても防衛として役に立つとは思えない上に柵は何度か壊されている、と係員は言う。放牧地内からの防衛線はウィンクルム達にかかっていると言っても過言ではないだろう。
(……良い子だから外には出ないでね)
鶏舎の中から聞こえる潜めた鳴き声にシャルティは外へ出てこないように祈る。
「そうだ、念のため鶏舎の確認させてもらっていい? 隙間とかあったら飛び出しそうだし」
「そうですね。念を入れておくに越したことはありません」
シャルティは鶏舎から誤って飛び出してくる可能性がないわけではないだろうと思い、鶏舎の防護に抜け穴がないか確認しようと提案。ハロルドとイズミは頷くと鶏舎の建物を確認しようと走って行き、グルナ達は先に放牧地で待機することにした。
●準備は出来た
放牧地は芝生が敷き詰められており、テーバサーキー達が怪我をしにくいように工夫されている。長方形の牧草地の端には餌が入っている麻袋が山積みにされており、柵の向こう側は森が沿うように広がっていた。放牧地内は柵で囲われている以外には視界に影響が出るものはなさそうだ。
「いや~のどかだねぇ、放牧地じゃなければ昼寝にもってこいって感じだよ」
カムイは寝転がったら気持ちいいんだろうなぁと想像しながら辺りを見回す、今のところ怪しい気配は感じられないこともあり本当にデミ・ワイルドドッグが近隣にいるのだろうかと思いたくなる。グルナもバスターソードを地面に突き刺して寄りかかっているとイズミ達が鶏舎を確認し終えて遅れてやってくる。
「鶏舎は特に問題なかったわよ、ちょっと不安なところを突貫で補強してもらったくらいね」
イズミは建物の守りはほぼ問題なかったと伝え、ディエゴ達も了解の意を示し頷く。
「そうかそうか、じゃあ後は思いっきり暴れるだけだなぁ」
「……あんたは周囲をよく見て行動しなさいよ」
「お前に言われなくともちゃんと周りを見るっての、いつも言う通りやってんだろ?」
グルナもようやく大暴れ出来ると退屈そうにしていた姿勢を上機嫌に正しているとシャルティがディエゴ達の動きに合わせて動くように釘を刺す。グルナも言いたいことは解っていると肩を竦めながら返事をする。
「カムイ。戦闘はあんた達に任せるから、しっかりやってよね」
「あはは……ボクも足を引っ張らないようにするよ」
今回が初陣のイズミとカムイ、カムイは笑顔を浮かべて緊張を誤魔化しているもののイズミは身体が僅かに震えていて、表情が強ばり目も泳いでいることが見て取れる。
(……イズミちゃんも怖いんだよね、ボクがしっかりしないと)
そんなイズミの緊張した様子を感じ取っていたのはカムイだけではなく、周囲の状態を確認していたハロルドも察していた。
(見通しが良いだけに何処にいても全体は見えると思って良さそうですね……もしもの時は、私がシャルティさんとイズミさんを守らないと)
顕現したばかりの神人は普通の人間と身体能力も変わりないし、戦での動きも不慣れなことが多い。ある程度の場数を踏んでいる自分なら万が一のときはシャルティ達の護衛も出来るとハロルドは密かに考えていた。
「む……来たか」
遠巻きになにかが駆け抜けてくる音が聞こえてきた、地面を踏み鳴らす複数の足音が勢いよくこちらにめがけてやってきている。気づいたディエゴがチラリと生い茂る森の方に視線を向ける。
「ハル」
「はい、お願いします」
『Youre My Best Friend』
ハロルドが触神の言霊を唱え、ディエゴとの力を発動する。
「カムイ、目一杯やっちゃって」
「イズミちゃんも頼んだよ」
『朧月に舞え!』
イズミは高らかに詠唱し、カムイとのトランス状態に移行する。
「グルナ、戦闘は任せるから」
「わーってるって」
『我に代わり力となれ』
シャルティの静かな言葉が響き、グルナと共にオーラに包まれる。
それぞれがトランスを済ませ、オーラを身にまとうと同時に爆発音に似た破壊音が響き渡る。目を血走らせた四足動物が突入してきたのだ、それらは野犬に酷似していたが一つだけ違うのは額から小さな角が生えていること。オーガである証だ。荒々しく呼吸しながらだらだらと涎を垂らす姿に理性というものは一切感じられない。
