プロローグ
●ふわふわだったことが悲劇でした
ぐてーんとあちらこちらで倒れている犬が居た。
丸い大きめの餅みたいな……まぁいってしまえば肥満気味な犬達。
……いや、よく見ると、異様に尖った耳と、くるんと丸まった尻尾から犬に似た生物だということがわかる。
はぁはぁと荒い息を吐くその動物たちは、普段ここらへんでは見ないレカーロと呼ばれる動物らしく、それを見た村人達が顔を見合わせた。
「なんだってこんなとこに……」
「俺らも手を離せないしなぁ……」
今の時期、農業やらなにやらで手を離すことができない村人達は、それでもレカーロ達をこのままほおっておくのもかわいそうだと知恵を絞る。
「そうだ、誰かにお願いすればいいさ!」
「そうだな、じゃぁ近隣の役場にでも貼らせてもらうか!」
とりあえずと水の入った器をあちらこちらに用意をしつつ、村人達は助けを呼ぶことにするのだった。
●レカーロを移動してください
「というわけで、村人が張り紙をお願いする所に出くわしたのです」
そう言って余裕のあるウィンクルム達を呼び止めた職員がこれがその貼り紙ですと差し出す。
「レカーロは基本的には寒い地方に住んでいる動物です。
ぱっとみ、中型犬ぐらいの大きさで、なんというか……こう……まるっこいんです。
ふわふわの毛の所為だけでなく、肉付きが良い所為ですかね。寒い所に住んでるんで、脂肪をためこむというか」
ようは、肥満体です、と言い切った職員。
だが、その瞳はどこか和んでいる。
「その姿がちょっとかわいいんですよね、愛嬌があるというか。
あ、ちなみにレカーロは、寒い地方では「湯たんぽ」としても活躍しています。山で遭難した人がレカーロの群れに救われたという話はよくききますよ。
元々人懐っこい動物でして、人を襲ったりしません。
レカーロを飼う人もいます」
基本的に雑食のため、飼育もしやすいようだ。
冷え性の私も一匹欲しい……と職員がうっとりと呟く。
「とと、すみません、本題からそれました……で、そんなレカーロなんですが、時々彼らは住処を群れ単位で移動します。
今回、その群れの一つがなぜか暖かい地方である此方まで来ちゃったようなんですね。
基本的には寒い所で生きる彼らですが、涼しい場所さえ確保できれば、ここぐらいの暑さなら十分生きていくことが出来ます」
けれど、そんな場所を見つける前にくだんの村の一歩手前で力尽きてしまったということらしい。
「村人達が言うには、そこから30分程離れた森がいいだろうとこのとでした。
今彼らがいる場所はあまり日陰や、湖もない所ですので……村人達が水や日陰を用意してやってます。
そのおかげか、今はある程度元気を取り戻していて、熱中症の子もいないようです」
だから、今がちょうどいい時期だという。
上手く誘導さえできれば、再び力尽きることもなく森へと移動できるだろう。
「群れは100匹ほどです。
リーダー格のレカーロと仲良く出来れば一番いいでしょうね。
リーダー格は大型犬程の大きさで、副リーダーは、中型犬と大型犬の中間程の大きさ、そして常にリーダーと副リーダーには3匹のレカーロがつき従っています。
ですから、リーダー含めて5匹と仲良くなっていただければ誘導もしやすいかと。
頭はいいですから、真摯に話せば仲良くなれると思いますよ」
では、皆様よろしくお願い致します。
と、職員が送りだすのだった。
解説
・レカーロ
100匹程の集団
ひとなつっこく、食べ物は雑食なのでなんでも食べますが、お肉が特に好きです。
リーダー格:大型犬程の大きさ 賢く人間の話を理解する
副リーダー格:中型犬と大型犬の中間程の大きさ リーダーに良く従う
とりまき:つき従うレカーロ 3匹
上記の5匹と交流し、説得できればレカーロ達は30分程離れた森へと移動を開始します。
道には地図が皆様に配布されているので迷うことはないです。
ウィンクルムが1組でも説得に成功すれば移動を開始します。
全員で説得してもいいですし、個別で説得も可能です。
皆様にお任せ致します。
・持ち込みについて
食べ物や水の持ち込みが可能です。
・ジュールについて
村までの移動費として、一律300jrいただきます。
ゲームマスターより
暑い日が続きますね!
