【水魚】フラッグは君だ!(真名木風由 マスター) 【難易度:簡単】

プロローグ

 見渡す限り海。
 海底世界の水面にある小さな島は地上である為、スピリット・チョーカーが不要の場所だ。
 『あなた』達は、亀に乗ってここまでやってきた。

 この島には、魔法のヤシの木が生えている。
 ジュースにすると美味しいらしく、海底世界の人へのお土産としてもいいらしい。
 オーが討伐の必要があり派遣されるとは言え、海底世界の人々と友好を築いておきたい。
 誰かがそう言い出したこともあり、それならこの島にある魔法のヤシの木を彼らに贈ってはどうかという話でここへやってきたのだ。
 お土産にするヤシの実は、確保した。
 当然、自分達が飲む分もある。
 昼は新鮮な魚介類メインのバーベキューにするつもりだし、ヤシの実ジュースもあれば、ちょっとした贅沢ランチだろう。
 そこで、それだけでは味気ないという話になった。
 折角、見渡す限りの海、ある意味プライベートビーチのような状態なのだからそれらしく楽しみたい。
 ゲームをして、勝った順にこの贅沢を楽しんではどうか。
 そうした提案の下、では何のゲームをしようかという話になり───

 ゲームは、絆を試すビーチフラッグに可決された。

 目隠しをした精霊がうつ伏せになり、呼吸を合わせた神人達の合図で一斉スタート。
 自分のパートナーの声を頼りに神人の元へと目指す。
 距離は、30m程度しかない。
 障害もなく、一見簡単そうに見える。
 が、目隠しをして、うつ伏せの状態から起き上がって神人の声を頼りに前へ進んで、神人の元へ辿り着かなければならないのは、想像以上に難易度が高い。
 足元は砂浜、視界がない状態では足を取られ易くもある。

 さて、絆のビーチフラッグ。
 フラッグ役の神人に最も早く到着出来る精霊は誰だろうか。

解説

●ゲーム説明
・精霊はきつく目隠しされます。
(平等を期する為、神人は自分のパートナーではない精霊(こちらは任意で行います)の目隠しをします)
・精霊はうつ伏せで待機、呼吸を合わせて「スタート」と神人が言ったのに合わせ、うつ伏せ状態から、神人へ向かいます。
(出し抜き行為禁止。先に声をあげてもやり直しになる上、ビリ確定とします)
・神人は、精霊に自分がいる場所へ声をかけて誘導します。
(神人達の位置は、精霊がうつ伏せになった後籤で決められる為、精霊達はどこにいるか分かりません)
・神人の手を取ることで、ゴール。
・到着順にシーフード(今回はバーベキュー)とヤシの実ジュースにありつけます。

●消費jr
・シーフードのバーベキューの為に割り勘で1組辺り300jrを出費しました。

●注意・補足事項
・ビーチにいますので、全員水着をコーディネートいただくようお願いします。
(コーディネートいただいた水着によりましては、判定にプラスの補正が掛かる場合があります)
・足元は砂浜です、転ぶ可能性もあるかもしれません。
・ちょっとしたハプニングはあるかもしれません(プランに書いていただいても絶対発生するとはお約束出来ません)が、年齢制限が掛かってしまうようなハプニングにはなりえません。
・神人のスタイル(お胸のサイズ)、精霊がそのスタイルを持つ神人の水着姿をどう思っているか書くとちょっとしたハプニングの確率が上がるかもしれません。
(この為、お色気関係がNGである場合はその旨をウィッシュリストへ記載してください)
・勝負とは言え、仲良く!

ゲームマスターより

こんにちは、真名木風由です。
今回は、ちょっとしたゲームを楽しんでいただきます。
目隠しの精霊を導けるよう、神人の皆様は頑張ってください。

ちょっとしたハプニングは全員が起こる訳ではなく、1~2人の方が起こってしまう程度です。(プランを受け取った後籤で決めます)

1位到着を目指して頑張ってください。

それでは、お待ちしております。

リザルトノベル

◆アクション・プラン

ミオン・キャロル(アルヴィン・ブラッドロー)

  スタイルに自信は…ある
「そうよ覚えてたの?…べ、別に今日の為に用意したわけじゃないからっ!」
「あ、ありがとう」嬉しいが照れて下を向く

■ゲーム
「綺麗な海に青い空。最初に独占したいわよね、アルヴィン頑張って」
「アルヴィンこっちよー!」
声、聞こえてるのかしら?
もっと大きな声で
「アルヴィン、とりあえず真っ直ぐ!!」
名前を連呼して自分だと分って貰えるよう努力