ディエゴ達が武器を手に取り構えると同時に、シャルティ達は鶏舎の防衛へと駆け出していく。
●3体が来る
「ガウガウガウッッ!!」
口の端からこぼれ出る涎を撒き散らしながらデミ・ワイルドドッグは突撃してくる。
「いきなり突撃……と、見せかけて」
カムイも同時に動いて突撃していき一撃加えようと……みせかけ、不意打ちで『忍法霞』を発動する。本来は姿を消すために目晦ましの白煙を噴出させるジョブスキルだが、今回は目晦ましの白煙で怯ませることだけが狙いだ。見晴らしがよく遮蔽物がないこと自体も問題ではない。
しかし、複数体を狙うには範囲が狭かった。本来は自分の姿を隠すスキルであるため、カムイ自身が隠れるのに十分な範囲しか白煙は広まらなかった。1体は目晦ましにかかったものの残りの2体は後退しようとするカムイに追い縋ろうと狙いを定めてきた。
「ガァァッ!」
「うおぉっ!?」
「チッ、そう上手くはいかないか」
噛み付かれそうになりながらカムイが身を翻して間一髪で回避、ディエゴは思わず舌打ちしながらムーン・アンバー・ガーズで狙いを定める。
(デ、デミ・オーガって言ってもやっぱりオーガの一種なのよね……)
イズミは鶏舎を守ろうと鶏舎まで下がりコネクトハーツを構えながらカムイ達の背中を見つめていた。迫りくるデミ・ワイルドドッグ達の迫力にオーガに襲われた時の恐怖が脳裏に甦り緊張でガチガチと手元が震え額から脂汗が滲み出てくる。
(……だ、大丈夫よ。今はカムイやハロルド達が一緒に居るんだから)
あの時とは違うんだとイズミは自身に言い聞かせながらコネクトハーツの柄を握りしめる。
「テーバサーキーは……出てこない、わね」
シャルティも鶏舎の様子に気を配りながらコネクトハーツを構えて万が一、突破してきたときに備えて身構えていた。突貫でさらに補強を施してもらったものの突破されれば防護の補強も意味をなさないかもしれない。
「……しっかりやりなさいよね」
信頼はあくまで心の奥底に隠し、シャルティはグルナの後ろ姿に微かな声援を飛ばす。
(3体ともディエゴさん達に注目している……こっちに突破してくる可能性は少ないでしょう)
ハロルドはイズミ達より数歩先に立ちローズ・オブ・マッハを構えていつでも迎撃できる状態で待機している、忍法霞で1体のみ怯んだだけでも戦局は有利なのだが油断は禁物だと突破した2体の動きを注視する。
追撃を阻止しようとディエゴは『ダブルシューターII』でカムイに追撃を仕掛けてきたデミ・ワイルドドッグに歯車から撃ち出した無音の早撃ち連射で仕留めていく。1体のデミ・ワイルドドッグを穴あきチーズのように風穴だらけにしていく。
「キャィン!?」
「……やりすぎになってしまったか」
想定以上の破壊力でデミ・ワイルドドッグを圧倒してディエゴ自身が僅かに驚いたものの、これなら速攻で終らせられるだろうと確信して次の標的を見定める。
「ほーらよっ、こいつも喰らいなぁぁッ!!」
カムイを追走している一体より先に怯んでいる方を仕留めた方が良さそうだと判断したグルナは動きの止まっていたデミ・ワイルドドッグに横薙ぎの一撃を仕掛けていく。両刃の大剣をフルスイングするとデミ・ワイルドドッグの胴体を一閃、勢いよく弾き飛ばすと血しぶきをあげながら絶命していく。
「へっ、こっちはまだやりたりねぇんだよ!」
グルナはバスターソードに付いた血のりを振り払いながら快活に笑って見せる。
「こっちに来ないでくれよ、っと!!」
カムイは手裏剣『紅葉』でデミ・ワイルドドッグの足を狙っていくがやはり部位を狙えば的が小さくなることもありなかなか当たらず、傷も浅いものばかりだ。
「無理に足を狙わなくていい、体力を奪っていくだけでも相手の動きは鈍る」
ディエゴが『スナイピング』でデミ・ワイルドドッグの両前足を確実に撃ち抜いていくと不意に足止めを受けて失速したデミ・ワイルドドッグはそのまま転倒し転げていく。
「こいつで終いだぜ!!」
