妖精探しでハプニング(蒼色クレヨン マスター) 【難易度:簡単】

プロローグ

●いつもの

『困ったらウィンクr 「じゃないです」

 通りすがったウィンクルムの通訳へ、被って突っ込むA.R.O.A.受付職員。
二足歩行の黒猫が正面から現れたのを見た瞬間、すでに遠い目になっていた。
普段はプリメール自然公園にしか出没しない、イタズラ好きの猫型妖精ケット・シー。
一般人には聞こえない自分の声を、唯一聞いてくれるウィンクルムに何度か助けてもらってから、
すっかり『困ったらウィンクルム!』が合言葉になってしまったらしい。
受付職員の間でもお馴染みになり始めたケット・シーの言葉に、だから何でも屋じゃないと……と間髪入れず遮りたくなるものである。

 出鼻をくじかれたケット・シー、ぷくぅっと小さな頬を膨らませている。
まぁまぁと通訳役のウィンクルムに双方なだめられてから、ようやく受付職員は溜め息と共に先を促した。
そのケット・シーからのお願い事はこうである。

『妖精の森で、生まれたばかりの小妖精たちがいなくなってしまった。
 探すのを手伝って欲しい』

「…………あの、すいません。他の妖精たちや妖精王は……?」

 それはウィンクルムが手伝う必要があるのか、と暗に言っている受付職員。
ケット・シー、髭をピンと伸ばしてすぐに告げる。

『勿論みんなで探してるにゃー! でも人手が足りないにゃっ。
 この時期は、紅月ノ神社や他でのお祭り準備に、妖精たちもお手伝いに行ってるのにゃ!
 海や山でも、ニンゲンが迷わないようにちょっぴり助けに行ったりもしてるにゃ!』

 おおう。妖精たち意外と忙しいんですね。
ぐうの音が出なくなった受付職員は、ケット・シーのお願いを任意として掲示板に貼り出すしか無かった。

 ケット・シー曰く、何でも普段は小さくて見えにくいらしい小妖精たち。
夜になると蛍の如く光るので、見つけやすいだろうとのこと。
集まったウィンクルムたちは夜を待って、ケット・シーと共に出発するのであった。

解説

●迷子の小妖精を探しに、夜の妖精の森へ!

◇妖精王の祝福により、妖精の羽を生やしていざ出発☆

真っ暗な森の中でも足元照らす灯り代わりにはなる、ということで
妖精の森捜索の間だけ、背中に淡く光る妖精の羽が生えます。
飛べますが高さは3m程までが限界。

◇普段は人間が足を踏み入れない森の奥にて、不思議植物の落とし穴!

・体重あるモノがその上を歩くと、柔らかくなった土が崩れ落とし穴に。
 土中に眠る『クッション花』がぽよんぽよんと受け止めてくれるので、怪我は無し。
 【必ず神人精霊2人共が同じ穴に落ちることになります】

・穴の深さは4m程。羽で飛んで手を伸ばせば縁に届きます。
 神人さんが上がるのを、下から精霊さんが押し上げて手伝っても良いでしょう。
 スカートの神人さんは気をつけて……☆

・穴から出た後――
 クッション花は、落ちてきた者に甘い香りの花粉を付けて遠くに運んでもらう習性。
 その花粉から漂う香りには、異性に惹かれる効果があるとか。
 どうしてか互いの顔を見るとドキドキする、そばに居るだけで触れたくなる、等。
 他の組と出会って、相手のパートナーにときめいて本来のパートナーがやきもき……なんてことも?
 効果は捜索が終わる頃まで。

※他の組と出会う場合、お互いにプランに影響が出ると思われるので
 会議室にてご相談の上プランにご記載下さい。
 基本は1組ずつ個々の描写となります。

◇1組につき、1人の小妖精を発見。

場所はお好きに設定して頂いて構いません。
木々の上、蔓に絡まっていた、滝の裏などなど。
遠目にも光って見えるので、見つけるのはそれ程苦労しないでしょう。

◇落とし穴に落ちた時、お金を落としたらしい……!

1組につき<300Jr>消費。妖精王……いつか返してくれないかしら……(戻りませんごめんなさいっ)

ゲームマスターより

初めましてな方もいつもお世話になっております!な方もコンニチハ!
そろそろ忘れられそうで慌てて顔を出した、蒼色クレヨンでございます!

