プロローグ
その日、イベリンには静かな雨が降っていた。
待ち合わせ場所に傘をさし向かっていたあなたの前へと、数本の花が差し出される。
「本日オープン致しました、『ジュエリー・カァタァフォィル』です。祝福を、あなたにも」
「祝福された花をどうぞ」
「今日が佳き日となりますように」
通りを行く人々へと、店員達は己が濡れるのも気にせずに、笑顔で配っていた。
見下ろせば、店に陳列されている宝石に負けないくらいの様々な色たちが、雨に濡れ、光っていた。
「一重咲きでも八重咲きでも、お好きなものを。『金蓮花』と言うんですよ」
にっこり微笑む青年と金蓮花を交互に見て、「それじゃあ」とあなたはその内の1本を摘み上げる。
途端。
強い衝撃が走った。
それは、持っていた傘を、落としてしまうほど。
(言わなきゃ。――あいつに解るように。いつも伝えられないこの愛を、想いを、伝えなきゃ!)
落とした傘もそのままに、あなたは駆け出す。
「おや」
その背に、笑ったらしい店員の声が届いた。
振り返れば、見透かしたように微笑み、青年がこちらを見ている。
そうしてコロリ、と。軽く持ち上げた小瓶を揺らした。
「上手くいったかどうか、ぜひ教えて下さい。そして良ければ、更なる愛の為にこちらのご購入を」
人差し指と親指に挟まれた透明な瓶の、側面に刻まれた『キンレンカ』。そしてその中で、小さな小さな石が光っている。
「今夜は満月ですよ。ちょうどうちの店の裏に砂浜があるのですけれど、中のこの石を一晩砂の上で月光に晒し明け方の満潮で波に攫って貰えれば、その愛は永遠に続くと言われているんです」
あなたの傘をさして、青年は手を振った。
「花言葉は『困難に打ち克つ』ですよ。がんばって」
あなたは濡れるのも厭わずに、強くなってゆく雨の中を懸命に走る。
日の出と共に花弁を開き、夜には閉じる――。
そんな花を、握り締めながら。
解説
●目的
相手に想いを伝えるため奮闘し、最後に石のおまじないをする。
●祝福された花『金蓮花』(キンレンカ)
雨に濡れると光ります。
普段伝えきれていない、相手への愛しさ、恋しさを素直に伝えたくなります。
色は黄、オレンジ、赤、ピンク、クリーム。
選べるのはその内の一本だけです。
●こんな方々にオススメ
・「本人がツンデレ、又はシャイで普段は相手に伝えられない」
・「相手がニブくて中々伝わらない」
※伝えたい! という気持ちが強くなるというだけで、絶対に伝えられる、という訳ではありません。
また親密度によって成功しない場合もございます。ご了承下さい。
●金蓮花を受け取るのは、神人か精霊のどちらか一方です。
受け取っていない側は、『待ち合わせ場所』で相手を待っています。
●花を受け取ったなら
普段伝えられていない気持ちを、どうやって伝えますか?
ありったけの言葉を尽くしますか? 行動で伝えますか?
どんな場所で伝えたいですか?
●待ち合わせ場所で待っているなら
びしょ濡れになり懸命に走ってきた相手を見て、どう感じますか?
何かをしてあげたいと思うでしょうか?
理由を知りたいと思うでしょうか?
相手の言葉に、素直に従うでしょうか?
●おまじない
夜の砂浜で。
成功していればお二人で、失敗だったならお一人で。
攫われるのを見届けるかどうかはあなた次第。
●ジュエリー・カァタァフォィル(『四つ葉』の意)
イベリンのとある通りに出来た宝石店。
夜遅くまで営業しています。
(あなたの傘は、青年がお預かりしています)
●一日中雨です。
弱くなったり、強くなったり。雨の中、たまには青空も顔を覗かせるかもしれません。
●小瓶の石
『ジュエリー・カァタァフォィル』が、開店記念として作ったもの。
小瓶の直径は三センチ、中の石は五ミリ程度。コルクの蓋が付いており、透明な硝子の側面にはキンレンカが浮彫りされています。
石はあなたが選んだ花と同じ色です。
500ジュール戴きます。
ゲームマスターより
皆様初めまして、Motokiと申します。
どうぞよろしくお願い致します。
キンレンカ、そして青年が後押しする雨の中、全力で愛情や恋心を伝えて頂ければと思います。
別に叫ばなくても大丈夫です(笑)
皆様の素敵なアクションプラン、お待ちしております!
