【例祭】想い花火(上澤そら マスター) 【難易度:簡単】

プロローグ

●ジェンマ祭
 4年に一度の大祭、ジェンマ祭り。
 今年はその大祭にあたる年である。

 フィヨルネイジャの天使達の力によって動き出した蒸気機関車「ムーン・アンバー号」に乗って
 ウィンクルム達は夜のイベリン領へと訪れていた。

●イベリン領の想い花火
 音楽と花に溢れるイベリン領。
 この初夏にイベリン王立音楽堂ハルモニアホールが再建されたこともあり、例年以上にジェンマ祭りも盛り上がりを見せていた。

「本当に、花に火をつけるんです」
 そう微笑むのは、イベリン領の花屋の娘。
 彼女が手に持つのは、植物のツルのように見える。
「このツルに、火を点けるんです。すると線香花火のように火花を発するんですよ」
 群生などしない植物らしく、この大祭の時期にだけ販売されるらしい。
 普段の線香花火と要領は一緒で。
 上手に持たないと、その花火は膨らんでいく途中で落っこちてしまうようだ。
 また、本来ならば咲いていた花と同じ色の火花を発するとのことだが、すでにツルだけの状態になっているためどんな火花が出るのかわからない。
「ふふ、火を付けてみて、そしてその花火がいつまで続くか……最後まで花火が落ちず、消えることができたならば想いが叶うと言われています。
 よかったら、河原で浴衣など着てしんみりと楽しんでみませんか?」
 
 穏やかな夜を、イベリンで。
 想い花火を二本握り、河原へと出かけるウィンクルムだった。

解説

●流れ
イベリン領の河原で線香花火っぽい「想い花火」に火を灯してしっとり過ごそうぜ!です。
浴衣推奨ではありますが、必須ではありません。
こだわりなどありましたらプランに服装をご記入ください。

また、今回は「想い花火」の描写のみです。
花火がチカチカする中、パートナーと二人きり、何を想うのか。花火の結果にどう思うのか。
割と心情重視なリザルトになるかと思われます。
花の色によって効果的なお願い事はあるようですが、そこは全く気にせずとも無問題!ですっ

●ダイスタイム
「A、B」両方「6面」でダイスを「2回」ふってください。
Aは花火の落ちるタイミング
Bは花火から出る火花の色です。

1回目に振った結果と、2回目に振った結果、それぞれを神人、精霊に当てはめてください。
1回目と2回目の結果をどちらに割り振るかはPL様にお任せします。

神人、精霊共にプランの頭に
【A:● B:●】
と●部分に数字を入れていただけると幸せです。

【A】花火継続時間
1:10秒
2:20秒
3:30秒
4:40秒
5:50秒(最後まで落ちずに到達)
6:60秒(最後まで落ちずに到達)

【B】火花の色
1:赤(自分の願いの方が叶いやすい)
2:青(他人の願いの方が叶いやすい)
3:ピンク(恋愛系のお願いに効く)
4:黄色(将来の目標へのお願いに効く)
5:金(どんな願いも叶える)
6:白(なりたい自分の目標に効く)

【例】
ダイス「A:4 B:3」の場合
「あ、ピンク…恋愛系のお願いか…なんだろう…
 『ずっとタカシくんの隣に居られますように』かな…あ、最後までいけそう、かな…
 頑張れ、花火頑張れ!君ならできる、燃えて!もっと燃えて!…あ、落ちちゃった」
みたいな。
初めからお願い事考えていていいですし、色によって即興で考えた風でもよきかと。

●他
花火後は河原でまったりするもよきかと!
基本個別予定ですが、グループも可ですっ

花火代として一組「500Jr」いただきます。

ゲームマスターより

こんにちは!上澤そらですっ。

ほんのりとジェンマ祭り開催させていただいております。
イベリン領にて花火ですっ。ぜひ浴衣等着つつ、まったりお楽しみいただければ!
そして雨鬥露芽GM&IL様の素敵アイテムをゲットしてくださいっ!

琴線に触れましたら何卒よろしくお願いいたしますっ!

