月夜とお馬さんと遊園地(真名木風由 マスター) 【難易度:とても簡単】

プロローグ

 『あなた』達は無料送迎バスを降りると、意外に今から遊園地を楽しむ人が多いことに気づいた。
 『あなた』達もパートナーと2人で来たかもしれないし、他のウィンクルムと一緒に来たかもしれない。
 それは、『あなた』達次第だ。

 マーメイド・レジェンディア。
 タブロスから無料送迎バスで1時間程の距離にあるこの遊園地は古城の周囲をアトラクションが取り囲んでいる。
 海岸沿いを歩くことが出来るムーンライト・ロードなんかも恋人達が語り合う場所にはぴったりなのだとか。
 A.R.O.A.職員から、夕方18時以降の夜間限定の割引券を貰った『あなた』達は休日の最後の締め括りとしてここへやってきた。
 そこに、試練があるとも知らず……。

 日中は小さな子も多いらしいが、夜間になれば年齢層が上がる。
 周囲を見回せば、家族連れよりもカップルや夫婦、グループで楽しむ大人の姿の方が多い。
 最近はアトラクションもライトアップされるから、日が落ちたからアトラクションは終了という心配もない。
 さて、どこから巡ろうか。
 そんな会話を楽しみながら、園内マップを見ていると───
 泣きじゃくる女性と必死に宥める男性の姿が目に入った。
 喧嘩でもしたのだろうか。
 事情も知らない状態で首を突っ込むのも気が引けて、気にはなるが相談続行する『あなた』達。
 と、これから楽しむ自分達とは違い、タブロスへ帰るらしい女の子達の会話が耳に入った。

「カップルムードクラッシャーがいるんだって」
「集団らしいよね。ムーンライト・ロードが特にらしいけど」
「他にも出るみたいよ? どんな喪男なんだか興味あるけど、どうにかされるまでは彼氏とは来ない方が良さそうだよねー」
「言えてるー」

 カップルムードクラッシャーって何だよ。
 世の中、どうしてそうなったのか聞きたいような聞きたくないような連中が大勢いるらしい。

 楽しみたいから、遭遇しないといいな。
 いや、寧ろ積極的に迎撃すべきだろう。

 様々な思いを抱き、『あなた』達は夜のマーメイド・レジェンディアへ踏み込んでいく……。

解説

●出来ること
・閉園時間まで下記を楽しむ(2つまでとしてください)

アトラクションやムーンライト・ロードの散策、食事などを楽しみます。

代表的なアトラクション
シアター・メリーゴーランド
メリーゴーランドが回っている最中は外の景色遮断で周囲を人魚姫の物語が美しい立体映像で再現されます。

ブルーム・フィール
所謂観覧車。夜景は特に美しいそうです。

シレーヌ・リーヴァ
期間限定アトラクション。制限時間内に魔女によって渚に閉じ込められてしまった人魚を救うゲーム型屋外アトラクション。
人魚を救うには、3つのゲーム(日替わりの為参加するまで分かりません)を2人で力を合わせて行う模様。

語り合いに向いたスポット
・ムーンライト・ロード
海沿いに伸びる石畳の道。さざ波に混じり、人魚の歌声が聞こえてくるかもという触れ込みがあります。

レストラン関係
・基本的にシーフード関連ならばレストラン・フードコート共にあるものとします。

・カップルムードクラッシャー迎撃(強制)
ランダムのタイミングで、「リア充爆ぜろ」「独り身の悲しみ」「見合いも最近はない」「合コン何それ美味しいの?」「すべからく嫉妬」という文字が入ったTシャツ着用+覆面をした一般人男性達が登場します。
間近で別れの歌を延々歌ったり、カップル排除論熱弁、ありえそうな黒歴史(設定してOK)を披露等々精神的な嫌がらせをしますが、暴力行為はしてきません。

●消費ジェール
・入園料+アトラクション2つ利用券付で1組300jr
食事は「希望するものによって」こちらで任意に設定します。
フードコートなどは安く済ませられますが、きちんとしたレストランの場合は見合った分消費します。
※高級過ぎる場合、ご希望に副えない場合もあります。

●注意・補足事項
・夜間の遊園地ですが、公共の場です。TPOにご注意ください。
・妨害は強制で入りますが、さて、一番彼らに的確な迎撃方法は何でしょう?

