【阻害】リア充ばくはつしろ(寿ゆかり マスター) 【難易度:とても簡単】

プロローグ

 フェスタ・ラ・ジェンマ。四年に一度のジェンマを祀る大きなお祭。
 折角だしお祭らしいお祭に行こう! と意気込んで紅月神社へやってきたウィンクルムに、A.R.O.A.職員と妖狐が泣き付いた。
「へ、変な奴がいるんです~!」
 変な奴? 首を傾げると、ジェンマへの祈りの踊りを捧げるやぐらの周りにマスクを付けた黒づくめの男が数名。キョロキョロと何かを探しているようだった。
「確かに怪しい出で立ちだけど……」
 彼らが何か? と問うと、妖狐がこくりと頷く。
「三日に一回くらいのペースであいつらが現れて、リア充ばくはつしろ! っていいながらカラスをけしかけてくるんです……」
 おかげで、祈りの踊りがなかなか出来ないんですよぉ、と妖狐は半べそ。
「リア充ばくはつしろ!?」
 なんで? と首を傾げる。
「カップルを狙ってるみたいなんです……」
 なんでかはよくわかんないけど、どんどんお客さんも減ってきちゃうし、あいつら追い払ってください~とA.R.O.A.職員も半べそ。これは困った。
 とりあえず、リア充以外には何もしてこないらしいのでリア充っぽく行くべきか。
 傍らの精霊と頷き合い、神人は早速屋台の方へと歩き始めたのであった。

 一方。
「おい、リア充いるか?」
「ここ数日でだいぶ減ったな……」
「んっ? おい、あれりあじゅ……ハッ、ひょっとしたらウィンクルムじゃないか? よしっ」
 どうやら彼らはリア充=カップル=もしかしたらウィンクルムという勝手な図式を作っていたらしい。
「リア充ばくはつしろ~!」

解説

目的:怪しいやつらを捕まえましょう。

邪眼のオーブを所持してデミ・カラスを一体操ってくるあたり、
彼らはマントゥール教団員と思われます。
ウィンクルムをやっつけたいんだね!たぶん。
教団員は参加人数分現れます。基本個人戦です。ダブルデートとか集団デートしたい場合は相談してそのようにしてもOKです。
 ウィンクルム達=リア充だと思っているので、なんかいちゃいちゃしてたり恋人同士っぽい行動をしていると奴らは尻尾を出してくれるでしょう。そこを現行犯でとっつかまえましょう。
お祭会場にはりんごあめとか金魚すくいとかたこやきとかお祭に有りそうなものは大体あります。
潜入捜査なので、これらは妖狐たちがサービスしてくれますから、リア充さを出す為に楽しんでください。楽しんでいるところを、教団員が襲ってきます。迎え撃ちましょう。

デミ・カラス=当たれば倒せます。当てましょう。
教団員=人なのでやっつけないであげてください。捕まえるだけにしてあげましょう。
    邪眼のオーブを所持しております(デミオーガを操れます)
    オーブの破壊もお願いします。めっちゃわかりやすく右手に持ってるので、壊すのは容易です。
   


ゲームマスターより

余談ですが、祈りの踊りはBONダンスみたいなイメージです。

平たく言うと、この教団員可哀想な子たちなんだね!
でも、悪いことしてるのに変わりはないから、捕まえましょう!

リザルトノベル

◆アクション・プラン

ニーナ・ルアルディ(グレン・カーヴェル)

  そんなに両手いっぱいに抱えて…ちゃんと食べきれます?
ふふ…甘い物大好きなグレンらしいです。
私はわたあめだけで大丈夫ですよ。
半分こですか?構いませんよ…えっ、私が食べさせるんですかっ
そりゃ両手塞がってたら持てませんけど…
は、はい、それじゃあ、あーん…

ハッ、みっ、見られてました…っ
グレンの物は私が全部持っておきますから早く倒しちゃいましょう、ねっ!?

安全なところに食べ物を置いてから、周りに他の方がいたら離れるように促します。
教団員さんが逃げそうだったら…えっと、さっき取った水風船でも投げつけたら怯んだりしないでしょうか?

大丈夫、今年は無理でも来年はきっと一緒に来てくれる方がいるはずですよ…!



夢路 希望(スノー・ラビット)
  (これは任務、これは演技…)
手の繋ぎ方にドキドキ
形から入ろうと意を決して
…ス、スノーくん
あそこのヨーヨー釣り、楽しそうです
行ってみませんか?

