プロローグ
●フクフクドリが大変です!
ぴよぴよと大合唱がそこかしこで湧き上がる。
そこはフクフクドリと言われる小鳥たちが、梅雨を過ごすとある小さな森だった。
森というよりは、林と言ってもよかったかもしれない。
去年までは雨宿りが沢山出来る、茂みや木々が生い茂っていたのに、今年は伐採されてしまい、60匹近く居るフクフクドリ達のほとんどは、雨宿りも出来ずに震えているのだった。
ぴよぴよぴよ。
フクフクドリ達は知らない。
もうちょっと先に飛んでいけば、雨宿りが出来る林があることを。
小さな小さなフクフクドリ達は、体を寄せ合い、とにかく雨が止むのをじっと待っているのだった……。
●フクフクドリをお引越しさせよう!
「雨に濡れて震えているフクフクドリさんたちを助けてあげて欲しいんです!」
しょんぼりとした職員がそう言って、ウィンクルム達を呼び止めた。
彼女が助けに行きたいのはやまやまなのだが、今ある書類の処理がいつ終わるのか分からないとのことで、声を掛けたのだった。
「フクフクドリさんは、片手の掌に二匹がのる程度の小さな小さな鳥さんです。
いま、二匹と言った通り、主に番いで行動します」
曰く、番いを定めたら一生添い遂げるほどの仲良しぶりなのだという。
「大体オスの方がちょっとだけメスより大きいですが、我々からすれば、うーん、君の方が大きい、かな? って感じで見分けは付きにくいです。
ちなみに、まんまるとしたその姿から、別名、おまんじゅうドリとも言われます。
そんなフクフクドリさんが、今は雨にうたれてその自慢の羽毛がぺたーとなっていて……うぅ……」
その姿を思い出したのか、職員の瞳に涙が光る。
物凄く物悲しいことになっているというわけのようだ。
「フクフクドリさんは、非常に人懐っこい小鳥さんなんです。
ですので、皆様にはフクフクドリさんと仲良くなっていただいて、お引越しの手助けをしていただきたいわけです。
最低でも、四組の番いがお引越し先に移動すれば、他のフクフクドリさんも一緒に移動を始めると思います。
勿論、沢山のフクフクドリさんと仲良くなっていただいても構いません」
そうでした、と職員がぱっと顔をあげた。
そして、ウィンクルム達ににこっと微笑む。
「フクフクドリさんは、番いと一生添い遂げることから、フクフクドリさんの羽を持っていると、恋が叶う、または夫婦や恋人の恋のお守りになるそうですよ。
恋のお守りではあるんですが、転じて「良好な仲がずっと続く」お守りとしても効果があるそうで。
例えば仲間だとか、親友だとか、そういうのにもいいらしいです。
もしもフクフクドリさんと仲良くなって、フクフクドリさんから羽を直接貰うことができたら……その効果は絶大なものなのだとか。
勿論、それを信じるか信じないかは皆様のお気持ちでしょうが……もしかしたら、羽を貰うことが出来るかもしれませんね?」
フクフクドリさんは、特に果物が大好きだという。
「一応、此方で林檎は用意しておりますが、あとは皆様にお任せいたしますね」
では、お願いしますと頭を下げるのだった。
解説
・当日
雨が降っています。
傘が必要なぐらいの雨ですので、雨具を持って行ってください。
・持ち込み
フクフクドリにあげるための代金として、一組200jr頂きます。
・お引越し先
今の林から、30分程度の先に林があります。
そちらに最低、四組の番いと共に向かえば他のフクフクドリさんも一緒にやってきます。
引っ越し先の林には、結構大きめの屋根付きの休憩所があり、そこには石で出来たテーブルとイスがあります。
・フクフクドリ
別名、おまんじゅうドリ。
白や茶色や灰色や、まだら等の小さな小さな小鳥です。
番いで行動し、常に二匹一組で行動します。
まれーに一匹で行動しているフクフクドリもいます。
かなり人懐っこく、余程のことがない限り人間の肩にとまったり掌で遊んだりします。
普段はふっかふかですが、今は雨に濡れてぺしゃんこになっています。
・フクフクドリの羽
地面に落ちているものより、フクフクドリから直接貰った羽の方が、効果が高いと言われています。
番いの羽を、恋人同士、または夫婦で持つことにより末永く仲が続いていくお守りとなります。
恋のお守りではありますが、転じて「良好な仲がずっと続くお守り」としての効果もあるのだとか。
※こちらは配布されませんので、ロールでお楽しみください。
ゲームマスターより
此方ではお久しぶりです、如月修羅です。
フクフクドリさんと戯れてみてくださいね!
