にゃんこのおひろめ。(櫻 茅子 マスター) 【難易度:とても簡単】

プロローグ

●新入りがやってきた!
『にゃんこのたまりば。』
 その店は、その名の通りさまざまな種類、性格の猫がいて、サンドイッチをはじめ軽食を食べることができるお店である。血統書付の子から市街をさまよっているところを見込まれた子まで、のんびり、気ままに働いている。
 窓辺で気持ちよさそうに昼寝をする姿を眺めたり、遊んでとねだられたり、椅子代わりにされたり……。店内は穏やかな空気が流れ、訪れる人々に癒しのひとときを与えていた。
 さて。
 そんな『にゃんこのたまりば。』にはオトメという猫がいる。ふかふかと柔らかい白い毛、靴下をはいているかのように見える黒い足先、そしてお腹にはきれいなハート柄を持つ美人さんだ。とても気まぐれなこの猫は、椅子の下など人目に映らない場所、またはタワーや棚の上など高い場所にいることが多く、滅多に人に近づかない。だが、猫らしい気まぐれさがたまらない! というお客さんは多く、オトメにはたくさんのファンがいた。それだけでなく、ある時期からオトメのハート柄を見たお客さんから「好きな人から告白された」「好きな人から声をかけられた」「遊ぶ約束ができた」などお礼の報告が多数入った。その話はじわじわと広がりをみせ、今では「恋を叶える猫」としてちょっとした有名人ならぬ有名猫になっている。
 そんなこんなで『にゃんこのたまりば。』はそこそこの人気を誇っており、だからこそ一匹一匹の負担を減らすべく、少しずつスタッフも増えていたりする。
 つい先日も、新しい子がやってきた。ハルルと名付けられたその猫は真っ白で美しい長毛を持つ女の子だ。青と金、左右で違う色を持つ瞳が神秘的で、すでに何人もの店員が魅了されていた。とっても甘えん坊で、人にくっつくのも遊んでもらうのも大好きというギャップも最高だ。すぐに人気者になるだろうと店員のほとんどは確信している。
 ハルルが働きはじめるまで、あと少しだ。

●お誘いです!
 話を聞いたA.R.O.A.の女性職員は、ウィンクルムが羨ましくて仕方なかった。
 というのも、『にゃんこのたまりば。』という猫が働くカフェからウィンクルムに向けてあるお誘いが入ったのだ。
 それは、以下のようなものである。

 先日、新しい猫スタッフ『ハルル』のデビュー日程が決まった。
 ウィンクルムの皆さんは大変な毎日を過ごしていることと思うので、希望する方がいれば先行してお披露目したい。
 一日貸切にするので、思う存分猫たちに癒されてみては?

「ずるい~……私も行きたい……」
 とはいえ、たしかにウィンクルムは命がけで現場に立っている。癒しの時間は必要だろう。
 今度自分も行こう。そう心に決めながら、女性は希望者の募集をはじめるのだった。

解説

●やること
『にゃんこのたまりば。』で遊ぶ
 まったり猫たちと楽しんでもよし、オトメのお腹を狙ってもよし、ハルルと戯れてもよし。ご自由に!

●にゃんこのたまりば。について
個性豊かな猫たちが働くカフェ。
昼時は寝ている子が、夕方になると活発になる子が多いようです。おもちゃの貸し出しも行っています。
ひときわ注目をあびているのは「恋を叶える」と噂されるオトメですが、とても気まぐれなので滅多に人に近寄りません。
今回、新たな猫スタッフ・ハルルが初めて接客を挑戦します。

●にゃんこのたまりば。メニューについて
・サンドイッチ:300ジェール
 クリームを挟んだものが一つ、野菜とハムを挟んだものが二つ、計三つがセットになったサンドイッチです。
 猫のような形をしたパンを使っており、その愛らしさから高い人気を誇ります。

