精霊が何を言っているのかわからない件(東雲柚葉 マスター) 【難易度:とても簡単】

プロローグ

「あらぁ、あなたすごくお疲れな顔してるわよぉ」

 街中をふらふらと物色しながら二人で歩いていると、客寄せの店員に声をかけられた。ショートヘアに真っ赤な口紅が印象的だ。女性の容姿をしてはいるが、剃られていないすね毛と顎鬚によって店員が男性だということを物語っている。
 普段なら気にせず素通りするところだったが、店員の胸中を見抜くような言葉に反応してしまい、視線を合わせたのが運の尽き。
 気がつけばバーに入っていた。
「お疲れ様、今日も頑張ったのね。それで、どうしてそんなにお疲れちゃんなのかしらぁ?」
 何を言っても受け入れてくれるような器量が見え隠れする店員に、ぽろぽろと愚痴をこぼしつつ、酒を飲んでいく。
「そうそう、不安や愚痴は溜め込まず吐き出すのが一番なのよ」
 店主の気持ちのよい受け答えに、何本もワインを空けてはごくごくと飲み干す。
 いい飲みっぷりだと感嘆する店主と、会話がヒートアップしていくあなた。精霊も少しずつ出来上がっていく。

「そうよね! そういうヤツにはガツンと言ってあげなさい! あなたが溜め込む必要はないわよ!」

 あなたは、店員と精霊と会話を続けながら、さらに飲み続けるのであった。
 夜はまだまだこれからだ。

解説

・飲み代として、800jr頂戴いたします。
・神人が20歳未満の場合は、ジュースを飲んではいたものの、お酒の匂いで酔ったということにします。
・神人と精霊がバーでお酒を飲み、何かとごたごたと展開していくシナリオとなっています。
・泥酔状態なので、とんでもないことを口走ったり、脱いだり、デレデレだったりと普段言わないようなことを言い続けます。普段見られない神人の一面を見て、精霊との新密度が上昇するかもしれませんね。はたまた、精霊の方がべろんべろんに酔ってしまうかもしれません。
・他のプレイヤーさんとの接触はありません。

・以下の選択肢から、行動をお選びください。

1.酔った神人が泣き上戸などで感情を爆発させ、デレたりします。
特に感情の制約はないので、好きなように感情を爆発させちゃってください!

2.酔った精霊が泣き上戸などで感情を爆発させ、デレたりします。
特に感情の制約はないので、好きなように感情を爆発させちゃってください!

3.二人で何杯お酒(未成年の場合はジュース等でもOK)を飲めるか競争をし、負けた方に勝った方がなにか罰ゲームを与えます。
服を上半身だけ脱ぎだす、キスなどその程度ならばOKです!
ディープキス等の直接的な表現にはお答えしかねます。



ゲームマスターより

男性側でははじめまして、東雲柚葉です!
今回で四作品目の投稿とさせていただきました!

いやはや、お酒の力は偉大ですよね。
神人は酔った時どのような反応をするのか……そして精霊はどのような反応をするのか、私とても気になります!

ではでは、何卒よろしくおねがいいたしますっ!

リザルトノベル

◆アクション・プラン

アキ・セイジ(ヴェルトール・ランス)

  ・ほろ酔い(先にランスが本格酔いになったので自然と飲まずに
・自宅ではワインをたまに(赤白ロゼは気分で

◆行動
ランスの仕事の悩みやグチを何時の間にか聞いてる俺が居る

不規則な仕事だもんな
お客さんに気持ちよいサービスをってのは大変だと思う
少なくとも、俺にはランスの仕事はできそうにないよ

ランスはどうして今の仕事を選んだんだ?

楽しいこともやりがいもあるんだろ?
そうでなきゃ続かないんじゃないのか?
俺はバイトしかした事ないからよく分からなくて

酒ではなく水を差し出す

んー、客として店に行くのは嫌だな
それより家飲みとか2人で居酒屋とかの方が良いな
安く上がるだろ(笑

それに…営業用のランスより、そのままが…いい(小声)



セイリュー・グラシア(ラキア・ジェイドバイン)
  1.オレが酔った。

ラキアが酔った所を見たい!と下心を出したのは認めよう。しかしラキアが結構酒に強かったんだ…。
気が付いたらオレ何か色々ぐーるぐーると廻っているような、そうでないよーうーな。うな。