レカーロさんたちを救ってやって下さい……!
リザルトノベル
◆アクション・プラン
初瀬=秀(イグニス=アルデバラン)
このクソ暑い中に皮下脂肪溜めこんで毛皮着てたら そらバテるだろうな…… つっても迷子なもんは仕方ないし 早いとこ涼しく過ごせそうな場所に誘導してやるか クーラーボックスに水と氷を詰めて持参 皆で説得に当たるとしようか ほらしっかりしろー (水を飲ませてやりながら) リーダーか、確か一番でかい奴だろ?あぁ、あれだな ……(犬っぽい奴同士話合いそうだな) いや、なんでもない まあそういうわけだ、もう一頑張り、気張ろうぜリーダー? 脱落しないで全員たどり着けるようにサポートするから。 ところでさっきからやたら匂いかがれまくってるんだが 動物用に干し肉作ってきてるのばれてるなこれは イグニス、お前のおやつじゃない。 |
アキ・セイジ(ヴェルトール・ランス)
これも人助け …いや、レカーロ助けか(麦藁被り ◆ 予め移動先の森に涼しい場所を確認 ここを誘導先にしよう(携帯連絡 荷車等で運んだ大タライ複数に水を張り蜂蜜と塩を一寸混ぜ、置く 氷と胡瓜も浮かべる 干肉も横に置く 全員が説得するのも良いが、必死の思いで森に辿り付いたレカーロがそのまま倒れてはダメなんだ 安心した途端にバッタリってのはよくあるからな 誰かが避難先に受入れ態勢を作っておくべきなんだ 移動までが避難じゃないんだ 避難先で速やかに回復できなきゃ、だよ ★レカーロが来たら 駆け寄って歩行介助 弱ってる個体は抱えて運ぶ 扇子で扇いで放熱 蜂蜜檸檬水を吸い口で少しずつ入れてやる 「よく頑張ったな」撫で 俺も胡瓜ー(ランスに笑う |
セイリュー・グラシア(ラキア・ジェイドバイン)
レカーロと仲良くなるためにワンコのおやつなジャーキーを持って行くぜ。 100本入りお徳用パックを幾つか持って行けば大丈夫! リーダー格にニコッと笑って「一緒に食べよう!」と声をかける。オレ達は人間用のジャーキーを食べるけど! レカーロが触らせてくれたら、わしゃわしゃと撫でてスキンシップを計ろう。ペット用ブラシを持ってきたからブラッシングして毛並みを整えるぜ。 毎日にゃんこのブラッシングをしているオレの手腕にとろけるがいい!(言いすぎ。 冬毛が残っていると暑いし。 それにブラッシングされるとキモチいいだろ。それで仲良くなれないかな。 まふまふ気持ち良いな、まふまふふ。 「近くの森がもっとイイトコだって。行く?」 |
柳 大樹(クラウディオ)
クーラーボックス借りて肉と水を入れる。最低でも群れの中心の5匹分。 弱ってるだろうし、肉は小さめ。 「クロちゃん、持って」(クーラーボックス 皆の荷物が多いなら、運ぶの手伝う。 リーダーに挨拶して、肉と水をプレゼント。 リーダーなだけあって、大きくてふわもこだねえ。ていうか他もふわもこ。 「こりゃ暑いわ。大丈夫?」(屈んで下から撫でる 「ここから30分ぐらいの場所に森があるんだって」(目を合わせて 村の人が教えてくれた。日陰で暑さもマシになると思う。 「少しでも元気になった今なら、仲間も森まで行けるよ」 (視線に気づき 「犬はまあ、好きだよ。兄貴が犬嫌いで飼えないけど」 それに、番犬みたいなのは居るし。(クラウを一瞥 |
カイン・モーントズィッヒェル(イェルク・グリューン)
目的:レカーロ説得 心情:毛皮着てるから余計暑そうだな 手段: 連中のジャーキーや水以外にも俺達の水分も用意 荷物は分担して持つ 出来れば団扇準備 全員で説得 「ガキは具合悪くなったりする場合もあるし、大将(リーダー)も心配だろうと思ってな。俺も経験あるし」 「移動のフォローはする。安心しろ」(副に対し) 説得に応じたら、「決断ありがとよ、大将」と礼を言う 移動時 殿を歩く 休憩時は団扇扇いで回る 遅れる奴に注意 隣か後ろを歩いて安心させる 場合によっちゃ抱え上げるが、親子なら親の対応を見て判断 ※警戒しているならしない 移動後 「冬の大活躍に期待しとくぜ、大将」 後はガキ共に頑張ったことを褒めるかな 30分歩くってガキにゃ大変だ |