リザルトノベル
◆アクション・プラン
リオ・クライン(アモン・イシュタール)
なんて可愛らしい・・・! 夫婦で一生添い遂げるとは、一途な愛じゃないか。 持っていく物・レインコート×2、大きめの傘、タオル <行動> ・濡れない様に運ぶ役 ・フクフクドリをタオルで拭いてあげる ・フクフクドリを見て、ふかふかのおまんじゅうを連想する ・ふと、アモンと相合傘をしていることに気づき、思わず照れる (うう・・・近い・・・) ・引っ越し先に到着し、休憩所で少しフクフクドリとたわむれる ・ちょこちょこ動くフクフクドリを可愛らしく思い、アモンの頭の上に移動したのを見て、思わず子供の様に無邪気に笑ってしまう ・(恋のお守りか・・・。もしかすると・・・いやいや!何を考えてる私!)【EP37参照】 ※アドリブOK |
和泉 羽海(セララ)
アドリブ歓迎 レインコート・タオル 林檎とバナナ(食べやすいサイズ) (ちっちゃい…可愛いのに…ふわふわ…じゃない…可哀想) 寄ってきた子はタオルで優しく拭いてあげる (お、思ったより…いっぱい来た…待って…果物も…順番…)(あわあわ ●引越しは濡れないように庇いながら (…待って、あたしの傘は?)※ジェスチャー (……ドヤ顔がむかつく) ●休憩所 …なんか、余計に疲れた気がする… …こういう気遣いができる癖に…どうして普段の行動がアレなんだろう… ★羽を貰えたら 精霊の言葉に捨てるフリ (せっかくくれたのに、捨てないよ) くれた小鳥に口パクで『ありがとう』 嫌いじゃ、ないから… 恋じゃなくても…ずっと仲良くできれば、いいな… |
瀬谷 瑞希(フェルン・ミュラー)
まんまるふわもこフクフクドリさん、可愛いです。 ずぶ濡れだと風邪引いちゃうかも。大変です。 ミュラーさんと一緒に傘に入って鳥達の近くへ。 鳥達へ笑顔を見せて、タッパーに入れ持ってきたカット桃やマンゴーを鳥達に見せます。 「寒いでしょ。ここにおいでよ」と。 「お腹もすいたでしょ。はい、どうぞ」と。 寒くて震えていたらお腹すくよね。 鳥でもちゃんと話せば判ってくれます。 林を指さし「向こうに、雨宿り出来る林があるのよ」 「皆も一緒に行こう?」 番い1組だけじゃなく傘に入るだけの鳥達を誘います。少しでも早く雨宿りさせてあげたいから。 羽根を貰えたら、驚きからの喜びの笑顔。 「一生大切にするね。ありがとう」とお礼を言います。 |
ヒヨリ=パケット(ジルベール=アリストフ)
・吸水タオル数枚 ・ふかふかタオル ・ブルーベリー ・ライチ 鳥は大好き 昔はインコを飼っていた ジルの興奮ぶりに驚きつつも 鳥好きと知って親近感 怖がらせないように優しい声で挨拶 手をそっと差し出し 鳥が自分から乗って来るまで待つ ♪まあ、人懐っこい鳥さん達だこと まずは二匹を綺麗にする 翼の内側も忘れずに優しく拭く 好きな所嫌いな所を確かめる あら、耳の下が気持ちいいんですの? あとでカイカイしてあげますわ 二匹とも拭き終わったら 一緒にふんわりタオルで包んで 小さな体と手で大事に抱きかかえる 一緒にぴよぴよ言いながら移動 (ピヨ語 休憩所についたら ジルさまが果物を切ってくださるわ あまりに可愛くて別れが寂しい でも我儘はいいませんわ |