「右右…あ、アイツからだったら左になるの?えっと、とにかくこっちよ!」
精霊が近くに来たら手を伸ばす
勝ったら素直に喜ぶ

精霊に間違えられたら
「ちょっと、どういう事」むー拗ねる

「バーベキューおいしー
ヤシの実ジュースって初めて、これは喜んで貰えそうね」



クラリス(ソルティ)
  …負けられない戦いがここにあるわ!(拳を掲げ)

皆の水着姿が可愛いからって見過ぎよ、このムッツリ!
悪かったわねぇ、若くないし女子力不足で!
目を逸らすなんて失礼しちゃうわっ

■開始
優男の本気を見せる時が来たわね…
強者揃いだけど、負けたら承知しないわよっ

開始の掛声の後、大声で呼び誘導
そーるー!ソルティ!こっちよこっちー!
相手が近くまで来ると腕を思いっきり伸ばして迎え

愛想笑いではなく顔を緩めて笑う相手に鼓動が高鳴り
誤魔化すように相手の頬をぺちぺち叩いて
…す、砂っ、頬に砂がついてるわよ!

海鮮に絶品ジュース!美味しいっ
…その、ソルはいつも私が呼べば来てくれるじゃない?
そういうの結構悪くないなーって思ってるわ


桜倉 歌菜(月成 羽純)
  神人のスタイル:胸は大きすぎず小さすぎずな普通サイズ(本人は小さいかなと気にしている)

皆で声を掛ける状態だから、兎に角目立たなきゃ!
私にしか出来ない目立つ事…歌って、みようかな?
羽純くんが私の歌声に導かれますように
羽純くんに聞こえるよう、祈りを込めて歌います

私はここよ
貴方を貴方だけを待ってる

足元が危ない時はアドリブ歌詞で訴える

左前方に障害が
右側を駆け抜けて

変な歌だけど、気持ちだけは真っ直ぐなんだから

無事手を掴んで貰いゴール出来たら、羽純くんを労う
見つけてくれて有難う!お疲れ様、羽純くん

だって、目隠しの状態で私を見つけてくれるって、とても凄いと思うの!

バーベキューとヤシの実ジュース美味しいね♪



名生 佳代(花木 宏介)
  ◯絆
おほほ、清楚に水着でビーチをお散歩ですわ。
…ゲフンッ、でも勝負事は本気でやるしぃ!宏介が!
あたいの声ぐらい聞けばわかるっしょ。
後はバカ眼鏡次第だけど…。
宏介ぇ!右!右!左!ちょっと前!そのまま真っ直ぐ!
ふらふらしててチョー面白いんだけどぉ!
こっちこっち!
おつかれーっ!
あーウケた超ウケた!

◯目隠し
…ああいう風にはなりたくないねぇ。
ちぇっ変なこと連想しちゃったしぃ。(眼鏡を触りつつ)
べっつにー何でもないしぃ。
それよりバーベキューアタイの分も焼いといてね!

◯胸
たゆんたゆーん。
アタイの胸?
宏介とかどうせそーゆー興味ないっしょ。
触った!宏介なら殴る!そして後でからかう!
それ以外は…宏介のせいにする!


ウラ(アンク・ヴィヴィアニー)
  水着のパーカーを着て、フードを被り。
目隠し:…そういえば、アンク以外の男の人に触ったことない…。
不安になりつつ精霊さんの目の前に目隠し紐を。
「あー…えっと……失礼、します」
ほどけないようにすれば良いんだよね…。
「…痛かったら言って下さい」(微笑み)

開始:他の神人さんに合せてスタート合図。
1位じゃなくても2位でも3位でも良いかな。
「……アンクー、あーんくー!」
普段出したくない声を頑張って張り上げ続け。

到着:着いたアンクの手を握り返し「…はい、正解」と答える。
「え、別にバーベキューが楽しみだとか、じゃ…ないけど」(目が泳ぐ
どうでも良いような素振りをして、でも付き合ってくれるんだから優しいなぁ。