そーっと…あっ…残念
でも二個釣れました
はい、一つはスノーくんに
お揃いです…な、なんて…

お礼なんて気にしなくても…え?
あ、あーん…お、美味しいです…って
(ち、近いです…っ!)
…トランス?
あ…わ、分かりました
(びっくりしました…)
私はユキが気を引いている間にこっそり教団員さんへ近付いて拘束を試みます
(難しければ逃げないよう足止め
オーブは地面に落とすか剣の柄で叩いて壊します

これで皆さん安心してお祭りを楽しめますね、ユキ
…あ、あの…また名前で呼んでもいいですか?


ひろの(ルシエロ=ザガン)
  (右手を出し、ビクッとする
「ゆ、指……」
「……な、んでも、ない」(羞恥
耐えろって、言われても。
いつもと握り方、違うだけなのに。(羞恥で既にいっぱいいっぱい

(かき氷購入
これって、あーん、とか。言う。(察して更に赤く
お仕事、だから。(自分に言い聞かせ、食べる
「おいしい……」(呟く

事前に店や他のお客さんへの被害を防ぐために、妖狐や職員さんに避難誘導の協力をお願いする。
縛るための紐を用意して貰い、隠し持つ。後ろ手に回した手首が縛れるぐらいの長さ。

教団員が襲って来たらトランス。
逃げようとしたら、足元を射て牽制。
縛ったら引き渡す。

「無理」恥ずかしい。(首を横に振る
(最近、どきどきしすぎて。心臓、壊れそう)



オデット・リーベンス(テオ・シャンテ)
  リア充ばくはつしろ、か…
気は会いそうな気はするけど手段がいけすかない!

じゃあカップルぽい、行動、を…
言いかけてカップルって何するの?と経験不足から悩む
なるほど、それなら楽勝だね!

屋台順々に周る
やっぱりお祭りって楽しいね
何だかわくわくしてくるもん
あ、次はあそこ行ってみたい!

尻尾掴んだらトランス
口じゃなければセーフ理論

ねえ、神人て精霊に守られて戦い見守って素敵…(とくん)なイメージだったんだけど
何で私が前なの?おかしくない?おかしくない?
現実辛い

カラスを大声で挑発し意識引きつけわざと誘きよせて攻撃
倒したら勢いのまま教団員に向かい掴みかかり
オーブ掴んだら地面に叩き付け

それはありえるかもしれない
行こう



シャルティ(グルナ・カリエンテ)
  …大の大人が恋人との一時を堂々と妨害? うっとうしいし見苦しいわ
あんたはデミ・カラスお願いね
私はオーブ、引き受けるわ

…わたあめ……
別に、欲しいわけじゃないわよ
え、ちょっと……!
その……ありがとう
…なによ、私だって礼儀くらい知ってるわよ

あら、お出ましね(速やかにトランス)
・グルナがデミ・カラスの相手をしている間に、
 教団員がオーブを落とすようにこっそりゲットした水風船を教団員に向かって「えい」と投げる
・当たって落としたらオーブはブン投げて割る。それかグルナにブン投げる

あんた達が悪いんだから大人しく捕まりなさい
言っておくけど、あんた達に恋人の仲を邪魔する権利なんてないわ。覚えときなさい



 夢路希望と、スノー・ラビットは妖狐たちの話を聞いて顔を見合わせた。
「カップルを狙うんだよね……じゃあ」
 スノーがすっと手を差し出す。
「ノゾミさん、手を繋いでもいい?」
 ぴく、と希望は肩を跳ねさせ、高鳴る鼓動を抑えながらスノーの手を取る。
「は、はい」
「えっと……確か、こう……」
 スノーは、そのまま自分の体側に希望の手の甲を寄せ、五本の指をしっかりと絡め取った。希望はドキドキする鼓動を抑えようと唇をきゅっと引き結ぶ。
「これ、恋人繋ぎって言うんだよね、こうしたら僕達もカップルに見えるかなって」
(これは任務、これは演技……)
 他意はないのだ。今日はデートではない。こくり、と頷き希望は意を決した。私も形から入ろう。
「……ス、スノーくん」
 ぴょこり、とスノーの耳が動く。今、名前で……?
「あそこのヨーヨー釣り、楽しそうです。行ってみませんか?」
 その呼び方が演技とわかっていてもなんだか嬉しくて、スノーは笑顔で頷く。

