プロローグ
『あなた』は、とても困っていた。
目の前には、自らのパートナーである神人がいる。
ただし、その顔は恥じらいではない意味で赤く、目がとろんとしている。
簡単に言えば、酔っ払い状態だ。
どうしてこうなった。
『あなた』は、こうなるまでを考える。
今日はセレネイカ遺跡へとやってきた。
ネイチャーヘブンズには遺跡周辺の瘴気を祓う『月幸石』があるそうだが、変質しなければただの石と見分けがつかない。
都合よく変質した石が落ちている訳などないか、と笑いつつ、ネイチャーヘブンズを見て回っていた。
デートと言えばそうだが、瘴気の影響を受けた原住生物が受けていない原住生物を害していないかというパトロールの意味も含まれており、完全に気を抜いた訳ではなかったのだが。
何と言うことでしょう。
尻尾の代わりに白くて大きな花を咲かせる大型犬サイズの黒猫が神人へとても懐いて、懐き過ぎて、近くにあった池へ落ちてしまったのだ。
神人とペタルムという名らしいその黒猫と共にすぐ救助し、溺れるようなことは何もなかったものの、水を少量飲んだらしい神人が酔っ払ってしまった。
舐めてみたものの精霊である自分には影響がなく、神人にのみ作用しているようだ。
元々からそういう池ならば、『N2-M』という遺跡管理システムはこの区画に入る前に自分達へ注意を促すだろうが、何も言われなかった。
まさか、瘴気の影響?
それならば、把握していない為に情報が提供されなかったのも納得がいく。
納得はいくが、溜息をつかねばならない。
最大の問題は、神人が今酔っ払いで、その彼女に着替えてもらう必要があること。
いつ酔いが醒めるのかも分からず、風邪引く前にどうにかしないといけないのだが、酔っ払った彼女は……。
頑張れ、理性。
頑張れ、自分。
解説
●状況整理
・原住生物の状況把握の為、デートも兼ねた見回りの最中ペタルムという大型犬サイズの黒猫のような原住生物が神人へ懐き、共に池へ落ちた。
・すぐに救出したので溺れてはないが、神人が酔っ払っている。
(PL情報:瘴気を受けた周囲の花の花弁が池へ大量に落ちたことが原因で池の水が神人を酔わせる効果を持った酒のような状態になってしまっている)
・しかもその間にペタルムはバックレた。
・いつ酔いが醒めるか分からないけど、着替えて貰わないといけない。
・どうしよう!?
●プランの書き方
神人
タチの悪い酔っ払い状態です。
泣いても絡んでも笑ってもいいですが、キス以上の具体的な行為は出来ず、全裸になるまで脱ぐのもNGです。
数分~30分程度で効果は終了しますので、効果終了時の反応もどうぞ。
アルコールで酔っていないので、二日酔いで苦しむことはありません。
精霊
酔っている神人に対する反応を。宥めたり絡まれて困惑したり焦ったり。
こちらもキス以上の具体的な行為は出来ません。
着替えさせる為にどうにかしようと奮闘することになりますが、全裸は拝めません。
酔いが醒めた彼女に対する反応もどうぞ。
●消費ジェール
・帰りに温かい飲み物を買ったりタオル買ったりして300ジェール羽ばたいていきました。
●注意・補足事項
・今回は個別描写です。
・キス以上の具体的な行為や自分が全裸になる、相手を全裸にする行為は不採用(行う前に寝てしまう)となります。
・が、そこに到達せず迫ったり、そんな彼女に悶々するのは大歓迎です。
・酔いが醒めた後、神人の記憶状態や精霊が話すかどうかはお任せします。
ゲームマスターより
こんにちは、真名木風由です。
今回は、神人が酔っ払ったどうしような話、精霊頑張れという話です。
お酒を飲んで酔う訳ではないので、未成年の方も問題なく参加可能となります。
酔いは醒めますが、池に落ちたことは変わりありませんので、風邪にはお気をつけてくださいね。
それでは、お待ちしております。
リザルトノベル
◆アクション・プラン
ニーナ・ルアルディ(グレン・カーヴェル)
