素直になる薬(東雲柚葉 マスター) 【難易度:とても簡単】

プロローグ

「……ねぇあんた、今度は何得体の知れないモン作ってるわけ?」
 ぐつぐつと煮立つ試験管を真剣な表情で見つめる青年に、少女が声をかける。青年は問われた質問に完結に、そっけなく答えた。
「薬」
 呆れたように少女が溜息をこぼし、
「何の薬よ。前みたいに、神人と精霊を夢の中に送るようなのと同じようなものでも作ってるっての?」
「まさか。確かにアレは素晴らしいものが見られたけど、今回はそれとは違う薬だよ」
 アルコールランプの火を消し、青年は目にかかった前髪を振り払い試験管を覗く。

「今度のは、簡単に言うと『素直になる薬』」

 こいつは何を言っているんだ、という表情で少女は青年を一瞥し、
「素直になる薬ぃ?」
 気にも留めない様子で青年は試験管から容器に薬品を移し替える。
「そう。この薬を神人か精霊どちらかに飲ませる。そうすれば、この薬の効能で素直な言葉や普段言えないようなことを話すようになるんだよ」
「……ふーん、なかなか面白そうじゃん」
 楽しげに笑う青年につられるようにして、また別種類の笑みを浮かべる少女。
「ねね、それあたしも手伝う」
「そういうと思った。手伝ってくれるのは助かるけどさ、ドジとかしないでよ?」
「そんな面白そうなことで、ドジするわけないじゃん」
 ふと、何か思いついたように少女が疑問を口にする。
「そういえば、どうやってこの薬をウィンクルムに飲ませるわけ?」
「そりゃあ、飲み物に混入させるんだよ」
「なんだ、特に計画練ってたとかじゃないのね」
「今回の薬は正直色々と素材集めが面倒だったんだ……」
「ふ~ん」
 薬の入った試験管を持って、二人は室外に向かってゆっくりと足を運ぶ。青年と少女は相好を崩したまま廊下を渡り歩き、カツカツと鳴る革靴とヒールの音だけが廊下に響き渡った。

「ウィンクルム……あんた達の愛が未来を創る姿、しっかりとあたしに見せなさいよ!」


解説

・薬を飲み、事が解決した後、口の中が薬品の味で支配されて気分が悪かったので、新しく飲み物を買いました。300jrいただきます。

・あなた達は、駅前通りを通っていると、新商品のジュースを配っている青年と少女からジュースを受け取ります。その後公園でジュースを飲みます。

・以下から行動を選択してください。
1.神人が薬入りジュースを飲んでしまう。
 神人が素直になる薬を飲んでしまい、素直になって精霊に絡みます。

2.精霊が薬入りジュースを飲んでしまう。
 精霊が素直になる薬を飲んでしまい、素直になって神人に絡みます。


・官能的な方向にはいかないようにお願いいたします。


ゲームマスターより

おはこんこんばんわ! 東雲柚葉です!

今回は素直になる薬を飲んでデレデレしてしまうパートナーにドキドキしちゃいましょう!というコンセプトになっています。
薬に頼らずに、いつも素直になれるのがいいですよね!仲良しの秘訣ですね!

ではでは、また会えますことを心待ちにしておりますっ!

リザルトノベル

◆アクション・プラン

リヴィエラ(ロジェ)

  ※ルート2

リヴィエラ:

むう~…最近ロジェが、何か隠し事をしている気がするのです。
家の外にも独りでは出してくださらないし、
学校も休学しろと仰るの…

(ロジェから事情を聞き)
えっ…それは、本当ですか…? お父様が…?
確かにお父様にお逢いしたい気持ちはあります…でも、
嫌…ロジェ、貴方と離れ離れになるなんて、嫌…っ(泣きながら)

それに…それに、お父様に見つかったら、きっとロジェは殺されてしまうもの…!
(=見つかったら、ヒヤシンスの時のような展開に)
お父様は、私を取り戻す為ならきっと、手段を問わないもの…!

