プロローグ
海底世界から、亀に乗ってやって来た水上の小島。
島自体は、直径100m程とかなり小さい。
が、お土産にも喜ばれる魔法のヤシの木があったり、イルカが遊んでと集まってくるから、命の洗濯にはちょうどいいのだ。
ウィンクルム達は、今日はのんびりする為にここへやってきた。
イルカ、遊びに来たらいいな…。
そんな期待を胸に抱き、海へ視線をやる『あなた』。
皆の期待に引き寄せられるようにして、イルカの姿が見えてきた。
ここまでは、普通の休日の展開。
「!?」
『あなた』は、目を剥いた。
イルカが、何かに追われている。
相手はまだ水中にいるのか、判別出来ない。
が、水面にちらちらと角らしきものが見えるので、イルカを追い立てているのはオーガだろう。
『あなた』達は、休日気分をすぐさま切り替える。
休日とは言え、オーガが出ることもあると完全非武装でここへ来ていないのが幸いした。
イルカ達は、助けを求めるようにこちらへ泳いできて───やっとオーガの正体を知る。
イルカ型のオーガである。
ただし、オーガだからか、人相(イルカ相と言うべきか)が非常によろしくない。可愛くない。
助けてと可愛くて普通(?)イルカも鳴いている。
……選択肢は、ひとつだ。
可愛いイルカを悪しきイルカ(ただしオーガ)から救出せよ!
解説
●目的
・敵の全撃破
敵はウィンクルムに気づけば、即狙いを変えますので、可愛いイルカの護衛は不要です。
●敵情報
・イルカ型オーガx5
鋭利な歯による攻撃が主体。
水中からジャンプしての攻撃等トリッキーな動きもしますが、一番厄介なのは高い知性によるチームプレイとなります。
人の言葉は話さず、特殊な音波による意思疎通を図るようです。
●注意・補足事項
・オーガ判明から戦闘開始まで3分程度しか時間がありません。
・バトルコーディネート解除前であった為、急いで武装する必要はないのでご安心ください。
・貸与のスピリット・チョーカーは装着したままとし、水中対応も可能ですが、相手の知性の高さには十分注意してください。
・休日前提で訪れている為、バトルコーディネート以外の戦闘に役立つ一般品持込は不可とさせていただきます。
・戦闘が無事に終了した場合、休日に戻りイルカと遊んでもOKです。
(ただし、シナリオのメインとして扱わない為、デートコーディネートに触れた描写は行いません)
ゲームマスターより
こんにちは、真名木風由です。
休日に邪魔をする不届きなオーガはささっと退治しましょう。
可愛いイルカを守り、後でゆっくり堪能出来ますように。
ちなみに、今回の報酬は、亀より事情を聞いたマダム・マーレから支払われる形となります。
イルカからは取らないですよ!
それでは、お待ちしております。
リザルトノベル
◆アクション・プラン
手屋 笹(カガヤ・アクショア)
・イルカオーガを引き付ける囮 方針:引き付け&回避重視。 攻撃:可能であれば。 折角休日のはずでしたのに… 元よりオーガが出現する可能性は示唆されていましたし 仕方ありませんね。 トランス&ハイトランス・ジェミニします。 誰か一人離れてしまうと集中攻撃の可能性もありますか。 囮役で出来るだけ固まるようにしましょう。 カガヤの少し後ろに立ち 盾を構えてイルカオーガの攻撃に備えます。 特にチョーカーへの攻撃には気をつけましょう。 カルラスさんの合図があった場合はすぐ後ろへ下がります。 ・オーガの攻撃への対応 ジャンプ→急いで後ろへ下がる 水中からの攻撃→オーガの魚影?を見極め 狙いを定めテティス・ペンデュラムで叩き、下がる。 |
ハロルド(ディエゴ・ルナ・クィンテロ)
動物を傷つけるのは許せません 必ず、平和な海を取り戻してあげますからね 待っててください。 オーガとはいえ姿かたちはイルカ しかも超音波を発して連携をしてくるという 的にならないようにディエゴさんとじっくり動きながらオーガの動向を観察(【動物学】スキル)し、鳴き声を覚えておきます(【記憶力】スキル) 連携と思える行動をとったり、発声をしてきたら指笛でオーガの声を模倣し混乱させたりできないか試す。 戦闘面ではジェンマの杖でディエゴさんの攻撃力上昇支援。 攻撃が来たら盾でチョーカーを守るように防御します。 オーガを無事倒せたら、ぜひイルカと遊んでみたいですね 一緒に泳いだりとかしてみたかったんです。 |
上巳 桃(斑雪)
