プロローグ
何でそうなったかな……。
ボトムスのウェストの下あたり、ちょうど後に回した手を下に伸ばしたあたり。
身も蓋もない言い方をするなら『おケツ』
そこを片手で隠すようにして、そしてもう一方の手には武器を持って君は走っていた。
何でそんな不自然な格好で走っているのかといえば、ボトムスが破れて中身が露出してしまっているからである。
俗に言う「パンツ丸見え」というアレである。
んでもって何でパンツが丸見えになっているのかと言えば
何の不幸か或いは僅かの油断か、デミ・ワイルドドックにボトムスの布、しかもちょうど尻のところを噛み千切られたのだ。
中身が無事だったのは不幸中の幸い……だよ、うん。間違いない。
とにかくそんな状況で、君は敵であるデミ・ワイルドドックを追っている。
君の前には逃げるデミ・ワイルドドック。
君の後には大切な神人。
そして周囲には一般人。
周りの全てが敵なんじゃないかと錯覚を起こしそうになる状況の中。
デミ・ワイルドドックが前方にいる一般人の一団へと向かおうとしている。
このままでは危ない。
君は意を決して走り出す。
ボトムスからのぞくパンツもそのままに。
元々は、イベリン王立音楽堂ハルモニアホールを警備するという依頼だった。
様々な妨害に遭いつつも、ウィンクルム達の尽力により何とか完成したハルモニアホール。
今日はそこで、とある舞踊団の公演が行われる予定だったのだ。
特に危険な予兆が見られていた訳ではなかったが、音楽堂再建中には度重なる妨害があったこともあり
念のためということで、今日のイベントの警備のために君はA.R.O.A.から派遣されてきていたのだ。
本来ならば、特に何事もなく警備の仕事をこなし、
合間には客席の警備と称して舞踊団の舞台も覗き見することができるはずだったこの任務。
しかしというべきか、それともやはりというべきか……事件は起こった。
そろそろ開場となる開演30分前。
ハルモニアホールの入り口付近にデミ・ワイルドドックが現れたのだ。
慌てて駆けつけた君。
そして何がどうなったのか……詳細は謎だが、デミ・ワイルドドックにボトムスの布をもって行かれたのである。
さて、この局面。どう切り抜けようか。
……あれ?あそこに一人、ちっとも動揺していない金髪のご婦人がいる気がするぞ?
解説
今回は各ウィンクルム個別でのシチュエーションとなります
パンツの柄について希望がある場合はプランの中に記載してください
●目的
舞踊団の公演をぶち壊しにやってきたデミ・ワイルドドックを討伐してください
ただし、不幸な事故により精霊のパンツは丸見えになっています
●状況
ハルモニアホールの入り口付近です
街中の広場のように広い範囲で整えられており障害物等はありませんが、
公演を見にやってきた一般の人達が大勢おり、突然のデミ・ワイルドドックの出現に驚いています
みな怯えていますが、まだパニックには至っていません
●デミ・ワイルドドック
名前の通り、野犬がデミ化したもので牙や爪で攻撃してきます
属性はランダムです
デミ・ワイルドドックの数は、神人のレベルにより下記のようになりますので注意してください
Lv1~Lv3 1頭
Lv3~Lv6 2頭
Lv7~Lv9 3頭
Lv10以上 4頭
ゲームマスターより
プロローグを読んでくださってありがとうございます。
前々から大切に暖めていたネタを、ようやく皆様のもとにお届けすることができました。
レベル別になっていますので、初心者でも入りやすいアドエピになっていると思います。