エセル・クレッセン(ラウル・ユーイスト)
「片手の掌に二匹、か。フクフクドリって小さいんだな。 …そんな鳥が、羽がぺたーとなるほど濡れたらまずくないか?」 持ち物 サクランボ 合羽と傘を何本か タオル 行動 とりあえず、傘をいくつか開いて地面に置いて、フクフクドリが雨宿りできる場所を作ろう。 ぺたーとなった羽は、濡れなくなれば自分で振って乾かせるのか? 拭いてやれればいいけど、怖がるかもなあ。先に仲良くなってからの方がいいかな。 仲良く…。 果物をあげて、柔らかく話しかけるようにすれば…? フクフクドリを雨の中移動させるのもかわいそうな気がするし。 なるべくたくさん仲良くなって運んでやれたらいいよな。 |
●
瀬谷 瑞希とフェルン・ミュラーは二人が入れる大きな傘の下、フクフクドリを救うためにやってきた。
そんな大きな傘を持つフェルンを見て、瑞希が心配げに唇を開く。
「風邪、引いちゃうかも……」
「そうだな、ずぶ濡れのままだと可哀想だ」
やってきた林では ぴよぴよぴよとフクフクドリ達は雨に濡れながら一生懸命囀っていた。
二人がやってきたのに気がついたフクフクドリ達が、興味津々な瞳を向ける。
なるほど、人懐っこいのは本当のようだとフェルンがそっと瑞希にと寄りそう。
「……?」
タッパーを取り出そうとしていた瑞希が首を傾げれば、フェルンが言う。
「仲良く寄り添ってたら、人懐っこい鳥達がきてくれるだろ?」
それもそうかもしれないと頷き、にこりと此方を様子見しているフクフクドリ達に微笑む。
「寒いでしょ。ここにおいでよ」
ぱかっと開いたタッパーの中身をフクフクドリ達に見えるように掲げて見せれば、カット桃やマンゴーにきらきらと瞳を輝かせたようにも見えた。
「興味あるみたいだ」
「うん……」
おいで? と二人声をかけてみれば一組の番がてとてととやってきた。
仲良く身を寄せ合う二人に、警戒心も溶けたようで、足元へと寄ってきてぴよぴよ果物を催促する。
「お腹も、すいたでしょ。はい、どうぞ」
桃をそっと差し出せば、ついばんだフクフクドリはご満悦そうだ。
そんなやりとりを見守るフェルン。
持ってきたハンカチで拭いてあげたいけれど、まずは食べ終わってからの方がいいだろう。
そんな様子に警戒が解かれたのか、番達がやってくる。
「君たちは先にこちらはどうだ?」
ひらりとハンカチを振って見せれば、ぴよぴよと拭いて拭いてとやってくる。
そっと掌に載せて、羽根が折れないように注意して拭いてやれば、すぐにふわっとまんまるなフクフクドリになって。
「……確かにお饅頭だな」
「本当ね」
ふっくらしたフクフクドリはお饅頭のようにちょこんと座っている。
そんなフクフクドリ達に、そっと囁く。
「向こうに、雨宿り出来る林があるのよ」
林がある方向を示せば、フクフクドリ達がきょとんと首を傾げた。
暫し話し合いをするかのようにぴよぴよ囀っていたフクフクドリ達は、やがて鳴きやみ二人の傍に近寄って行く。
「皆も一緒に行こう?」
傘に入れるだけのフクフクドリを呼び込もうと声をかける。
やってきたフクフクドリをそっと掌に載せれば、連れて行って? と言っているようだった。
話せば鳥でも分かってくれる……、瑞樹のそんな気持ちを、よく分かってくれたようだった。