リザルトノベル
◆アクション・プラン
アキ・セイジ(ヴェルトール・ランス)
食卓に飾る花を買いに来た 八重咲きの黄色のを選んだら… ◆ 爆発するランスへの想い だが、心に干渉されるのは嫌いだ 干渉されて話すなんて御免だ 花を捨てなかったのは、花に罪は無いから ◆ ランスの前でも不機嫌さは治らなくて なんでもないとそっぽ これでは花に振り回されてると思い 冷静に花の作用と考え方を話そう ランスの説得に「そういう考え方、か」と折れる 別に話さなくても良いだろ …分かったよ 好きって気持ちと どんな風にかって話す どんな…って; こんなだよ!(花押し付け ★海辺で おまじないなんて女々しいこと俺はあんまり… けど…キャンプのついでになら 瓶には代りにシーグラスや貝 食卓に飾る? 「そうだな。けど、よく洗ってからな」瓶眺め |
セイリュー・グラシア(ラキア・ジェイドバイン)
ラキアが花好きだからさ。 光る花って珍しいだろ。 赤い花が、ラキアの髪みたいで綺麗じゃん。 待ち合わせ場所の公園へ走ったぜ。 タオルで拭いてくれるラキアが優しい。 愛を感じるぜ。 「この花、光ってて綺麗だから!」 とラキアに差し出すぜ。 「濡れると光る花なんだってさ。 ラキアが喜ぶと思って、貰って来た! 赤い色がラキアの髪みたいだし。綺麗だし」 嬉しそうなラキアの笑顔が良いんだよな。 「花を見ている時のラキアの表情。オレ、大好きだ!」 ラキアと一緒におまじないを試すぜ。 こんな話を聞いたから、と説明する。 おまじないとかゲン担ぎみたいなこと、結構ラキアは好きなんだよな。 一晩一緒に語り合って小石が攫われるのを確かめるぜ。 |
蒼崎 海十(フィン・ブラーシュ)
金蓮花(クリーム)を受け取る 伝えなければ フィンにきちんと『好きだ』って… 今日は一緒に外食する約束 待ち合わせは駅前 フィンに会うと上手く言葉が出てこず 傘は…忘れてきた 帰ろうと言われて、慌てて手を引いて訴える 俺なら大丈夫だ! 待ってくれ 俺、フィンに言いたい事が…(駅前というのを思い出し、言い淀む) …有難う フィンの言葉に従う コップに水を入れて金蓮花をテーブルに 部屋で食事をしながら切り出す時を窺って フィンが俺の言葉を待ってくれてる もう伝わってるとは思うけど… 俺は…フィンが好き、なんだ 乾いた服を着て 宝石店の主に報告と傘を受け取り おまじないをしに行く(告白に成功したら、フィンを誘って) 攫われるのを見届けたい |
明智珠樹(千亞)
●待つ (過去の記憶がない珠樹。記憶の始まりである小さな薔薇園で千亞を待つ) 千亞さんを此処に連れてくるのは初めて、ですね… (千亞を見つけ) おや、千亞さん?びしょ濡れじゃありませんか(駆け寄り) 何かあったのですか?(心配そうに傘に招き入れ) …千亞さん? …知ってますよ、ふふ。 (柔らかく抱きしめ返し) 素直な千亞さんも愛しいです (千亞の前髪を上げ、額に親愛のキスを) 目を見て、もう一回言ってくれませんか? ふふ 濡れてますし、まず家へ戻りましょう。 薔薇園はいつでも来れますし (千亞の話を聞き、おまじないを) ●おまじない 波に浚われるのを見届けたいとは思いますが… 千亞さんの寝顔も見つめていたいものです、ふふ… |
●Aiming his
八重咲きの金蓮花を手に、アキ・セイジは疾走していた。
手の中で黄色の光を放つそれを、握り締めて。
爪が掌に食い込むほど強く握っているのに、けれど花の茎には負担をかけていなかった。
――花に罪はないから。
その信念にも、向かう先にも、迷いはないのに……。
爆発しようとする己が精霊への想いが、この身体が、どうしようもなく衝撃に震えていた。
それでも――。
心に干渉されるのは、嫌だった。
「干渉されて話すなんて……御免だ」
角を曲がった拍子に前髪から垂れた雫が、顎を伝い落ちていく。
『捨ててしまえば良い』
花弁で弾けた雫が、そう言ったような気がした。
捨てはしない。捨てるなんてしない。
だって、花には――。
オープンカフェの前で待っていたヴェルトール・ランスは、駆けて来た同居人の様子に目を剝いて、右手を差し出した。
その手がしっかりと、セイジの腕を掴む。