どうぞよろしくお願いします。
リザルトノベル
◆アクション・プラン
手屋 笹(カガヤ・アクショア)
カガヤが随分と恥ずかしい事になってしまいましたね… (口を押さえてちょっと笑ってる) 一般の方が多い場所での討伐。 一般の方の安全第一で素速く行かなくては。 カガヤ、喚いてないでトランスしてさっさと行きますよ(鬼) カガヤの大きな武器では一般の方達から 引き離さないと不利ですね… 前方に居る一般の方々に向けて声をあげます。 「危ないので皆様下がって下さい!」 デミは4体。 カガヤが対応し切れていない個体が 一般の方の方へ行かないよう わたくしが引き付けます。 盾を持ち、こちらに対しての攻撃は防御し しっかり受け止めましょう。 カガヤ…お嫁さんになるんですか…? 心配しなくてもわたくしが貰ってあげますわよ。たぶん(強調)。 |
ロア・ディヒラー(クレドリック)
わ、わあああく、クレちゃんそのズボンが破れてパンツが…!! た、確かにそうだけども…(真顔で淡々と言われると恥ずかしがってる私が変みたいじゃない…!ある意味堂々としすぎてて周りの人がそれもそうだとか納得しかかってるけど!!) 動揺しつつトランスする。 (やっぱり気になる。何で私が恥ずかしいんだろう。あ、そうだ私もハイトランスで一緒に戦えるんだから、敵をさっさと倒して着替えさせればこの恥ずかしい状態が終わるかも…!) 私も戦えば早く終わると思うし、ハイトランスしよう、クレちゃん!! (尊大な態度で差し出された紋章のある手の甲に口付けしハイトランス・ジェミニ状態へ)スカルナイトナックルで容赦なく攻撃する |
水田 茉莉花(八月一日 智)
うるっさぁい、黙れぇ!(トランス完了) ほづみさ…こんのバカチビ! ちょっとは隠したらどうなのよこのバカったれ! (自分の方が手で目を隠してる…けど指の間から見てる) ああもう、行っちゃった… 自分の方に来たヤツは、マシュマローンでぶん殴っとこうかな? あれ? あのおば様、動かないわ びっくりして腰でも抜かしたのかしら あの…すみません、避難、しませんか? 普通だったら、こう声をかけたら動いてくれるけど あやしい人だったり、いきなり攻撃されたら あたしだって応戦するわよ あ、ほづみさん…助けに来てk…更にまるみえーっ!! ハリセン持って来とけばよかった! (マシュマローンのつかでぶっ飛ばし) …ジャケットで隠して、ほづみさん |
名生 佳代(花木 宏介)
・心境 久々に眼鏡で殴れ! 戦闘は油断しちゃヤバいん…。 戦闘中に笑っちゃいけない…! プッ…キャハハハ! お腹痛い! 勤勉!勤勉パンツ…ッ! やばっウケる…戦闘は真面目にやらないと痛い目見るって学んだ…ううん、我慢…!プッ 下着についてはあとで聞けばいいしぃ!プププッ …へぇ?バカ眼鏡も大変なんだぁ? ・戦闘 この間色々あったから…装備の見直しをしたんだしぃ。 宏介には実力に見合った手裏剣に変えてもらったりね。 初めて持った手裏剣らしくて愛着があったみたいだけど、命中精度にかけちゃうから扱えるようになるまで我慢させたしぃ。 剣術を学び始めたけど神人のあたいは無理して戦わず自衛程度。 的に近づきすぎず隙を伺ったり支援する。 |
ファルファッラ(レオナルド・グリム)