はーちゃん、いるかさんが大変だよ すぐトランスしないと でも、私は脚引っ張るといけないから 海岸線から離れて狙われないようにしよ で、海が広く見えるところから、オーガの動きを見張る 特に、オーガと直接戦ってる人の死角に気を付けないと 5頭もいると、1頭だけ時間差で攻撃とかしてきそうだから 危ないと思ったら大声で「あっちだよ!」叫べたらいいんだけど クリアライトがあるけど、海から離れてるから、これでオーガを眩ませるのは難しいだろうし 万が一の牽制に使うぐらいかな はーちゃん、お疲れ様でした いるかさんも怪我ない? いるかの背中で仰向けにお昼寝したら気持ちいいかな? 溺れちゃうかな? よかったらいるかさんに椰子の冠あげたいな |
向坂 咲裟(カルラス・エスクリヴァ)
まあ、悪そうなイルカ達ね ええ、早く助けてあげましょう オーガを発見したら海辺から少し下がってトランスするわ トランスしたらイルカに攻撃されない様周囲を警戒しながら後方待機するわね 後方でもイルカに狙われたら…イルカは目が悪いそうだから効果はあまり期待しないけれど、クリアライトの光を目に向けるわね そして盾でチョーカーを守るわ 周囲警戒中はイルカの動きをしっかり観察するわ イルカの動きのパターンを少しでも掴めたらカルさんに伝えるわ イルカの数が減ったらイルカが大きく動きまわらない様に前線の方へ寄るわね 退治完了したら晴れてバカンスね イルカ…こんなに近くで見たのは初めてよ 可愛いわ…おじさんも一緒に遊ばないの? |
星川 祥(ヴァルギア=ニカルド)
後衛から鉱弓「クリアレイン」で攻撃 あわよくば閃光で盲ましを狙いで少しでもオーガの泳ぐスピードを下げようとする 狙うは胸びれ、背びれ、尾びれ そこを傷つけられれば泳ぐスピードは格段に遅くなるのではないかと思い狙いを定める スピードが遅くなれば前衛さん、後衛さん全ての攻撃は当たりやすくなるハズだから 可愛いイルカさん達に悪さなんてさせないんだからね! 前衛の皆さんが引きつけてくれたところに狙いを定めて 射るべし!射るべーーーし!! イルカさんたちを助けて、あこがれのほっぺちゅーをしてもらいたいから頑張ります!! ・・・ヴァルくん写真撮ってくれないかなー 一先ず、戦闘に集中しないとね 急いでトランスして弓を構えるよ |
●接触間近
イルカ型オーガの接近を知ったウィンクルム達の動きは早かった。
「チョーカーはまだ外していない。全員食い千切られないよう対処を」
ディエゴ・ルナ・クィンテロがイルカの知性が高いことを考慮し、周囲を見回す。
『スピリット・チョーカー』は、水中に引き擦り込まれた時の生命線になりうる存在、破壊される訳にはいかない。
皆、次々とトランスしていく。
「水中にこちらから入っても相手を有利にしてしまうだけ。けど、あまり浅瀬の方だと相手も寄ってこようとしないよね……」
「複数いますしね」
カガヤ・アクショアが危険を承知で囮になるべく前に出ると、手屋 笹が続く。
すると、イルカ型オーガが気づいたらしく、分散して逃げるイルカを無視してウィンクルム達へ標的を変えた。
笹が即座にハイトランス・ジェミニで体制を整え、カガヤの「離れ過ぎないでね」という言葉通り少し後方に立つ。
「やれやれ、早く退治して折角の休日を取り戻すぞ」
任務じゃないが任務になったと言いたげなカルラス・エスクリヴァは、2人よりもある程度距離を取っての待機だ。
ロイヤルナイトであるカルラスのアプローチⅡは、その意識を引きつけるのに十分な役割を持つが、アプローチⅡを効果的に使う為に笹とカガヤは前に出ているのだ、無駄にすると、向坂 咲裟がうるさい。
当の本人は、「悪そうなイルカ達ね」と言いながら全体の状況把握に専念している訳だが。
「複数いるね。5体? 引き離されたら、拙いかも」
「まだ接近し切れてませんね」
咲裟同様、安全な場所まで後退して全体の状況把握に徹する上巳 桃に対し、斑雪はクナイ「コモチシシャモ」を手に前へ出る。
これは、クナイという投擲武器が弓や銃よりも腕力やコントロール、射程距離が限定的という一面からだ。
「思ったより、狙いが定め難いけど、可愛いイルカさんに悪さなんてさせないんだからね!」
前へ出る笹とカガヤの支援にと星川 祥が鉱弓「クリアレイン」を射、海面から僅かに姿を見せるイルカ型オーガを狙うが、接近のスピードが速く、いつも通りとはいかない。
