《贄?》らふれしあ(こーや マスター) 【難易度:とても簡単】

プロローグ

 ウィンクルムだけが訪れることが出来る天空島『フィヨルネイジャ』。
 女神ジェンマの庭園とされるだけあって、清らかな空気と美しい緑に溢れている。心地よく、時の流れを忘れさせてくれる場所だ。
 それは、庭園の美しさ以外にも理由がある。この場所では『現実では起こりえない現象』を、現実のことのように味わうことがある。
 ただの白昼夢のようだが、パートナーとその夢を共有できるという違いがある。
 二人で見る現実のようで現実でない夢を求めて、今日もウィンクルム達がフィヨルネイジャを訪れる。


●花言葉は『ゆめうつつ』らしい
 パートナーと一緒に外出を楽しんでいる君。言葉を濁さずにいえばデートってやつですね、おデート。
 二人の時間をしっかり楽しんでいたところに、理不尽な死因が君達を襲う!
 豆腐店を覗いていた者は、滑って転んで豆腐の頭に角をぶつけて。大通りを歩いていた者は突如空から降って来た金タライに頭をぶつけて――などなど。
 なんで、どうして! 嘆く間にも、じわじわと失われていく命。死亡フラグ的なモノを回収する者やら、変な約束を交わす者、「へっ、ドジっちまったぜ」などと格好をつける者。
 ああ、悲しき別れ。悲惨な夢がフィヨルネイジャで君達を待っている――

解説

●状況
二人で街中をデート中、理不尽な事故により神人か精霊のどちらかが死亡します
死因に応じて、そこに至るまでのデート内容と死ぬ間際のやりとりをプランに盛り込んでください
デート:死亡時のやりとり=4:6 ぐらいになると思われます
デート部分の描写が五割を超えることはありません

●必須
まずは6面ダイスを一つ降ってください
それで死因が決まります

1:豆腐店で豆腐の角に頭をぶつけた
2・3:大通りを歩いていたら、空から降って来た金タライに頭をぶつけた
4・5:二人でスキップしたら、足を捻って転んで二回転半して小石に頭をぶつけた
6:タンスに足の小指をぶつけた

死亡する側のプランの頭に「哀」の時と、ダイス結果を記入ください
例:死亡するのが精霊であれば、ウィッシュに「哀3」

●その他
コメディです、コメディにしかなりません

ゲームマスターより

ゆるっと連動《贄?》です。
《贄》のコメディ版ですね。
実際にやろうぜ! と言ったのはこーやですが、ネタを出したのは白羽瀬 理宇GMだと言っておきます。
私だけが悪いわけじゃない!!

リザルトノベル

◆アクション・プラン

エリー・アッシェン(ラダ・ブッチャー)

  哀4

白昼夢デート
アクセサリーを売っている、怪しげな露天商。
なんとエリーが買ったアンクレットには「スキップすると死ぬ」呪いがかけられていた!
しかも自称ハーピーの血をひく吟遊詩人のお姉さんが「聴くと思わずスキップしちゃう魔力が込められた歌」を披露しているではないか!
ダブルの強力な呪いコンボで、エリーあえなく瀕死状態に。

死に際
小石が頭にクリーンヒットして倒れる。
ラダに触れられ、一時的に意識を取り戻す。
「うふふ……。人生はかくも理不尽なものですね。あまたの呪いが渦巻くこの世で、私はあなたを末代まで祝いましょう」
弱々しく儚げに微笑んだ後、鼻と口からよく振った炭酸並の勢いで血液を盛大に噴射して、事切れる。


シャルティ(グルナ・カリエンテ)
  …あんた、豆腐好きだったっけ
ふぅん……そう。好きなのね
別に、何も考えてないわ
なんだかんだ言っても今晩の夕飯にグルナの好物入れようと思ってるのは秘密よ