わーお…パンツ丸見えってやつだね☆ 私は全然気にならないけどなぁ…レオは気にするんだね。 レオ…家だと結構パンツでうろうろしてるじゃない? ここは家じゃない?そんなに気になるものかな? せっかく舞踊団の舞台が観れると思ったんだけどな…台無しだよ。 とりあえずさくっとトランスしとこう。 私達が相手にするデミ・オーガは幸い一匹みたいだし。 なんとか出来るよね? レオの猫ちゃんパペットで一気に攻撃だ。 私がパンツ丸見えになったらどう感じるか? …何も感じないよ。優先事項があるならそっちを優先するし。 恥じらい?何それ美味しいの? レオがみにつけた方がいいっていうならみにつけるけど。そんなに必要なものとは思わないなぁ…? |
●赤地に黒の肉球スタンプ
「あのデミわんこ……!4匹とも討伐してやるううう!!」
クルリと巻いた尾を跳ね上げて絶叫するわんこ。こと、カガヤ・アクショア。
後ろに回した手の指の隙間からは、隠しきれない赤い布地が覗いている。
その正体は、わんこの黒い肉球手形がプリントされたボクサーパンツだ。
デミとカガヤとぱんつ。偶然にも揃った3つのわんこ繋がりに目を丸くする手屋 笹。
「随分と恥ずかしい事になってしまいましたね……」
口元をおさえた手の指の隙間から見える、隠しきれない笑み。
だって仕方ないじゃない、ぱんつが丸見えなんだから。
とはいえ事態は緊迫している。一般の人達の安全を確保するためにも、デミわんこの討伐を急がねばなるまい。
「カガヤ、喚いてないでさっさと行きますよ!」
一足先に落ち着きを取り戻した笹に急かされ、カガヤは鬼だ悪魔だとぼやきつつ笹の前に身を屈めた。
「私達の全ては、ただ潰滅の為にある」
インスパイアスペルと共に笹がカガヤの頬にキスを送れば、二人の周りには清流のような風が吹き荒れる。
剥き出しになった下着に直に風を感じ、カガヤは情け無さにヘニャリと尾を垂れた。
わんこ対デミわんこ。男のプライドを賭けた戦いが今始まる。
「お前達の相手は俺だ!」
両手剣『サクリフィキウム』を構え、デミ・ワイルドドックと一般の人々の間に勇ましく駆け込むカガヤ。
武器を両手でしっかりと持ってしまったため隠せなくなってしまった後ろ側。
背中に守った人達の間から「何か見えちゃった」的な気配がビミョーに伝わってくるが、彼らを守る為ならば仕方ない。
英雄というものは自己犠牲を厭ってはならないのだ。
「早くここから離れて下さい!」
ぱんつが見えてしまうからではなく、危険から守るため、デミ・ワイルドドックに向き合ったカガヤは後に向かってそう声を掛ける。
「皆様、危ないのでこちらの方に下がって下さい!」
少し離れた場所から避難誘導を補助する笹。
2人の言葉によりデミ・ワイルドドックの前方にいた人達が掃け、カガヤが大剣を振るうのに十分なスペースが確保された。
「いくぜっ!!」
大剣を振り回すのではなく、突くように構え、一番手前のデミ・ワイルドドックに飛びかかるカガヤ。
「……!」
カガヤの突きを受けたデミ・ワイルドドックは、顎下から胸郭までを串刺しにされ、悲鳴さえ上げぬまま息絶える。
その屍骸を剣を薙ぐことで振り落としたカガヤに、次のデミ・ワイルドドックが牙を剥いた。
「……っ」
デミ・ワイルドドックの顎に剣を噛ませ、その攻撃を受け止めるカガヤ。
一旦口を離した隙を狙って蹴りを入れて距離を作り、再び飛びかかってきたところをカウンターで斬り伏せる。
更にカガヤは、その後ろにいた3頭目のデミ・ワイルドドックも一刀のもとに叩き伏せた。
そして残る1頭。これが狙ったのはカガヤではなく神人の笹だった。
背後には一般の人達を守りつつ、デミ・ワイルドドックの攻撃を盾で受け止める笹。
次の瞬間。
ガブリ。
笹が手にした盾『食いしん坊なお化け』がデミ・ワイルドドックに噛み付いたのである。