「ラキア大好きだー!」と勢い良く抱きしめよう。
「作ってくれるご飯も美味しいし。優しいし」とラキアの頭をわしわしっと撫でる。
「だからラキアももっとはっきり言っていいんだゾ」と絡む。
※ラキアもオレの事が大好きだーと信じて疑っていない。
「ラキアのお蔭で危険な任務にも安心して行けるんだ。だからずっとずっと一緒に居ような」
ぴとーっとくっつく。ほっぺにすりすり。ちゅっ。
ほっぺた見たらしたくなった!もう一度抱きしめ。



蒼崎 海十(フィン・ブラーシュ)
  オレンジジュースを飲んでいたが、お酒の匂いで酔う

あれ?フィンが二人?
二人のフィンに囲まれるなんて…贅沢だな(ほんわり)

お酒なんて飲んでないぞ?
なぁ、フィン
俺…凄く熱い
(と言いつつ、甘えるようにフィンにべったり)
脱いでもいいか?
だって熱いから…(上半身衣服を脱ぎ捨てる)
フィンも熱いだろ?脱ごう?(にこにこ笑顔で服に手を掛ける)
熱いの…俺だけ?
フィンは冷たいのか~?(ぎゅっと抱き着く
んー…冷たくない…温かいし…何かいー匂いがする
安心する…

俺、フィンが…好きだ
(フィンの頬に唇寄せ)
フィンとこうしてると…幸せで…気持ち良い…
フィンと出会うまで独りで…
フィンと離れたくない
好きだ
(彼を引き寄せ口付ける)


鳥飼(鴉)
 
(カウンター席、鴉の右隣
「かりゃすさ~ん」(訳:鴉さん)(右腕に抱き着く
「よってにゃいれす~」(訳:酔ってないです)(額をぐりぐりと二の腕に押し付ける

(じー、っと鴉を見つめる
「ふふー、えいっ」
(目が合って嬉しくなり、鴉の頬にキス
(ぐでんと、寄りかかる

「かりゃすさんはぁ、ひょっとつめたいれすけりょ」(訳:鴉さんはちょっと冷たいですけど)
「やしゃしーいんれす」(訳:優しいんです)
「ふふー、だいしゅきれす」(訳:大好きです)

