トランス戦隊ラブルンジャー!(還源水 マスター) 【難易度:普通】

プロローグ

「皆さん、よく来てくれました! 本日は素敵な企画をご紹介しますよ!」
 A.R.O.A.職員は明るい声で告げると、大きなポスターを目の前に広げる。
 遊園地の風景をバックに、派手な色合いで描かれたポスター。そこには赤を中心に、色とりどりのヒーロースーツに身を包んだヒーローたちが、ポーズを取って構えていた。
 ポスターの上部には大きく、『ミットパークでヒーローショーを体験! 子どもたちに夢を与えてみませんか?』と書かれている。
「遊園地『ミットパーク』で、ヒーローショーを体験する企画です。どうやらスケジュールの調整をミスったらしくて、出演者が足りないらしいです! 体験とか言ってるけど、ピンチヒッターということですね!」
 職員は爽やかな笑顔を浮かべる。これはデートというより、アルバイトなのではないだろうか。
 ウィンクルムの一人がたずねると、職員はさらりと切り返す。
「ヒーローショーへの出演と引き換えに、当日の遊園地の入場料は無料になります。午後のショーが終わったら、あとは閉園まで自由に遊んでいいらしいですよ」
 ヒーローショーに関わる時間は2時間半ほどだ。12時頃に遊園地に到着し、準備をして13時からショーを開始する。
 ショーの時間は約30分。順調に行けば、13時30分頃にショーを終えた後、片付けをして14時30分には解放される。
 ちなみに、遊園地の閉園時間は18時だ。
 ヒーローショーは、屋内のステージで開催される。舞台に立つ以外にも、演出係など、裏方の仕事に回ることもできる。
 企画に興味を持ったウィンクルムの一人が、職員に詳細資料を見せてくれと頼む。
 意気揚々と見せられた資料には、悪役の台詞を文頭に、ショーの大筋が書かれていた。
『まずは手始めに、人間どもの娯楽の場……ミットパークからだ!! ……悪の魔王オーガンは、ミットパークを侵略するため、悪の幹部・暗黒騎士ギルテンを送りこんできた! ミットパークを守るため、ARORA防衛本部所属、トランス戦隊ラブルンジャーが、暗黒騎士ギルテンに立ち向かう!』
 ……聞き慣れたような、そうでないような単語が飛び交っている。
 ともあれ、来たるオーガとの過酷な戦いに備え、参加者同士で絆を深めつつ、子どもたちに夢を与えてみてはどうだろうか。

解説

■企画概要
ヒーローショーに参加して、子どもたちに夢を与えるお仕事を体験しましょう。
舞台に立って演じる他、裏方に徹するのもアリです。
ショーのあとは、閉園まで遊園地で遊ぶことができます。
遊園地には観覧車やジェットコースターなど、通常の遊園地にあるような乗り物が揃っています。

■ショーについて
・ショーの大筋(予定)
1.暗黒騎士ギルテンが現れ、人々を襲う
2.ラブルンジャーが登場、ギルテンや、ギルテンの部下たちと戦う(変身シーンはありません)
3.戦いの末、ギルテンを倒す
となります。
皆様のプランによって、筋が変わる場合もございます。

・役について
主な役は、
1.暗黒騎士ギルテン(1人)(重厚な鎧を身に纏った戦士です)
2.ラブルンジャー(人数制限なし)(一般的な戦隊モノのヒーローです)
3.ギルテンの部下(人数制限なし)(軽装の鎧を身に纏った兵士です)
となります。
上記の他にもやりたい役などありましたら、プランにご記入ください。
足りない役については、遊園地のスタッフが補います。
役がない方は、裏方に回ることになります。

・ショーのプランについて
やりたい役、各シーンでの行動、言いたいセリフなどをご記入ください。
物を壊したり怪我をすると危ないので、戦闘スキルを使うことはできません。

■補足
・遊園地での食事について
売店やレストランなどでお食事される際は、別途料金が発生いたします。
飲み物系なら10~20ジェール、食べ物系なら、モノにもよりますが、30~100ジェールの間となります。

・お土産について
記念品として何かを買うことは可能です。
ただ、システム上、実際のアイテムとしては登録されませんので、ご理解をよろしくお願いいたします。
お値段は、内容によって変わります。

ゲームマスターより

こんにちは、還源水です。
今回のハピネスエピソードは、皆で力を合わせてショーを成功させつつ、遊園地デートも楽しもうというエピソードです。
それでは、ここまで読んでくださり、ありがとうございました。
皆様のご参加を、心よりお待ちしております!