・別の店に気を取られグルナから目を離す

って……え? ちょっと…何が起こったのよ…
グルナ? ねぇ、グルナッ…!
はあ…? バカ言ってるんじゃないわよ…バカ…!
なんで豆腐なのよなんでオーガじゃなくて豆腐で致命的なのよ
この豆腐なにで出来てるの鉄かなにか?←心配するところ違う

豆腐の角で頭ぶつけて死ぬとか笑えないわよ…!
豆腐の角とかっ
…ごめん、マシンガントークしてたわ
………なんで死ぬのよ、バカ
ほんと、手に負えないほどのバカっぷりね



油屋。(ベイル・ガルーシャ)
  哀1

豆腐よ、何故そこに居た。
契約したばかりの精霊ベイルと親睦を深めるため、街へお出かけ

ワイワイお喋り。結構良い奴みたい
何処ぞの悪魔のことを思い出し嬉し涙

豆腐って言うんだよ。ぷるんとした食感で美味しいんだぜ?せっかくだし食べ

ガハッ!?一体なに、が(醤油吐き出し
豆腐弁償すると震える手で金を渡す
これは無事、みたいだ…さぁベイル、お食べ
朦朧とする意識の中、彼に豆腐を食べさせたいという
最期の願いだけが残る

ベイル…アタシはもう駄目、みたいだ
…この豆腐、食べ…て美味しいって言って
アンタの笑顔を見れれば、満足して逝ける。

精霊の反応に期待を裏切られたような表情をしながら息絶える


●とうふじけん その1
「お」
 ぱた、とグルナ・カリエンテが立ち止まる。シャルティは顔を上げ、頭一つ分高いところにあるグルナの瞳を見た。その視線の先にあったのは水槽。白い六面体――直球で言うならば、豆腐が沈んでいる。
「……あんた、豆腐好きだったっけ?」
「まぁ、嫌いじゃねェ」
 嫌いじゃないと言いながら、傍から見ていて不思議と思えるほどグルナは熱心に豆腐を見ている。絹……枝豆豆腐も捨てがたい、いや、胡麻豆腐という選択も……などという呟きが聞こえる。
 言葉通りではない、とシャルティは確信した。
「ふぅん……そう。好きなのね」
 途端、グルナの眉が吊りあがる。
「は? 好きなんて言ってねェだろッ!? ……なにニヤけてんだァ?」
「別に、何も考えてないわ」
 冷静な態度はそのままに、シャルティの口角が僅かに上がっているのをグルナは見逃さなかった。じとり、視線で問い掛けるがシャルティに答える気は無いらしい。小さく息を吐いて、グルナは再び水槽へと目をやった。
 シャルティの瞳が細められる。今日の夕食にはグルナの好物を入れるつもりだったのだ。これだけ熱心に見ているのだから、豆腐を献立に加えるのもいいだろう。
「何にしようかしら……」
 小さく漏らすと同時に、向かいの店から軽快なメロディが流れてきた。気になって振り返る。店先におかれたディスプレイには料理番組が映し出されていた。今日のレシピは豆腐ハンバーグらしい。
 丁度いい、夕食はこれにしよう。最初に出された材料を見る限り、覚えるのも難しくは無いだろう。
 料理番組に見入っているシャルティを他所に、グルナは店内を歩き始めた。いくつもの水槽が並べられた店内の床は、勿論濡れている。
 常のグルナであれば気をつけていただろう。しかし、今は豆腐。豆腐パラダイスの中に彼はいる。言うまでも無く、グルナの全神経は豆腐へと向けられていた。白いつるつるぷるぷるの六面体がグルナを惑わした結果――
 つるーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん!
 滑ったグルナの爪先が綺麗な弧を描き、ぐしゃああ、何かが潰れる音が聞こえた。
「……え? ちょっと……何が
 起こったのよ、言いかけたシャルティの言葉が途絶える。彼女の視線の先には潰れた豆腐に塗れて倒れるグルナの無残な姿。
「グルナ? ねぇ、グルナッ……!」
 パシャパシャ、水が跳ねるのも構わずシャルティは駆け寄った。グルナの後頭部は白だけでなく、赤くも濡れている。そしてすぐ傍には妙にひしゃげた豆腐があり、しかもグルナのものとしか考えられない血痕が付いている。疑うまでも無かった。
 苦痛のあまり閉ざされていたグルナの瞼が、重そうに開かれる。
「……うっせ、耳元で叫んでんじゃねェっつの……」
「ちょっと、大丈夫なの……!?」
「大丈夫……なようなそうでもねェような……正直、無理」
「はあ……? バカ言ってるんじゃないわよ……バカ……! なんで豆腐なのよなんでオーガじゃなくて豆腐で致命的なのよ、この豆腐なにで出来てるの鉄かなにか?」
「だから、うっせェっつの……豆腐豆腐連呼すんな……!」
 先程、豆腐の角とかバカじゃねェ? と自己嫌悪したばかりである。豆腐というワードがぐさぐさと傷に刺さるような気がしてならない。
 それよりも心配するところが違うとツッコミたいが、ツッコミというものは存外に気力を使う。今のグルナには、その気力が無い。
「豆腐の角で頭ぶつけて死ぬとか笑えないわよ……! 豆腐の角とかっ」
「……知ってる。豆腐の角とかって……すっげー思う。……つか、お前うるさすぎ……ハッ、焦ってんのかよ」
「…ごめん、マシンガントークしてたわ」
 グルナはどうにか頭を持ち上げ、自分が頭をぶつけた豆腐を探す。血の付いた豆腐はグルナの予想していた通りの物だった。
「やっぱり、な……限られ、た、職人にしか作れない……メタル豆腐……こいつの仕業か……」
「グルナ、あんた……何言ってるのよ……!?」
 シャルティは手袋をした手でぺちぺち、頬を叩く。妄想なのか事実なのかも知りたくないような言葉が最後だなんて絶対に嫌だ。
 目を開けているのも億劫だと言わんばかりに、徐々にグルナの瞼が落ちていく。
「メタル豆腐に……やられたんなら……しょうがねェ、か……」
「………なんで死ぬのよ、バカ。ほんと、手に負えないほどのバカっぷりね」
 シャルティの言葉に反応し、ぴくり、グルナの目が開かれる。涙を流すシャルティの顔が見えた。
「……ふん、知ってるっつーの。泣いてんじゃ、ねーよ……」
「泣いてないわよ! これは、乳清よ……乳清なんだ、から……!」
 精一杯の強がりだった。けれど、もうグルナの耳には届かない。再びグルナが目を覚ますことも、無い。
 ぽろぽろ、乳清が滴り落ちる。左右の目から滴り落ちる乳清が止まる気配は無い。
「なんで、なんで、なんで……! なんで、豆腐なんかで……!」
 白と赤に塗れた黒いポブルスに投げかけられた言葉は、豆腐店に虚しく響くだけだった。


