プロローグ
●世の中、色々な人がいますね(棒読み)
『あなた』達は、本日タブロスから少々離れた町付近の任務を無事終了させた。
が、任務終了した時には既に夜、タブロスに向けて発つには時間が遅い。
A.R.O.A.本部に確認の連絡を入れると、今日は現地で宿泊していいという返答があった。
ということで、『あなた』達は、この町にある旅館へと向かう。
そこに何が待ち受けているかも知らずに。
旅館は、運良く全員宿泊が可能だった。
神人達と精霊達は、勿論別々の部屋。
夕食前にこの旅館にある露天風呂を楽しもうという話になり、神人達も精霊達もそれぞれ支度を整える。
とは言え、男性よりも女性の方が支度を整えるのが遅いのは世の常。
少し遅れた為、待ち合わせの浴場の脱衣所前に向かうべく、神人達はちょっと駆け足。
ロビーを通過した所で、不穏当な会話を聞いた。
「BNTが確認された……!」
「迎撃ライン構築!!」
何だろうと思いつつも神人達は待ち合わせ場所へ。
遅くなったことを詫びつつ、出たらどこで待っているかも軽く打ち合わせ、神人達と精霊達は男湯と女湯に分かれて入った。
「男湯の方、騒がしくない?」
「BNTが出たかもしれないわね」
神人達は、服に手をかけた所で脱衣所の清掃をしていたスタッフの会話を耳に拾った。
スッゴイ嫌な予感がする。
BNT……それは何者!?
神人達の視線に気づいたのか、スタッフ達は笑った。
「大丈夫よ、女湯は。BNTは同性は狙わないわ。素敵な男性だけ覗きたいから」
「迎撃ラインが構築されれば、諦めるんじゃないかしら」
B(美形)N(覗き)T(隊)……!!
神人達は、戦慄した。
ここの露天風呂は、水着禁止……!!
そんなのが来てるから、タオル位は許して貰えるだろうが、彼の色々(意味深)が危ない!!
少なくとも、BNTに彼の全てを見せるなどとんでもない!!
神人達は、きゅっと唇を結ぶ。
服を脱ぐことなく、ロビーへ急ぐ。
言うべきことは、ひとつ。
迎撃ラインに入れてください。
解説
●目的
・BNTの覗き阻止
●敵(?)情報
・BNTx5
全員変態ですが、若い女性です。顔立ちも綺麗だったり可愛かったり、グラマーだったり、美乳・美脚だったりと覗きさえしなければ引く手数多の残念な方々です。
覗きの為に身体は鍛えてますが、一般人の範囲です。
この為、バトルコーディネートの適用はありません。
精霊への愛を持ち、勇気と知恵で彼女達の目的を阻止することになります。
●消費ジェール
・1組300jr
宿泊代金です。ただし、BNT出没の関係で宿側からだいぶ割引された上、一番いい料理が出されます。
●迎撃情報
・露天風呂は、人目を考慮して旅館2階にあります。
・1階部分は木々が生えており、遮蔽物に困りません。
・既に旅館の方々が罠を仕掛け、ネットや唐辛子水の水鉄砲持参で迎撃ラインを構築しています。
・参戦する神人の皆様は、水鉄砲(唐辛子水や熱い石鹸水入り)を借りられます。他、ロープ、ネット、軟球が使用可能。
・迎撃可能場所は、木々以外にも外壁(女湯経由)・非常階段から行うことも可能です。
●注意・補足事項
・神人は迎撃主体のプランとなりますが、精霊は露天風呂を楽しむ主体のプランとなります。
(騒ぎに気づいても囮という崇高な使命に殉じていただきます。タオルで防御OK、石鹸と風呂桶である程度の対応もOKとします)
・迎撃失敗すると、精霊の方々は大変な目に遭いますが、全年齢の範囲の描写となります。
ゲームマスターより
こんにちは、真名木風由です。
ゆるフェスでのお声を聞き(?)、女の覗きを神人が精霊の為に迎撃するエピソードをお届けします。
敵は割と残念でどうしようもないですが、根性とか執念はありそうなので、気合入れて迎撃してくださいね。
無事迎撃したら、露天風呂で汗を流して、美味しい料理を食べてください。
こういう日もありますよ、うん。
それでは、お待ちしております。
リザルトノベル
◆アクション・プラン
リゼット(アンリ)