リザルトノベル

◆アクション・プラン

高原 晃司(アイン=ストレイフ)

  折角なんで遊園地で遊びまくろう!
ヒーローショーではラブルンジャーをやってみるぜ
悪い奴をギッタンギッタンにしてやるぜ

「ギルテン!テメェ等には絶対負けないぜ!!くらえ!」
必殺技みたいな感じで大きく振りかぶってぶん殴ってみるぜ
無駄に高い運動神経を使って滅茶苦茶に暴れてショーを派手に見せてやるぜ!

あとは必殺キックみたいな感じで飛び蹴りなんかもやってみてぇな

ショー後は遊園地のアトラクションを楽しむぜ!
「ショーお疲れさんアイン!ここから目一杯楽しもうぜ!」

遊園地にきたら絶対絶叫マシンだろ!
アインがちんたら歩いてるようだったら手を握って引っ張っていくぜ。
「ほらほら、早く!待ち時間がきっとやべぇから急ぐぞ!」


アキ・セイジ(ヴェルトール・ランス)
  ヒーローショーか
子供の頃に何度か来た事があるなぁ

◆概要
ショーでは司会、その後は園を楽しみたい

◆詳細
台本を関係者やランスと軽く読み合わせする時間はあるか?
あればやる
無ければ「アドリブで乗り切るしかない」

子供の頃の記憶を辿ってそれっぽく頑張ってみる
中には当時の俺みたいにオトナノジジョウが分かった冷めた子もいるかもしれないが、
そういう子にはアイコンタクトで協力依頼w

「皆、声を合わせてラブルンジャーを呼ぼう!」

ショーの後は意外とハマり役だったとからかいつつ労うかな
流石はテイルズ…というよりランスの日々の鍛錬の賜なのも俺は知ってるから…

「一寸…かっこ良かったぞ」

さ、閉園まで楽しむとするか
何から乗る?(笑



ちび助(でか丸)
 


●ショー直前!
 遊園地に設置された屋内ステージの舞台裏に、依頼を受けたウィンクルムたちは訪れる。舞台裏ではスタッフがひっきりなしに行き来し、舞台に使う道具の搬入作業などを行っていた。
「これが台本です」
 ヒーローショーの主催である監督が、ウィンクルムたちに台本を渡す。白黒で刷られたそれは、縦にずらりと台詞や演出を並べている。
「ありがとうございます」
 ちび助は台本を受け取り、でか丸と共に読み始めた。同様にアキ・セイジも台本を開き、ざっと目を通す。
「アドリブも可なのか。ここでラブルンジャーを呼んで……」
「で、俺が登場だな」
 ヴェルトール・ランスが、アキの横からひょっこりと台本を覗きこんだ。頼まずとも、最初からラブルンジャーを演じるつもりのようだ。
「ん、そうだな。よろしく頼む」
「任せてくれ!」
 アキの言葉に、ランスはニッと強気に笑ってみせる。ランスが楽しんでいるのが伝わり、アキも赤い瞳を細め、表情を和らげた。
 二人が台本を確認し終えたタイミングで、ラブルンジャーレッドの衣装を着た高原晃司が二人に話しかける。
「皆、今日はよろしくな!」
 底抜けに明るい声で言う晃司に、アキは強く頷いた。
「ああ。今日は頑張って成功させよう」
 他のウィンクルムたちと言葉を交わしたあと、晃司はアイン=ストレイフに台本を見せる。ギルテンの登場シーンが書かれた部分を開き、アインの前に広げた。
「アイン、お前にはギルテンをやってもらいたいんだが……やってくれるか?」
「私が、ですか」
 晃司の頼みに、アインは考え込むように顎に手を当てる。もうひと押しといったところか。
「なんというか、悪役って難しいもんだけど、お前ならうまい具合にこなせるかと思ってな」
 期待を込めた目で見つめると、アインは僅かに息を付いて顎に当てた手を下ろした。
「……やれやれ、こういうのはあんまり得意ではないんですがね。わかりました。やりましょう」
「ありがとな! 頼むぜ」
 アインの答えに晃司は嬉しそうに瞳を輝かせる。衣装係のスタッフからギルテンの鎧を受け取り、アインにそれを託すのだった。
「僕はでか丸と裏方に回ります。皆さんをサポートさせていただきますね」
 ステージに立つ面々が台本を読み込む中、ちび助が柔らかに告げる。  
 一同はショーを盛り上げていこうと、改めて心の内で決意するのだった。こうして各々の準備を終え、ついに本番の時間を迎える。