(ロジェに抱きしめられ)
本当です、か…? 私、貴方のものになりたい…っ


リーヴェ・アレクシア(銀雪・レクアイア)
  2
様子が変だな……
飲んだジュースに問題があったか(深く溜息)

大体いつも聞いている内容だな
恋する男の補正とは凄まじいな
下の弟もそうだったし
まぁ、上の弟は尻尾を出さないが
※遠い目でそんなこと考えつつ、銀雪の言葉を聞く

……不安、か
弟達と違うと示すことが出来れば、考慮はするというのは不服かい?
お前は通り一遍等の言葉を聞きたい訳ではないのだろう?
ならば、気概を見せることだ
言っておくが、私は努力しない者は好きではない
男とか女とか関係なく、人として尊敬出来る対等の者を求める
さて、ヒントはやった
人として成長し、いい男になりなさい、銀雪
※いつもと違う言葉に対し

効果切れ
素直に言えて、すっきりしたかい?
※からかう



☆リヴィエラ ロジェ ペア☆
シエンテ家の策略

 隣を歩くロジェの様子が少しおかしい気がする、とリヴィエラは思う。
なんとなくだが、最近ロジェが自分に隠し事をしているような、そんな気がするのだ。
簡単な買い物や、散歩に行くようなちょっとしたことでも、家の外に出るときは絶対に独りでは出してくれない。
終いには、学校も休学しろという。
訝しげにロジェを見つめるリヴィエラだが、ロジェはその視線にも気がつかずに難しい顔で何かを思案している。
(最近シエンテ家の動向をよく耳にする……)
 忌々しげに渋面を浮かべながら、ロジェは思考をやめずに考え続ける。
(恐らく、娘を攫った俺を、リヴィエラの父親が血眼になって探しているのだろう)
 見つかるわけにはいかない。そして見つかったとしても、邪魔だてするものには容赦しない。ロジェは剣に手を伸ばして、いつでも抜刀できる状態かを今一度確認する。
(彼女に心配をかけない為にも、この事は黙っておかなければ)
 先ほどからずっと難しい顔をしているロジェに、リヴィエラは恐る恐るといった調子で、
「ええと、私、何かお気に触るようなことをしましたか……?」
 ロジェの表情を伺うようにして上目使いで問う。
問われてロジェは、はっとしたように顔をあげて、リヴィエラに視線を合わせる。
「いや、リヴィーは何もしていない、大丈夫だ」
 そういってロジェが浮かべる笑顔は、やはりどこかぎこちない。どうしたのだろう、とリヴィエラが思案していると、街角で新商品の飲み物を配っている女性店員がいた。
「あ、あれ美味しそうじゃないですか?」
 ロジェに少しでも元気を出してもらおうと、リヴィエラはロジェのために一本ジュースを貰ってきて、ロジェに手渡す。
「ありがとう、リヴィー」
 リヴィエラに手渡されたジュースの蓋を開け、ごくりと飲む。
 するとロジェは今まで纏っていた重苦しい雰囲気を霧散させて、リヴィエラにもう一度向き直った。
 そして、ロジェは心情を吐き出すかのようにぽつりと漏らす。

「リヴィー……君の父親が、君を捜している」

 突然言い放たれた一言に、リヴィエラは言葉を返すことが出来なかった。ロジェは言葉を返せないで居るリヴィエラを気にすることなく、続ける。
「そして君を攫った張本人である俺を許しはしないだろう」
 ロジェの告白に、リヴィエラは数秒経ってようやく言葉の意味を理解できた。
 だが、真意や理由。そういったものの類が理解できない。
「えっ……それは、本当ですか……? お父様が……?」
 父親が、自分を探している。それがどういう意味なのか。
 リヴィエラは脳裏に、監禁され自由を奪われていた生活を思い出す。今のように人と会話することも出来ず、世界が、空がこんなに広いのだということも知らなかった。人を愛することも知らなかった。
「確かにお父様にお逢いしたい気持ちはあります…でも、」
 父親が自分を探している意味を理解して、リヴィエラは目尻からつぅっ、と一筋の涙を流す。
「嫌……ロジェ、貴方と離れ離れになるなんて、嫌……っ」
 父親の元に帰れば、もう二度とロジェと会うことは出来ないだろう。一生ロジェの姿を見ることも、声を聞くことも――触れ合うことも出来はしない。
「それに……それに、お父様に見つかったら、きっとロジェは殺されてしまうもの……!」
 きっと、と言っておきながらリヴィエラは確信していた。父がロジェを見つければどんな手段を使ってでも自分から引き離し、殺す。
 いつかロジェと見たあの夢のように、自分達は父によって関係を引き裂かれ大切な人を失うことになる。
「お父様は、私を取り戻す為ならきっと、手段を問わないもの……!」
 そんなのは、嫌だ。自分が死ぬことよりも、ロジェが殺されてしまう方がよっぽど怖い。リヴィエラはとめどなく溢れる涙を隠そうともせず、ロジェに訴えかけた。
 リヴィエラの言葉を聞いて、ロジェは、
「……でも俺は、後悔はしていない。君はあの家にいても幸せにはなれない」
 リヴィエラを監禁し、それをおかしいことだとも思わない父親。そんな男に、リヴィエラを返す理由など存在しない。
「実の娘を『忌み子』扱いとは……クッ、笑える……」
 沸々と湧き上がる怒りを顕にしてロジェは口角を吊り上げる。
 実の娘を忌み子として、監禁していたリヴィエラの父親。愛情を注ぐべき対象に、監禁という悪意をぶつけ続けた。そんなものはもはや、親とは言わない。同じ男として女性にそのような扱いをするのも許せない。
 もはや、リヴィエラの親とも、男とも、人間とも思うまい。
 あいつはもはや、名前のない怪物でしかないのだから。
 捕まるわけにはいかない。相手がどんな手を使おうとも。
「何としてでも君と共に逃げ切ってやる」
 ロジェは、泣きじゃくるリヴィエラを強く抱きしめる。
 華奢な身体がロジェの身体と密着し、リヴィエラの小ささが身にしみてわかる。こんな女の子を監禁していたのかと再び父親に対する怒りが湧きあがってきた。
 もう二度と離さない。父親になど、渡してやるものか。
 そんな強い束縛に似た感情をそのまま吐露し、ロジェはリヴィエラの耳元で言い放つ。