リザルトノベル

◆アクション・プラン

リチェルカーレ(シリウス)

  【A:5 B:5】
空色の地に、白と薄紫の椿の柄の浴衣
髪は軽くアップにして鬼灯の簪を挿している
ちゃんと着られているかしら?
シリウスが簪に触れるとき 彼の手が耳元に触れてそのぬくもりにどきり
浴衣の感想に頬を染めて「ありがとう」とはにかみながら

金色の花火に「わぁ」と嬉しそうな声
願いごと?ええと、皆が幸せでいられますように…かな
大好きな人たちが笑顔でいてくれたら、私も嬉しい
シリウスだって そうでしょう?
否定の言葉には笑顔 
そんなことないわ あなたは優しい人よ
私 ちゃんと知っているもの
確信に満ちた言葉をまっすぐに

シリウスは何を願うの?
告げられた彼の願いに驚いた顔
…側にいるわ
今までもこれからも ずっと



ニーナ・ルアルディ(グレン・カーヴェル)
  A:1 B:2

花火ですよーっ、綺麗ですねっ!
周りの皆さんの花火も綺麗ですし…
あっ、グレンのも私のとお揃いの色ですねっ!
もう、花火落っことすとかいくら私だってそこまでそそっかしくなんて…あっ
…わ、笑わないでくださいよーっ!
え、一緒に持ってもいいんですか?
でもそれはグレンの…それじゃあ、はんぶんこしませんか?
こうやって一緒に花火持ってるとくっついていられて幸せです。

落っことしちゃいましたけど、ちゃんと花火は付きましたしグレンのお願い事叶いますよね。
私の願い事?
その…ずっとグレンと一緒にいられたらいいなって…
グレンは何をお願いしたんですか?
…えーっ、内緒なんてずるいです!



かのん(天藍)
  A:5、B:4
浴衣
あまり普段着ない色合いの物を、白地に華やかな牡丹

想い花火、聞いた事はありましたけど植物なのに不思議ですよね
黄色は将来の目標でしたでしょうか?
何があっただろうかと首傾げ、天藍の言葉に笑みを浮かべる
以前話した事だけど、覚えていてくれた事が嬉しい
あ、最後まで残りました
続けていればいつか望む色を咲かせる事ができるでしょうか?

天藍のが途中で落ちて
この花火にお願いしなくても、天藍なら自分の力で叶えられるという事なのだと思います
天藍が想った事を聞いて微笑み
それなら、今でも天藍は特別でこれからもずっと傍に居れたらと思っていますから…

花火の後で
天藍に請われるまま、10年ぶり位で再会した事等話す



和泉 羽海(セララ)
  A:4 B:1

浴衣…着るって言ったら…がんばった…お母さんが

願い事…んと…『世界平和』…とか?
そしたら、あたしも平和に引き篭もれる…
この人のは…聞いてないけど…
「却下」(筆談

●花火
赤だ…綺麗…えと、じっとしておけばいい…かな
…この人が静かなのって、すごく珍しい…
黙ってれば…カッコいいのに……そんなに叶えたいのかな、願い事…あ

相性が良いなら、落ちなかったんじゃ…
「あたしじゃ、なくて…他の人となら、願い事…叶ったかも…

もっとふさわしい人、他にたくさんいる…と思う
この人の言ってることは、大抵よく分からない…好きとか…恋とか…も…
でも…あたしなんかでも…いつか…ふさわしい人に、なれたり…するのかなぁ…



アンジェローゼ(エー)
  A:5 B:6

お花が花火になるなんて不思議
エーも同じ色なのね、嬉しいな
白い幻想的な炎をみつめどちらが長く保つか競争しましょ、と楽しげに微笑む

なりたい自分…私はもっと強くなりたいな
エーには守られっぱなし(家事失敗や一人で出掛けナンパされたことなど思い返し)
私もエーを守りたいし幸せにしたい…笑顔でいてほしい
…実家から帰ってこい、お前に相応しい精霊が見つかったという手紙が届いてる事をまだ打ち明けられてない
…エーと離れるのが怖い
彼以外は考えられないのに、私は弱い…でも貴方となら強くなれる、きっと

あ、エーの火…落ちたね
私の勝ち、と無邪気に笑い
そっと寄り添う
恋人なんだし甘えていいよね?
もっと名前、よんで?


