活けし花を彩る(木乃 マスター) 【難易度:普通】

プロローグ

「ようやく暖かくなってきましたね」

ミラクル・トラベル・カンパニーの男性社員がほんわかした笑顔を浮かべる。
「春らしくなってきたので、春らしいイベントをやろうと思ってもってきましたよ」
ホワイトボードにキュキュっと社員がなにか書いていく。

『ウィンクルムもできるもん☆春のフラワーアレンジメント体験』


職員のネーミングセンスはこの際置いておこう。



「フラワーアレンジメントって?」
1人の精霊がホワイトボードを見なかったことにして、職員を見つめる。
「要は活け花ですね、お花を活けて綺麗に飾りつけてみましょう」
職員はニッコリと微笑む、それを聞いた精霊が驚いた顔を浮かべる。
「で、出来る訳ないだろ!生花なんかやったことないぞ!?」
「だから、『ウィンクルムもできるもん』って書いたんじゃないですか。
神人と2人1組でやって頂きます、女性の方なら解る方も多いでしょう?」

場所はレンガを敷き詰められたヨーロピアン調のフラワーガーデン。
動物の姿に似せて剪定された可愛らしいアートトピアリーが立ち並ぶ。
ガーデン内には春らしい花々や、ビニールハウス内に異なる季節の花も用意されているという。

「春ですと桜や梅、桃などの木に咲く花も使えますし、
チューリップやスイートピー、カーネーションや薔薇なんかもいいんじゃないでしょうか?」

解らない方には植物辞典も用意しますよ、と職員は言う。

「こちらで用意するものは活け花用の器、お好きな形をお選び下さい。
 それと30cm正方角のオアシス、これは花を差して固定できる硬いスポンジだと思って下さい」

「完成品は持ち帰れるの?」
「すみません、完成品は折角なのでA.R.O.A.本部に展示して頂こうかと思いまして
 ……優秀な作品は当社で貰い受けるかもしれませんね」

生花も申し訳ないのですがお持ち帰りできないのでご了承ください、と申し訳なさそうに微笑む職員。

「……そうだ!折角なので皆さんの作品も審査という形をとってみましょうか。
 同じ目標に向かって一緒に頑張るのも、より絆が深まりそうですしね」
職員は名案だと言わんばかりに、目をキラキラと輝かせていた。


精霊との共同作業で、一体どんな作品が生まれるのだろうか?
『初めての共同作業』がウィンクルムを待ち受ける。

解説

今回の目的:
精霊と一緒にお花を活けてみよう。

場所:
タブロス市郊外にあるフラワーガーデン。
飾り切りされたトピアリーという木が立ち並んでいます。

季節問わず花が咲いていますが、今一番多いのはやはり春の花です。
桜、梅、桃などの木の花の他に
チューリップ、スイートピー、カーネーション、薔薇などなど。
この他にも様々な花が咲いていますが、中には希少な花もあるようです。

借りられるもの:
基本的な園芸用品(はさみやバケツなど)、活け花用の器、
花を差す為のオアシス(活花用スポンジ)

お金が必要なもの:
基本的になし。
※ただし珍しい植物・希少価値がある植物と判断したものは1種『200Jr』かかります。
(逆に言うと一般的な花なら無料で制作できます)

審査について:
企画担当の思いつきで、制作した活花の審査員がいます。

・企画担当(男性)
物腰穏やかな好青年。花の種類をすぐ言い当てられる程度に花が好きらしい。
・ガーデン職員(男性)
褐色肌の厳つい中年親父。アートトピアリーの達人でその道30年の古参職員。
・A.R.O.A.事務員(女性)
涼やかな眼差しのクールレディ。爪は一本一本色や模様が違いカラフルな物が好きな模様。
以上の3名が下記の審査を行います。

・配置のバランス
・色の配色
・アピールポイント

好感度の最も高い活け花はミラクル・トラベル・カンパニーが貰い受けるでしょう。
(賞金や景品、粗品などは出ません)

その他の活け花もA.R.O.A.本部に飾る予定なので、
変なものを作ると後日、噂が立つ恐れがあるかもしれないのでお気を付け下さい。

ゲームマスターより

実家が菜の花一色で真っ黄色のGM、木乃です。

お花見に行く方が多いかなと思い、恒例の変化球でいってみました。
今回はフラワーアレンジメントでございます。

イメージがピンと来ない方はグーグル先生に画像検索すると
ワクワク度が倍増するかと思います。

セリフやキャラ口調でプランを設定するとより口調が反映しやすくなります。
ぜひ盛り込んでみてください。


それでは、皆様のご参加お待ちしております。

リザルトノベル

◆アクション・プラン

ミサ・フルール(エミリオ・シュトルツ)

