食器泥棒を捜せ(うち マスター) 【難易度:簡単】

プロローグ

 ●湖の見える別荘地

 トンプソン氏は長い休暇を取るとタブロス市近くに建てた別荘で長閑な休日を過ごす事が多い。
 今回の休日もトンプソンは妻であるリサーナと共にこの別荘へと赴いた。

「リサーナ、いつものケーキを頼むよ」
「ふふ、またテラスで読書ですか?」
「あぁ。湖を背景に読む読書は格別だからねぇ」

 トンプソンの優雅な別荘での過ごし方は、湖の見えるテラスでアームチェアに腰掛け、リサーナの手作りケーキを楽しみながらの読書である。
 甘党の彼を愉しませる為のケーキとお茶には専用のティーセットを使うのだが……。

「……あら?」
 キッチンに戻ってティーセットを出そうとしたリサーナは部屋に違和感を感じたが、特に気に留めたりはしなかった。
 そして先ほど作ったチョコレートケーキを確認して、テーブルの下から物音が聞こえたのでそちらに目を向けると角の付いたゴブリンがそこに隠れていた事に気付く。
 驚いたリサーナと同じように驚いた3体のゴブリン達は一斉に開いた窓から逃げ出し、リサーナは事なきを得た。
「(なんだったのかしら……)」
 気を取り直して食器棚のティーセットを取ろうとした所でようやくリサーナはキッチンで起こった事件にようやく気付いたのだった。


 ●A.R.O.A.受付

「……それで盗まれたものはそのティーセットで良いんですか?」
「いえ、陶磁器類のカップやソーサーは無事だったのですが、銀製のフォーク、スプーン、ナイフが失くなっていました」
「銀のフォークとスプーンとナイフ……だけですね。担当のウィンクルム〈神人と精霊のペア〉達にはそう伝えておきます」
「どうかお願いします。ティーセット一式が揃ってないと私も主人も落ち着いて休暇を過ごせません」

解説

 ●目的
 ゴブリン達が盗んだと思われる銀の食器の奪取。
 銀の食器を奪取を最優先とし、多くの〈2つ以上の〉食器を取り戻した者には報酬にボーナスが付きます。
 ●A.R.O.A.公務
 角の付いたゴブリン〈デミ・ゴブリン〉の討伐。
 依頼としては食器の奪取なのだが、デミオーガを放っておく理由はない。

 ●探索場所
 トンプソン氏の別荘付近〈湖の近辺〉。
 ・小さな森
 ・小川
 ・風車小屋
 ・小さな洞窟
 ・街道

 これらの探索場所を手分けして探し、銀の食器を取り戻して下さい。

 ●注意事項
 3つある銀の食器の1つでも紛失した場合は、食器2つの奪取に成功していても報酬が減ります。
 このデミ・ゴブリンは人間に見つからないように隠れているようです、探索場所を探すには時間が掛かります。

ゲームマスターより

 どうもうちと申します。
 まずはプロローグの観覧ありがとうございます。

 解説にもある通り、ウィンクルム達には手分けして食器を盗んだデミ・ゴブリンを捕まえて下さい。
 同じ場所を探すのも良いですが、報酬ボーナスは1組のみですのでボーナス目当てで他のウィンクルム達を出し抜いて食器の奪取をするのも面白いかもしれません。

リザルトノベル

◆アクション・プラン

月野 輝(アルベルト)

  ■心情
銀のカトラリーだけ盗んでいくって不思議な事をするゴブリンね
たまたま?それともケーキを食べたかったとか?
どっちにしても放ってはおけないわね
ご夫婦の楽しみを取り戻しましょう

■持ち物
マジック、笛、ランプ等の灯り

■行動
洞窟探索を担当するわ
小さな洞窟だって事だし迷うような事はないと思うけど、一応マジックで目印を書きながら進みましょう
逃げられた時に備えて、入り口にも何か仕掛けておきたい所ね
ケーキを持っていったら誘き出せないかしら?

見つけたら笛で他の人へ合図を
1匹ならピー、2匹ならピピー、3匹ならピピピと連続で長く
他から3匹の合図が聞こえたら駆け付ける

どうしても見つからない時は時間があれば他の場所へ



ハロルド(ディエゴ・ルナ・クィンテロ)
  ディエゴさん銃を使うから、開けた場所、遮蔽物の少なそうな場所が良いかな…
あと、そのゴブリンはなんでスプーンとかを盗んだんだろう?
金目のものっていうなら、普通はティーセット一式揃ってないと駄目だよね。
何かに使うために持っていったのかな…使うとしたら食べるための道具だけど。
開けた場所で、食べ物がある
この条件を満たせそうなのは小川かな?
ウィンクルム同士の合図に笛を持っていこう