(ジャンプすれば、狙い易いと思うんだけど)
祥は弓を引き絞りながら、呟く。
平和な海を取り戻そうと意気込むハロルドが卓越した知識でイルカの生態を周囲に伝え、オーガの攻撃のパターンの推測と共に促してくれた注意を反芻する。
笹の膝につかる位の深さ(カガヤ基準だと、本人的には不本意だが身長差がある笹にとって不利益が発生しやすい為だ)へ2人が到達すると、イルカ型のオーガはもう目の前だ。
「元々、イルカは超音波を生活に用いています。コミュニケーションを取ることもあるので、オーガなら戦闘の連携に用いてもおかしくありません」
「オーガだから勝手は違うかもしれないけど、ラッパ・カノンで音波連携の妨害って出来そう?」
射程範囲に入ったのを見越し、アプローチⅡを発動させたカルラスを察知したイルカ型オーガを見、ヴァルギア=ニカルドがハロルドへ問う。
「オーガなので超音波とは異なる音波の可能性もありますが、イルカの超音波は聴覚で捉えるものではなく、下顎の骨です。音波は額にある器官から放たれますね」
「なら、鰭以外も狙った方がいいだろうな」
ハロルドの愛の女神のワンド「ジェンマ」によって攻撃力を増強されたディエゴが会話に加わりつつ、ライフル「アルマスクロペトゥム」の引き金を引いた。
ちょうど、カルラスを取り囲もうとしていたイルカ型オーガの内1体の額へと命中し、絶叫が上がる。
(普段とは異なる条件での戦闘だ、動きには制限が加わる)
隙があれば、グレネードショットで効率よくダメージを与えて行きたいが、通常の条件で戦闘していない為、普段より機動力は落ちているだろう。
グレネードショットの攻撃範囲外への離脱が間に合わない可能性も考慮した上での射撃を念頭に置かねば。
この辺りは、ディエゴの海軍在籍経験とウィンクルムとしての戦いで得たものがなせる判断だろう。
今は、速やかにオーガを討伐する時である。
●連携には連携で
「影に注意してください!」
笹が声を張り上げた。
アプローチⅡを使用しているカルラスは、今最優先で対応されている。
水中から接近された場合、水面から出やすい背鰭に目を向けがちであるが、目測を誤り易いという判断だ。
水中へ引き擦り込むのを避けるように斧を威嚇するように足元へ向けるカガヤが挟撃に入る。
「狙って!」
間近で動きを見ていたカガヤが、それに気づいて叫んだ。
2頭のイルカ型オーガがカルラス目掛け、海面から跳躍からの攻撃を叩き込もうとした瞬間。
ヴァルギアとディエゴのダブルシューターⅡがカガヤに応えるようにイルカ型オーガをそれぞれ撃つ。
「っし! 命中! まだ生きてるけど!」
「機動力はだいぶ楽になる筈だ」
ヴァルギアとディエゴが漏らした時には、落下のタイミングを狙ったカガヤが戦斧「アネモストロヴィロス」携えて待っており、グラビティブレイク。
防御力低下を狙ったものだったが、これが決定打となり、1体まず沈黙した。
もう1体へは笹がテティス・ペンデュラムで攻撃を加えている。
カルラスが2度目のアプローチⅡを発動させた為、意識が逸れている為に現状はまだ笹へ危機が及ぶことはない。
仕留め切れなかったが、こちらはカガヤがフォローに入り、2体目も沈黙。
「ジャンプ攻撃の時はやはり隙が大きいようですね。水中の動きを気をつければ、タイミングを教えることが出来そうです」
「射線には注意しないとね。大丈夫だとは思うけど」
笹とカガヤが言葉を交わしていると、ビーチから注意の声が上がった。
「下、回り込もうとしてるよー」
「あちらも挟撃狙いね」
桃と咲裂は、カルラスを徹底して狙う動きを見逃していなかった。
5体が連係して動いた場合、目視で対応し切れなくなる場合もある。
このことより、カルラスの背後へ回ろうとする動きに絞って彼女達は分担して把握に努めていたのだ。
「分散して来られるのは面倒だ」
回り込もうとする動きを逆手に取る為、カルラスが後退を開始した。
が、通常の条件ではない場所に立っている為、想定とは異なる。
側面に回り込まれ、イルカ型のオーガがカルラスに牙を剥いたその瞬間、カルロスの視界に太陽の光とは異なる白銀が入った。
「後退していただいて、助かりました」
ほっとした声の主は、斑雪。
咄嗟に側面をカバーした斑雪は、陽炎で生み出した分身で攻撃に対処したのだ。
間合いを取るように祥の矢が牽制すると、イルカ型オーガは一旦後退する。