旅館の人が設置した罠の傍で身を隠して待機 BNTが罠をかわそうとし、集中が罠へ向いた瞬間を狙って 軟球を投げつける 罠をすり抜けて逃走してしまったBNTがいる場合は 何人温泉へ向かったかを声を出して味方に周知 というか、なんで覗きなんか… 別に見たっていいものなんてないでしょうに 見たことないからわからないけど …って、見たくもないけど! 早く終わらせて私もお風呂に入りたい… 何がいいのか知らないけど、お縄についてもらうわ 覚悟しなさいこのド変態! 男湯に到達されてしまったら 女湯側から様子をうかがう 男湯に入るわけにはいかないもの …とりあえずあとで一発殴ってやるわあの下品な大バカ犬! 見たくないわ!さっさと隠しなさいよ! |
油屋。(サマエル)
それは木々の中から突然現れた。 「ニンゲン イマスグ カエレ……」 覗きを企むBNTにメスゴリラが水鉄砲で襲いかかる! 「ジャングル ツヨイヤツ イキノコル!」 真面目に迎撃、しかし彼女達に涙を流してお願い されたら、一瞬迷ってしまう で、でもでも!サマエル、普段は刺青のせいであんまり 露天風呂とか入れないって言ってたし、邪魔されたら 可哀想っていうか……。 部屋から別れる前、楽しげだった精霊の表情を思い出す うん、やっぱ駄目だ。ここから先には行かせられない 全力で止めにかかる ※ BNTを無事止められたら→ 久々の露天風呂どうだった? 「まぁまぁだな」と返って来たら上々 |
ハロルド(ディエゴ・ルナ・クィンテロ)
お風呂入ろうと思ったのに面倒なことに巻き込まれちゃいましたね 別に覗かれてもいいんじゃないですか 変な行動起こそうとしたらテンプルに一発お見舞いしますけど。 熱い石鹸水を非常階段に撒いておきましょうか 威嚇に軟球を投げつけます、ソフトボールの要領で(スポーツスキル5) ですが相手が悪いとはいえ一般人ですし、女性です 顔や体に傷をつけてしまっては大変ですよね 怪我や転倒をしそうになったら素早く受け止め(捕まえ)助けます。 ウィンクルムが一般人を傷つけたとあっては、沽券にかかわりますから ディエゴさんが私の立場でもそう考え行動するでしょうし。 お風呂上りはミックスジュースで決まりです ディエゴさん、お爺ちゃんですか? |
ハガネ(フリオ・クルーエル)
「どうでもいい…と言いたいところだが、坊主が変態女の食い物にされて変なトラウマできたら厄介だ 退場してもらおうか」 非常階段で張り込み 本気なら暗視スコープ位持ち込むだろう、カメラのフラッシュか懐中電灯で目を眩ます 罠を越えたBNTは唐辛子水、石鹸水の水鉄砲を2丁拳銃で撃つ 石鹸水は滑るように足元狙い、唐辛子水は目潰しと鼻、口といった粘膜痛狙いで頭部を狙う 非常階段から上がってきた者はロープで縛り上げて転がした上に椅子がわりに座る(ドS) 少し疲れたよ… 任務後だってのにババアに無茶させやがって 全身傷だらけだが温泉に入るときは隠す事は無いものの 周りへの配慮で人と距離を置いて浸かる 持ち込めたら星見酒を楽しむ |
メイリ・ヴィヴィアーニ(チハヤ・クロニカ)
裸見られてちー君がお婿に行けなくなったら大変なの。 ちー君の未来のためにも頑張って撃退するよ! 覗かれたちー君のリアクションが面白そうなんて思ってないよ。 迎撃ラインに入れてもらったら仕掛けている罠を確かめて… あと動きやすいように髪はポニーテールに変えとくの。 非常階段の方には手が回ってるみたいだから外壁近くに待機。 外壁の方のBNTに仕掛けるの。 熱い石鹸水入りの水鉄砲発射するの。 ちゃんと当たるかは正直自信ないけど狙うとしたら足元、手元かな? 進みを少しでも遅らせたり、気をそらすことができたらいいな。 ちゃんと守れたらみんなで乾杯しようね。 他の精霊と一緒の時「ちー君って実は(身長)小さかったんだ」と思う。 |
●迎撃に加わる戦士(違)達
「裸見られてちー君がお婿に行けなくなったら大変なの……!」
「どうでもいい……と言いたい所だが、坊主が変態の食い物にされて変なトラウマ出来たら厄介だ」
メイリ・ヴィヴィアーニとハガネの心は、(個性の差あれど)BNT迎撃に向かって動いている。
「BNTは女だけだろうな?」
「今回は女だけが確認されてますね」
ハガネが確認を取ると、従業員からはそのように返答。