●
じりじりと日差しが肌を焦がしていく。
さらに、地面からもじりじりとあがってくる熱量が、植物だけでなく現場へと向かうウィンクルム達の体力も奪い取って行きそうであった。
「クロちゃん、持って」
そんな一言と共に、借りたクーラーボックスをクラウディオに預け、柳 大樹はじりじりと照りつけてくる太陽の方を瞳を細めてみた。
がらりと音を立てたクーラーボックスには小さめに切った肉と水と、そして保冷のための氷が入っている。
ずしりと肩に掛る重さに、大樹には重いのだろうとクラウディオは納得を持って歩く。
同じようにずしりと重い荷物を運ぶのはカイン・モーントズィッヒェルとイェルク・グリューンだ。
「レカーロらは大丈夫でしょうか……」
イェルクが心配そうに言いながら、荷物を持ち直す。
ジャーキーや水以外にも、自分達用の水も入ったその荷物は、ずしりと重い。
「毛皮着てるから余計暑そうだな」
普通に歩く自分達から流れ落ちる汗に溜息を零し、そう言えば初瀬=秀も頷く。
「このクソ暑い中に皮下脂肪溜めこんで毛皮着てたら、そらバテるだろうな……」
ただ立ってるだけでじんわりと汗が流れるのだ、それはそれは暑いことだろう。
「今回は迷子のわんこさんを涼しい場所まで誘導するお仕事……」
そうですよね、秀様? と問いかければ、犬ではなくレカーロだと答えが返る。
わんこさんじゃない……と首を傾げたイグニス=アルデバランが、レカーロさん、なるほど、と頷いた。
「では改めまして、レカーロさんをお助けしますよ!」
拳を握る勢いだった彼らの前に、なんだか黒い影が見え始めた。
「あ、ひょっとしてレカーロ達かな?」
セイリュー・グラシアがお徳用な犬用ジャーキーが入った荷物を大きく揺らし、隣を歩くラキア・ジェイドバインに問いかける。
「そうかもしれないね……そういえば、アキさんは?」
セイリューに答えつつも、あれ? と首を傾げるラキア。
その言葉に、ヴェルトール・ランスが視線を上げた。
「セイジなら先に行くって」
せっかく頑張って向かった先で倒れてしまったら大変だと、先に行って整えておくというのに、皆が感心したように頷いた。
なるほど、では自分達はしっかりと説得を成功させないとダメだろう。
(セイジ、大丈夫かな……)
自分が傍に居ないけれど、熱中症は大丈夫だろうか。
「まぁ、どっちにせよ早く涼しい場所に移動してやらないとな」
やがて黒い影が、しっかりと見えてきた。
それは、あちらこちらでぐてーっとなっている動物たちの姿だ。
「大丈夫ですか?」
イェルクの問いかけに、近くにいたレカーロが億劫そうに顔をあげる。
なんだか沢山きた人間達に、警戒を見せる様子はあるものの、レカーロ達は大げさに騒ぎ立てることなく皆を受け入れたのだった。
●
彼らが無事レカーロの集団と出会えていた頃、アキ・セイジは向かうはずの森にて、彼らが過ごせそうな場所を探していた。
幾ら仲間たちがついていてくれると言えども、レカーロ達がここに着いた後、すぐに回復できるとは限らない。
荷車に積んでいた大タライなどを下しながら、被っていた麦わら帽子をなおす。
「これも人助け……いや、レカーロ助けか」
じりじりと照りつける日差しは、幾ら木陰があるとはいえ、容赦なく肌を焦がしていく。
「さて、やるとするかな」
からんと大タライが音を立てた。
無事、レカーロ達に会えたウィンクルム達。
あちらこちらに転がるレカーロ達は、やってきた人間にちらりと一瞥をやるだけで積極的に動こうとしない。
「これは暑いだろうな」
多少回復を見せてこれだということは、一体最初はどうだったのだろうか。
どさりと持ってきた荷物を置いて秀が辺りを見渡す。
「わあもっこもこですね、やっぱり暑そうです」