●悪を退けろ!
 会場は、ミットパークに訪れた家族連れで溢れかえっていた。ショーの時刻を迎え、しだいに会場内が暗くなっていく。幸い、暗闇に怯えて泣き出す子どもはいないようだ。
 ブザーの音と共に会場が一瞬静まり返り、舞台の幕が上がる。マイクを片手に持ったアキがライトアップされた。
「みんな、よく来てくれたな!」
 思いきり息を吸い、腹から声を出す。子どもたちやその親たちの視線を一身に浴びながら、アキは暗記した内容を言葉として発信する。
「夢と希望の国、ミットパークに来てくれたみんなに、ヒーローが会いに来るらしいんだ。もうすぐその時間のはずなんだが……」
 腕時計を見る動作をした直後、突如として低い笑い声が響き渡った。会場内に木霊する声に、アキは何事かと周囲を見渡す。
 アキがいる場所の反対側から、漆黒の鎧を纏ったアイン……暗黒騎士ギルテンが姿を現した。
「夢と希望、ですか。笑わせてくれますね」
「お、お前は! 暗黒騎士ギルテン……!」
 緊迫した面持ちで、アキはアインを見やる。赤いライトに照らし出されたアインは、その長身に重厚な鎧を身に纏っている。頭を覆う甲冑からは、オーガのごとき角が突き出ている。
「わあああっ!! 悪いやつだー!!!」
 子どもの一人が興奮したように声を上げる。威圧的なオーラを醸し出す風貌に圧倒されたのだろう。中には泣きだす子もおり、親が必死に宥めていた。
「ミットランドを征服する前に……まずはこの、ミットパークから我がものといたしましょう」
 片腕に持った黒い刀身の剣を、ゆっくりと天に向かってかざす。ちび助とでか丸の演出によって、雷が光ったときのように照明が明滅した。
 会場のいたる場所からスモークが上がり、ギルテンの部下たちが出現する。皆一様に軽装の鎧を纏い、細身の剣を構えて観客を包囲した。
「司会のお前にも、おとなしくしてもらいましょう」
 アインの言葉と同時、ギルテンの部下たちがアキを取り囲む。ガシャン! と鎧が擦れる耳触りな音が、ステージ上に響いた。
「大変だ……! このままじゃ、ミットパークがギルテンに奪われてしまう!」
 慌てふためくアキに、アインは甲冑の奥でニヤリと口元を上げる。
「ふふ……助けはきませんよ。諦めなさい」
「いや、助けは来るはずだ……ミットパークの守護戦士、トランス戦隊ラブルンジャーが……!」
 ギルテンの部下たちに囲まれながらも、アキはアインを鋭く睨み付けた。アインは僅かに首を傾げたあと、嘲笑するように鼻を鳴らす。
「ラブルンジャー? くだらない。奴らは助けになど来れませんよ。ミットパークは、私たちが完全に占領したのですからね」
 手の内にある剣の柄をコツコツと叩きながら、アインは余裕綽々といった風に言葉を続けた。アキは首を横に振り、否定する。
「いいや、この会場にいるみんなの声が届けば、きっと助けに来てくれるはずだ! みんな、声を合わせてラブルンジャーを呼ぼう!」
 アキの「せーの!」という掛け声と同時に、子どもたちがラブルンジャーを呼ぶ。しかし、一度目の声は小さく、会場内に何の変化ももたらさない。
「やはり来ないではないですか」
 腕を組み、どこかつまらなそうに息を付くアイン。演技なのか素なのかは、ギルテンのイメージとピッタリ合っているためわからない。
 アキは客席の、あまり声が聞こえなかった方向へと目を向ける。ふと、手前の席の無表情な少年と目が合った。 
「きっと、呼び声が小さいんだ……みんな頼む! もっと力強く、呼んでくれないか!?」
 少年に熱い視線を送り、願うように声を張り上げる。無表情な少年は、口の中で何かを呟いて首を縦に振った。
 一縷の望みをかけるような気持ちで、アキは呼びかける。
「それじゃあ行くぞ! せーの!!」
「助けて!! ラブルンジャー!!!!!」
 客席の声が一度目よりも大きな波となり、会場に響き渡った。直後、会場の入口付近にバシュッ! とスモークが噴き上がる。スモークの奥から現れる二つの影に、わあっと歓声が上がる。
「赤き情熱は正義の証、ラブルンジャーレッド!」
 ラブルンジャーレッド……晃司が熱く吼え、ポーズを決めた。真っ赤なヒーロースーツは燃えるように赤い。
「黄色の閃光は希望の光、ラブルンジャーイエロー!」
 近場にいたギルテンの部下を殴り倒し、ランスも同様に決めポーズを取る。黄色いヒーロースーツが、ライトに照らされキラリと輝いた。
「お前達、私の包囲網を、一体どうやって……」
「みんなの助けを求める声が、俺たちに力をくれたんだ!」
 晃司はぐるりと観客席を見渡しつつ、胸をドンと拳で叩く。
「暗黒騎士ギルテン! ミットパークをお前の好きなようにはさせないぞ!」
 ビシッ! とアインを指さし、ランスは声高らかに宣言した。
「たった二人で、この私に盾突く気なのですか。良いでしょう……お前達、やってしまいなさい」