「あー、うらがってますにぇ?」(訳:疑ってますね?)
「ほんとにゃんれすからー!」(訳:本当なんですから!」

(数秒して意味を理解し、ふわりと嬉しそうな笑顔
(再び額を押し付けて懐く



新月・やよい(バルト)
  2.バルトが酔います

バーは初体験
バルトと飲むのも初めて

子供っぽくないよう言葉選んで話てた
何だかバルトの様子が変?
酔い冷ましのドリンクを定員さんに頼んで
手洗いから戻ってくれば行き成りの事に硬直

ど、どうしました?
何時もと違う声色で囁かれたら、耳まで赤面
それでも君の言葉を聞き逃さぬように
静かに君の背中を撫でる

店員さんからお水を受け取って
ありがt…むぐぅ
御礼も言えやしない

寂しかったんですよね?
君のなすがまま撫でる
「いつでも甘えてくれていいですからね」
お酒がなくっても

店員さんに大丈夫かと聞かれたら
エヘヘと笑いながら答える
『惚気てるだけですので』
痛いのも、恥ずかしいのも、今は我慢
素直じゃなかった、僕への罰



☆蒼崎 海十 フィン・ブラーシュ ペア☆
神人デレデレ

 蒼崎 海十の表情が少しずつとろんと甘いものに変わってく。
 飲んでいるのはオレンジジュースの筈なのだが、どうやらお酒の匂いで酔ってしまったようだ。
 ほわほわとした視線をフィン・ブラーシュにそそぎ、
「あれ? フィンが二人?」
 目をこすって夢か現かを確かめているようだが、既に意識が混濁としているらしく、
「二人のフィンに囲まれるなんて……贅沢だな」
 海十はほんわりとした表情で虚空とフィンを交互に見つめている。
「……俺が二人?」
 よくわからないことを口走る神人の眼前にひらひらと手を振るが、どうも反応が薄い。
「海十、もしかしなくても酔ってる?」
「お酒なんて飲んでないぞ? だから、酔ってない」
 酔っている人の常套句を口走りながら、オレンジジュースを飲み干す海十。
(確実に酔ってるな)
「なぁ、フィン」
 海十の突然の呼びかけに、フィンが返事をしようとしたとき、
「俺……凄く熱い」
 とろんとした表情で、色艶やかな雰囲気を醸し出す海十。しかもその表情のまま甘えるようにべったりとくっついてくる。
「脱いでもいいか?」
「ちょ、海十! こんな所で脱がないの!」
「だって熱いから……」
 海十が衣擦れの音を響かせながら、ゆっくりと衣類の下から腹部から順に素肌を覗かせて行き、そして――上半身の衣服を脱ぎ捨てる。
 フィンは慌てて自分の上着を海十にかける。海十の裸を自分以外の他の人に見せるなんて以ての外だ。上着をかけてもらった海十は何かを思いついたように、
「フィンも熱いだろ? 脱ごう?」
 フィンの上着に手を伸ばす。今にも服を脱がそうとする海十の手を掴んで、
「俺は大丈夫」
 優しい動作で止める。
「熱いの……俺だけ?」
 うむむ、と海十はさらに頭を回転させ、ついに答えを思いついたようにぱぁっと顔を明るくさせて、
「フィンは冷たいのか~?」

 予備動作も何もなく、海十は唐突にフィンへと抱きついた。
 
 突然抱きつかれて、フィンの心臓が突かれたかのようにドキリと心拍数を上昇させる。
「んー……冷たくない……温かいし、何かいー匂いがする。それに……安心する……」
 海十はフィンを抱きしめながら、フィンの首元で鼻をくんくんと動かす。抱きしめられたフィンは海十を抱きしめ返して、ふと微笑を浮かべる。
「……海十も温かくて良い匂いがするよ」
 少しやり返してみようと考えたフィンは、海十の耳元で優しく囁いた。
「海十……俺だって、海十と一緒に居る時が一番幸せだよ」
 少し頬を紅潮させながら仕返しをやってのけたフィンだったが、フィンの言葉を受けて、さらに海十が呟く。
「俺、フィンが……好きだ」
 耳元近くで囁かれ、フィンの鼓動が一気に跳ね上がる。お酒よりも、海十に酔ってしまいそうだ。
 海十はさらにフィンの頬に唇を寄せ、
「フィンとこうしてると……幸せで……気持ち良い……」
 続け様に、海十はフィンを抱く力を強めながら呟き続ける。
「フィンと出会うまで独りで……」
 過去を走馬灯としてみているかのような双眸で、海十がぽつりと漏らす。
「フィンと離れたくない」
 少し痛みを感じるくらいの力で抱きしめる海十。そして、
「好きだ」
 そう呟き、――両肩を抱き寄せてフィンの唇に自分の唇を重ねた。
 目を見開いて驚くフィンだったが、すぐに微笑を彩らせながら海十の言葉に返答をする。
「好きだよ」
 そうして、今度はフィンから海十を強く抱きしめ、

「大丈夫、俺はずっと海十の傍に居る」

 そう力強く呟いた。




「ほら、海十。少し冷たい水を飲んで」
 完全に酔いが回ってしまった海十に、フィンが水を手渡す。
 しかし、自分では飲めるような状態ではないようで、フィンが手伝いながら飲ませることにした。
「口開けて」
 手間取りながらも水を飲ませることが出来、海十は静かに寝息を立てながらカウンターに突っ伏してしまった。
 その寝顔を眺めながら、フィンはぽつりと嬉しそうに呟いた。
「ふふ、いつもこれくらい素直に甘えてくれたらいいのにね」








☆セイリュー・グラシア ラキア・ジェイドバイン ペア☆
神人デレデレ

 セイリュー・グラシアは、お酒のグラスに口をつけながら後悔の念をざわつかせていた。
 ラキア・ジェイドバイン――ラキアが酔っているところを見たい! という下心があったのは事実で、ラキアにたくさんお酒を飲ませていたが、逆に自分が酔いつつあると自覚する。
「ラキア、結構酒に強かったんだ……酒弱そうなのに……」
 セイリューに微笑を浮かべながら、ラキアが微笑を浮かべて言い放つ。
「ん? 精霊が見たとおりと思っちゃ駄目だよ」
 微笑を形成したまま、ラキアが続ける。
「俺、実年齢は20歳超えてるし。お酒も弱くは無いよ」
 その一言に驚いたような打ちひしがれたような表情をしたセイリューに、ラキアはにこりと笑って見せた。
 確かにセイリューがやけにお酒勧めてくるなとは思っていたけれど、同じように飲ませていたら、
「セイリューの方が先に酔っちゃったみたいだね」
 楽しそうに笑って、事実を突きつけるラキア。
 ラキアの言うとおり、気が付けばセイリューの視界は何か色々ぐーるぐーると回っているような、そうでないようなというよくわからない状態に支配されていた。
 完全に酔いが回ってしまっている。意識ももはや判然としない。このままでは、自分がどのような行動をするかわかったものではない、と思案を巡らせたのと同時に、