  ケーキの装飾の参考にする為にお花の教室に行ったことがあるんだ
エミリオさんにアドバイスするね

まず花を水切りしたり、余分な葉を取り除こう
綺麗に咲いてたのを摘み取ったんだもの
長持ちさせる為に下準備はしっかりしないと

作品のテーマは『お花畑』
見た人が春を感じて優しい気持ちになる作品にしよう
器の中央にチューリップをリボンで纏めて、下部をスイートピーで囲もう
エミリオさんと協力してカラフルなトピアリーにしたいな

最後作品を持って参加者全員で集合写真を撮ろう

☆用意
花鋏
バケツ
オアシス
カゴ型の花器(白)
リボン(赤)
チューリップ(ピンク5本)
スイートピー(黄・橙色・白)
勿忘草(水色)
葉物(ローズマリー・オレガノ)
カメラ


あみ(ヴォルフガング)
  器は深型の四角いものを、その他物品もお借りします。
メインは私の大好きな薔薇を中央に使います。花言葉は色によって違うけど「愛情」ですかね…。赤色の物を多めにピンク、白色も使います~。
レモンリーフでベースを作り、薔薇の周囲には白とピンクのデンドロビウムを、残りはホワイトスター・かすみ草でバランスを取ります。デンドロビウムは「謹厳実直」ホワイトスターは「信じあう心」かすみ草は「親切」が花言葉です~。
赤・ピンク:4 白:5 緑:1 ぐらいの配色バランスです。

アピールポイント
日頃お世話になってるヴォルフガングさんをイメージして作ってみます!

終了後は参加した皆さんと、作った作品を持って集合写真撮影です~♪


篠宮潤(ヒュリアス)
  心情
『活け花は初めてだけど…うまく言葉に出来ないことを形にしてみよう。
 過去と、これからの思いを…ヒューリと創ってみたい』

花:アネモネ、スイートピー、勿忘草
完成図:小さめトライアンギュラー型(←直感で刺していった結果)
    先端4箇所にスイートピー(白)。中央にアネモネ(紫)。飾るように点々と勿忘草(青)


「スイートピーはこの辺り…。ヒューリ、ま…曲がってないだろうか」
最初のうち恐る恐る。不器用さを集中力でカバー

「え…調べてくれたの…か?」
意外と手際の良い相手にキョトン。次第に肩の力が抜けリラックス

「うん…。実はアネモネは…ヒューリのイメージもあったんだ。『風』って」
集合写真中、はにかみ微笑



油屋。(サマエル)
 
花:薔薇(カルピデューム ヘリオスロマンチカ)ラナンキュラス(オレンジ) アルストロメリア(黄色) ミモザ スプレーカーネーションフレア  ポプラスリーフ

幸福、絆等の花言葉を持っているものを選んでみたんだ
落ち着いた中にも華やかさのあるアレンジメント
に なってると良いな

植物辞典をめくりながら考え中
サマエルにも相談、一緒に花を選んでいく
花を選んだ後は持参のスケッチブックにラフを描き
イメージを伝える
花器、バスケットが良いけど 無ければ丸い物かな
オアシスの準備をして一緒に花を挿す

パートナーとして少しは仲良くしたいと思ってさ
コイツ何やってても様になるな
ちょっとかっこいいかも……
って何考えてんだアタシは!



かのん(天藍)
  天藍の気遣いに感謝し参加

天藍に質問
回答を元に手帳にイメージ図を書きつつ花材選び
「天藍は春と聞いてどのような花を思いつきます?」
「桜の手前に八重咲きの花を飾るとして・・・濃いめのピンクと薄紫なら、どちらが好きですか?」

内容
・桜を主に縦の線を
・その後ろから片側へ流れるようにしだれ桜の枝を
 一部にワイヤーを使い枝で輪を作る
・アクセントに葉の割合が多い雪柳の枝を数本桜の中に
・桜の手前、根元部分に薄紫のラナンキュラスと緑の葉物、隙間にかすみ草を散らす
・花器は会場にある物で