曰く、BNTは男女問わない組織(何の)らしく、BNT49と名乗っているそうだ。
49人構成じゃない(国中のネットワークらしく結構な人数らしい)から、省略が常らしいが。
「初耳ですね」
「こちらもBNTは秘匿しておりますからね」
ハロルドが首を傾げると、別の従業員が答える。
そりゃそうだ、覗き組織の話を率先して言う訳がない。
仮に話を振られても、本物かつトップクラス(絶景ポイントのセンターポジションが確約されている実力者のことらしい)が出ていない限りは笑顔で知らない振りをするだろう。
「別に覗かれてもいい気もしますが……、宿の方からすればそうも言ってられないでしょうね」
ハロルドは、熱い石鹸水を宿のバケツに移し変えながら自身の見解を述べる。
ハガネのようにパートナーが未成年だと違ったかもしれないが───
(ウィンクルムが一般人を傷つけたとあっては、後々問題になるでしょうし、加減しなくては)
が、そうもいかないことをこの声で知る。
「ニンゲン……」
油屋。である。
何か色々突破しているような状態になっているようだが、潜伏場所へ移動していった。
「というか、何で覗きなんか……。別に見たっていいものなんてないでしょうに」
リゼットの呟きは、一般的な常識を持ち合わせている者ならば大いに賛同してくれるだろう。
「そこに裸があるから、ということみたいですが」
「見たことないから、その気持ちが解らないけど……って、見たくもないけど!」
従業員の一言に反応したリゼットは罠の設置図を確認し、移動していく。
「(覗かれたちー君のリアクションが面白そうとかそんなことは思ってないよ)ちーくんの未来の為にも頑張って撃退しないと!」
「(言うまでに溜めがあった気がするが、まぁいい)退場させてやるか」
動きやすいよう髪をポニーテールにしたメイリは外壁付近へ待機するとのことなので、ハガネはハロルドが石鹸水を撒く前に非常階段の終着へ移動した。
ハロルドも非常階段へ石鹸水を撒いた後は、物陰へと消えていく。
その合間もBNTの情報は流れていて、第1次ライン突破はされているらしい。(リゼットが向かったのは第3次ライン。建物付近が第4次、2階部分が最終防衛ラインだそうだ)
(5重の防衛ラインって……)
神人達は説明を聞いた時点でそう思ったが、BNTは覗きをすることに関しては大変根性を見せるらしく、防衛ラインを突破してくるのだとか。
絶景の露天風呂があるからこそ何度も挑戦に来ているらしく、従業員も迎撃ライン構築は手慣れている。
「最終防衛ラインも危ないなら女湯までの最短も調べておかないと」
情報を聞きつつ、リゼットは従業員にルート確認すべく声を掛けた。
「今回は必要かもしれません。今までは2軍(そんなもんあるらしい)が来ていたようですが、手際がいいので、1軍は確実に来ていますね」
「……やっぱり理解出来ないわね」
永遠に理解しない方がいいことも世の中にはある。
●その頃のターゲット達は
「女の人って、お風呂入るだけなのに何で時間掛かるんだろ? 脱いで洗ってお湯に浸かるだけなのに」
フリオ・クルーエルは、まだ女湯の方から神人達の声が聞こえてこない為不思議そうな顔だ。
「先に髪を洗っていたりすると、遅くなる」
「オバサンはショートヘアだけど、皆髪長かったね」
姉がいるチハヤ・クロニカがそう言うと、フリオは納得した。
「久々の露天風呂はいいですね♪」
「任務の後だしなー」
尻尾を揺らめかせるサマエルも機嫌よく(普段刺青の関係でお断りされることが多いらしいがウィンクルムとして任務をこなしただけありOKが出たことと場所の関係で素が割と出ているようだ)会話に加われば、アンリもタオルを頭に乗せ、ご機嫌な様子。
口ずさむのは、アンリが昔見たヒーロー番組の主題歌らしく、普通の高校生がヒーローに選ばれたというストーリーが分かるものだ。
「この中ではフリオだけ学校に通っている年齢か。二重生活は確かに大変そうだ」
ディエゴ・ルナ・クィンテロが元プロのアンリの歌声を聞きながらそう漏らすと、フリオも「オレだけ大人じゃないんだよな」と言い、視線を下にずらした。
そう、自分だけ大人じゃない。
大人じゃないから、これから背だって伸びるし……だって成長する!