「ほら、お前もおいで」
一匹だけ近くをうろうろしていたフクフクドリを呼び込んでハンカチで拭いてやれば、ぴよ! と返事がくる。
俺をヤドリギにすればいい……と肩を貸せば、それを理解したのだろう。
フクフクドリの番が仲良く肩にと飛び乗った。
「じゃぁ、行くぜ!」
二人、フクフクドリと共に林へと向かって行く……。
林につけば、フクフクドリ達がそれぞれ雨宿りの場所を見つけぴよぴよと嬉しそうに囀る。
残っていた果物を少し置く瑞希を見守るフェルン。
鳥と一緒に居る瑞希の微笑みは、とても綺麗だ。
そんな彼女を瞳を細めて見守り、思う。
人相手よりも気が楽なのかもしれない……。
「ん?」
そんな二人の元に、最初にやってきたフクフクドリがそっと羽を自らから抜き取り、瑞樹とフェルンにと落とした。
「くれるの?」
瑞希の問いかけに、ぴよぴよと答えが返る。
「一生大切にするね、ありがとう」
「ありがとう」
二人のお礼に、楽しげに囀るのだった。
失くさないように仕舞い込んだ後、フェルンが瑞希に傘を差し出す。
「よし、他の子達も迎えに行こう、ミズキ」
「はい! ミュラーさん」
二人、寄りそい再び戻って行く。
大きな傘からはじかれた雨が、地面にとゆっくりと落ちた。
フクフクドリ達が、ありがとうというようにどこか嬉しげに囀るのが聞こえた……。
●
和泉 羽海は、レインコートに身を包み、傘を差すセララよりちょっと離れて歩いていた。
ぴよぴよぴよ。
そんな囀りが聞こえてきて羽海は視線を上げる。
そこには羽毛がぺたーっとして雨に濡れるフクフクドリ達が居た。
(ちっちゃい……可愛いのに……ふわふわ……じゃない……可哀想)
その視線が痛ましげに伏せられる。
そんな彼女の隣に立ち、傘を差しだし、雨に濡れるようにしながらセララがフクフクドリ達に声を掛けた。
「可愛い小鳥さん達、この先に良い林があるんだけど、ちょっとお引越ししない?」
フクフクドリ達は、セララのその言葉に込められた真摯な気持ちに気付いたのか、パタパタとやってくる。
ちなみに、可愛いというのは小鳥だけじゃなく羽海も含まれているのだが、羽海はそんな彼の言葉を軽く無視して、やってきたフクフクドリの体を優しく拭いてあげている。
ぴよぴよぴよ。
ふっくらとした羽毛に戻ったフクフクドリの嬉しそうな囀りが聞こえる。
その囀りに誘われたのか、わっとフクフクドリ達がやってきて、羽海を包囲し始めた。
(お、思ったより……いっぱい来た……)
わたわたとしつつどうにか食べやすいサイズに切り分けてきたリンゴとバナナを取り出せば、引越しする前に頂戴! とフクフクドリ達が強請り始める。
(待って……果物も……順番……)
口をぱくぱくと動かし、気持ちを込めて見ればフクフクドリも分かったのか囀るのをやめるのに、セララ待って待ってとストップをかけた。
「ほら、まずは行こう? オレがばっちりエスコートするから☆」
その言葉に、どこか軽いと思ったのか。
羽海がじぃっと見詰めるのに、慌ててセララが手を振った。
「いや冗談じゃなく早くしないと冷えちゃうでしょ、羽海ちゃんも小鳥も」
その言葉に納得し、さぁ引越しを始めようとフクフクドリ達をそっと集めた後で、羽海が指先を傘にやった後、自分を指差す。
(……待って、あたしの傘は?)