●金と紅
 シリウスは、己の神人であるリチェルカーレの姿に目を奪われた。
 ふわふわと可愛らしい雰囲気のリチェルカーレはその身を空色の浴衣に身を包んでいた。
 白と薄紫色の椿柄が入ったその浴衣は、彼女の雰囲気にとても良く似合う。
 いつもは一つのおさげに結んでいる銀青色の柔らかな髪は、軽くアップに纏められ、鬼灯の簪が挿されている。
(ちゃんと着られているかしら?)
 言葉を発さぬシリウスに少しだけ不安を覚え、リチェルカーレが小首を傾げれば。簪はゆらりと揺れる。
 気付けば、シリウスは彼女の揺れる髪に思わず手を伸ばしていた。
 簪の光を弾く彼女の髪に触れ、「器用にまとめてあるな」と呟き、伸ばした手の理由を後付ける。
 彼の、色は白いが男性らしくしっかりとした手がリチェルカーレの耳元に触れられれば、胸はドキリと跳ね、触れられた耳から熱を帯びていく。
「……よく似合ってる」
 彼女にしか聞こえない距離と声でシリウスが囁けば、彼女の熱は頬も染め。
「ありがとう」
 はにかむ彼女の柔らかな笑みに、普段は無表情に取られがちなシリウスの口の端は自然に弧を描いた。

 二人が花火に火を灯せば、リチェルカーレの手に持つ花火からは金の煌めき、シリウスの手からは真紅の輝きが暗闇を照らした。
「わぁ……」
 キラキラと輝く花火に嬉しそうな声を上げる彼女の姿を見れば、シリウスの瞳は自然と細まる。
「金色はどんな願いも叶うんだろう。……リチェは何を願うんだ?」
「願い事?えぇと……」
 一瞬、リチェルカーレは青と碧の瞳を空に泳がせた。そして金色の花火に視線を戻しながら
「皆が幸せでいられますように……かな。大好きな人達が笑顔でいてくれたら、私も嬉しい」
 呟き、そし彼に向かいニッコリと笑った。
 大好きな人達、の一番最初に居るのは、勿論シリウスなわけで。
 彼女の笑顔と言葉にシリウスは、予想通りだという想いを抱く。
「欲がないな」
「シリウスだって、そうでしょう?」
 小首を傾げるリチェルカーレだが、その真っ直ぐな視線からシリウスは目を逸らした。
「……オレはそんなに優しくない」

 あまりにも真っ直ぐで、純粋な彼女の瞳。
(お前の見ているような、柔らかな優しい世界はオレには見えない)
 ……生きて来た環境が違っていた。
 花と歌を愛し、家族と共に笑顔を絶やさず生きて来たリチェルカーレ。
 きっと彼女にもいくつもの辛いことはあっただろうが、戦闘とは無縁だった彼女に比べれば、シリウスの状況は過酷の極みと言える。
 幼少時にオーガによって村が滅ぼされ、どんなに叫んでも、誰も助けてなどくれなかった。
 その時から、他人に頼ることなんて無駄だとずっと感じていた。
 神人なんて、精霊なんて。所詮……
 そんな風に思っていたのに。
 
 彼女に向き直れば、笑みを湛えながらリチェルカーレが言葉を発した。
「そんなことないわ。あなたは優しい人よ」
 真っ直ぐな瞳でシリウスを見るリチェルカーレ。小柄でうら若き乙女であるにも関わらず、その眼差しは慈愛と温かさに満ちている。
 彼女の表情と言葉に、シリウスは目を見開いた。 
「私、ちゃんと知っているもの」
 笑みを浮かべながらも、その瞳は真剣で。確信に満ちた言葉を真っ直ぐに彼へと伝えるその表情は、力強さも感じられる。
「……敵わないな」
 苦笑いしつつそっと呟くシリウスに、リチェルカーレもふふ、と笑い。
「シリウスは何を願うの?」
 その言葉に、彼は視線を花火へ落とした。
「……傍にいると言ってくれた……あの言葉がずっと続けばいい」
 真っ直ぐに赤い火花を見つめる彼に、驚きを覚えるものの……リチェルカーレは直ぐに応えた。
「……側に居るわ。今までもこれからも、ずっと」
 その言葉にシリウスが彼女を見れば、同調するかのように赤い色は地面へと落ちた。

