【水魚】海色の愛の示し方(Motoki マスター) 【難易度:簡単】

プロローグ

 タブロス市から自動車で1日の距離にある南国の海、パシオン・シー。
 青い空を鏡に映したような、鮮やかなコバルトブルー。
 白い砂浜に打ち寄せる、静かな波。
 髪を揺らす風を受け止めながら、あなたとパートナーはカプカプ海岸にいる。

 楽しい時間を過ごしていれば、いつの間にか現れていた金髪の子供。
 長い髪のポニーテールと、その身に纏うピンク色の布が風で揺れている。
 目が合えば、怯える素振りを見せた。

 2人で優しく接し、微笑みかける。
 すると子が、そっと2人の腕を掴んだ。
 にっこり笑って、海の中へと引っ張って行く。


 貸し出された『スピリット・チョーカー』を付け、水中でも呼吸出来るようになったあなた達が連れられて来たのは、『水龍宮』と呼ばれるお屋敷。
 板の廊下を進む子が1つの襖を開ければ、畳敷きの部屋。
 部屋の中は、空気があるようだ。
 トコトコと部屋を横切り、奥の障子を子が開ける。
 揺れる青の中、岩と砂で作られた『枯山水』。
 水の中なのに海底の砂で水面を描き、山水の風景に見立てている処が、面白いと思えた。

 畳の上に置かれた、2つのお膳と座布団。
 お膳の上には、海の幸を使った出来たて料理。
 両手でそれを示し、「どうぞ食べて」と伝えたいようだ。
 2人で座布団へと座れば、子はいつの間にか消えていた。

 庭を眺め、食事を楽しむ。
 終わると、子がまたあなた達の背後に現れていた。


 あなた達を次に連れて行ったのは、屋敷の1番奥にある座敷。
 まず目に入ったのは、人魚姫と人間の若者の像だった。
 男女の像の前で、子が振り返る。
 身振り手振りで懸命に伝えてきているのは――。
「……まさか…………キ、キキ、キ……キス?」
 しろって? 此処で?
 途端、ブンブンと首を縦に振る。
 次に子は口をパクパクと開け、2人を向かい合わせた。
「……この流れだと。愛を語れ、とか言ってる感じ?」

 キスするか、愛のセリフを口にするか――。

 頷きにっこり笑って、子は姿を消した。

解説

●目的
1.海の幸料理を、しっとりとした雰囲気の中で楽しむ。
2.男女の像の前で愛を示す。

※愛を語るかキスするかは、お2人の関係にてお選び下さい。
また親密度によって成功しない場合もございます。ご了承下さい。

●水龍宮
和風のお屋敷。選ばれた者しか近付く事が出来ません。ナピナピに気に入られ、案内された者が入れます。

●ナピナピ
あなた達を『水龍宮』に連れて来た子。神の使い。
愛の力を感じると2体の像の目から流れる『祝福の涙』を小瓶に集めようとしています。涙が流れる頃合に座敷に戻ってきます。
その目的について、ナピナピから情報を得る事は出来ません。

●リザルトノベル
・料理を楽しむ場面と、奥のお座敷での場面になります。
(料理中は、この後に愛を示す事になるとは知りません)

・他の参加者と会う事はありません。

●通行料・料理代
1組につき合わせて500Jr戴きます。

●料理
海の幸を使ったお好きな料理・飲み物を、プランにお書き下さい。
未成年の飲酒は描写致しません。

ゲームマスターより

皆様こんにちは、Motokiです。
どうぞよろしくお願い致します。

愛を語るでもキスをするでも、私の方がドキドキしてしまいそうな勢いです。
今からとても楽しみにしております。

皆様の素敵なプラン、お待ちしております!

リザルトノベル

◆アクション・プラン

アキ・セイジ(ヴェルトール・ランス)

  ●食事
相手の目的が分からないから素直には喜べない

ランスは無警戒すぎると思う
館を調べて住人に話を聞こうとするが止められて渋々食べる
食べてからで良いかと矛を収める

技巧が尽くされた海鮮懐石を食べ、冷酒を注ぎ喉を潤す

確かに美味いな
敵意も感じられない

でも疑念は晴れない

●像
目的は何かをナビに聞く
説明があれば不安にならないんだよ?