小川に到着したらまずは隠れられそうなところを探して
向かい合わせになるように二手に別れるよ
ゴブリンを遠目に見つけたら、私が小石を投げてゴブリンの気をそらし
その間にディエゴさんがダブルシューターで狙い撃ち
って作戦。



七草・シエテ・イルゴ(翡翠・フェイツィ)
  事前調べ
デミ・ゴブリンの特徴、好物、嫌がる音、弱点

持ち物
笛、事前調べによる罠道具とチョコケーキが入った鞄

発見時の吹き方
1体:ピー
2体:ピピー
3体:連続で吹く

行動
森を探索
罠を張ったら茂みに隠れ、デミ・ゴブリンを待つ
その時、翡翠さんと背中を合わせ、彼の死角を警戒

現れない場合
道具を片づけて、ケーキを用意
再度、茂みに隠れて、デミ・ゴブリンを待つ

現れた場合
気づかれないよう接近
ゴブリンが逃げたら、笛を吹きながら後を追う

戦闘になったら
トランスができるよう、翡翠さんの邪魔にならない程度に傍へ
デミ・ゴブリンが接近したら早めに離れます

「あの……傷はついていませんか?」
食器が見つかっても、ご夫婦に返すまでは心配です



 ●依頼説明後に

 依頼を受けたその日、集まったウィンクルム達が依頼の説明を受け、それぞれ解散しようとしている時に七草・シエテ・イルゴは残り2組のウィンクルムを引き止める。
「あの……今回の依頼についてなんですが、皆さん別々に探索しないといけないと思うんですよ」
「そうね。依頼としてはデミオーガの討伐も大事だけど、銀の食器〈カトラリー〉を取り戻さないといけないわね」
 シエテの言葉に月野 輝が返すと、ハロルドもこくりと相槌を打った。
「それでですけど、探索の際には各自で笛〈ホイッスル〉を用意してデミオーガを見つけたら笛を吹いて知らせようと思うんですが……どうでしょうか?」
「ふむ、良い案だと思います」
 輝のパートナー、アルベルトが左手を顎に付けながらにこやかに答える。
「……へぇ。中々良いアイデアだな、シエ。そっちの兄さんもそう思うだろ?」
 シエテのパートナー、翡翠・フェイツィも自分のパートナーのアイデアに感心しながら後ろの方で口を閉じているハロルドのパートナーのディエゴ・ルナ・クィンテロに視線を向ける。
「あぁ、俺達も異論は無い」
「それでは当日は笛を持って来て下さいね」
 シエテのその言葉でその日は解散となって、各々準備を開始したのだった。



 ●トンプソン氏の別荘前

 次の日、依頼を受けたウィンクルム全員がトンプソン氏の別荘に集まった所で出迎えをする依頼主のトンプソン夫人〈リサーナ〉に深々と頭を下げられる。
「どうか、よろしくお願い致します」
「は、はいっ。私達にお任せ下さい」
「えぇ、私達に任せて下さい」
 リサーナを不安がらせないように笑顔でシエテと輝はそう返し、続く形でハロルドも軽く相槌を打つ。



「さて、それではデミ・ゴブリンの探索を行う訳ですが、どの辺りを探索するか決まっていますか?」
 リサーナが別荘の中へと戻ったのを確認してからアルベルトは全員を見渡しながらそう口にした。
「えぇと、私と翡翠さんは近くの森を探そうと思ってます」
「ディエゴさんは銃を使うから、開けた場所、遮蔽物の少ない場所……私達は小川の方を探索します」
 シエテはすぐに、ハロルドは少し思案してからそう答える。
「ふむ。私達の方も洞窟を探索しようと思っていた所ですから、丁度良さそうですね。被りもないようなので、そのままその場所を探索場所としましょう」
 アルベルトが軽く纏め、解散の流れになろうとした所でシエテが思い出したように口を挟む。
「あ、あのっ。先日持って来て貰うように言った笛についてなんですけど、デミ・ゴブリンを見つけた場合はその数で笛を吹く回数を変えましょう」
「……どういうことですか?」
 輝の問い返すとすぐにシエテが説明する。
「えぇっとですね。見つけたデミ・ゴブリンが1体ならピーと笛を長く1回。2体ならピピーと2回。3体全部見つけたならピピピっと連続で吹き鳴らして下さい」
「……成る程。鳴らす回数で敵の数を知らせ合う、という事だね」
 ハロルドはシエテの説明に相槌を打ち。
「分かったわ。ただリサーナさんが言ってた通りだとするとデミ・ゴブリンはすぐに逃げるみたいだから笛を吹く時は注意しましょう」
 輝が注意を促した所で、黙って話を聞いていた翡翠が口を開く。
「よし。決まったんならさっさと行こうぜ? 善は急げと言う事だしな」