「ディエゴさん、ヴァルギアさん、鰭ではなく額を優先的に狙ってもらえますか」
ハロルドが2人へ声を掛ける。
機動力を殺ぐには鰭が重要だが、笹とカガヤが攻撃に対する対応の為、彼らの動きを注意深く見ていることもあり、これらよりも連携を断った方がいい。
機動力よりも知性の高さからくる連携を問題視したのは、動物学に長ける彼女ならではのものだ。
「額が無事なのは2体かな」
様子を確認していた桃が素早く状況を伝える。
既に沈黙した2体は計算に入れないとして、残り3体。
最初にディエゴが額を撃った個体とは別に2体の個体の額が無傷ならば、2人が優先するのは言うまでもない。
「カルさん、前に出て。これ以上後退すると、逆に不利だわ」
咲裂が、カルラスに声を掛ける。
あまり後退し過ぎると、イルカ型オーガは陸に揚がるのを避ける為にこちらを誘導する動きを見せるだろう。
相手に有利な陣形にする必要などどこにもない。
「だろうな。アプローチⅡも3度目……そろそろ心許ない」
カルラスが笹とカガヤに近づくよう前進する。
「先程の攻撃を警戒して、ジャンプを控えているみたいですね」
「そうすると、後ろが不利かな」
笹が咲裂の声を聞いて位置取りを調整するカルラスと彼らを見比べて言うと、カガヤがより前に出る。
祥の牽制射撃を受けている彼らが気づかれる前に───カガヤは斑雪を見、それから1度ビーチへ視線をやった。
意味を理解したハロルドが軽く手を挙げて応じ、彼女の動きでヴァルギアとディエゴが機を待つ体制となる。
直後、カガヤと斑雪が水中に向かって攻撃を仕掛けた。
●全員の勝利
攻撃を嫌がるイルカ型オーガがその機動力を活かして回避すると、ハロルドがイルカの鳴き声を真似て発する。
ハロルドには、声真似出来るような特別な技巧などない。
が、不利な状況もあり、イルカ型オーガも追い詰められていた。
普段であれば、高い知性で疑っているであろうものでも一瞬の判断を狂わせる。
見逃さず、今度は海に足をつけていた4人のウィンクルムが全員水中に向かって攻撃を叩き込んだ。
「お願いします!」
笹が狙い通りと声を上げた時には、攻撃回避を目的としてイルカ型オーガ達が全て跳躍していた。
「一番奥以外!」
桃が咄嗟に上げた声に反応し、ヴァルギアとディエゴが額にダメージを負っていない個体へそれぞれダブルシューターⅡで狙い撃つ。
「連携が絶たれるなら、逃げるかもしれないわね。おじさんのアプローチⅡ、そろそろだもの」
咲裂がカルラスの最後のアプローチⅡが終わることを示唆する。
額にある器官が損傷し、連携が絶たれ、しかも不利なら味方を捨てて逃げることもありえるだろう。
「逃げられちゃうと、また別の子をいじめちゃうかも」
射るべし、と呟く祥が海面から覗く尾鰭を射る。
ダメージそのものはともかく、近くにいるが故に見逃しがちなイルカ型オーガの正確な位置を教えるのが目的だ。
祥が位置を教えたイルカ型オーガの最寄はカガヤ。
笹が攻撃し、回避させることで生まれた隙を逃さず仕留めると、カルラスと斑雪の連係で再度跳躍せざるを得なかったイルカ型オーガをディエゴが仕留める。
最後、(恐らく陽炎で翻弄された個体だろうが)斑雪が狙われるも桃と咲裂が注意深く掌握に動いていた為、彼女達の言葉を受けて海へ入ったハロルドがカガヤへ追い立て、カガヤが仕留めた。
「周囲に脅威はなさそうね」
「怪我人もいないみたい。良かった」
咲裂が念の為、他にもオーガがいないか目を凝らしていると、祥が近眼の自分が気づくような深刻な不詳もない状態にほっと胸を撫で下ろす。
「笹とカガヤがオーガの攻撃に対する対処がしっかりしていたのが大きいだろう。普段と違う条件だからこそ、攻撃するだけでなく、された時の対応も重要だ」
「対処を考えたからこそ、連携出来た部分もあるかと」
いち早くビーチへ戻ってきたハロルドをディエゴが出迎え、戦闘を振り返る。
水中にいる相手だからこそ、攻撃のタイミングは重要。
同時に、された時の対処も重要。
その対処を念頭に置いて動いたからこそ、全体の動きの支援に繋がったのだろう。
「全員の勝利ですよ。カルラスさんのアプローチⅡがなかったら、対応が分散していたでしょうから」
「挟撃狙いも桃と咲裂が徹してなかったら、こっちじゃどうしても見落とすし」
続いて戻ってきた笹とカガヤが自分達だけの功績ではないと小さく微笑む。