「小鳥、ですか?」
天藍の木彫りを受け取り、少し考え生けた一輪のラナンキュラスの中央から顔を出しているように置く

最後に参加者皆で記念撮影



◆白紙のキャンバス
「お集まり頂きありがとうございます、日差しも暖かいですね」
企画担当はほっこりした笑みを浮かべウィンクルム達を見回す。

ここはタブロス郊外にあるフラワーガーデン、
ランドスケープは自然体を維持しながらも綺麗に整えられていた。
ガーデン内には春の陽気に誘われて蝶や小鳥も飛び交う姿が見える。
全員、今は一角にある池に囲まれたガゼボに集合している。
水に囲まれた真っ白なガゼボは、暖かく柔らかな雰囲気を感じさせる。

「審査員のお二人をご紹介しますね」
傍らに立っていたのはツナギを着た褐色肌の厳ついガーデン職員と
A.R.O.A.本部の制服を着たグラマーな事務員の女性。
「本日は審査員として協力させて頂くわ、楽しみにしているわね」
事務員はクールに言い放ち、長い爪で器用にメガネを上げる。
爪はパステルカラー5色に白いマニキュアで模様をつけていた。
「花はオンナと一緒で繊細だ。テメェのオンナを扱うみてぇにしろ、いいな?」
職員は腕組みをして無愛想な態度を見せる。
トピアリー製作30年のベテランなりにポリシーがあるのだろう。

「それでは、製作を始めて下さい」

企画担当の一声にウィンクルム達は花と入れ物選びを始めた。

◆製作風景のヒトコマ
ミサ・フルールとエミリオ・シュトルツが一足早く用意された作業台に戻ってきた。
手にはチューリップやスイートピー、勿忘草などを抱えていた。
「長持ちさせる為に、下準備はしっかりしないと」
ミサは持ってきた花を手早く剪定する。
「花も奥が深いな……ミサ、切る作業は俺がやるよ」
エミリオは花鋏を持つとミサが取ろうとした花を摘み上げる。
「お前はそそっかしいし、花が血で汚れたら勿体無いからね」
「そ、そんなことないよ!」
エミリオの言葉にミサはあたふたと否定する。

「代わりに容れ物を選んでよ。俺、花瓶とかよく解らないし」
「うん、じゃあ選んでくるね……あ、枝は斜めに切るといいよ?」
ミサはエミリオにアドバイスをして受け皿を選びに行く。
受け皿は浅いものから縦長の物まで様々な色や形があった。
「うーん……あ、これが良さそうかな」
ミサはカゴ型の容れ物を選んだ、白い陶器製で落ち着いた印象だ。
「どうかな?」
「悪くないと思うよ、もうすぐ終わるからオアシス入れておいて」
オアシスとは吸水性の高く保水力のある固いスポンジで、すでに水桶に5個分入れられて用意されていた。
「入れたよ、どうやって飾ろっか?」
「飾り付けだけど……」

二人の作業は和気藹々とした雰囲気で進んでいた。

***
次に戻ってきたのはかのんと天藍だ。
桜の枝やラナンキュラスにカスミ草、葉物と種類は少ないがしっかり選別してきたようだ。
ラナンキュラスは二種用意したようだ。
「仕事柄、大きいのも扱ってますのでね」
(へぇ……こんな顔もするんだ)
かのんは手馴れた様子で余分な枝葉を切り落としていく。
天藍は感心したように楽しげなかのんを見つめる。
「…かのん、枝一本くれ」
「なにに使うんですか?」
天藍はかのんの剪定して切り落とした太めの枝を拾い上げる。
「まぁ、見てなって」
そういうと天藍はナイフで器用に削って何かを作り始める。
「……?」
天藍の作業に不思議そうに思いながら、かのんは用意を進める。
「桜の手前に八分咲きの花を飾るとして……濃いめのピンクと薄紫なら、どちらが好きですか?」
両手に花を持ってかのんは天藍に見比べてもらう。
「そうだな……」
天藍は顔を上げて両手の花を見比べ、ふとあるモノに目がつく。
「紫の方が俺は好きだな」
「そう、じゃあ紫色にしましょう」
一瞬、天藍はかのんに目を向けたがかのんは気づかなかったようだ。
……決定打は、かのんの瞳の色だと知る由もない。
天藍も自分の作業を再開する。