・にゃんこ仕立てのパフェ:200ジェール
 バニラアイスに猫の顔が描かれたパフェです。
 可愛らしく、またほどよい甘さで女性に大人気です。

・にゃんこぷちーの:100ジェール
 ラテ・アートが施されたカプチーノです。
 かわいくデフォルメされた猫と豊かな風味が楽しめます。

●消費ジェールについて
入場費一組『500ジェール』+軽食のお代金

●プランについて
・何時頃に行く予定か明記をお願いします。
 一日貸切ですので、時間によっては他ペアと遭遇する可能性もあります。

・オトメに会いに来た方は「ハート柄を見れたか」「実際にいいことがあったか(例:一緒に出かける約束をした等)」の明記もお願いします。

※親密度によっては、アクションが不成功となる可能性もございます。ご了承くださいませ。

●余談
アドリブを入れる可能性がありますので、苦手な方はご注意ください。
基本ペア毎の描写になる予定ですが、「同じ時間に来店していた○○さんと一緒に楽しむ」等もOKです!その旨を一言いただけましたら描写を入れますので、どうぞよろしくお願いします。

ゲームマスターより

閲覧ありがとうございます。櫻茅子です。
女性側で出した「にゃんこのたまりば。」ですが、男性側にもお邪魔させていただきます。
最近のエピソードの流れを汲めていない感がすごいので少しびくびくしております。が!癒しのひとときを残せたらと思っておりますので、いろんな方が来店してくださると嬉しいです。
では、よろしくお願いいたします。

リザルトノベル

◆アクション・プラン

スウィン(イルド)

  期待のルーキーちゃんに会いにきたわ
ハルルちゃん、一緒に遊びましょ♪素敵な瞳ね
(抱っこして撫で撫で
猫じゃらしを使って遊んでいると
イルドと猫のやり取りに気付き)
あらイルド、いい猫じゃらし(=尻尾)持ってるじゃない♪
にゃんこにモテモテで妬けちゃうわ~☆
(イルドの言葉に一瞬きょとんとした後にっこり)
さ~?どっちかしらね~?ふふ

(遊んだ後軽食
撮影禁止でなければ食べる前に軽食を携帯のカメラで撮る)
食べるのがもったいないくらい可愛いわね
ん、おいし♪サンドイッチもちょっとだけちょうだいっ
(太るぞと言われ)何も聞こえな~い
聞こえないったら聞こえないわ!

凄く楽しかった!ハルルちゃん達、今日はありがとね!


アキ・セイジ(ヴェルトール・ランス)
  *夕方来店

ランスは猫が好きだ
彼の言う猫の力に苦笑するも
うちにも大型の猫が居るから否定はしないよ

そうだったな
ランスは狼。猫じゃないな


カプチーノを2人分
ランスはパンもだ
「猫達にオヤツをあげても?」
ペッタリと座って、香りを楽しみ、猫もふ

ハルル君って君か(そっと撫で撫で
猫が気持ち良い場所はランスにこの前教わったから、実践
足の上にきたら静かに喜ぶ

それを口実にランスに用事を言う
「今、猫が乗ってて動けないんだ」ふふ
・飲物お変わり
・猫の玩具取って来て

猫は飼えないよ
任務で泊まりの時に困るだろ(ダーメ
ランスの耳は感情のパロメーターだな(しょげたのを撫でてやる

「それで、俺が猫にかかりきりになってのいいのか?」ふふ



セイリュー・グラシア(ラキア・ジェイドバイン)
  17時頃に行くぜ。
オレ達も猫を飼い始めたところだけれど
他所のにゃんことも触れ合いたいじゃん。

超人気のオトメも気になるけど。
デビュー間近のハルルちゃんが一番気になるな。
しかし誰と遊ぶかは猫の自主性に任せよう。
こちらから無理に近づかず、寄ってきてくれた子達と遊ぶよ。ハルル来てくれるかな。
可愛いなぁ。と目一杯ハルルを褒める。
猫が近くに居なくても、トンボの付いた猫おもちゃをピッピッと動かす。
トンボが勝手に動いてるって猫が思ったらきっと絡まりたくなるはず!
あとは紐をこちょこちょと動かすとか。
猫に遊んでもらうのが第一目的だから!