●戦いの前の戦士の皆さん
「……負けられない戦いがここにあるわ!」
「そうだね」
 拳を空に突き上げるクラリスの隣で、ソルティは彼女を見ないようにして応じる。
 すると、クラリスがソルティの耳を引っ張った。
「皆の水着姿が可愛いからって見過ぎよ、このムッツリ! 悪かったわねぇ、若くないし女子力不足で!」
「……誤解を生むからやめなさい。確かにみんな綺麗で可愛らしいけど……!」
 ここにいる女性陣は皆、タイプが異なる。
 同じデザインの水着を身に纏っている女性もいるが、感じる個性は違うから感心する。
 ……が、クラリスの水着姿は直視出来ないだけであって、クラリスが言っているようなことは断じてないのだ。
(目のやり場に困ってるんだよ!)
 ワンピースにしろとあれだけ言ったのに、何故ビキニ。
 クラリスの豊満な胸が強調されて───とは言えない。
 さて、目のやり場に困っている男性は、彼だけの話ではなく。
(……見た目よりあると思って……違うだろ)
 月成 羽純は目のやり場に困ると思いつつ、桜倉 歌菜の水着姿をチラチラ見ている。
 事故で胸を鷲掴みに……いや、そういえば、ビキニの紐も……そのときの歌菜を思い浮かべる羽純。
 歌菜は歌菜だから、スタイル(穏便な表現)を気にしなくていいと思って、そのままがいいと伝えたことだってある。
 が、やっぱり気になる。男の子だもん。
「目のやり場には困る……かな」
 アルヴィン・ブラッドローは目を逸らしながらも、ミオン・キャロルの頭をぽんぽんしている。
「ここに来るまでは意識してなかったけど……似合ってて、可愛いし。去年と違う水着だしね」
「覚えてたの……?」
「覚えてるよ」
 ミオンは、ちょっと驚いた。
 が、アルヴィンに目を逸らされていることが、逆に照れる。
「……べ、別に今日の為に用意した訳じゃないけど……ありがとう」
 嬉しいけど、上手く顔を見ることが出来ない。
 ミオンの視線は、砂浜に下りる。
「目隠しの準備、出来ましたっ!」
 羽純にチラ見されていたことも知らない歌菜は、目隠しの準備を整えていたのだ。
 ルールは決めた通りで、自分と契約していない精霊の目隠しを行うことになる。
「……そういえば、アンク以外の男の人に触ったことない……」
「そうなのか。機会がなければ、そうだろうな」
 ウラが漏らした一言にアンク・ヴィヴィアニーが反応する。
(そう言えば、水着姿は新鮮だ)
 基本的に厚着をしているから、スタイルを気にしたことはなかった。
 が、ウラは恐らく───
(口にしたら、ウラに無視され続けるだろう。いや、無視だけならいいが)
 アンクの脳裏には、発言後の未来予想図が確信に近い形で描かれる。
 うん、やめよう。
「また妙なことになった……」
 盛大な溜め息を吐くのは、花木 宏介。
「おほほ、清楚な休日のエッセンス」
「うるさい……。清楚に失礼だ」
 名生 佳代の振る舞いに宏介が物申すと、佳代は咳払いをひとつ(ついでに頭もひとつ張り飛ばした)
「勝負事は本気でやるしぃ! 宏介が!」
 佳代の言葉を聞いて、宏介がまた溜め息をついた。

「……痛かったら、言ってください」
「大丈夫だ、ありがとう」
 微笑むウラへ目隠しをされた羽純が微笑を返す。
 不安そうに「失礼します」と声を掛けられたが、手元はちゃんとしてくれていたのだ。
 羽純はウラによってスタート位置へ誘導され、うつ伏せで時を待つ。

「解けないようにするけど、痛かったら言ってね」
「大丈夫だ。メガネは……」
「ケースに入れて、佳代さんに渡しておくね」
 歌菜に目隠しされる宏介は、佳代とは違うと内心呟く。
(俺は男と見られてる節がないからな……)
 目隠しされたからか、佳代の水着姿を思い浮かべる。
 見なかったことにしようと思いつつ、ビキニから零れそうだとも思った。
 順位は───いや、それは自分の死亡への最速ルートだ、やめよう。
 興味ないと高を括っているようだが、俺も男なんで。