***
あみとヴォルフガングも戻ってきた。
ヴォルフガングの手には新聞でくるまれた薔薇が抱えられており、
あみは小さめの花と葉物を籠に入れていた。
「あみ……持ってきたはいいが、俺はフラワーアレンジメントなんてできないぞ……」
「わ、私も頑張るので一緒にやりましょうよ」
ヴォルフガングは作業台に置きつつどうしたものかと考えだす。
あみも花を置いて剪定の用意を始める。
「……分かった、俺は何をすればいいんだ?」
「えと、剪定してもらっていいですか?」
あみのお願いに、ヴォルフガングはコクリと頷いて花鋏を手に黙々と作業を始める。
枝と一緒に丁寧に薔薇の刺も切っている。
(……あみが指を刺しそうだしな)
そんなヴォルフガングの気遣いを露知らず、あみは深めの四角い容れ物を手に戻ってきた。
剪定はあみが離れている間に既に半分以上終えていた。
「じゃあ剪定の終わったお花から使いますね」
あみは鼻歌交じりに薔薇を活け始める、真っ赤な薔薇からは芳醇な甘い香りが漂っていた。
「……あみはホントに好きだな、薔薇」
「へ?!」
「……髪飾り」
ヴォルフガングの呟きに驚いたあみが思わず振り返る。
不思議そうにヴォルフガングはあみのカチューシャを指差す。
気付いてるとは思わなかったあみはあわあわと目を泳がせる。
「……ふっ」
おかしそうにヴォルフガングが笑みを零すとあみは真っ赤になって硬直してしまうのであった。

***
油屋。とサマエルも戻ってきた。
油屋。は小脇に植物図鑑を抱えており、
サマエルも手には黄色やオレンジなどのビタミンカラーの花を持っていた。
「暴力女にも花を愛でる心があったとは驚きですなぁ」
サマエルは小馬鹿にしたような笑みを浮かべ、オレンジ色の薔薇の刺を切り始める。
「うっせぇ!それよりこういうの作りたいんだけど」
油屋。はサマエルに反論しつつ、持ってきたスケッチブックに簡単なラフ画を描く。
色合いなどもメモして描いたイメージをサマエルに伝える。
「ほほぅ、下品な乳女にしては悪くはないな」
サマエルは油屋。のスケッチを感心したように眺める。
「イメージは解った、貴様は小道具の用意をしろ」
パチパチと手際よくサマエルが剪定し始めるのを見て、油屋。も小道具を用意する。
「でもさ、なんでオレンジの薔薇なの?」
「無知な早瀬の為に教えてやろう。薔薇自体は愛や幸福、色には信頼・絆の花言葉があり
香りが強く、日持ちも良いのだ」
鼻先に一本の薔薇を持ってきて匂いを確かめるサマエル。
(……ちょっと、カッコいいかも)
あまりにもサマになっていて、油屋。は思わず見とれてしまう。
「何を惚けている、早く進めるぞ」
「わ、解ってるっての」
照れ隠しに語気を強める油屋。にサマエルはニヤリと笑うだけだった。

***
最後に戻ってきたのは篠宮潤とヒュリアスだ。
アネモネやスイートピー、勿忘草を抱えてきた。
一通りの小道具も用意して、いざ作業に入ってみたものの
「ヒューリ、ま……曲がってないだろうか」
潤はおそるおそる花を挿してはヒュリアスに確認していた。
不器用さを集中力でかばおうとして、逆に慎重になりすぎていた。
(花言葉は……薄れゆく希望、私を忘れないで、優しい思い出と門出、だったか)
潤に問題ないと伝えつつ、ヒュリアスは用意した花について思い出していた。
「ウル、少し変わってくれ」
潤の後ろからヒュリアスが飛び出た所や傾きすぎた花をキレイに整えていく。
整えられていく形は三角錐のようになってきた。
「え……調べてくれたの……か?」
「念のため、だがね。まさかここまで不器用とは思わなんだ」
きょとんとする潤をよそに、ヒュリアスがスッキリとまとめ上げた。
「しかし、なぜアネモネを選んだのだ?」
「アネモネは…ヒューリのイメージもあったんだ、『風』って」
風の花と言われていると聞いて、と照れくさそうに潤は答える。
「……ふむ、そうか」
潤の意識が逸れているうちに、ヒュリアスは一本だけ違う花を紛れ込ませていた。

◆3人のジャッジメンズ
「皆さんお疲れ様でした、それでは審査に移りたいと思います」
全員の作業が終わったことを確認して企画担当が審査に移ることを告げる。
「順番は完成順にいきましょうか……ミサ・フルールさん達でしょうか」
「はい、よろしくお願いします」