 ●探索開始

「それにしても、銀のカトラリーだけ盗んでいくって不思議な事をするゴブリンよね。たまたま? それともケーキを食べたかったとか?」
 洞窟へと向かった輝が地図を見ながらぽつりと呟く。
「デミ・ゴブリンが女性のように甘い物好きとは思えませんし、カトラリーを盗むというのは不可解ですね」
「どっちにしても放ってはおけないわ。頑張りましょうアル」
「ふふん。気を張るのは良いですが、張り詰めすぎて無理をしないで下さいね。どう頑張っても輝は神人なんですから……」
 と釘を刺すアルベルト。
「う……わ、分かってるわよ」

 そうこう言ってる内に目的の洞窟へと到着する。
 小さな洞窟、との情報だったが外からでは洞窟の中の深さは分からないようだ。
 2人は予め決めていた通り、洞窟の入り口にアルベルトが持って来たピアノ線を張り始める。
「輝、仕掛けた罠はキチンと覚えておいて下さいね。自分達で仕掛けた罠に自分達が掛かるなんてみっともない真似しないように」
「そんな事言われなくても分かってるわよ! アルも無駄口叩いてないで自分の仕事をしなさいよ」
 はいはい、と微笑しながらも罠を仕掛ける手は止めない。
「これで万が一逃げられても、ここで少しは足止めできるでしょう」
 5分ほどで10本程度のピアノ線を張り終わり、洞窟探索を開始した。



 小川に向かったハロルドとディエゴ組は逸早く目的地に到着した。
 トンプソン氏の別荘からも見えては居た湖だったが、近づくとその透き通ったような綺麗さが際立つようで、任務中にも関わらずディエゴは自然と笑みを作っていた。
「ディエゴさん。笑っているけど、ゴブリンを見つけたの?」
「む。いや、景色が綺麗だったからな。仕事中なのに不謹慎だったか、すまない」
「……いえ、私も綺麗だと思います」

 しかし、改めて見ると遮蔽物は少ないと思っていた小川は意外と木や岩などが多く、探すのには時間が掛かりそうだ。
「ゴブリンはなんでスプーンとかを盗んだんだろう? 金目のものっていうなら、普通はティーセット一式揃ってないと駄目だよね」
「確かに……だがゴブリンが金の為に動く訳はないだろう」
「何かに使うために持っていったのかな……使うとしたら食べるための道具だけど」
「考えても仕方ないな。だが情報通りだとすると何処かに隠れている可能性の方が高いだろう。十分気をつけてくれハル」
 そう言ったディエゴはハロルドと分担して近くの木陰、岩陰等を中心に探索を開始していく。



 そして最後の1組であるシエテと翡翠の組も地図を見比べながら探索場所の森へと辿り着いていた。
 森、とあったが木々が生い茂っている訳ではなくどちらかと言えば林、といった感じの森のようで、これならば2人でも時間を掛ければ探しきれそうだ。

 シエテが前日に調べたデミ・ゴブリンの情報によると。
 デミ・ゴブリンはデミオーガの中でも遭遇頻度の高い。
 元のゴブリンがそれほど強くないため、脅威度は高くないが壊れた鎧などを着ている事が多く注意が必要。

「デミ・ゴブリンの好物や弱点はよく分からなかったですけど、脅威度は高くないみたいですね」
「まぁ、元はゴブリンだしな」
「それで闇雲に探すよりも罠を仕掛けて待っていた方が良いと思ったのでこれを持って来ました」
 シエテはそう言いながらごそごそと鞄の中からワイヤーと鈴を取り出した。
「古典的なブービートラップだが、面白ぇな」
 元々こういう悪巧みが好きな翡翠はシエテから罠道具を受け取り、2人はノリノリで森へと入っていく。

 ある程度奥まで入り、身を隠すのに向いた茂みを見つけて。
「……とりあえず四方を囲むように張り巡らせるか」
「そうですね。早速取り掛かりましょう」
 手際の良い翡翠に掛かればものの5分ほどで罠は仕掛け終わった。

 それから周囲を警戒しながら茂みに隠れて30分ほど待つが……。
「……来ないな」
「いえ、罠はもう一つ用意してきました」
 次にシエテが取り出したのは市販のチョコケーキ。
「次はこれを試してみましょう」
 銀の食器を盗んだのはケーキを食べる為かもしれない、という仮説を元に予め用意していたのだ。
 罠を片付けてチョコケーキを設置、翡翠が茂みに隠れようとした所で。