濡れないように庇うためにも、傘は必要だと訴えれば、セララがどやぁっと自分が持っている傘を見せる。
「傘? 一本しかないよ。だって相合傘したかったから。大丈夫、濡れないように大きいのにしたから!」
(……ドヤ顔がむかつく)
なんとなくしっくりこない気持ちを抱えながらも、羽海とフクフクドリを濡らさぬように気を配るセララと、協力しあいながら林へと向かって行く。
辿りついた林に、フクフクドリ達が嬉しそうに囀る。
その囀りを聴きながら、羽海のみが休憩所の椅子に腰かけ心なしかぐったりとしていた。
(……なんか、余計に疲れた気がする……)
その原因は、フクフクドリ……では勿論なく、隣にいるセララだった。
そのセララといえば来るまでの間に口説いたフクフクドリの番と仲良くお喋りしている。
「無事にお引越しできて良かったねー」
ぴよぴよぴよ。
肩で囀るフクフクドリに、視線を緩めバナナを差し出せば羽海の手から美味しそうについばんだ。
「羽海ちゃん寒くない?」
そんなやりとりの邪魔をせぬようゆっくりと動きながら差し出したのは暖かなお茶だった。
「はいお茶だよー」
それは、雨の所為で少々肌寒い羽海には嬉しいもので。
(……こういう気遣いが出来る癖に……どうして普段の行動がアレなんだろう……)
バナナを食べ終え、満足! という表情をするフクフクドリから指先を離し、そのままお茶を受け取り口を付ける。
ほんわかとした暖かなぬくもりが、全身に伝わっていく。
その時だった、ぴょこんと番の片割れが羽海の肩にと飛び乗ってくる。
(……?)
首を傾げた羽海の掌に、一枚の羽根。
はっと見れば、セララにも残った番が羽根をそっと落としていた。
「やったね、羽海ちゃん! オレ達の愛が認められたってことだよ!」
ぱぁっと笑顔になったセララに、羽海がぽいっと羽を捨てようと掌を動かした。
「待って、やめて、せっかくの好意を無碍にしちゃダメだよ!」
慌てていうセララではなく、ちょっと心配そうなフクフクドリに視線を合わせる。
「(ありがとう)」
口パクで伝えられたその言葉は、ちゃんとフクフクドリ達に伝わっていた。
(せっかくくれたのに、捨てないよ)
ぴよぴよぴよ。
嬉しそうな囀りが聞こえる。
(嫌いじゃ、ないから……恋じゃなくても……ずっと仲良くできれば、いいな)
手にしたお守りをぎゅっと握りしめる。
そんな羽海を見つめ、小さくセララが呟いた。
「……もぅ照れ屋さんなんだから」
その言葉は、フクフクドリ達だけが聞いたようだった。
●
「なんて可愛らしい……!」
リオ・クラインは目の前でぴよぴよと囀るフクフクドリ達をみて感慨深げにそう言う。
(夫婦で一生添い遂げるとは、一途な愛じゃないか)
囀るフクフクドリ達のほとんどは、番のようで、雨に濡れながらやってきたリオと、アモン・イシュタールを見ていた。
「お嬢様よぉ……間違っても食うなよ?」
「誰が食べるか!」
リオの一喝に肩をすくめレインコートに身を包んだアモンは、傘を取り出す。
それは同じレインコートに身を包むリオにも差すけれど、フクフクドリが濡れないための配慮だ。
(たく、よりにもよってこんな雨の日に……)
ぱたぱたと傘に落ちる雨音に、小さく眉を寄せる。
「さっさと終わらせようぜ~」
その言葉に、このままでは風邪を引いてしまうなとリオが頷く。
取り出したタオルをフクフクドリに掲げて見せる。
「ほら、おいで。風邪をひいてしまう」
それは、ふかふかのタオルだった。
フクフクドリの番が気になったのかパタパタと寄ってきてとまったのを驚かせないように静かにタオルで拭いてあげるリオ。
そんな様子を見て、アモンが紫の瞳を細め見詰める。