ミサとエミリオの作品はピンクのチューリップをメインにした作品で、
チューリップは赤いリボンでまとめられていて周りを黄・橙・白のスイートピーで
グラデーション上に囲んでいた、そのスイートピーの間には勿忘草、ローズマリー、オレガノが植えられていた。
「アピールポイントはどこかしら?」
「テーマは『お花畑』です、見た人が春を感じて優しい気持ちになる作品にしようと思いました」
A.R.O.A.事務員の問いかけにミサは嬉しそうに答える。
「……花びらがごちゃごちゃしちまってて、惜しいなぁ」
ガーデン職員は渋い顔で呟く、スイートピーのフリル状の花弁がチューリップより目立っているように感じたようだ。
「私はこのマルチカラー、結構好きよ。もうちょっと主役が引き立ったら素敵ね」
事務員も冷静に作品を見つめて感想を漏らす、パステルカラーは事務員も好きなようだが
チューリップが目立ちにくいのが気になる模様
「春らしいものを選ばれましたね、勿忘草よりもう少し大きめのお花を使われたら青みも栄えたかもしれませんね」
勿忘草は花弁の小さい花でローズマリーやオレガノの陰に隠れているものが数本あった。
3人はバインダーにメモを取り、顔を上げる。

「続いてかのんさん達の作品を拝見します」
「はい、お願いします」
かのん達の作品は桜をメインに使用した作品で、
八重桜にしだれ桜の枝を混ぜてしだれ桜の一部をワイヤーでリング状にしていた。
雪柳を数本、桜の間に仕込んで薄紫のラナンキュラスと緑の葉物、隙間にかすみ草を散らしていた。
「これはまた、随分大きな作品ですね」
「……ん?隙間に入ってるのはなんだ?」
企画担当が見つめていると、職員がなにかに気づいてラナンキュラスを覗き込む。
「春告鳥だ、桜の枝から作った」
折角だから作ってみたと、天藍はかのんの後ろから審査員に告げる。
「やるじゃねぇか、坊主?配置に関してもなかなかスジがいいな」
職員は感心したようにニヤリと微笑む。
「うーん……もう少し鮮やかさが欲しかったわね、薄い色が多いからかしら?」
事務員は眉を顰めて見つめる、彼女の趣味とは少し違ったようだ……個人の感性なのでここはある程度仕方がない。
「趣きがあって私は好きですよ。濃い色があったらメリハリが出たかもしれませんね」
企画担当はにっこり微笑む、一番審査が厳しいのはこの人かもしれない。
「ま、意外性の部分でちっとばかし加点してやるよ?」
ニヤリと職員は微笑んでバインダーにメモを取っていく。

「次はあみさん達の作品を拝見します」
「は、はい!よ、よろしくお願いします」
あみは緊張してどもってしまい目もぐるぐると渦を巻いている。
あみ達の作品は薔薇をメインにした作品で赤薔薇が特に多く、白とピンクの薔薇も添えられていた。
周りには白とピンクのデンドロビウムに、ホワイトスターとカスミ草。
縁からはレモンリーフが覗いていて、作品の色合いを引き締めていた。
「ヴォ、ヴォルフガングさんをイメージして作ってみました」
謹厳実直、信じあう心、親切。ヴォルフガングを指す言葉を集めたと
あみはどもりながらアピールする。
「……俺のイメージはこんなに可愛いものなのか」
そんな意味があったとは思わず、内心照れるヴォルフガング。
「かかかっ!坊主が照れちまってるぜ、見た目はオーソドックスだな」
豪快な笑みを浮かべ、職員は作品に目を向ける。
「色合いも華やかね」
クスリと笑みを零す事務員、なかなか好感触のようだ。
「ところであみさん、薔薇の本数でも花言葉ってあるんですよ」
企画担当が意味ありげな笑みを浮かべてあみに耳打ちする。
「えぇっ!?」
聞いたあみは顔を真っ赤にして再び硬直してしまった。

「ふふ、4番手は油屋さん達でしょうか」
「おう、よろしく!」
油屋。達の作品はオレンジ色の薔薇を中心に、アルストロメリアやミモザの黄色い花に
花弁のふちに赤みを帯びたスプレーカーネーションなどの暖色系の花でまとめられていた。
ポプラスリーフの緑が差し色となり、派手な色合いをほどよく抑えていた。
「幸福、絆等の花言葉を持っているものを選んでみた。落ち着いた中にも華やかさのあるアレンジメントを目指したんだ」
油屋。は緊張気味に作品のアピールをする。
「ふむ……全体的に花弁がデカイのが、な」
職員は作品をじっくり眺めながら腕組みをする。
「春っぽくない色だけど、使ってる花は春らしいモノが多いわね」
事務員もなかなか好印象のようだ。
「これは……2種類の薔薇を使ってますね。若干、形が違いますが同じような色合いなんですよね」
「さすがですなッ★企画担当さんは目も肥えていらっしゃるようで!」
キラッ☆と効果音がつきそうな笑顔を浮かべるサマエル。
「い、いえ……それ程でも」
サマエルの言葉をそのままの意味で受け取り、企画担当は頭を掻いて照れる。
「ご、ごほんっ。油屋さんのイメージより華やかさがあるかと思いますが、統一感があっていいと思いますね」