 ピー。
 ピー。

 2箇所からほぼ同時に笛の音が鳴り響く。
「翡翠さんっ! ど、どっちに行けば!?」
 2箇所同時に鳴った笛に混乱したシエテが翡翠に聞く。
「川の方だ! 洞窟は逃がさないように罠を作るって言ってたし、どちらも1体ずつならプレストガンナーのディエゴの援護に行くぞ」
 迷わず走り始めた翡翠をシエテが追う形で森から小川へと向かう。



 ●笛の鳴る少し前 輝視点

 その少し前、10分ほど洞窟を探索していた輝とアルベルトは洞窟の奥まで探索を終えていた。
「う~ん。行き止まりみたいね」
 手持ちのランプを頭の少し上辺りまで掲げた輝は残念そうにその言葉を口にした。
 洞窟内で迷わないように用意したマジックも一本道の洞窟では役に立たず、念の為に持って来たケーキも奥まで進んでも何もなかったのだから完全に無駄になってしまったので、その落胆の声にも拍車が掛かるというものだ。
「まぁ、このままここに居ても何も進展しません。外に戻りましょうか」
 アルベルトがそう促して、来た道を戻っていき、外の光が見えてきた所で輝とアルベルトは二人して目を見張った。
 入り口に仕掛けていた罠を不思議そうな顔をして眺めているデミ・ゴブリンが居たからだ。
「輝、急いでランプを消して。まだ見つかってないようです」
 アルベルトはランプを隠すように輝の前に立つ。
 言われた通り急いでランプを消してもデミ・ゴブリンはこちらに気づいた様子はない。
 ホッと息を吐いた輝を尻目に、アルベルトは輝に近づき。
「それではトランス状態に入ります。インスパイア・スペルを」
 色々あってあくせくしていた輝は言われて事態を飲み込んだようでぎくりと体を硬直させる。
 それでも止まってる訳にはいかないことぐらい輝にも分かっている。
 息を呑み、一気にアルベルトの頬へと顔を近づけ。

「『異界の友よ、来たれ…召喚!』」

 インスパイア・スペル〈触神の言霊〉を唱えて頬に口を付け、アルベルトの体がオーラを纏う。
「良し、と。それでは輝は隠れていて下さい。それとですね、口付ける時にいちいち「仕事よ仕事っ」と呟くのやめてくれませんかね。たかが頬でしょう?」
 と溜息を吐いて、輝の前へと出ながら両手剣を抜く。
「輝、私が走ったタイミングで笛を」
「……分かったわ」
 気付かれていないのなら奇襲あるのみ、アルベルトは片手で持った両手剣を構えながら洞窟の出入口に棒立ちしているデミ・ゴブリンへと駆ける。
 アルベルトに言われた通り、笛を吹く準備していた輝はそれに合わせて息を吸い込み―――。

 ピィィィィ。
 ピー。

 殆ど同時のタイミングで2つの笛の音が鳴り響く。
 しかし、走り出したアルベルトはもう止まれない、否、止まらない。
 焦った様子を微塵も感じさせず、笑みを浮かべながら。

「私の前に立った己の不幸を悔いるといい『タイガークロー』」

 猛獣〈トラ〉の爪と化した両手剣を下から振り上げるようにして仕掛けた罠〈ピアノ線〉ごと、デミ・ゴブリンを狙う。

「ギヒャ!?」

 しかし、笛の音に驚いて尻餅をついたデミ・ゴブリンに躱される。
「(外れた!?)」
「ですが、これで終わりです!」
 尻餅をついて動けないデミ・ゴブリンにアルベルトの二の太刀が迫る―――。
 ―――しかし、アルベルトの両手剣はデミ・ゴブリンに当たる寸前でピタリと止まる。
「……え?」
 驚いていた輝はアルベルトが剣を止めた理由がすぐに分かった。
 よく見るとデミ・ゴブリンの首には紐で銀のナイフが括られているのだ。
 このまま攻撃すればナイフに傷を付けてしまう、そう判断したアルベルトは剣を止めるしかなかったのだ。

「くっ、それなら横から!」

 咄嗟の判断で逃げられる前に狙いを横からの薙ぎ払いに切り替える。

「ギィィィ!!」

 デミ・ゴブリンも錆びた剣で反撃しようとするが、アルベルトの両手剣はそのようなモノ〈錆びた剣程度〉では止められない。
 倒れていたデミ・ゴブリンを横からひっくり返すように薙ぎ払い、弾き飛ばされたデミ・ゴブリンはそのまま動かなくなった。



 ●笛の鳴る少し前 ハロルド編

 洞窟前で輝達がデミ・ゴブリンを見つける少し前、小川を探索していたハロルドは透き通るような川の中にキラリと光るものを見つける。
「……?」
 川の中で光っていたのは銀のスプーンだ。
「ディエゴさん、これってトンプソンさんのかな?」
「判断しづらいが一応持って行こう。しかし、盗まれたスプーンが何故ここに……?」