愛なんて請われて見せるものじゃないだろ(ム
ダメと言ったらダメ(意地っぱり

望んでやるわけじゃないからな
勘違いするなよな
と、ランスの頭をわしわしと撫でる

わしわし

わしわし…

止めろよ!
恥かしい…だろ

ランスの首キスに顔から火が出て固まる
返事の代わりに回された腕をぎゅっと握る

…バカ(幸せで俯く



セラフィム・ロイス(火山 タイガ)
  タイガはしゃぎ過ぎ。せっかくだからご馳走になろうか
■正座で上品に
生ものは外に出るまで馴染みなかったけど
とれたてだからかな。赤身もサーモンも美味しい
(背が伸びてもこういうとこ変わらないな

■びくっと思案
訳ありかな、とは思っていたけど
(無理だ!だってタイガの告白を保留してて…いやいい機会か…?
気持ちはもう決まってる。日常に甘えていたけれど
今なら…)

…気遣いより対等でいたい
一緒にいたいって旅しようって約束したのに
また甘えてしまいそうだ。勇気、出さなきゃ…


…すき…だ

だから…!僕もタイガがっ…好き…なんだ
◆思考停止後、赤面
まっ…てタイガってば!悪かったけど、もう像にも示したし、色々起こりすぎて整理が(抵抗



セイリュー・グラシア(ラキア・ジェイドバイン)
  美味しい海の幸だー!大喜び!
まさしく海鮮天国!
宴会系でアレコレ沢山の海の幸が嬉しい。
お刺身はどんな種類でもウマいからな。
伊勢海老も刺身にして良し、焼いて良しと。
アワビはステーキで。そして鯛飯だ。
あと焼き魚とか煮つけとか。ウマさに感動。
と終始笑顔で食べる。
いつもラキアが作ってくれるご飯も超美味しいけれど、海の世界の幸は超新鮮だから、刺身が旨い(激感動。
これは日本酒案件だな!
こういう落ち付いた雰囲気も久しぶりだ。
依頼の緊張感も良いけど、ゆったりした雰囲気も良いよな。

愛を語る:
「いつもラキアと一緒で俺はとても楽しいし嬉しい。
一緒に居て心地よいのは愛だと思う。
これからもずっと一緒に過ごしていこうぜ」



蒼崎 海十(フィン・ブラーシュ)
  焼き魚に刺身、握り寿司。締めに雑炊を楽しむ
飲み物はお茶
焼き魚は塩だけのシンプルな味付け
魚の旨味が出てて美味いな
刺身は身がぷりっぷりで、わさび醤油をたっぷり付けて
新鮮で美味い
寿司は飯と具のハーモニーが凄く良い
最後に魚の出汁で作られた卵雑炊
庭からの眺めも最高で幸せ

一つだけ残念なのは、俺がまだ酒が飲めないって事だな
フィンと一緒に飲めたらよかったのに
せめてお酌する

奥の座敷でキス?
…愛を語るかキスするかって…何でだ?

でも、美味しいご飯を頂いた手前、何もしない訳にはいかないよな…

余裕っぽいフィンを驚かせてみたくなった
言葉に出すのは照れてしまって難しいけど

フィン
名前を呼んで

驚いたか?
…何だかこっちまで照れる



明智珠樹(千亞)
  ●食
(食事内容お任せ、NGなし)
ふふ、このような場所で食事なんて風流ですね、落ち着きます。
しかし…先程の子は何処へ行ったのでしょうね。

ふふ、美味しいですし、美味しそうな千亞さんを見られるのは幸せです。

●愛
私と千亞さんの愛の深さが見たいのですね…!
さぁ千亞さん、愛の言葉でもキスでも両方でも!さぁ!

手本、ですか。
わかりました。それでは
(おもむろに脱ぎだし)
おや、結構ですかそうですか

(言葉に)
…千亞さんは可愛いですね。

貴方に出会うために記憶喪失になったならば、
私は神に感謝します

(恭しく手の甲にキス)
おや、物足りなさそうですね…!
(艶やかに笑み)
どこがご希望ですか?