久しぶりで張り切りすぎて色々盛り沢山になった気はしています……っ
プランの字数きつかったら申し訳ないですッッ

ケット・シーは、適当にうろちょろしていますのでお気になさらず☆
小妖精を見つけた後の、ウィンクルムたちが森入口へ戻る際の道案内で出てくる程度の予定です。

リザルトノベル

◆アクション・プラン

夢路 希望(スノー・ラビット)

  妖精さん、心配ですね…
早く見つけてあげたいです

羽姿を褒められたら頬染めて
ユキも素敵です、とぽそぽそ

飛んで探そうとするもなかなかコツを掴めず
一先ず歩いて探す事に
…あっ
あそこ、今、光った気が
…っ!?
まさか落とし穴があるなんて
ユキのおかげで怪我はないです
…結構深そうですが出られるでしょうか

支えられながら飛んで何とか上がれれば
ありがとうございます、と回されたままの手にドキドキ
今は恥ずかしさより無償に触れられていたくて言い出さず

さっきの光は…気のせいだったみたいです
ごめんなさい、としょんぼり
提案にはもじもじ
…慣れるまで、支えてくれますか?


木の上に妖精を見つけたら
探しに来た事を説明してケット・シーのもとへ



リヴィエラ(ロジェ)
  ※運動オンチなので、飛んでいる時もフラフラ

リヴィエラ:

わ、わわ、ロジェ、待ってください~!

(あたふたと手足をバタつかせると、穴の中へ落ちてしまう)
あいたた…ろ、ロジェ、宜しいのですか?

(あわわわ、でもどうしよう、スカートだからその…下着が見えてしまうわ。
ああ、胸がドキドキしてる…私今、ロジェに下着を見られているんだわ)

(穴から出た後、花粉の効果でロジェにドキドキして、彼の腕に抱き付く。
胸が彼の腕に当たる)
きゃっ、私ったら何を…も、申し訳ございませ…ろ、ロジェ…?

※妖精がいるのは木々の上
妖精を驚かせないよう、そっと呼びかけ(スキル『メンタルヘルス4』)



リオ・クライン(アモン・イシュタール)
  ケット・シーに関わるのはバレンタインの時以来だな。(EP27参照)
小妖精とは一体どんな妖精なんだろう?

・妖精の羽が生えました
「凄い・・・凄いぞ!私達が妖精になったようだ!」←実際に飛んでみたりする
・落とし穴に落ちました
「えええええっ!?」
・穴から先に出ます(スカート着用)
「見るなよ。絶対に見るなよ!」
「ちょっ、変なところ触るなぁ!」
・穴から出た後にドキドキ
「ん?何だか甘い香りが・・・」
(な・・・なぜだ?アモンが素敵に見える!)
(駄目だ、いつもよりドキドキしてまともに顔が見れない!)
・小妖精を発見、花の後ろに隠れてました
「これが小妖精・・・つまり妖精の赤ちゃんといったところか?」

※アドリブOK!


瀬谷 瑞希(フェルン・ミュラー)
  ケット・シーさんからの依頼なら、捜すべき生まれたての妖精さんは、子猫な妖精さんの姿をしているかもしれません。
そうでなくてもとても小さくて可愛いに決まっています。
是非捜しに行きましょう。

子猫は高い所が好きですから、きっと枝の上に登っているに違いないです。せっかく妖精の羽根もある事だし、樹の上を捜したいです。
いつもより高い視点は憧れです。
世界の見え方が少し違いますね。
上ばかり向いてたら、足元が疎かに。
ぽよよんと落ちました。そのまま落とし穴にも!
ミュラーさんに助け上げて貰いました。
とても頼りになります。
ぽーっと見つめてしまいました。
今日もミュラーさんカッコイイ。
彼にちらちら視線を向けつつ捜しますね。





 『みんなキレイに羽根はえたにゃー♪ よろしくおねがいにゃっ』

妖精の森の奥までやってきたウィンクルム一同。
妖精王の祝福により自身の背中に生えた、半透明に光輝く羽根をパタパタ動かしてみる。
全員にしっかりと羽根が生えたのを確認してから、ケットシーも肉球ふりふり、小妖精探しへ森の奥へと姿を消していった。

