想うということ(こーや マスター) 【難易度:普通】

プロローグ

●あなたに
 カラン。
君が店内に入ると、扉に取り付けられた鐘が鳴る。程よく効いた冷房がありがたい。歩いてきた為、少し汗ばんでいたのだ。
 店内を見回し、君はほっとした。今日は随分と客が少ないし、商品も充分に残っている。
これならパートナーの家に持っていくお菓子もゆっくり選べそうだ。
 ショーケースの中にはケーキにプリン、シュークリームといった定番のものだけでなく、これからの時期に嬉しいゼリーやムースもある。
店内中央の陳列台にはマドレーヌ、クッキー、フィナンシェなどの焼き菓子もある。
 さて、どれにしようか――


●あなたへ
 君は調理器具と材料を確認した。作るものは既に決まっている。二人分の昼食だ。
パートナーがお菓子を買ってきてくれるというし、量は作らなくても問題ない。
 時計を見ても、時間には余裕がある。
昼食を作ってから食卓を整えても、軽く一息つくことは出来そうだ。
 エプロンをつけ、袖を捲くってから手を洗う。
さて、始めよう――


●あなたとあなた
 君達はどちらかの自宅で昼食を摂る約束をしている。
それは神人の家かもしれないし、精霊の家かもしれない。昼食を作るのは家主だ。
 パートナーは家に向かう途中、菓子店に寄って土産を買うことにしている。
菓子を選ぶのはパートナーに一任されている。
 相手の為に何を買うのか、何を作るのか。全ては君達次第だ。

解説

●参加費
お菓子代&昼食の材料費 400jr

●すること
神人・精霊でAとBに分かれて行動してください

A:自宅で昼食の準備
簡単な昼食作り。
オムライスだったりサンドイッチだったり、パスタだったり。

B:菓子店でお菓子の購入
プロローグに記載されてるものからお好みでどうぞ
ケーキの種類やゼリーなどの味は、定番から夏季の果物を使ったものが揃ってます。
(ドリアンのケーキだとかその手の変り種は積極的にマスタリングしますのであしからず)

神人がAで精霊がB、神人がBで精霊がAでも構いません
ただし、家についてからの描写(二人が顔を合わせてからの描写)は行いません。


●その他
相手の事を考えて、お菓子を選んだり、ご飯を作ったりしてください
パートナーはこれが好きだった、これが嫌いだけど栄養が偏るから入れよう等等

菓子店で他の参加者さんと出会うことはありません

ゲームマスターより

おかしたべたい

リザルトノベル

◆アクション・プラン

リーリア=エスペリット(ジャスティ=カレック)

 

彼を家に招き、一緒に昼食をとることになった。
そういえば、彼を家に招くのはあまりなかった。
あれ?なんだか顔が熱い。
最近色々あって、どうも妙な方向に意識してしまっている気がする…。

落ち着け、私…。



ジャスティは、研究に没頭すると食事を忘れたり、最低限しか食べなかったりすることがあるため、今回は平和に普通に食事をしてもらいたい。


パスタとサラダを作る。
パスタには、きのことほうれん草のパスタを作ろう。
味付けは、和風にするかな。
自分ひとりなら直感でやるが、今回はレシピも確認してちゃんとしたのを作ろう。

サラダは、レタスやコーンなどでシンプルなものを。

料理を作り終わったら、テーブルを拭いたりして準備を整える。


エリザベータ(ヴィルヘルム)
 
心情
そういや家に呼ぶの初めてだ
部屋ん中見て驚いちまうかな?
…こういう時は素のまま方がいいか


一人暮らし
AROAに斡旋してもらった1DKマンション
白と青を基調として時季の花とぬいぐるみを飾っている

行動
手料理を食べさせる約束を果たすぜ!

料理コンで肉大好きって言ってたしハンバーグがいいか
量は多い方が好きっぽいしいつもより大きめに作ろう
付け合せはバゲットとアイスティーな!

えへへ、家族以外の誰かの為に作るのって初めてだ
なんか緊張するな…喜んでくれるかな?
…女は苦手って言ってたし、あたしが可愛い物好きって知ったら引くかも…?

…いや、あいつなら大丈夫!
ちゃんとあたしを見てくれるって言った
信じてやらないとな



Elly Schwarz(Curt)
  B

・菓子店では店員さんにお勧めを聞きながら買い物
・思わず自分が食べたいお菓子ばかりを見てしまう
・ふとクルトの事を思い出し甘さ控えめのお菓子も聞いてみる
・店員さんから教えてもらったお勧め等(お任せ)を購入
わぁ全部美味しそうですね!こう言ったお店はワクワクしちゃいます。
(あ、でも…クルトさんは甘味が嫌いでした!)
すみません!甘さ控えめのものってありますか?