なんだかふわふわしててー、たのしーですねぇっ! きがえるのはやーです、さむいですー どーしてもっていうならー、ぐれんがぬがせてくださいっ、はいっ! えへへ、なんだかぎゅーってされてるみたいですねぇー そだ、ぎゅーしましょうっ、ぎゅー! だってー、さむいんですー、ねっ? やっぱりくっついてるとあったかいですー かおもこんなにちかいし…そーだ、ちゅーしましょう! だってー、さいしょのはふいうちだったから、 いままでちゃんとしてくれたことないですー やりなおしー!やりなおしー! …えっと、私は一体何してるんでしょう…? あのー、朦朧としてた時の発言ってことで、今の無しにしませんか? 駄目ですか…いえ、嫌じゃない、ですけど… |
かのん(天藍)
普段は加減して飲むのでお酒であまり酔っ払わない 今回はにこにこしながら天藍に甘えモード 普段はセーブしてる分極端に 髪の毛を拭かれている分には大人しく お礼ですとにっこり笑みを浮かべて天藍の上着掴みキスを ……天藍はしてくれないのですか? 首傾げ 先のやり取りを有耶無耶にするように着替え促され素直にそのまま上着に手をかける 天藍に止められ、むうとふくれる 天藍が着替えれって言ったんですー 酔いが覚めて現在の状況に慌てる 直前までの自分の行動にただ赤面 促されるままひとまず着替える あまり気にするなと軽くぽんぽんと頭を撫でられるのが心地よく目を細める ああそうだと何かを思いついた様子の天藍の行動に顔から火が出るほど真っ赤に |
水田 茉莉花(八月一日 智)
※人語になっていませんので説明文を付けます にゃうー、にゃーうー!(智を呼んでいる) あにゃにゃー!(智に抱きつく) あにゃうにゃにゃー…あにゃー! (顔にすり寄りからの頬かじり) にゃーははははは!(抱きついたまま、智本体ブン回し) うにゃうー?(上着を脱がせて貰っている間は大人しい) にゃーもー!(隙を見て鼻かじり) にゃうっ、にゃうっ!(レギパンを脱がせようとするとネコパンチ) にゃいーっ!(隙を見て二の腕かじり) にゃぐるるるるー(隙を見て背中引っ掻き) えっとー、あたし何やってたのかしら? ほづみさんが引っ掻き傷だらけでひっくり返ってて あたしの爪に血…えっ、あたし悪酔いしてたぁ?! い、一番見られたくない姿を |
桜倉 歌菜(月成 羽純)
うふふ~♪良い気分! 羽純く~ん♪(ぎゅっと抱き着こうとして、押し留められ) ん~?本当だ~濡れてる~どうしてだろ?(何故か嬉しそうでコロコロ笑い) 着替え?やーだ だって、濡れてる方が気持ち良いもん でも…そうすると羽純くんに抱き着けない? それは嫌だな… なら、羽純くんも一緒に濡れよう? 水も滴る良い男になるし~勿論、羽純くんは何時だって素敵だけど 私も抱き着けるし、嬉しいもん♪ む~羽純くんが風邪引くのはダメ 着替えるね♪ ん~タオル気持ちよくて…眠たくなって来ちゃった (背中に抱き着いて、舟を漕ぎ始める) 酔いが醒めた後、記憶はなし あれ?私、何してたっけ…? 服が変わってる? ねぇ、羽純くん、一体…(聞いて真っ赤に) |
瀬谷 瑞希(フェルン・ミュラー)
うふふふ。落っこちちゃいましたぁ。どじっ子ですねぇ。 ふーわふわ。きもちいいですぅ。うふふふふ。 (スキップしながらミュラーさんの周りをぐるぐる) えー?きがえ?きがえ?どーしてですかぁ? 濡れてませんよぉ。ふふふふふふ。 服をおくる男はぁ、脱がしたいって思ってるって、何かで見たですぅ。…脱がしたいのです?うふふふ。 ん、捕まっちゃいました。ふふ。 わんぴーす…。 (にへらっ、と気の緩んだ笑み。もぞもぞと上着を脱ぎ出す) 茂みにむぎゅぅ。 「ミュラーさん、背中のファスナーがいじわるするんですぅ」と背中向けて留めてもらっちゃう。 あらら? 男の人にファスナーとか上げてもらっては駄目でしょ? 我に返って超恥ずかしいです! |
●酔い過ぎて
「うふふふ。落っこちちゃいましたぁ。どじっ子ですねぇ」
瀬谷 瑞希は、ふわふわ笑っていた。
何だか楽しくて、フェルン・ミュラーの周囲をスキップ。
(こ、これは、ミズキ、酔ってる……よね)
いつもの瑞希の言動じゃない。
「ふーわふわ。きもちいいですぅ。うふふふふ」
微妙に支離滅裂だし、ふわふわした表情で、うふふ、うふふと笑ってスキップまでしている!