(家族以外に触られたこと、あまりないな)
 アンクは、不思議な感覚と思った。
 布の向こうには、太陽の輝きがぼんやりと見えるだけ。
「スタート位置まで案内するし」
「頼む」
 佳代が声を掛けると、アンクが依頼してくる。
 手を引き、スタート地点へ誘導しながら、他の精霊はこうも違うのかと佳代は考えた。
 ウラとアンクは見た限り、『そう』ではないだろう、が。
(……アタイには、ああいうのは無理だねぇ)
 なりたいなりたくないで言えば、言うまでもなく。

 ミオンは、「よろしくお願いします」と律儀に頭を下げたソルティへ目隠しをしていた。
「アルヴィンさんは、気合が入ってるみたいだね」
「悔しいからじゃないかしら」
 ソルティが話を振ると、ミオンは案外負けず嫌いなのだと言葉を返す。
 恐らく、この後のシーフードバーベキューへの影響以上に勝ちたいのだろう、と。
 拳を手に当てた姿からは、気合が見えたとソルティも思い出す。
「お互い頑張ろうね」
「ええ。負けないわ」
 ミオンは、クラリスへ善処すると言っていたソルティへ笑みを向けた。

 ソルティからナビをよろしくと言われていたクラリスは、アルヴィンへ目隠しを行っていた。
「こんなもので大丈夫かしら」
「大丈夫。痛くもないし、解けることもないと思う」
 確認するクラリスへ、アルヴィンは問題ないと返した。
「なら、良かったわ」
 クラリスは安心しつつ、何だか和やかそうなミオンとソルティを見る。
 自分を妹としか見てないあの優男は、やっぱりムッツリなんじゃないだろうか。
 悪かったわね、可愛くなくて。
 ……速やかに惚れさせるつもりだけど!!
「どうかした?」
 見えないアルヴィンは、クラリスの沈黙の理由が分からない。
 クラリスは、「何でもないわ」とアルヴィンの手を取った。
「スタート地点へ行くわよ。言っておくけど、負けられない勝負だからそのつもりで」
「負けるのは好きじゃないな」
 クラリスとアルヴィンがそう会話を交わしている最中、ソルティが(そういえば、手を引いて先導するんだった)とシスコンと独占欲の狭間のような感情でミオンに手を引かれていたのだが、それは彼しか知らない事実である。

 精霊が全員うつ伏せになった。
 神人達は籤で互いの位置を決め、声を揃えてこう言った。
「スタート!」

●30m先を目指して
(足を砂で取られると厄介だ。慎重に行こう)
 起き上がった羽純は砂の厄介さに気づき、まずは歌菜の声を捕捉することと意識を切り替えた。
 周囲は見えないが、このビーチには自分達しかいない分、歌菜の声を聞き分けるのはそこまで難しくない筈。
「アルヴィンこっちよー!」
 これは、ミオンの声だろう。
 「最初に独占したいから頑張って」と当初アルヴィンに声を掛けていたミオンは、大きな声を出すことを意識しているのだろう。
 アルヴィンが聞き分けるのは、そこまで難しくない筈。
 その時だ。

私はここよ
あなたを
あなただけを待ってる
前へ進んで
どうか気をつけて

(歌菜だ)
 一斉に声を掛ける状態ならば、自分だと分かりやすく伝えなければならない。
 歌菜は、得意の歌で自身と確実に分かってもらう手段を取ったのだろう。
 声の大きさよりも調子をつけて響かせる歌は、他の参加者とは異なる特色の為に判別し易い。
(了解)
 羽純は、歌が聞こえたと示すように右手を軽く挙げてから前へ進み始める。

 ミオンが大きな声で呼んだ為、アルヴィンはすぐに声を判別した。
「そーるー! ソルティ! こっちよこっちー!」
「……アンクー、あーんくー!」
「宏介ぇ!」
 まずは、聞き分けられるように声を張り上げる神人も多い。
(聞き逃しがないよう注意しないと)
 アルヴィンは心の中で呟き、自分が進みやすいよう腕を軽く曲げ、少し大きく腕を動かしつつ、先を急ぐ。
 腕を動かすのは、周囲に精霊がいないかを確認する為。
 精霊とぶつかった場合、足元が砂浜であることも考慮すれば、転倒もありうる。
 と、腕に何かがぶつかり、その拍子にバランスが少しだけ崩れる。
「……っと、あぶな! ごめん」
 何とか転倒しないで済んだが、アルヴィンは砂に用心した方が良さそうだと改めて気を引き締めた。