転倒した最後のデミ・ワイルドドッグにグルナは『スパイラルクロー』を仕掛けていく。飛び掛かりながら振り下ろしたバスターソードは正確にデミ・ワイルドドッグを狙い、まな板の上に横たわる食材のようになっていたデミ・ワイルドドッグを一刀両断して終止符を打つ。
「や、やった……の?」
「この場に出現したデミ・ワイルドドッグは退治できましたね」
緊張の解けていないイズミはガチガチと引け腰でコネクトハーツを構えたまま尋ねると、ハロルドは周囲を警戒しながらひとまずこの場は収まったことを確認してディエゴの元へと駆けていく。
「ディエゴさん、他に潜んでいる様子はありますか」
「……いや、ないな」
ディエゴも同様に潜んでいる殺気や不穏な気配はないかと周囲に鋭い視線を巡らせてみたが、怪しい気配や影も見えずデミ・オーガはこれで全て掃討したのだろうと確信する。
「ふぅ……お疲れ様、鶏舎の方まで来なくて安心したわ」
シャルティも鶏舎から飛び出してくるかもしれないしデミ・ワイルドドッグも突破してくるかもしれないとさまざまな懸念をしていたこともあり不安要素がなくなってようやく肩の荷が下ろせると安堵の息を吐く。
「なんだぁ、お前ビビってたの?」
「あんたがちゃんと周りに合わせるか心配だっただけよ」
グルナが溜息を吐くシャルティにちょっかいをかけてみるが素気無くあしらってみせて思わずイズミ達も笑みをこぼす。
「ひとまず、これで安心よね」
「では報告に行きましょう。そして唐揚げちゃん……いえ、養鶏場の方に安心してもらいましょう」
イズミもようやく緊張が解けて両手を膝に付きながら項垂れていると、ハロルドは早速報告しに行こうと提案して放牧地を後にする。
●ヤゴナァーンのテーバサーキー
ハロルド達は報告を済ませると養鶏場内の休憩室に通され、そこで待っていた爽に出迎えられる。
休憩室内には簡素なウッドテーブルと人数分の丸椅子が置かれていた。
「皆さんっ、お仕事お疲れ様ですよーっ! さささっ、皆さんがここで一休みしている間に私もお仕事してきますのでゆっくりしていて下さいね」
ずびしっ! と敬礼を決めて爽は自身の仕事であるテーバサーキーの調達に向かってバタバタとその場を離れていく。
(唐揚げちゃん、唐揚げちゃん……)
口には出さないもののすでにそわそわと待ちきれない様子のハロルドが席に着く、表情や態度に出さないように努めているもののディエゴだけはハロルドの僅かな変化に気づいていた。
「討伐お疲れ様でした、これでうちの子達も安心して外で遊べるようになります」
そこへ香ばしい香りのするトレイを持った30代くらいの作業着姿の女性がやってきた。『管理責任者』という肩書のついた名札がついているところを見るとこの養鶏場で地位のある人物であることは容易に解る。
「爽さんが依頼料をお出ししてくださるということなので、こちらからはこれくらいしか出せませんが……」
申し訳なさそうに眉を下げる女性は持っていたトレイをテーブルに置く。先ほどから漂っていた香ばしい香りの正体でもある唐揚げが山盛りに乗っていた。
「小腹が空いているかと思ったので、ぜひご賞味ください。塩とにんにくで味付けしてみました」
お口に合えばよいのですがと微笑む女性の言葉に甘えてシャルティが早速一口。
「あ……すごく美味しい」
テーバサーキーの肉汁の詰まった唐揚げは一口かじると塩のあっさりした味付けとニンニク特有の風味もあってジューシーな味わいがある。しかも皮が薄いこともあって衣と合わさった時の脂っこさもなく非常に軽い口当たりで食べやすかった。ゆっくりと噛み締めるたびにシャルティの口の中で旨味が広がっていく。
「ん、結構美味い」
グルナもシャルティに倣ってパクリと頬張りながら大きく頷く。
「さっぱりジューシーで美味しいわね!」
「うんうん、さっぱりしてて美味しいね……って、イズミちゃんちょっと食べ過ぎじゃない?」
カムイが勢いよくパクつくイズミにもう少し自重した方がいいのでは、と苦笑しながら注意をするとイズミは唇を尖らせながらもう一口。
「遠慮してたら人生損するものよ」