フリオが背丈以外のどこを見比べてしょんぼりし、成長を言い聞かせたかは本人の名誉の為に黙っておこう。
と、アンリの歌がサビの部分に差し掛かると、ディエゴが加わった。
「お上手ですねぇ。お好きなんですかねぇ」
「俺は微妙に世代がズレてる」
サマエルが巧いと手を叩くと、チハヤがちょっと分からないと眉を寄せる。
ヒーロー番組は基本1年で終わる為、世代によってどのヒーローに馴染みがあるか異なるのだ。
「けど、気持ち良さそうに歌いますよね★」
「実際気持ちいいぞ」
サマエルがそういうものなのかと言っていると、歌い終わったアンリが笑う。
「まさかディエゴが加わるとは思わなかった」
「べ、別に特撮好きじゃないぞ」
話を振られたディエゴは、オフだけあり任務とは違う様子で言い逃れする。
我慢出来なかったとかそんなことはない。
「それより、じゃんけん勝負しようぜ。敗者が勝者の背中を流すってことで」
「牛乳もつけようぜ。さっき売店で売ってたし」
「賛成です★ 湯上りの牛乳は美味しいですし(負ける気はないがな)」
ディエゴの提案にアンリがそう言うと、サマエルが乗った。
「オレもいいよ」
「いや、俺は……」
「チハヤさん、じゃんけん弱いんです?」
フリオも問題ないと続くが、チハヤは拒否しようとし、サマエルに笑顔を向けられた。
ここでサマエル評論家(?)にして現在色々突破されている油屋嬢がいらっしゃれば、この笑顔の意味を解説してくれるだろうが、ここにはいない。
「負けるの前提なら、私としては助かります★」
「やる」
渋々ではあったが、分かり易くも負けず嫌いのチハヤは勝負に乗った。
(やるからには全力)
「負けたら屈辱だ。凄まじい悔しさを感じるだろうな」
気合が入った表情をするチハヤに対し、提案者のディエゴはあまりそう見えない。
性格の差とも言うが、こういう勝負ではどちらが有利かと言われれば……ね?
「俺様が負けるわけがないだろ! 王子の前にひれ伏すんだな野郎共! 俺のマグナムが火を噴くぜぇッ!」
「いいなぁ」
全裸で無意味に威張るアンリを見つつ、フリオがぽそり。
だが、負けられない勝負もある。
湯船から出た男達は、戦い始めた!(ただし全裸)
結果───
「オレか……」
フリオとチハヤの一騎打ちになり、フリオが負けた。
単純 VS 分かり易い……引っ掛けにも弱い両者はかなりの好カードだったが、最終的にチハヤの勝利。
(やっぱり皆、色々大人なんだな……)
「いやん、そんなに見られたら恥ずかしいですぅ」
フリオの視線に気づいたサマエルが(わざと)クネクネ身を捩じらせる。
「13歳位の頃、身長どれ位でした? 大人になるには……」
「大人……色々経験すること、ですかね」
フリオへのサマエルの回答は一見まともである。
しかし、その先がまともではなかった。
「ばきゅーん★でどきゅーん★でズバーン★……って、自主的に規制音発しているのにお2人まで……」
「援護射撃だ」
サマエルはちゃんと空気を読んでいたが、応じたディエゴの他、アンリが自身のジョブスキルを使用した際に生じるであろう音を口で再現してサマエルの言葉を遮り、チハヤがフリオの耳をそっと塞いでいた。
自主規制音の向こうも、まだ知らなくていいと言うか、教えた後のハガネが怖い。絶対怖い。
「では犬、誠心誠意働くが良い」
「俺ライオン」
「今は犬だ」
やはりサマエル評論家の油屋嬢のコメントはいただきたい所だ。
●BNT迎撃!
(恐ろしい執念……)
リゼットは、戦慄した。
現在、第3次ラインで攻防しているが、離脱者がいない。
罠はどれもこれも偽装バッチリなのに、俊敏に回避するらしい。
ここで食い止めなければ、第3次が突破される!