(ヤバイ! これはこれで……可愛い!)
流石ミズキフェチを公言するだけあり、ブレるものはひとつもなかった。歪みない。
(いやいやいや。着替えて貰わないと、風邪を引く)
が、彼女の健康へ思考が移ったので、自分の可愛い思いより彼女の健康状態が大事というミズキフェチがハイスコアと判断すべきなのか、常識的なのか……判断に迷う。
「ずぶ濡れだから、着替えようよ、ミズキ」
「えー? きがえ? きがえ? どーしてですかぁ? 濡れてませんよぉ。ふふふふふふ」
フェルンが優しく声を掛けると、瑞希はより楽しそうにスキップする。
「服をおくる男はぁ、脱がしたいって思ってるって、何かで見たですぅ。……脱がしたいのです? うふふふ」
酒と違う原因で酔っているが、酔いが醒めるのが遅くなったら困るとフェルンは瑞希の肩を抱くようにして捕まえた。
普段だったら、真っ赤になって硬直するのだけど、
「ん、捕まっちゃいました。ふふ」
と、ふわふわ笑顔で、(何か凄く油断しているな)とフェルンは思った。
捕まえたのはいいけど、この先が問題でもある。
この状態で、着替えられるの?
フェルンの目には、瑞希が無防備にスカートの裾ぱたぱたさせているのが映っている。
(俺が脱がす訳にもいかないし……)
フェルンは、悶々している。
風邪引いたら大変という思いもあるけど、だからと言って、自分が脱がしていいものでもない。
フェルンは、瑞希の手荷物からワンピースを取り出した。
念の為、共に着替えは持ってきていたのだ。
女性の荷物から服を取り出すなど、本来ならしないのだが、瑞希を着替えさせるのには重要なこと、フェルンが内心謝りながら行ったのは言うまでもない。
「ほら、こっちのワンピースも可愛いよ?」
「わんぴーす……」
ワンピースを見ていた瑞希が、にへらっと気の緩んだ笑みを見せた。
もぞもぞと上着を脱ぎ出し、フェルンは慌てて手荷物も瑞希に押しつける。
「着替えは茂みに隠れて!」
その手荷物の中には、きっと全部揃ってる。
外から着替えているのが見えないような茂みに押し込め、フェルンは周囲に異変がないか、バックレたペダルムが戻ってきてまた騒動を起こさないか見張ることにした。
「ミュラーさぁん」
茂みが動いて、瑞希が出てきた。
着替えたにしては早い、とフェルンが思っていると、瑞希が背中を向けた。
「背中のファスナーがいじわるするんですぅ」
(女神様、俺って凄いと思いませんか?)