 アインが剣でラブルンジャー……晃司とランスを指し示すと同時、ギルテンの部下たちが襲いかかる。
「とうっ!!」
 襲い来るギルテンの部下の攻撃を回避し、晃司は相手の脇腹にパンチを叩き込んだ。相手は激しい一撃に、ふらりとよろめきながら後退する。
 晃司の背後を取ろうとするギルテンの部下に対し、ランスがとび蹴りを繰り出す。
「てやあっ!」
 ランスの鋭い蹴りに相手は吹き飛び、地面にべしゃりと倒れ伏した。ギルテンの部下たちを打ち倒しつつ、二人はギルテンが待ち構えるステージへと近付く。
「強い、さすがラブルンジャー……!」
 ギルテンの部下を軽々と倒していくヒーローたちに、アキはマイクを片手に実況する。実況するアキの腕を、アキを囲んでいたギルテンの部下が唐突に掴んだ。
「お前、こっちに来い!」
「! 何するんだ! やめ……」
 人質にでもする気なのだろう。腕を強く引かれ、アキは必死に抵抗する。もう駄目かと思った刹那、アキを掴んでいたギルテンの部下の体が横に飛んだ。正確には、ランスによって蹴り飛ばされた。
「大事な司会さんに手出してもらっちゃ困るな」
 拳をゴキゴキと鳴らしながら、ランスが爽やかな声で告げる。アキを守るように、自分の傍へと引き寄せた。
「ラン……ラブルンジャーイエロー! ありがとう!」
 演技とはいえ、純粋な格好良さに思わず本名で呼びそうになるも、何とか堪える。
「ノープロブレム♪ さぁて、大将を打ち取るといこうか……」
「そこまでです、ラブルンジャー」
 冷たく鋭いアインの声が、ステージ上に響き渡った。観客の親子がギルテンの部下に捕らえられ、剣を突き付けられている。目を離した隙に、別の人質を取られてしまったのだ。
「しまった……卑怯だぞ! ギルテン!!」
 打ちのめしたギルテンの部下を足下に敷きつつ、晃司はアインを睨み付ける。
「卑怯? 立派な戦術ではありませんか。私は労力を最小限に抑えたい派なのですよ」
「くっ……」
 悔しそうに息を詰め、動きを止める晃司。ゆったりと近付きながら、アインはさらに言葉を続ける。
「……と、言いたいところですが、今日の私は機嫌が悪い。今回は直々に相手してあげましょう」
 アインは黒い剣を大きく振るう。ザシュッ! という効果音と共に、晃司の体は数メートル先の床へと吹き飛ばされた。ランスは何とか反撃しようと、アインに蹴りを繰り出そうとする。だが、人質がいては全力が出せない。簡単に足を掴まれ、そのまま、投げ飛ばされてしまう。
「このままじゃラブルンジャーたちが……! ど、どうすれば……」
 緊迫しきった声で言うアキに、ランスがよろりと立ち上がった。
「っ……みんなの力を、もう一度貸してほしい!」
 倒れそうになりつつも何とか足を踏みしめ、晃司も言葉を続ける。
「みんなの応援が、俺たちの力になる。みんなの声がパワーになるんだ! そうすれば、人質も助けられるし、ギルテンを倒すこともできる!」
 ヒーローたちの言葉に、アキは強く頷く。
「なるほど……やるしかない! みんな、お願いだ。君達のパワーをヒーローに!」
 アキは大きく息を吸い、音頭を取るように大声を張り上げた。
「がんばって!!! ラブルンジャー!!!!!!」
 アキの声に、観客たちが一斉に声を上げた瞬間。カッ! と眩い光が会場内を満たす。光が瞬いた瞬間、人質の親子を囲っていたギルテンの部下たちが、その場に倒れ伏した。
 鎧の崩れる金属音に、アインはハッとしたように周囲を見回す。
「ぐっ……な、なんですと……」
「みんなの応援が、悪を打ち破る力になったんだ!」
 声援のエネルギーを受け全回復を果たしたランスが、アインに向かって駆けた。アインは剣を前方に突き出し、ランスを貫こうとする。ランスは身を翻しながら斬撃を避け、力強く宙へと飛び上がる。回転しながら両足をまっすぐに伸ばし、アインへと叩き込んだ。
「ギルテン! テメェ等には絶対負けないぜ!! くらえ! 必殺!」
 ランスの攻撃によろけたアイン目がけ、晃司は跳躍する。正義の鉄槌……飛び蹴りが綺麗なフォームを描き、アインの胸部に叩き込まれた。火山が噴火するときのような効果音が、会場内に鳴り響く。
 アインは剣を取り落とし、その場に膝を付いた。
「……今日のところは撤退してあげましょう。次は、今回のようには行きませんよ」
 黒い煙が撒き上がり、アインの姿が見えなくなる。煙が晴れた頃には、観客と司会のアキ、ラブルンジャーの二人だけが残されていた。
「ありがとう。みんなのおかげで、ギルテンからミットパークを守ることができた!」
 晃司が明るい声で感謝の言葉を述べると、子どもたちは、わあっと黄色い歓声を上げるのだった。ランスも笑顔で手を振りながら、子どもたちの祝福に応える。
 こうして、ヒーローショーは無事に幕を閉じたのであった。