…素直じゃない千亞さんも、愛しいです


●恋人への愛の示し方
 海の幸がふんだんに使われた料理が乗るお膳を前に、まずはと蒼崎海十が箸を向けたのは、塩だけでシンプルに味の付けられた焼魚。
 ふっくらほかほか、湯気もほくほく。
 吸い込まれるように沈む箸先で柔らかな白身を抓み、口に運んだ。
 口に入れた途端、小さく「うま」と洩らして、熱々のそれを舌の上で転がしてから飲み込んだ。
「魚の旨味が出てて美味いな」
 もう一切れ口に入れて、「な?」と隣に座るフィン・ブラーシュに目を向ける。
 青い瞳を細め頷いたフィンは、今度は刺身へと箸を伸ばした。
 少しも臭みのない、冷やりとした美味しさが口内に広がる。
「新鮮な魚だ、美味しいね」
 すぐさま次に伸びる箸が、その証拠。
 隣で海十は、わさび醤油をたっぷりと刺身にかけている。口に入れ、唸った。
「本当だ、新鮮で美味い」
 その喜び様に、フィンが笑み零す。
 美味しそうに食べる海十の顔を見ているだけで、己の顔にも自然と笑顔が広がっていった。
「こっちの寿司は、飯と具のハーモニーが凄く良い」
 マグロにハマチと、海十は握り寿司に箸を進めていく。
「一つだけ残念なのは――」
 今まで上機嫌だった顔を僅かにだけ曇らせて、海十が箸を置いた。
 顔を向けたフィンにチラリと視線を向けてから、庭へと戻す。
「俺がまだ酒が飲めないって事だな」
 ――フィンと一緒に飲めたらよかったのに……。
 小さく呟いたその言葉が、なんだか嬉しくて。
 微笑み横顔を見つめていれば、海十が手を伸ばし、フィンの膳にある酒の入った透明な肩口を取った。
 せめて、と突き出す。
 盃を持って差し出して、慣れているとは言えない手付きの海十から、お酌を受けた。
 注がれて波打ち、灯りに反射した透明な酒が、光を放って揺れる。
 特別なものとなった酒を、フィンがくいっと飲み干す。その隣で、海十がお茶を口に含んだ。
 2人同時に「ほぅ……」と息をついて、庭を眺める。
「うん、凄く贅沢な一時だ」
 フィンの言葉に、海の庭ごと残すように、瞼を閉じた。
「――ああ。最高で、幸せだな」
 最後の締めは、魚の出汁で作られた卵雑炊。
 味が気に入った事は、黙っていてもフィンには伝わる。
(今度作って驚かせよう)
 こんなふうに、海十の好きなものは、こっそりと恋人の心のメモへと増えていくのだ。

「――で、こうなる訳だね」
 子の消えた座敷を見回したフィンの隣で、海十が腕を組み、首を傾げていた。
「……愛を語るかキスするかって……何でだ?」
 意味が解らないと唸りながらも律儀な彼は、「美味しいご飯を頂いた手前、何もしない訳にはいかない」と悩む。
「取り敢えず、愛の言葉いっとく?」
 ひどく軽く、あっさりと。
 問いかけてくる言葉に、海十が目を見開く。
 その様子にフィンが微笑み、「だって」と軽く肩を竦めた。
「海十に囁く愛の言葉なんて、沢山思い付くよ」
 首を傾げるように微笑んだままの恋人の、その余裕さを、崩してみたくなる。
「……フィン」
 かすれる声が、名を呼んで。向けられた顔を、引き寄せた。
「…………ッ!?」
 それは一瞬の、ぶつかるようなキス。
 普段の海十そのままに、我儘で、キツくて――。
 けれどもとても、優しくて。
「驚いたか?」
 固まるフィンに、悪戯が成功した子供のように笑う。
「……驚いた」
 素直に答えて。
(初めてだよね? 海十からのいきなりのキス……)
 心の中で確認し、感動する。
「凄く驚いたのと、凄く嬉しいのとで、オニーサンどうにかなりそうです……」
 フィンの言葉に、睨むように顔を見上げてから、俯いた。
「恋人、なんだから」
 これくらいする、と小さな声が答える。
「ね、海十。もう一回、して欲しいなぁ……なんて」
 可愛い恋人に甘えてみれば、「調子に乗るな」と素っ気ない答えが返った。
 でもその顔は、真っ赤に染まっていて。