 スノーは初めてのヨーヨー釣りにワクワクしながらそっとこよりの先のフックを水に浸けた。
「そーっと……」
 希望が横でじっと見つめていると、ぷつん、とこよりが切れる。
「あっ……残念」
 上手くできず、スノーがしょんぼりと耳を垂らしていると、続いて希望が挑戦した。
 するり、一つ釣り上げる。
「わ、すごい!」
 続いて、もう一つ。
「わぁ!」
 さすがに三つ目を釣ろうとしたときにこよりは切れて、スノーは残念そうな声を上げたが、愛らしい水風船を両手に持って希望はにっこりとほほ笑んだ。
「でも二個釣れました。はい、一つはスノーくんに」
 差し出された水風船に、スノーはぱぁっと表情を明るくする。
「……いいの?」
「お揃いです……な、なんて」
 頬を染めながら言う希望に、スノーは嬉しそうに礼を言う。
「わぁ……ありがとう!」
 そこで、スノーは水風船によく似た色の屋台を見つける。真っ赤な……。
「じゃあ、お礼に林檎飴買って来るよ!」
「お礼なんて気にしなくても……」
 希望の手を引き、屋台へ行くと妖狐はこれもサービス、と林檎飴を一つ差し出してくれる。ありがとうと頭を下げ、林檎飴を受け取るとスノーはそれを希望の前に差し出した。
「はい、どうぞ」
 でも林檎飴の棒はしっかりスノーが握ったまま。
「あーん」
「あ、あーん……」
 恋人っぽく、見えるように……。希望は恥ずかしさを抑えながら一口林檎飴を頬張る。
 そんな希望を、ニコニコと見守るスノー。どこからどう見てもカップルだ。
「お、美味しいです……って」
 スノーの顔が近い。頬に熱が集まる。その時、スノーが希望に耳打ちした。
「ノゾミさん、トランスを」
「トランス……?」
 ちら、と横目でスノーが見る先を希望も追いかける。
 居た。黒づくめの男がぷるぷる震えている。
「あ……わ、分かりました」
(びっくりした……)
 まだドキドキと煩い胸に手を置き、希望はインスパイアスペルを小さく唱えてスノーに口づける。
 瞬間、頭上でカラスがギャアギャアと鳴いた。
「リア充あぁぁああ~!」
 もうすでに何を言っているかわからない。怪しい男、泣いてる。
 襲い掛かるカラスを確実に仕留めるため、スノーはエトワールによる剣舞で避けながら開けた場所へ誘導した。……人目が多い。せめて、余興に見えるように、所作に美しさを出すスノー。周囲から歓声と拍手が上がった。
 その隙に、するりと希望が逃げ場を奪うように教団員の背後に立つ。
 デミ・カラスを始末して教団員の前に躍り出たスノーは、逃げようとする教団員を希望と挟み込んで見事捕えた。男の手からオーブは滑り落ち、地面に叩き付けられて割れる。
 顔にこそ出さないが、スノーは先刻までの恋人気分を邪魔されて少々ムッとしていたらしく、拘束する縄を教団員にぎちぎちと食い込ませていた。
「ちゃんと、反省して、ねっ」
 警察に連行される教団員の背中をとん、とおすと、希望が安堵したように息を吐く。
「これで皆さん安心してお祭りを楽しめますね、ユキ」
 頷くも、呼び方が元に戻ったことに少しさみしげな顔をするスノーに、希望は付け足した。
「……あ、あの……また名前で呼んでもいいですか?」
「!」
 今日一番の笑顔でスノーは答える。
「うんっ」
 ――もう少しだけ、お祭を見ていこうか。