「最後は篠宮潤さん達の作品ですね」
「あ、ああ……よろしく」
大トリになってしまった潤は緊張した面持ちで審査員を見つめる。
作品はクリスマスツリーのような小さなトライアンギュラー型に整えられており、
白いスイートピーで三角を描き、中央には紫にアネモネが添えられている。
スイートピーの隙間からは勿忘草が顔を出していた。
「……あら、1本違う花が紛れてるわよ?」
「え?」
潤は事務員の一言を不思議に思い、作品を覗き込む。
視線の先にはブルーデイジーがアネモネに寄り添うように佇んでいた。
「俺が加えたのだ、花言葉は『協力』……だったか」
?マークを頭上に飛び交わせる潤の隣でヒュリアスが口を開く。
「今回の主旨と花言葉に合わせてみたのだが」とヒュリアスは続ける。
「花言葉は、複数あるからどういう意味なんだかな?……バランスは一番いいんじゃねぇか」
職員は首を傾げながら潤達の作品を見つめる。
「アネモネもスイートピーも花弁が大きいから、勿忘草が少し埋まってるわね……葉物が入ってもよかったかも」
事務員も作品を覗き込み、スイートピーの間から覗く勿忘草を見つめる。
「今回の企画テーマが協力ですからね、作品は私も葉物があったらよかったかなと思います」

審査員の3人は全ての作品を審査すると
ウィンクルム達から離れた場所でそれぞれの審査結果を確認する合議を始めた。

合議が終わったら、いよいよ審査結果の発表だ。

◆思い出は活動記録に
企画担当達が合議を終えてガゼボに戻ってきた。
「お待たせ致しました、それぞれ作品の良い所があってなかなか難航してしまいました」
「まぁ、素人にしちゃあ健闘したのは認めるぜ」
「ふふ、事務室に置かせてもらえないか掛け合ってみようかしら」
それぞれ笑顔を浮かべるが、緊張した面持ちをウィンクルム達は隠しきれなかった。

「け、結果はどうなんだろうか?」
「うー……緊張するぜ、早く発表してくれよ!」
潤と油屋。が緊張に耐え切れずに早く教えて欲しいと急かし
「き、聴きたいような聴きたくないような……困っちゃいます」
「やはり審査と言われるとドキドキしますね」
あみは緊張しすぎて顔を青くしており、かのんも苦笑いを浮かべる。

「結果はあくまでも審査員3人の主観から見たモノだとお忘れなくお願いしますね?
それでは本日の好感度ナンバーワンは……」
タラララララララ……と、どこから持ってきたのか。
企画担当はラジカセからドラムロールの音を流し始める。
(エミリオさんと一緒に頑張れたんだもの……一緒に頑張ったことが大事、だよね?)
ミサもドラムロールの音に緊張がこみ上げてきて表情に曇らせる。
『ジャーン!』


「あみさん、ヴォルフガングさんの作品です」


「……え?」
あみは目を見開く、なにを言われたのか一瞬理解できなかった。
「おめでとう、本職としてはちょっと悔しいですけどね」
パチパチと、かのんが拍手して讃える。悔しいと口では言うがその表情は笑顔を浮かべていた。
「おめでとー!やっぱ難しいなぁ」
「でも、とっても楽しかった!」
油屋。も拍手を送りミサも緊張から解放されて安堵の息をつく。

「そ、そんな、恐れ多いです!」
「……ナンバーワンになるとは、思わなかった」
目を白黒させるあみと、対照的にぽかんとしているヴォルフガング。

「早瀬の驚いた変顔が見れなくて残念ですが、余興として良しましょう★」
「うむ、共同作業というのもなかなか良いものだ」
サマエルも満足気な笑みを浮かべ、ヒュリアスも良い経験だったと呟く。
「……かのん、俺達も精一杯できたから落ち込むな」
「ふふ、大丈夫ですよ。私も息抜きになりました」
天藍が心配そうにかのんの顔を覗きこむが、その笑顔を見るに心配する必要はなさそうだ。
「ミサ、なんでピンクのチューリップにこだわったんだ?」
「え!……えっと、その」
エミリオがふと思い出したようにミサに問いかけると、ミサは顔を真っ赤にして俯いてしまった。
……花言葉は、『愛の芽生え』
エミリオはそれを知る由もなく不思議そうに見つめるのだった。