「好きだよ」
 2体の像が涙を流すその前で、自然と言葉が零れていた。

●素直じゃない兎への愛の示し方
 アサリ貝のワイン蒸し、イクラ丼、甘エビのフライ、カニ味噌、甘鯛のみそ焼き、うなぎの蒲焼。
 お膳の上に並んだ料理に手を伸ばす前に、明智珠樹は庭へと視線を向ける。
 海面で揺れる波の影響を受け、庭へと差し込む光もチラリチラリと揺れていた。
 それを眺めて、目を細める。
「ふふ、このような場所で食事なんて風流ですね」
 落ち着きます、と呟いた明智の隣で、千亞は小さく首を傾げていた。
「お食事に招待してくれたのかな?」
 キョロキョロと部屋の中を見回す千亞と一緒に、庭以外は襖で囲まれた部屋に視線を向けた。
「……先程の子は、何処へ行ったのでしょうね」
「うん……」
 長い白耳を片方へにょりと曲げて、気になる様子。
 けれどもブンブンと首を振って、千亞は箸を持った。
「せっかくだから有難くいただくか」
 子の笑顔が、甦る。きっと、美味しく食べて貰いたいのに違いない。
「……美味っしい!」
 見開いた赤い瞳が、キラキラと輝いている。
 もうひと口と、プリプリの甘エビのフライも口に入れた。
 その幸せそうな横顔に、ふふ、と明智が笑み零す。
「美味しいですし、美味しそうな千亞さんを見られるのは幸せです」
 ピタリ。
 明智のその言葉に、明智が言ったからこそ心配になるその言葉に、千亞が動きを止めた。
「美味しそうに食べる千亞さんを見られるのはって意味だよな?」
 ジトリと見返し、確認せずにはいられない。
 おや、と相手はチラリと笑う。
「ふ……ふふ……幸せですね」

「キスするか、愛の言葉……!?」
 頬を赤く染めて、千亞が驚く。
 消えた子の立っていた場所を凝視し続ける千亞の隣で、顎へと手をあてる明智がゆるりと首を傾げ、頷いた。
「私と千亞さんの愛の深さが見たいのですね……!」
 ポン、と手を打って、「さぁ千亞さん」と両手を広げる。
「愛の言葉でもキスでも両方でも! さぁ!」
 ――両方でも!?
「そ、そんなことできるか、馬鹿っ!」
 両手にギュッと拳を握り必死になって言い返してくる千亞に、明智の笑みが深められる。
「じゃ、じゃあ珠樹が手本見せろ、よ」
 更に赤面しながらの千亞の言葉に、幾度か瞬きをして、明智が小首を傾げた。
「手本、ですか。――わかりました。それでは」
 徐に上着に手をかけ脱ぎだす明智の手が、ズボンにかかる前に、千亞が畳をトンッと蹴る。
「……って、おまえ何してんだっ」
 とゆうか、何するつもりだ!
 ――ゴス。
「なぜ脱ぐ必要があるっ!」
 ゴスゴス!
 華麗な跳び蹴りが炸裂した処で、明智が脱ぐ手を止めた。
「おや、結構ですかそうですか」
 とぼけたようなその顔を見返して、諦めたように息をつく。
「……わかった、いいか。もう今後は言わないからなっ」
 続いたのは深呼吸。チラリ見上げた瞳が、逸らされた。
「珠樹。す……好、き……だ……」
 目を逸らしたままどんどん赤くなる千亞に、明智の左目が細められる。
 それはとても温かく優しげな眼差しであったのだが、残念ながら視線を逸らしたままの千亞には見る事が出来なかった。
「……千亞さんは可愛いですね」
 それはいつもの台詞で。
 けれどもいつもとは声音が違う気がして――。
 視線を戻した千亞の前で明智は膝を折り、上体を屈める。
「貴方に出会うために記憶喪失になったのならば、私は神に感謝します」
 とった手の甲へと恭しくキスが落とされ、千亞が目を瞠った。
「おや、物足りなさそうですね……! どこがご希望ですか?」
 艶やかな笑みで発せられた問いに、嬉しさも表に出したくなくなる。
「も、物足りなさ……!? そんなことあるわけないだろっ、ド変態っ! お前と一緒にするなっ」
 ゲシ、ゲシゲシ!
 真っ赤な千亞からの、両足での跳び蹴り。
「……素直じゃない千亞さんも、愛しいです」