猫との戯れの合間にサンドイッチ食べよう。
にゃんこぷちーのも。
猫のおやつはある?



蒼崎 海十(フィン・ブラーシュ)
  19時頃に行く
フィンと外食した帰り道に
にゃんこ仕立てのパフェを頼む

猫って凄く好きだけど触れ合った事はない
触ってみたいけど、どうしたらいいんだ?
フィンが抱っこする猫を恐る恐る撫でる
柔らかくて可愛い…
え?いや、俺は(無理だという前に強引に渡される)
こ、こうでいいのか?猫にとって良い体勢になってるか、おっかなびっくり
ああ、なんて可愛いんだろう
フィンの視線に何だか恥ずかしくなる…締まりのない顔してたかな…

猫に囲まれ至福でパフェを食べる

オトメに会えたら嬉しいけど、簡単には会えないよな
恋は既に成就してるけど…フィンにどう接したらいいか分からなくて

帰り際沢山癒してくれた猫達にお礼を
有難う、また遊びに来るよ


カイン・モーントズィッヒェル(イェルク・グリューン)
  目的:ハルル達と遊ぶ
心情:あいつら元気でやってっかな……
手段:
注文→軽食3種類全て

「オッドアイの猫か……。実家の連中にはいねぇな」
※実家で猫を多頭飼いしている
ハルルの傍に腰を下ろす
いきなり頭撫でようとしても驚かせんだろ
「何もしねーから、らしく寛いでくれ。遊びたくなったら呼べ」
※猫好きなので普通に猫へ話し掛ける
ハルルが構ってくれるまでハルルや他の猫の仕草を見てるか
構われるようになったら、遊ぶ
「男扱いが上手いな、ハルル。将来は魔性の女だな?」
※言ってる内容とは裏腹に猫可愛がり
イェルは……何かあいつ苦手そうだな
扱い方知らなさそう
見てねーで、こっち来い
接し方、教えてやる
猫達が眠くなったら軽食食う



●ふたりを繋ぐ
「オッドアイの猫か……。実家の連中にはいねぇな」
 忙しい日々を送るウィンクルムに癒しを。
 そんな想いのもと貸切にされた『にゃんこのたまりば。』で、真白の長毛、青と金のオッドアイを持つルーキー・ハルルの傍に腰を下ろした『カイン・モーントズィッヒェル』はぽつりとつぶやいた。
 カインは現在、相棒である精霊『イェルク・グリューン』と二人、タブロス市内のマンションで暮らしているのだが、実家では猫を多頭飼いしている。そのため、猫の扱いには慣れていた。ふんふんとカインに興味を示すハルルに手を伸ばさないのも、「いきなり頭を撫でても、驚かせるだけだろう」という配慮からだ。
「何もしねーから、らしく寛いでくれ。遊びたくなったら呼べ」
 カインはハルルが慣れるまで、彼女やあちこちに転がる猫を眺めることにした。だが。
「んにー」
「なんだ、もう慣れたのか」
 もふり。手の甲にふわふわの毛が押し付けられ、カインはふと口元を緩めた。目を離さないでとでもいうようなタイミングだ。
「男扱いが上手いな、ハルル。将来は魔性の女だな?」
 ハルルの顎をくすぐると、ごろごろと気持ちよさそうに喉を鳴らしはじめた。日々整えられているのだろう毛は触り心地が抜群に良く、いつまでも撫でていられそうだ。
 来訪者にもすっかり慣れた様子のハルルに、カインは「ご自由に」と書かれたボックスから猫じゃらしをとりだした。
 ぴっぴっ。んにっ、にゃっ。
 猫じゃらしが素早く動くたび、ハルルの丸い手がぱしぱしと床を叩く。そして、その丸い手が増えるのにそれほど時間はかからなかった。