タオルで拭いてやったフクフクドリは、ふわっと本来のもこもこ具合を取り戻す。
(……おまんじゅうだな)
ふっかふかほかほかのおまんじゅうが二つ……そんなことをちょっと思っていれば、私も僕もと番たちがやってきた。
「このままここでやり続けるのもな……お嬢様、そろそろいくぞ」
「そうだな。よし、引越しをしよう、ついておいで」
視線を合わせ、出来るだけ穏やかに言うリオにフクフクドリが理解したのかちょこんと肩に飛び乗った。
アモンの肩にも別の番が飛び乗れば、他のフクフクドリ達も気になったのか一緒に来る見たいで。
「じゃぁ、行くぜ」
ゆっくりと歩き出す。
(うぅ……近い……)
ふと、相合傘状態だと気がつけばこの距離にドキドキしてしまって。
思わず照れたリオに気がついたフクフクドリがぴよぴよと囀った。
引越し先についたあと、休憩所で一緒にやってきたフクフクドリ達と戯れる。
アモンの肩にとまっていたフクフクドリが、次の居場所はここだ! とアモンの頭にちょこんと乗れば、アモンが苦笑を零した。
「おい……オレは巣じゃねえぞ」
そんな言葉なぞ気にしない! とばかりに頭の上で楽しげに囀る。
その様子を見て、思わず子供のように無邪気に笑うリオ。
ちょこちょこと動きまわったり、時々尻もちつくフクフクドリの様子がとても可愛らしいとなれば、自然と此方も無防備になって。
普段の気真面目な部分は少しなりをひそめ、本来の優しい性格が垣間見える。
そんなリオを見て、アモンは幼少の記憶を思い出す。
(ああ、やっぱりあの頃に出会ってたのはこいつなんだな……)
それは確信だった。
「……ん?」
頭上に居たフクフクドリが、そんな二人の様子を見て自らの体から抜き取った羽を二枚、落とした。
「くれるのか?」
その答えは囀りだ。
(恋のお守りか……。もしかすると……いやいや! 何を考えてる私!)
受け取った羽をそっと握りしめ、アモンは大切な人だけれど……と思いつつもリオは小さく首を振る。
「ありがとうな」
アモンの言葉にはっと顔をあげ、リオも微笑む。
「ありがとう、大切にする」
それに、嬉しそうに囀るフクフクドリ達の歌声が、林へと響き渡っていくのだった。
●
ぴよぴよぴよ。
「ピヨ見て下さい」
フクフクドリの大合唱にも負けない勢いで、ジルベール=アリストフは傘を差す自分の隣に居るヒヨリ=パケットにと声を掛けた。
「可愛いピヨ達ががあんなにぴよぴよ言ってますよ!」
きらきらと瞳を輝かせるジルベールに、ちょっとヒヨリは驚いたように瞳を瞬いた。
鳥が大好きだから、そんな彼の姿に親近感。
「初めましてですわ、フクフクドリさんたち」
そっと手を差し伸べ優しく言えば、フクフクドリ達が何かを話し合うかのようにお互いを見ながらぴよぴよと囀り始めた。
ジルベールはそんな彼女と鳥達夫婦を見守る。
乗ってくるまでは……と伸ばされた指先。
「……!」
やがて、一組の番がヒヨリの掌にちょこんと飛び乗った。
「まあ、人懐っこい鳥さん達だこと」
ぴよぴよとご挨拶するフクフクドリに微笑み、今から体をふかせて欲しいと言えば、ぴよぴよと嬉しそうに囀る。
取り出した吸水タオルで、そっとフクフクドリの背中やお腹を拭いてやり、勿論、翼の内側も忘れずに優しく拭いてやれば、ふわんと名前の通りに、ふっくらとした姿に。
どこか嫌な場所はないかと注意深く見ていたけれど、特にないようでとにかく気持ちよさそうだ。
そんな様子を見守り、ジルベールはヒヨリもフクフクドリもとても愛らしいと思う。
(ピヨは拗ねるかもしれませんが……)
どちらも可愛いのだから、それは仕方ないことだろう。