ゲームマスターより

こんにちは、真名木風由です。
今回は、ちょっとお馬さんもいるけど、夜の遊園地を楽しめます。
個別で楽しんでもいいですし、ウィンクルム同士のグループで楽しんでもいいです。
グループの場合、共通タグを設定いただき、アクションまたはウィッシュプランのどちらかで確認が出来れば、OKと判断して一緒に描写します。
(逆に言えば、タグが確認出来なければ会議室でOK表明をしていても一緒に描写はしません)
個別でもグループでも関係なく、お馬さんは登場する安心設計ですのでご安心ください。
暴力はしない方々なので、暴力以外の方法で迎撃してくださいね!
(襟首掴む・怪我はなくとも突き飛ばすは暴力判定です)

お馬さんがいても楽しいひと時を。

それでは、お待ちしております。

リザルトノベル

◆アクション・プラン

篠宮潤(ヒュリアス)

  園内で噂を聞いて
「皆、が…楽しめない遊園地、じゃ、困るよね…、…ヒューリ」
目で訴え。ぱっ(輝)

カップルがしてること…腕組?と恋人装い
ムーンライト・ロードにてクラッシャー誘き寄せ作戦
「…か、カップルに、見えない…かなぁ…僕じゃ…」
どんどん不安顔

「ええ!?」
まずクラッシャー来たことにビックリ
むしろ『来てくれた!』な勢い
独り身の切ない歌や語りを思わず聞いて涙ぐんじゃったり
…ハッ、そ、そう、かっ
「えと、僕たち、に…ついてきてもいい、けど…。ら、ららっラブラブ…だよ?」
腕にぎゅっ、としがみつくもしどろもどろに噛む

しかして段々慣れてきて
大勢で楽しんでる気分
「はい、ヒューリ」
フードコートで、素で『あーん』



かのん(天藍)
  ブルーム・フィール
2人並んで夜景を眺める
ライトアップがきらきらしていて綺麗ですね

ムーンライト・ロード
波の音を聞きながら寄り添って歩く
会話がなくても2人傍にいるだけで心が安らぐ

クラッシャー
周囲に纏わり付かれ鬱々とした別れの歌や縁起の良くない独り言をぶつぶつと聴かされる

迎撃
あの方々こんな事されていて楽しいのでしょうか?
素朴に疑問に思い顔を寄せてこっそり天藍に尋ねる
天藍からの答えにそういう物なのですか?と首傾げ
気遣う天藍に微笑みを浮かべ首を振る
天藍と一緒ですもの、平気というか気にならないです
ただ…折角誰かと一緒に楽しめる場所なのに、こんな風に楽しくない事しかできないのって何だか少し気の毒な気がします



アマリリス(ヴェルナー)
  つまり絡まれたらカップルに見えると
客観的に見ればという言葉があります
そういう反応には慣れてる

ゆっくり過ごしたくてムーンライト・ロードへ
手を繋ぎたいと思うも
そんなに繋ぎたかったと思われたくなく行動起こせず
このプライドをどうにかしたいと思いつつ

会話はあまりないものの特に気まずい訳でもなく心地いい
そんな関係になれたのが何だか嬉しい

・迎撃
ああ、噂の…
精霊の方を見た後そういう人だったと肩落とす

放っておかれて不満げ
貴方は誰と一緒に来たのかしらともやもや

精霊の隣に行き腕を取る
わたくしとその方達、どちらが大事かしら
夜は短いのよ

無駄な時間を取られたけど
どさくさに紛れて手を繋げたので追求はやめておいてあげましょう



菫 離々(蓮)
  夜の遊園地って幻想的ですね

家族と訪れたことはありますが
あまり乗り物を選べなくて。

ブルーム・フィールへ
これは向い合わせで乗るのですか
それとも隣?
天辺からは遊園地の外も見えるでしょうか
はい。こちら側の方が景色見やすいです
場所変わります?