予想だにしなかった事態に怯むデミ・ワイルドドック。そこに先の3頭を倒したカガヤが、パンツ丸見えのままで駆けつけた。
「うう。こんな恥ずかしい姿を、こんなたくさんの人に見られて……俺もうお嫁に行けない」
落ち着きを取り戻したハルモニアホールの入り口。壁を背にしてしゃがみ込み、カガヤは顔を覆ってそう呻いた。
「カガヤ……お嫁さんになるんですか……?」
不思議そうに訊ねる笹。しかし、カガヤにはそれに答える力は残っていない。
身体のダメージは皆無だったが、心のダメージが大きすぎたのだ。
思わず笑ってしまったことを微かに反省しつつ、それでもやっぱり落ち込むカガヤの様子が可笑しくて、笹はにこりと笑いながら言った。
「心配しなくてもわたくしが貰ってあげますわよ。た・ぶ・ん」
それがカガヤにとってトドメになったのは言うまでもない。
●シンプルかつ高貴の紫
ビリリと破れたズボンから覗く、紫色のトランクス。
それを目にしたロア・ディヒラーの顔が、まるでぱんつの色を写したように青くなり、そして赤くなる。
「わ、わあああ……!く、クレちゃん、その、ズボンが破れてパンツ!!パンツがっ……!!」
ぱんつぱんつと連呼するロアを、不思議そうな表情と共に振り返るクレドリック・シュテルン。
「……パンツが見えている?」
言われてズボンの尻部分に手をやってみれば、なるほど、そこにズボンの布地の手触りはなく、代わりに柔らかで滑らかな生地が触れた。
しかし……。
「私は女子ではないし、肌を露出しているわけではない。戦闘に特に支障は無いと思うのだが違うかね?」
立て板に水の如く述べつつ、微塵の恥じらいも見せずに杖を構えるクレドリック。
「た、確かにそうだけども……」
そうだけども、そうじゃないのだ。乙女の微妙な気持ちは、理系思考のクレドリックには伝わらない。
(ある意味堂々としすぎてて、周りの人も納得しかかってるけど!!)
普通は目にすることのないデリケートな下着。やっぱり、ぱんつ丸見えは恥ずかしい。
激しく動揺しつつも、ロアは戦いにむけてクレドリックの冷たい頬に口づけた。
クレドリックの頬がいつも以上に冷たく感じられるのは、きっとロアの体温が上がっているせいだろう。
(熱でもある……訳ではなさそうだが。はて?)
その温度差を不思議に思いつつも、クレドリックは『契約のペリステリ』を構えて4頭のデミ・ワイルドドックに向き直った。
両手で杖を構え『小さな出会い』を放つクレドリック。
その後ろ姿には、ウィンクルムにふさわしい風格と威厳が漂っているのだが……。
ロアにとって、やっぱり気になるのは、丸見えになった紫色のぱんつ。
周りの一般人はあまり気にしていないようなのに、何故ロアだけがこんなにもぱんつを意識してしまうのか。
多分、他の男性のぱんつならロアとてここまで気にはしないのだろうが、ロアはその事実には気づいてはいない。
一人、クレドリックの紫のぱんつに頬を染めながら成り行きを見守っていたロアだったが、ふとある事に思い至って、戦うクレドリックの元に駆け寄った。
(敵をさっさと倒して着替えさせれば……!)
「私も戦えば早く終わると思うし、ハイトランスしよう、クレちゃん!!」
まだ残っている3頭のデミ・ワイルドドックから注意を逸らさず、ほんの一瞬だけロアを振り返るクレドリック。
「何?ハイトランス・ジェミニで自分も戦わせろと?どうしたのかね、ロア。そんな危険なことをせずとも私だけで事足りる」
だがロアの勢いは止まらず、敵を前にいつまでも言い争うのもかえって危険だとクレドリックは判断する。