近くに居たレカーロをしゃがみ込み、持ってきたうちわであおいでやるイグニス。
「ほらしっかりしろー」
さらに秀がそっと水を飲ませてやれば、穏やかに吹く風と、水の喉越しが気持ちいいのか、うっとりと瞳を細めるのがなんだか可愛らしかった。
そんな脇では大樹が瞳を細めた。
「すぐにリーダーにっていうのも、なんだか可哀想だよね」
大樹が水を空になっている器に入れてやりながら呟く。
流石にリーダーを探す為とはいえ目の前で、ぐてんとしているレカーロを放置するのも忍びない。
大樹から渡された器を傍に居たレカーロにと置くクラウディオ。
フードを被り、口布をつけている彼の方が暑くないのかとレカーロの視線が向けられるが、クラウディオはただ静かに視線を合わせる。
「飲むといい」
よろよろと体を起こしたレカーロが飲み始めるのに安堵を零し、リーダーを探す為に立ち上がった。
その頃カインはリーダーを探していた。
100匹の群れともなれば、幾らリーダーが大きいといえ探す範囲は少々広い。
「カインさん、私はリーダー達以外のレカーロを見ていますね」
「あぁ、頼む」
ゆるりと二手に別れた後、少々バテ気味のレカーロを手当てするヴェルトールに気が付いた。
「手伝いますか?」
「頼む」
子供のレカーロのようで、大人たちとは違い弱弱しい。
水が飲みにくそうな彼らに、吸口で飲ませてやる二人。
同じようにブラッシングをしてやりながらリーダーを探すセイリューとラキア。
「毎日にゃんこのブラッシングをしているオレの手腕にとろけるがいい!」
というのは言いすぎ……というわけではなかったようだ。冬毛も一掃されたからかうっとりとした瞳でレカーロが身をまかせている。
「近くの森がもっとイイトコだって。行く?」
まふまふと手触りを楽しみながら言えば、うっとりと頷いた。
その隣では、ラキアがブラッシングしながら囁く。
「もっと近くに過ごしやすい所があるんだって。そっちに一緒に行こう?」
動物たちは話せば分かってくれる……猫だってそうだもの、レカーロもきっとそうだろう。
「皆で一緒に行こうよ」
うっとりと瞳を細めるレカーロは、微笑みを浮かべ誘いをかけるラキアのその言葉に頷いた。
レカーロ達に少し余裕が出てきた頃。
「リーダーか、確か一番でかい奴だろ? あぁ、あれだな」
「ええとリーダーさんはどちらですか?」
秀とイグニスが同時に見つければ、カインも見つけていたようで。
手の空いた皆が集まってくる。
それに、リーダー達がぴりりと神経をとがらせたのが、伝わってきた……。
●
リーダーのレカーロは、大きな体をゆっくりと起こしウィンクルム達を見つめる。
それにあわせ、副リーダーやお付きのレカーロもゆっくりとウィンクルム達を囲むようにやってきた。
「…………」
秀がちらりとイグニスを見る。
(犬っぽい同士、話が合いそうだな)
どうしました? と問いかけるイグニスになんでもないと首を振る。
首を傾げつつ、レカーロに語りかけるイグニス。
「リーダーさん、この先に林があってそこなら涼しく過ごせるそうなんですよ。私たちもお手伝いしますので皆様で頑張ってそこまで行きましょう?」
どこか自分達と似たような雰囲気を感じたのだろうか。
レカーロが話を聞こう、とでも言うように居住まいを正した。
「お水もありますし、無事に着いたらおやつもありますよ! おやつおやつ! ですからファイトです!」
イグニスがおやつを食べたいのでは疑惑が一瞬だけでたが、秀がリーダーに視線を合わせて唇を開く。
「まあそういうわけだ、もう一頑張り、気張ろうぜリーダー? 脱落しないで全員たどり着けるようにサポートするから」
とはいえ、何か心配ごとでもあるのか動こうとしないのに、さらに、カインが声を掛ける。
「ガキは具合悪くなったりする場合もあるし、大将も心配だろうと思ってな。俺も経験あるし」
しっかりとリーダーと視線を合わせてそう言う。