 彼女の手元では金色の灯火は未だ輝いている。そして彼女の髪を彩る鬼灯も光を増し。
 リチェルカーレの口から発せられた言葉を、シリウスは嬉しそうに噛みしめた。
「リチェ……」
「シリウス」
 浴衣姿のリチェルカーレをシリウスはそっと抱き寄せた。
 部屋のランプが消えるかのように、花火の火が暗闇に消えるた瞬間……二人の唇は触れ合うのだった。


●朱と太陽
 セララは、和泉 羽海の姿を見た瞬間に声にならない叫びをあげた。
 その反応に、羽海はビクッ!と身体を強張らす。
 一呼吸置いて彼が口を開いたかと思えば。
「ああっ、羽海ちゃ~~~んっっ!!浴衣よく似合うね!涼しげで!可愛くて!それでいて色気もあって……!!ヤバイっ、鼻血でそう……ッッ!」
 真剣に鼻を抑えるセララを見て、羽海は溜息をもらす。
 母に浴衣を着ると伝えた所、想像以上に気合いを入れてくれたわけで。
 淡い黄色を基調に、水色の帯を付けた羽海。髪の短い彼女の後ろに回れば、うなじが見え。セララはガッツポーズを取り、羽海の母に感謝の言葉を伝えようと決意した。

『行くよ』
 羽海にメモで伝えられ、二人は花火を受け取る。
 川辺で二人ベンチに座り、花火に火を点ける前にセララは羽海に視線を合わせた。
「羽海ちゃん、願い事は考えた?」
 セララの笑顔は、夜の闇すらも照らすように明るい。そんな彼の光を受けながら羽海はうぅむ、と考えた。
『世界平和、とか……』
 と、口を動かしてみる。
(そしたら、あたしもウィンクルムとして過ごさず、平和に引き籠れる……)
「へー、世界平和かぁ。オレはね~、勿論『羽海ちゃんと今以上にもっとラブラブになれますよーに!!』」
 目を丸くする羽海。そして
(この人のは……聞いてないけど……)
 ぺらり、と羽海がスケッチブックのページをめくれば『却下』の文字。このページはよく使用するものの一つ。
「え~、だめ?そんなに照れなくてもいいのに……そこが可愛いんだけどっ!」
 平常運転のセララに呆れつつ、羽海は花火に火を近づけた。

 二人同時に花火に火を点ければ、セララの持つ花火は彼の髪と同じような金色に光り輝き。
 一方、羽海の持つものは朱色。
「羽海ちゃんの赤、浴衣に似合うね!よーし、どっちも頑張れー!」
 セララはそう笑うと、花火へと視線を送った。羽海も赤くはじける火花を目で追う。
(綺麗……えと、じっとしておけばいい……かな)
 パチパチと、花火の弾ける音だけが夜に響く。
 羽海は違和感を感じ、隣のセララをこそりと見る。
(……そうか、この人が静かだからだ)
 凄く珍しい、と思う。彼の瞳は真剣に、花火に真っ直ぐに向けられている。
(黙っていれば……カッコいいのに……そんなに叶えたいかな、願い事……)
 そう思うと、己の花火が不安定に動くのを感じ……次の瞬間にはポトリ、と落ちた。
 そして同時にセララの声も上がった。
「あー、俺も落ちちゃった。残念だったね」
 一瞬表情を見せるセララだったが
「でも同時に落ちたってことは、オレ達相性ばっちり!ってことだよね!」
 満面の笑みを向けるセララは、いつも通りのポジティブシンキング。
(でも、相性がいいなら……落ちなかったんじゃ……)
 羽海がサラサラッとペンを走らせた。
「あたしじゃ、なくて。他の人となら、願い事……叶ったかも……」
 その文字にセララは目を細める。
「そうかもね~、世の中女の子、いっぱいいるもんね」
 ヘラリ、と笑う彼に羽海も思う。彼に相応しい人は沢山いるだろう。
「でも……オレは羽海ちゃんがいいなぁ」
 無邪気に、そして視線を合わせるように真っ直ぐに伝えてくるセララ。
 あまりの眩しさに、羽海は目を背けた。
(この人の言ってることは、大抵よく分からない……好きとか……恋とか……も)
 あたしなんかでも……いつか……相応しい人に、なれたり…するのかなぁ……
 羽海が、声にならぬ声で呟いた。
 動く唇に、セララは微笑み。そして己の胸をポンポンッと叩いた。
「オレに相応しいかどうかはオレが決めるよ。羽海ちゃんはばっちり合格満点!」
 羽海がキョトンと目を開き、セララを見やる。
 口の動きで、言葉が伝わったのか。それとも、ウィンクルムの意思疎通なのだろうか。
「あとは、オレを好きになってくれたら完璧なんだけどなー」
 羽海に対してウインクを見せるセララはいつもと変わらず。
 不思議な感覚に陥りながらも……羽海は再度『却下』のページを彼に見せるのだった。