●すきっぷじけん
 タブロスの片隅にある花壇の前。敷物の上にいくつものアクセサリーを広げた露天商がいた。一つ一つのデザインは悪くない。シンプルでありながら一工夫入れられたものばかり。
 しかし、人通りも少なくない場所にも拘らず、その露天商を見ているのはエリー・アッシェンとラダ・ブッチャーの二人だけであった。さらにいえば、熱心に、食い入るように見ているのはエリーだけで、ラダは若干引き気味だ。
「ウヒャァ……」
 というのもこの露天商、とてつもなく胡散臭いのだ。妙に毒々しい紫に髑髏柄の敷物、攻撃的すぎるほどに大量の棘の付いたコルクボード、マスコットのつもりなのか置いてあるぬいぐるみは目玉が強調されまくってるペリカン。しかも嘴からは血が垂れている。
 極めつけは店主。蛍光ピンクのローブを目深に被り、紫色に染められた唇。腕には手錠、幼児向け玩具のような羽を背負っており、しかもときどき『ぷりきゅ~~ん♪』とか音が鳴っている。これを胡散臭いと言わずしてなんと言う。
 ラダとしては可及的速やかにこの店から離れたいが、エリーさんがね、うん。とても真剣に見てるんですよ。しかも用事があるわけでもないので、早く行こうとは促せないのだ。
「ラダさん、この赤いのと黄色いのだと、どちらの方がいいと思いますか?」
 二つのアンクレットを指差す。二つのアンクレットを見比べながら、ラダは首を捻った。
「赤いの、かなぁ……?」
 ラダは歌と動物の知識においてなら自信があるが、人のアクセサリーを選ぶセンスは違う。爪を赤く染めているから赤がいいのでは、というのが彼の精一杯だ。
 しかし、エリーにとってはそれで充分のようだ。赤い石がついたアンクレットと、小さく髑髏が付いたアンクレットを手に取る。
「それではこの二つをお願いします」
「ぐへへ、毎度ぉ……」
 胡散臭い口調にも引いているラダに、エリーは髑髏のアンクレットを手渡す。
「いいの?」
「うふふ……選んでもらった御礼です」
 買ったばかりのアンクレットを付けるエリーに倣い、折角だからとラダもアンクレットを付ける。が――
「アヒャァ!?」
 ひょこひょこひょこ、ラダの体が勝手に動き始めたではないか!
 ひたすらカニ歩きをするラダを見た店主の口角がニヤリ、歪んだのをエリーは見逃さなかった。
「これは一体どういうことですか」
「ぐへへ、カニカニ教の洗礼よぉ! ちなみにあなぁたが買ったアンクレットにはぁ、スキップをすると死ぬ呪いがかけてある! ついでに言えば我々の神聖パワーを受けねば永遠に外せんという仕組みだったりぃ!」
 言い終えると陸上選手かと思うような綺麗なフォームで走り出す店主。全力で逃げる気だ。
「ま、待てぇ、あああ、ちゃんと走れないよぉー!?」
 追いかけようとするラダだが、体が言うことを聞いてくれない。カニ歩きでは限界がある。
 そこに、体が弾むような旋律が聞こえてきた。エリーとラダに、ある衝動が湧き上がる。
「るるんら~♪ 私はハーピーの血を引く当代一のスキップメイカー。私の歌声で皆しあわせ~♪ スキップでしあわせらんらんる~♪」
 自称ハーピーの血を引く吟遊詩人の歌声が今の二人に残酷な結果をもたらす。
「体が勝手にぃぃ!!」
 カニ歩き + スキップ = 反復横とびっぽいもの
 しゃかしゃかしゃかしゃか、店主を追うどころか進むことさえままならないラダ。
「くっ、これで、はっ……」
 必死で歌に抗っていたエリーの右足が、ついに、持ち上がってしまった。一歩飛び上がれば、もう止められない。
スキップが始まってしまった。
「エリー! 駄目だよぉ!」
 たたん、たたん、軽やかなリズムで弾むエリーの体が、突如ぐらついた。エリーの体が空中で二回転半。体操選手のように綺麗な回転だ。
 エリーの頭が落ちる場所には――小石と言うには大きすぎる、バレーボール並みの大きさの石。ごしゃっ。くりーんひっと。
「そんなぁっ!」
 かにすきっぷかにすきっぷ、しゃかしゃかしゃか。逸る心、けれどラダの体は思うように動かない。
「目の前にいるはずなのに、とても遠い距離に思えるよぉ……」
本来であれば一瞬で辿り着く距離だというのに、ラダがエリーの下へ辿り着くのに掛かった時間は三分。その間、エリーはぴくりとも動かなかった。
「エリー、エリー……!!」
 苦労の末、エリーの側に辿り着いたラダがそっと肩を揺する。強く揺すれば、助かる命も助からないかもしれないと思うと怖かった。
 ゆるり、エリーの銀の瞳が姿を見せた。瞼と瞼の合間から見える色は僅かなもの。
「うふふ……。人生はかくも理不尽なものですね」
「理不尽どころの騒ぎじゃないよぉ……! 血が、足がっ!」
 頭部から流れ続ける血。目を覚ましたときから再びスキップしようと動いているのだ。エリーの足は空を駆ける。赤い唇が弧を描いた。
「あまたの呪いが渦巻くこの世で、私はあなたを末代まで祝いましょう」
 カニ歩きの呪いからも、スキップの呪いからも逃れられるように。チョコチップクッキーが食べられなくなる呪いにかからぬように。
 唇はしっかりと笑みを作っているというのに、エリーの笑みはあまりにも弱々しいものだった。
 直後、ぶしゃああああ、と鼻と口から血を噴いた。散々振りまくった後に封を切った炭酸水のような、強い勢いで。血の噴水が力をなくしていき、ついに途絶える。それはエリーの命が終わってしまったことを意味していた。
「エリー……嫌だよぉ……こんなの、こんなの嫌だよぉ……」
 守るべき神人であり、友人であった女の死と同時に、ビシビシ、と足のアンクレットが悲鳴を上げた。最後にビキリ、大きな音を立てて砕ける。
 しかし、ラダはそんなことにも気付かぬ様子で、いつもよりもさらに白くなったエリーの顔を見つめていたのであった。