リゼットは手にしている軟球をぎゅっと握り締めた。
前方から、散開するようにして5つの人影が見える。
「笑止!」
鋭い一言と共に跳躍した女が地面へ叩きつけるように軟球を投げた。
直後、落とし穴が姿を現し、下にはトリモチの姿が見える。
「この程度のことで、この志砕けはしない!」
「何がいいのか知らないけど、お縄についてもらうわ! 覚悟しなさい、このド変態!」
他の罠も警戒していると判断したリゼットが茂みから隙ありと軟球を投げた。
すると、BNTは腕をクロスにして軟球を防ぎつつ、強行突破に掛かってくる。
回避が難しいなら、ダメージを最小にして飛び込むのもまた戦略だ。
「そっち! 全員行ったわ!!」
リゼットがBNT逃走方向へ大声で知らせると、すぐさま従業員へ確認していたルートを使い、最短で女湯を目指すのだった。
さて、リゼットが大声を出した頃、戦いを終えた男達。
「俺は高校から急に背が伸びたな。それまでどちらかと言えば小柄だった。特に何もしてないな」
フリオから背中が特に広いと羨ましがられるディエゴは、背中を流されつつそのように語る。
「どうしたら背が伸びるんだろう」
「だから経験」
「俺は13歳頃は160cmなかったな。158cm位だと思う」
サマエルの自主規制音説明を阻止すべく、チハヤが口を開いた。
「食生活のバランスは割といい方だったな。あとは、時間ある時は友達と外で遊ぶことが多かった。運動好きだし」
とは言え、成人している4人の中で自分が1番身長が低いから説得力ないかもと添えつつ、チハヤは少しでもと質問に答えた。
「食うのは大事かもな。俺も昔割とちびだったし。けど、好き嫌いせず何でも食って遊んで夜しっかり寝てたらご覧の通りだ」
「そう、なのかな。オレの方が大きくなればハガネも子供扱いしなくなるかなって」
「はっはっは! 俺のようにありとあらゆるものがデカい男になれよ?」
アンリがそう笑うと、フリオはやっぱり色々見比べたが、見比べた箇所の詳細は伏せておこう。
「ところで、外が騒がしくないか? 何やってんだ?」
「今のリゼットの声じゃね?」
ディエゴがふと顔を上げると、アンリも声の主に気づく。
フリオに長くてふわふわの尻尾(くすぐったく感じる耳は頭部なので背中ではないからと辞退)もシャンプーして貰っていたチハヤも外へ目を向ける。
「覗きとか言ってないか?」
すると、フリオが咄嗟に桶でガードに入る。
ディエゴもタオルを腰に巻き───
「あれ、俺のタオル?」
「の、ぞ、き?」
チハヤが自身のタオルがないと周囲を見回し、硬直して後退するサマエルも自身のタオルを求めて視線を動かしている。
「ふん! 隠そうとするから見に来る!」
隠す気ゼロのアンリは、堂々として立つ。
地味に皆のタオルを隠す悪戯かましたディエゴは、
(それはもう覗きではないだろう)
と思ったが、外の騒ぎの時点で覗きとは程遠いのは言うまでもない。
「ニンゲン……イマスグ、カエレ……」
それは、木の上から突然現れた。
「あら、中々のものをお持ちで」
「ココハワレラノバショ。ツヨイヤツイキノコル!」
BNTが胸をまじまじ鑑賞するが、油屋は構わず唐辛子水入り水鉄砲で襲い掛かる!
しかし、敵もさることながら、手で顔を覆って目に入るのをガードしてきた。
「BNTヤッツケル、BNTノチカラモラウ。ダカラヤッツケル」
「その麗しい身体は、覗かれる為にあるのよ!」
ゴリラどころか何か違うものも混ざってきた油屋へBNTが反論してきた。
彼女達はくっそ真面目だが、内容はどうしようもない。
「う……」
「私達は、堂々と見たいんじゃない。覗きたいの!」
色々末期な発想だ。
「で、でもでも!」
あ、人間に戻った。
「サマエル、普段は刺青の所為であんまり露天風呂に入れないって言ってたし、邪魔されたら可哀想って言うか……」
「私達は邪魔しないようにこっそり覗くだけなんだけど」
もうこの騒ぎでこっそりとかありえないから。
そんなツッコミより、油屋は別部屋に入るサマエルが露天風呂OKと言われ、楽しげだったその表情を思い出す。
「うん、やっぱ駄目だ。ここから先には行かせられない」
「だが断る」
「そうはさせるかぁぁぁぁぁ!!!!!」
油屋こと虚戯早瀬、負けられぬ戦いがここにある。
●執念深きBNT
ハロルドは、はっと顔を上げた。
油屋の怒声が、近づいてくる。
非常階段にいるハガネと視線を交わし、ハロルドもいつ来てもいいように軟球を握り締めた。
「なーぜーにーげーるー」
「覗きたいから!」