●穴にひゅ~んっ

 手分けしてそれぞれが探索に向かった、こちら森の東側。

「わ、わわ、ロジェ、待ってください~!」
「リヴィー、落ち着いてこうやって飛ぶんだ。こうして……」

 ふよふよ浮遊しながら、ロジェはリヴィエラの手を掴みバランスを取ってやる。
しかして運動が大の苦手なリヴィエラ。支えられているにも関わらずあっちへフラフラ、こっちへフラフラ。
この様子では顔から木にぶつかりかねない……、とリヴィエラの手を引きながら前方確認をロジェがしたその瞬間だった。

「ひゃ!?」
「おい、リヴィー!?」

 一生懸命手足をバタつかせて、地面を蹴って飛び上がろうとしたその時、突如足元が陥没した。
繋がれた手を離すまいと、引っ張られるがままロジェもリヴィエラに続き落下する。

「あいたた……」
「大丈夫か、リヴィー」
「はい。何か柔らかい感触がして……あら?」

 勢いよく落ちてきた2人を支え、まだ僅かにぽわぽわ揺れている大きな花弁。
トランポリンを柔らかくしたような感触の巨大花の上に、2人は乗っかっていた。
穴の高さを確認してから、ロジェはおもむろに両手でリヴィエラの腰を掴む。

「俺が君を下から持ち上げるから、じっとしているんだぞ」
「ろ、ロジェ、宜しいのですか?」
「自力で飛べるならいいが、……落ちるんじゃないか?」
「うっ……お、お願い致します……」

 リヴィエラはロジェに身を任せることにする。
が、ここで乙女的重大問題に気付いた。
(あわわわ、でもどうしよう、スカートだからその……下着が見えてしまうわ)
乙女の心模様には疎いロジェ。あっさりとリヴィエラを抱き上げれば上へと押し上げてやる。
その時、リヴィエラの耳が羽根の光に照らされて赤く染まっていることに気付いた。
(ん? 何を赤くなって……、!?)
ロジェさん、がっちり視界に入った事で気づかれたご様子。
(リヴィーの奴、白いレースの下着じゃないか……まさかいつもこういうのを履いて、……な、何を考えているんだ、俺は!)
(ああ、胸がドキドキしてる……私今、ロジェに下着を見られているんだわ)

 恋人に成り立ての頃より一歩前進している2人の、それぞれの胸の内は余裕なのか初々しいのか複雑である。
しっかり捉えながらも、こみ上げる欲望は押し殺そうとするロジェ。
恥ずかしいものの、愛しい相手のそれを許容しているリヴィエラ。
めくるめく想いに吸い寄せられるように、甘く香る花粉が穴から脱出した二人の衣服にしっかりと付着していた。

◆ ◆

「ケット・シーさんからの依頼なら、捜すべき生まれたての妖精さんは、子猫な妖精さんの姿をしているかもしれません」

 そうでなくてもとても小さくて可愛いに決まっています、きりっ☆と聞こえてきそうな瀬谷 瑞希の言葉が森の北側に響く。
(ミズキがそんなに小妖精探索にもえるとは思わなかった。女の子は可愛いものが好きだからかな)
子猫な姿をしているかもしれない、という瑞希の発想にフェルン・ミュラーは意外そうな眼差しを向けた。
普段淡々とした発言の多い瑞希の、萌えもとい気合の入った声を新鮮そうに聞きながら、
『瑞希は可愛いもの好き』、とこっそり心のメモ帳に綴ったミュラーが居たとか。

「ミュラーさん、是非早く捜しましょう。樹の上とかどうかな。
 子猫は高い所が好きだから、きっと枝の上に登っているに違いないです」

 ハッキリ断言するのが面白く可愛くて、ミュラーは瑞希の好きなようにさせてやる。
(あー、あれは妖精の羽根も早く使ってみたくてウズウズしてるのかな)
『ミズキは結構好奇心旺盛』と、ミュラーは心のメモ帳に以下略。
だって大事なコの新たな一面はちゃんと覚えておきたいからね。
しかしそこで、ミュラーは はたっと気付いた。