●2人のだけの青
「花火ですよーっ!綺麗ですねっ!」
 暗い闇の中で、一際明るく楽しそうな声が響いた。
 ニーナ・ルアルディはサファイアのような青い瞳を輝かせ、恋人のグレン・カーヴェルが手に持つ花火と己の花火をを交互に見る。
「あっ、グレンの花火と私の花火、お揃いの色ですねっ!」
 周りで他に青い色を放つ花火はないようで。
「青い火花が出ている人はいませんね。でも、皆さんの花火も綺麗です……!」
「おい、はしゃいでせっかくの花火落とすんじゃねーぞ?」
 グレンが彼女に忠告すれば。
「もう、花火を落とすなんていくら私だってそこまでそそっかしくなんて……あ」
 心地よい風が吹いたかと思えば、風は彼女の手から花火を攫って行った。
「……あー、言わんこっちゃない……」
 クックッと笑みを零すグレンにニーナは半泣きの表情を見せ。
「……わ、笑わないでくださいよーっ!」
 涙目で頬を膨らます彼女はやはり可愛く、愛しい。
 グレンは愛しげにニーナを見るも、ニーナは彼の表情に気付かない位に下を向き。
 しょんぼりとグレンの持つ花火を見つめていた。
(……ったく、可愛いヤツ)
「……そんなにしょげるなって」
 彼の言葉にニーナは顔を上げた。
「ホラ、これ。持ってろ」
 え?と小首を傾げるニーナに、グレンは慎重に彼女の手元へ己の花火の持ち手を近づけた。
「……え?一緒に持ってもいいんですか?」
「別にいいって。花火するの楽しみにしてたんだろ?」
 会場に到着する前から、彼女は「どんな色の花火ですかねっ」とムーン・アンバー号の車内で楽しそうな姿を見せていた。
 今ここで気落ちされるより、彼女が楽しむ姿を見ていたいのは当然のことで。
 彼の言葉にニーナは悩むように眉根を寄せた。
「でも、それはグレンの……」
 強引に渡してしまおうか、とグレンが思った瞬間。
「あ。それじゃあ、はんぶんこしませんか?」
 名案思いついたり!とキラキラと瞳を輝かせるニーナ。
(やっぱり犬だわ、こいつ)
 笑いたいのを堪えつつ
「ん。ならお前は上の方を持ってろよ」
 はい!とニーナは頷くと、華奢な手を花火へ寄せた。
 グレンと自然と密着する形となり、彼の温もりを感じれば直ぐに幸福感に包まれる。

 どこかニーナの瞳のような輝きを見せるその花火を、二人はそっと見守った。
「……こうやって一緒に花火を持っていると……グレンとくっついていられて幸せです」
 ニーナの呟きに、グレンはこそりと目を細め。
 二人の視線は花火へと向かっているが、お互いの表情が目に浮かぶようだった。