カップルムードクラッシャーにお逢いしたら
「独り身の悲しみ」さんを観覧車orメリーゴーランドへお誘い。
独りだけ哀愁を帯びた文字なので。
五人組に拘りがあればハチさんを新メンバーにどうぞ

冗談です
でも独り身さんさえよければご一緒してください
ハチさん、威嚇してはだめですよ
連携を崩すのは常套手段。それに至近距離で見せつけてしまえば
ショックはより大きいかと。ハチさんの腕に身を寄せ


和泉 羽海(セララ)
  アドリブ歓迎

◆シレーヌ
頭脳系は得意、体力系は任せる
期間限定…って言われると弱い…
アクションだと苦手だけど…ゲームは好きだから、がんばる
協力、はできるだけ、する…苦手、だけど…

◆馬:
……なんだろう、この人たち

『別れる…ってことはない、ね
そもそも付き合ってないし』(筆談)

え?そこ驚くところ?
だが、断る(首を振って拒否)

…好きってなんだろ…
この人のことは嫌いじゃないけど…よく分からない

(お馬さんに慰められてる図を見て)
…こっちも、よく分からない状況になってるし…
…もう帰っていいかな……めんどくさいし…

…そう思えるのは、この人だけだと思うけど…
……被害は確かになかったけど…これ、撃退っていうのかな…



●不幸見れども
 かのんと天藍はまず、観覧車ブルーム・フィールへ行くことにした。
「昼は昼でいい眺めだと思いますが、夜はライトアップされている園内が一望出来るだけあって、絶景らしいですね」
 周囲のライトアップされた園内が一望出来るからか、かのんの声は楽しそうだ。
 天藍は、そんなかのんの楽しそうな姿が愛しい。
 夜景を眺めている時は、この楽しさに夜景への感動が加わるだろうなと思う。
 噂の変な輩に遭遇することがないといいが───
 しかし、その願いは、早々に儚いものとなった。
 ブルーム・フィールへ向かう途中、周囲から涙に咽ぶ男達が近寄ってくる。
 噂のカップルムードクラッシャーらしい。
「恋人同士のニオイがする……ッ!」
 どういう嗅覚だと思う天藍は眉間に皺が寄るのを感じた。
 涙する彼らが着用しているのは、『リア充爆ぜろ』『独り身の悲しみ』『見合いも最近はない』『合コン何それ美味しいの?』『すべからく嫉妬』という5種類の何とも言えない文字が書かれたTシャツ。
 尚、5人ではない。
 5種類のTシャツをそれぞれ着用しているだけで、人数はもうちょっと多い。
 彼らは、涙声で別れの歌を輪唱し始めた。
(正直、鬱陶しい)
 が、場所が場所だし、手の甲を見ても何もなく、彼らはあくまで一般人であることが伺える。
 手荒なことをする訳にもいかず、困ったものだと溜息を零すよりも早く、天藍はかのんを心配して彼女の横顔を見た。
 そのかのんは───難しい顔をして考え込んでいる。
 やがて、天藍の服の袖を引っ張ると、かのんは顔を寄せてきた。(勿論クラッシャーな方々の歌声が一際大きくなったのは言うまでもない)
「この方々は、こんなことをされていて楽しいのでしょうか?」
 天藍にこっそり寄せられたのは、素朴な疑問。
 眉間の皺が解除されるレベルで毒気を抜かれた天藍は、苦笑を漏らす。
 きっと、彼らにはかのんは理解出来まい。
 天藍はかのんの肩を抱き寄せると、かのんへそっと答える。
「あの手の輩は一度どっぷりどん底まで落ちないと浮上出来ないのかもな」
「そういうものなのですか?」
「ああ。かのんが気にかける必要はないし、気になるのなら振り切ろうか?」
 首を傾げるかのんへ天藍はひとつの提案。
 その気遣いに対し、かのんは微笑んで首を横に振り、「ゆっくり行きましょう」と返した。
「天藍と一緒ですもの、平気というか気にならないです」
 ただ、とかのんは輪唱のクライマックスになっている彼らを見る。
「折角誰かと一緒に楽しめる場所なのに、こんな風に楽しくないことしか出来ないのって何だか少し気の毒な気がします」
 確かにな、とかのんに同意する天藍が彼らを見るよりも早く、彼らは遠い目で言った。
「誰かと楽しめる確実は都市伝説。俺はここで彼女にフラれた。フラれる為に呼び出された」
「確か二股の彼女に散々奢らされた上、本命の彼に殴られて当て馬にされたんだっけ」
 …………。
 縁起の良くない話だ。
 二股の彼女の人間性に問題があったんじゃと思わないでもなかったが、彼らにも色々あるらしい。
 気にしないようにして、2人は歩き出す。
 自分が不幸だからと誰かを不幸にすることがないように。