「とりあえず落ち着け」
言葉と共に力強く、彼を屋根の下へと引き寄せた。
肩で息をする相手の赤き瞳が揺れるように、けれども自分をしっかりと見つめている。
「店員にタオル頼んで拭いてやるから」
引っ張ったセイジの手は、ずっと拳を握ったままでいた。
さした傘の中、ラキア・ジェイドバインは、一向に止まぬ雨を辿って灰色の空を見上げる。
神人を待つ公園。
傍らの花壇に視線を下ろし、色とりどりの花たちに「綺麗だね」と笑いかけた。
ふと感じた気配に顔を上げて視線を廻らせば、自分の待ち人、セイリュー・グラシアが傘もささずこちらへ走って来ていた。
一瞬。目を丸くして、驚いて。
慌てて足を踏み出し、セイリューへと手を伸ばしていた。
「雨が強くなってきましたね」
薔薇園の入口で精霊を待っていた明智珠樹は、傘から手を出し左目で更に暗くなった空を見上げた。
過去の記憶がない自分。
そして記憶の始まりとなった、この場所。
薔薇園の風景を見回していた紫が、1つの方角で止まる。しばらくそちらを見つめてから、再び待ち人が来るだろう方向へと視線を戻した。
(千亞さんを此処に連れてくるのは初めて、ですね……)
そんな事を思っていれば、先の角からピンクが飛び出して来た。
「おや、千亞さん?」
――びしょ濡れじゃありませんか。
そう思えば、自然と足は千亞へと向かっていた。
光を放つクリーム色の金蓮花を手に、蒼崎海十は走る。
その胸にある想いは、ただ1つ――。
(伝えなければ。フィンにきちんと『好きだ』って……)
懸命に走って。多くなってきた人混みを、すり抜けて。
待ち合わせ場所の駅前で、フィン・ブラーシュを見つけた。
驚く相手の傍まで駆けて、両膝に手を付き肩で息をする。
「海十、傘はどうしたの?」
ずぶ濡れの海十に、懸命に走ってきたのだろうその様子に呆然としていたフィンが、慌ててハンカチを取り出した。
「傘は……忘れてきた」
海十の髪を拭くハンカチは、すぐにびしょ濡れになってしまう。あまり役には立ってくれなかった。
「全然足りない。帰って着替えた方がいいね」
踵を返すフィンの手を、海十が掴む。
「俺なら、大丈夫だ!」
手首を引いて、必死に訴えた。
「大丈夫じゃないでしょ」
振り返ったフィンの瞳が宿すのは、心配の色。そうして、彼の体をこれ以上冷やさぬ最善の方法。
「海十、服を買って着替えよう」
言って、周りを見回す。
幸い待ち合わせの場所は駅前。いくつか並ぶ店から、お目当ての店が見つかったようだった。
すぐさま向かおうとするフィンを、「待ってくれ」とまだ息の整わぬ海十の声が止める。
「俺、フィンに言いたい事が……」
「俺に言いたい事?」
聞き返したフィンに、海十が言いよどんだ。
「……ここじゃ、言えない話?」
周りの人々を気にしているらしい海十に、フィンが頷く。
「分かった。じゃあ急いで家に帰ろう」
彼が1番安心して話せる場所は、そこだと思えた。
「でも先に、服は着替えようね」
その提案には、海十が目を閉じて笑う。
「……有難う」
――ああ。フィンの言葉に従うよ。
●Feelings overflowing
「何かあったのですか?」
駆け寄って来た珠樹の傘に招き入れられ、千亞は立ち止まる。
俯き肩で息をする事だけを繰り返す顔を、珠樹が覗き込んできた。
「……千亞さん?」
心配しているだろう声に、雨の雫が幾筋も流れる顔を上げる。
「……大丈夫、何でもない」
珠樹の顔を見て、しまった、と思った。
(立ち止まるんじゃなかった。あのままの勢いで珠樹に両手を伸ばして、飛び込んで。抱き付けばよかった……)
再び俯いた瞳が、八重咲きの赤い金蓮花を映す。
「えっと、その……」
まだ光を仄かに放ってくれている花を持った手が、珠樹の服を掴んだ。
両手で胸倉を掴むようにして、そのまま、真っ赤な顔を埋める。
「珠樹……すき」
か細い声は、届いただろうか――。
不安になる沈黙を破ったのは、「知ってますよ」という珠樹の声と、いつもの含み笑いだった。
雨が耳と髪にまた当たるようになって、顔を上げる。柔らかく、両手で抱きしめられた。
「素直な千亞さんも愛しいです」
珠樹の手が、千亞の前髪をそっとかき上げて。額に親愛のキスをする。
「……っ!」