 愛を感じて涙を流す像。どのタイミングで祝福の涙を流し始めたのか――。
 それは2人と像達だけが知っている……かもしれない。

●真っ直ぐなカレからの愛の示し方
「美味しい海の幸だー!」
 両手を上げて大喜びしたセイリュー・グラシアは、膳の上、溢れんばかりの料理達に嬉しく笑う。
 火の点いた小さな鉄板に乗るのは、アワビのステーキ。その横の網では海老とカニ、1人用の鍋ではふぐ鍋と――楽しみな料理が並んでいた。
 アワビに海老とカニは焼けるのを楽しみにして、その間に焼き魚に箸を伸ばす。
 次に煮付けを抓んで、食べ比べた。
「もうバッチリ。この魚は焼いて、こっちの魚は煮付けにするのが、うん、美味い。さすが」
 料理をした相手を褒めるセイリューに微笑んで、ラキア・ジェイドバインも彼と同じものを口に運ぶ。
「本当だね。これは……何という魚だろう?」
 味わいながら呟けば、さあ? と言うように首を傾げた。
「でも美味いよ」
「うん」
 頷いて、ラキアは思わず笑ってしまう。
 セイリューは、魚の種類などはあまり気にしない。大事なのは、美味しいかどうかだけだから。
 それでも彼は、基本好き嫌いがないから何でも美味しく食べるし、凄く嬉しそうに食べる。
 今も終始笑顔で食べているパートナーを眺めながら、ラキアの顔にもずっと柔らかな微笑みが浮かんでいた。
 お刺身のマグロを取って口に入れたセイリューは、感動の声をあげる。
「刺身が旨い」
 そうして満面の笑みのまま、ラキアに顔を向けた。
「いつもラキアが作ってくれるご飯も超美味しいけれど、海の世界の幸は超新鮮だ」
 食材そのままの美味しさもあるのだ。
 アツアツの鯛飯も口に含めば、淡白な鯛の味が米の甘みで引き出されている。何杯でも、食べられそうだった。
 ふぐ鍋を食べていれば、焼いたもの達も食べ頃に。
「セイリュー、そろそろこっちも焼けたようだよ」
 ラキアの言葉に鉄板と網を見れば、その香ばしさに更に食欲がそそられる。
 アワビのステーキ。熱々の焦がしバターを上からかければジュッと音がして、風味が部屋中に広がった。
 海老もカニも、熱いうちに味わって。
「これは、清酒案件だな!」
 指を立ててのセイリューの提案には、ラキアも同意した。
「美味しいお刺身にも合うものね。夏だから冷酒がいいよね」
 けれど昼間だからほどほどに。
 そう言ってラキアが注文したのは、瓶を1つに猪口が2つ。
 2人で互いに注ぎ合って、生酒のフルーティな味わいを楽しんだ。
「こういう落ち付いた雰囲気も久しぶりだ。依頼の緊張感も良いけど、ゆったりした雰囲気も良いよな」
 猪口を手に庭を眺めていたセイリューの瞳が、ゆっくりとラキアに向けられる。
「そうだね」
 見つめ合って、微笑みを交わして。
 2人だけの、穏やかな時間が過ぎていった。

「いつもラキアと一緒で俺はとても楽しいし嬉しい」
 愛を語ってほしいと子に願われれば、セイリューは何の躊躇いもなく言葉にした。
「一緒に居て心地よいのは愛だと思う。これからもずっと、一緒に過ごしていこうぜ」
 微笑みを返して、ラキアは頷く。
 ストレートな愛情表現は、セイリューが真剣に思っている、相手の事も想っての言葉であった。
 それはラキアにも教えていない、インスパイアスペルを決めた時の決意にも似ていて。
「依頼でいつ何が起きるか判らないから……」
 伝えてくれたその想いは、真っ直ぐとラキアが受け留める。
 セイリューの精神的な強さを誰よりも知っている。
 逆に繊細で、壊れてしまいそうに感じる部分があることも。
 この手を伸ばして――。
 支え、支えられ、生きて行けたらと思う。
 神人であるのに自分を護ってくれる彼と。護り護られて、生きて行けたなら――。