「そうです。美味しい物は美味しいときに食べないともったいないです」
イズミに同感だと言いたげなハロルドも黙々と味わっているが、密かに結構な量を食べていたりする。
「高級食材と言われるだけはあるな」
(これはハルが夢中になるのも頷けるな)
嬉しい誤算だったと感じながらディエゴもテーバサーキーの唐揚げに舌鼓を打つ。
「テーバサーキーってこんなに美味しいものだったのね」
小腹が満たされて満足げなシャルティは呟いた。
「食えるときにしっかり食っとけよ、お前」
「……煩いわね」
まるで『太れ』とでも言いたげなグルナの一言にジトりとシャルティは視線を向ける。
カムイ達が食事を終える頃に爽も仕事を終えて戻ってきたので、帰り支度を済ませて養鶏場を後にした。
「捕まえられなかったので大人しく加工した物を頂いてきちゃいましたー」
帰りの車を運転しながら残念そうに語る爽の一言に『まさかそのまま連れてくる気だったのか』とシャルティ達に衝撃が走ったとかなんとか。
依頼結果:成功
MVP:
名前:ハロルド 呼び名:ハル、エクレール |
名前:ディエゴ・ルナ・クィンテロ 呼び名:ディエゴさん |
エピソード情報 |
|
---|---|
マスター | 木乃 |
エピソードの種類 | アドベンチャーエピソード |
男性用or女性用 | 女性のみ |
エピソードジャンル | 日常 |
エピソードタイプ | ショート |
エピソードモード | ノーマル |
シンパシー | 使用不可 |
難易度 | 普通 |
参加費 | 1,000ハートコイン |
参加人数 | 3 / 2 ~ 5 |
報酬 | 通常 |
リリース日 | 09月20日 |
出発日 | 09月30日 00:00 |
予定納品日 | 10月10日 |
参加者
- ハロルド(ディエゴ・ルナ・クィンテロ)
- シャルティ(グルナ・カリエンテ)
- イズミ=リチャードソン(カムイ=スチュアート)
会議室
-
2015/09/29-23:57
俺もプラン提出完了だ
頑張ろうな。
-
2015/09/29-23:49
こっちもプラン提出完了よ。
唐揚げ楽しみね!
お互い、頑張りましょう。 -
2015/09/29-23:31
ディエゴさんは流れのまとめ感謝するわ。プラン提出できた。
あと、グルナの攻撃へのサポート、こっちからもお願いしたいわね。
デメリットの多い技だから成功に導けるようにこっちでもできる限りの注意をさせるわ。 -
2015/09/29-23:08
カムイ:
そうだね、それで行こうか。
僕はディエゴが狙いきれなかった敵の動きを封じるよ。
イズミちゃんたちは見張りだね。
安全な場所でテーバサーキーを守ってもらおう。
遠くからこちらを見てもらって、視界の確保もしてもらうね。
さて、そろそろプランを組まないと間に合わなさそうだね。
急がないと。
-
2015/09/29-18:18
俺が一つのターンで攻撃できる回数は二回
敵が三体一気に向かってくるかどうかはわからないが、同時出現なら一体自由という事になってしまう
そこで、カムイには俺が手を付けていない敵もしくは足へのダメージが少なく動ける敵の追撃をしてもらいたい。
流れで言うと
カムイが敵を引きつけ、接近してきたら忍法霞で攪乱
↓
俺(ディエゴ)が三体の敵のうち二体の足を撃って移動を封じる
霞後のカムイはもう一体か、まだ動ける敵に追撃
↓
移動封じ成功時にグルナのスパイラルクローで一体に確実にとどめを刺す
一体仕留められればその時点で数の勝ちになるから後は手負いの攻撃に注意しながら攻撃していけばいいだろう。
神人は養鶏場を守る、あとは敵が精霊の視界外から襲撃してきた場合の監視もしておく
なにかあれば大声で知らせるようにする -
2015/09/29-17:53
カムイ:
そうだね、グルナが確実にスパイラルクローを当てられるように、僕も手裏剣で敵を足止めしようかな。
具体的には、敵が避けようとする方向に手裏剣を投げて、敵をひるませるって感じかな?