 程なく、青い花火は最後に一層煌めくと、そのまま光を消した。
「最期までいったが、やっぱりあっという間に終わるもんだな」
「私は落っことしちゃいましたけど……ちゃんと花火は点きましたし、グレンのお願い事叶いますよね」
 笑みを見せるニーナに、グレンは直ぐに花火の意味を思い出す。
「あぁ……青の花火は他の奴の願い事が叶いやすいんだったか……お前は、何を願ったんだ?」
 私の願い事?と復唱するニーナは、少し恥ずかしそうに視線を逸らす。
 頬を少し紅潮させ、言おうか言うまいかモゴモゴとする彼女に、グレンは静かに視線を送れば。
「その……ずっと、グレンと一緒にいれたらいいなって……」
「ふーーん、なるほどねぇ……」
(こういうことを言ってる時のこいつ、無性に撫で回したくなるんだよな……)
 今すぐに彼女の髪を撫でたい衝動を堪える、だがニヤリとした笑みは堪え切れなかった。
 私ばっかり話させてズルいです!と、ニーナも彼に願いを聞けば
「俺の願い事?」
 一瞬間を置くグレンを、ニーナはジッと真剣な眼差しで見つめる。
「秘密だ秘密」
「えーーっ、内緒なんてずるいです!」
 プクッと頬を膨らますニーナに、グレンは彼女の頬に人差し指をそっと充てる。
「……ま、花火になんて願わなくたって、お前の願い事は間違いなく叶うだろ」
 グレンの言葉と頬の温かな感触。
(それって……)
 頬を染めるニーナに「ほら、帰るぞ」と手を差しのべるグレンだった。
 

●包み込む黄色
「かのん……似合う、な」
 白地に華やかで大柄な牡丹の花をあしらった浴衣。そして彼女の美しい紫の瞳とグラデーションするような紫色の帯。
 清楚ながらも艶のある彼女の浴衣姿、精霊であり恋人である天藍は素直な感想を述べた。
「ありがとうございます。天藍も似合ってますよ」
 天藍の身を包む紺地に縞模様の浴衣は、落ち着いた彼の姿を更に大人っぽく見せている。
 二人で微笑み合うも、花火を手にした途端にかのんはガーデナーの表情になっていた。
「想い花火……聞いたことはありましたけど、植物なのに不思議ですよね」
 植物学に精通する彼女であるが、イベリン地方をはじめまだまだ実物を見たことのない植物も多々あるわけで。
 花火を受け取り、火を点けるまで。
 マジマジとその植物を見るかのんの横顔を、天藍はしばし優しい眼差しで堪能するのだった。

 二人が花火に同時に火を灯せば、たちまち鮮やかな黄色の火花が煌めいた。
「同じ色、だな」
 天藍が嬉しそうに笑めば、かのんも微笑む。
「えぇと、黄色は将来の目標でしたでしょうか?」
 何があっただろうか?とかのんが首を傾げるのと同時に、天藍が口を開いた。
「青い薔薇を咲かせるんだろう?」
 忘れていたわけでは決してないが、即座にその言葉が返ってきたことにかのんの胸の奥が熱くなった。
 ショコランドのパーティーで聞いた、彼女の夢。
 いつか彼女の手で、空色の薔薇を咲かせるという夢。
 天藍にとってはパーティーで過ごした時間も勿論幸せだったが、彼女の夢と言う大事な話が聞けたのだから、忘れる訳がない。
「覚えていてくれたのですね……」
 嬉しそうな彼女の表情に「まぁ、な」と呟きつつ天藍は己の手元の花火に視線を戻せば。
 ポトリ、とその花火は重さに耐えかねて地面へと落ちて行った。
 隣のかのんの花火を見れば、まだ鮮やかな煌めきを発している。
 ジッと二人で寄り添い、その花火を見守れば……かのんの花火は地に着くことなくゆっくりと火花を消したのだった。

「最後まで残って良かったな。俺の方は先に落ちたが」
 笑みを含んだ天藍の言葉に
「そうですね……でも。この花火にお願いしなくても、天藍なら自分の力で叶えられるという事なのだと思います」
「……優しいな、かのんは」
 彼女のその言葉に幸せを噛みしめる。二人の視線が交わると、かのんは少しだけ天藍の肩へと頭をもたれた。
「……続けていれば……いつか、望む色を咲かせることが出来るでしょうか?」
 どこかしんみりとした口調のかのんに、天藍は
「きっと、いつか咲かせられるだろう」
 かのんなら、絶対。
 力強い言葉と彼の笑みにかのんは柔らに微笑んだ。
 彼のその言葉はどんな植物の学術書よりも、どんな権威のある植物学者の言葉よりも信じられる。
 かのんはそう思うのだった。