「猫、お好きなんですか?」
 遊びたい盛りの猫たちに囲まれるカインに、イェルクはそう尋ねた。
「ああ」
 そっけない言葉とは裏腹に、声や態度は猫への愛であふれていた。
 意外すぎる。
 イェルクは心のうちでそうこぼした後、あることに思い至り眉をしかめた。
(今のマンション、ペットOKだった筈……私に気を遣っている?)
 猫を飼えるのに飼っていないのは、自分への気遣いなのだろうか。
 しかし、カインは猫達と楽しそうにするばかりで、確認する隙はないように見えた。
(そんなに猫が好きなら、私などより猫と暮らせばいい)
 イェルクの状況は、ある意味置いてけぼりであると言えた。なんとなく面白くない。

 ハルルが「疲れた」というように足に寄り掛かってきたのをきっかけに、カインは猫じゃらしを操る手を止めた。
(イェルは……何かあいつ苦手そうだな)
 猫の扱い方を知らなさそうだ。カインの予想はぴたりと当たっており、イェルクはぼんやりと椅子に腰かけているだけだった。
「見てねーで、こっち来い。接し方、教えてやる」
「え」
「まずは挨拶がてら、手を出してみるといい。いきなり撫でようとすると、驚いて逃げることもあるからな。猫が興味を示すようなら撫でてもいいが、頭ではなく顎の方がいいだろう。覆いかぶさるように手を出されると怯える奴もいる」
 アドバイスは実に的確だった。イェルクはカインの近くに腰を下ろすと、怖々、というように手を差し出した。しかし、ハルルはぐいぐいと甘えにいく。
 今のイェルクには、「おっかなびっくり」という言葉がよく似合う。思わず、ふ、と。カインは笑みを含んだ息を吐き出したが、彼は気付いてないようだ。
 イェルクとカインの温かな手、そしてぽかぽかと暖かな陽光は、猫たちを心地よい眠りの世界へと誘う。気付けば、様々な猫が昼寝へと突入していた。
「何か注文すっか」
 昼時が近いこともあり、小腹が空いてきた。テーブルに設置されたメニューを覗き、イェルクはサンドイッチとにゃんこぷちーのを、カインは掲載しているメニューすべてを注文する。
「食べ過ぎではありませんか?」
「これくらい普通だろ」
 穏やかなお昼時。優しい空気が流れるカフェで、二人の時間は過ぎていく。