「動ける今が好機です。この先気温が上がって動けなくなる方がいらっしゃったら、あなたは表に出さずともご自分を責めそうに見えます」
(……そういう意味では、カインさんもそう。何も思ってないとか強いとかではなく……心配されるのを知ってるから見せない)
イェルクの瞳は真剣そのものだ。
両方へかける思いは、とても強い。
暫し見つめ合うそんな彼らの傍に来たのは大樹だった。
「こりゃ暑いわ。大丈夫?」
そっと屈みこんで大樹が声を掛け、そっと指先を伸ばすのに、ふるりと体を震わせた。
足元に置いた肉と水には見向きもしないリーダー。
幾ら人懐っこいレカーロとはいえ、やはり群れのリーダーともなればそう簡単に心はゆるさないのだろう。
「ここから30分ぐらいの場所に森があるんだって」
視線を合わせ、村人が教えてくれたのだと伝える。
「日陰で暑さもマシになると思う。少しでも元気になった今なら、仲間も森まで行けるよ」
その言葉とともに、指先をそっと群れの方にとやる。
そこではイェルクやラキア、ヴェルトールが自分達だけでなく、群れの皆をケアしているのを見詰め、視線の険しさを緩めた。
リーダーの警戒が緩んだのをみて、副リーダーも体から緊張を解いたのに、クラウディオの指先が触れる。
「森に移動さえできれば、この場にいるよりは体が楽になるだろう」
穏やかなその言葉。
「移動のフォローはする。安心しろ」
カインの力強い言葉もある。視線をリーダーに向ける副リーダー。
そしてスマホを手にヴェルトールが膝を付き、リーダーと副リーダーに視線を合わせる。
「此処まで行けば楽になるよ。お肉と冷たい水と野菜もあるよ」
見せられたのはアキから送信された写真だ。
二匹によく見えるようにすれば、二匹が覗きこむ。
「あと少し頑張ろう? 俺達も手伝うから」
……な? と問いかければ最後に残っていた警戒も溶けたのだろう。
とうとう、リーダーが納得したように頷いた。
「決断ありがとよ、大将」
カインがそう言えば、リーダーが尻尾をゆらゆらと揺らす。
それにセイリューが笑ってリーダーにと声を掛ける。手に持ってるのはお徳用ジャーキーだ。
「一緒に食べよう!」
「ちょっと待ってセイリュー!」
一緒に食べようの言葉通り、そのまま一緒に犬用ジャーキーを食べそうなセイリューにラキアが声を掛けた。
猫用のも一緒に食べしまうセイリューだ。きっと今回もそうに違いないとちゃんと人間用のジャーキーも持ってきたのだ。
「セイリュー、君はこっち」
そんな仲良しな姿に、リーダーの瞳が楽しそうに細められた。
「頂きますっ!」
ウィンクルム達も一緒になって、暫しのんびりと過ごすことになった。
リーダーたちが美味しくジャーキーや、秀手製の肉を食べているその頃、アキは改めて森までの道程をメールにて作成していた。
迷うことなく辿りつけるように。
そんな思いを込めて送信しおえ、胡瓜をタライの中へといれておく。
これが冷える頃には皆、此方についているだろう。
「さてと……他になにかあったかな」
自分も水分補給をしながら休憩することしたのだった。
「セイジからメールが届いたよ。そろそろ向かおうとしようか」
ヴェルトールの言葉にセイリューが頷く。
「さて、じゃぁ片付けてから行くとしようぜ!」
リーダーはその言葉に頷くと、わぉんとひとなきした。
それに水を飲んだり裂いてもらったジャーキーや肉を頬ぼっていたレカーロ達が身を正す。
リーダー達の誘導に従う姿は、成程これが群れ生活というものか、というのが見て取れた。
「じゃぁ俺らは殿を務めさせてもらう」
「任せてくださいね」
カインの言葉にイェルクも頷く。
「私が先頭に立とう」
「じゃぁ、俺も手伝うよ」
露払いをするというクラウディオに、大樹も手伝うと立ち上がった。
片づけを終えたラキアとイグニスが忘れ物はないかと辺りを見渡す。
「なさそうですね、では行きましょう!」
イグニスの元気な声が響き渡った。
●