 天藍の願いも尋ねてみれば、彼の口から思ってもいなかった言葉が飛び出した。
 それは、かのんにとっての二人目の精霊である朽葉の名。
 これからも自分が一番かのんの近くにいれたら良い、その想いを誤魔化さずに彼女へと伝えれば。
 気恥ずかしそうだが、真剣な天藍の言葉と表情。
「それなら、今でもこれからも……天藍はずっと特別で。側に居れたら、と思っていますから……」
 かのんが頬を赤らめ、天藍を見て微笑めば。
 彼女の愛らしさに、己の口元が緩むのがわかる。
「かのんがそう想っていてくれる限り、既に願いは叶っているんだな」
「勿論です」

 花火が終わり、天藍は朽葉について色々と話を聞いた。
 10年位ぶりに会ったという彼の話をするかのんの瞳は、どこか懐かしく遠くを見ていて。
 自分の知らない彼女の過去知る翁に、ほんのりとジェラシーを感じる天藍だった。

 
●無垢な白い花達
 闇に包まれた夜であっても、アンジェローゼの輝きは月の如く。辺りを柔らかに照らすようだった。
 楽しそうな笑顔を向ける彼女は、まさに天使と呼ぶに相応しい容貌で、極上の笑みを精霊であるエーに向けた。
「お花が花火になるなんて、不思議ね」
 花よりも、何よりも。真に美しいものを目の前にしながら、エーは恭しく花火を彼女に差し出す。
 小さな手がその花火を掴み、不思議そうに眺めるアンジェローゼに、エーはそっと笑んだ。
 本当に不思議で美しく、この身を捧げても構わないと思える花は彼女だけだと思いながら。

 川辺でベンチに座り、二人は花火にそっと火を点けた。
 たちまち舞い散る花火の火は、アンジェローゼもエーもどちらも真っ白で幻想的な雰囲気を醸し出している。
「エーも同じ色なのね、嬉しいな。……ねぇ、エー。どちらが長く保つか競争しましょ?」
 楽しげに微笑む彼女に、エーは大きく頷いた。
「競争ですか?いいですよ」
 花火へと視線が戻るアンジェローゼだったが
(勝敗よりも、白く光る花と炎に淡く照らされた、美しい貴女の顔を長く見ていたい)
 花火よりも熱い想いを抱きながらも、エーも花火へと視線を戻した。

 白い花火は「なりたい自分に近づける」という。

 エーは、炎を見つめ思う。
(僕はもっと、彼女をしっかり守り支えて、幸せに出来る自分になりたい)
 チラリと見たアンジェローゼは真剣な表情で。
(彼女は本当に目が離せなくて、可愛くて仕方ないんだ)
 もっと構ってほしい。もっと独占したい。
(僕は貴方のもので……貴女は、僕のもの)
 キラリ、と彼の金色の瞳が闇に光る。
 恋人になれたのだから、もっと彼女を楽しませたい。笑顔にしてあげたい。
(ロゼが何でも打ち明けられる……頼れる自分に、なりたい) 

 エーは、花火から視線をアンジェローゼへと移した。
(愛しています、アンジェローゼ。ずっと、何があろうと、貴女の全てを護ります)
 そう願った瞬間、彼の手元から灯火は消えていた。
 そしてアンジェローゼの手元を見れば、まだ白い花はパチパチと燃え盛っている。
 真剣な表情を見せる彼女に見惚れることが出来るならば、早く火が消えたとしても幸せなことだ、とエーは思った。