●猫のようなあなた
「ハルルちゃん、一緒に遊びましょ♪」
『にゃんこのたまりば。』を訪れた『スウィン』は、早速ハルルと戯れていた。ハルルはまっすぐ自分を目指してくれたスウィンを気に入ったのか、ごろごろと上機嫌に甘えている。
「素敵な瞳ね」
 整えられた真っ白な毛並。真ん丸な瞳。すりすりと体を寄せる甘え方。ハルルの接客に、抱っこしているスウィンの頬は緩みっぱなしだ。
 うりうりと頬を摺り寄せ、目一杯ふわふわの体を撫でていると、ハルルはぴょんと腕から抜け出した。だが、すぐに猫じゃらし咥えて戻ってくる。
「賢い子ね。いいわよ、遊びましょ!」
 羽飾りのついたおもちゃを振ると、ハルルをはじめ、数匹の猫たちが遊びにやってきた。愛くるしいその光景に、「全力で遊ばせてあげようじゃない!」とスウィンの腕に力が入る。
 神人の姿を見ていた『イルド』も、和やかな時間に頬を緩めた。フィヨルネイジャで立て続けに苦々しい夢を見るわ、クリームまみれになる依頼がくるわで最近大変だったのだ。ここは素直に心を落ち着けられる。
「……?」
 と、ディアボロの証の一つである尾に違和感を覚えて、イルドは振り返った。
「お、おい! これは猫じゃらしじゃないぞ?!」
 目に入るのは、尾に嬉々としてじゃれつく黒い子猫だ。
 小さなその手に大した攻撃力はないが、くすぐったい。避けようと動かすものの
「あ、こら。いてっ!?」
 子猫の野生スイッチを押してしまったらしい。たまに繰り出される力の入った猫パンチに小さく悲鳴をあげる。
「……もう、好きにしろ」
 どうあがいても猫のおもちゃになることは避けられないらしい。察したイルドは逃げることを諦め、ふと顔をあげる。と、にやにやと楽しそうにこちらを見ているスウィンと目があった。
「あらイルド、いい猫じゃらし持ってるじゃない♪ にゃんこにモテモテで妬けちゃうわ~☆」
「……どっちにだ?」
 妬いたのはイルドに対してか、それとも猫に対してか。
 反射的に口にして、イルドは眉を寄せた。馬鹿なことを言ってしまった。これでは、猫に嫉妬しているようじゃないか。
 恥ずかしさをごまかすように、イルドはスウィンから視線をそらす。
 スウィンは数秒、きょとんとした後――にこりと満面の笑みを浮かべた。
「さ~? どっちかしらね~? ふふ」
 真意を読ませない、飄々とした言葉。けれど笑みは、ふわり、花が咲いたかのよう。嫉妬が見えたのが嬉しいと、言外に伝えていた。
「遊んだらちょっとお腹が減っちゃったわ。何か食べましょ」
 ふう、と息をついて、スウィンは席についた。
「わ。メニューも全部にゃんこ仕立てだわ」
「随分凝ってるな。……一番量がありそうだし、俺はサンドイッチを頼むか」
「おっさんはにゃんこぷちーのと~、パフェも頼もうかしら」
 注文した軽食は、ほどなくして運ばれてきた。
「食べるのがもったいないくらい可愛いわね」
 工夫の凝らされたパフェたちは、思わずスプーンを入れるのをためらってしまうほど魅力的だった。だが、食べないのももったいない。スウィンは運ばれてきた軽食を携帯のカメラに収めると、パフェを一口、ぱくり。適度な甘さと冷たさが口の中で絶妙なハーモニーを奏で、自然と笑みが浮かぶ。
「ん、おいし♪ サンドイッチもちょっとだけちょうだいっ」
「太るぞ」
「あーあー。何も聞こえな~い」
「おっさん……」
「聞こえないったら聞こえないわ!」
「あっ!」
 隙をつかれ、イルドのサンドイッチはスウィンの口に収まることになる。けれど、まあ。
「おいし~♪」
 幸せそうなスウィンの姿が見れたからよかったとしよう。

 それからの時間もあっという間で――

 帰り際、スウィンは笑顔を浮かべ、イルドも満更でもない顔をしていた。
「凄く楽しかった! ハルルちゃん達、今日はありがとね!」
 そんな挨拶とともに店を出る。
 そして、また来てもいいかもしれないと、どちらともなく口にしたのだった。

●幸せはすぐそばに、なんて
 十七時、といえば、夕方に分類される時間だろう。だが、季節のせいか空は青く、昼といった方がいいような明るさだ。
 そんな時間に、『セイリュー・グラシア』と『ラキア・ジェイドバイン』という猫好き二人は、『にゃんこのたまりば。』を訪れていた。
(セイリューと猫を飼い始めて、解ったよ。彼は動物と遊ぶの大好きだ)
 二人は庭に迷いこんだことをきっかけに、黒猫のクロウリーと茶虎のトラヴァースを飼いはじめた。自宅では毎晩、子猫達とセイリューの大運動会が繰り広げられている。可愛がるのはいいことなのだが……はしゃぎすぎだとラキアは思う。
 ――カフェで大人猫との付き合い方をセイリューに知ってもらわなくちゃ!