フェルンは、そう思った。
悶絶したいのに、理性が大勝利してます。
まぁ、それでも───
(手の掛かるミズキも可愛いなぁ。普段こんな甘え方してこないからね)
彼はミズキフェチなので、理性が大勝利しても、心の呟きはちゃんとブレてない。
ファスナーを上げ終えると、「あら?」と瑞希の声が聞こえてきた。
先程とは違う、いつもの響き。
「おや、醒めたのかな? もう少し酔ってても良かったのに」
フェルンがくすりと笑う先の瑞希は、とても恥ずかしそうに顔を赤らめている。
この様子からして、我に返っても全部憶えているのだろう。
「男の人にファスナーとか上げて貰うなんて……」
恥ずかしい、と言っていたら、茂みがごそごそ動いた。
さっきのペダルムである。
自分の宝物だ、持っていけと謝罪の証を渡すかのように持ってきたそれは───幾つもの、月幸石。
ウライのように好む性質ではないが、集めていたものをお詫びにやるということなのだろう。
いつの間にか変質していることに気づいていないようだが、2人はありがたく受けとることにした。
●翻弄の仕返し
天藍は、目の前の状況に困惑していた。
かのんが、酔っている。
(酒が原因ではないからか?)
酒好きの自分に付き合える程度にはかのんも酒が呑める。
自身の量を弁えているし、加減もしているから、酒であまり酔っ払わない。
が、原因が酒ではないなら、酔ってもおかしくない。
(目のやり場に困る……)
かのんはペダルムと遊んでいる時、動き易いよう夜叉装束「黒桜」を脱いでいた。
それが、ある意味災いした。
舞姫装束「胡蝶華月」の朝焼けの布地はぴったりと肌に張りつき、蝶の舞も全てを隠し切れていない。
(自分から着替える気は……なさそうだな)
甘えるように寄り添うかのんは、天藍に気づいて無防備な笑顔を向けてくる。
腕にしがみつかれると、濡れている分確かな温もりだけでなく、彼女の身体の柔らかさを感じて、衝動に走りたくなってしまう。
「風邪を引くから、な?」
拭ける範囲でかのんを拭こう。
天藍は、手荷物からタオルを出してかのんの髪を丁寧に拭く。
髪から滴り落ちる雫がかのんのかんばせに伝う艶が、強敵の1人だからだ。
大人しく、でも、嬉しそうなかのんは、恥ずかしがっていない。
寧ろ心地良さそうで、自分に甘えているというのが分かる。
普段は控えめ……もう少し甘えてもいいと思っていた。
酔って真逆の姿が見られるのは、少し嬉しいことは嬉しい。
「お礼です」
可愛い笑顔だと思っていると、かのんが天藍の上着を掴んで引き寄せた。
重なるかのんの唇は、まだ水に濡れていて……。
けれど、それ以上に、かのんがしてくれたことに驚きが向かっていた。
かのんからされたのは初めてで、衝動に負けそうになる。
(それは駄目だ)
理性を掻き集め、抱きしめたい衝動に勝った天藍はかのんから離れ、この事態に流されないよう有耶無耶にすべく着替えを促す。
「……天藍はしてくれないのですか?」
「着替えるのが先だ」
小首を傾げるかのんにぐらつきそうになるが、天藍は必死に押し留めて着替えるようもう1回言った。
「着替え終わったら、してくれるんですよね?」
かのんが帯を解こうとして、天藍は慌ててかのんの手を止めた。
「待て、俺から見えない所で着替えてくれ」
「むう、天藍が着替えろって言ったんですー」
素直に言うこと聞いたのにと言わんばかりにふくれている。
その顔も天藍には新鮮で。
(脹れっ面も可愛いが、今考えるのはそこじゃない)
天藍は、今、自分がとても過酷な戦いに身を投じていると思っていた。
目の前の最強の敵は、多くの援軍と共に自分の理性という城に攻撃を仕掛けているような気がする。
「着替え手伝ってくれないんですか?」
「俺が見たらダメだろう?」
「私はいいです」
「俺がダメだ」
そうして押し問答をしていると、かのんの動きがぴたっと停まった。