・昼食に苦手が出ても食べる努力を
そう言えば、今日はクルトさんが昼食を作ってくれると言ってました
辛いものが出てもクルトさんのように食べる努力をしたい
でないと…ずっと食べられないままです
共有出来ない事があるのは寂しいですよね。頑張りましょう!(意気込


メイリ・ヴィヴィアーニ(チハヤ・クロニカ)
  A:精霊
B:神人

行動:
店の中を見て回る。焼き菓子に狙いを絞り、迷った挙句オレンジのフィナンシェを買ってチハヤの家に。

心情:
(買い物中)
何を買っていこうか?
ケーキは落としてダメにしてしちゃいそうで怖い、
ゼリーは食後のお茶に合わないかもしれない、
無難なところで焼き菓子にしよう。

ちーくんはどんな味が好きなんだろう?
甘いものは多分嫌いではないはず。
生クリームのお菓子は食べているところ見たことないけど
カバンの中にいつも柑橘系の飴、色んな味のクッキー、チョコレートが入っているのは知っている。
柑橘系で素朴なのがいいかなぁ。

(商品購入後)
「ちー君、これ好きだといいなぁ」とウキウキ。



●甘くて、辛くて
 ショーケースの中には色とりどりのケーキ。美味しそうでもあるし、華やかでもある。
Elly Schwarzの背後にある長テーブルにはラッピングされた焼き菓子が飾られている。全部が美味しそうで、悩むところだ。
しかし、それも楽しみの一つ。甘いものを選ぶのは、ワクワクする。
 むぅと小さな唸り声を上げたEllyに店員が声をかけた。
「お決まりですか?」
「いえ、悩んでいて……。お勧めはありますか?」
「一番人気はミルクレープですね」
 指し示された場所を見てみると、クレープ生地とクリームを交互に重ねただけのシンプルなミルクレープが鎮座している。
一番人気というだけあって、他のケーキよりも置いてある個数が多い。
「フルーツを使わない代わりに、ホワイトチョコを混ぜ込んだクリームを使用しております」
「ホワイトチョコ、ですか」
 甘味を好むEllyの興味を引くには充分。
じっとミルクレープを見始めたEllyが求めているのは一つだけではないと悟ったのか、はたまた店員ならではの商売魂か、店員は別のケーキの紹介を始めた。
「夏季限定のマンゴーのムースケーキは、マンゴーが濃厚なので他のムース系のケーキよりも甘くなっております。
夏みかんゼリーもお勧めですよ」
 ムースケーキとゼリーはどちらも綺麗なオレンジ色。それぞれ大きくカットされたマンゴーと夏みかんが飾られている。
どちらも美味しそうだ。しかし、一番人気のミルクレープも気になる。一頻り悩んだ末、ミルクレープとマンゴーのムースケーキを頼もうとしたが――
「えっと……それでは、ミルクレープとマンゴーの……」
 言葉を切る。そういえば、Curtは甘いものが嫌いだった。
ミルクレープとマンゴーのケーキ、どちらも甘いはず。Curtが楽しめないだろう。
「すみません!甘さ控えめのものってありますか?」
「夏みかんゼリーは夏みかんの甘さだけでさっぱりしているので、甘いのが苦手な方でも大丈夫だと思います。
あと、ほろ苦いコーヒーを使ったオペラをお好きな男性が多いですね」
 言われるがまま視線を移すと、金箔を乗せられた直方体のチョコレートケーキがある。見た目も大人の印象だ。
Curtは苦い物も好まない。ならば、ここは素直に。
「じゃあ、ミルクレープと夏みかんゼリーをお願いします」
「かしこまりました。少々お待ちください」
 店員がケーキを包装している間も、Ellyはショーケースの中を覗く。見るだけでも楽しいのだ。
ふと、夏みかんゼリーを見た瞬間、Curtが昼食を作ると言っていたことを思い出す。彼は何を作るのだろうか。
もし……辛いものが出ても、食べる努力をしようと思う。でなければ、ずっと食べられないままだ。
共有出来ないことがあるのは寂しい。頑張ろうと決意した時、包装を終えた店員がEllyに声をかけたのであった。