ヒヨリとフクフクドリが濡れぬように注意しながら、自然と口元が緩む。
「あら、耳の下が気持ちいいんですの? あとでカイカイしてあげますわ」
嫌な場所はなかったようだが、気持ちいい場所を発見し、ヒヨリが微笑む。
次に取り出したふかふかのタオル。
それに包み込み、大事に抱え込む。
小さな体と掌に、暖かな温もりが伝わった。
「では、そろそろ行きましょう」
ジルベールの言葉に、ヒヨリも頷く。
まずはお引越しをしなくては……。
ぴよぴよと、ピヨ語でお喋りをしながら、二人、ゆっくりと歩いて行く……。
ピヨを傘の中心に据え休憩所に着いた後、フクフクドリの番に鳥用皿に果物ナイフで食べやすいよう小さく切り分けるジルベール。
「ジル様が、切って下さるわよ」
ヒヨリは持ってきた果物が鮮やかな手さばきで、ブルーベリーとライチが、フクフクドリに食べやすい大きさになるのを見守る。
野鳥ゆえに、半分はそのままでとっておく。
皿の上に置いた果物に、フクフクドリの番が美味しそうに啄ばんだ。
震えて体力を消耗した体には、ちょうどいいご飯だったろう。
その番とは別のフクフクドリが、ヒヨリの指先で耳元をカイカイされているのを見つつ、持ってきたポットから暖かなハーブティーを淹れる。
暖かなそれをふーふーと冷まし、ヒヨリの指先から一旦抜け出たフクフクドリを確認した後、口元へ。
「ほらピヨ、お茶の時間ですよ」
照れたように頬を赤くするヒヨリに、くすくすとジルベールが微笑んだ。
「ふふ、照れてるんですか、ほら鳥さん達が落ちてしまいますよ」
その言葉に慌ててそっと見てみれば、大丈夫だとぴよぴよぴよと囀る。
「……良い香りですわ」
ハーブティーの香りに、皆がほっこりとして。
そっと広げたマントに、フクフクドリの番が収まって、なんだか眠そうにうとうとしている。
こんな、優しい時間がずっと続くと良いと、ジルベールが瞳を細める。
あまりにも可愛くて別れが寂しいけれど。
でも、我儘は言わない……と、視線を落とす。
「雨があがるまで、もう少しこのままでいさせて下さいね」
ジルベールのその言葉に、ヒヨリが頷く。
のんびりとした時間が流れていく……。
●
「片手の掌に二匹、か。フクフクドリって小さいんだな」
エセル・クレッセンは、ぴよぴよと囀るのを聞きながら、そう呟く。
「……そんな鳥が、羽がぺたーとなるほど濡れたらまずくないか?」
ラウル・ユーイストはその言葉に頷き、きちんと聞いてきた道のりを確認する。
「……仕方ない」
ぽそりと呟いたその言葉は、隣を歩くエセルには聞こえなかったようだ。
少々急ぎ足で向かいながら、思う。
少々遠そうではあるが、道はまっすぐなために迷うことはなさそうだ。
ぴよぴよぴよ。
その囀りがいっそう大きくなった時、目の前にはぺたーっと羽を濡らし、ふるふると震えるフクフクドリ達が居た。
まずくないか。
その言葉そのものの光景である。
持って来ていた傘をラウルと共に雨宿り出来るようにと地面や物陰等に置いて行く。
最初こそ、警戒していたようなフクフクドリ達だったが、それが自分の羽を濡らさないようになる場所だと認識すれば、ぱぱっと飛んできた。
「それにしても……この羽は濡れなくなれば自分で振って乾かせるのか?」
視線の先では、ふるふると体を震わせるフクフクドリ。
「なるほど」
結局ふるふるさせても、ちょっとぶわっとなる程度で、お饅頭に例えられる本来のフクフクドリにはならないようだ。
体を拭いてやりたいが、仲良くもないのに拭いたら驚いてしまうだろうか。
「仲良く……」
エセルが首を傾げた所で、果物ナイフを手にしたラウルが小さく林檎を切っていた。