理性上の問題で出来るだけ見ないようにしていたが、天藍がかのんの顔を見ると、いつもの表情が戻っている。
「酔ってました……よ、ね?」
「とても」
赤面のかのんの問いへ、天藍はほっとした思いで答えた。
このまま続いていたら、色々な意味で危なかったと思う。
「着替え終わったら、声を掛けてくれ」
「はい……」
天藍が背を向けると、素直に応じたかのんが背後で着替え始める。
かのんは慌てているだろうと思うから、「ゆっくりでいい」とだけ言っておいた。
やがて、かのんが着替え終わる。
「あまり気にするな」
天藍が恥ずかしそうなかのんの頭を軽くぽんぽん撫でると、かのんは心地良さそうに瞳を細めた。
先程とは全く違う表情で───
「ああ、そうだ」
天藍の声に反応し、かのんが見上げてくる。
「さっきのお返しを忘れていた」
掠めるようにキスをすれば、かのんの顔は火が出る勢いで真っ赤になった。
(悶々とさせられた仕返し)
その彼らが、手荷物に幾つもの変質した月幸石が紛れていると気づくのはもう少し後の話。
贈り主が気づかない間に消えていたので詳細は不明だが、彼らはお土産と共に帰路へ着くのだった。
●頑張った男
月成 羽純は、抱きつく桜倉 歌菜の対応に追われていた。
「うふふ~♪ 良い気分! 羽純く~ん♪」
「コラ、抱きつく前に服を着替えろ」
羽純が歌菜を押し留めると、抱きつけなかった歌菜は自分の服をまじまじと見た。
「ん~? 本当だ~濡れてる~どうしてだろ?」
(あのペダルム、見つけたらお説教だな)
嬉しそうにコロコロ笑う歌菜を見て、羽純はそう思った。
(濡れて下着が透け……ああ、とにかくまともに見たら負ける……色合いがハロウィンっぽくて服の上からも結構目立つ……って、そうじゃなくて、なるべく見ないように着替えさせないと)
年頃の男子発想が混線したが、このままでは風邪を引いてしまうと羽純は持ち直した。
「だろう? 濡れてるだろ? びしょ濡れだ……着替えないとな?」
「着替え~? やーだ! 濡れてる方が気持ち良いもん♪」
「風邪引くだろ?」
「そうしたら羽純くんに看病してもらう~」
羽純は笑いながらも拒否する歌菜に絶句したが、ふと気づいた。
(酔って我侭になってる?)
少し新鮮さを覚えるのは、歌菜が『いい子』であろうとするからだろう。
両親を喪い、祖父母に引き取られた経緯の歌菜は自分が大事に思う人へは気を遣うし、負担になるのを嫌がる。
羽純だけでなく(恐らく)歌菜の祖父母も、もうちょっと我侭を言っていいと思うこともあるのだ。
(少し嬉しいかもな)
羽純は口元に笑みを浮かべたが、それも一瞬の話。
すぐさま、笑みから残念がる表情へ切り替えた。
「そのままだと、俺に抱きつけないけど?」
「そうなの~?」
歌菜が、露骨に不服そうな声を上げた。
「羽純くんに抱きつけないのはやだ~」
「なら……」
「羽純くんも一緒に濡れよう!」
そう来たか。
羽純は自分の頬がひくつくのが分かった。
歌菜は「いいこと言った!」とかなり得意そうな顔をしている。
「水も滴る良い男になるし~勿論、羽純くんはいつだって素敵だけど~でも、このまま私も抱きつけるし、嬉しいもん♪」
(一瞬でも濡れてもいいかと思った俺、自分自身を殴りたい)
羽純は、心の中でぼやいた。
「駄目だ。ふ、2人とも風邪を引くことになる」
羽純、必死。凄く必死。
歌菜は羽純の理性など知ったことではない様子だが、その言葉に反応した。
「む~羽純くんが風邪引くのはダメ~着替えるね♪」
「分かってくれ……」
直後、羽純は硬直した。
歌菜は羽織っていたかくれんぼカエルパーカーをがばっと脱いだからだ。
ぽいっと脱ぎ捨てた後、下に着ていたディーヴァのトゥインクルドレス☆KANAに手を掛ける。
「目の前で脱ぐな!」
透けているその下着(ハロウィンっぽい感じの奴と見てしまってはいる)をダイレクトで見たら……!