 脂汗がだらだらとCurtの額から滴り落ちる。ちらり、一応は完成したホットケーキを見るとさらに汗は増す。
いっそ見事と言える程に黒く焦げたホットケーキ。
味見もしてみたが、焦がしただけでなくなにかの分量まで間違えていたようで、とても食べられたものではない。
Curtは床に手をついた。どんよりと、見るからに落ち込んでいる。
「ヤバい……」
 Ellyと同居しているが、料理はEllyの担当だ。今日はEllyが外出する為に自分が作ると言ってみたものの……暗雲が立ち込めている。
とはいえ、諦めるのはまだ早い。トムヤムクンならどうにかできるかもしれない。そう考えたCurtは材料を集め出すも、Ellyは辛いものが苦手だったことを思い出した。
「唐辛子を控えてみるか……?」
 ぽつり呟く。料理が不得手である以上、慣れた作り方から外れるのは不安でしかない。
時計を見ると、時間が随分と進んでいた。それなりに時間の余裕はあったはずだが、そう何度も作り直せないだろう。もう一度作り直すことになれば、間違いなくEllyを待たせることになる。
 Curtは肺から空気を搾り出すかのような深い溜息を吐いた。
料理とはこうも難解なものなのか。悩むCurtの視界の隅に、白い紙がちらついた。棚に貼り付けられている。
「……ハッ!あれは!」
 覚えがある。ホットポットのレシピだ。棚から引っぺがし、レシピをしっかり読み込む。
これならば、香辛料を抑えて薄味にすれば勘でどうにかできるかもしれない。
 レシピと睨めっこし、悪戦苦闘の末、Curtが料理を作り上げたのはEllyが返ってくる数分前だった。



●カバンの中身
 メイリ・ヴィヴィアーニはゆっくりと店内を見てまわる。一歩進めば、ひらりと長い黒髪が揺れる。
ケーキや焼き菓子を見る度に、小さく首を傾げる。悩んでいる証拠だ。
「ケーキは落としてダメにしてしちゃいそうで怖いし」
 ケーキからゼリーへと視線を移す。
「ゼリーは食後のお茶に合わないかもしれない……」
 ぐるぐるぐるぐる。不安が付きまとう。
店内を回ること三周目にして、ようやく狙いが定まる。無難な焼き菓子にしよう。
 焼き菓子は、長テーブルの上で小さなバスケットごとに分かれて置かれている。
フィナンシェやマドレーヌ、クッキーにしても数種類ずつある。さて、どうしたものか。
「ちーくんはどんな味が好きなんだろう?」
 小さく呟いて、思い返す。甘いものは嫌いではないはずだ。
パートナーであるチハヤ・クロニカが生クリームのお菓子を食べているところは見たことが無い。しかし、カバンの中に甘味が潜んでいることは知っている。
色んな味のクッキー、柑橘系の飴、チョコレートなどの細々したお菓子だ。
「……柑橘系で素朴なのがいいかなぁ」
 飴は、一番長い時間を楽しむことが出来るお菓子だ。柑橘系の飴を携帯しているのは、好きだからだろう。
メイリはフィナンシェを四つ取った。一人二つずつくらいが食後のお茶には丁度いいだろう。
 会計を済ませ、店を出る。扉を開くと鐘が鳴った。カランと、軽やかな音。
綺麗に包装された箱が、袋の隙間から見える。メイリの唇がほんのりと弧を描いた。
「ちー君、これ好きだといいなぁ」
 ウキウキと弾む気持ちと共に、メイリは大きく一歩を踏み出した。
行こう。チハヤの笑顔を見る為に。