貰ってきた林檎、そのままの大きさではフクフクドリにはあまりにも大きすぎるだろう。
「丸ごと食べれると思えんし、エセルのサクランボも種をとった方がいいか?」
「そうだな、そのほうがいいかもしれない」
果物を上げて、柔らかく話しかければ……という思いを胸に秘め、エセルが持ってきたサクランボのタネを採りはじめる。
そんな様子をぱたぱたと飛んできたフクフクドリが、肩にとまってみているのに気が付き、ラウルが切ったばかりの林檎をそっと渡してみれば、美味しそうに啄み始める。
「ほら、傘の下で食べるんだ」
ラウルが果物を載せたお盆の上に誘導してやれば、気が付いたフクフクドリ達がぱっとやってくる。
「ちゃんと皆に渡すから」
ゆっくりと穏やかに言うエセルに、意味が分かったのか喧嘩になることもなく啄み始めた。
きちんとお盆の上に収まるフクフクドリ達。
これならば、ひょっとしたらお盆に載せて移動できるかもしれないとラウルは思う。
「サクランボ、気にいったかな?」
エセルがサクランボを美味しそうに啄むフクフクドリに問いかければ、ぴよぴよと答えが返る。
どうやらもっと欲しいと言っているようで。
「どうぞ」
意外と食いしん坊らしく、差し出されたサクランボを美味しそうに啄んでいく。
「お前もおかわり食べるか?」
ラウルが切り分けた林檎がなくなり、どこかしょんぼりしているように見えるフクフクドリに言えば、ぴよぴよと囀る。
ぱたぱたとおかわり、という言葉を理解したのかフクフクドリ達がラウルの傍のお盆にと集まる。
「待ってろ」
再び切り始めるラウルを見て、タオルを取り出したエセルが待っているフクフクドリに優しく問いかけてみる。
「拭いても、大丈夫?」
ぴよぴよ!
寧ろ自分から飛び込んでくる勢いのフクフクドリ。
優しく羽を痛めぬように拭いてやりつつ、エセルがラウルにと声を掛ける。
「これなら、一緒に行けるかな?」
「大丈夫だろ、お盆に乗せたら沢山運んでやれそうだ」
ラウルの言葉に頷き、エセルが小さく微笑む。
なるべく沢山仲良くなって、運んでやりたかったのだ。
「全員、拭き終ったら移動しような」
ぴよぴよぴよ!
お願いします、とでもいうように、フクフクドリ達が囀ったのだった。
10人のウィンクルム達により、無事引っ越しが終わったフクフクドリ達。
ぴよぴよぴよ。
そんな大合唱が林に広がって行く……。
依頼結果:成功
MVP:
エピソード情報 |
|
---|---|
マスター | 如月修羅 |
エピソードの種類 | ハピネスエピソード |
男性用or女性用 | 女性のみ |
エピソードジャンル | ハートフル |
エピソードタイプ | ショート |
エピソードモード | ノーマル |
シンパシー | 使用不可 |
難易度 | とても簡単 |
参加費 | 1,000ハートコイン |
参加人数 | 5 / 2 ~ 5 |
報酬 | なし |
リリース日 | 06月13日 |
出発日 | 06月19日 00:00 |
予定納品日 | 06月29日 |
参加者
会議室
-
2015/06/18-06:20
おはようございます、瀬谷瑞希です。
パートナーはファータのミュラーさんです。
皆さま、よろしくお願いいたします。
フクフクドリさんがとっても可愛いです。
ずぶ濡れだなんてかわいそう。
仲良くなれるようにがんばります。 -
2015/06/18-00:47
-
2015/06/17-22:53
私はエセル・クレッセン。パートナーはラウル・ユーイスト。
どうぞ、よろしく。
フクフクドリは果物が好物、か。何を用意して行くかな。 -
2015/06/17-22:09
-
2015/06/16-22:58