「脱がなきゃ着替えられないよ~?」
じたばた脱ごうとしている歌菜を捕まえ、羽純は荷物から念の為持ってきていた大き目のタオルを歌菜に被せ、背を向けた。
「その中で……!?」
「タオル気持ちいい~」
歌菜、結局俺に抱きついてないか!?
「……眠たくなってきちゃった……おやすみなさ~い……」
「ちょっと待て……歌菜、お前……」
その時には、歌菜は夢の世界の住人。
崩れ落ちる前に抱きとめた拍子で、被せていたタオルがぱらりと落ちた。
「~~ッ!!」
俺の心臓を停める気か。
ドレスは脱ぎかけだったので生まれたままの姿でなく、そこは救いだが。
その後、羽純は見ないようにしながら、必死に着替えさせた。
「疲れた……」
羽純は歌菜を着替えさせ終わった後、いつの間にか変質した月幸石が幾つか置いてあったのを見たが、疲れててそれ所じゃない。
「あれ、羽純くん? 私いつの間に寝てたの?」
やっと歌菜が起きた。
「何で服が変わってるんだろ……私、何してたっけ……?」
「池に落ちたから、着替えさせておいた」
「えっ!?」
酔っていた時の記憶がない歌菜へ安堵しつつ、羽純は一部表現を暈して事実を伝えた。
耳まで真っ赤な歌菜を見て、羽純は将来カクテルを呑ます時は注意しようと心に誓ったという。
●お望み通りの却下
あっという間の出来事だったが中々面倒なことになったな。
グレン・カーヴェルの感想はこのようなものだが、非常に正しい。
何故なら、目の前では───
「なんだかふわふわしててー、たのしーですねぇっ!」
酔ったニーナ・ルアルディが濡れたままで笑ってるからだ。
無防備に座り込んだスカートの裾からは、ブランパピヨンガーターがちらちら見える。
「汚れた時用の着替え持ってきてたろ、それに着替え……」
「きがえるのはやーです、さむいですー」
グレンが言い聞かせるように言ったが、ニーナは我侭にも応じない。
「んなこと言ってる場合じゃないだろ」
「どーしてもっていうならー、ぐれんがぬがせてくださいっ、はいっ!」
※リトルリトルブライドの下に着込んでいるエメラルドフローラは、お約束で透けている。
どうぞと言わんばかりのニーナへ、グレンは頭を抱えた。
「本っ当に脱がせてやろうか、こいつは……っ」
踏み止まっている辺りに、グレンの理性が頑張っていると察することが出来るのだが。
仕方なく、グレンは羽織っていたアラザンコートを脱いだ。
「脱がねーんだったらこれでも被ってろ。上着、気に入ってんだからあんまし汚すなよ?」
ニーナの頭に被せると、ニーナはコートをぎゅっと握り締めた。
「ぐれんのにおいがしますー。えへへ、なんだかぎゅーってされてるみたいですねぇー」
グレンの理性が堪えているとも知らず、ニーナは「そだ」と名案思いついたとばかりに手を打った。
「ぎゅーしましょうっ、ぎゅー!」
「何でいきなりそうなんだよ」
「だってー、さむいんですー、ねっ?」
ニーナはグレンの返答を聞く前に、グレンにぴとっとくっついた。
「やっぱりくっついてるとあったかいですー」
「ニーナ」
グレンは、無理をしない男だった。
「……3回までなら見逃してやる、多分な」
理性を吹き飛ばす行動全般を3回まで見逃すが、それ以降は保障しない発言。
ただし、多分がついているので、3回以前に保障されない場合があるという。
「……しかし、お前酷い酔い方するんだな……」
「?」
「酒呑めるようになっても、絶対に他の奴の前で呑むんじゃねーぞ?」
「ぐれんのまえでならいいんですよねー?」
ニーナが小首を傾げながら、グレンへ問う。
ここまで酷い酔い方するなら、家以外厳しいだろ。
グレンがそう答える前に、ニーナが顔を近づけてきた。
「ぐれんのかおもこんなにちかいし……そーだ、ちゅーしましょう!」
一気に話飛んだな。
酔っ払い相手に何言っても仕方ないけどよ。
グレンがそう思っていると、ニーナは「いいあいでぃあです」とうんうん頷いている。
「さいしょのはふいうちだったから、いままでちゃんとしてくれたことないですー」