「わっ」
 アルヴィンの腕が当たった宏介は、バランスを崩した。
 目が見えている平時とは異なり、砂浜に尻餅をつく。
 前は見えないから佳代の声を聞き分け、言われた通りに動けば何とかなると思っていたが、指示に基づいて動くのは宏介である。
 足元の砂に対して少々無警戒であった為、衝突事故は免れたとは言え、体勢を整えることが出来なかったのだ。
(笑うな)
 佳代の声が、指示ではなく爆笑になって宏介は不機嫌になる。
 犬みたいな気分だと思っていたが、犬は爆笑されない。

右後方にアルヴィンさん、注意してね
左後方のソルティさんは、まだぶつからない
貝殻は落ちてないから、安心してね

 歌菜が歌う歌の歌詞は、大変おかしい。
(でも、きっと聞こえるように考えたんだろうな)
 ソルティは歌声で羽純が自分の前であると思いつつ、意外と難しいこのレースを楽しんでいた。
 クラリスの声は、ちゃんと聞こえている。
 足元慎重を心掛けつつ、応援してくれるクラリスにいい所を見せなければと急ぐことにした。

 宏介が転倒した為、ウラがアンクへ迂回するように頑張って声を上げる。
(やはり、砂に注意した方がいいな)
 見えない為、足元の砂に掬われる可能性を注意していたアンクは、より一層の注意を決める。
 ウラが普段大声を出さない分、新鮮である為に分かり易い。
 恐らく羽純がトップだろうと歌声から予想がつくが、大事なのはウラの声を聞いて前に進むこと。
(まだ前進で良さそうだ)
 宏介を迂回するように指示が出た後は、今の所前進だけ。
 が、砂に足を取られて転倒することだけは避けたいと考慮しつつ進む。

「宏介ぇ! 起きたら、右! もうちょい右! 行き過ぎ、ちょっと左に戻って! よーし、あとはまっすぐ!」
 佳代が声を張り上げる中、宏介が前へ進む。
「ったく、バカ眼鏡、何で転ぶし……」
 声自体は判別してくれたが、転倒は予想してなかった。
(まー、ふらふらしてチョー面白いんだけどぉ)
 こっちこっちと声を挙げつつ、佳代は後でふらふら歩く姿をからかおうと思った。

「まっすぐ! あ、ちょっと左!」
 右と言おうとして、アルヴィンからは異なると思ったミオンが修正しつつ声を上げる。
 声の方角だけで正確な進路を取るのは、恐らく難易度が高い。
 自分が思う左右とは逆に言わなければ。

まっすぐまっすぐ

(安定しているようだな)
 羽純は、歌詞の内容で歌菜の意を汲んで動いていた。
 砂で足を取られることがないよう注意はしているが、見えないのは変わらない。
 歌菜の指示に従うのが、得策だ。
(見えないとは、こんなにじれったいものだとはな)
 短い距離である筈なのに、中々ゴールとならない。
 が、絶対にこの手は歌菜を掴んでみせる。
(……今日は、ハンカチで縛ってはいけないしな)
 それがなくとも、この手で掴むと示したい。

●ゴール悲喜交々
 目隠しの羽純が、歌菜へ手を伸ばした。
 歌菜が手を差し伸べると、「ゴール」と歌うように告げる。
「やったよ! 1位だよ、羽純くん!」
「そうなのか。……順に来そうだが」
 目隠しを取りつつ、羽純が喜ぶ歌菜に応じる。
「お疲れ様、羽純くん。私に気づいてくれてありがとう! 凄い!」
「いや、歌菜の歌に助けられた。俺こそありがとう」
 難しかったと漏らす羽純の表情には、嬉しそうな安堵が見える。
 その表情が、歌菜には嬉しい。

 2人がそうやり取りしている間もレースは動いている。
(1位はもう到着したのか)
 歌が途絶えたから、羽純は確実に到着したとアンクは心の中で呟く。
 ウラは、順位に拘りを見せている様子ではなかったが……。
(バーベキューは楽しみにしていただろう)
 ウラは、理解ある両親に大切に育てられている。
 会話も続く方ではないし、自分に理解がない人の評価を気にする方ではない。
 好きなものがゲームやアニメだけあり、アウトドア派というイメージがある訳ではない。
 が、ウラの生活態度に物申したいアンクとしては、ウラがバーベキューを楽しみにしていたなら、出来る限りいい順位でと思うのだ。
 と、アンクの耳に、2位の声が届いた。