「――君は一生俺のものだ」

 リヴィエラは目を見開いて、ロジェの身体を強く抱きしめ返す。
「本当です、か……? 私、貴方のものになりたい……っ」
 固くお互いを抱きしめて、何があろうと逃げ切る。そう、固く決心する。
 だが、ロジェはリヴィエラを抱きしめながら、また違う決心を固めていた。
(俺は殺されても良い。でも死ぬ時は、あの父親も道連れだ)
 命を捨ててでもリヴィエラだけは必ず守ってみせる。けれど自分が死んだ後の世界にあの父親を残してはいけない。
 確実に、殺す。どんな手を使ってでも、道連れにしてでも。
 自分の身を犠牲にしてでも、あの男を地獄に引き摺り落とす。
 二度と、リヴィエラを監禁なんてさせない。望まれない存在だなんて言わせない。望まれないはずがない。だって、リヴィエラは、リヴィーは、俺が愛するたった一人の女性なのだから。
(リヴィエラに手を出すのというのなら、いいだろう。……覚悟しておけ)
 ギリリ、と歯噛みをしてロジェは獣のような双眸を覗かせる。
(俺がお前に壊される前に、――俺がお前を完膚なきまでに叩き壊してやる)
 リヴィエラには見せられない、鬼のような形相でロジェは決意するのだった。









