遺跡を探索しよう!(如月修羅 マスター) 【難易度:普通】

プロローグ

●冒険へ行こう!
「宝探しに行きませんか!」
 そう言って、ウィンクルムを止めた職員がばぁぁんと宝の地図と書かれた紙をひらひらしていた。
「ゴブリン王のデミ・オーガがとある遺跡を住処と定めて、お宝をせっせと集めていた……らしいんですね。
らしい、というのは全部噂程度なものでして……」
 曰く、昔からその遺跡には何者かの気配はしており、猟師や木こりなどはその場所を避けて通っていた。
 足跡からゴブリンではないか、とも言われていたが、近年は誰も近づく者もおらずどうなっているのか分からないという。
「今も居るか分からないのですが、近年、村おこしにその遺跡を使えないかという話題が出ておりまして……デミ・オーガだったという噂もありますし、皆様に調査をお願いしたいとのことでした。
その遺跡は神殿となっております。
大規模な神殿ですので、何か軽食とかも持って行った方がいいかもしれません。
普通に歩いて、全部調査して回り切るのに朝から行って夕方になる……まぁ一日掛かりといった所でしょうか。
何者かが出入りしていた、というのは3年程前までは確かのようですから、そこまで崩壊が進んでいるとは思えないので大丈夫だと思います」
 だがしかし、問題が、と指をぴーんと立ててにやりと職員が笑う。
「対立する宗教の人たちを排除するために、仕掛けがいくつかあるようなんですね。
有名なのが回る床に、壁から出てくる槍、そして落とし穴。ただ、これらはもうほとんど機能していないとみて大丈夫です。
心配なのが回る床ですね……これに引っかかると方向感覚が狂って、道に迷いやすくなります。
ひょっとしたらこれと、落とし穴ぐらいはまだ機能が生きてるかもしれません。ただ、落とし穴も長年の色々な物が降り積もっていて、大怪我をするほどではないでしょう」
 ただし、落とし穴は精神的ダメージは大きいかもしれないけれど、と職員が言葉を濁す。
 一体何が降り積もっているのだというのか、ちょっと怖い。
「というわけで、今回の皆様の一番の目的は、デミ・オーガが居るか居ないか調査及び、居たら退治していただきたいとのことです。
もしも、宝物を発見した場合は……ウィンクルムの皆様で分けていただいて大丈夫とのことでした。
また、デミ・オーガじゃなくてもモンスターが居た場合、観光に使いたいのでできれば排除をしていただきたいとのことでした。
そのため、出来るだけまぁ……そこまで状態がいいかはわかりませんが、壊さないように探索をお願い致します」
 お宝ってなんでしょうね……。
 そう言って、ちょっと夢見る瞳で職員が呟いたのだった。

解説

 今回は宝探ししようぜ! という依頼になっております。


・敵
 デミ・オーガはいませんが、3体のラミアが居ます。
 別々に出現し、どこから現れるかはわかりません。
 ただ単に寝床にしているだけなので、軽く2~3発当てればすぐに逃げていき二度と戻ってきません。


・罠
 ★槍の罠はボタンをぽちっとな! をすると発動するらしいですが、今は折れた槍がちょろんと出る程度です。
 また、このボタンですが、色々な物に偽装されたり隠されているようで、何かの拍子に押す可能性が高いです。
 ★落とし穴は、廊下や部屋の床に偽装されておりなんらかの方法で探らないと落ちる可能性が高いです。
 ★回る床は、主に十字路にランダムに配置されておりますので、此方もなんらかの方法で対処しないと迷う率が高いです。


・地図
 一応大昔の地図が皆様に配布されており、大まかな場所は分かります。
 宝物はどうやらステンドグラスがある大広間の、神が居る像の辺りが怪しいのでは? という情報があります。


・宝物
 配布は致しませんが、もしも探した場合、宇宙のような色合いの硝子のペンダントが2つ手に入ります。
 皆様で話あってもいいですし、がっつりと宝探しプレを書いた方で当方が選ぶ方式でも大丈夫です。
 他には、青や赤や緑や透明や紫のガラス玉が沢山あります。
 持ち帰った際は、RPでお楽しみください。

ゲームマスターより

 RPGのダンジョンは、大抵地図を片手に迷う系の如月修羅です。
今回はさらに回転床とかで迷う率倍です!
もし宜しかったら、攻略してみてくださいね!