一旦は回復を見せたレカーロ達だったが、じりじりと照らす日差しにやはり辛そうだった。
どうみても、ぽっちゃりとした体と地面が近すぎる。
先頭を務めるクラウディオと大樹は遅れる者はいないかと確認しながら、おくられた地図の通り歩いて行く。
「特に障害物はなさそうだな」
「そのかわり、日陰もないね」
障害物はなさそうだけれど、ある意味この日差しがなによりも障害なのかもしれないと大樹が後ろをちらりと見て呟いた。
「大丈夫ですか?」
イグニスが数歩進んで、もうあかん……とばかりに動きを止めたレカーロを秀と共に支えてやる。
ぱたぱたと扇がれ瞳を細めるレカーロに、秀が肉を一口。
「ほら、これで元気だせよ」
元気を取戻し列に戻っていくのを、ほっと息を吐き出し見守った。
「ほらほら、列はこっちだぜ!」
「危ないよ、戻っておいで」
セイリューとラキアも脇道にそれそうな子を列に戻してやる。
リーダーについていく彼らだけれども、やはり中には好奇心旺盛な子もいるのだ。
リーダーに指示されたレカーロ達が追い立てるけれど、もしもウィンクルムの皆がいなかったら、また途中で行き倒れていたかもしれない。
そんな彼らを見ながら、ヴェルトールはアキにと連絡する。
この様子をメールで送れば少しは安心するだろうか。
殿を務めるカインとイェルクは、必然的に子供や少々足腰の弱いレカーロを手助けすることが多かった。
「ちょっと休憩しよう、それに俺らも水を飲まないとな」
救援する側が倒れてしまったら元も子もない、と言えば皆も頷く。
「こちらをどうぞ」
渡される水を受け取り何度か休憩をはさみながら、確実に森へと向かっていく……。
用意も終わり、時折くるメールに瞳を和ませていれば、今までとは違うメール。
「あ、そろそろか」
そろそろつくという言葉に、アキは皆がくる方へと向かっていく。
やがて見えてきた先には、なんだかふっわふわした集団と、それを手助けする数人の姿が見えたのだった。
「大丈夫?」
アキが駆け寄った時、レカーロ達は皆に付き添われ誰一人遅れることなくついてきていた。
「全員いる?」
大樹が問いかければ、イェルクがカインと確認した後、皆に伝える。
「遅れたレカーロはいないですよ」
皆で確認しあえば、リーダー達も確認しおえたのだろう。
わんっと一声鳴けば、用意されていた大タライに、レカーロ達が散っていく。
「皆、美味しそうに飲んでるね」
用意されていて良かった、とラキアが言えば、アキが頷いた。
まさにこのために用意していたのだから。
「ん? どうした?」
ヴェルトールがなんだか様子の可笑しいリーダー達に問いかければ、皆が一列に綺麗に並ぶ。
リーダーと副リーダー達が皆を見つめ、一斉に頭を下げたのだった。
ありがとう、助かりました。
それは言葉ではなかったかれど、確かに皆に伝わったのだった。
あとは、のんびりと時間を過ごすだけ。
皆が思い思いに散って行く……。
●
「お疲れ、セイジ」
「ランスこそ、お疲れ様」
自分の相棒の元へと歩いていき、アキにと声を掛けるヴェルトール。
それに笑みを零せば、足元へやってきたレカーロが何か言いたげに二人を見上げた。
視線が合うようにしゃがみ込めば、どうやら蜂蜜檸檬水が欲しい様子で。
さっと吸口を用意し、アキにと渡すヴェルトール。
「よく頑張ったな」
ちょっとずつ飲ましてやれば、気持ちよさそうに瞳を細めるレカーロ。
ゆるりと視線をやったヴェルトールが微笑んだ。
「冷やし胡瓜美味そうだ」
「あ、俺も食べたいな」
アキもつられて微笑む。
きっとレカーロ達も喜ぶだろう。
喉を潤したレカーロが、でもまずは撫でてーというように、アキにすりすりと体を寄せるのだった。
てしてしてし。
大樹の足元で肉球でぺちぺちするレカーロ。
どうやら触って欲しいと甘えているようで、わしゃわしゃと撫でてみる。
なんだか楽しそうだ。とクラウディオはそんな様子を見ながら思う。
(犬が好きなのだろうか?)