 心地よいのは、こちらも同様。
 一緒に保護した2匹の子猫達と、セイリューと俺とで、家族なんだから。
 これからも一緒に――。
「そうだね、ずっと一緒に居たいから。依頼でも無茶しないでね」
 自然と浮かぶ、ラキアの心からの笑顔。
 その笑顔に、2人の想いに、像からは涙が零れ落ちていった。

●意地っ張りなカレへの愛の示し方
 技巧が尽くされた海鮮懐石を前に、アキ・セイジの顔は晴れない。
 目的が何か分からないが故に、素直に喜ぶ事が出来なかった。
 ちらり、ヴェルトール・ランスを見れば、興味深そうに料理に箸を付けている。
 ――ランスは無警戒すぎると思う。
「館を調べて住人に話を聞いてくる」
 囁き立ち上がろうとするのを、腕を掴まれ止められた。
「毒もないし楽しんでからでも調べるのは遅くないぜ。腹が減っては戦が出来ないからな」
 ぱくり、もう一方の手に持った箸で料理を口に入れ、満足げに「うん」と頷いている。
 その呑気さとは裏腹に、掴んでいる手は緩めてくれない。
(まぁ、食べてからでも良いか)
 渋々座り直すとようやく手が離れ、酒の入った肩口が差し出された。
「そら、冷酒グラス出せよ」
 注がれた透明な液体が、グラスの中で揺れる。
 飲み干すと、「料理も食えよ」と言いたげなランスがこちらを見ている。
 箸を手に取って、鯛のあら炊きを口に運んだ。
「確かに……美味いな」
 呟きには、「そうだろ」と肩を揺らしてランスが笑う。
「他にも鉄刺が美味い。それとこれは、鮟鱇鍋……味噌味だな。肝を汁にとかしてこくを出してる……」
 懐石は馴染みである彼は、見た目だけで判断つかぬものは口に含み、食材や技法を色々と説明してくれた。
 それを聞けば、一品一品に興味が湧く。味わいながら「そうなのか」と感心もした。
(セイジは好奇心旺盛だからな。これで機嫌を直す筈だ)
「この料理は何だ?」
 そう聞いてくるパートナーの様子に、ランスはふふ、と密やかに笑う。
 セイジは慎重で、警戒心も強くある。
 そして彼の言っている事は、もっともだと思う。
 だからこそ、その分自分が気楽に過ごせるように、和み食事が出来るように、してやりたいと思う。
 セイジの性格を良く知っているからこその、想い。
(本当に美味いし、敵意も感じられない……)
 ――それでも、疑念は晴れぬまま。
 セイジは心の底からは、このひと時を楽しめないでいた。

 奥の座敷。目的は何かを聞こうとしたセイジだったが、既に子は姿を消している。
「あれかな? 食事の御代に愛を見せてほしいってか?」
「愛なんて請われて見せるものじゃないだろ」
 ランスに顔を向けムッとして、「ダメと言ったらダメ」と突っ撥ねる。
 探るように顔を見つめて、ランスが出した結論は『意地っぱり』。
「愛を示してみれば、また現れるかも」
 チラリ反応を窺えば、予想通り。
「……望んでやるわけじゃないからな。――勘違いするなよな」
 伸ばされた手が、わしわし、わしわし、ランスの頭を撫でる。
 わしわし、わしわし……。
「止めろよ!」
 堪能するランスにツッコんで、視線を逸らした。
「恥ずかしい……だろ」
「えー、やだ。セイジが撫でてくれるの嬉しいもん」
 上目遣いに訴えてくる瞳に、「わーったよ」とセイジに後ろを向かせた。
「止めちゃる」
 後ろから、腕ごと抱きしめる。
 見えずとも、その腕が誰のものなのかが判るから。身を任せるセイジの首に、キスを落とした。
 顔から火が出たのかと思う程、熱を持って固まる。
「どうした? 首まで真っ赤だぞ」
 首へと顔を埋めて、はむっと甘噛みすれば、回されたままの腕をギュッとセイジが握った。
「……バカ」