●仕事のあとで
 ショーも無事に終わり労いの言葉を掛け合ったあと、ウィンクルムたちはペアごとに分かれて遊園地を楽しむことにした。
「ショーお疲れさんアイン! ここから目一杯楽しもうぜ! まずはジェットコースターだ!」
 晃司は満面の笑みを浮かべつつ、前方に見えるジェットコースターを指さす。ジェットコースターは騒々しい音を立てながら、レールの上を滑走していた。
「ジェットコースターですか。良いですよ」
 ゆったりと歩きながら、アインは静かに頷く。
「ほらほら、早く! 待ち時間がきっとやべぇから急ぐぞ!」
 晃司はアインの手を引いて、ジェットコースターの乗り場へと向かう。たくましいアインの手のひらから、温かい体温が伝わってくるようだった。
 晃司やアインがジェットコースターを楽しむ一方、アキやランスも遊園地のパンフレットを見ながら行く場所を選んでいる。
「ランスのラブルンジャー、意外とハマり役だったじゃないか」
「いやあ、緊張した。けど楽しかったな!」
 アキが褒めると、ランスは満足そうに明るい笑みを浮かべた。昼の太陽のような笑みを見上げ、アキも釣られて微笑む。ヒーローショーでのランスを思い返し、ふんわりと胸の奥が温かくなった。
「一寸……かっこ良かったぞ」
 ジェットコースターが滑走する大きな音が、二人の頭上を通り過ぎていく。
「セイジ? 今何て?」
 きちんと聞こえなかったらしい。ランスが首を傾げ、聞き返す。再度告げることに、なんとなく恥ずかしさを覚え、アキは適当にはぐらかして首を横に振った。
「……何でもない。さ、閉園まで楽しむとするか」
 