笹から話を振られたカルラスは、「疲れた」を連呼している状態だが。
「はーちゃん、お疲れ様でした。いるかさんも怪我がないみたいで何より」
「水中の敵とは勝手が違って難しいものでした。いるか様も怪我がないなら……いるか様?」
「戻って来てるよー」
桃は、首を傾げている斑雪に教えるように指で彼がさっきまでいた海を指し示した。
見ると、逃げ惑っていたイルカ達が近くまで泳いできている。
「頭いいなら、多少は分かったのだろうな」
「おお! あいつらと違ってやっぱり可愛い!」
そう言うカルラスは休憩したいらしく、海の正反対方向へ歩き出すが、ヴァルギアは違う。
イルカ型オーガの可愛いとは無縁の形相とは違うと喜んでビーチへ駆け出していった。
もう邪魔はいないのだから、時間が許すまでイルカと遊ぼう。
●可愛いイルカとのひと時
自分達を襲った脅威をどうにかしてくれたと理解しているのか、イルカ達は逃げる様子もなく近づいてくる。
「いるか様って、何だか笑ってるみたいです」
撫でていいのかどうか判断に迷っている斑雪は、山育ちであった為に海に馴染みがない。
イルカだって見るのは初めてだ。
他のウィンクルム達も常日頃からイルカと接している生活ではないが、斑雪が最も海から縁遠い為にイルカへドキドキしてしまうのは無理もない。
「怒られなければやっていいんじゃない?」
いきなり頭に向かって手を出さない限り、どの動物も警戒はしない。
桃が、分かりやすくもそわそわしている斑雪へ声を掛けると、斑雪は顔を上げているイルカと目線を合わせ、「撫でていいですか」と聞き出す。
すると、イルカとしては肩の力を抜けという意味だったのかどうか不明だが、斑雪の肩を鰭で軽く押した。
「え」
大した力で押されていないが、不意であった為に斑雪は尻餅をつく。
その拍子に、海の水を味わうこととなった。
「塩っ辛いですね。湖とは違ってずっと続いてますし、波がゆらゆらしてますし、不思議です」
イルカに感想を話し始める斑雪に対し、イルカは鰭で斑雪をてしてし叩いている。
どうやら、友好的な対応をされているらしい。
「イルカって頭いいんだよなー」
斑雪の傍に移動したヴァルギアが手を出し、握手を求める。
応じたイルカが鰭でヴァルギアの手を叩くと、斑雪も倣い、2人でイルカと握手をして貰う形に。
「やっぱ超音波も興味深いし、超音波を解析して、イルカと会話出来る機会とか発明出来ねぇかな」
「ヴァルくん、それより写真撮ってほしーなー」
色々勉強が必要かもしれないが、今の技術ではどうなのだろうとヴァルギアは早くも帰宅を思い浮かべる。
その手はしっかりイルカの鼻を撫でていたが、思考は祥に遮られた。
ヴァルギアが見た時には、祥は桃と2人、イルカと握手会状態になっている。
「これはハーレム! あこがれのほっぺちゅーも夢じゃないと思うから、その瞬間を逃さず」
「や、カメラは陸」
祥にヴァルギアが応えていると、祥は桃と2人、両頬に憧れのほっぺちゅーをして貰った。
「今の決定的瞬間、残せなかったのが残念っ!」
「巻き戻して撮影出来るカメラとか発明出来ないかなー」
「ヴァルくん、そっち行くの!?」
「運が良かったら、またキスして貰えるかもしれないから、その時狙ったらどうだろ」
賑やかになった祥とヴァルギアを見、顔を見合わせるイルカ達を見たカガヤが大らかに楽しむのを優先と笑う。
それもそうかとヴァルギアがカメラを取りに一旦ビーチへ身を翻していった。
「いるかさんの背中でお昼寝とか出来ないかなぁ」
「寝方にもよると思いますけど、仰向けは難しそうな気がします」
イルカの顔を覗き込む桃へ笹がイルカの頭を撫でて応じる。
桃が小柄とは言え、イルカの背に仰向けになるのは難しいだろう。
寝転がらないと、寝る実感は得られないような気がする。
「俺は寝てるの勿体無い派だなー。イルカと一緒ってそうないし」
「呼吸の問題はなくとも、速いスピードで泳がれると落とされてしまうかもしれませんしね」
「そっか。夢の材料も必要。それに、睡眠は、安眠も大事だよね」
カガヤとハロルドが続くと、若さを犠牲にして眠りを選ぶ桃は睡眠の質も大事だとイルカの背でのお昼寝を断念した。
「それなら、ヤシの木の葉で冠作ってみようかな。間に合うといいんだけど」
「ディエゴさんに協力いただいた方がいいかもしれませんね」
桃にハロルドが微笑む。