リザルトノベル

◆アクション・プラン

アキ・セイジ(ヴェルトール・ランス)

  任務に油断はいけないが宝探しとは心が踊るな(いそいそ


トランスして探索
ランスにライトを借り細部も照らす
マッピングして進む
”オーガナノーカ”で先行偵察も

傘で突起や床の継目等を突くか押すかして罠を確認
槍は出た根元からヘシ折る
床穴は照らして下を確認
場所含め地図に書き込む
適宜写真も撮る

これで今後の危険が減る
次に来る人が安全に…ってな

十字路は壁に方角を矢印書きし回転に対処
方位磁石でも確認
最悪分かる所まで戻る慎重さが迷わないコツだ

神像広間では像や周囲を調べ、協力して隠し戸を探索
罠に用心し慎重に開けよう

★宝物は山分け
★建物の正体等、広間や書庫で解明できるよう頑張る

職員にもちゃんと報告に行く
冒険の話をさ(ふふ



セイリュー・グラシア(ラキア・ジェイドバイン)
  皆で協力して探索するぜ。
後でここを観光施設として使えるよう調査するのがオレ達の役目だな。貰った地図と実際の遺跡内を照らし合わせ、地図の精度を上げながら進む。
偽装3も使いトラップを事前に見破れるよう注意する。
トラップは解除するか危険の無いように作動させるか回避する。

携帯食糧はゼリーやブロック型の栄養調整食品と水を持参。休息時はサバイバル5やハンティング4技能を使い安全を確保する。
ネズミ等小動物の痕跡(食べ残しや糞、死骸)から棲息生物を推測。それを餌にしている生物とかさ。

戦闘時は敵を剣で攻撃して抑えるぜ。敵の気を引き仲間の攻撃魔法発動まで時間を稼ぐ。

祭壇で宝物を探す。見つけたら皆で山分けしよう!



●遺跡の中へ
 暗闇が支配する遺跡内。
 ところどころ崩れた隙間から光は漏れてきているものの、明るいとはとても言いがたい。
 ときおり当たる、ライトの明かりに埃がきらきらと輝いた。
「ここの罠も壊れてるみたいだな」
 壁に取り付けられた道具に、セイリュー・グラシアが呟く。
 その罠をアキ・セイジとヴェルトール・ランスが丁寧に取り除いていく。
 後の人がこれで怪我をすることもないだろう。
 ライトの明りが壁を照らしていけば、ぽっかりと開いた黒い空間が四人のウィンクルム達の前に現れる。
 一番先に進み出たのはセイリューだ。
「ここは元々は部屋だったんだろうな」
 セイリューがライトで中を照らしながら、慎重に覗きこむ。
 ざっと見た範囲では中はがらんとしていて、何もなかった。
 何か仕掛けがあるとしたら床だろうと、床を照らし、一つ一つ石床を見て行けば、一部色が微妙に変わっているのがあったのに気がついた。
「中に入るんなら、ラキア、あの床を棒で探ってもらっていい?」
 方位磁石で方向を今一度確認していたラキア・ジェイドバインが、その言葉に視線をあげた。
「そうだね。二人とも、どうする?」
 アキとヴェルトールがその言葉に視線を交し合う。
「調べた方がいいだろうな、セイジ、先行頼む!」
「了解、任せて」
 ヴェルトールの言葉に頷いたアキが取り出したのは、お役立ちアイテムのアヒルさんだ。
 オーガに気がつかれにくいそれならば、無理なく偵察が行えるだろう。
 先行くアヒルさんより寄こされる映像には、特に敵はいないのが見て取れる。
「敵はいないようだけど、視界はやっぱり良くないな、気をつけようか」
 戻ってきたアヒルさんを持ち上げ、そういえばラキアが杖を持ち頷いた。
 セイリューとヴェルトールがライトを持ち中を照らせば、ラキアとアキが中に入り杖を傘を手に探って行く。
 自然とラキアが床を、アキが壁を探ることになった。
 最初に異変を感じたのはやはり床の色が違うと分かっていたラキアだった。
 こんこんと二度、三度と杖で普通の床と、本当にわずかな色が違う床を叩いて比べる。
 音の違いと言うよりは、手に伝わってくる振動がどこか軽い。
「落とし穴だね」
 セイリューにも確認してもらえば、明らかに感触が違う。
「あるのは分かったけど、どうする?」
 その言葉に、アキが壁に傘を当てたまま振りかえった。
「今後の危険は減らしたい所だけど……」
「じゃぁ、チョークで印付けておこうか」
 ラキアが印をつければ、ヴェルトールがカメラを取り出した。
「写真撮っておけば、分かりやすいと思ってさ」
「なら、数字も書きこんでおけばもっと分かりやすいぜ」
 セイリューの言葉にそれもそうかとラキアが数字も書き込んだ後に、写真を撮るヴェルトール。
 地図にも書き込めば、アキが戻ってくる。
「壁には何もないみたいだ。ここはこれ以上探す所もないかな」
「そうだな、よし、次いこうぜ!」
 ヴェルトールの言葉に、皆頷き、次の探索へと向かって行く。
「任務に油断はいけないが宝探しとは、心が踊るな」
 アキのそんな小さな呟きに、ヴェルトールが笑って頷いて。
「あ、あそこに十字路があるね。気をつけて行こうか」
 ラキアが見つけた十字路に、回転床じゃないかと緊張が走るのだった……。