(なりたい自分……私はもっと強くなりたいな)
 いつもエーに護られっぱなしだと改めて今までのことが思い起こされる。
 慣れない家事をすれば失敗し。気づけばエーが全てをフォローしてくれて。
 1人でこっそりお出かけすれば、知らぬ男に声をかけられ、腕を掴まれそうになったり……その時も、たまたま近くを通りかかったというエーが追い払ってくれた。
 その背中は大きく、暖かかった。だけれど、それと同時に自分は守られてばかりであることを自覚した。
(私もエーを守りたいし、幸せにしたい。……笑顔でいてほしい)
 真剣な表情で彼女は。先日実家から届いた手紙を思い返した。
 その手紙には、帰ってこいと言う言葉と……『お前に相応しい精霊が見つかった』という言葉。こんな手紙が届いているということは、エーに打ち明けられずにいる。
(……エーと、離れるのが怖い)
「……あ、ロゼちゃんの勝ちだ」
 いつの間にか思考に沈んでいたアンジェローゼ。
 目では花火を追っていたはずなのに、火が消えたことに気付かず。エーの言葉で己の勝ちを知る程だった。
 微笑むエーに、
「私の勝ち」
 と無邪気な笑みを見せた。
(彼以外は考えられないのに、私は弱い……。でも、貴方となら強くなれる。きっと)
 そっとアンジェローゼはエーの隣に寄り添った。全ての不安を払拭するかのように。
(恋人なんだし……甘えても、いいよね?)
「ねぇ、エー」
 なんですか?と微笑みながら首を傾げる彼に
「もっと名前、よんで?」
 どこか不安の色を見せながら、しかし寄り添う彼女は可愛らしく、神々しく。
「ロゼちゃん」
 彼女の笑みが零れる。そして彼女の髪を撫でながら、エーは何度も何度も彼女の名を呼んだ 「愛してます、ロゼちゃん」
 例え、何があっても。自分は貴女のもの。
 貴女は、自分だけのもの。



依頼結果:成功
MVP

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター 上澤そら
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 女性のみ
エピソードジャンル ロマンス
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 5 / 2 ~ 5
報酬 なし
リリース日 08月16日
出発日 08月22日 00:00
予定納品日 09月01日

参加者

会議室

  • [13]リチェルカーレ

    2015/08/21-23:45 

  • [12]かのん

    2015/08/21-23:38 

  • [11]ニーナ・ルアルディ

    2015/08/20-00:03 

    グレンだ、テキトーによろしく頼むわ。
    おいニーナ、あんまりはしゃぎ過ぎてせっかくの花火落とすんじゃねーぞ。
    花火が最後まで続きそうでも落としたら元も子もねーからな。

    【ダイスA(6面):1】【ダイスB(6面):2】

  • [10]ニーナ・ルアルディ

    2015/08/19-23:57 

    ニーナ・ルアルディです、よろしくお願いしますっ!
    はーなーびーっ!(花火が楽しみらしくきゃっきゃしている)

    【ダイスA(6面):5】【ダイスB(6面):2】

  • [9]アンジェローゼ

    2015/08/19-11:42 

    僕は精霊のエー。こちらにいらっしゃるお方が、僕の大切なアンジェローゼ様です。皆様よろしくお願いいたします。
    ロゼ様、長く保つようでよかったですね。
    僕はどうだろう…

    【ダイスA(6面):3】【ダイスB(6面):6】

  • [8]アンジェローゼ

    2015/08/19-11:38 



    【ダイスA(6面):5】【ダイスB(6面):6】

  • [7]リチェルカーレ

    2015/08/19-09:18 

    リチェルカーレです。パートナーはマキナのテンペストダンサー シリウス。
    あらためて、よろしくお願いします。

    【ダイスA(6面):3】【ダイスB(6面):1】

  • [6]リチェルカーレ

    2015/08/19-09:17 



    【ダイスA(6面):5】【ダイスB(6面):5】

  • [5]和泉 羽海

    2015/08/19-08:22 

    はろはろ~セララと可愛い羽海ちゃんだよ~よろしくね!
    ロマンチックなイベントだね~楽しみ!

    さてさて、オレの方はどうかな?

    【ダイスA(6面):4】【ダイスB(6面):5】

  • [4]和泉 羽海

    2015/08/19-08:19 



    【ダイスA(6面):4】【ダイスB(6面):1】

  • [3]かのん

    2015/08/19-07:02 

    あらためまして、こんにちは
    かのんとパートナーの天藍です

    本当のお花なのに花火みたいに火花が出るって不思議ですね
    私達は同じ色の花火みたいですけれど、どちらが長く火花がもつんでしょう?楽しみです

  • [2]かのん

    2015/08/19-06:53 

    ん、かのんのは結構長持ちしそうな感じなんだな
    こっちは、っと

    【ダイスA(6面):3】【ダイスB(6面):4】

  • [1]かのん

    2015/08/19-06:49 



    【ダイスA(6面):5】【ダイスB(6面):4】


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