「仕方ない。そこまで言うなら私の手の甲にくちづけたまえ」
納得がいかぬせいで無表情な顔をむすりとさせて、尊大な態度で手を差し出すクレドリック。
そしてインスパイアスペルを唱えたロアは、クレドリックの手の甲に浮かんだウィンクルムの証にくちづけた。
「よし……行くよ!!」
『スカルナイトナックル』を振りかざし、猛然とデミ・ワイルドドックに飛びかかっていくロア。
一片の情け容赦も無く、鬼神のごとき気迫でロアはデミ・ワイルドドックを叩き伏せてゆく。
ロア・ディヒラー。ぱんつの守り神は、かくして誕生した。
●ゴリラックマ
ひそひそ。
「ねぇ……ちょっと、あれ見て?ゴリラックマじゃない?」
「本当だー。あの人、ウィンクルムだよね?でも、ぱんつは可愛いんだー」
「ねー。ちょっと意外ー」
ひそひそ。
昨今、女子高生達に人気のゴリラポーズをしたユルイくまのキャラクター。それがゴリラックマだ。
ひそひその先にいるのは八月一日 智。
ズボンが破れ、穴からマリックマがひょっこりと顔を出しているのだが……。
「パンツが破けたーぁ、でもそんなのかんけぇねぇ!へい、トランストラーンス!」
いっそビキニパンツ一枚になったほうが似合うようなセリフを口にしながら小躍りしているあたり、全く堪えていないようである。
一方、パートナーである水田 茉莉花のほうはこの事態にかなりのダメージを受けたようだ。
「こんのバカチビ!ちょっとは隠したらどうなのよこのバカったれ!」
片手で自分の目を覆いつつ、もう片方の手で智の襟首を掴んで引き寄せ「うるっさぁい、黙れぇ」と頬に噛み付くようなキスを送る。
淡く輝くオーラに包まれる2人。
ウィンクルムの象徴たるその姿は、周囲の一般人から見るとやはり神秘的なものであった。……たとえぱんつが丸見えでも、だ。
「ってことで、スタッカートでぶちのめしてくるぜ、みずたまり♪へい、おっぴっきゅー♪」
片足を上げ人差し指で天を指す……まぁその、はっきり言ってしまえばアホらしいポーズを残してデミ・ワイルドドックの方へとかけていく智。
顔を覆った指の隙間からゴリラックマ、ではなく智を見送った茉莉花は、がっくりと肩を落として溜め息をついた。
「ああもう、行っちゃった」
周囲にいた一般人達の一部が、どことなく同情するような視線を茉莉花に向けていた……のは、気のせいだと思うことにしよう、そうしよう。
万が一、デミ・ワイルドドックが向かってきた時のため、マシュマローンを構える茉莉花。
その視線の先では、相変わらずのテンションの智が、一番手前のデミ・ワイルドドックに向かって、今まさに攻撃を仕掛けようとしていた。
「デミワンコくらいなら、おれサマの剣技だけで何とかなるはずさぁー」
ウィンクルムとして、それなりの経験を積んできている茉莉花と智。油断大敵ではあるが、智のその発言は決して強がりではない。
そしてダブルダガー『トリトン&ネリトン』によるスタッカートが、一番手前のデミ・ワイルドドックに向かって炸裂した。
●勤勉!!
お尻ってさぁ、ふくらみが二つあるしぃ。
そこんトコが破れてさぁ、ぱんつがまる見えなんだけどー。
見えてるぱんつが、片方に「勤」もう片方に「勉」なんだぁ。しかも白地に黒の筆文字だしぃ。
「プッ……キャハハハ!チョーお腹痛い!」
2頭のデミ・ワイルドドックに、左右からガブリとやられた花木 宏介。
その丸見えになったぱんつを指差して、名生 佳代がゲラゲラと容赦なく笑い転げる。
戦闘中に油断して笑っている訳にはいかない事は分かっていたが、抑えようと思えば思うほど、笑いがこみ上げてくるのだ。