「正解よ。間違えたら、怒る所だったわ」
「着いて良かったけど……独占じゃなかったことは、ごめん」
 伸ばした手に手を重ねて貰ったミオンが笑みを見せると、目隠しを取ったアルヴィンは少し悔しそうに笑った。
 傍から見たら間抜けなこのレースも、ミオンの誘導のお陰で転ぶことなくゴール出来た。
 勢い余って転ぶんじゃないかとレース中は思ったが、ミオンが手を差し伸べたことと確実を考慮して進んだから、それらは杞憂に終わった。
「2位だし、別にいいわよ。それに、綺麗な空も海も……皆で楽しむものよ」
「それなら良かった。……あ」
 ミオンに満面の笑みを向けたアルヴィンは、視界に入ったその光景に思わず声を上げた。
 釣られて、ミオンも見た。

(今、何が起きているんだろう?)
 ソルティは、硬直していた。
 いい所を見せなければと急いだから、足元への意識に関する比重が軽くなったのは事実だ。認めよう。
 クラリスの声で近いと分かったから、より急いだ。
 腕を広げて迎えるからと言われ───直前で、砂に足を取られた。
「ソル! 危ない!」
 その声の直後、砂ではない何かが顔面に触れている。
 柔らかくて温かい。
 目を逸らしていたものではなかろうか。
 ソルティ、絶賛硬直中。

(声が途絶えている所からして、3位までは到着している)
 アンクはそう分析しながら、前進続行。
 でも、どうしてウラの声も途絶えているのだろう?
 が、軌道修正の必要があれば、ウラは声を出すと信じてアンクは前進。

(一瞬、声が止まった?)
 宏介も佳代の声が一瞬止まったことに首を傾げた。
 が、すぐに、佳代の声が復活したから、きっと他の精霊が順当にゴールした為だろうと思い直す。
「まっすぐ! 慎重に! 転んだら許さん!」
(何度も転ぶと思っているのか)
 やけに気合が入った声になり、宏介はちょっとムッとなる。
 佳代が気合入ったのには理由があるのだが、宏介がそれを知ることはない。(主にソルティの名誉の為)

 徐々に、ウラの声が復活してくる。
 アンクは足元に注意し、ウラの声の前に立つ。
 見えない為、手を探していると、何かが手に触れた。
「ウラだろう」
「……はい、正解」
 アンクが口を開けば、ウラの声が返ってくる。
 目隠しを取ると、声の通りウラの姿が目に映った。
「4位か。……悪かったな。バーベキュー楽しみにしていたのに」
「え、別にバーベキューが楽しみだとか、じゃ……ないけど」
「僕を侮るな」
 アンクは目が泳いでいると添え、ウラの細い手を握り返す。
 言わなくとも大体理解されていて、ウラはどうでもいい素振りをしていたのに、付き合ってくれたアンクの優しさへ少し口元を緩めた。
「後は、宏介君だけか」
 アンクが周囲を見回すと、歌菜とミオンがバーベキューをすぐに行える準備をしていて、羽純とアルヴィンがヤシの実を数えている。
 ソルティがクラリスに謝っているが……彼らに何があったのかとウラへ視線を向けるも、ウラはアンクに黙って首を横に振って答えようとはしなかった。
 アンクはよく分からなかったが、宏介に視線をやり、彼が佳代の元に到着するのを待つ。

(思ったより時間が掛かった)
 宏介が佳代の手を取った時、既に皆ゴールしていた。
「おつかれーっ! あーウケた超ウケた!」
「……バカにしているのかって思ったが、いつものことだった」
 笑う佳代に対し、宏介はやれやれと溜め息をついた。
 砂浜を見えない状態で歩くというのが、ここまで困難だったとは。
 佳代の指示を従順に聞いていれば(それはそれで不本意でも)、問題ないと思っていたのに。
「ところで、何で途中黙った?」
「……」
 宏介の問いに佳代は何故か黙り込む。
 分らず眉を顰めるが、アンクもよく分からないと首を振り、先に到着したウィンクルム達は視線を合わせない。
 釈然としないが、気にしない方がいいのだろう。
 そう宏介は判断し、そのことを忘れるのだった。