-
2015/09/29-13:00
すまん、言葉が足りなかった
カバーするというのは、スパイラルクローを確実に当てるために敵い移動を難しくするということだ。 -
2015/09/29-12:14
スパイラルクローは命中マイナスが大きい上に失敗するとペナルティもある
こちらでカバーはするつもりではあるが、万が一のためにカムイも注意してみてくれないか?
-
2015/09/29-09:11
ハロルドとディエゴさんは初めましてね。よろしく。
グルナ:
ほう。なら、ディエゴが銃弾ぶっ放した後に叩き斬るぜ。
わんちゃんは3匹だろ? 「スパイラルクロー」は一回しか使えねぇから、場面考えて発動させた方が良いか…。
まぁ、他のスキルより攻撃力高めな分、威力は期待できるか。 -
2015/09/29-07:39
ああ、悪い、ジョブを言ってなかった
ガンナーだ
カムイが敵をひきつけ忍法霞を使用することで隙を作り
俺がその隙に敵の足を撃つ
機動力をそいだところでグルナの攻撃でとどめを刺す、という形もとれるからカムイの前衛も良いと思う -
2015/09/29-02:13
ハロルドさん、ディエゴさん、初めまして!
神人のイズミ=リチャードソンよ。
精霊はカムイ=スチュアート。
シノビをやってるわ。
なら後衛は任せたわね。カムイを前衛に回して、敵を撹乱させようかしら? -
2015/09/29-00:09
ディエゴ・ルナ・クィンテロと神人のハロルド、着任した
よろしく頼む
ここまでの流れはわかった
俺は後衛で、ドッグの進行を邪魔する為に足を狙って射撃する
神人は、イズミとシャルティが固まって動くなら護衛させようと思う。 -
2015/09/28-23:51
こっちもひとまずプラン提出完了よ。
モジスウはきっとウィンクルム最大の敵でしょうね。
私は割と健闘したわ
-
2015/09/28-21:23
…一先ず仮プランは出せたわ。
モジスウ、結構強いわね…。
書きたいことがありすぎて削る作業が苦痛…。 -
2015/09/28-19:33
ええ、そうね。
あとは出発日までのんびりしてても大丈夫だと思うわ。
言い忘れとか変更点があれば随時書き込んでいくということで。 -
2015/09/28-17:50
了解よ。
目眩ましや気を引くのは私達に任せて。
気兼ねなく渾身の一撃を叩き込んで頂戴。
あ、一応養鶏場にデミ・ワイルドドッグが来たら私も戦うわ。怖いけど。
話もまとまってきたし、そろそろプランをまとめ始めようかしら? -
2015/09/28-09:47
↓ああ、そういえば忘れてたわ。
ジョブスキル「スパイラルクロー」は今のグルナのMPじゃ一度しか使えないけど、
でも一度しか使う予定がないから「スパイラルクロー」を選んだわ。
変更点があれば、そのようにまた書き込むわ。 -
2015/09/28-08:48
出発は明後日で参加者、来るかもだけど、とりあえずまとめるわ。
前衛:グルナ
後衛:カムイ
養鶏場:イズミ、シャルティ
カムイ:武器を振るうグルナの援護
(使用武器:手裏剣「紅葉」ジョブスキル:忍法霞。目眩しに使用)
グルナ:前衛で武器を振るう
(使用武器:バスターソード「バーバリアン」ジョブスキル:スパイラルクロー)
イズミ、シャルティ:主にテーバサーキーが養鶏場から逃亡防止、デミ・ワイルドドッグから守る。
(シャルティはデミ・ワイルドドッグが養鶏場へ来てしまったら武器で追い払う(短剣「コネクトハーツ)
…変更、間違いがあったら言ってもらえれば。 -
2015/09/28-00:00
…まあ、そうならないように気をつけさせるわね。
カムイ、アンタちゃんと仕事してよ?
デミ・ワイルドドッグ来たら私は逃げるからね。
カムイ:
やだなあイズミちゃん、言われたことはきちんとやるよ? 言われたことは。
しかし本当に堂々と逃げ腰になるよね君。
度胸あるのか無いのかどっちなの?