「あ、ちょっと待って。樹に上るのは小妖精を見付けてからにしよう。ミズキはスカートだから下から見えちゃうよ」

 中々に紳士。
だが一歩遅かったらしい。
いつの間にか羽根をパタつかせながら、樹に足をかけていた瑞希。
上にばかり集中していたらしく、枝に体重かけた右足がズルッと滑ったのをミュラーは捉えた。

「ミズキ!」

 受け止めようとミズキの真下、落下予測地点へ駆け寄ったミュラーの足元がズボーッと抜けた。
!? まさかの落とし穴トラップ!?
気付けば2人仲良く、ぽよよーんと落とし穴の底でバウンドしていた。

◆ ◆

 ―― ケット・シーに関わるのはバレンタインの時以来だな。
あの時は、そこまで特別さを意識してチョコを渡したわけでは無かったけれど。

 森の西側。
リオ・クラインは、隣で興味深そうに妖精の羽根を動かしているアモン・イシュタールを横目でチラリと見た。
今や己の気持ちをしっかりと自覚してしまったリオだが、一体自分はこの男のどこがいいのだろう……と
悩む日々の中にその想いを隠している。

「マジで生えてんのか、この羽。ま、結構便利そうだな」

 浮いては着地を繰り返し、飛ぶ感覚を確認しているアモンを見れば
今は小妖精を探すのが先決だなと、けぶる気持ちを追いやって自分の羽根も動かしてみる。
妖精の羽根は、リオの身体を軽々と宙に浮かせた。

「凄い……凄いぞ!私達が妖精になったようだ!」

 思案顔から一気に無邪気な表情へと変化させて、リオはつい夢中で飛んだり跳ねたり。
そんな喜ぶリオを見て、まぁいつもの仏頂面よりいいと思うんだけどもよ、と呟いてから
今にも周囲の木々にぶつかりそうなその姿へ声をかける。

「あんまはしゃぐなよ、危ねぇし」

 言った矢先だった。
アモンの正面に着地したリオの足元が抜け、リオの姿がスットーンと消えたのは。

「えええええっ!?」
「うお!?」

 更に、アモンが立っていた所もリオが崩した地面とヒビで繋がったと思うと、連鎖さで脆くなり。
あっという間に巻き込まれ落ちることとなった。

「おいおい、お嬢様が重いせいか?」
「そんな訳あるか!」

 穴の底にて。反射的に怒るも、……そんな訳ない、よな……?と思わず過ぎる。
体重に関しては複雑な乙女心がリオとて働く。意識している相手からなら尚更である。
そんなリオの百面相にクックッと面白そうに零してから、この元気さなら怪我は無さそうだなと確認しアモンは見上げた。

「お嬢様、先に上がりな。届かねー分は仕方ねぇから俺が押し上げてやる」
「わ、分かった」

 リオも地上を見上げれば、確かに自分一人の力では少し手が届かなそうで素直に頷く。
が、羽根で飛び上がってからが少々すったもんだ。

「見るなよ。絶対に見るなよ!」
「頼まれたって見やしねぇから安心しろ」
「ちょっ、変なところ触るなぁ!」
「いちいちうるせぇな、お前は!」

 スカートの中身問題について、しばし穴の中で声が響き渡る。
見たら確実に殺されるだろ、とアモンも分かっている。
分かっているがこれだけ騒がれると、『嫌がらせで見てやろうか……』と邪悪な念が横切ったとか。

◆ ◆

「妖精さん、心配ですね……早く見つけてあげたいです」

 夢路 希望の寂しそうな囁きが夜の森に溶ける。
白い長い耳でその声を拾えば、スノー・ラビットも心配そうに頷いた。
そんな希望の憂いの表情が、妖精の羽根が生えた瞬間パッと輝いて消えていけば、スノーはホッと安堵する。

「凄いね……本物の妖精みたい」

 闇に溶けるとこなく淡く光る羽根を、希望ごと眩しそうに見惚れてから
スノーは一言、心からの言葉を紡いだ。
真っ直ぐな褒め言葉に頬を染めながら、希望もスノーの背中に生えた羽根を嬉しそうに眺め、『ユキも素敵です』、とぽそぽそ呟く。
勿論、その優しい言葉はしっかりとスノーに届き、微笑みが浮かんだ。