「オトメも気になるけど、デビュー間近のハルルちゃんが一番気になるな」
 席に案内され、注文を済ませたセイリューはそう言いながらも、猫に近づく様子はなかった。猫の自主性に任せたいと思ったからだ。
 誰が来てくれるだろう。わくわくしながら待っていると、ととと、と真っ白な猫がやって来た。金と青、左右で違う瞳が印象的なその子は……。
「ハルルちゃんか?」
「みー!」
「よく来てくれたなー!」
 元気に返事をくれたハルルに、セイリューは満面の笑みを浮かべた。ひょいと抱き上げると、ハルルは嬉しそうにごろごろと喉を鳴らしはじめる。
「可愛いなぁ。未来の人気者を独り占めできてオレは幸せだぞー」
 甘え上手なハルルを褒めつつ可愛がりながら、セイリューはあとで猫のおもちゃを借りようと考えていた。トンボのついた猫じゃらしを動かしたり、紐を動かしたり……猫たちに目一杯遊んでもらいたい。と、店員がサンドイッチとにゃんこぷちーのを運んできてくれる。
 早速、とサンドイッチに手を伸ばすと、ハルルにじっと見つめられた。
「すいません、猫のおやつってありますか?」
「申し訳ありません、前は置いていたんですけど、猫ちゃんが食べ過ぎて肥満になってしまったこともあって、販売中止になっているんです。でもでも、ヘルシーでおいしいおやつを入荷する予定は立っているので、そのときはぜひ!」
 店員が宣伝をしっかりしながら下がると、セイリューは「ごめんなー」とハルルに謝った。だが、たしかにこれだけ可愛い子が揃っていたら、皆おやつをあげたくなるよなぁと納得する。まるまるとした猫ってかわいいし。
「ラテアートってすごいね。可愛い」
 ラキアの言葉に顔を向けると、彼の膝には灰色の猫がくるんと丸くなっていた。ロシアンブルーだろうか。足元にもちょこちょこと集まられており……頬が緩み切っている。天にも昇る気持ち、とでも思っていそうだ。
 と、ラキアの膝を占拠していた猫がぴんと耳を立て、降りてしまった。残念そうにしたけれど、足元の猫たちはお客さんに遊んでもらえまいかとつぶらな瞳で見上げている。ラキアはボックスにまとめられたおもちゃを持ってくると、ちょろちょろと動かしはじめた。おもちゃにあわせて、猫たちがどたどたと大移動する。
「……あれ?」
 そこで、ラキアは気付いた。遊びには混ざらないものの、近くにオトメがやって来ていたのだ!
 保護者のように見守るその姿。そしてお腹に見えたハート模様に、ラキアは感動した。
(オトメは恋を叶えてくれるって噂だけど、猫との触れあいで、もう既に幸運な出来事がたくさんだよ)
 それに。
(セイリューと一緒だしね)
 ちらりと向けた目線の先には、ハルルをはじめ寄ってきた猫たちに目一杯愛情を注ぐパートナーの姿がある。
 ――セイリューと一緒に、猫達と素敵な時間を過ごせて嬉しいよ。