「勤勉!勤勉パンツ……ッ!」
予想外の衝撃……いや笑撃に、佳代は腹筋に大ダメージを受けていた。
一方、佳代にいい様に笑われた宏介は、地中深くにまで潜り込みたくなるほどの後悔をしていた。
「なんで今日に限ってこのパンツを履いてしまったんだ……」
兄からもらったこのぱんつ。
兄が嫌味でこれを寄越したことは分かっていたが、宏介は男だ。
ぱんつなど必要最低限あれば良いと、数少ないぱんつローテーションの中に、この勤勉ぱんつも組み込まれていたのである。
兄の攻撃が思わぬ形で作用して、宏介は精神に大ダメージを受けていた。
とはいえ、まずはウィンクルムとしてデミ・ワイルドドックを倒さねばなるまい。
「久々に……『眼鏡で殴れ』!」
インスパイアスペルと共に宏介の頬にキスを送る佳代。
そして宏介は手裏剣『サクリティ』を構えてデミ・ワイルドドックへと向かっていった。
その背中を見送る佳代。勤勉ぱんつに笑いつつも、その胸の裡には祈るような気持ちがある。
この前、幻のような夢の中とはいえ宏介が酷い苦戦を強いられたこと、その時に感じた恐怖と悲しみ。
だから佳代は宏介の装備を見直した。
宏介が使っていた手裏剣、初めて持ったものらしく愛着があったらしいものを一旦我慢させ、今の宏介のレベルに合ったものに変えさせた。
それが功を奏したらしく、今回の宏介の動きは軽やかだ。
が……。
「戦闘は真面目にやらないと痛い目見るって学んだ……ううん、我慢…」
必死に笑いを堪えていた佳代が、はっと表情を引き締めた。
「宏介ぇ!スキル!!スキル!!」
いつでもスキルが使えるように準備をしていたのに、宏介が発動することを忘れたまま攻撃しようとしているのに気づいたのである。
「っと……『双葉弐式』だな」
真面目にやろうと意識することで、佳代は宏介のミスをフォローすることができた。
佳代の支援を受け、尻を隠すことを諦めた宏介はぱんつまる見えのまま、デミ・ワイルドドックに向かって『双葉弐式』を放つ。
左右から飛来する手裏剣に穿たれた1頭が動きを止めた。
残るはもう1頭。しかし……。
「下着についてはあとで聞けばいいしぃ!プププッ」
「……あぁもう、下着の柄については放っておいてくれ!」
宏介は羞恥心を捨て、戦いに集中しようとするのだが、佳代の笑い声が律儀に羞恥心を回収してくるのである。
頼りになるようなならないような、ビミョーなパートナーに、宏介は溜め息をつきながらもう1頭に向かって手裏剣を放った。
「言ってなかったか、俺には兄がいる。……下着は兄がおしつけてきた嫌味だ」
無事に平和を取り戻したハルモニアホール。尻を隠しつつ控え室に戻った宏介は佳代に下着の柄の理由をそう説明した。
少し不思議そうに見上げてくる佳代。
「……兄は好きではないな。俺とは違って優秀な男だったが」
メガネのために頭が良さそうに見える宏介。
『俺と違って優秀だった』その言葉の端に、佳代は宏介の心の隙間を垣間見た。
「……へぇ?バカ眼鏡も大変なんだぁ?」
いつも通りのバカ呼ばわり。だが嫌味のないその物言いに、宏介は思わずほっとした。
●にゃんにゃんにゃん
「わーお……パンツ丸見えってやつだね」
清楚で幼げな外見とは裏腹に、いかにも楽しげに、しれっとそんなこと感想を述べるファルファッラ。
猫耳と猫尻尾、それから眉をへにゃりと垂れて項垂れながらレオナルド・グリムが言う。
「この年になってこんなことになるとは思いもしなかった。いい年したおっさんがパンツ丸見え……とは情けない」