 早々に飛ぶコツを掴んだスノーと、まだ飛ぼうとするとふらつく希望。
希望を焦らせないよう、まずは歩いて探そうかとスノーは提案した。
さり気ない気遣いに気付いて、希望は心がじんわり温かくなるのを感じながら、並んで森の南付近を探索し始める。

「……あっ。あそこ、今、光った気が」

 気になった場所へ駆け出す希望の後へ、スノーもすぐに続く。
夜露濡れる草を分け行った瞬間、希望の態勢が突然崩れた。
それに気付き咄嗟に彼女に手を伸ばし、小柄な体を引き寄せ抱え込むスノー。
そのスノーの足元も今まさに落下した。

「……っ!?」

 突然の浮遊感。直後の、ぽわ~んっと柔らかい衝撃。
希望は何が起きたのかとスノーの腕の中から辺りを見渡した。

「……大丈夫?怪我してない?」

 落とし穴に落ちたのだと希望が気付いた時には、尋ねながらも念入りに希望の体を凝視するスノーの、不安そうな顔があった。

「ユキのおかげで怪我はないです。ユキは?」
「僕も平気。花がクッションになったみたい」

 座っている花弁を叩きながら、やっとスノーも緊張を解いた。
が、別の緊張がすぐに訪れることとなる。
庇う為抱え込んだぬくもり。愛しいコの顔がこんな真近に。

「……結構深そうですが出られるでしょうか」

 希望も照れくさそうにそっと顔を放しながら、地上を見上げた。
不安げな呟きを聞けば、早く払拭してあげなくては、という一心で、スノーもドキドキする鼓動を抑え
「見てくるよ」と妖精の羽根を広げた。
幸い、自分が手を伸ばせば上がれそうだ。調べ終えるとすぐ下へと戻り。
まだぎこちなく飛ぶ希望は、スノーにしっかりと支えられながら、今度は2人で飛び上がるのだった。

●それは甘く芳しく

(ど、どうしてかしら……ロジェの顔を見ると……)

 穴から出てから数十分。
先程自分を受け止めてくれた花、その花粉の香りが、リヴィエラの鼓動を高鳴らせていた。
確かに恋人になってから、次第にロジェの独占欲を身を持って知ることになり、その度にドキドキすることは多かったけれど。
横顔を見るだけでこんなに心臓が跳ねるなんて、まるでもう一度恋をしたかのよう。
(触れたい……貴方の温もりを感じたい……)
とうとうその衝動が体を動かした。
ロジェが一瞬硬直する。
腕に温かく、そして柔らかくふくよかなものを感じたのだ。
足を止めたロジェを見上げると、頬が赤く染まっていることにリヴィエラは気づいた。
そして改めて自分の今の体勢を考える。ロジェの片腕にしっかりと密着した身体。そこに押し当てられ少し形を変えた膨らみ。
………!?

「きゃっ、私ったら何を……も、申し訳ございませ……っ」

 予想外に大胆な行動をしていたのだと、我に返ったリヴィエラ。
咄嗟に体を離そうとした。……が、それはロジェの手で引き止められた。

「ろ、ロジェ……?」
「……良い。俺も君にこうしたいと思っていたからな。俺の事だけ見て、俺にだけ触れていろ」

 花粉の甘い香りはロジェの心もずっとくすぐっていた。
ロジェの顔が染まったのは自分の行動のせいだとリヴィエラは思っていたが、実は穴から這い出た後、
ずっとロジェもリヴィエラを見つめる度、体温が上がるのを不思議に感じていたのだった。

「このまま妖精を捜しに行こう」

 リヴィエラの腰に手を回してロジェは微笑んだ。
はにかんだ表情を見上げ、リヴィエラも恥ずかしそうに頬を染めるも笑みを返し。

「……あっ」

 見上げたロジェの背後の木。
枝の隙間が僅かに光っているのがリヴィエラの視界に飛び込んだ。
顔を見合わせる2人。言葉無くとも視線でそっと頷き合えば、リヴィエラが幹へ寄って行く。