油屋の声と同時に茂みが割れ、4人のBNTが姿を現した。
1人は脱落したようだが、全力で立ち向かう油屋は4人を追撃していたようだ。
「正直自信ないけど……狙うとしたら、手元か足元かな」
外壁によじ登る可能性も考え、壁近くに控えていたメイリが熱い石鹸水入りの水鉄砲を撃つ。
当たらなくても仕掛けてある罠に掛かるのが1番だけど、足を止めたり気を逸らせば、他の人が対応してくれればという思いもあった。
すると、動きがいい1人が飛び込み前転の要領で一気に外壁へ接近すると、フリークライミングの要領で壁を登っていく。
「あー! ダメなの! ちーくんがお婿に行けなくなっちゃう!」
メイリがBNTのお尻目掛け、水鉄砲をガンガン撃つ。
その間も戦場(?)は動いており、ハロルドが物陰からソフトボールの要領で速球を投げる。
(軟球とは言え、怪我をさせる訳には参りませんからね)
威嚇を目的とした速球は、BNTがどの方向に回避するかも計算されてある。
俊敏な動きで回避したその場所には、ネットの罠があったのだ。
「不覚……!!」
ハロルドは極めて安全にBNT1人確保。
しかし、まだBNTは全てではない。
「考えてみりゃ、建物周辺は明るいから不要だったな」
本気なら暗視スコープ位あるだろうと思いきや、逃走の最中に解除しているらしい。
建物周辺は明かりが十分確保出来ることより、彼女達も光による攻撃を警戒しているのだろう。
階段を1歩踏んだBNTが石鹸水を撒かれていることに気づく。
「ほう、気づく程度には頭がいいか」
「伊達や酔狂でこの業界に身を置いている訳じゃないのよ」
「そうかい」
じゃ、逝け。
ハガネは形式美も何もなく片手の唐辛子水入り水鉄砲を速射した。
顔をガードし、間合いを詰めてくるBNT。
(だが、顔を注意するなら、足は必ずお留守になる)
口元を歪ませ、熱い石鹸水入りの水鉄砲を撃つと、今度は跳躍した。
が、着地点に仕掛けられたトラップがあり、BNTがロープに縛られて転倒する。
「少し疲れたよ……。任務後だってのにババアに無茶させやがって」
休むかとBNTが見えていないかのようにハガネは彼女の顔面に腰を下ろす。
残り2人、どうなるか。
BNTは2名、外壁を登っていた。
が、1人はメイリが割と執拗に攻撃している状態である。
上から下へ攻撃するより、下から上へ攻撃する方が難易度が高い為、メイリの攻撃はあまり要領を得ている訳ではないが、BNTの集中力を殺ぐには十分だった。
その時だ。
「間に合ったわね!」
女湯からリゼットが姿を現した。
間に合ったのは、全員の妨害があったからに他ならない。
「男湯に入る訳にはいかないから、こっちから来てあげたわよ。このド変態、さっさと捕まらないと私がお風呂に入れないじゃないのよ!」
リゼットが風呂桶で汲んだらしい熱湯を上からかけた。
ちょうどメイリが撃ちまくっていたBNTが範囲におり、避ける間もなく喰らって墜落。
高さもさほどではなかったが、ハロルドが間に合い、BNTを受け止めてそのまま確保した。
「最後の人が気にせず登ってるー! ダメー!!」
メイリが悲鳴を上げたその時───
●守られた───
男湯に人影あり。
「見たけりゃいくらでも見せてやるぜ?」
ザッと姿を見せたのは、全裸仁王立ちのアンリだ。
色々いけない!
誰もがそう思った瞬間……風がいい仕事をした。
ふわさっと湯煙がアンリを覆い隠したのだ。
靡いているのは髪以外分からない間にディエゴが隠していたタオルをふわさっとアンリへ装着させる。
「この大バカ犬! 下品な登場するんじゃないわよ!」
「空気読みなさいよ、風!」
リゼットとBNTが声を上げたその時だ。
BNTは自分が引き摺り下ろされていることに気づいた。
リゼットと共に女湯へ到達した従業員からロープを下ろされた為、メイリが思いついたままロープを使って登ってきたのだ。
ちなみに、従業員が下りる為にロープを垂らしたのであって、メイリが登ったのは想定外である。
「ちーくんの婚期は私が守るの!」
メイリが片手で水鉄砲を撃つと、これが命中。
BNTは従業員が準備したマットの上に落ちて確保、メイリ自身も落下したがこちらはハロルドが受け止めてくれた。
「後で殴らせなさいよ! 隠して貰わなかったら見たくないもの見せられる所だったわ!」
「見せられないようなモン持った覚えはむがっ」
ディエゴがアンリの口を塞ぎ、奥へ行ったので、とりあえず平和になった。
BNT、全員確保完了。
「事情は聞いたが、全員無茶をしてないなら別に良い」