 ブルーム・フィールの夜景は、絶景と謳われるだけあり見事なものだった。
「綺麗ですね……」
「そうだな。本当に綺麗だ」
 夜景の美しさに心躍らせるかのんの横顔を見ながら、天藍も夜景の美しさを褒める。
「あの方々もこうした綺麗な景色で、いい思い出を新しく見つければいいと思うのですが……」
「悲しい時程、上は見ないからな」
 彼らを案じるのがかのんらしいと苦笑を零し、天藍はそう答える。
 この言葉を彼らにも聞かせてやりたいものだ。

 ブルーム・フィールを降り、幾つか巡った後はムーンライト・ロードへ。
 寄せては返す波の音、互いに重なる温もり。
 言葉がなくとも寄り添っているだけで心が満たされる。
 静かで安らぐ時間は愛しく───それは、誰であれ平等に降り注いでほしいと2人は願う。

●ある意味彼らのお陰
「私達の所には現れなさそうですね」
「客観的に見ればという言葉があります」
「では警戒しておきましょう」
 反応には慣れているアマリリスの言葉に対し、ヴェルナーも真面目に頷いた。
「先にムーンライト・ロードはどうでしょうか?」
「話題になっていたようですが」
 アマリリスが提案すると、ヴェルナーは暗にゆっくり過ごしたいようだが、絡まれるかもしれないならゆっくり過ごせないのではと言った。
「より遅い時間の方が2人きりを望んで過ごされるなら、彼らもより遅い時間を狙うかもしれませんから」
「今の時間帯であれば、他のアトラクションを楽しまれる方々の方が多いかもしれませんね」
 ヴェルナーは、アマリリスの言葉に頷く。
(手を繋ぎたい……と言うのも変だわ)
 デートだと心ときめかせているとヴェルナーに言うみたいで、言えない。
 素直になればいいのにと思うけれど、プライドが邪魔をする。
「肌寒くありませんか? 海からの風が少々強いようですが」
「大丈夫よ」
 アマリリスの隣を歩いていたヴェルナーが声を掛けてくる。
 ムーンライト・ロードへの入り口に差し掛かっており、周囲に人がいないこともあってアマリリスも本来の口調で応じた。
「寒く感じたら、いつでも言ってください」
 ヴェルナーはそう言って、微笑んだ。
 再び、沈黙が舞い降りる。
(アマリリスは何を考えているのだろう?)
 何かを考えていたような気がする。
 ヴェルナーは思案するように首を傾げてみたけれど、朴念仁の自分にはよく分からなかった。
 石畳の道を歩く音だけが響く。
 会話は少ないが、気まずさはない。寧ろ心地いい。
 そうした関係になれているのが何だか嬉しい───アマリリスがそう思ったその時だ。
「カップルの気配がする……」
「幸せの気配……」
 茂みの向こうに、何か泣いている集団がいる。
 アマリリスとヴェルナーが認識した瞬間、ざざっと現れた。
「諸君! 世で有名な人魚姫の物語とは報われない恋に破れ、誰に気づかれることもなく果てた姫の悲しい物語である! そのような悲恋をカップルのイチャイチャラブに利用していいと思うかね!」
 否!!
 主張する男に同意する声が重なる。
「これが噂の……」
 アマリリスが言い掛けた瞬間、ヴェルナーが茂みに向かって歩いていた。
「お言葉ですが、カップルがそのように利用するのが不謹慎であるならば、あなた方もご自身の主張の為に利用されているのですから、不謹慎ということになります」
(そういう人よね)
 真面目に論戦仕掛けたヴェルナーを見て、アマリリスは肩を落とす。
 凄い論戦になっていくと、アマリリスはやることがなくなり不満である。
(あなたは誰と一緒に来たのかしら)
 もやもやした気持ちは、そのまま行動になった。
 ヴェルナーの隣へ歩いていくと、その腕を取る。
 驚いたヴェルナーが、やっと自分を見た。
「アマリリス?」
「わたくしとその方達、どちらが大事かしら」
「勿論アマリリスです」
 忘れ掛けていた所もあっただろうが、即答に満足を覚える。
「夜は短いのよ」
「申し訳ありません」
 時間を掛け過ぎたと謝罪するヴェルナーは、アマリリスが手を握って足早に歩いていくから、泣き出す彼らへ「やはり賛同は出来ませんのでこれにて」とだけ返し、アマリリスへ歩調を合わせて歩く。
(無駄な時間を取られたわ)
 でも、彼らのお陰で手を繋げたから不問にしよう。
 ヴェルナーも振り解かず、隣を歩いてくれる。
(温かいから、これでいい)
 と、アマリリスがくしゃみをしたので、一応持ってきていた彼女の外套を差し出した。
「ヴェルナー、流石に暑くなるわ」
「では……」
 咄嗟に準備したらしいそれは、夏には不向き。
 アマリリスが苦笑すると、ヴェルナーは自身のカーディガンを渡した。
「私のもので失礼ですが」
「いいえ、いいわ」
 自分がしている意味を分かっていない様子の彼に苦笑し、カーディガンを羽織る。
 カーディガンは、彼の不器用な温かさが感じられるような気がした。