ビーチにいるディエゴは背丈も高いから、きっと力になってくれるだろう。
「おじさんも一緒に遊ばないの?」
「休憩。私は十分働いた」
咲裂の問いの先にいるのは、ヤシの木陰に腰を下ろしたカルラス。
海の中に入り、アプローチⅡで敵を引きつけていたのだから、疲れているという言葉には一応信憑性がある。
「サキサカサカサは休日の重要性を認識しているわ」
「少し休んだら行くから、サキサカのお嬢さんは早く楽しんできた方がいい」
言い出しそうなことを先回りし、カルラスは咲裂を促す。
面倒を避ける為の方便だが、ずっと自分に張り付いて野生のイルカと接することが出来るチャンスを逃してもという思いがない訳ではない。
「分かったわ。サキサカサカサは約束破りは許さないから」
身を翻した咲裂が、海へと向かう。
海では、多くのウィンクルムがイルカ達と接しているようだ。
ビーチへ戻ってきた桃と何か言葉を交わした咲裂が皆の方へと歩いていく。
カルラスは、木陰でのんびり見守った。
ビーチへ戻ってきた桃は、戦闘終了後の為銃の手入れをしていたディエゴへ声を掛けた。
「ヤシの木の葉っぱで冠を作ろうと思って」
「それなら、俺の方が向いているだろうな」
ハロルドの推薦を受けただろうことは、こちらを見ている彼女で理解出来たので、ディエゴは立ち上がる。
桃とディエゴの身長差は、52cm。
ハロルドも小柄だが、桃の方が彼女より若干小柄だ。
身長差については、それが日常のディエゴは意識しない部分だが、自分より小柄な斑雪と契約している桃にとっては、色々ビックリである。
(普段傍にいないと、新鮮なのだろうな)
まじまじと見る(観察に近い)桃の視線の種類で大体を察するも、ディエゴはヤシの木の葉を彼女の望む量の分だけ採ってあげた。
「足りなくなったら声をかけてくれ」
「ありがとうございますー」
ディエゴがヤシの木の葉で冠を作り始める桃の横へ腰を下ろす。
手入れが終わった銃を仕舞い、海へ改めて視線をやった。
(一時休日返上となったが、エクレールが楽しそうだから、まあいいか)
戦闘と打って変わった色の眼差しは、楽しそうなハロルドを映している。
ハロルドはイルカと共に浅瀬を泳いでみる。
人の手が入っていない海の中は、驚くような世界だ。
亀に乗って来た時も驚いたものだが、『スピリット・チョーカー』を外して泳ぐのはまた違う。
隣を泳ぐのが、イルカというのもいい。
息継ぎに顔を出すと、銃の手入れと桃への葉の提供を終えたらしいディエゴがやってくるのが見えた。
「競争しますか?」
「海の専門家とは、楽しく泳ぎたい」
悪戯っぽく笑ったハロルドへディエゴは軽く肩を竦め、イルカと並ぶように泳ぎ始める。
微笑むハロルドが続き、共に海の世界を楽しんだ。
咲裂を加え、泳がないウィンクルム達はイルカ達との交流を続けていた。
「こんなに近くで見たのは初めてよ。可愛いわ……」
「本当! あのオーガとは全然違う!」
「同じだったら、怖いです……」
咲裂も祥も斑雪もイルカを撫でながら、しみじみ思う。
やっぱり表情って大事だ。
「ホント、大事にならなくて良かったよな」
「オーガ出現の可能性は示唆されていましたから、ありえなくはなかったですけど」
「まだ武装解除してなくて良かったというか」
ヴァルギアに笹とカガヤも頷く。
祥から頼まれ、カメラを構えるヴァルギアには専門的な技術はない為、ブレずに撮影するのが精一杯だろうが、イルカには馴染みがないものらしく、何をしているのだろうと観察されている。
「間に合ったー」
桃が冠と言えなくもない何かを持って、再びやってきた。
全員分は無理なので、とりあえず一個作ったらしい。
「こちらのいるか様が特に興味を示されています!」
主の意向を汲んだ斑雪が、冠を見るイルカを指し示す。
進呈、と桃が頭の上に載せる。
泳げばすぐに落ちてしまう冠でも、気持ちが大事。
「こういうのも、無事だから出来ることですね」
「そうだね。ちょっとほっとしてる」
見守っていた笹の隣で、カガヤがそう漏らした。
笹が見上げると、カガヤがこちらを見て笑う。
「ハイトランス・ジェミニしたけど、囮は変わらないでしょ? 何もなくて良かった」
心底安堵している様子のカガヤに笹は小さく微笑む。
その言葉を、忘れてはいない。
「わたくしは、あなたの言葉に見合う自分でいたいですから」
「贅沢だなぁ」
カガヤが、嬉しそうにそう笑った。