「ディエゴさんも逆の立場なら私と同じように考え、行動したと思いますけど」
風呂上りのビールを呑みながら、ディエゴは事の次第についてそのように言った。
あの後、無事に入浴となったハロルドもミックスジュースを手にそう言うと、「違いない」と笑みが返ってくる。
「婚期遅れは連呼しなくて良かったぞ」
「心配だったの」
一緒に牛乳を飲むチハヤはメイリの言動に苦笑するが、メイリは一生懸命だったらしい。
(けど、ちーくんって実は小さかったんだ)
精霊達が並んでいて、メイリはそう思った。
それをそのまま言葉すると、勘違いされた上、チハヤの男性としての自信が逃亡するかもしれないので、口にする場合は単語追加を推奨する。
「久々の露天風呂どうだった?」
「まぁまぁだな」
油屋がフルーツ牛乳を飲むサマエルへ声を掛けると、サマエルはエラソーにそう返した。
が、油屋的には上々の回答なのでよしとする。
「時間ありそうだし、もう1回入るか」
「ディエゴさん、お爺ちゃんです?」
ハロルドとディエゴが会話を交わす中、フリオがハガネを探している。
「まだお風呂ですよ。ゆっくりなさりたいそうで」
「そうなの? 酒呑んでそう……」
ハロルドに教えられたフリオが予想した通り、ハガネは宿の計らいで清酒を持ち込み、星を見つつ湯船で酒を楽しんでいるらしい。
「湯船で倒れなきゃいいけど」
フリオがそう呟いたのとほぼ同時刻───
(死なれる以外も寝覚め悪いことがあるとはな。クソ)
女同士隠す必要はないが、全身に傷がある為配慮し、単独で楽しんでいるハガネが、心の中で悪態ついていた。
そうしてそれぞれの時間を過ごしている頃、アンリはリゼットに正座させられていた。
頬の状態を見る限り、リゼットは有限実行で殴ったらしい。
「本当に下品な大バカ犬だわ」
「小さくねぇんだし、いいじゃねぇか」
「そういう問題じゃないッ!!」
ばちーん。
アンリは、また叩かれた。
「しっかし、王子直々に迎撃しようと思ったのによ、風が吹いた間にディエゴがタオル巻きつけてきやがったから、その間に全部終わったのはつまんなかったぜ」
「寧ろ感謝しなさいよッ!!」
ばちーんばちーん。
結局、アンリが反省しなかった為、リゼットは手が真っ赤になるまでアンリを殴った。
マグナム(意味深)は、神人達と頑張る神人達に助力した風のお陰で守られた。
けれど、BNTは今もどこで牙を研いでいる───
依頼結果:成功
MVP:
名前:リゼット 呼び名:リズ |
名前:アンリ 呼び名:アンリ |
エピソード情報 |
|
---|---|
マスター | 真名木風由 |
エピソードの種類 | ハピネスエピソード |
男性用or女性用 | 女性のみ |
エピソードジャンル | コメディ |
エピソードタイプ | ショート |
エピソードモード | ノーマル |
シンパシー | 使用不可 |
難易度 | 普通 |
参加費 | 1,000ハートコイン |
参加人数 | 5 / 2 ~ 5 |
報酬 | なし |
リリース日 | 07月22日 |
出発日 | 07月28日 00:00 |
予定納品日 | 08月07日 |
参加者
- リゼット(アンリ)
- 油屋。(サマエル)
- ハロルド(ディエゴ・ルナ・クィンテロ)
- ハガネ(フリオ・クルーエル)
- メイリ・ヴィヴィアーニ(チハヤ・クロニカ)
会議室
-
2015/07/27-22:50
-
2015/07/27-21:20
-
2015/07/27-15:40
-
2015/07/27-00:54
アンリ:
ふっ。あいかわらずの照れ屋さんだなディエゴ。
まあせっかくの温泉だ。のんびり湯につかって昔話でもしよう。
俺は昔から最高に王子だったからな。背が伸びる秘訣もあるかもしれんぞ。
(PL:反対の方がいらっしゃるようなので成功させる方向でプランを練ろうと思います。
失敗を呼び込むような提案をしてすみません。頑張って成功させましょう! -
2015/07/27-00:15
フリオ「うーん、すぐに伸びることは無いのか……残念だな。
温泉の中で少し身長の事とか突っ込んで聞いてみたいな。
オレ位の時どれくらいだったのかとかさ。
(PL
迎撃については失敗も面白いとは思いますが、失敗を狙うと言うことはせずに一応真面目に迎撃する方針で行きます) -
2015/07/27-00:12
サマエル:
ほう?(ニヤァ
……まぁ良い、負けたら牛乳を買いに行く、だな。
何なら肩も揉んでやるぞ?
ただし、俺が勝ったら覚悟しておけよ……フフフフ!