☆リーヴェ・アレクシア 銀雪・レクアイア ペア☆
 素直になってもやっぱり。

 街角で配られていた、新商品とされていた飲み物。リーヴェ・アレクシアはそれに手をつけることはなかったが、銀雪・レクアイアはそれをすでに飲み干していた。
 普通の飲み物だったならば、別に普通のことだろうと思う。けれど、普通ではない。銀雪の調子を見て、リーヴェは無言で佇む。
 誰がどう見ても、銀雪の様子がおかしい。リーヴェは銀雪が手に持つジュースを眺めて、あのジュースを飲んだのが問題だったのか、と思案し深い溜息をついた。
 どうやら、なにやら心情に作用する効果のある薬か何かが入ったジュースのようで、やや早口の口調で銀雪がリーヴェに語りかける。
「リーヴェ、好きだよ。綺麗で凛々しくて輝いていて。振る舞いひとつひとつがカッコ良過ぎる……」
「微笑む姿も女神みたいに綺麗だし、声も凛としてて素敵だ」
「透き通ったような金髪もとても目を引くし、スポーツをする姿もカッコ良い……!」
「特に、水泳をしている時のリーヴェはとても素敵だよ! ずっと眺めていたいくらい」
「もう非の打ち所がないくらい素敵だよ、リーヴェ……!」
 素直な感情の吐露に、べた褒めの嵐。
 延々とエンドレスレコーダーのように褒め言葉を並べる銀雪に、嫌な気分こそしないもののリーヴェはやや辟易とする。
 銀雪の言う言葉は、おおかたいつも聞いている内容だ。
(恋する男の補正とはすさまじいものだな)
 リーヴェはそう胸中で呟き、ふと、
(そういえば下の弟もそうだったな。上は尻尾を出さないが……)
 過去の記憶を掘り起こすように、遠い目をして銀雪の言葉を聞いていたリーヴェ。
 あと何分かしたら薬の効果が切れ、元に戻るだろうと考え曖昧な返事しか繰り返していなかった。しかし、
「でも、俺はリーヴェが好きだけど、リーヴェが俺を好きになってくれるか不安なんだ」
 銀雪は俯きながら、ゆっくりとリーヴェに視線を合わせる。自分はこんなにもリーヴェのことが好きだけれど、リーヴェが俺を愛してくれるのだろうか? そんな不安を胸中に蟠らせた銀雪の問い。
 注いだ愛情の分だけ、自分の心の中で愛されたいという欲求が確かにある。愛を注げば注ぐだけ、自分の中の何かが抜け落ちていくかのような錯覚に陥るのだ。
 表情を曇らせ、不安そうにする銀雪。そこにリーヴェは、
「……不安、か。弟達と違うと示すことが出来れば、考慮はするというのは不服かい?」
 銀雪の返答を待つことなくして、リーヴェは、
「お前は通り一遍等の言葉を聞きたい訳ではないのだろう? ――ならば、気概を見せることだ」
 そう、言い放った。
 『気概を見せろ』そう言われて、銀雪はふと思う。
 気概というものの具体的なことはわからないけれど、それを達成することが出来ればリーヴェは自分を愛してくれるのかもしれない。
 気概を見せることが出来れば、リーヴェは自分に好意を向けてくれるのだろうか?
「俺、リーヴェの好きな人になれる?」
 考えがそのまま口をつく。同時に心が苦しくなるほどのリーヴェへの愛が押し寄せ、銀雪は自分の胸の辺りをぎゅっ、と掴んだ。
「リーヴェが好き過ぎて、俺は怖いんだ」
 過ぎる愛は身を焦がし滅ぼす。よくそんな話があるが、銀雪はもしかしたら自分もそうなるのではないかと思ってしまうのだ。リーヴェを、愛しすぎるが故に。
 けれど、そんな銀雪に対して、リーヴェは強い口調で言い放つ。
「言っておくが、私は努力しない者は好きではない」
 その言葉には凜とした雰囲気がまとっており、そこに反論の余地が介在しないことはすぐにわかった。
 そこに例外はなく、ただひとつの妥協もゆるさない。そんな揺るぎのない自信と重みがリーヴェの言葉には宿っていた。
 捉え方によっては、銀雪の好意を否定したようにも見て取れるが、そうではない。リーヴェは、好意を寄せることが出来る者の条件を提示しているだけで銀雪を否定しているわけではないのだ。
 銀雪はリーヴェの気品に満ちた姿に見惚れながら、続く言葉に耳を傾ける。
「男とか女とか関係なく、人として尊敬出来る対等の者を求める」
 男女もなにも関係ない、尊敬出来る対等の者を求める。それはつまり、リーヴェと同等かそれ以上の存在になる必要がある。いや、尊敬というのだからリーヴェを遥かに越すのが前提ということだろう。
「……さて、ヒントはやった」
 先ほどまでより、少しだけ表情を和らげてリーヴェが続ける。
「人として成長し、いい男になりなさい、銀雪」
 諭すように語り掛けるリーヴェの言葉に、銀雪は神に信託を受けたかのように喜びに満ち満ちた表情を形成する。
 成長して、いい男になればリーヴェに愛してもらえる。そう考え、銀雪は、
「頑張る。頑張るから、待ってて!」
 必ず、リーヴェにふさわしい男になってリーヴェと愛し合う。そのためには、たくさんの努力を積み重ねていかなくてはならないだろう。でも、リーヴェに愛してもらうために。リーヴェと愛し合うために必要なことなら、頑張れる。
 血反吐を吐くほどの努力を重ねる必要があるかもしれない。途方もない崖を上り続けるような努力をしなければならないかもしれない。リーヴェの背中は、とても遠くにあるのかもしれない。
 でも、それでも。
 銀雪は、頑張ろう、と強く心に決めた。
 ――と、同時に気分の高揚が一気に冷め、呆然と佇んだ。
(………………あれ?)
 今まで自分は何を喋っていたのか、一瞬理解が遅れたが、すぐに記憶を取り戻すかのように理解する。
 胸中に蟠るリーヴェの想いの言葉が、口から零れ落ちない。想いが変わっているわけではないが、どこで言うべき言葉なのかということを考えられるようになった。
 銀雪が口にした、素直になる薬の効果が、切れた。
 どうやらそれにリーヴェも気がついたようで、優しく微笑みながら銀雪にいたずらっぽく囁きかける。

「素直に言えて、すっきりしたかい?」

 いつもの、からかう口調と表情だ。そう思って銀雪は咄嗟に負けじと今までの自分が発した言葉を思い出さないように努力するが――、
 お酒とは違って記憶はきっちりと引き継がれているようで、先ほどまでリーヴェに吐き続けていた言葉が一気に思い起こされて我慢の限界が訪れる。
 そして、リーヴェの『素直に言えて、すっきりしたかい?』という言葉が脳内で反響し、途端に銀雪の顔が耳まで真っ赤に染まった。
 それを隠すように頭を抱え込んで、銀雪は身悶えする。
(俺何でいつもこうなの……!)
 素直になる薬を使っても、銀雪はリーヴェには勝てないのであった。