「……あみ、さっきなにを言われたんだ」
「ふぇっ!?」
ヴォルフガングはじーっとあみを見つめていた。
目は口ほどにも語るというがあみにとっては雄弁に語られているように感じた。
「薔薇、11本あるじゃないですか」
「?……そういえば、そうだな」
あみはチラリと作品を横目で見る、ヴォルフガングは薔薇の本数を数えると
確かに11本あった。
「……最愛って、意味があるそうです」
「……え?」
聞き返したヴォルフガングはあみの顔を見ると真っ赤になっていて、
思わずつられて頬を染めてしまうのであった。

「ねぇ!折角だから写真を撮ろうよ」
ミサは懐からカメラを取り出し全員に呼びかける。
「依頼内での物品の持ち帰りは禁止よ」
「まぁまぁ、活動記録として写真を残して頂けませんか?」
事務員が渋い顔を浮かべると、企画担当がなだめる。
「……仕方ないわね、私物として持ち帰るのは禁止だからね」
「がっはっは!固ぇこと言うなよ、撮ってやるからカメラ貸しな」
困ったように眉を下げる事務員とは対照的に豪快に笑い出す職員、
職員はミサからカメラを借りて使い方を確認する。
「作品を中央の作業台に集めて……よし、これで大丈夫だろう」
潤がテキパキと動かして作業台に5つの作品が並ぶ。
用意が済んだ所で、それぞれの作品を囲うように10人が並ぶ。

天藍はすかさずかのんの隣を確保し一緒に並び、かのんが不思議そうに横目で見つめる。
潤は照れくさそうにはにかみ、それを見たヒュリアスがくすりと微笑む。
油屋。も(ちょっとは仲良くなれたかな)と思いつつ笑みを浮かべ、サマエルは相変わらずの外売りスマイルを浮かべる。
まだ赤みの抜けない顔のミサも満面の笑みを浮かべ、エミリオも表情に困ったがぎこちなく笑みを浮かべる。
あみは先ほどからテンパってあわあわとした表情を浮かべ、ヴォルフガングも微かに口角をあげる。

「変な顔してると、そのまんま残っちまうからなぁ!……おら、1+1はぁ!?」
職員はやや死語と化しつつある掛け声で全員が「にー」と答えている間にシャッターを切る。

***

こうしてフラワーアレンジメント体験は終了した。
あみ達の作品はミラクル・トラベル・カンパニーの企画部で貰い受けられた。
ミサ達の作品は事務員が気に入ったようでA.R.O.A.本部の事務室に飾られ、
油屋。達の作品も受付の待合スペースに飾られることとなった。
潤達の作品も受付カウンターに飾られ、かのん達の作品は玄関ロビーに飾られている。

事務員がフィルムを預かり、写真の現像が済むと参加者に活動記録として資料に掲載したことを伝えた。
それぞれの感情がありのままに写る、楽しげな写真はこれからも誰かの目に留まるだろう。

初めての共同作業はウィンクルム達の心の距離を、確実に縮めたのであった。



依頼結果:大成功
MVP
名前:あみ
呼び名:あみ
  名前:ヴォルフガング
呼び名:ヴォルフガングさん

 

名前:油屋。
呼び名:乳女 ゴリラ 早瀬
  名前:サマエル
呼び名:サマエル

 

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター 木乃
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 女性のみ
エピソードジャンル ハートフル
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 普通
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 5 / 2 ~ 5
報酬 なし
リリース日 04月01日
出発日 04月11日 00:00
予定納品日 04月21日

参加者

会議室

  • [20]ミサ・フルール

    2014/04/05-21:23 

    よかった~
    油屋。ちゃん、潤さん、あみさん、かのんさん、
    皆どうも有り難う!
    写真の件、さっそくプランに書いてみたよ
    ふふ、来週が楽しみ♪

  • [19]かのん

    2014/04/05-20:38 

    あみさん、篠宮さん、はじめまして。
    ミサさんの案、とても素敵。是非、よろしくお願いします。

  • [18]あみ

    2014/04/05-18:13 

    潤さん!こちらこそ、洞窟の時はお世話になりありがとうございました~。
    今回もよろしくお願いしますね。

    ミサさん、私も是非集合写真に寄らせてください♪ますます楽しみです~!