イズミ:
無いに決まってるから逃げ腰になるのよ。ア、イッピキニゲチャッターとかやめてねほんと。
やったらマジで殴るから。
カムイ:
その闘志をちょっとでも敵に向けてくれないかな?
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2015/09/27-20:40
>デミ・ワイルドドッグ
ええ、そうね。お願いするわ。
もし、取り逃がして養鶏場に来たら、私も剣を持つわ。
だって、いざって時に黙ってられない。
…やられないように気をつける。
グルナ:
…マジかよお前。
…なによ。大マジに決まってるでしょ。
止めた方が良いっていう意見は、大丈夫。聞き受けるわ(拳ぎゅ
なるべく怪我、せずに済ませたいもの。
グルナ:
優柔不断発動させんじゃねぇよお前。 -
2015/09/27-18:22
そうね、せっかく守っても逃げられたら台無しでしょうし、そうしましょう。
あまりデミ・ワイルドドッグには近づかないように見張るとするわ。
カムイには、デミ・ワイルドドッグがこちらに来ないよう立ち回らせるわ。
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2015/09/27-00:28
神人でもデミ相手ならダメージを、……与えられるけど、グルナは引っ込んでてほしいみたい(前引っ込んでろと言われた人)
だから私としてはテーバサーキーが誤って養鶏場から出ていかないように見張ってたら良いんじゃないかって思うわ。
無意味でも居ないよりかましでしょうし。 -
2015/09/26-23:59
そうね、カムイには手裏剣を投げさせてデミ・ワイルドドッグの気を逸らさせるわ。
その隙に横合いからバッサリやっちゃって頂戴。
でも、カムイ達が戦っている間、私達はどうしましょう?
デミ・ワイルドドッグが向かってきたら、私はちょっときついわね。
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2015/09/26-18:17
…そう、ね…。
それだったら、カムイさんは手裏剣でデミ・ワイルドドッグの気を逸らしてもらう、
っていうのもありかなってふと思ったんだけど、どう?
その隙に、うちの戦闘狂(グルナ)が斬り込む、と。 -
2015/09/26-14:17
こちらこそよろしくね。
そうね、養鶏場から距離は取らないと、テーバサーキーが巻き込まれてしまうかもしれないし。
カムイには完全に後衛で戦ってもらうことにするわ。
手裏剣でも投げつつ距離を取らせようかしら?
そうね、トランスのことは忘れないようにしないと。
忠告ありがとう!
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2015/09/26-10:33
イズミは初めまして、ね。よろしく。
そうしてもらえると助かるわ。遠距離攻撃が主なジョブなら後衛の方がこっちも動きやすいわけだし。
忍法霞はカモフラージュなスキルよね。…そうね。…応用するのも悪くはないわね。
養鶏場から少し距離は取った方が良い、わね…。まあ取れるかどうかはかなり微妙だけど。
あ、それから私、よくやらかしそうになるから言っておくんだけど。
プラン書く時は「トランスする」ことはしっかり書いた方が良いわね。
ジョブスキルはトランスしないと使えないし。
一応言わせてもらったけど……でも、余計なお節介かもだし、スルーしてもらって良いわ。 -
2015/09/26-00:56
シャルティさん、今回はよろしくね。
あたしはイズミ=リチャードソン。精霊はカムイ=スチュアート、シノビよ。
カムイはシノビだし、グルナさんのサポートを任せようかしら?
ジョブスキルは忍法霞。
これは煙の出るスキルだし、これを目眩ましに使っちゃいましょう。
背後事情了解したわ。
返せるときに返してくれたら、こちらはそれで大丈夫よ。
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2015/09/24-09:15
シャルティ。まぁまだ人はいないけれど、よろしく。
精霊はグルナ。ハードブレイカー。
グルナは戦闘馬鹿だし、HBだし、前衛を任せたいと思ってるわ。
グルナ:
あ!? お前は一言多いんだよッ!
…ジョブスキルは…スパイラルクロー、かなとは思ってはいるわ。
視界の妨げになるものをデミ・ワイルドドッグに投げたら良いんじゃないかと思ってるわ。
…ああ、そうそう。忘れるところだったわ。
今週は背後事情で夜は会議室、見れないの。
見れる時は見るけど。
でも来週は見れると思うから、それだけ伝えとこうと思って。