ビリリ破かれたズボンの穴から覗く、何故か妙にファンシーで可愛らしい猫が書かれたぱんつ。
武器を持っていない手で隠しつつ溜息をつくレオナルドにファルファッラが無邪気な顔で訊ねた。
「私は全然気にならないけどなぁ……レオは気にするんだね。家だと結構パンツでうろうろしてるじゃない?」
「ファルよ家と公衆の面前では全然違うんだ……!」
「確かにここは家じゃないね。でも、そんなに気になるものかな?」
そりゃそうだろう。
少しばかり年季が入ってくたびれかけた、
そう、例えて言うならおっさん年齢に突っ込んだレオナルドのような、それでいて可愛い柄のぱんつが公衆の面前に晒されているのだから。
だが、ファルファッラにはレオナルドのそんな心境は、いまいち理解できないものであるらしい。
「せっかく舞踊団の舞台が観れると思ったんだけどな……台無しだよ」
デミ・ワイルドドックに楽しみを奪われたことに、不満げに唇を尖らせていた。
「嘘とお菓子は甘いもの」
とりあえずさくっと……。
まずはトランスだと、ファルファッラはインスパイアスペルを唱え、思い切り背伸びをして、少し屈んだレオナルドの頬に口付けた。
敵はデミ・ワイルドドック1頭のみ。
「なんとか出来るよね?」
まるで丸いものは転がるのだと言わんばかりに、当たり前のことを当たり前に訊ねる口調でファルファッラが言う。
そしてレオナルドもまた、転がる時は高いほうから低いほうへと行くのだと言わんばかりに、当たり前といった様子でうなずいた。
「できるだけ早く終わらせよう」
レオナルドのスキルにより、虚空から現れる猫のぬいぐるみ。ファンシーで可愛い猫は、丸見えになったレオナルドのパンツの柄にも少し似ている。
「ぬいぐるみの動物についての突っ込みは受け付けん」
猫が猫履いて猫を操り、犬を撃退するという何とも奇妙なシチュエーション。
ともすると笑いたくなってしまうような光景だったが、デミ・ワイルドドックは凶暴な敵であり、
そして、レオナルドのスキル『パペットマペット』に操られる可愛らしい猫のぬいぐるみは、その外見に似合わず強靭であった。
牙をむいて飛び掛ってきたデミ・ワイルドドックの鼻先を、もふん、と手で受け止めて抑える巨大な猫のぬいぐるみ。
そして、ふっくらとした太い脚が、デミ・ワイルドドッグの身体を強烈に蹴り飛ばす。
軽いゴムボールのようにポーンと吹っ飛ばされたデミ・ワイルドドックの身体が音楽堂の壁にぶつかり、
デミ・ワイルドドックはその動きを永久に止めた。
落ち着きを取り戻した音楽堂。
そのホールでは、少し開始時間が遅れてしまったものの、舞踊団の公演が始まっていた。
警備と称して、照明などを操作する舞台正面の小部屋に入れてもらったファルファッラ。
公演の妨げにならぬよう、壁際から舞台を見下ろし、ファルファッラは少し満足そうな笑みを浮かべている。
そんなファルファッラに、レオナルドはやはり周囲の迷惑にならぬ程度の声で訊ねてみた。
「フェル、もしお前が俺と同じ状況になったら恥ずかしいだろう?」
「何も感じないよ。優先事項があるならそっちを優先するし」
「本気で言ってるのか?」
「うん」
「……頼むもう少し恥じらいってやつをみにつけてくれ」
「恥じらい?何それ美味しいの?」
「それが魅力の場合もあるだろうが個人的には普通の女の子の反応の方がいい」
「レオがみにつけた方がいいっていうならみにつけるけど。そんなに必要なものとは思わないなぁ……?」
レオナルドの苦悩は、まだまだ続きそうであった。
●ご婦人のお名前は?