●遊園地でのひととき
「いやー、思いっきり叫んでスッキリしたな!」
 ジェットコースターから降り、晃司はすうっと空気を吸い込んだ。緊張したあとに吸う空気は、どこか気持ちがいい。
「それは何よりです」
 晃司の横顔を眺めながら、アインはいつもの調子で答える。そういえば、ジェットコースターに乗っている最中も、アインは終始無言だったなと晃司は思い返した。
 そんな中、ぐう、と晃司のお腹の音が鳴り響く。
「腹減ったな……レストランに行って何か食べるか」
「ふむ、晃司が疲れてるようだったら構いませんよ」
 二人は近場のレストランに入ることにした。高級感が漂う、上品な洋食レストランだ。 アインが注文すると、しばらくして美味しそうなパスタが運ばれてくる。レストランオススメのパスタは70ジェール、二人分で140ジェールのお値段だ。
「んー、うまい! そっちはどうだ?」
 香ばしいベーコンの香りと、クリームソースの甘みが食欲を誘う。パスタを食べながら、晃司は興味津々にアインのパスタを見やった。
「ええ、中々美味しいですよ」
 アインは静かに答えつつ、ほうれんそうと牛肉のトマトパスタをフォークに巻き付ける。
「そか、良かった。それにしても、アインのギルテン役、ピッタリですごく良かったぜ! 苦手とかいいつつ、完全になりきってたじゃねぇか」
 晃司の言葉にアインは食べる手を止めて、ふむ、と軽く息を付く。
「悪役にピッタリ、ですか。まあ、悪くはありませんね」
 何か考えるように青い瞳を細めるアインに、晃司はさらに言葉を続けた。
「こう、長身とごつい鎧が見事にマッチしてたよな」
「……晃司もラブルンジャーレッド、似合っていましたよ。まさに適役でした」
 アインは口元に笑みを浮かべ、パスタを巻き付けていたフォークを、スッと晃司へと差し出す。
「ん?」
「欲しそうに見ていませんでしたか?」
 フォークの先を僅かに揺らして問うアインに、晃司は一瞬言葉を切ったあと、納得したように頷いた。
「あ、ああ。そうだな……もらうぜ。ありがとな!」
 とくに遠慮する理由もなく、晃司はアインのフォークからパスタをぱくりと口に頬張るのだった。
 思い思いに過ごすうち時は過ぎ、閉園時間が近付きつつある。アキとランスは観覧車に乗り、上空から遊園地を見下ろしていた。
 空は赤く染まり、夕日が遊園地を照らし出している。
「遊園地とか、久しぶりに来たな……子どもの頃以来か」
 懐かしむように呟くアキに、ランスが興味を持ったらしい。軽い調子で問いかけてくる。
「セイジの子どもの頃か……どんな感じだったんだ?」
「うーん、わりと聡い子だったかな。子供らしくない可愛くないって言われたよ」
「ふーん……」
 ランスは向かいに座るアキを、ジッと、探るような視線で見つめた。
「ん、どうした?」
 ランスの視線に気付き、アキは首を傾げる。ランスは待ってましたとばかりに瞳の奥を輝かせた。
「いや、さっきなんて言ってたのかなってさ。うまく聞き取れなかったし」
「お前、このタイミングで……というか、まだ気にしてたのか」
 アキが若干呆れたように目を細めると、ランスはにこりと笑みを深くする。
「なあ、教えてくれよ」
 アキの隣に座り、ずいっと近寄るランス。接近する精悍な顔立ちに、アキは思わず身を引いてしまう。しかしここは観覧車。逃げ場はない。
 風の唸る音を聞きながら、アキは静かに溜め息を付いた。
「……しょうがないな、もう三度目はないからな。……ヒーローを演じてるランス、格好良かったぞって」
 夕日に染まる観覧車……密閉された空間に、アキの声だけが響く。まるで告白するときのようなシチュエーションだ。何とも言えない雰囲気に、耳が熱くなる。
 アキの様子に、ランスはからかうように、にやりと口元を上げた。
「可愛い」
「バカ。何が可愛いだ」
 恥ずかしい思いをさせた仕返しとばかりに、アキはランスの耳の後ろに手を伸ばす。そのまま、指先でわしゃわしゃとかいてやった。
「あ、そこ、気持ちいい……もしかして、可愛いって言われて嬉しかった?」
「嬉しいわけないだろ!」
 ランスの解釈に恥ずかしいやら何やら、とにかく色々なものを紛らわすため、アキはひたすらにランスの耳や金色の髪を撫でるのだった。
 こうして各々の時間を過ごすうち、遊園地は閉園の刻を迎える。ウィンクルムたちは見事ヒーローショーを成功させ、遊園地も満喫したのであった。



依頼結果:成功
MVP

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター 還源水
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 男性のみ
エピソードジャンル コメディ
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 普通
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 3 / 2 ~ 5
報酬 なし
リリース日 04月02日
出発日 04月12日 00:00
予定納品日 04月22日

参加者

会議室

  • [3]高原 晃司

    2014/04/11-22:04 

    ちゃーっす遊園地に遊びにきたぜ!!さて…どうするかな

  • [2]アキ・セイジ

    2014/04/11-11:05 

    一寸息抜きに来たんだ。
    子供の相手は相棒の方が得意だけどさ。(笑

  • [1]ちび助

    2014/04/09-00:36 

    初めまして。
    頑張りますので、よろしくお願いしますね。


PAGE TOP