●ありがとう?
「夜の遊園地って幻想的ですね」
 菫 離々がライトアップする遊園地を見回しそう言うと、蓮は家族と訪れたことはあっても乗り物があまり選べなかったという彼女の話に「親父さん過保護ですしね」と相槌を打つ。
 それならば、今日は好きな乗り物に乗って貰おうと蓮は離々の意見を聞いた。
「観覧車に乗ってみたいです」
「ブルーム・フィールでしたね」
 カップルクラッシャーの噂は方々から聞こえてくるが、特に遭遇することもなく、ブルーム・フィールのゴンドラへ。
「これは向かい合わせで乗るのですか? それとも隣?」
「バ、バランス取るには向かい合わせですかね」
 離々へそう告げた蓮は、色々な意味(尊過ぎる彼女と見つめ合うとかそんな状況に親父さんどう思うだろうかとか)で挙動不審だ。
 気づいているのか気づいていないのか(前者の可能性が高い)、離々は「天辺からは遊園地の外も見えるでしょうか」とゆっくりと変わる夜景を見つめていたが。
(……あ、景色見ていらっしゃいますか)
 蓮は離々が夜景を見ていることに気づき、彼女と同じように視線をゴンドラの外へやる。
「綺麗ですね」
「はい。綺麗な夜景ですね。でも、お嬢の方がき、綺麗───」
 蓮は離々に言おうとして、言葉に詰まり、数秒沈黙。
「綺麗に景色見えてますよね!」
 結局言えなかった。
 気づいているのかいないのか(やっぱり前者の可能性が高い)、離々がくすくす笑う。
「こちら側の方が見易いですね。場所、変わります?」
「……ハイ」
 蓮は、もう少し頑張ろう。

 ブルーム・フィールを降りると、離々は「シアター・メリーゴーランドに行ってみませんか」と提案してきた。
(お嬢、恋愛小説お気に入りですからね)
 蓮も納得し、離々と共にシアターメリーゴーランドへ。
 夜間でも乗りたがるカップルが多いのか、少し列に並びそうで、蓮は離々にどうしようか確認すべく振り向いたその時だ。
 周囲に、男性が立っていた。
 よく分からないが、しくしく泣いており、別れの歌を輪唱してくる。(かのんと天藍遭遇の集団と同一である)
「俺なんかこのメリーゴーランドで別れたのに、初々しいカップルが!!」
「カップル!」
 密かに標的になりたいと思っていた蓮はカップルに見えたという夢が叶ったと判明した瞬間、感極まった声を上げていた。

 俺と!
 お嬢が!!
 初々しいカップルに見える!!!