 最後に。
 ラキアが当初の目的を思い出すのは、『にゃんこのたまりば。』を満喫し終えた後だった、という余談を付け足しておこう。

●猫と狼
「猫には『みぃ』って鳴いて見つめたら、相手を陥落させる力があるんだぜ」
 まだまだ明るい夕方の空の下。『ヴェルトール・ランス』は隣を歩く『アキ・セイジ』にニコニコと話しかけた。
 アキは苦笑するも、「うちにも大型の猫が居るから否定はしないよ」と足を進める。
「うちに猫? ……って、俺は猫じゃないからな?」
「そうだったな。ランスは狼。猫じゃないな」
 他愛のないやりとり。だが、これから向かう場所――『にゃんこのたまりば。』への期待から、自然と声は弾んだものになっていた。
 猫の逃亡防止のためだろう、二重に設置された扉を通り案内された席につくと、二人はにゃんこぷちーのを二つとサンドイッチを頼んだ。
「猫達におやつをあげても?」
 ぜひあげたい、という様子のヴェルトールに、店員は困ったように眉尻を下げた。
「すみません、肥満防止のためにおやつは用意してないんですよ。でも、要望は多数あがっているので、絶賛準備中です! 入荷された際はぜひまたいらしてください!」
 アキはふっと噴き出した。可愛い猫たちにおやつを貢ぐ客も、ぽっちゃりした子が出てくることも、容易に想像できたためだ。
 運ばれてきたにゃんこぷちーのには、デフォルメされた猫の顔が描かれている。自然と緩む頬をそのままに、香りを楽しむ。
「にゃあん」
「ん? どうした?」
 その時、一匹の猫がアキの足元にやってきた。ちょこんと座り、こちらを見上げる白い猫。ふわふわと柔らかそうな毛並、そして左右で違う瞳……。
「ハルル君って君か」
 アキは床にしゃがみこみ、そっと手を伸ばした。猫が触られて気持ち良い場所は、ヴェルトールに教わっていた。顎、頭に続いて、尻尾の付け根を優しく撫でる。ハルルはごろごろと喉を鳴らし、うっとりと目を閉じている。
「んみー」
 ハルルはまだ足りないというように、アキのひざ上に飛び乗った。胸に手を乗せ、頭をアキの顎に押し付ける。
 ヴェルトールも、気付けばもふもふに囲まれていた。子猫がタワー代わりにというように肩に登り、足元は体力が有り余っているらしい猫たちが遊んで! とアピールしている。
「セイジ、ボールとってくれないか、って」
「悪いな。今、猫が乗ってて動けないんだ。すまないがおもちゃと飲み物のおかわりを頼む」
 アキの言う通り、膝はハルルが占領していた。目を閉じ、呼吸も一定間隔であることから、もう少しで眠りそうなのだろう。起こすのは忍びないと言われ、ヴェルトールは「しゃーねーな」と立ち上がった。もちろん、肩に乗った猫が落ちないよう気を付けながらだ。
 我ながら犬っぽいな、と思いながら、小さく笑う。
(セイジは猫っぽいよな。気まぐれ、王様だ)
 おもちゃを渡し、店員に追加の注文を済ませる。
 ふと顔をあげると、タワーの上に黒い靴下をはいたような足が見えた。噂のオトメだろう。
 ハート模様を見てみたい。写真を撮って、セイジに見せたい。
「おーい、オトメー」
 名前を呼ぶも、ぱたりと尻尾が揺れるだけだ。
「んにゃっ」
「にっ!?」
「あっ、こら!」
 肩に乗っていた猫が、オトメの尻尾にぱしんと猫パンチを繰り出した。そのせいで、オトメはタワーのてっぺんでくるりと丸くなってしまう。
「あーあ。まったく、お前は」
 悪戯好きらしいその子は、ヴェルトールの目が自分に向いて嬉しそうだ。遊んでくれるの? というようなその顔に、ヴェルトールはぷっと噴き出す。ハートが見れなかったのは残念だが、怒るわけにはいかない。
「なぁ。猫、飼わないか?」
 アキの元へ戻ったヴェルトールは、再び寄ってきた猫たちと遊びながら口を開いた。
「だめだ。猫は飼えないよ、任務で泊まりの時に困るだろ」
「任務も一泊なら大丈夫だって。その分帰ったら可愛がってさ」
「必ず一泊で済む保証はないだろ」
 ヴェルトールの耳がしゅんと下がる。わかりやすく落ち込む彼の頭を、アキはぽふぽふと撫でた。そして、笑いながら言う。
「それで、俺が猫にかかりきりになってのいいのか?」
「それは困る」
 即答され、アキはたまらずというように噴き出した。「だろう?」と言いながら、手はいまだ膝上を占拠しているハルルへと戻っていく。
 オトメのハートを見れていたらもっと構ってもらえたのだろうか。考えて、小さく頭を振る。
 構わざるを得ない状況にもっていけばいいだけだ。オトメの力がなくてもなんとかしてみせる。
 そんなヴェルトールの企みが実行に移されるのは――二人が帰宅してからのことである。