そんな視線に気が付いたのか、大樹が唇を開いた。
「犬はまあ、好きだよ。兄貴が犬嫌いで飼えないけど」
(それに、番犬みたいなのは居るし)
誰、とは言わずに視線はクラウディオへ。
見つめあう形になったものの、意図は分からずクラウディオはそうかと頷くだけだった。
秀はなぜかレカーロにお肉、お肉だ!!! とでも言うようにふんふん匂いを嗅がれながら思った。
(干し肉を作ってたのがばれたか……)
きらきらの瞳でぱたぱたと尻尾をふる姿は、なんだか隣で同じようにおやつだおやつだとほわほわしている相棒に似ている気もする。
「お前用のじゃないぞ」
一応イグニスに釘を刺しつつ、おやつ用の肉を取り出す。
「美味しそうですね、秀様」
わっふわっふと寄ってくるレカーロを見ながら、イグニスは思う。
(……一匹連れ帰りたい……)
イグニスの視線に気が付き、レカーロが首を傾げるのだった。
「お疲れさん」
カインとイェルクの傍には、子供のレカーロが沢山いた。
30分というのは、子供達にとってはとても長く疲れたことだろう。
カインが撫でてやれば、えっへん、凄いでしょう? とでもいうように胸をはるレカーロが。
そんな二人の仲睦まじい? 姿に、様子を見に来ていたリーダーに声を掛けるイェルク。
「あぁいうの、普通にやるんですよね」
ちょっと拗ねつつそう愚痴れば、ぱたんと尻尾が足元に触れる。
どうやら、慰めてくれているようだ。
「……ありがとうございます」
カインに撫でられ嬉しそうなレカーロ達。
イェルクの相棒は、レカーロ達に好かれたようであった。
セイリューとラキアは、ぶらっしんぐ気持ちいい! というのに開眼したレカーロ達にたかられていた。
「はいはい、お前は終わったろー」
セイリューのブラッシング捌きにメロメロなレカーロが、ちょっと名残惜しそうに離れていく。
入れ替わりにやってきたレカーロも、気持ちよさそうに尻尾を振っていた。
「こっちにおいで、梳いてあげるよ」
ラキアもそう言って呼び込めば、私も僕もとわらわらと寄ってくる。
一匹ずつブラッシングをしてやりながら気持ちいい? というラキアの問いかけに、うっとりとレカーロが尻尾を振った。
「気持ちよさそうでなによりだぜ」
「それにしても……」
ラキアがじっととれた毛を見ながら思う。
(こんなに毛がとれてもふっくらなのは……)
ようは……元々がぽっちゃりなんだな、と。
空も赤く染まり始めたそんな頃。
「冬の大活躍に期待しとくぜ、大将」
そんなカインの言葉と共にウィンクルム達が帰路につく。
見送るレカーロ達。
ふわふわと揺れる尻尾が、また、遊びに来てね、絶対だよ!