 疑問符を頭の上に浮かべる2人は周囲の警戒が疎かになっていた。
 カシャリ、と近くで砂利を踏む音を聞いてようやく近くにデミ・ゴブリンが来ている事に気付いた。
「ッ! ハル!」
 先に気付いたディエゴがハロルドを庇う。

「ギギッ!!」

 ボロボロの剣での不意打ちをディエゴが受けてしまう。
「ぐっ!!」
「っディエゴさん!」
「ハル、笛を!」
 悲鳴を上げたハロルドはディエゴの言葉でハッと笛の事を思い出し、すぐに笛を吹いた。

 ピー。
 ピィィィィッ。

 しかし、ほぼ同タイミングで別の場所からも笛が吹かれてしまう。
「(これじゃあ誰も来れないかもしれない!)」
 すぐに頭を切り替えたハロルドはナイフを抜いて応戦しようとするが。

「ハルは下がれっ!」

 傷を負ったディエゴがハロルドをグイっと自分の後ろに引っ張る。
「なら、ディエゴさんをトランス状態に! 『覚悟を決めろ』」
 後ろに下げられたハロルドはインスパイア・スペルを唱え、ディエゴの頬に口を付ける。
「ありがとう、ハル。もう油断はしない」
 ボゥっと自分の体にオーラを纏うのを感じ、ディエゴは二丁拳銃を構える。
「『ダブルシューター』」
 二丁拳銃の乱射がデミ・ゴブリンを襲う。
 銃弾を受けたデミ・ゴブリンは後ろに仰け反るが、まだ倒れていない。
 そのまま反転し、逃走を試みようとする。
「待てっ!」
 しかし、逃げようとしたデミ・ゴブリンの前に森から走ってきていた翡翠が現れる。

「ギィ!?」
「悪いがこっちは行き止まりだっ!」

 翡翠の両手剣の一撃でデミ・ゴブリンは倒される。
 倒したデミ・ゴブリンは銀の食器〈カトラリー〉を持ってはいなかったが、小川でハロルドが見つけた銀のスプーンがこいつが持っていたものだったのだろう。
 幸いにもディエゴの傷は浅いようだったが、念の為という事でディエゴとハロルドにはトンプソンの別荘へと戻ってもらうことになった。
 その後は洞窟に行っていた輝とアルベルトに合流し、シエテと翡翠は風車小屋へ、輝とアルベルトは街道へと向かった。



 ●風車小屋へ シエテ編

「私達が倒したデミ・ゴブリンは首に銀のカトラリーを付けていました。恐らくアクセサリーのようなものだと思っているみたいですね」
 合流した時のアルベルトの言っていた事が気になっていたシエテが思案顔で口を開いた。
「アクセサリーだと思っていたなら何で小川に居たデミ・ゴブリンは川の中にスプーンを隠したのでしょうか?」
「さてな、ゴブリンのする事なんか分からないが、綺麗な物だと思ってたのなら水につけて洗ってたのかもなァ」
「う~ん。どうなんでしょうか……」
「ま、これに関しては考えたって仕方ないだろ」
 そんな話をしてる間に風車小屋へと到着し、翡翠を先頭に風車小屋へと入っていく。
 寂れた感じの風車小屋の中は意外と綺麗になってはいたが、色々と風車小屋には合わない変な物がそこには置いてあった。
「翡翠さん翡翠さん、これってサファイアじゃないですか!?」
 棚に宝石や綺麗に磨かれた石等がずらりと並べてあるのを見てシエテは驚いた。
「お、これが依頼の品じゃないのか?」
 と、翡翠が一番奥に飾ってある銀のフォークを拾い上げる。
 途端。

「ギギギッ!」

 テーブルの下に隠れていたデミ・ゴブリンが物凄い形相で襲い掛かって来た。
「うおっ!?」
 不意を突かれた翡翠は押し倒されて持っていたフォークをデミ・ゴブリンに取り上げられてしまう。
「大丈夫ですか翡翠さん」
「あぁ、押されただけだから大丈夫だ」

「ギギッ、ギギッ!」

 デミ・ゴブリンは相当怒っているらしく、折れている剣を振り回している。
「これじゃ近づけねぇが……シエ、インスパイア・スペルを頼む」
「あ、はっはい!」
 そう言ってシエテが近づいて。
「『交わるは――淡き雫』」
 インスパイア・スペルと共に翡翠の頬に口を付ける。
「良し。そのまま外に退避してろ!」
 湧き出るようなオーラを纏った翡翠はそれだけ叫ぶとシエテを守るように剣を構える。 言われた通りにシエテは風車小屋の外へ逃げ、それを確認した翡翠は棚に飾ってあるサファイアを鷲掴みにした。
 それを見たデミ・ゴブリンは更に激昂して翡翠に襲い掛かるがヒラリと攻撃を避けた翡翠はそのまま外へと出て行く。
 勿論激昂したデミ・ゴブリンはその後を追い掛け―――。