●とうふじけん その2
 その神人と精霊は契約を交わしたばかりであった。
 親睦を深めるべく街へと向かった男と女に、かような悲劇が起こるとは誰も思うまい。
 豆腐よ、何故そこに居た。何故そこに姿を現したのだ。
 後に神人は知る。豆腐に慈悲などはないのだと。
 後に精霊は知る。この世は豆腐の呪詛で満ち満ちているのだと――

 油屋。とベイル・ガルーシャは和やかにお喋りをしながら通りを歩く。
「『服脱ぐマゾヒスト教』?」
「そうそう。マゾヒスト? そういうのになったら服を脱いでも神聖な力が裸を隠してくれるんだって。偉大な力がありとあらゆる不幸から体を守ってくれるとか言ってたー」
「なにそれ、気になる」
 訂正。油屋とベイルは変なお喋りをしながら通りを歩く。
 特定宗教を信仰しているわけではないが、ベイルは神と呼ばれる全てを愛している。その為、宗教と呼ばれるものに興味がある。
 一方、油屋はそういったものに興味がある訳ではないが、話のネタになりそうなものには興味がある。
 なかなかに盛り上がる会話。結構良い奴みたい、と油屋はベイルの事を評した。どこぞの悪魔、紫髪のディアボロとは大違いだ、そんな喜びが溢れてきて、思わずほろり。ぽろりではない。
 ベイルも楽しんでいるようで、気付けば鼻歌を歌っている。
「ベイル、アブラヤとお出かけたのしい!」
 ニコッと笑うベイル。邪気の無さからか、キラキラ輝いている。ベイルたんマジ天使。
 弾んでいたベイルの足が、ふいに止まる。じっと、一点を見つめている。
「これなぁに?」
 そこには白い六面体。竹で編まれたザルの上でぷるぷる揺れている。
「豆腐って言うんだよ。ぷるんとした食感で美味しいんだぜ?」
「すごーい! アブラヤなんでも知ってるー!!」
 感心したベイルが嬉しさのあまり油屋にのしかかってしまったのがいけなかった。
「せっかくだし食べ
 ちゅるりーーーーーーーーーーーーーーーーーん。ぼいいいいいいいいいいいいいいいいいいん。
 重なる二つの効果音。後者が何かはお察しください。
 ベイルの重みに堪えきれず、たたらを踏んだ結果――油屋はたわわな果実を揺らしながらすっ転んでしまったのだ。重心がおっぱいに寄っていたのがいけなかったのかもしれない。
 不運は続く。一瞬、宙に浮いた油屋の体は頭から地面へと、いや、豆腐の角へ向かって落ちていく。
 グシャァ。奇妙な音から一拍遅れて、ぴちゃっとベイルの頬に血、じゃなかった豆腐が飛ぶ。
 理解が追いつかないままに足下を見ると、顔面を豆腐に突っ込ませて横たわる、無残な神人の姿があった。
 力が入らぬ体でどうにか起き上がろうとする油屋だが――
「ガハッ!? 一体なに、が……」
 いつ仕込んだのかは分からないが、油屋は口から血の代わりに醤油を吐き出し、再び地面と倒れこむ。
「ああ、そういう、こと、か……弁償、しない、と……」
 震える指先を懸命に操り、油屋はおっぱいの谷間から財布を取り出し、金をベイルへと差し出す。
 唖然としたままベイルが金を受け取ると、油屋はふっと満足気に笑った。
「これは無事、みたいだ……さぁベイル、お食べ」
1パックだけ、どうにか無事だった豆腐を見つけたのだ。宙を舞いながらも、必死で油屋が守った豆腐だった。
己がどうにか守った豆腐をベイルに食べさせたい。朦朧とする油屋の、最期の願いだった。
「それ、君の頭から飛び出た脳髄じゃないの?」
「生姜が、あればよかったんだけど、な……」