●勝負の時は流れて
 海の幸が順当に焼かれていく。
 順位で優先権があるものの、勝負そのものを楽しんだウィンクルム達の表情は和やかだ。
 ……ただし、彼らを除いて。
「クラリス、ごめん。悪かった」
 ソルティは、クラリスにひたすら謝罪していた。
 見えなかったからとはいえ、急ぐ余り、足元の砂への意識を疎かにするなど!
 その結果、齎したものは……。
「見えなかったんだから、仕方ないって言ってるでしょ」
「けど……」
「もうっ! す、砂っ! 頬の砂位落としてよっ!」
 尚も言おうとするソルティを遮り、クラリスはその頬についていた砂を軽く払う。
 スタートの時についていたと言うには、時間が経過し過ぎている。
 『あの後』、クラリスによって顔面に触れるものが砂へ強制変更された訳でもない。
 つまり。
「『次』は、ちゃんと摑まえるよ」
「なら、いいわ」
 ソルティの笑みが、愛想笑いではない。
(やっぱり、早く惚れなさいよ)
 じゃないと、レースそのものは楽しかったという言葉さえ心臓に悪い。

「歌の判別方法はやられたわね。確かに声の大きさ以外で気を引くなら、歌は有効よね」
「まず、私だって判って貰わないと、駄目かなって思って」
 最優先で食べる歌菜へミオンが声を掛けると、歌菜はそう笑う。
「歌詞自体は変になっちゃったけど」
「あれで俺もちょっと焦った。羽純はもうそんな前に行ってるのかって」
 軽く肩を竦める歌菜へ、アルヴィンが歌菜の歌詞で自分の現在の順位を理解したと笑う。
「だが、皆、転ばなかったんだな」
 宏介が呟くと、1位と2位であった2組のウィンクルムは一瞬黙ったが。
「砂に注意しなかったのは、宏介だけだしぃ。ほら、アタイの分も焼く!」
「佳代の分も焼けって……。順位は俺だけの所為じゃないだろう。大体お前こんなに食い切れないだろ!? 太り」
「宏介、それ以上いけない」
 佳代に不服申し立てた宏介を羽純が制する。
 宏介が何を言いたいか正確に理解した彼は、その先の結末も想像し、宏介の命(精神面)を守ってくれたのだ。
 が、佳代の目が笑ってないので、多分宏介は後程ヤシの木の裏側に連れて行かれるだろう(ホロリ)
「けど、ヤシの実のジュース、美味しいわね。喜ばれるのも分かる気がするわ。海の幸も絶品だし」
「……そう、ですね。バーベキューは……馴染みないのもあります、けど……ビーチで食べるから、より美味しく感じる気がします」
 クラリスがジュースで喉を潤す隣で、ウラも一緒にジュースを飲んでいる。
 順位こそ下の方だが、ウラはちゃんと楽しんでいるようだとアンクも一安心。
(……格差社会は、考えないでおこう)
 口にしたら、多分ウラ以外の神人からも怒られそうな気がする。
 アンクは、黙って海老を口に運んだ。
 自ら、死にに行く必要なんてない。
 それは、生きていく上で必要なこと。

 和やかにバーベキューは進んでいく。
「……ソルは、いつも私が呼べば来てくれるじゃない? そういうの、結構悪くないなーって思ってるわ」
「クラリスは、仕方ないね」
 その意味がどのようなものか、言ったソルティさえも分からないけど。
 見ていた佳代は、少し眼鏡に触れる。
 スタート前の出来事が頭に蘇ったのだ。
「どうした?」
「べっつにー何でもないしぃ」
 宏介に声を掛けられたが、佳代は言わなかった。
 変なことを連想したなんて、絶対に言うものか。

「楽しめたか?」
 アンクが声を掛けると、ウラは貝と格闘しながら頷く。
「なら、いい」
 そう言ったアンクが海に視線をやったのに倣って、ウラも海を見た。
(今の距離感、悪くないと思ってる)

「でも、やっぱり優勝じゃなかったのは悔しかった」
「ハンカチがなかったから、気合を入れたつもりだ」
 アルヴィンの言葉に羽純が笑みと共に返す。
 ミオンが、歌菜が真っ赤になっていることに気づいた。
「どうかした?」
「ナンデモナイデス」
 そう答えるのがやっとの歌菜。
 思い当たる彼女は、心の中で叫んだ。
(羽純くん、最高にズルイ!!)
 私ではなく、私の心をフラッグにしたなんて。