「へい、へいへい見てくれそこの観客ぅ!」
動き回るせいで、ますます丸見えになるパンツをものともせず……どころか、見せ付けるようにしながら、デミ・ワイルドドックに切り込む智。
そんな智を、少し離れたところから見守っていた茉莉花だったが、あることに気がついて眉を寄せた。
「あれ?あのおば様、動かないわ。びっくりして腰でも抜かしたのかしら」
少しも動揺した様子を見せずに、デミ・ワイルドドックと智を見つめている金髪の貴婦人。
マシュマローンを身体の陰で握り締めつつ、茉莉花は金髪の女性へと歩み寄る。
「あの……すみません、避難、しませんか?」
茉莉花がそう声を掛けたのは、もし女性が本当に腰を抜かしているだけなら、茉莉花の言葉に従って逃げてくれるはずだと踏んだからであった。
そしてもし、何かやましいところがあるならば……。
「くっ……。そ、そうよ、あなたがいなくなれば宜しいんですわ!!」
果たして、茉莉花の読みは見事に的中し、金髪の婦人は手にした扇で唐突に茉莉花に殴りかかってきた。
「そうは行くものですか!!」
だが、女性の行動は予想の範囲内、かつ神人とはいえウィンクルムとしてそれなりに場数を踏んでいる茉莉花は、女性の振り下ろした扇をマシュマローンで難なく受け止めた。
「あ……」
茉莉花にばっちりと顔を見られたことに動揺した婦人が、踵を返して人ごみの中にまぎれてゆく。
「ちょ!!待ちなさいよ!!」
追いかけようと走り出す茉莉花。だが他の人が邪魔になって思うように進めない。
そこに……。
「どうしたんだ、みずたまり?」
デミ・ワイルドドックを倒し終え、茉莉花が金髪の婦人と話をしていることに気付いた智が、茉莉花のもとにやって来てくれたのだ。
「あ、ほづみさん……いいところに来てk……」
智を振り返った茉莉花の言葉が不自然に途切れる。
「更にまるみえーっ!!」
智の頭に向けて振り下ろされるマシュマローンの柄。
ゴッと鈍い音がして、智はフラフラとその場に崩れ落ちた。
「何でおれサマがぶん殴られー?!」
後日、A.R.O.Aの調査により、茉莉花が目にした金髪の女性はブリアンヌ伯爵夫人であったことが判明した。
それは、A.R.O.Aにとって非常に重要な証言となった。
依頼結果:成功
MVP:
名前:水田 茉莉花 呼び名:みずたまり・まりか |
名前:八月一日 智 呼び名:ほづみさんさとるさん |
エピソード情報 |
|
---|---|
マスター | 白羽瀬 理宇 |
エピソードの種類 | アドベンチャーエピソード |
男性用or女性用 | 女性のみ |
エピソードジャンル | イベント |
エピソードタイプ | ショート |
エピソードモード | ノーマル |
シンパシー | 使用不可 |
難易度 | とても簡単 |
参加費 | 1,000ハートコイン |
参加人数 | 5 / 2 ~ 5 |
報酬 | 通常 |
リリース日 | 05月23日 |
出発日 | 05月29日 00:00 |
予定納品日 | 06月08日 |
参加者
会議室
-
2015/05/28-22:23
エンドウィザードのクレドリックとロアだ。皆久しぶりだな。
…パンツが丸見え…?何か問題が…あるだろうか。
デミワイルドドックを4匹相手にせねばならないのが少々骨だがそれぐらいかね。
(破れてパンツがばばーんと状態で涼しげな顔で会話し)
ふむ…私よりロアが挙動不審なのは何故だ? -
2015/05/27-12:29
カガヤ:
ありゃ、思わず挨拶が抜けちゃってた。
改めましてカガヤと神人、笹ちゃんです。
ファルファッラさん、レオナルドさんは初めまして、よろしくお願いします!
(ぱんつ隠しながら) -
2015/05/27-12:04
カガヤ:
ど う し て こ ん な 事 に(片手でぱんつ隠しつつ)
両手武器だから、攻撃時は隠しきれないし…!
ああ、もうこれでもやるしかない…!!
-
2015/05/26-19:05
智:ぱん2ーまるみ・・・でもそんなのかんけぇねぇ!
って事で、ウス、八月一日でっす。
コレ、レベル別って事は、ウィンクルム毎に来るデミわんこの数が違うってのでいーんかな?
そのあたりは聞いてみたほうが良さそーだな♪ -
2015/05/26-05:43
こんにちは…ファルファッラよ。
…レオのパンツ…はどうでもいい。
「精霊のレオナルドだ…どうでもよくない」
私達はデミ・オーガ1匹ね。頑張るわ。 -
2015/05/26-01:17
シノビの花木宏介だ。
「ぎゃははは、神人の名生佳代だしぃ!ぎゃははは!」
…うるさいぞ(イライラ)
水田、ロア、手屋は久しぶりだな。
恥ずかしい事になってしまったがよろしく頼む。
俺らは2匹のデミ・ワイルドドックが相手、危険なものは危険だ。
装備も含めて対策しておかないといけないな。