「待ってたぜっ、と『トルネードクラッシュ』」

 全身をコマのように回転させ、剣を振るう攻撃技で小屋から出てきたデミ・ゴブリンは一撃で弾き飛ばされてしまった。



「あの……傷はついていませんか?」
 シエテは取り戻した銀のフォークの様子を聞くが。
「シエ、コレ高く売れないの? ……って、冗談だよそんな怖い顔すんなって!」

 その後は街道を探している輝達に合流し、トンプソン氏の別荘へ銀の食器を返却しに向かう。

 後日談になるが、翡翠の推理だとデミ・ゴブリン達はキラキラ光る光り物を集めて風車小屋に集めて居たようで、たまたま銀の食器を狙ったのだろうということだった。
 一応、集められていた宝石類はA.R.O.A.本部にシエテが渡し、持ち主を探しているらしい。

 何はともあれ銀の食器を全て取り戻した。
 おめでとう、依頼は成功に終わったのだ。



 結果。
 輝    ナイフ。
 ハロルド スプーン。
 シエテ  フォーク。

 一本ずつ見つけた為、個別ボーナスは無し。



依頼結果:成功
MVP

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター うち
エピソードの種類 アドベンチャーエピソード
男性用or女性用 女性のみ
エピソードジャンル 推理
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 3 / 2 ~ 5
報酬 多い
リリース日 04月01日
出発日 04月06日 00:00
予定納品日 04月16日

参加者

会議室

  • 大丈夫です。
    3体の時は、そう鳴らしますね。

    ケーキですか……。
    うーん、私も万が一の為に用意した方がいいかもしれませんね。
    デミ・ゴブリンが盗む事になった原因でもありますし。

    了解しました。
    明日はどうぞよろしくお願いします。

  • [23]月野 輝

    2014/04/05-22:03 

    それじゃ、3体の時は連続してたくさん鳴らす、でいいでしょうか。
    1体と2体の時は七草さんの案でいいと思います。

    あ、あと、デミ・ゴブリンが何故銀のカトラリーを持っていったのか…
    と考えてて、もしかしてケーキ食べようとしたの?と思ったので、
    ダメ元で誘き出し用にケーキ持っていこうと思います。

    それでは、あと2時間程ですし、
    これでプランを仕上げてきますね。

  • 理由としては
    敵の数だけ吹いたら、すぐわかるのではないかと思っていたのですけど、
    何かに気を取られていたら、聞き間違えそうですね……。
    そういう意味では、やっぱり輝さんの案の方が誤解にならないかも。

    ああ、ありがとうございます。
    もし洞窟にいたら、遠慮なく切りますね。

  • [21]月野 輝

    2014/04/05-20:58 

    それから、ピアノ線ですけど、洞窟に3体居て駆け付けてくれた場合、
    剣で切ってしまって入ってきても構わないです。

    私達だけで入って、脇をすり抜けられたりした時の対策用なので、
    皆さんが来てくれれば、小さな洞窟ですし
    そうそう逃げられたりしない気がするので、
    切ってしまっても大丈夫かなと。

  • [20]月野 輝

    2014/04/05-20:52 

    笛の合図ですけど、基本的には伝われば何でもいいと思います。
    ただ、「ピー」「ピピー」「ピピピー」だと、最後が同じ調子なので
    何かに気を取られてて最初の方を聞き逃した場合、
    最後の「ピー」だけ聞いて1体だと思ってしまう危険性もありそうな……
    いえ、繰り返されたのを聞けば済む事ではあるんだけど。

    その吹き方に何か理由あります?
    あるなら聞かせて貰えると嬉しいわ。
    個人的には、3体は緊急性を知らせる意味でも
    「ピピピピピピ」と連続してたくさん吹いた方がいいかな~?と。
    あ、「ピッピッピッピッピ」でもいいですけど。

  • もう1件、投稿失礼しますね。

    笛の細かい合図で、少々別案があるのですけど、
    1体の時は「ピー」、2体の時は「ピピー」、全員いる時は「ピピピー」と吹くのは難しいでしょうか?
    合図を繰り返す際は、輝さんの案に賛成です。

    ピアノ線ですね。駆け付けたら、それを確認した上で、協力します。
    (※足を引っ掛けて、戦闘に支障をきたすのを防ぐ為)