 繰り出したツッコミにボケが返されました。すでに油屋は走馬灯を見ているようだ。ふふっと、笑い声を零す。
「ベイル……アタシはもう駄目、みたいだ。……この豆腐、食べ……て美味しいって言って」
 これはアタシの命だから。清清しい、美しい笑みだった。
 その笑みに応えなくてはいけない、そう思ったのだろうか。ベイルは油屋が守った豆腐の欠片を口に運び、パクリ。味わうこと数秒。
「びみょー」
「そん、な……」
 笑みが一転、絶望へと変わる。最期の願いを砕かれた油屋は失意のまま息を引き取ってしまった。
 つい正直な感想を言ってしまったベイルが我に返る。油屋のたわわな果実が上下することなく、止まったまま。それが悲しかった。ベイルの金の瞳から涙が一筋、零れ落ちる。
「う、うわあああああああああああああああああああああああああ!」
 豆腐店の真ん前で、獣が哀を叫んだ。


●あんまりだったので
 あまりにもあんまり過ぎる夢見の悪さだった。
 フィヨルネイジャの主であるジェンマの機嫌が悪かったのだろうか。そう考えた三組のウィンクルム達は帰り際、募金箱に僅かなお金を落として行ったのであった。



依頼結果:大成功
MVP

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター こーや
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 女性のみ
エピソードジャンル コメディ
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 とても簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 3 / 2 ~ 5
報酬 なし
リリース日 08月23日
出発日 08月28日 00:00
予定納品日 09月07日

参加者

会議室

  • [6]シャルティ

    2015/08/26-12:55 

    1ね。
    …とりあえず、グルナ、あんた死んでみる?

    グルナ:
    ざけんなっつの! なんで俺なんだよッ!

    (PL:シャルティとグルナです。よろしくお願いします)

  • [5]シャルティ

    2015/08/26-11:40 

    ………。(真剣な顔つき
    えい。

    【ダイスA(6面):1】

  • [4]エリー・アッシェン

    2015/08/26-03:14 

    4! なかなか不吉な数字が出ましたね。
    死因:二人でスキップしたら、足を捻って転んで二回転半して小石に頭をぶつけた

  • [3]エリー・アッシェン

    2015/08/26-03:12 

    まずは楽しい楽しい?死因チェックですね。ダイスそぉい!

    【ダイスA(6面):4】

  • [2]油屋。

    2015/08/26-01:39 

    油:(死因を見て絶望している)よ、よろしく……。
    ベ:がうー!ベイルはベイル!アブラヤまもる人ー!!

  • [1]油屋。

    2015/08/26-01:34 



    【ダイスA(6面):1】


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