 像から流れた涙に、子が姿を現し駆け寄る。
「で、目的はこれか」
 小瓶で涙を受ける子に、普段通りに戻ったセイジが呟いた。
 ハッと驚き振り返った子が、セイジの顔を見て姿を消す。
 ――ポトリ。
 落ちたのは、小瓶。畳の上をコロコロと転がった。
 それをランスが拾って、セイジは座敷内をクルリと見回す。廊下に面した襖の陰から、顔を半分出し子がこちらを窺っていた。
「確かにな。最初に言ってくれりゃうちの姫さんも不安がらなかったんだぜ。食事の御代に愛を見せてほしいって」
 それには、子がブンブン、ブンブン、と強く首を横に振った。
 食事代は全員が支払っている。
 確かに愛を示してくれるだろうと思える者達を連れて来たのだろうが、どうやら食事を出したのだから示してくれ、というつもりでは無かったようだ。
 あれはナピナピの、2人への『お薦めの場所』であったのではないか――。
 2人顔を見合わせて、セイジが子に顔を戻す。
「説明があれば不安にならないんだよ?」
 言いたくなかったのか、言えない事なのか。
 黙ったままの子に、ランスと2人、屈んだ。
「ほらこれ、大事なモノなんだろ?」
 少し中身の零れてしまった小瓶を微笑み差し出せば、子は笑顔を浮かべ、2人へと駆け寄った。

●待たせ過ぎの愛の示し方
「すげえ! 豪勢! みろよ、でっかいお頭に船盛りだ!」
 座布団の上へと、火山タイガはあぐらをかいて座る。
「タイガ、はしゃぎ過ぎ」
 その隣でセラフィム・ロイスは、膝をそろえて正座し座布団に腰を下ろした。
「せっかくだからご馳走になろうか」
 静かに笑むセラフィムとは対照的に、タイガの興奮は冷め遣らない。
「俺はじめて見た。お伽噺みてぇ」
 いただきます! と元気良く、タイガは鯛の身を抓み口に入れた。
 んー! とほっぺたを両手で押さえ、美味しい事を教えてくれる。
(背が伸びてもこういうとこ変わらないな)
 小さく笑んで、背筋を伸ばしたままのセラフィムは赤身を一切れ、口にした。
「生ものは外に出るまで馴染みなかったけど」
 ――とれたてだからかな。赤身もサーモンも美味しい……。
 上品にゆっくりと味わい食すセラフィムの横で、タイガはいつもの大食いでペロリと平らげる。
「ご馳走さんうまかったー」
 満足げにお腹をさすり、背後の畳に両掌を付いた。
 セラフィムが食べ終わるまでの間、海色の庭を眺めている。
 ご馳走様でした、と手を合わせるセラフィムの隣、タイガが振り返っていた。
「ありがとな。――ん? 次は何だ?」