    事前に調べる事として、
    デミ・ゴブリンの好きな食べ物や匂い、特性や弱点を調べられればと思っています。
    これに基づいた上で罠を用意したり、作戦を考える予定です。

  • お二人とも話を進めて下さり、大変ありがとうございます。

    ハロルドさん>
    森の特徴がわからないので断言はできませんが、
    風車小屋を拠点に、小川か森で食糧を収集してる可能性はありそうです。
    調査したい所ですが、私は事前に調べた上で、森か風車小屋を考えています。

    輝さん>
    笛の細かい合図、私も賛成いたします。
    どう聞こえたかによって、状況判断もスムーズになりますし。

  • [17]月野 輝

    2014/04/05-17:08 

    いえいえ。
    私も文字数制限気にして言葉が足りなくなり気味だし、
    お互い様って事で(にこ)

    笛の件はありがとう。
    それじゃ、私も書いておく事にします。

    一応、探索場所は洞窟で、
    入り口にピアノ線で罠を張りつつ中に入る
    と、仮プランに書いてあります。

  • [16]ハロルド

    2014/04/05-13:40 

    あー、なる程です
    自分で発言したのに気づいてませんでした、すみません(汗)
    笛の合図は良さそうですね
    固まってる可能性もありますし…プランに書いておきますね

  • [15]月野 輝

    2014/04/05-13:11 

    そうですね。
    だから私も最初、行く場所を絞らないとと言った訳なんだけど。
    全部の場所が気になるような発言があったし、折衷案としてどうかな、と。
    一応、「時間があるようなら」って注釈付きでプランに入れてみようかと思ってます。
    本当は無駄な行動はしない方がいいと思うんだけど、
    場所を絞るのに相談してる時間もそう無さそうですし。

    ところで笛の合図の方はどうです?
    他の場所に何匹出たのか判った方が探索しやすいと思ったのだけど…
    3匹いっぺんに出てきたら駆け付ける事もできますし。

  • [14]ハロルド

    2014/04/05-10:59 

    他のところに行けるでしょうか…

    >このデミ・ゴブリンは人間に見つからないように隠
    れているようです、探索場所を探すには時間が掛かります。

    では精霊が探すのなら簡単なのか?とも思いますが
    精霊のなかにそういう力があるともワールドガイドでは説明がなかったよなーと
    思いますので、多分、一ヶ所探索したらそれで時間を使いきってしまうスケジュールなんじゃないでしょうか。

  • [13]月野 輝

    2014/04/05-08:45 

    連投ごめんなさい。投稿してから思い付いて…

    デミ・ゴブリンは3体って事だったけど、一カ所に全部いるかは判らないのよね。
    むしろバラバラの可能性の方が高いのかも。
    なので、何体見つけたのかを、笛の鳴らし方で判るように決めておいたらどうかなと。

    一体なら普通に一度、
    二体なら短く二度、
    三体ならピピピピピピッと連続で、とか。
    合図を繰り返す時は、少し間をおいてから同じ合図を繰り返す、ってどうかしら?

  • [12]月野 輝

    2014/04/05-08:39 

    明日が出発日ですし、とりあえずこの三組と考えて計画した方がいいわよね。
    ハロルドさんの心配も判るので、3カ所を手分けして探索して、
    万が一見つからなかった場合、他の残ってる場所にも行ってみる、
    って事でいいのかしら?

    うちは近接攻撃なので、開けた場所よりは接近戦の出来る場所の方がいいかな…
    と言う事で、洞窟を希望させて貰いますね。
    ”小さな”って所が気になるけど…アルの使ってる剣、大きいので。

  • [11]ハロルド

    2014/04/05-07:39 

    了解しました

    自然が豊富そうな所ですし、木の実なんかを探してるのでしょうかね?
    であるとすれば、小川、森、風車小屋が可能性高そうです。
    洞窟も、貯めておいた食物があるのかもと思えばありそうですね。
    街道はちょっとわかりませんが…

    いまこの時点で三組ということで、漏れが起きる可能性は半々でしょうか。
    お二方は一番これだ!という場所はありますか?
    自分だと、精霊の戦い方を考慮して遮蔽物の少なそうな小川か街道かなと…
    街道は流れ弾が少し怖いですが

  • あと、何点か意見を……ごめんなさい。

    街道か小川にデミ・ゴブリンがいた場合
    人や車がいないのを確認してから、戦闘に持ち込んだ方がいいですね。
    それができない場合は、こちらに気づかれないよう後を追い、追い詰められると思ったら
    戦闘に持ち込む事になります。先回りしたり、罠を張るかどうかはお任せします。