「今晩は。素敵な星空の良い夜ですね」

 優しい音色を小妖精の心へ届けるように。リヴィエラの言葉が怯える小妖精のメンタルにじんわりと安心感を広げる。
小妖精が落ち着いたタイミングで、ロジェは羽根の浮遊力も器用に利用しながら木を登っていく。

「もう大丈夫だ」

 ロジェの大きな手のひらに身を預け、小妖精は嬉しそうな光を瞬かせたのだった。

◆ ◆

「ごめんミズキ。落とし穴があることに気付かなくて、受け止めてあげられなかった。怪我は無い?」
「大丈夫です。その……助けようとしてくれたの、」

 嬉しかった……、と最後小声になって口の中に溶けた瑞希の言葉は、しっかりと伝わっていて
ミュラーの心配気な表情が和らいだ。
飛んでも届かないかな……と穴のふちを不安そうに見上げる瑞希へ、自分が「たかいたかい」の要領で抱き上げて
それから飛べば出れるよ、と提案するミュラー。
当然、一度恥ずかしそうに躊躇する瑞希だったが。
(頼もしいミュラーさん……に、ちょ、ちょっと触れて欲しいかもなんて……)
どこからか湧く想いに、気付けば瑞希は提案に頷いていた。
瑞希の腰をしっかり掴み抱き上げるミュラーの心中も、いつもより高鳴っていた。
掲げた所で、妖精の羽根をふわっと広げるその瑞希の姿が、とても神秘的に見えて。
(いつか見た悪魔の翼も、綺麗な黒髪と合っていて素敵だったけれど……これはこれで可愛いなぁ)
二人を支えていたクッション花は揺れる。その身から、甘い花粉を放ちながら。

「あ!ミュラーさん、妖精さんいたかも……っ」

 先に穴から出た瑞希の見上げた樹上に、蛍のように点滅する光が映った。
後から這い出たミュラーが瑞希の姿を捉えた時には、すでに羽根を使って樹上に飛び上がっており。

「ちょ、ミズキっ。危ないから俺が行くのに」
「ううん。いつもより高い視点は憧れてたんです。世界の見え方が少し違いますね」

 そう嬉しそうに言われては肩をすくめるしかない。
瑞希の手の中に、小妖精が保護されたのを確認してミュラーはニッコリと見上げ告げた。

「じゃあほら。今度こそ受け止めるから、下りておいで」
「えっ?」

 爽やかに両手を広げるミュラーである。
その姿を思わずぽーっと見つめる瑞希。甘い香りが鼻をくすぐる。
(今日もミュラーさんカッコイイ……)
どうしてだろう……こんなに、抱き留めて欲しい気持ちがこみ上げてくるなんて……
しばしチラチラと視線を向けていた瑞希だったが、小妖精を優しく、しっかりと胸に抱き込むと
ミュラーの腕へと舞い降りる。
キラキラ瞬く妖精の羽根を纏ったそんな瑞希の姿に、また目を細め見惚れるミュラーがいるのだった。

◆ ◆

「ん? 何だか甘い香りが……」

 見た!見てねぇ!のやり取り後、真面目に小妖精探しを開始するリオの鼻に
衣服から舞い上がった花粉がそっと香る。
首を傾げながら、ちゃんと探してるだろうかと振り返ったパートナーを視界に捉えると
突如リオの心臓が早鐘を打った。
(な……なぜだ? アモンが素敵に見える!)
胸を抑え鎮めようと試みるも、見つめる先のアモンがいつもより数割増しで男前に見えて。
(駄目だ、いつもよりドキドキしてまともに顔が見れない!)
ぶんっと顔を晒し、小妖精を見つけることに集中しようとする。

 必死に動き回るリオを見て、いつもと違った感覚を覚えていたのはアモンも同じだった。
(どうなってる……? リオの奴が小動物みたく可愛く見える!?)
妖精の羽根を閃かせ、その横顔はキラキラ輝いてすら見えて。
こいつ、こんなにイイ女だったか?
もっと確認しようとアモンは距離を縮めていく。
(くっ、撫でまわして愛でたい衝動が……!)
近づいた分だけ衝動は強くなった。
元来欲望に正直である身体は、なけなしの我慢をあっさり排除することとなった。