 パアアア……

「お、おい、いきなり泣き出したぞ」
「ありがとう、君達のことは忘れない」
 さしもの集団も驚く中、蓮は嬉し泣き続行。
 すると、離々が「独り身の悲しみ」というTシャツを着用した、先程のメリーゴーランドで破局男性へ歩み寄った。
「悲しい思い出は新しい思い出で上書きすればいいのですよ。独り身さんさえ良ければ、ご一緒しませんか?」
「って、お嬢、何ナンパしてるんです」
「その代わり、ハチさんが新メンバーになりますので」
「しかも俺とトレードですか」
 1人だけハイスコアの哀愁を感じたという離々は蓮とのトレードを申し出た。
 蓮に同情的な視線が集まり、独り身(仮名)が羨ましいと悔し泣きで送り出される。
「独り身さん」
「お嬢、あまり連呼しないであげてください」
 本当のことでも言っちゃいけないと蓮が言うと、「冗談です」と離々はくすくす笑う。
 威嚇しないよう注意され、蓮は2人がシアター・メリーゴーランドを乗るのを待つ。
(お嬢との2人の時間……)
 注意された為自腹で買ったホットドッグはちょっと豪華なものにしてむしゃむしゃ。
 乗り終えた2人がこちらへやってくると、離々が蓮の腕にそっと身を寄せた。
「!?」
 驚いて硬直する蓮、お礼を言われた後羨ましがられて戻っていく彼を見ながら離々はこう言った。
「揺さぶるのは常套手段。それに、近くで見せつければ、ショックも大きいかと」
 寄せられる離々の体温よりも、普通に迎撃されるよりショックだったらしい彼らよりも。
 蓮は、その言葉で色々吹き飛んだ。
 やっぱり、ありがとうで正解かもしれない。

●寧ろ会心の一撃
 篠宮潤は、ぽつりと零した。
「皆、が……楽しめない遊園地、じゃ、困るよね……、……ヒューリ」
 見上げてくる視線は、言葉より顕著で。
 ヒュリアスは溜息を零し、「……分かった」と了承を伝えた。
 それだけで、意図は通じ合う。
 ぱっと顔を輝かせる潤と共にムーンライト・ロードへと向かった。

 海沿いに伸びる石畳の道を腕を組んで歩く。
 カップルがしてそうなことをし、カップル偽装でカップルムードクラッシャー誘き寄せ作戦の開始である。
「……か、カップルに、見えない……かなぁ……僕じゃ……」
「まぁ、出てこなかったら普通に楽しめばいいのではないかね?」
 どんどん不安そうになっていく潤と異なり、ヒュリアスはいつも通りだ。
 が、その時だ。
「俺達は悲しく独り身なのに! 寄り添う恋人を不安にさせている! 諸君! これは由々しき事態だと思わないかね!!」
 茂みから、ざざっと集団が現れた。
 彼らがカップルクラッシャーというのは説明されずとも分かる。
「ええ!?」
「……」
 本当に来たと驚く潤の隣で、眉ひとつ動かさず微動だにしないヒュリアス。
 が、表情筋が仕事しないだけで、意外と驚いているのだが、誰も気づかない。
 集団は、人魚姫の悲しい恋からの自分達の恋に破れて独り身になった語りや別れの切ない歌などを披露しだす。
「……」
 ヒュリアスは、潤を見る。
 彼らの切実さに流されて、思わず涙ぐんでいるが、寧ろ来てくれたのだから、目的を果たした方がいいだろうと絡む潤の腕を指でトントンつつく。
「……ハッ、そ、そう、かっ」
 涙ぐんでいただけあり、やっぱり少し忘れてたらしい。
 潤はヒュリアスの腕に一層、ぎゅっとしがみつく。
「えと、僕たち、に……ついてきてもいい、けど……。ら、ららっラブラブ……だよ?」
 しどろもどろで所々噛んでいて、その上棒読み。
「……」
 ヒュリアスは危うく吹きそうになったが、表情筋がやっぱり仕事しないので、彼の心の内に気づいた者は誰もいない。
 受けて立つ!
 そんな論理の彼らだが、先程は見せつけられて悲しい思いをしたらしく、それが潤の涙を誘った。
 尚、言うまでもなく、見せつけたのはヴェルナーとアマリリスである。