トランス以外のキスは初めてで。
驚いて離れれば、相手は口元に手をあて笑んでいた。
「目を見て、もう一回言ってくれませんか?」
ふふっと笑うその顔が、にくたらしい。
「……言えるか、馬鹿」
そっぽを向く兎は、相変わらずのツンデレぶりを発揮していた。
「まず家へ戻りましょう」
薔薇園はいつでも来れます、と珠樹に促され、千亞は濡れた体で足を踏み出す。
帰路につきながら、金蓮花を貰った経緯を話した。
開店祝いで配っていた事。
雨の中、大変そうだった事。
祝辞を伝え、赤色を選んだ事。
『おまじない』の話。
そうして「あっ」と声を洩らした。
「べ、別に好きっていうのは恋愛とかじゃなくて、か、勘違いするなよっ?」
――道のりは、中々に遠い気がする。
それでも神人の顔を窺い見れば、見透かしたように笑っていた。
少しずつ、少しずつ。
2人のペースで、これからも進展していくのに違いないのだ。
「何があった?」
雨が辺りの音を消し、変わりにBGMを2人に届ける。
サァーサァーという雨の音を聞きながら、ランスは前に座るセイジの顔を見つめていた。
口を開かぬ男を眺めながら、珈琲を口に運ぶ。
気前良くタオルを貸してくれたカフェの店員たち。何も頼まず出て行く訳にもいかなかった。
2人分の珈琲代は400Jrかかったが、それでもこの味ならばセイジも満足するに違いない。それに体も温められる。
「……何でもない」
不機嫌なままで一旦そっぽを向いたセイジは、すぐさま顔を戻した。
(これでは、花に振り回されてる)
目の前の珈琲をひと口飲んで落ち着いてから、冷静に、花の作用と考え方を話した。
じっくりと話に耳を傾けて、事情と気持ちを、ランスは察しようとする。
「セイジは、自分ってものに勝手に干渉されんの嫌いだもんな」
判ってるというふうに頷いて、「けど」と言葉が続いた。
「元々持ってない気持ちは強まらないぞ?」
伸ばされた指先が、セイジの手にある花に触れる。そうして当然のように、黒髪をぽふりと撫でた。
「だから、花は。セイジが持ってる想いを一寸後押ししただけだよ」
「そういう考え方、か」
折れたセイジが、離れていく掌を見つめる。
「爆発しそうだったって?」
その手で頬杖を付く精霊を見る目が、恨めしいものに変わった。
「――別に。話さなくても良いだろ」
肩を揺らしたランスが「ん?」とにやけながら顔を覗き込む。
「……分かったよ」
伝えた、「好き」という気持ち。
どんな風にかって――。
「こんなだよ!」
胸へと押し付けられた金蓮花に、ランスのにやけ顔が深まる。
「ほぅほぅ、一寸の後押しで爆発しそうなくらい俺が好きってことだな」
顎を引くセイジが必死に否定するだろう事も予測して、ランスは楽しみ笑っていた。
風呂から出ると、フィンが食事を準備してくれていた。
「これは……御馳走だな」
スープに肉料理、サラダにパン。
海十が服の試着をしている間に、フィンが買い揃えてくれたものだ。
「だって今日は外食の予定だったでしょ。食材もあまり無かったし、こんな時は俺が作るより、ね」
水を入れたコップに金蓮花を挿しながら、笑う。
「服代に2人分の料理代、タクシー代で2000Jr。結構かかってしまったな」
こいつに出会ったお陰で、と花を指で小突き揺らした。
「海十が風邪ひくより全然良いよ。……花、綺麗だね」
向かい合って、座って。
海十が話し出すのを待ちながら、彼が話しやすいようにとフィンは他愛無い話で場を和ます。
食事をしながら切り出すタイミングを窺っていた海十が、ナイフとフォークを置いた。
「あのさ、フィン」
その言葉に、フィンもナイフとフォークを静かにテーブルへと置く。
「もう伝わってるとは思うけど……」
少しの間を、挟んで。
「俺は……フィンが好き、なんだ」
彼の告白に、目を見開いて。
その『好き』が、どういう意味かも理解していた。
「俺も。海十の事が……好きだよ」
はにかむように、笑って。僅かに瞼を伏せる。
「言わなきゃって思いながら……違ってたらどうしようって……怖かったんだ」
視線を合わせて、照れている海十に微笑んだ。
「有難う。……改めてこれからもよろしくね。可愛い恋人さん」
――これからはそう呼んで、良いんだよね。