「はいはい、いくらでもしてやるよ」
(……大人しくしててくれるんだったらな)
最後にそう付け足し、グレンは彼の内心も知らず無邪気に笑うニーナの額へキスする。
おやすみのキスに対し、ニーナは満足いかなかったのか頬を膨らませた。
「やりなおしー! やりなおしー!」
ニーナが抗議しているのを、グレンは3秒間だけ沈黙した。
「……3回までは見逃したぞ」
「3回? 何のことでしょうか?」
保障期間終了の言葉の返答は、正常に戻ったニーナからだった。
「……えっと、私は一体何してるんでしょう……?」
「やっと目が覚めたか」
憶えていないらしいニーナへ端的な説明をし、グレンはニーナを引き寄せた。
「ほら、こっち向け、お望み通りキスしてやるよ」
「あ、あのー、朦朧としてた時の発言ってことで、今のなしにしませんか?」
「今のなし? 却下だ」
グレンが却下すると、ニーナは「ダメですか」としゅんとなった。
「嫌なのかよ」
「いえ、嫌じゃない、ですけど……」
その言葉の先は、グレンがキスで封じた。
キスの後、自分達の周囲に月幸石が並べてあったのは、ニーナをこうさせた犯人によるものだろうか?
詳細は不明だが、とりあえず、持って帰ろう。
●煩悩の代償
八月一日 智は、目の前の水田 茉莉花を見て思った。
(……そーいや、みずたまりが酔っ払った所は見たことねーっていうのがよーく解った)
うんうん納得してしまう。
何故なら───
「にゃうー、にゃーうー!」
何か呼んでるっぽいけど、言ってることわかんねーよ!
見ないだけあって、酔った茉莉花がタチが悪かった!!
「えっと、とりあえず着替え探すか……」
茉莉花の荷物にないだろうか。
場所が場所だし、有事に備えて持ってきている筈。
智は、(気は進まなかったが)茉莉花のバッグに手を伸ばそうとして───
「あにゃにゃー!」
「ぅえーッ!?」
背中に、おむねの感触がダイレクトォ!!
柔らかい……智、悪くないと思ったその時だ。
「あにゃうにゃにゃー……あにゃー!」
背後から顔を近づけ(背丈の関係で柔らかい感触が移動してくれる訳だが)、顔にすり寄って頬を舐めたかと思うと、一気に齧りついた。
「ウギャー! 痛ってぇ喰うなぁ!」
舐める所までは天国だったが、一気に突き落とされた!
しかし、茉莉花はこれで終わらせてくれなかった。
「にゃーははははは!」
「振り回……うわぁ!」
茉莉花は智に抱きついたまま、彼を振り回す。
腕力はそんなに変わらなくとも、この時は背丈の差が出た。
(すぐに金を貯めて、改造してやる……!)
智は、そう思って耐えるしかなかった。
やがて、茉莉花が飽きて智を振回すのを止める。
「……ぎ、ぎぼぢばるい」
でも、耐えた。
おれは頑張った!
智は自分で自分を褒めながら、バッグの中に上着を見つける。
「とにかくシャツ脱がせ……」
智は大人しくしている様子の茉莉花のワイシャツのボタンを外し───
「谷間万歳!」
鼻血噴いた。
茉莉花の下着はスポーツブラと色気はないのだが、その色気のない下着だからこそ、その良さが見えるのだ。
「にゃーもー!」
ティッシュで止血しようとした智の隙を衝き、茉莉花が智の鼻の頭を噛んだ。
鼻の外側からも出血、内外に渡って、これぞ本当の出血大サービス。
「アバーッ!」
悲鳴を上げている智には、そんな大サービス要らないだろうけど。
さて、シャツは何とか着替え完了……次はズボンだ。
下着? 濡れていたとしてもその着替えをさせる勇気はない。(あったら怖い)
バッグの中からズボンを見つけ、智は悲壮な決意を固めた。
「このズボンも脱がせなきゃ」
シャツより難易度高そう。
そして、その予想は間違っていなかった。
「にゃうっ、にゃうっ!」
茉莉花は智に猫パンチを繰り出している。
ただし、茉莉花は猫ではないので、猫パンチのような可愛い代物ではないのは言うまでもない。
それでも、智は、
「こらっ、ちょっかい出すな、ズボンが脱げ……痛ぇ!!」
(でも、べったり張り付いたしりのライン万歳! ふともも万歳!)