「ラキア大好きだー!」

 がばぁっ! とセイリューが勢いよくラキアを抱きしめた。
 突然のことに少しだけ驚くラキアだったが、すぐに平静を取り戻し、
「力入れすぎると痛いよ、セイリュー」
 振る舞いが明らかに酔っているそれだ。
(そっか、結構セイリュー酔っているから、何を言っても後で覚えていないかも)
酔って歯止めの利かなくなっているセイリューを見て、ラキアを胸中の中で静かに頷く。
(それなら、普段言ってあげてない事も言っちゃっても良いかなー)
 それから、と声に出さず心の中で呟いているのにも関わらず照れくさそうに、
(普段だと色々照れくさくて言えないこととか)
 セイリューはそんなラキアの胸中を知ってか知らずか、突然ラキアの頭をわしわしと撫で始めた。
「作ってくれるご飯も美味しいし。優しいし!」
 頭を撫でながら、茶化すようにしてセイリューが笑う。
「だからラキアももっとはっきり言っていいんだゾっ!」
 ラキアの言葉を待つようにして、頭を左右にふらふらと楽しそうに揺らす。
「はいはい、大好きだよー、セイリュー」
 そう言いながら、頭をゆらすセイリューの頭を撫で返す。頭をゆらしていたセイリューは撫でられると動きを止め、うんうんと嬉しそうに頷く。
 その頷いている動作が微笑ましくて、セイリューがふふ、と微笑をこぼす。
「ラキアのお蔭で危険な任務にも安心して行けるんだ」
 セイリューが屈託のない笑みを浮かべ、ラキアを楽しげに見つめる。
「だからずっとずっと一緒に居ような」
そう言ってセイリューがラキアにぴとーっとくっつく。そのままほっぺ同士をこすり合せる、――ちゅっ、と口付けをした。
その後続けるようにセイリューがラキアにぎゅーっと抱きつく。
「ホント裏表無くて可愛いよセイリュー」
 ラキアは、セイリューの行動が微笑ましく、愛おしく感じ――頬にキスの仕返しをした。
 今までやられっぱなしで、何か負けているような申し訳ないような気分に襲われ、今度はラキアが優しい笑みを浮かべて呟く。

「ずっと一緒だよ」

 驚いたようにセイリューが目を見開き、その言葉を噛み締めるように嬉しそうな表情を形作る。
 互いに優しい微笑を浮かべながら、優しく抱きしめあう。
 お酒で何を言ってもおぼえてなさそうだから、という状況で言うのはそれこそ少々不平等なのかもしれない。
 だから、セイリューが酔いから覚めたら少しくらい照れくさい本音を言ってあげてもいいのかもしれない。
 けど、今日は照れくさいからこれで許してほしい。
そう胸中で呟いて、ラキアがセイリューの頬に優しく口付けをした。








☆鳥飼 鴉 ペア☆
神人デレデレ

 お洒落なカウンター席に座り、鳥飼はすでに出来上がった様子で鴉を見つめていた。
 鴉の右隣に座る形で腰をかけている鳥飼は、ふにゃあ~と蕩けたように鴉の右腕に抱きつき、甘く言葉を吐き出す。
「かりゃすさ~ん」
 既に何を言っているのかわからない鳥飼に、鴉は、
「飲み過ぎです、主殿」
 飲みすぎだと諭されて、鳥飼は甘える猫のように額をぐりぐりと鴉の二の腕に擦り付けながら、
「よってにゃいれす~」
 鳥飼の思いっきり酔っている反応に、はぁ、と一つ溜息をついて、
「これが酔って無いなら何だと言うのです」
 と呆れたような困ったような顔で鴉が呟いた。
 どうしたものか、と鴉が思案していると、何やら突き刺すような視線に気がつく。
 見れば、鳥飼がじーっ、と鴉を見つめていた。鴉は凝視に気づき、怪訝な顔を形成する。
「何か」
 鴉が鳥飼を見やると、鳥飼は嬉しそうに微笑んで、
「ふふー、えいっ」