びしょびしょに濡れたセイリューを引っ張って、ラキアは屋根のあるベンチに飛び込んだ。
何故かニコニコと笑っているセイリューの濡れた頭をワシャワシャと拭いてやる。
ついで、とばかりにそっと顔を拭いて、タオルを外せば嬉しそうにまだセイリューが笑っていた。
服の上からも、タオルを押し当てるようにして手早く水分を取っていく。
(セイリューは元気すぎるから多少濡れるのも気にしないんだろうけど、風邪引いたら大変だよ)
「もう、どうしたの?」
ラキアが優しいと、愛を感じるぜと上機嫌のセイリューは、その言葉に手にある物を差し出す。
赤い、金蓮花。
「この花、光ってて綺麗だから!」
光っているのは、セイリューの笑顔も同じで。
「濡れると光る花なんだってさ」
笑顔のまま動きを止めた後、「ん?」と首を傾げて、言い直す。
「雨に濡れると光る花なんだってさ。ラキアが喜ぶと思って、貰って来た!」
とても嬉しそうに話すセイリューに、思わずこちらも笑みが零れた。
「赤い色がラキアの髪みたいだし。綺麗だし」
「……うん、素敵だね。ありがとう」
嬉しそうな笑顔は広がって、穏やかなラキアの笑顔も花のように咲き開く。
両手で大事そうに金蓮花を受け取って、濡れた花弁を拭って、抱くように胸元に寄せた。
静かに降る雨も、ラキアの背後で雨を受け留めながら咲いている公園の花々も、とても彼に合っている。
――花を貰ったのは、ラキアが花を好きだから。
赤い花弁が、ラキアを思い浮かばせたから。
「光る花って珍しいだろ」
今は雨には濡れぬ場所に入っているから、光っていないけれど。
自分にとってはもっと輝いているものが、目の前にあるから。
「花を見ている時のラキアの表情。オレ、大好きだ!」
ラキアが好きだ、までは、言えなくて。
それでも顔を上げたラキアは少し驚いて、首を傾げるようにして最高の笑顔を返した。
「だって……」
花も、素敵だけれど。
俺の事をとても大切にしてくれるセイリューの気持ちが、とても嬉しかったんだよ――。
●Stone charm
「僕は店主ではありませんよ」
そう笑った店員は、海十とフィンの報告を聞いてとても喜んだ。
「おめでとうございます! それでは更なる愛の為にこちらをどうぞ」
傘とクリーム色の石を受け取って、500Jrを支払う。ドアの前まで出てきた青年に見送られながら、2人寄り添って夜の海辺へと向かった。
珠樹と千亞は、隣り合って砂浜に座る。
砂の上に置いた小さな赤石を、膝を抱えジッと見つめる千亞の頭がコクリコクリと揺れていた。
「……千亞さん、眠いですか?」
「ん、大丈夫だ。見届ける」
目を擦りながらの頑張りは、残念ながら長くは続かなかった。
揺れていた頭が、珠樹の肩へと凭れかかる。見れば、へにゃりと白耳を曲げ、兎が眠っていた。
(ああ、困りましたね)
千亞が教えてくれたおまじない。
石が攫われるのを見届けたいと思うが、彼の寝顔も見つめていたいと思ってしまう。
ふふっと笑いながら、それでも肩を動かしてしまわないよう、珠樹はじっとしていた。
「こんな話を聞いたから」
2つの月が照らす夜の砂浜を歩きながら、セイリューが『おまじない』の説明をする。
「へぇ、愛は永遠に?」
少し悪戯っぽく自分を見つめてきたラキアに、セイリューは「いや、その」と頭を掻く。次の瞬間、2人で笑い合った。
「うん。一緒に試そう」
今は波が届かない場所に座って、暗い濃紺の月とは対照的な赤い小石を砂の上に置く。
(おまじないとかゲン担ぎみたいなこと、結構ラキアは好きなんだよな)
石を見つめるラキアの表情を見て、セイリューもワクワクしながら石へと瞳を向けた。
――おまじないなんて女々しい事はあんまり……。
そう考えるセイジの為に、ランスは家からテントを持ち出す。
キャンプのついでは、我ながら良い思い付きで。砂浜にテントを張るのも、中々に楽しかった。
テントからは少し離れた、波打ち際の傍。
黄色の石が満月の光を浴びて、月の欠片のように光を返す。
空いた瓶には、2人でシーグラスや貝を詰めていった。
こんな事にも真剣に取り組むセイジの横顔を見ながら、ランスは笑み零す。
波も、シルエットも、心も、二人一緒に重ねながら……。
●Whereabouts of love