  • [17]篠宮潤

    2014/04/05-09:52 

    ミサさん初めまして、だ。
    …風の花、か。それは知らなかった。ありがとう助かったよ。

    記念…か。う…む…欲しいかもしれない…
    僕も、是非宜しくしたいな。

  • [16]油屋。

    2014/04/05-00:49 

    その案良いね!ぜひお願いしたいな

  • [14]ミサ・フルール

    2014/04/04-23:58 

    (連投失礼します)
    皆に提案があるんだけど、いいかな?

    あのねイベントの最後に皆でそれぞれアレンジした作品を持って集合写真を撮りたいと思ってるんだ
    もちろんカメラは私が用意するよ

    作品を持って帰れないのなら、せめて写真だけでも、と思ったんだけど、どう?
    せっかくこうして出会えたんだし、皆と記念になることがしたいな

  • [13]ミサ・フルール

    2014/04/04-23:43 

    かのんさん、潤さん、初めまして!
    あみさん、虹色リンゴではお世話になりました!

    皆の選んだ花、どれも素敵だね!
    私も皆の作品見るの楽しみ♪

    アネモネはちょうど4~5月に咲く花みたいだよ
    ギリシャ語の『風』が語源で『風の花』とも呼ばれてるみたい

  • [12]篠宮潤

    2014/04/04-21:42 

    (※ごめんよ;誤字見つけてしまって[10]で発言したのを削除させてもらったよ;;)

    僕がラスト、かな…
    篠宮 潤という。潤と呼んでもらえれば嬉しい。よろしく。
    あみさんは洞窟のときお世話になったね。その節は本当にありがとう。

    神人になったからには…これまで経験したことが無いことを知るのも…
    大事だろうかと…、…意を決して参加したよ。
    皆がどうしてるのか気になってキョロキョロしてるかもしれないけど…
    き、気にしないで…
    アネモネ、って・・・春、の花かな…(ぽそり)(使いたいと考えているようだ)

  • [11]油屋。

    2014/04/04-21:40 

    お、メンバーが揃ったんだ。皆宜しく!
    オレンジの薔薇なんてあるんだね~
    ラナンキュラスやアストロメリア辺りもメインにして使っていこうかな。

  • [7]あみ

    2014/04/04-18:49 

    こんにちは~。あみと言います。パートナーはポブルスのヴォルフガングさんです。
    ミサさんはこの前はご一緒させて頂き、ありがとうございました~!
    油屋。さん、かのんさん初めまして~。皆様よろしくお願いしますね。

    私も皆様のフラワーアレンジメント楽しみにしてます~!
    私は薔薇を使ったものを作ろうかと考えてます♪

  • [6]かのん

    2014/04/04-15:38 

    こんにちは、かのんと申します。
    ミサさん、油屋。さん、よろしくお願いします。
    (さん付けはずすのは、少し時間をください・・・)
    こちらは、ポブルスの天藍と参加です。
    デザインはこれからなんですが、花材に桜を使って形になれば・・・と思っています。
    自分の出来がどうこうよりも、皆さんのアレンジが楽しみかも。

  • [5]油屋。

    2014/04/04-13:07 

    うん、大丈夫だよ!
    チューリップか~春らしくて良いね♪
    アタシ達は落ち着いた感じのデザインで挑戦してみようかなって思ってるんだ
    具体的に何を使うかはこれから決めるつもりだよ

  • [3]ミサ・フルール

    2014/04/04-11:01 

    (握手しながら)油屋。ちゃんって呼んでも平気?
    ご一緒できて嬉しいよ!
    サマエルさんもどうぞよろしくお願いします(お辞儀)

    私達はチューリップをメインにしたアレンジを考えてるよ
    出発が楽しみ♪(遠足前の子供状態)

  • [2]油屋。

    2014/04/04-10:04 

    油屋。です!宜しくね、ミサ!!(照れながら)
    相方はディアボロのサマエルだよ。
    さて、どんなものを作ろうかな?

  • [1]ミサ・フルール

    2014/04/04-05:42 

    初めまして!
    気楽にミサって呼んでくれると嬉しいな、
    どうぞよろしくね(微笑み)
    私はディアボロのエミリオさんと参加するよ
    お互い いい作品を作れるよう頑張ろうね


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