 ムーンライト・ロードで他のカップルの雰囲気を壊す必要もない。
 そういう流れで、潤とヒュリアスは遊園地エリアへ移動した。
「わ……っ」
「水を使うアトラクションのようだ。こちらへ」
 ヒュリアス的一般的カップルの定義がごくごく真面目に実践される。
 本、観察、偏った付き合いから得た知識であるし、そもそも一般的なカップルの定義はあってないようなものだが、常識人のようで時折天然の彼は少々ズレていることに気づかない。
 こうして肩を引き寄せたり、髪へ顔を寄せたりする仕草は彼らの羨望の対象であるようだが。
「ヒューリ……、く、くすぐったい……かな……」
 対する潤も照れはするものの、段々慣れてきている様子。
 スンスン泣いて、この遊園地での彼らの悲劇的な話を聞いて潤が同情的になった部分もあり、彼らの精神攻撃(?)は思う程ではない。
 カップルではないからされたとしても気にすることもないが、こうして引き連れて歩いていれば、他のカップル1組は迷惑を被ることはないだろう。
 ヒュリアスの思考としてはこのようなものだが、何だか大勢で巡っているような形になり、ごく普通に皆でアトラクションを楽しんでいる。
 食事でもしようという話になり、フードコートへ。
「はい、ヒューリ」
 素で『あーん』をしてきた潤を見て、集団が泣きながら崩れ落ちた。
 楽しみからの突き落としを感じたからだ。
 ヒュリアスは差し出されたシーフードのピッツアを食べながら、まだ気づいていない潤を見る。
 食べ終わったらそっとこの場を立ち去ろうと思うヒュリアスは、先程まで絡めていた腕に視線を落とした。
(ふむ……悪い気はせんか……?)
 自問自答の先に確信はあるのか。
 まだよく分からないが、今は潤が楽しそうなので、それでよしとしよう。

●月夜の馬と交流
 和泉 羽海とセララは、期間限定ということもあり、シレーヌ・リーヴァへ足を運んでいた。
『協力、は出来るだけ、する……』
「羽海ちゃんの為に頑張るよー!」
 口パクの羽海が『苦手、だけど……』と続けているが、セララは協力する部分だけを頂戴したらしく、機嫌がいい。
「2人で協力ってことは……うっかりラブハプもあ……ね、狙ってないよ!? オレ紳士だもん!!」
 セララは言い直したが、羽海は無視してアトラクションへ入った。
 本日のゲームは───

第1関門 砂絵パズル
第2関門 クイズ
第3関門 貝殻合わせ

 全部頭脳系?
 羽海は1人だけでもクリア出来そうな気がすると思ったが、第1関門のエリアを見て納得した。
 砂絵パズルの横には、小さな観覧車がある。
 この観覧車は手動、パートナーが砂絵パズルを解くまで魔女の呪いに囚われた扱いで降りることが出来ないらしい。
『いってらっしゃい』
 羽海はメモ帳に記した文字を指し示し、セララを送り出した。
 結果───
「観覧車って、もっとこう穏やかなものじゃないの!?」
 手動で回転する観覧車は、高速でしがみつく必要がある代物だった。
 羽海が砂絵パズルを解いた時には、セララはだいぶ消耗していたが、羽海が解くや否や「オレのことが心配で早く解いてくれたんだね!」と目を輝かせ、羽海はスルー対応で先を目指す。
 続くクイズも羽海がクイズを解く間、魔女の迷宮を延々迷っている扱いで速度が15秒毎に上がるルームランナーをセララが走り、終わる頃には大変なことになっていたが、羽海はセララの言葉をスルーし、先を目指す。
(今回は、いて助かる)
 面倒だから、言わないけど。
 その後、セララが海岸を模したプールで見つけた貝殻と同じ貝殻を砂浜を模したエリアで羽海が見つける貝殻合わせも終わり、2人は無事クリアすることが出来た。
「休憩しない?」
 セララが羽海を気遣うように明るく笑う。
 第3関門以外では体力勝負で消耗している筈だが、そう感じさせない。
 そんなセララが、羽海にはよく分からない。

 フードコートへ行き、シーフードのピッツアとフィッシュ&チップスを購入すると、妙な集団が目に入った。
(何だろう、この人達)
 すると、男達は2人を見て、ゆらりとこちらへやってきた。
 園内のウィンクルム達によって傷を悪化させているカップルクラッシャーの皆さんである。
「オレ達の愛に勝てる訳ないでしょ。別れるなんてありえないよねー!」
『そもそも付き合ってない』
 セララの隣で、別れるも何もと言いたげな羽海がメモ帳の文字を彼らへ指し示す。
 「あれ、オレ達付き合ってなかったっけ? そうだっけ??」となったセララへ、羽海はメモ帳に「そこ驚く所?」と書き記す。
「……えっと、じゃあオレと付き合ってください」
『だが、断る』
 文字と共に首を振って拒否。
「何で!? オレのこと好きじゃないの!? って、目を逸らさないでよー!!」
「お、おお……強く生きろ?」
 泣き崩れるセララへ、男達がジュースを差し入れてくれる。
「ありがとう、何か元気出た!」
「今にいいことあるぜ、頑張りな」
「キミ達も頑張ってね!」
「おう!」
 何だかよく分からない意気投合に羽海は溜息を零す。