 と、唐突に頬へキスをした。

「は?」
 トランス状態へ移行するとき以外での、初めての頬へのキス。トランスという名目の無い自発的に行ったキスに、鴉は若干高圧的にとられてしまいそうな言葉を発してしまう。
 しかし、鳥飼は機嫌を落とすことなく、鴉にぐでんと寄りかかる。
 鴉は鳥飼に視線を向けた後、左手で困ったように顔を覆い、俯いて大きく溜息をつく。
 その溜息に負けじと、鳥飼はろれつの回っていない口調で続け様に話し続ける。
 何を言っているのか判別がつかないようなろれつだが、鴉にはちゃんと意味も言葉もきちんと伝わっているので、会話としては成立している。
「かりゃすさんはぁ、ひょっとつめたいれすけりょ」
鴉さんはちょっと冷たいですけど。
「やしゃしーいんれす」
優しいんです。
「ふふー、だいしゅきれす」
ふふー、大好きです。
脳内で訂正しながら、言葉の意味を受けて溜息をつく。
「酔っぱらいの戯言かと思えば……」
 鴉は溜息と同時に吐き出すようにしてそう呟き、
「あなたはいつもそうだ」
と、過去を垣間見ているようにして、鳥飼を見つめる。
鳥飼は、いつも幼子のように真っ直ぐ好意を向けてくる。真っ直ぐな好意を向けられるとむず痒いような嬉しいような気持ちが心をくすぐるのだ。
これが恋愛感情での言葉なら躱しようもあったものを。そう鴉は胸中で呟く。
 鴉の複雑な心境を何と勘違いしたのか、鳥飼は、
「あー、うらがってますにぇ?」
 と、またもろれつの回っていない口調でぷんぷんと怒ったように言い放つ。
 ちなみに、鳥飼は「疑ってますね?」と言っている。
「ほんとにゃんれすからー!」
本当なんですから!
「わかりましたから騒がないで下さい」
 筋肉弛緩剤でもお酒に混入していたのではないだろうな、と疑いたくなるほどにろれつが回っていない鳥飼に、鴉は今日何回目ともしれない溜息をこぼす。
(……疑うも何も。むしろ疑えたならどれほど)
 疑う余地もないほどに屈託の無いその笑顔は、鴉に疑う気を失せさせる。
 そして、その笑顔に感化されるようにして、

「私もあなたの事は好きですよ」

 言って、今自分は何を言ったのか、と思考が働きはじめるが、もう言ってしまったのだから考えても仕方が無い。
 鳥飼の心配ばかりしていたが、どうやら自分もお酒に酔っているようだ。
 鴉に好意を告げられた鳥飼は、数秒意味を図りかねるようにぽかんとしていたが、意味を理解したとたんに、ぱぁっ、と花を咲かせるように笑う。
 確かに、自分が好意を告げれば鳥飼は喜ぶとは考えてはいたが、鴉は鳥飼の表情を見て素直に驚いた。これほどまでに嬉しそうな鳥飼の顔ははじめてみるかもしれない。
 鳥飼は、その心底嬉しそうな幸せそうな顔のまま、再び鴉にぐりぐりと額を押し付ける。その様子はまるで懐いた猫のようで、とてもかわいらしい。
 嬉しそうな笑顔と、かわいらしい動作をする鳥飼を見て、鴉は先程と同じようにして顔を覆う。
 ただ、一点違うことといえば。
 ――お酒とは別の意味で、鴉の頬がほんのりと赤くなっていた。