一晩中語り合って過ごしたセイリューとラキアは、辺りが白んで波が小石に近付くにつれ、互いに口数が少なくなっていった。
そうして寄せる波が、石を覆って。引けば少しだけ動いた赤が、光っていた。
「がんばれ!」
笑って波を応援するセイリューの隣、ラキアも確信をもって石と波を見つめる。
――きっと、この信頼と愛情は、一生続く。
少しずつ、海に近付いてゆく石を見つめ微笑んだ。
これからもずっと、一緒の時間を過ごしていく。それは間違いない事だと、そう思いながら……。
肩を寄せ合う海十とフィンは、薄く消えゆこうとするテネブラと、丸く満たされたルーメンを見上げる。
「そろそろだよ」
どちらからともなく、囁いて。
クリーム色した石が、ゆっくりと波に攫われてゆくのを見届けた。
空が明るくなっていく中で、押し寄せるたび自分達へと近付く波が、黄の石を攫ってゆく。
強く寄せた波。
その波が、砂の上の2人で詰めた瓶をも攫っていった。
「ちょっ……待……」
手を伸ばし腰を上げかけたランスが、肩を竦める。
「あげないってさ」
この砂は俺の物って言ってる。
そんなランスの言葉に、チロリとセイジが視線を向けて。
顔を見合わせ、同時に笑った。
「千亞さん」
そっとかけられた珠樹の声に、千亞はパチリと目を開ける。
「あ、石ッ!」
飛び起きた千亞が、珠樹の指差す先を見つめる。
「あともう一回くらいで攫われるでしょう」
珠樹の言葉に頷けば、置いた時より海に近付いている赤石を、波が力強く覆った。
石が全て攫われれば、太陽がゆっくりと昇っていく。
そうして神人達、精霊達の影を、砂浜に長く伸ばしていった――。
依頼結果:成功
MVP:
エピソード情報 |
|
---|---|
マスター | Motoki |
エピソードの種類 | ハピネスエピソード |
男性用or女性用 | 男性のみ |
エピソードジャンル | ロマンス |
エピソードタイプ | ショート |
エピソードモード | ノーマル |
シンパシー | 使用不可 |
難易度 | 簡単 |
参加費 | 1,000ハートコイン |
参加人数 | 4 / 2 ~ 5 |
報酬 | なし |
リリース日 | 06月26日 |
出発日 | 07月03日 00:00 |
予定納品日 | 07月13日 |
参加者
- アキ・セイジ(ヴェルトール・ランス)
- セイリュー・グラシア(ラキア・ジェイドバイン)
- 蒼崎 海十(フィン・ブラーシュ)
- 明智珠樹(千亞)
会議室
-
2015/07/02-23:49
-
2015/07/02-23:44
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2015/07/02-23:43
全身全霊でッ!ふんどし愛をッ!叫びたいッ!
こんばんは、明智珠樹です。
皆様が何色の金蓮花を選ぶのかしら☆どちらが愛を叫ぶのかしら☆
とドキドキトキメキしております。
またお会いできますのを心より楽しみにしております、ふふ…!! -
2015/07/02-23:00
-
2015/06/30-00:58
蒼崎海十です。パートナーはフィン。
明智さんと千亞さん、アキさんとランスさん、セイリューさんとラキアさん、
またご一緒出来て嬉しいです!
よろしくお願いいたします。
『金蓮花』…不思議な花ですね。
良い一時を過ごせますように。 -
2015/06/30-00:56
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2015/06/30-00:33
-
2015/06/30-00:06
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2015/06/29-18:28
ふ、ふふ。こんにちは。皆の明智珠樹です。
隣の兎っ子は千亞さんです。海十さんとフィンさんご両人、何卒よろしくお願いいたします、ふふ…!
金蓮花!雨降り!おまじない!
色んな要素が詰まっておりますね、ふふ、ふふふふふ…!
どうか良き一日が過ごせますことを…ふふ、ふふ(るんたった) -
2015/06/29-18:24