そんな風に皆に伝えるのだった……。
依頼結果:大成功
MVP:
エピソード情報 |
|
---|---|
マスター | 如月修羅 |
エピソードの種類 | ハピネスエピソード |
男性用or女性用 | 男性のみ |
エピソードジャンル | ハートフル |
エピソードタイプ | ショート |
エピソードモード | ノーマル |
シンパシー | 使用不可 |
難易度 | とても簡単 |
参加費 | 1,000ハートコイン |
参加人数 | 5 / 2 ~ 5 |
報酬 | なし |
リリース日 | 07月31日 |
出発日 | 08月06日 00:00 |
予定納品日 | 08月16日 |
参加者
- 初瀬=秀(イグニス=アルデバラン)
- アキ・セイジ(ヴェルトール・ランス)
- セイリュー・グラシア(ラキア・ジェイドバイン)
- 柳 大樹(クラウディオ)
- カイン・モーントズィッヒェル(イェルク・グリューン)
会議室
-
2015/08/05-23:48
プランは提出済みだ。
オレは頭の中がジャーキーで一杯…あとブラシ。
みんな、レカーロと仲良くなっていると信じてる! -
2015/08/05-23:23
こっちも提出。
一応、連中以外、俺達の水分も準備するようプランには書いたぜ。
しっかし、暑い日が続く。
連中じゃなくても具合悪くなる奴多いってのも頷けるよな。 -
2015/08/05-23:12
俺もプラン出したよー。
荷車は止めた。
移動の邪魔になりそうだったし。
上手くいくと良いねえ。 -
2015/08/05-23:10
ハートフルというよりガチの熱中症集団の救命プランになった。
もふもふして楽しむなんて夢のまた夢。撫でて力づけたり安心させるのが精一杯のふわふわだった。
でも良いよな?
難易度がとても簡単とはいえ、命が懸かってるんだから真剣にもなるよな。
心いくまでふわふわをもふもふするのは別のエピに機会がある事を期待するよ。
皆も背後の人も、熱中症にはくれぐれも気をつけような。命に関わるからな。
プランは出せているよ。うまく行っていると良いな。
(ハピエピとは思えない結びだな:汗) -
2015/08/05-00:14
飛び込みで悪ぃ。
カインだ。
パートナーはイェルク・グリューン。
全員で説得の方向でいいのか?
あと、分担は俺も手伝うぜ。
それと、移動の際のフォローとかかな。
遅れそうな奴なんかに注意を払ったりとか。 -
2015/08/05-00:09
滑り込んできたアキ・セイジだ。相棒はウイズのランス。
個別でも全員でもどちらでもかまわないよ。ではよろしくなー。 -
2015/08/04-22:10
おー、今いるメンバーだと皆どっちでも良いのね。
なら全員で説得する?
秀さんが荷物多いなら、少しは持つよ。クロちゃんが。
まあ、俺も多少は。
荷車とか使って良いのかな。
でも、この時期の肉は痛みやすいから。
セイリューさんの言うように干し肉の方が良いのかな。(頭を掻く
とりあえず、俺は『ここから30分ぐらいのところの森が日陰もあるし、暑さもマシになると思う』って伝えようと思う。
『少しでも元気になった今なら仲間も森まで行けるよ』って。
今考えてるのはそれぐらい。 -
2015/08/04-19:30
あらためて、セイリュー・グラシアと精霊ラキアだ。
オレ達も、個別でもまとめてでも、どっちでも良いぜ。
お肉はワンコのおやつみたいなジャーキーが良いかも。
持っていきやすいし、与えやすいし。
100匹相手でもお徳用を買って行けば足りると思って持って行くぜ。
干した肉はウマいからな(あ、よだれが。
ふわふわもこもこなら
ブラッシングも喜んでくれるかもしれない。
オレ達はペット用のお手入れブラシも持っていくつもりだ。
夏毛に代わっている無駄な毛が
ブラシでちゃんと取れたら、少し涼しくなるだろうし。
毛並みも艶々になってより可愛くなるに違いないからだ!
と、こんな感じで仲良くなるのを考え中だ。 -
2015/08/03-23:36
初瀬とイグニスだ、よろしくな。
うちもまとめてでも個別でもどっちでも構わないな。
水と肉、あと氷でも持って行くか。
……100匹分の肉か……できることなら分担した方がいい気もするな…… -
2015/08/03-23:20
柳大樹でーす。よろしく。
群れのまとめっぽい5匹を説得して移動して貰う、と。
俺は全員で説得でも、個別でもどっちでもいーよ。
とりあえず水と。
肉が好きらしいから肉持ってこうかな。
どんぐらい持ってけばいいんだろ。(首に手を当てる -
2015/08/03-00:16