「っ!?」

 リオが固まった。すっぽりとアモンに抱きつかれ、頭までよしよしと撫でられているこの状況。
どんどんと顔が熱くなり、パニックに陥ったリオが取った行動は ――

「いやああああっ!」
「ぐぼあっ!」

 見事なアッパーカットがアモンの顎に炸裂したのであった。

 ひっくり返った視界に一輪の花。
強烈な痛みにやや我に返ったアモンが口を開く。

「なんか光ってんぞ」
「うん?」

 まだ火照る頬を両手で抑え、反省してるのかっ?と言わんばかりにアモンを睨んでいたリオだが
その言葉にアモンの見つめる先へ寄って行く。
花の後ろには、ちょこんと小妖精が隠れ震えていた。

「これが小妖精……つまり妖精の赤ちゃんといったところか?」
「ほぉ」
「つつくな!」

 ケットシーの時といい、キミは妖精をいじめるのが趣味なのか!?とアモンを遮りながら。
更に怯えてしまった小妖精へ、リオは優しく声をかけ控えめに手を差し出した。

「キミを探しに来たんだ。その、一緒に、帰らないか?」

 迷子の小妖精、リオとアモンを見比べると、アモンから隠れるようにリオの腕の中に飛び込むのだった。

◆ ◆

「ありがとうございます」

 穴から無事2人で出てくると、いまだ自分の体に回されたままの手に希望の意識は向けられ、鼓動が早くなるのを感じていた。
どうしてだろう。今は恥ずかしさより無償に触れられていたい……
でもそんなことを口にする自分は、ユキにどう思われるだろうか……

 湧き上がる思いを飲み込んだ希望の隣では、穴から出れた安堵感ではにかむ横顔を見つめているスノーがいた。
もっと触れていたい……
希望の笑顔を見つめれば見つめる程、甘い香りが強くなりスノーの衝動は増していく

「さっきの光は……気のせいだったみたいです……」
「下は結構探したし……今度は上の方を探してみない?一緒に」

 改めて先ほどの草陰を見ては、ごめんなさいとしょんぼりし出した希望へ
スノーは、そんなの何でもないよと込めた提案を口にした。
上の方、つまりは自分が希望を支えながら飛んで探すということ。
まだ、もう少し触れていたいという下心は上手に隠されて。

「……慣れるまで、支えてくれますか?」

 スノーの隠された思いには気付くことなく、希望も高鳴る鼓動に身を委ねたくなって
もじもじと正直な気持ちを伝える。
願ってもない希望からの問いには、幸せそうな笑顔で応えるスノーがいた。

 そんな2人が木の上に妖精を見つけたのは、ほんの数十分後。
小人よりも更に小さな体を羽根に隠して、光を点滅させている小妖精に、葉っぱの陰から希望は静かに声をかける。

「探しに来たの。もう大丈夫、一緒に帰りましょう?」

 希望の手に擦り寄る小妖精をちょっぴり羨ましくなりながら、スノーも微笑を向けて希望をしっかり支えながら
地上へと戻るのだった。

●ありがとにゃー!

 『良かった!こっちも見つかったのにゃ!?』と、タイミング良く現れたケット・シーに順番に導かれ、
全員が無事に森の入口にて合流した。

「……リオさんの小妖精さん、震えてますけど何かあったんですか?」
「ああ……この馬鹿者がちょっとな……」

 ほとんどの小妖精がケット・シーへ手渡されたものの、いまだリオの肩にしがみつくよう縮こまる小妖精を見て
瑞希が気遣わしげに声をかける。
リオは素知らぬ顔をしているアモンを指差すだけに留めてから、そっと小妖精に触れた。

「もう怖いことなんて何もない。みんな待ってるぞ」
「迷子になったら、必ずまた私たちが見つけてあげますから」
「……まぁ、迷子にならないのが一番だがな……」

 小妖精に微笑むリヴィエラの後ろで、聞こえないようにロジェが呟いたりもしつつ。
ウィンクルムたちの温かい眼差しに見守られた最後の小妖精、リオの肩からふわりと飛び立つ。
一度ウィンクルムたちの周りを嬉しそうに飛び交ってから、ケット・シーと共に夜の森へと消えていった。
各々がお疲れ様と挨拶しながら帰路につく。