 チハヤは冷蔵庫を開いた。まず、アイスティーの確認。ポットはひんやりと冷えている。問題無い。
続いていくつかの野菜を取り出した。玉ねぎに人参、ピーマン、キャベツ、プチトマトと胡瓜。
 メニューは決まっている。オムライスとサラダだ。
まずはオムライスの具材、玉ねぎと人参、ピーマンを細かく切っていく。優れた包丁捌きとは言い難いが、自分の食事を作るには充分の腕前だ。
姉にこき使われた、もとい姉の面倒を見ていた成果といえるかもしれない。
 続いて、キャベツは千切りにし、胡瓜は薄くスライスする。
サラダはシンプルなものにするつもりだ。
「こんなもんか」
 最後にプチトマトを乗せて、サラダは完成。メイリはトマトが苦手だが、プチトマトなら食べられる。
彩りの為でもあるが、メイリのトマト嫌い克服の為でもある。
 鶏肉を冷蔵庫から出し、細かく切ってフライパンで炒める。色が変わってから他の具材も投入。
焦げないように気をつけ、米を加えて味を調える。これでライスは完成だ。
 巻くオムライスは難しい。それだけの腕前はないので、素直に後から卵を乗せるようにしたのだが……若干、破けてしまった。
いや、次こそはと挑んだ二つ目のオムライスでも、やはり穴がちらほらと。
 まあ、仕方ない。チハヤは小さく息を吐き、テーブルの上に料理を運ぶ。
これで昼食の準備は終わりだ。あとの心配は――
「菓子……無事に持ってこれるんだろうか」
 道中で転びそうな気がする。というか、転んでいるに違いない。クッキーなら割れているだろうし、ケーキならひしゃげているだろう。
時計を見てみると、約束の十五分前。少し悩んだ末、チハヤは自分の予感に素直に従い、救急箱を取りに向かった。



●約束と手土産
 ほうっ、とヴィルヘルムはショーケースを眺めながら息を吐いた。筋肉のついた男性らしい体つきでありながら、その仕草からは女性のような艶が感じられる。
ヴィルヘルムはケーキを見ているが、瞳に映っているのはここにはいないパートナーの姿。
本当に変わった子だ。まさか女性不信を理解してくれるとは思わなかった。今日はあの子を知る良い機会になるだろう。
 意識をショーケースの中へ切り替える。季節は初夏。オレンジ色の鮮やかなゼリーが目に眩しい。
これにしよう、と店員を呼ぼうとして――
「待って、アタシ」
 声に出して自分を止める。確かに、大抵の女の子は柑橘系が好きだ。食べやすいゼリーであれば尚更。
けれど、エリザベータは好むのだろうか。
「ちゃんと仲良くするって約束したんだから、あの子の好きな物じゃないと!」
 小さな、けれど確かな呟き。改めてヴィルヘルムは一つ一つを凝視する。
生クリームと苺がふんだんに使われたショートケーキ。程よい焼き色のチーズケーキと、赤紫のジャムが乗ったレアチーズケーキ。
後ろを振り返ればマドレーヌにフィナンシェなどの焼き菓子。見れば見るほど分からなくなってくる。
 エリザベータの好物までは把握していなかった。こんなにも頭を悩まされるとは!
しかし、不思議と嫌な感じはしない。何を買えば彼女が喜ぶのか、どんな笑顔が見られるのかと思うと楽しくなってくる。
「よしっ」
 姿勢を正し、ショーケースに向き直る。早く手料理も食べたい、ここはさくっと決めよう。
甘いものは好きなようだが、懲りすぎても駄目そうだ。シンプルなものがいい。ヴィルヘルムの視線の先にはバニラムース。このくらいが丁度いいだろう。
 自分の分は先程頼もうとした柑橘系のゼリーにしよう。もしこちらの方をエリザベータが好むのであれば、交換すればいい。
幸い、ヴィルヘルム自身は甘味を好む方だ。
 ヴィルヘルムは手を上げ、店員を呼んだ。

 エプロンを結び、よしっと小さく呟いた。ハンバーグの材料とバゲットがエリザベータの前に並んでいる。
ヴィルヘルムと交わした、手料理を食べさせるという約束を果たす日だ。家族以外の為に料理をするなんて初めてで緊張するが、やはり喜んで欲しい。しっかり作ろうと意気込む。
 そんなエリザベータを室内の白薔薇とぬいぐるみ達が見守る。
女の子らしく可愛いもので飾ってあるが、白と青を基調としたインテリアは爽やかさでもある。
 パン粉を牛乳に浸している間に、玉ねぎをみじん切りにする。それらを、挽肉に卵と塩コショウ、ナツメグと合わせてよくこねる。
次は形成だが、いつものように均等に分けようとした手を止める。
「いつもより大きめに作るんだった」
 男性らしく、ヴィルヘルムは多目を好むようだ。ヴィルヘルムの分が大きめになるよう、タネを取ってキャッチボール。
しっかり空気を抜いてから、油を引いて熱したフライパンの上へ。中まで火を通す為に、酒を振ってから蓋をする。
 その隙に付け合せのバゲットを用意してテーブルに運んで、エリザベータは室内を見回した。
いつも通りの、あえて言えば来客を意識して少しばかり整えた自分の部屋だ。見慣れた光景だが、ヴィルヘルムは大丈夫だろうか。
女は苦手と言っていた彼は、エリザベータが可愛いものを好むということを知れば引くかもしれない。少しばかり不安になる。
「っと!」
 我に返ったエリザベータはキッチンに駆け込んだ。慌てて蓋を開けて、ほっと息を吐く。焦げてはいない、丁度いい焼き色だ。
大き目のハンバーグを皿に移しながら、エリザベータは不安を振り払う。
 ヴィルヘルムなら大丈夫だ。彼はちゃんとエリザベータを見てくれると言ったのだ。その言葉をエリザベータ自身が信じなくては。
ふっと笑みを浮かべ、エリザベータはソースでハンバーグに顔を描くも、すぐにソースをかけなおして絵を消した。
消された絵は、ウィンクしたヴィルヘルムの顔のようだった。