と、殴られながらもガン見していたので、非常に健康的な対応をしていた。
それが何となく分かるから、茉莉花が凄い抵抗するのではないかという説もあるが、智に見るなというのも酷な話だろう。童顔でも身長が低くても中身は29歳男性だもん。
「にゃいーっ!」
「フンゲー! 腕噛むな腕!! って、背中止め……ぎゃああああ」
茉莉花が容赦なく腕を噛み、倒れ込んだ智の背中に馬乗りになって引っかきまくる。
「にゃぐるるるるー……あれ?」
悲鳴を上げまくる智を敷きながら、茉莉花はやっと酔いから醒めた。
見ると、智を敷いており、その智は引っかき傷だらけだ。
「えっとー、あたし何やってたのかしら?」
「手、見ろ……」
茉莉花は智に言われるまま手を見ると、爪には血……あれ、口の中も鉄分の味が?
何があった!?
茉莉花が智から退いて、助け起こすと。
「やい、でがっぢょー……お前、酔っ払うと、タチ、悪いの、な……」
そのまま、力尽きた。
自分が悪酔いしていた事実を知った茉莉花の顔からすーっと血の気が引く。
「い、1番見られたくない姿を……!」
ショックに震える茉莉花を慰めるように、犯人のペダルムが変質した月幸石を幾つかくれた。
君って人は……絶対に酔わない方がいいよ。うん。
依頼結果:大成功
MVP:
名前:水田 茉莉花 呼び名:みずたまり・まりか |
名前:八月一日 智 呼び名:ほづみさんさとるさん |
エピソード情報 |
|
---|---|
マスター | 真名木風由 |
エピソードの種類 | ハピネスエピソード |
男性用or女性用 | 女性のみ |
エピソードジャンル | コメディ |
エピソードタイプ | ショート |
エピソードモード | ノーマル |
シンパシー | 使用不可 |
難易度 | とても簡単 |
参加費 | 1,000ハートコイン |
参加人数 | 5 / 2 ~ 5 |
報酬 | なし |
リリース日 | 09月18日 |
出発日 | 09月24日 00:00 |
予定納品日 | 10月04日 |
参加者
会議室
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2015/09/23-23:40
こんばんは、瀬谷瑞希です。
パートナーはファータのミュラーさんです。
皆さま、よろしくお願いいたします。
プランは提出できてます。
(皆さまの酔い加減がとても気になります…!)
-
2015/09/23-23:40
-
2015/09/23-23:39
-
2015/09/23-22:53
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2015/09/23-21:59
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2015/09/23-00:26
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2015/09/23-00:22
八月一日智でっす・・・いーなー、そっちの神人は、人間っぽさが残ってて。
でかっちょめ、人間ですらなくなっていr・・・フンギャアアアアアアアア! -
2015/09/22-10:15
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2015/09/22-10:15
しばらく振りだな、天藍とパートナーのかのんだ
……素面でこうなら大歓迎だが、原因が原因だけに喜べるもんでもないか
ああ、そこで拗ねなくても良いだろう(かのんの頭撫でつつ)
お互い苦労するな -
2015/09/22-00:09
羽純:
月成羽純です。
パートナーは歌菜…なんだが…
あ、コラ。勝手に何処かに行こうとするな。
どうしてこうなった…。
(コホン)
何はともあれ、風邪など引かぬよう、何とかしないと、だな。
皆さん、宜しくお願いします。 -
2015/09/22-00:07