*              *               *


「今回の薬の効果はちゃんとしていたみたいだね」
 売り子に扮装していた少女に青年が声をかけ、少女が笑う。
「いいもの作るじゃん。これ売り始めたら大もうけできるんじゃない?」
「くだらないよ。僕はウィンクルムにしか興味ないよ」
 金にも目を眩ませない青年の言葉に、少女はくすりと笑った。
「ホント、そのへん揺らがないよね」
「僕が興味あるのは、ウィンクルムの愛だけだからね」
 道端を歩く人々を、石ころのような蔑んだ視線で一瞥して青年は呟く。
 そこでふと、少女は疑問を口にしてみた。
「そういえば、なんでそんなにウィンクルムに執着してんの?」
 少女の疑問に、青年は無表情のままただ淡々と、
「そんなの、この世に輝いてる希望だからに決まってるでしょ?」
 口の端を裂くように笑って、青年は自分の前髪を邪魔そうに弄ぶ。
 そうして、真意を測りかねている少女に向かって続ける。
「僕はね、昔ウィンクルムに命を救われてるんだ。オーガからの攻撃を、僕の為にかばって受けた」
「精霊の方は即死だった。オーガに頭を殴られちゃってさ。あれは素人の僕でもわかったよ、即死だ、ってね」
「僕は震えたよ。精霊を失った神人が、僕を糾弾するんじゃないかってね」
「でも、その神人はそんなことはしなかった。新しい精霊と契りを結ぶこともせず、僕を糾弾するわけでもなく……大して力もないのに、正義感だけでオーガに立ち向かって死んだ」
 白い首元に伸びるネックレスを指で弄りながら、青年が狂った笑みを浮かべる。
「そこで思ったんだ。ウィンクルムの愛は、どれほどのものなんだろうって。僕みたいな人間を助けて、世界を救い続けているウィンクルムって存在の愛は、どんなものなんだろうって!」
「だから僕は、ウィンクルムの愛を試し続けるよ。――永遠にね」
 青年の告白に、少女は笑みを絶やさずに言う。
「ウィンクルムも面白いけど、やっぱりあんたも面白いわ」
 くすくすと笑いながら口元を手で覆いながら、少女は呟く。
 そして、青年の光のない双眸を見つめて、
「あんたとウィンクルムの未来、あたしが見守っててあげる」
 そう言って少女は、気だるげに立ち去る青年の後を、楽しそうに追いかけるのだった。



依頼結果:成功
MVP
名前:リヴィエラ
呼び名:リヴィエラ、リヴィー
  名前:ロジェ
呼び名:ロジェ、ロジェ様

 

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター 東雲柚葉
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 女性のみ
エピソードジャンル コメディ
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 とても簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 2 / 2 ~ 5
報酬 なし
リリース日 08月31日
出発日 09月05日 00:00
予定納品日 09月15日

参加者

会議室

  • 銀雪:
    そっか、ロジェも飲む側なんだね。
    後味が良くないみたいだけど、飲むのを頑張ろう!

    あ、俺のことは銀雪でいいよ。大丈夫。

    ……後味が良くないっていうけど、どういう味なんだろう。
    ますますリーヴェには飲ませられないけど、でも素直なリーヴェも見てみ(ばきっ)

    リーヴェ:
    (張り倒した人)
    すまないね。これはどうも時折(?)突っ走る傾向があるんだ。
    飲む者同士、仲良くしてあげてくれ。
    2人共、流しそうめん以来になるが、よろしくな。

  • [2]リヴィエラ

    2015/09/03-12:40 

    ロジェ:
    俺はロージェック・イクサリス。ロジェで構わない。
    パートナーはリヴィエラという。
    歳も近いし、その…銀雪と呼んでも良いかな。

    リヴィエラ:
    まぁっ! うふふ、照れていらっしゃるの?

    ロジェ:
    …っ! 照れてない!
    ジュースを飲むのは俺だから、俺も挨拶しようと思ったんだ。
    宜しくな。

  • 銀雪:
    銀雪・レクアイアだよ。よろしくね。
    パートナーは、リーヴェ。

    いつもはリーヴェが挨拶なんだけど、今回は俺が飲むから、俺が挨拶しようと思って。
    よろしくね。


PAGE TOP