☆新月・やよい バルト ペア☆
精霊デレデレ

 新月・やよいは入店当初、はじめて入るバーの景観にとても興味を惹かれていた。お洒落な中にただようアダルトな雰囲気。いかにも色気の強いおじさまやお姉さんが居そうな場所だ。
会話をするときも、雰囲気を味わうためになにやら子供っぽい言葉を使わないよう注意を払ってしまう。
 そして、新月はふと、そういえばと思い出す。
 こうしてバルトの飲みに来るのは、はじめてではないか? と。どうやらバルトも同じことを考えていたようで、二人は最初の一杯を注文した。
 ……それから約二時間が経過し、新月はバルトを見て疑問を抱く。
(何だかバルトの様子が変?)
 怪訝そうな顔をする新月に気がついて、バルトもふと思い起こす。いつもは気をつけていたのに、今日は飲みすぎている。気がつけば、酔いが回ってしまっていた。
 酔いが回っているバルトを気遣って、新月は酔い冷ましのドリンクを定員さんに頼んで、注文した商品が届く時間を使い手洗いへと席を立つ。
 手洗いをすませ、新月が戻る。どうやらまだ飲み物は届いていないようだ。結構人入りもあるし、それもそうかと考えて、新月はバルトが座る席の隣へと歩を進めた。
すると、バルトが席に戻ってきた新月を手招いた。何事だろう、と新月が席に着くと、バルトが新月の細い腰に手を回して引き寄せる。
バルトは、驚く新月の肩に顔を埋めて、深呼吸。
「ど、どうしました?」
 問う新月に、バルトは一言、「離したくない」と呟く。そして続け様に、
「……貴方が、俺を見ないから」
 いつもと違う声色バルトの声で囁かれ、耳まで赤面する新月。だが、それでも新月はバルトの言葉を聞き逃さず、静かにバルトの背中を撫でる。
久々に会って、一緒に酒を飲んで、新月はとても嬉しそうだ。けれど、バルトはそれだけでは満足できなかった。
もっと俺を見てほしいという感情が沸き起こり、ゆっくりと新月に体重をかける。
バルトは、新月と会えない間、新月の事を心配したり、会う口実を探したりしていた。今日一緒にお酒を飲んでいる中で、『逢いたかった』くらい言ってくれないのかと考え続けていたが、いまだその言葉は無い。
(ずっと考えてたのは、俺だけかよ)
 丁度そこで店員さんが水を運んできて、新月が受け取ろうとするも、
「ありが……むぐぅ」
 バルトが新月の手をとって、自分の頭に触らせはじめる。無理矢理手を動かしているのは、もっと撫でてと言うアピールだろう。
 お礼も碌に言えず、飲み物を取りあぐねていると、店員さんがそっと飲み物を置いてくれた。
 新月はバルトが寂しかったのだと気づき、せめて、とバルトのなすがままに撫で続ける。
「いつでも甘えてくれていいですからね」
新月はそう微笑みながら呟き、口の中で「お酒がなくっても」という言葉は照れくさくて飲み込んだ。
「うん」
 と、バルトが新月の言葉に素直に答える。続いた言葉が、嬉しい。
 赤くなっているバルトを見て、店員が心配そうに顔を覗かせる。
「あら、大丈夫!?」
酔いがかなり回っているバルトに、店員が慌てるも、新月はエヘヘと笑いながら答える。
「惚気てるだけですので」
 すると、新月の肩口にがぶり、と噛まれる感覚が襲ってきた。
 意外と痛く、店員さんに「あらあら、お邪魔だったかしら!」とにこにこ笑顔で退散され恥ずかしい。
 けれど、今は我慢。
 バルトと会えなくて寂しかったのは新月も同じだった。でも、照れくさくて素直に言えなかった。
 だからこれは、素直じゃなかった僕への罰。
 そう言い聞かせて、新月は肩口に差し込む痛みとも甘噛みのこそばゆさともつかない噛みつきに耐え忍ぶ。
 そんな新月の胸中を知ってか知らずか、バルトは新月を噛み続ける。
 理由は至極単純明快。
新月を、――独り占めするためだ。