「そんなに両手いっぱいに抱えて……ちゃんと食べきれます?」
 ニーナ・ルアルディは、精霊、グレン・カーヴェルがてんこもりに持ってきた甘味を見て目を丸くする。
「甘いモンは全部制覇しとかないとな」
 当然、と言うように笑うグレンに、ニーナは可愛いものを見るように微笑む。
「ふふ……甘い物大好きなグレンらしいです。私はわたあめだけで大丈夫ですよ」
 彼女の手の薄桃色のわたあめを注視し、グレンはニッと口角を上げた。
「お前のわたあめも美味そうだな、半分くれよ」
「半分こですか?構いませんよ」
「ん」
 両手に甘味を抱えたまま、グレンが口を開ける。
「……えっ、私が食べさせるんですかっ」
「ん」
 両手の甘味をわざとらしく持ち上げ、ニーナに見せる。
「そりゃ両手塞がってたら持てませんけど……」
 にやりと笑う彼に少し恥ずかしがりながら、ニーナは覚悟を決める。
「は、はい、それじゃあ、あーん……」
 あーん、と更に大きく口を開けてニーナが持つわたあめにかぶりつこうとした瞬間。
「のわぁあああー! リア充~! ぁああぁ~!」
 叫び声が聞こえた。逆に心配になる。
「……いいタイミングで邪魔してくれるな、おい……」
 ぴきっとグレンの額に青筋。
「ハッ、みっ、見られてました……っ」
 頬をほんのり染め、ニーナがあたふたする。
「トランスしてさっさと片付けるぞ」
「グレンの物は私が全部持っておきますから早く倒しちゃいましょう、ねっ!?」
 急ぎ二人はトランスを済ませ、グレンは軽く舌打ちをして教団員の方に歩き出す。
「せっかく面白……楽しんでたっつーのにさ」
 頭上を飛ぶカラスが教団員の指示でグレンに急降下する。
「おっと」
 さすがに少し開けたところに行かないと危なそうだ。ちらとニーナに目配せすると、ニーナは妖狐に食べ物を全て預けて客たちを屋台側に避難させているところだった。よし、とグレンが頷く。太刀を振りながら、教団員との間合いを詰めるようにカラスを広場に誘導し、ついにトドメを刺してグレンは息を吐いた。
「……まだ、林檎飴買えてねーんだよ!」
 太刀を振り上げ、教団員を威嚇する。
「ひええぇ思ったよりリア充つよい~!」
 半べそをかきながら教団員は慌てて背後に走り出そうとする。そこへ回り込んだニーナが先ほど釣った水風船を投げつけた。
「逃がしません!」
 ばちん! と音を立てて教団員の顔面目がけ水風船がヒット。
「あばば」
 持っていたオーブを取り落し、そのまま自分で踏んづけてしまう教団員。なんだか可哀想になってきたニーナは眉をハの字にしてそれを見つめた。
「ったく、祭を騒がせて人様の楽しみを邪魔しやがって!」
 教団員をふん縛って、グレンはその頭をぽかりと叩いた。
「いたっ」
「二度とこんな真似するなよ」
 まぁまぁとなだめるニーナ。
 そんな二人を見上げて教団員は噛みつくように声を上げた。
「い、イケメンだからってずるい! リア充ずるい!!」
「うるせえ」
 近くの屋台で買ってきた唐辛子10倍焼きそばをずぼりゃと口の中に突っ込めば、目を白黒させて教団員の男は言葉を失う。
「かりゃい」
 すん、と鼻をすすりながら反省しているのかしていないのか。
 残念な教団員に視線を合わせ、ニーナは励ましの言葉をかけた。
「大丈夫、今年は無理でも来年はきっと一緒に来てくれる方がいるはずですよ……!」
 教団員の男は顔を上げ、一筋の涙を流した。
「……りあじゅう、やさしぃ……」
「ま、その前に罪償ってだけどな……」
 その優しさがなんとなく抉っている感も否めなかったが、教団員はちょっとだけリア充に対しての考えを改めたのだという……。