「まぁ、最終的に楽しい休日になればいいか」
彼らを見守るカルラスの言葉は、海の風だけが知っている。
依頼結果:成功
MVP:
名前:手屋 笹 呼び名:笹ちゃん |
名前:カガヤ・アクショア 呼び名:カガヤ |
エピソード情報 |
|
---|---|
マスター | 真名木風由 |
エピソードの種類 | アドベンチャーエピソード |
男性用or女性用 | 女性のみ |
エピソードジャンル | 日常 |
エピソードタイプ | ショート |
エピソードモード | ノーマル |
シンパシー | 使用不可 |
難易度 | 普通 |
参加費 | 1,000ハートコイン |
参加人数 | 5 / 2 ~ 5 |
報酬 | 通常 |
リリース日 | 07月17日 |
出発日 | 07月24日 00:00 |
予定納品日 | 08月03日 |
参加者
会議室
-
2015/07/23-23:55
-
2015/07/23-23:52
-
2015/07/23-23:44
プラン、提出したわ。
無事に成功する様…牛乳一気飲みで願掛けしておくわ!(ごくごくー) -
2015/07/23-23:36
-
2015/07/23-23:36
-
2015/07/23-23:36
合図の件、カルラスさんの合図に従うよう入れておきました!
さて…これで大丈夫でしょうか…
あとは -
2015/07/23-23:20
たまには拙者です(≧∀≦)
プラン提出しましたっ -
2015/07/23-22:08
>合図
ああ、こちらは合図をする、としか書いていないので
もしよければ書いてもらえるとありがたい
こちらのプランは完成し、提出した
あとは細かい修正などが必要であれば都度していく -
2015/07/23-21:38
カルラス:
>範囲攻撃
了解した。下がるタイミングはどうする?
よかったらだが、タイミングについてはこちらで書こうか。
イルカたちが集まる時を見計らって手を上げ合図し、下がる…それでどうかな。
>首を隠す
バカンスで来ているそうだったからな…お洒落としてなら変な話じゃないと思ったが、確かに無理そうだな。
すまんな、戦闘時はなるべくチョーカーを守る様に立ち回るとするよ。
>神人の行動
こちらも、周囲を警戒してなるべく前線には出ない様にするそうだ。
装備は一応クリアライトだが…海面に光を映しても、イルカを呼び寄せる手伝いはあまり出来そうにないか。 -
2015/07/23-20:25
私はクリアライト持ってくけど、これは念の為ってかんじで、あまり前線には出ないでおくね
はーちゃんも手裏剣投げて攻撃してくかんじかなぁ
陽炎使うなら、他の囮役の人とまとまって前へ出るのがいいかな?
というわけで、プランしてます -
2015/07/23-05:56
ヴァルギア:
ディエゴの言う通り首を護る物って用意できそうにないよな。
出来るのは、攻撃くらいそうになったら両腕でガードするくらいか?
盾持てねーし。
オレも祥も遠距離攻撃組に加わりたいと思ってるぜ。
一応、祥が水剣「ブラッド・シー」持ってんだけど、あいつ前線に立たせるの怖えから。
オレはダブルシューターⅡで連射しようと思ってる。狙いはヒレ系かな。
泳ぎのスピードが落ちればジャンプとか諸々に影響出んじゃねえかな?
そしたら前衛も攻撃当てやすくなるだろうし。 -
2015/07/22-22:23
急な戦闘らしいから、首を守る何かを用意することはできないんじゃないか?
アプローチ使用で行くなら…
アプローチの効果で引き寄せ、固まったところでグレネードショット(範囲攻撃)を撃ってみようと思う
カルラスには一旦イルカと離れてもらう必要があるが。
ハロルドはジェンマでの支援を予定している。 -
2015/07/22-20:55
カルラス:
途中参加のうえ、出発日ギリギリでの参加ですまないな。
ロイヤルナイトのカルラス・エスクリヴァだ。神人は向坂 咲裟。
よろしく頼むよ。
>5匹同時
囮がある程度呼び寄せた上で、私の『アプローチⅡ』での後押しはどうだろうか。
先にアプローチをするという手もあるだろうが…敵は頭が良い様だからな。初手で失敗した場合、相手に警戒されてしまう可能性が高い。
ある程度囮に引き付けて貰い、スキルにひっかけ、敵を引き付け落ち着いて各個撃破…という形になると思うんだが…どうだろうか?