    あと今の精霊メンバーでの戦力や戦法をざっと表記します。
    ・近距離:アルベルト、翡翠 ・遠距離:ディエゴ
    ・先攻順:ディエゴ>翡翠>アルベルト
    ・攻撃力の高さ:アルベルト=翡翠>ディエゴ
    ・命中率の高さ:ディエゴ>アルベルト>翡翠

    右に行くほど、後攻または低い精霊になります。プランの参考になれば。

  • 連続投稿、失礼しますね

    逆に森は、小さいとはいえ、広さによっては煙にまかれやすいと思います。
    ですが、罠でおびき寄せられれば、戦闘に持ち込める可能性がありますし、風車小屋や街道よりは自由に戦えます。
    茂みがあれば、奇襲攻撃もかけられるかもしれません。

    罠の内容になりますが、フォーク、スプーン、ナイフを盗んだからして、食べ物を探していると思います。好きな食べ物を調べたら、罠に組み込んで誘い出せるかも。

  • それでは当日、笛を持って行きましょう。

    輝さん>
    私の方こそ、ごめんなさい。
    2~3箇所に絞った上で、ウィンクルムそれぞれ探索しようという意見でしたら、賛成します。
    デミ・ゴブリンが見つかる確率も少しは上がるはずですから……。

    ハロルドさん>
    ふふ、今回の依頼で3回目になりますね。
    ご迷惑もかけると思いますが、よろしくお願いします。

    風車小屋と洞窟は、扉や穴が1つしかない事、ある程度の狭さである事が前提ですけど、
    もし敵が見つかった上で笛を吹けば、追い詰めやすい場所になるかもしれません。
    精霊が戦っている間に、神人は笛をうるさく慣らして敵の気を散らせる事もできそうです。
    ……精霊には迷惑かもしれませんが……。

  • [7]ハロルド

    2014/04/05-02:39 

    またまた書き込み申し訳ありません
    どうしても開けた場所である街道と小川が選択肢に入ってるのと
    ゴブリンがフォーク、スプーン、ナイフを盗んだ理由が気になってます。
    なにか目的があるのかと考えてます

  • [6]ハロルド

    2014/04/04-21:54 

    連投失礼します
    すみません、言葉が足りませんでした

    風車小屋、洞窟、森に絞った理由が聞きたいです

  • [5]ハロルド

    2014/04/04-21:49 

    初めましての方は初めまして
    そうでない方はこんばんは、ハロルドと申します。
    宜しくお願いいたします。

    笛ですね、了解です

    一応、その三ヶ所に絞った理由をお尋ねしても良いでしょうか
    身を隠しやすいところだというのはわかります。

  • [4]月野 輝

    2014/04/04-21:37 

    七草さん、初めまして。

    あ、ごめんなさい、言葉が足りなかったわね。
    私が言ったのは、『少人数での集中探索』…一カ所に数人で固まって探索する
    という意味ではなくて、人数が2~3組だと全部を探索する事は難しいのでは
    と言いたかったの。
    私が来た時には、まだ2組でしたしね。
    だから探索場所を、デミ・ゴブリンがいそうな所2~3カ所に絞っては、
    と言う意味だったのだけど。

    笛を持つというのは良いですね。

  • 連続投稿失礼しますね。

    提案として、全員が笛を持った上でそれぞれの場所を探索しましょう。
    デミ・ゴブリンを発見した際、
    攻撃できる精霊なら戦ってくれますし、その間に神人は笛で合図を知らせる事ができます。

    といいましても
    今の人数で探索するなら、森と風車小屋と洞窟に絞った方がいいようですが……。

  • 輝さん、初めまして。私は七草シエテといいます。
    パートナーはハードブレーカーの翡翠ですよ。
    こちらこそ、よろしくお願いしますね。

    人間には見つからないよう隠れていても、精霊なら見つけられるかもしれません。
    出来れば、テイルスがいる神人が参加して下さると助かりますね。

    少人数での集中探索は、一か八かですね。
    そこにデミ・ゴブリンがいれば皆で攻撃できますし、メリットになりますけど、
    そうでなければ、移動する時間が必要になり、その隙にゴブリンに逃げられてしまいますよ。

  • [1]月野 輝

    2014/04/04-18:59 

    こんばんは、初めまして。
    私は月野輝と言うの。
    パートナーはシンクロサモナーのアルベルト。
    共々よろしくお願いします。

    デミ・ゴブリンを探すのには時間が掛かるようだし、
    探索は、そう何カ所もできないわよね。
    このまま人数が少ない時は的を絞って探索した方がいいかしら?

    人間に見つからないように隠れてるそうだし、
    街道にはいないような気がするので、
    そこは省いてもいいかなと思うのだけど…


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