 好きって何だろう。
 この人のことは嫌いじゃないけど。
 でも、よく分からない。
 そう思えるのはこの人だけだとは思うけれど……。

(……もう帰っていいかな……めんどくさいし……)
 羽海がフードコードを無言で出ると、セララが追いついてくる。
「思ったより良い人達だったよね!」
(……被害は確かになかったけど……)
 これは撃退というのだろうか。
 羽海がそう思っていると、セララは笑顔でこう言った。
「でも……やっぱり、オレ達の愛には敵わなかったね!」
 羽海は、セララの足りない頭のネジは1本以上あると思った。
 それでも、やっと慣れてきた存在を振り切ることなく。
 嬉しそうなセララを男達が物陰で応援していたのだが、2人は知らない。

 月夜の馬は、恋する男には優しいらしい。



依頼結果:大成功
MVP
名前:篠宮潤
呼び名:ウル
  名前:ヒュリアス
呼び名:ヒューリ

 

名前:和泉 羽海
呼び名:羽海ちゃ~ん
  名前:セララ
呼び名:アレ、あの人、セララ

 

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター 真名木風由
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 女性のみ
エピソードジャンル コメディ
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 とても簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 5 / 2 ~ 5
報酬 なし
リリース日 08月06日
出発日 08月12日 00:00
予定納品日 08月22日

参加者

会議室

  • [7]和泉 羽海

    2015/08/10-23:20 

    はろはろ~セララと可愛い羽海ちゃんだよー
    よろしくね~

    オレ達は期間限定アトラクションに行く予定だよ~!
    お馬さん?オレ達の愛をもってすれば、何の障害にもならないね!
    それじゃあ、皆も素敵な時間を過ごしてね!

  • [6]菫 離々

    2015/08/10-23:17 

    蓮:
    お邪魔します。
    スミレ・リリ嬢と、俺は精霊のハチスといいます。
    今回は個別で楽しむ方向ですかね。よろしくお願いします。

    お嬢が遊園地らしい乗り物をご所望なので観覧車辺りに出没予定です。
    カプクラ戦隊はカップルではない自分達にはさほどダメージなさそうですが
    エンカウントしたらお嬢が対応なさる……んですかね。俺も詳しくは聞いてません。

    それぞれお馬さんを上手く乗りこなして、楽しいひと時となりますことを。

  • [5]菫 離々

    2015/08/10-23:16 

  • [4]アマリリス

    2015/08/10-22:03 

    アマリリスとパートナーのヴェルナーです。
    よろしくお願いいたします。
    カップルムードクラッシャ-、と。暇な方もいらっしゃいますのね。

    同じく個別でと考えています。
    皆様も素敵な時間を過ごせますように。

  • [3]かのん

    2015/08/10-10:14 

    こんにちは、ご挨拶が遅くなってしまいました
    かのんとパートナーの天藍です
    何だか、カップルムードクラッシャ-?という方は何がしたいのでしょうか?(首かしげ)
    まだ、何をしようか決めていないのですけれど、楽しい時間を過ごせたらと思います
    よろしくお願いしますね

  • [2]篠宮潤

    2015/08/10-08:33 

    改め、て、篠宮潤、と、精霊のヒュリアス、だよ。
    みんな、どうぞよろしく、だ。

    カップルムード、クラッシャー?なんて人たち、が、いるんだね…;
    ぼぼぼ、僕、とヒューリで、カップルに見えるか、分からない、から…
    誰かとご一緒、か、後つけさせてもらおう、かなぁぁぁって、思った、けど………
    …うん。共通タグ、がないと、一緒に描写できないみたい、だし(メタで失敬っ)
    あんまり、ご相談の時間も、無さそう…だから(←自分のご挨拶兼相談が多分に遅れたせい)
    今回、は、個別で楽しむ感じ、かなっ。

    夜の遊園地、楽しみ、だね!

  • [1]篠宮潤

    2015/08/10-08:26 


PAGE TOP