依頼結果:大成功
MVP
名前:ミオン・キャロル
呼び名:ミオン
  名前:アルヴィン・ブラッドロー
呼び名:アルヴィン

 

名前:桜倉 歌菜
呼び名:歌菜
  名前:月成 羽純
呼び名:羽純くん

 

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター 真名木風由
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 女性のみ
エピソードジャンル コメディ
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 5 / 2 ~ 5
報酬 なし
リリース日 07月11日
出発日 07月17日 00:00
予定納品日 07月27日

参加者

会議室

  • [10]ウラ

    2015/07/16-23:14 

    アンク:
    …改めて僕からも挨拶させてもらう。
    アンクだ。

    負けたら焼く、のか…?
    いや、それも悪くはないのか。

    ウラ:
    …んー、なら緩くかかっても良いなぁ…。
    でも魚介類ってお肉と違う触感が楽しめるかな?
    あ、プランは完成です。

  • [9]ミオン・キャロル

    2015/07/16-21:48 

    プラン提出っと。
    ソルティとクラリスも久しぶり、よろしく(笑顔で片手をあげる)

    羽純は心が広いな。
    食べれずに見てるだけって確かに罰ゲームだ。俺は肉が食べたい。

    ミオン:
    肉…あるの?
    エビや貝のバター焼きとかじゃないのかしら。
    私は焼きトウモウロコシが食べたいわ!

  • [8]桜倉 歌菜

    2015/07/16-00:50 

  • [7]桜倉 歌菜

    2015/07/16-00:50 

  • [6]桜倉 歌菜

    2015/07/16-00:23 

    あらためまして、桜倉歌菜と申します。
    パートナーは羽純くんです。
    皆様、よろしくお願いいたします♪

    ヤシの木の贈り物、とても素敵です!喜んで貰えると良いですよねっ

    うふふ、皆様との競争を楽しみながら、一位を目指してみようか、羽純くん♪

    羽純:
    負けたら負けたでバーベキューを焼く役もオツなものだろ。たぶん。

  • [5]名生 佳代

    2015/07/16-00:09 

    おほほ、清楚ビーチフラッグですわよ!
    「何だその妙なスポーツは」

    …ゲフンッ。
    キャロル姐さんとアルヴィン兄さん、クラリス姐さんとソルティ兄さん、歌菜姐さんと羽純兄さんは久しぶりだねぇ!
    ウラ姐さんとアンク兄さんははじめまして!
    姐さん達との競争チョー楽しみなんですけどぉ!

    じゃあいっちょ、ウチラの絆ってゆーの、試してみようじゃん!
    宏介ぇ、しっかり1位目指して頑張るんだしぃ!

  • [4]クラリス

    2015/07/15-11:18 

    クラリス:
    皆さんよろしく!クラリスよ
    ヤシの実、喜んで貰えるといいわよねっ

    ふふふ…綺麗な海!輝く砂浜!海鮮バーベキューに絶品ヤシの実ジュース!
    そして目の前には水着の美少女とイケメン…最高ね!(ガッツポーズ)

    折角だし、ソルには1位を目指してもらうわ
    バーベキューの為に頑張りなさいよね!

    ソルティ:
    あはは…お手柔らかにお願いします(苦笑)
    あ、でも負けたら皆が先に食べてるのを見てなきゃいけないのかな?
    だったらちょっと悔しいかなぁ…頑張るよ

  • [3]ウラ

    2015/07/15-02:07 

    どうも、ウラとアンクです。

    …体型には自信ないです。水着も着こなせるかが問題なんですよね。
    でも、まあ、アンクはやる気みたいですし、
    1位じゃなくても楽しめたら良いかなぁ…なんて、思ってます。
    宜しくお願いします。

  • [2]ミオン・キャロル

    2015/07/15-01:05 

    歌菜さん、佳代さん、お久しぶり。
    ウラさんは初めまして。
    皆さん、よろしくお願いします。

    やっぱり他の種族との友好には贈り物よね、とてもいい提案だと思うわっ!
    さっそく貰った水着が着れるし、やしの実ジュースに海鮮バーベキュー、
    アルヴィン、頑張って1位を取るのよっ!!(ごそごそと「ミルキーサマー」を取り出す)


    アルヴィン:
    これ、負けたやつがバーベキューを焼く係なのか?

  • [1]桜倉 歌菜

    2015/07/15-00:06 


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