>チョーカー
ふむ…狙われると厄介だな。
首元をストールやらなんやらで隠しておく…というのは、まぁ心許ないか。 -
2015/07/22-16:50
>5匹同時
囮が上手く呼び寄せるぐらいしか思い付かないけど、なんかもう一押し欲しいなー。
でも、やっぱ思い付かないけど。どどど。
>陽炎
分かったよー。まだスキル1つしか装備できないから、陽炎だけになっちゃうけど。
武器は今のところ手裏剣にしてるけど、陽炎なら片手剣か片手鈍器も使えるよ。 -
2015/07/22-15:40
カガヤ:
>ディエゴさん
前に出るの、OKだよー。
ディエゴさんが射撃に回ってくれるなら笹ちゃんにも囮役入ってもらう事にするね。
ハイトランスしなきゃだ。
-
2015/07/22-14:47
カガヤが前に出てくれるなら、俺は射撃に専念しても良いか?
水中は自分から進んで入りたくはないな
敵の得意な領域だし…
あと、斑雪くんの陽炎も加えてフェイントをかけられないだろうか
陽炎でイルカおびき寄せ→攻撃が来たらPG射撃→前線はカガヤにバトンタッチ
という風に…これで一匹くらいは確実に減らせるだろうし、敵も状況把握に時間が必要になると思う。 -
2015/07/22-14:18
(暑さにやられてころころ)
改めましてよろしくお願いします!
現状は
戦闘場所:小島の波打ち際
イルカオーガを引き付ける囮を立て、
引き付けてからの攻撃行動(ジャンプ等)をさせた所に
カウンターや離れて攻撃という流れで大丈夫かな?
俺も近接でしか攻撃できないし囮役に手を上げておくね。
※留意点
牙による攻撃→近接攻撃。
イルカオーガは賢い
→チョーカーを狙われるかも
(外されたり噛み千切られた場合、水中に入る際の行動に支障有)
確かに数が居るのは少し気になるけど…
ハイトランスして笹ちゃんにも囮に入ってもらった方がいいかな…
ネイビーライフルで離れて攻撃組に入ってもらう手もあるけど、
本職のPGさん達に比べると少し命中が下がるからどうなんだろー -
2015/07/21-23:49
五匹いるのが厄介だな
囮をたてるにしても、こちらの攻撃がワンパターンだと覚えて行動を読まれる可能性も出てくる
長期戦には持ち込みたくないよな、五匹全員まとめて範囲スキルにかけられるなら良いんだが。
囮をたてるなら、俺が海棲オーガの攻撃を軽減できる装備を持っているから立候補しておく。
-
2015/07/21-17:18
手屋 笹とパートナーのカガヤです。
よろしくお願いします。
会議室、拝見しておりますが意見出せるのは
もう少し後になりそうです…とりあえず挨拶のみですみません… -
2015/07/21-09:29
よろしくお願いします、星川祥とプレストガンナーのヴァルくんです!
私も勘違いしていて、水中戦だと思ってました(汗
陸地からでも攻撃できるならプレストガンナーであるヴァルくんや
弓などでも活躍できそうですね
クィンテロさんの案に賛成します!
泳いでる時やジャンプ中攻撃すれば少しずつでもダメージ与えられそうですね
ヒレを攻撃すれば泳ぎにくくなるだろうし(たぶん -
2015/07/21-07:29
わーい、集まってきた-。
よろしくおねがいしまーす。
私、ちょっと勘違いしてた。水中戦は絶対じゃないんだね。
こっちは陸上から出発でいいんだ。
で、「鋭利な歯による攻撃が主体」ならあっちは近接戦狙いだろうし……。
誰かが囮になって波打ち際のほうへ近付いてって、オーガが囮に向かってジャンプしたら、そこへみんなでだーっと攻撃を畳み掛ける。
こんな感じが基本かなーって考えてみたんだけど、どうだろ?
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2015/07/21-00:15
ディエゴ・ルナ・クィンテロとハロルド、着任した
よろしく頼む
水中での戦いにならなければチョーカーを破壊される可能性はまだ低いと思う
連携されて集中砲火か、水中に引きずり込まれることが怖いな
ジャンプ中は恐らく泳いでいるときよりかは無防備だろうし、そのすきに尾びれを攻撃することができれば幾分楽になるんじゃないかと思っているよ。
あとイルカは両方の目で同じものを見ることが難しく、視力が0・1(水中)~0.08(陸上)、とのことだ
だからこそ超音波を使うんだろうがこれを利用できないもんかな。 -
2015/07/20-18:45
入っちゃったよん、なんにも考えてないけど。
上巳桃ですー、誰か来たらよろでーす。
うーん、頭がいいのか。
ってことは、チョーカー狙われたりするのかね?