☆アキ・セイジ ヴェルトール・ランス ペア☆
精霊デレデレ

 バーを見渡して、ヴェルトール・ランスの自分の仕事場の雰囲気が思い起こされる。視界がぼやけたりしないのは、気持ちよく酔ったからだろうか。ランスはあまり酔っていないように見えるアキ・セイジに視線を送った。
 気がつけば、アキがランスの仕事の悩みやグチを聞いているという状況となっていた。ランスはプロして仕事の秘密は言わないけど、一寸グチはこぼす。
「結構大変だよホストも」
 ランスは洋酒の入ったグラスを傾けながら、呟く。
「困った客もたまに居るぜ」
 両手を上に向けて肩をすくめるポーズをとって、ランスはやれやれといった表情をする。アキはそんなランスになるべく同調するようにして、
「不規則な仕事だもんな」
 と、返答をこぼす。ランスは、「ああ」とひとつ頷き、
「ま、そういうのは虚栄心をくすぐるとか、大切だから叱って貰えた感をあげるとか、……色々、な」
 ランスはそう言って笑い、酒の入ったグラスを傾ける。
 ランスの語るホストの仕事から出る愚痴にアキはひとつひとつキチンと首肯し、嫌な顔一つせず、それどころか会話に合いの手を入れる。
「お客さんに気持ちよいサービスを、ってのは大変だと思う。少なくとも、俺にはランスの仕事はできそうにないよ」
 アキはそういって頭があがらないよ、といったような表情をする。その反応にランスは「う~ん」と何かを思案するように唸り、
「確かに、深刻な人生相談を受け止めた時とかがキツイな」
 と、若干の苦笑いを浮かべながらグラスの中の氷をカラカラと鳴らす。
「相手の人生の分岐点になりかねないし、過度に踏み込みすぎるのもいかんしさ」
 困ったもんだ、と一言付け足して一口洋酒をあおる。
 そんなランスの言葉を聞いていて、アキはそういえば、と疑問が浮かぶ。なんとなく思い浮かんだふとした疑問。
「ランスはどうして今の仕事を選んだんだ?」
 ホストという職業を、どうして選んだのだろう、という素朴な疑問。質問を受けてランスは過去を思い浮かべるようにしてカウンターの方を見つめる。
 それから少ししてようやく思い出したというように、
「知り合いから勧められていつのまにかなってたな」
「でも、楽しいこともやりがいもあるんだろ?」
 お客さんの愚痴を聞いていると、甘い気持ちでは出来るようなものではないという印象を受ける。
 それだけに、何がランスの原動力となっているのかがとても気になるのだ。
「そうでなきゃ続かないんじゃないのか?」
 続くとは思えない、と思う。けれど、同時に経験したことがないものなので図りかねているというのもあるだろう。
「俺はバイトしかした事ないからよく分からなくて」
 アキの質問にランスは、
「やりがいはどうだろう」
 と考えるようにしていたのを、ふとやめてニヤリと笑い呟く。
「いい金にはなるぞ」
 そう言うランスに、アキは笑って酒ではなく水を手渡す。ランスは酒だと思ってあおった水に少しだけ顔を顰めるが、そのまま水に口をつけた。
「店に来たらもてなしてやるよ。プロだし」
 ランスは仕事の時の表情をチラつかせ、言う。
「んー、客として店に行くのは嫌だな」
 アキはランスの申し出に困ったような表情を形成し、続ける。
「それより家飲みとか2人で居酒屋とかの方が良いな。それに安く上がるだろ」
 可笑しそうに笑うアキに、ランスは「ふむ」とひとつ思案するようなポーズをとり、
「家のみも悪くない、か」
 頷くランスに気づかれないように、アキは恥ずかしそうに小声で呟きを漏らす。

「それに……営業用のランスより、そのままが……いい」

 けれど、その呟きは狼の耳でバッチリ聞こえてしまう。とても嬉しい感情を気づかないフリで押し通して、ランスは空のグラスをカウンターに置いた。
 水を飲んで少しはお酒の酔いはさめたけれど、今度は別のことで酔ってしまったようだ。
 このまま甘えてしまおう……。そう心に決めて、ランスはアキに向き直るのであった。



依頼結果:成功
MVP
名前:蒼崎 海十
呼び名:海十
  名前:フィン・ブラーシュ
呼び名:フィン

 

メモリアルピンナップ


( イラストレーター: 紬凪  )


エピソード情報

マスター 東雲柚葉
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 男性のみ
エピソードジャンル コメディ
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 とても簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 5 / 2 ~ 5
報酬 なし
リリース日 08月29日
出発日 09月03日 00:00
予定納品日 09月13日

参加者

会議室

  • [7]蒼崎 海十

    2015/09/02-00:50 

  • [6]蒼崎 海十

    2015/09/02-00:50 

    フィン:
    あらためまして、フィンです。

    海十がお酒の匂いで酔っちゃったみたいなんだ。
    さて、どうしたものか…。

    良い一時になりますように!

  • [5]鳥飼

    2015/09/01-22:27 

    ふふ、ついつい飲み過ぎちゃったみたいです。
    鳥飼と、こちら鴉さんです。
    よろしくお願いしますね。

    楽しい夜になるといいですね。

  • [3]新月・やよい

    2015/09/01-14:42 

    酒は飲めどもなんとやら。
    新月とバルトです。

    皆さんにとっても、良き時間となりますように。

  • [2]蒼崎 海十

    2015/09/01-00:42 

  • [1]アキ・セイジ

    2015/09/01-00:15 


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