「ヒロノ、手を貸せ」
 ルシエロ=ザガンは、神人たるひろのにすっと左手を差し出した。
 ひろのは右手を差しだすが、その指がルシエロに絡めとられてビクッと引っ込めようとする。しかし、しっかりと俗にいう“恋人つなぎ”にされた指はほどけず、ひろのは小さな声で抗議した。
「ゆ、指……」
「指がどうした?」
 不敵な笑みのまま、ルシエロはひろのの手を眼前に持ち上げて指先にキスを落とす。
「……な、んでも、ない」
 恥ずかしさに、普段は顔色をあまり変えないひろのでもほんのり頬が染まる。
「誘き寄せる為だ。これぐらい耐えろ」
 ひろのを引き寄せ、耳元でそう囁く。
(耐えろって、言われても……)
 ひろのは俯いて顔色を隠すように歩き始めた。
(いつもと握り方、違うだけなのに)
 手をつなぐのは平気だけど、このつなぎ方は、何か違う……。恥ずかしくていっぱいいっぱいになりながら、ひろのはルシエロについていった。
 かき氷の屋台の前で、一つかき氷を注文する。
 ルシエロとつないでいない方の手でかき氷を受け取ると、ひろのは少し困ったように眉を寄せた。手を繋いでいたら、食べられない。
「ほら」
 至極楽しげにルシエロはかき氷を一匙掬ってひろのの口元に差し出した。
(これって、あーん、とか。言う)
 求められていることを察してひろのは更に頬を赤く染めた。
(お仕事、だから)
 恥ずかしいけど、仕方ない。自分に言い聞かせて、ひろのは口を開ける。
 遠慮がちに匙に寄せられた唇に、ルシエロは己の口元が緩むのを感じる。
「おいしい……」
 ふわりとひろがった苺の香りに思わず零れ出た呟き。
「オレも一口貰うぞ」
 自然と近くなった距離に少しどぎまぎしながらひろのがかき氷のカップを差し出す。
 その瞬間。
「あ、甘~! カップル奴~!!」
 興奮気味の黒づくめの男がカラスと共に走り寄ってくるではないか。
「誓いをここに」
 素早くトランスを済ませ、ひろのは教団員を見据える。
「今、頬にキス奴~!」
 ざわざわと周囲がざわつく。
 なんだこの怪しい男。祭の客が不安げに見守るのを、事前にひろのが頼んでおいた妖狐たちが避難させていく。
 地団太を踏む教団員に、ルシエロがつかつかと歩み寄った。
 ひろのを庇うように前に立てば、カラスが上から襲い掛かってくる。
 ひろのに当たらないよう、最小限の動きでエトワールを繰り出し、やや高い位置にいたカラスの攻撃を躱しざまに叩き斬る。その見事な動きにギャラリーから歓声が上がった。
 教団員は自らが操る駒をいとも簡単にねじ伏せられ、背を向けて逃げようとする。
「逃がさない」
 ひろのが『バチューン』を構える。音の玉を放つと、それは教団員の足もとに着弾し、美しいハープの音色を響かせる。それさえ、教団員には恐怖だった。
「ひい!」
 そこに、ルシエロが双剣を突きつける。
 もちろん、人間相手に深手を負わせるのは不本意なので、ぴたりと顔面の前で止めた。動揺を誘い、そこから足払いをかける。
「!」
 転んだ教団員の背を右足で踏みつけて自由を奪えば、うぐ、と苦しげな声が聞こえた。
 彼の手からころころとオーブが転がる。それを、ルシエロは左足で勢いよく踏みつけた。
 ばりん、と音を立ててオーブが粉々になる。
「あ、あぁあ……」
「悪巧みもこれにて終了、だな」
 ふん、と鼻で笑ってやると、教団員は項垂れ反抗する力を失った。
 すかさずひろのが教団員をロープで後ろ手に縛りあげる。
 到着した警察に引き渡すと、教団員はとぼとぼと哀愁漂う背中でしょっ引かれていった……。
 任務を終え、ひろのが小さく息を吐く。
 これで祭も滞りなく続けられるだろう、と帰ろうとしたとき。
 目の前にルシエロが左手を差し出してきた。
「……え」
「折角だ。また同じ様に手を繋ぐか?」
 ふわりと自信ありげに微笑んだルシエロに、ひろのは首を横に振る。
「無理」
 ――だって、恥ずかしい。
「それは残念だ」
 手を引っ込めて愉しげに笑むルシエロの横顔に、ひろのはふいと視線を逸らし顔が赤く染まっているのを見せないよう俯き加減で歩き出した。
(最近、どきどきしすぎて。心臓、壊れそう……)
 どうして、こんなにどきどきするんだろう……。
 ふわり、祭の夜の香りが二人の間を流れていった。