 奥の座敷で子が消えると、びくっとセラフィムは思案する。
 ――訳ありかな、とは思っていたけど。
 その隣でタイガもまた、考え込んでいた。
「キス……か愛……か」
 呟きながらチラリとセラフィムに視線を向ければ、一瞬の刻が止まる。
 その後、逸らされた。
(うわっ)
 心でシクシクと泣くタイガの隣、セラフィムもまた、いっぱいいっぱいで。
 ――無理だ!
 俯き、タイガの居ない方へと視線を流す。
(だってタイガの告白を保留してて……いや、いい機会か……?)
 気持ちはもう決まっている。
 決まっては、いるのだ。
(気遣いよりも対等でいたいと。一緒にいたいって、旅しようって、約束したのに)
 またすぐに甘えてしまいそうになる心を、奮い立たせる。
 ――勇気、出さなきゃ。
 あー、とパートナーを気遣い声を洩らして、タイガはハハッと笑う。
「俺らに何期待してんだろうな、恋人同士にみえんのかな?」
 そんな筈は、ないのにな。
 今はまだ、片思い中だ。いつかは両想いになれたら、とは思うけれど。「一緒に居たい」と思う気持ちが同じだっただけで、嬉しくて満足していた筈だ。
「そうだキスならほらトランスで慣れてるし、セラへの愛なら俺いけるぞ! 語れる」
 反応のない相手に、タイガは笑顔で、懸命の笑顔で、提案をし続ける。
「やっぱ語る方がいいかな。セラが聞きたくないなら耳塞いでくれればいいし」
 あ、でもそれ心挫けそう……とよろめく。
「……すき……だ」
 突然のセラフィムの小さな声に、タイガの虎耳がぴくっと揺れた。
「なんて……?」
 聞き返せばようやく戻ってきてくれた銀色の瞳が、自分を見つめる。
「だから……! 僕もタイガがっ……好き……なんだ」
 ポカンと口を開け呆然としていたタイガの尻尾がパタリと揺れて、笑みが広がった。
(――あのセラが、もう我慢しなくていいんだ)
 想いが溢れてしまって、どうしようもない。
 思わずセラフィムへと、初めてのキスをしていた。
「俺も好き。今でもずっと好きだ」
 唇が離れた途端に囁いて、コツンと額をあてる。
「へへ、やっと言ったな待たせすぎ」
 兎みてぇで可愛いなー、と再び愛しげに寄せられた唇に、セラフィムの思考は停止。赤面したまま抵抗した。
「まっ……てタイガってば! 悪かったけど、もう像にも示したし、色々起こりすぎて整理が――」
 横目で像を見れば、涙を流した像の前には小瓶を持った子が立っている。
 タイガの腕をバシバシ叩いて、慌て2人が離れた。

 セラフィムとタイガを交互に見て、子はにっこりと笑みを浮かべる。
 全員にしたように、ペコリと頭を下げた。



依頼結果:成功
MVP
名前:セラフィム・ロイス
呼び名:セラ
  名前:火山 タイガ
呼び名:タイガ

 

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター Motoki
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 男性のみ
エピソードジャンル ロマンス
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 5 / 2 ~ 5
報酬 なし
リリース日 08月10日
出発日 08月16日 00:00
予定納品日 08月26日

参加者

会議室

  • [12]蒼崎 海十

    2015/08/15-23:49 

  • [11]蒼崎 海十

    2015/08/15-23:48 

    あらためまして、蒼崎海十です。パートナーはフィン。
    美味しい魚料理が今から楽しみです。
    皆様がどのように過ごされるのかも、凄く楽しみです…!

    宜しくお願いいたします。

  • プラン提出できた。
    海鮮の旨さに感動した…!

    アマアマな時間を楽しもうぜ!

  • [9]アキ・セイジ

    2015/08/15-22:41 

    折角なので海鮮を主体とした懐石を頼んでみた。
    きっと御飯も魚の釜飯とか、椀物は鯛そうめんとか、なんかそういうの。

    プラン提出完了だよ。

  • [8]明智珠樹

    2015/08/15-22:24 

    ふ、ふふ。
    こんばんは、こっそり紛れ込んでおります明智珠樹と白兎っ子千亞さんです。

    美味しいお食事をいただけると伺い…!
    タイやヒラメの踊り食い、楽しみですね、ふふ…!

    何卒よろしくお願いいたします、ふ、ふふ…!!

  • [7]明智珠樹

    2015/08/15-22:23 

  • [6]明智珠樹

    2015/08/15-13:33 

  • [5]セラフィム・ロイス

    2015/08/15-01:46 

    :タイガ
    おお!?拘束期間終わってすぐきたのかお疲れ
    シナリオ的にないとは思てったけどうまってよかった。皆のも楽しみにしてるぜー!

    と、紹介遅れた
    俺タイガとセラフィムだ。がんばろうな!『セラ:う、うん・・・(頑張るであってるのか』

  • [3]アキ・セイジ

    2015/08/15-00:05 

  • [2]セラフィム・ロイス

    2015/08/13-01:21 

  • [1]蒼崎 海十

    2015/08/13-00:16 


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