●冷静と現実
 ジャスティ=カレックはそわそわしていた。リーリア=エスペリットの家に招かれ、一緒に昼食を摂るということが嬉しくて仕方ない。
ドキドキとワクワクが胸の内で他の感情と複雑に結びつき、舞い上がるような感覚さえ覚える。こんな気持ちをジャスティは知らなかった。どうしたものか。
冷静でいなければと自制し、表情を意識すれば意識するほど、仕草に表れてしまっていることには気付いていない。
「チョコを使った菓子は好きだったはず……」
 どのケーキがリーリアの好みにあうのだろうか。チョコレートを使ったケーキを見るも、どうもピンと来ない。
ふいにリーリアの笑顔が脳裏を過ぎる。生命力に溢れた笑顔は、ジャスティの心を暖かくする。
 ショーケースの中を彷徨っていた視線が、一点に留まる。夏季限定の商品が並ぶコーナーだ。
マンゴーのムースケーキと夏みかんゼリーが並ぶ、その横にあるタルトが気になった。薔薇のように重なり合った桜桃と白桃の上から色とりどりの花びらが散らされている。
リーリアにはこういったフルーツを使った、色鮮やかなものの方があっているように思う。それに美味しそうだ。
「すみません」
 ジャスティは店員を呼んだ。少し悩んで、同じタルトを二つ頼む。
喜んでもらえるだろうか。喜んでもらえたなら、嬉しい。
 ケーキの包装が終わるまでの僅かな時間。ジャスティの唇は、柔らかな弧を描いていた。

「しめじとほうれん草、レタス、コーンにトマト……」
 キッチンに並べた食材を眺めながら、リーリアは指を折って材料が揃っているか確認していく。
サラダは材料を切って混ぜるだけのシンプルなものにするつもりだが、パスタは違う。自分の分だけならば直感だけで作るが、今日はしっかりレシピを確認する。
 一度研究に没頭してしまえば食生活が乱れるのがジャスティだ。生きる為の最低限しか食事をしないこともままある。
今回は平和にゆっくり落ち着いて食事をして欲しいと思う。
 そういえば……ふと気付いたことがある。ジャスティを家に招くのはあまりなかったはず。というよりも初めてだ。
気付いてしまったが最後。見る見るうちに顔が熱くなっていく。近頃、色々なことがあってどうも妙な方向に意識しがちだ。
「落ち着け、私……」
 何度も深呼吸を繰り返すも、熱はなかなか引いてくれない。しかし、このままではいられない。
強引に気持ちを切り替えるべく、料理に取り掛かった。湯を沸かしている間に、ざくざくと食材を切り進める。次第に顔の火照りが治まっていく。
 切り終えたころにはいつも通り。リーリアはレシピを確認し、調味料を準備していく。
ソースはお湯が沸いてから作り始めた方が良さそうだ。今のうちに切った野菜を絡めてサラダを仕上げ、テーブルの準備を整える。
 ふぅとリーリアは息を吐いた。湯が沸くにはまだ時間がかかりそうだ。
もう一度レシピに目を通し、ソースの作り方を読み込む。ジャスティに食べさせるのだから、失敗はしたくない。
やっぱり、美味しいと思って欲しい。
 ふつふつと、鍋の湯が沸騰の兆しを見せ始めた。
リーリアはレシピを置いて、パスタを湯の中に投入する。円状に広げたパスタが沈んでいく様子は、約束の時間が少しずつ近付いていることを予感させた。



依頼結果:成功
MVP

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター こーや
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 女性のみ
エピソードジャンル ロマンス
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 普通
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 4 / 2 ~ 4
報酬 なし
リリース日 05月24日
出発日 05月29日 00:00
予定納品日 06月08日

参加者

会議室


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