「……大の大人が恋人との一時を堂々と妨害? うっとうしいし見苦しいわ」
 柳眉を潜め、腕を組んで呆れたように言ったのはシャルティ。
「うっとうしいって言っておきながらなんで地味に楽しそうなんだよお前」
 あきれつつもちょっとワクワクしていそうな神人に、精霊グルナ・カリエンテは小さく息を吐いた。
「あんたはデミ・カラスお願いね。私はオーブ、引き受けるわ」
「カラスか……良いぜ引き受ける」
 戦えるならなんだっていいと言いたげなグルナの口角が、キュッとつり上った。
 ともあれ、とりあえずカップルっぽくお祭り見物をしなければならない。二人は屋台を見て歩くことに。
「……わたあめ……」
 ぽつり、とシャルティが呟いた。視線の先にはふわふわのわたあめ。
「甘いモンって……え、マジかよ。意外っつーか、なんつーか」
「別に、欲しいわけじゃないわよ」
 ただ目に付いたから言っただけ。とそっぽを向いたシャルティをよそに、サッとグルナは屋台へ向かう。そして、戻ってきたグルナの手には愛らしい薄桃色のわたあめ。
「え、ちょっと……!」
「ん、良いって」
「でも」
「良いから貰っとけっつの」
 ぐい、と半ば強引に手渡されたわたあめが正直嬉しくて、シャルティは目を合わせないまま小さく礼を紡ぐ、
「その……ありがとう」
 その言葉に、グルナは目を瞬かせた。
「なによ」
「お前はただの辛辣かと思ってたぜ」
「私だって礼儀くらい知ってるわよ」
 少しだけむくれながら答えると、声が聞こえてくる。
「なんか甘酸っぱいんじゃぁぁ~」
「んあ? なんだあいつ……あー、教団か」
「あら、お出ましね」
 シャルティはグルナを引き寄せ、インスパイアスペルを唱える。
「我に代わり力となれ」
 頬に口づけると、教団員がやっぱりという顔をした。
「出~! ウィンクルム奴~!」
「っ、ここじゃちょっと人が多いな」
 グルナは襲い掛かろうとするカラスを躱しながら、開けた場所まで移動する。
 気を利かせた妖狐たちが、道を開けるよう客を促す。
 じりじりと追ってくる教団員。その隙に、シャルティは目に付いたとある屋台に駆け込んだ。
「これ、持っててもらえますか? あと、これ一つください」
「はいっ。お気をつけて!」
 妖狐はわたあめを預かり、水風船をひとつ渡す。
 グルナは、大きく『ギル』を振って、自らに襲い掛かってきたカラスをちょうど迎え撃ったところだった。
「く、くっそ~」
 教団員が逃げようとする。そこへ向かって、シャルティは大きく振りかぶった。
「えい」
 ばしゃあん、と顔面に当たった水風船。
「へぶ!」
 取り落されたオーブ。それをシャルティは拾い上げる。そして、さらに大きく振りかぶった。
「おーおー、オーブ投げとは良い肩してんなお前」
 カラスを退治し終えたグルナが笑顔で呼びかけると、シャルティの視線はまっすぐグルナを射た。そして。
「せいっ!」
 ブン投げられたオーブ。軌道はグルナまっしぐら。
「うおわっ!?」
 間一髪。咄嗟に構えた『ギル』でオーブを受け止める。ぱぁんと良い音を立てて割れたが、自分にぶつかっていたらと思うと気が気じゃない。結構痛そう。
「……ッぶねぇ~……! いきなり投げんなッ!」
「取れるかなって」
 しれっと呟き、シャルティは呆然自失している教団員を縛り上げる。
「いだいいだいいだい」
「あんた達が悪いんだから大人しく捕まりなさい」
 ギリギリと締め上げながらシャルティが言い放つのをグルナが見守る。
「……お前、拘束の仕方が俺より荒っぽいじゃねぇか」
「ふぇえ痛いです」
 涙目の教団員に詰め寄る。
「うちの神人じゃねぇが妨害の仕方が随分と汚ねぇな? 教団の兄ちゃんよォ?」
「言っておくけど、あんた達に恋人の仲を邪魔する権利なんてないわ。覚えときなさい」
 二人にこってり絞られて、教団員はリア充こゎぃ……と力なく呟いたのであった。