あらやだ、私ったらつい口調が荒くなってしまいました。(小声
(PL:大丈夫デース) -
2015/07/26-20:16
チハヤ:
大きくなるっていうの意識しすぎていると逆に伸びないぞ。
意外と気にしてない奴ほど伸びる。
あと二十歳近くなっても伸びる奴もいるし。
なんか逃げられなさそうな予感…。やるからには負けないからな!
牛乳買わせてやるよ(やる気満々)
メイリ:
じゃあ私は外壁近くに隠れて警戒かな。借りるのは水鉄砲にするの。
(PL:突破されるのも面白いと思います。迎撃失敗でもいいですよ)
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2015/07/26-18:49
ディエゴ:
フリオも、年齢を重ねれば背だって伸びる
焦らなくても良いと思うぞ
俺はアンリの背中だけは流したくないな(きっぱり)
ハロルド:
私もボールを借りようと思っています
待機場所はハガネさんと同じ、階段の予定です
(PL:自分は皆さんが納得できる形のプランができるなら、迎撃失敗(結果:失敗?)でも良いかなって思います。
自分的に、失敗は迎撃の度を越してしまうことなんじゃないかなーと) -
2015/07/26-18:10
アンリ:
大きくなるにはよく食ってよく遊んでよく寝る。これだ。
大きくするには…おっと。誰か来たようだ。
誰が顎で使われてなんかやるかってんだ。
牛乳買いに行かすぞコラ。
そういや牛乳飲んでもあんま背伸びないらしいから飲み過ぎて腹壊すなよ。
リゼット:
では私はボールを借りて罠のそばに隠れますね。
見つけたら行き先は一つですから、声を出して居場所を知らせてもいいでしょうか。
(PL:迎撃を敢えて穴だらけにして、突破されるように調整したら
エピソード的に面白い展開になるかな?と思ったんですがいかがでしょうか。
迎撃失敗=エピソード失敗となってしまう可能性もあるのでどうしたものかというところですが、ちょっと見てみたい気もしました。
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2015/07/26-12:19
サマエル:
素敵な提案ですね!ぜひ私も混ぜてください。
勝てば精霊を顎で使える訳か……ククク、面白い(違う)
あ、尻尾は触っちゃ駄目ですよ?
チハヤさん、そんな寂しいことを仰らないで、ね?(逃がすまいという笑顔)
フフフ、大人になるのなんてあっという間ですよ(意味深)
油屋:
んじゃ、アタシは木のとこで水鉄砲持って待機してよっかな。 -
2015/07/26-10:26
ハガネだ。
変態女なぞどうでもいい……と言いたいところだが、坊主がそれで女性不信になられたら面倒だ。
あたしは非常階段あたりで待機して罠を越えたBNTを水鉄砲で狙うさ。
フリオ「こんにちは!はじめましてのひともお久しぶりのひともよろしくおねがいします!
背中の流しっ子いいよ!負けないぞ!
……みんな大人の男だ……どうしたらそんな大きくなれるんだろう」 -
2015/07/25-22:31
メイリ:
メイリなの、よろしくね。
ちー君がお婿に行けなくなったら可哀そうだから頑張ってBNT撃退するの!
それにしても男の子の裸ってそんなに面白いのかな?
ちー君ののぞかれた時のリアクションは最高だと思うけど…
チハヤ:。
俺は勝負しないぞ…風呂位静かに入らせてくれ。
絶対にやらないからな、巻き込むなよ(フラグ)
風呂上りの牛乳とかあったら最高だよなぁ -
2015/07/25-21:46
リゼット:
こんにちは。
別にうちのバカが誰かに覗かれていようと知ったことではありませんが
普通に犯罪ですから、排除しないといけませんね。
無事に終えられたら温泉に入れるようですし
早く片付けてしまいましょう。
外壁と非常階段を警戒する他には
すでに仕掛けられている罠の近くに控えて
完全にかからなかったとしても多少体制を崩したり
周囲への警戒が緩くなった瞬間に追い打ちをかけて取り押さえる
というのも手でしょうか。
アンリ:
いいねぇ、その対決乗った!
今から俺の背中がぴかぴかになるのが目に浮かぶようだぜ。
温泉で一杯引っ掛けられたら最高だが…上がってからのお楽しみかねぇ。 -
2015/07/25-16:00
ハロルド:宜しくお願いいたします…で、私達は温泉入れないんですかね
覗きとかどうでもいいのに…
ディエゴ:じゃんけんで勝負しようぜ、負けた奴が勝者の背中流すってことで -
2015/07/25-11:46
油屋。:
うぉりゃー!BNT撃退じゃー!!
こんちはー油屋。だよッ。皆よろしくねっ!
サマエル:
露天風呂、楽しみですね♪(尻尾が嬉しそうに揺れている)