●かわいい君
 そろそろ十九時を回ろうかという時間。夏の訪れを感じさせる橙と濃紺のグラデーションの空の下、『蒼崎 海十』と『フィン・ブラーシュ』は『にゃんこのたまりば。』を訪れた。
 それぞれ注文を済ませると、フィンは早速、期待のエース・ハルルの姿を探す。だが、それもわずかな間だけだ。
「んにー」
「ん? ……もしかして、君がハルル?」
「にゃあん」
 返事をするように鳴いたハルルを抱き上げ、フィンはくすくすと笑みを漏らす。
「お前は抱っこされるのが上手だね」
 金と青。神秘的な輝きを放つ瞳は、純白の毛と相まってどこか神聖な生き物にも見える。だが、鼻先を近づけたり、もっとというように手に頭をこすりつけたり、仕草は子猫のようだ。
(旅をしてた頃は、猫と野宿したこともあったっけ)
 そんな一人と一匹の姿を、海十はじっと――羨ましいと見つめていた。
(触ってみたいけど、どうしたらいいんだ?)
 ハルルはフィンの手を気持ちよさそうに享受している。この子なら、大丈夫じゃないだろうか。
 覚悟を決め、海十はそっとハルルに手を伸ばした。可愛がってくれる人の気配を察したのか、ハルルは海十の手に額を押し付ける。
「柔らかくて可愛い……」
「海十も抱っこしてみる?」
「え? いや、俺は」
 海十の手、そして何より羨むような視線に気づいたフィンは、彼の腕にハルルを移動させた。
「ゆるーく抱けば、猫の方が落ち着く形になってくれるよ。特にその子、抱かれるの上手だし」
「こ、こうでいいのか?」
 海十はあたふたとしていたが、フィンのアドバイスに従ってそっと腕を回す。落ち着かない様子の海十とは対照的に、ハルルは海十の腕の中を探索し、すとんと腰を下ろすと海十の手をぺろぺろとなめる。
「か、可愛い……」
 海十はふわりと頬を紅潮させた。ねだられるまま、柔らかな体を撫でる。
 と。フィンがニヤニヤと自分を見ていることに気付き、ハッとした。なんとなく恥ずかしくなり、ふいと視線を逸らす。(締まりのない顔をしてたかな)なんて考えながらも、手は止まらない。
 お待たせしました、という声とともに、注文していたパフェとカプチーノが届いた。
(あ)
 店員の後をついてきた猫に、海十は内心声をあげた。恋を叶えると噂されるオトメだったからだ。だが、オトメは客に興味はないらしく、すぐに撤退してしまう。
 オトメの存在を知った時、会えればいいと思っていた。恋は既に成就している。けれど、フィンにどう接すればいいか、いまいちわからないままだったから。
(ハート柄は見れなかったけど……会えただけでもラッキーだよな)
 得した気分になりながら、海十はテーブルへと視線を戻した。
「ねぇ、海十。パフェ美味しい?」
「ああ。適度に甘くておいしいよ」
「一口頂戴」
 フィンのお願いに、海十は構わないと頷いた。
「有難う。カプチーノも美味しいよ。一口どうぞ」
 お互い注文したものを交換しあい、舌鼓をうつ。そして気付く。
(これって、間接キス……?)
 海十は必死に平静を装いながら、猫たちと穏やかな時間を過ごし――お店を十分に満喫した頃、席を立つ。
 店員にお礼を言って、お見送りというようについてきてくれたハルル、そして一緒に遊んだ数匹の猫に笑顔を向ける。
「有難う、また遊びに来るよ」
「そうだね、絶対また来よう」
 にゃおん、と名残惜しそうな猫たちに手を振り、店を出る。
「猫たち、すごくかわいかったな」
「ね」
 言葉を交わしながら、フィンはふふと柔らかく笑う。もう一度猫たちに会いたい、という想いは嘘じゃない。だけど、それだけが理由ではなかった。
(また海十の可愛い姿、見たいしね)
 次に来た時、彼はどんな顔をするのかな。なんて未来を想像する。
 きらきらと空を彩る星々は、二人を見守るかのように瞬いていた。



依頼結果:大成功
MVP
名前:スウィン
呼び名:スウィン、おっさん
  名前:イルド
呼び名:イルド、若者

 

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター 櫻 茅子
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 男性のみ
エピソードジャンル ハートフル
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 とても簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 5 / 2 ~ 5
報酬 なし
リリース日 07月08日
出発日 07月15日 00:00
予定納品日 07月25日

参加者

会議室


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