「リア充ばくはつしろ、か……気はあいそうな気はするけど手段がいけすかない!」
 きっぱりと告げたのはオデット・リーベンス。その傍らで、精霊テオ・シャンテはこいつも拗らせてるなと小さくため息をついた。
「寝返るなよ」
 大丈夫、と頷きオデットは鼻息荒く口走る。
「じゃあカップルぽい、行動、を……」
 そこで首を傾げた。
「カップルって何するの?」
 経験不足から、世のカップルが何をするのか全く分からない。
 ヘンな事を提案される前に、テオはすかさず答えた。
「別に男女が楽しそうにしてたらそれでもうリア充だろ」
「なるほど、それなら楽勝だね!」
 元気に頷き、オデットはテオの腕をぐい、と引っ張った。
 屋台はいっぱいあるから、いっぱい回らなきゃ損、とばかりに。
「やっぱりお祭りって楽しいね。なんだかわくわくしてるもん」
 色々あるよ、とオデットは指さす。
 くじびき、林檎飴、金魚すくいに射的。
 すっかり適応しているオデットに少々呆れつつもテオは笑った。
「だからってあまり腕引っ張らないでくれよ、もげる」
「もげない。いこ! あ、次はあそこ行ってみたい!」
「だから引っ張るなって」
 なんだか楽しそうな二人。黒づくめの男はぎりりと奥歯を噛んだ。
「リア充めぇ~」
 テオがぴたりと止まる。くじ引きに夢中なオデットに耳打ちした。
「いたぞ」
「よし、成せばなる」
 インスパイアスペルを唱え、頬に口づける。大丈夫! 口じゃないからセーフ!
 ふわぁっとオーラが舞うと、教団員の男がカラスと共に二人の目の前に躍り出た。
「見せつけやがって!」
「はー!?」
 オデットが小刀を構え反論しようとすると、そのオデットの背にテオが隠れた。
「え」
「俺、攻撃手段ないし」
 片手本をひらりと掲げてテオはしれっと言い放つ。
「ねえ、神人て精霊に守られて戦い見守って素敵……(とくん)なイメージだったんだけど何で私が前なの? おかしくない? おかしくない?」
 解せぬ。といった表情でテオを揺さぶるオデットにテオはさらりと告げた。
「諦めろ、これが現実だ」
「現実辛い」
 なんだか他のウィンクルムとだいぶ様子の違う二人に一瞬あっけにとられた教団員だったが、目的を思いだしカラスをけしかける。
「こっちだよ!」
 大声でカラスを誘うオデット。カラスはまんまとオデットの方に襲い掛かろうとする。そこを、オデットの護身用小刀が勢いよく叩いた。地に落ちたカラス目がけて、そのままオデットはとびかかり小刀でオーバーキル。ひ弱な女子の力であっても、さすがに何度も殴りつけられてカラスが無事と言うことはありえない。
 カラスが動かなくなったのを確認し、次は『目眩』で困惑を強めた教団員へととびかかる。
「はわわわ」
 さすがに女子一人の力で男を抑え込むのは大変だ。
 テオの加勢で教団員を引き倒し、二人がかりで捕縛すると辺りから歓声が上がった。
 オデットは教団員からオーブをむしり取ると、それを地面に叩き付ける。
「ふう、一件落着と」
「うう……リア充ばくはつしろぉ」
「うるさい! 私たちは! リア充じゃ! ないっての!」
 ギッと教団員を睨みつけるオデットを諌めてテオは教団員を警察に引き渡した。
 なんで私を盾にしたの、とジト目で見てくるオデットにテオは苦笑しながらファストエイドをかけ、答える。
「悪い悪い。A.R.O.A.に報告が終わったらもっかい祭行くか? まだ回れてない所もあるし」
 あんなにはしゃいでいたし、祭をもっと楽しみたかったはず、と機嫌をとるテオ。
「別にいいし」
 ぷう、とむくれる彼女の横顔にトドメの一言。
「それにフリーのイケメンが歩いているかもしれない」
 瞬間、オデットの瞳の奥がギラリと光った。
「それはありえるかもしれない、行こう」
 彼女の瞳が、本気と書いてマジになった。
 とりあえず、機嫌は直ったのか……? テオはホッと胸をなでおろす。

 こうして、ウィンクルムのおかげで祭は再開されたようだ。
 滞りなく、祈りの踊りも開催できたと、妖狐たちは口々に感謝の言葉を述べた。
 リア充ばくはつしなくて、よかったよかった。



依頼結果:大成功
MVP
名前:ニーナ・ルアルディ
呼び名:ニーナ
  名前:グレン・カーヴェル
呼び名:グレン

 

名前:夢路 希望
呼び名:ノゾミさん
  名前:スノー・ラビット
呼び名:スノーくん

 

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター 寿ゆかり
エピソードの種類 アドベンチャーエピソード
男性用or女性用 女性のみ
エピソードジャンル イベント
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 とても簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 5 / 2 ~ 5
報酬 少し
リリース日 08月20日
出発日 08月25日 00:00
予定納品日 09月04日

参加者

会議室


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