「……ユキ? えっと手……」
「うん。ほらもう夜も遅いし、危ないからね」

 ケット・シーと戻る頃には、希望も大分飛ぶことに慣れていたが
自分がまだ心配だから、とスノーは握った手をずっとそのままにしていた。
―― 正直、まだ触れるのは少し怖いけど……そばにいないせいで、ノゾミさんが傷つくのはもっと嫌なんだ……
自分の葛藤より、想うべくは希望だと。スノーは決意を込めるかのようにその手を離さなかった。
結局、家に送ってもらうまで握られていた手。
花粉はとっくに夜空に舞い上がっていたけれど、伝わり続けるぬくもりにどこか嬉しそうにしている希望がいるのだった。



依頼結果:成功
MVP
名前:夢路 希望
呼び名:ノゾミさん
  名前:スノー・ラビット
呼び名:スノーくん

 

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター 蒼色クレヨン
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 女性のみ
エピソードジャンル ハートフル
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 4 / 2 ~ 4
報酬 なし
リリース日 07月09日
出発日 07月15日 00:00
予定納品日 07月25日

参加者

会議室

  • [7]瀬谷 瑞希

    2015/07/14-23:25 

    こんばんは、瀬谷瑞希です。
    パートナーはファータのミュラーさんです。
    プランは提出できました。
    可愛い小妖精さん達の捜索が
    皆さまの素敵なひと時になりますように。

  • [6]リヴィエラ

    2015/07/13-14:44 

    え、ええと…プランについてなのですが、
    あまり猶予もないですし、皆さまもやりたい事があると思いますので
    私達は誰にも遭わなかったという事で書いていきますね。
    お節介を申し上げた事、お詫びいたします(ぺこりとお辞儀)
    皆さまが楽しい時間を過ごせますように。

  • [5]リヴィエラ

    2015/07/12-23:15 

    ロジェ:
    俺はロジェという。皆、宜しく。
    (アモンを嫉妬深い目で見ながら、周囲に軽く会釈をしている)

    多少メタな話になるが、プロローグによると…

    1・他のウィンクルムには遭わない

    2・4組の参加者がいるので、2対2のウィンクルムで出会い、
    神人か精霊どちらかが相手のパートナーにべた惚れになる

    …のどちらかになるのだろうか?
    俺としては、リヴィエラがまたアモンと出会い、惚れない事を祈るばかりだが。

    PL:
    嫉妬は私も美味しいと思います!(ぐっ)

  • [4]リオ・クライン

    2015/07/12-21:30 

    みんな久しぶり、リオ・クラインだ。
    リヴィエラ達とは直接話すのは夏祭り以来だな。(微笑)
    アモンは別に気にしていないと言っているぞ。

    PL:
    一時的に共通の描写になる・・・という感じでしょうか?
    私的には一緒になってもかまわないし、面白いと思います。
    嫉妬とか美味しいし・・・(笑)

  • [3]リヴィエラ

    2015/07/12-13:30 

  • [2]リヴィエラ

    2015/07/12-13:29 

    リヴィエラ:
    あ、あの、こんにちは。私はリヴィエラと申します(お辞儀)
    まぁっ! リオ様とアモン様は、夏祭りでお世話になりました。
    アモン様、あの時は不躾な事をお聞きしてしまって…
    皆さまも、どうか宜しくお願い致します(にこりと微笑む)

    (PL:
    ・穴から出た後――
     クッション花は、落ちてきた者に甘い香りの花粉を付けて遠くに運んでもらう習性。
     その花粉から漂う香りには、異性に惹かれる効果があるとか。
     どうしてか互いの顔を見るとドキドキする、そばに居るだけで触れたくなる、等。
     他の組と出会って、相手のパートナーにときめいて本来のパートナーがやきもき……なんてことも?
     効果は捜索が終わる頃まで。

    ※他の組と出会う場合、お互いにプランに影響が出ると思われるので
     会議室にてご相談の上プランにご記載下さい。
     基本は1組ずつ個々の描写となります。

    …とあるのですが、この部分はどうしましょう…?(汗)

  • [1]夢路 希望

    2015/07/12-11:56 


PAGE TOP