●廊下にて
 それから何度か小さな部屋や、大きな部屋を見つけては中に入って確認していく。
 ぐるりと回る回転床に何度か足を止められたものの、そこまで脅威はなかった。
 どうも何かの作業室だったらしきものや、明らかに誰かが使ったようなベットの痕跡も見つかった。
 一体今、ここを使っているのは誰なのか……皆で周りを警戒しながら進みつつ、推理が始まる。
「そこまで昔じゃないけど、かといって最近って程でもないね、人間が使ったのは」
 クモの巣や鼠の糞などにまみれたベットを思い出し、ラキアが言う。
 遠い昔の物ならば朽ち果てていそうだったが、朽ち果てるとまではいかない範囲だった。
 それに、明らかに何者かの手によって修復された跡もある。
「何カ所か今も使ってそうな場所もあったけど、あれは野生動物だろうしな」
 明らかに巣という感じだったのを思い出し、アキが言えばヴェルトールが頷く。
「それにしても、何か出入りしてるみたいだっていうわりにはまだ何も出てこないな?」
 ヴェルトールのその言葉に、壁の崩れた向こうをライトで照らし探っていたセイリューが体を起こした。
 頬についた汚れをふき取りながら言う。 
「大きめの巣みたいなのが奥の方にあったぜ。野生動物でこんなに大きいの必要ないだろうし、敵かもしれないな」
 それに、とさらに言葉を紡いだ。
「ここらへん、やけに道が綺麗だし、今も出入りしてるのかも。と、なると行動範囲内だろ」
 セイリューのいうとおり、道には先程と違い瓦礫もほとんどなく、罠も作動し終えて壊れている物が多かった。
 誰かが普段から通っているというのならば、それも納得である。
 その時だった。
「セイリュー!」
 自分の巣を荒らされていると思ったのだろう、二体のラミアが穴のさらなる奥から這い出てくる。
 ラキアの声にいち早く反応したセイリューが、爪を避けようとその身を捩じる。
「……っ!」
「大丈夫か!」
 続いての攻撃を、割り込んだレイピアが弾き飛ばした。
 滲んだ血を構うことなく、目に見えない速さで抜き取った太刀を攻撃を仕掛けてきた一体に振り落した所で、既に詠唱を始めている二人に気が付きラミアが視線をやる。 
「お前の相手は俺達だ!」
 アキのレイピアをいなし、セイリューの太刀を尻尾で弾き飛ばす。
 もう一体が的確に見つけた隙を見逃さすセイリューに爪をたて血を流させる。
「セイリューの方を先にかけるよ」
 一番最初に対峙したセイリューを優先に狙うラミアからの傷を、ラキアが触れて癒していく。
「大丈夫?」
「すまない、ありがとう」
 詠唱するヴェルトールを守るように立ちはだかり攻撃を仕掛けてくるセイリューとアキ、そして攻撃に転じたラキアから身を翻すラミア達。
 このまま逃げ去れば、深追いはしないつもりだった。
 けれど二体居るというのが慢心を招いたのか、守られるということは弱いに違いないと思ったラミア達が二人の元へ行こうとした所で、ヴェルトールが恋心を放つ。
 熱がその身を焦がす痛みに、苦悶の表情を浮かべるラミア。
「まだやるつもりか?」
 ヴェルトールのその言葉によろよろの体を引きずり逃げ去るラミアを見送り、剣を収めたのだった。
「二人とも、怪我の具合はどう? セイリューはさっき癒したから大丈夫だと思うけど……」
「セイジ、大丈夫か?」
「そこまで酷い怪我じゃないな」
 とはいえ、強敵がでてくるかもしれないと怪我の手当ても終わり、再び探索を始める。
 けれど、先程までと違い、隙間から洩れてくる明りがどんどん多くなってきた。
 崩れているのか、それとも……。
 目の前に、白い光が差し込む昔はドアもあったのだろう空間が、ぽっかりと開いているのだった。


●休憩の時間
 幾らライトやら漏れる光があるとはいえ、外に出れば少しの間、瞳が慣れるまで時間が掛かった。
「地図にもあった庭園かな?」
「ここら辺で休憩にしようか」
 セイリューが地面にある残された足元を見たり、茂みを見た後、大丈夫そうだと判断する。
「野生の獣は居るみたいだけど、さっきのラミアみたいなのはいないみたいだぜ」
「そっか、なら少しゆっくりしよう」
 ラキアが持ってきていた食糧や水を取り出しながら提案すれば、皆が頷いた。
 休憩も冒険には必要だ。
「久しぶりに太陽をみた気がする……」
 アキが瞳を瞬かせながら言えば、隣で背伸びをしていたヴェルトールが笑う。
「それにしても、改めて外に出てみてみると、意外と汚れてるもんなんだなー」
 アキの頬についた汚れを拭き取ってやる。
 勿論、そんなヴェルトールだって気がつけば髪に蜘蛛の巣が引っかかっていたりするのだが。
「そういうランスだって」
 指先を伸ばしとってやれば、くすぐったげに笑いだした。
 そんな二人を見ながら、改めて見てみればセイリューとラキアもなかなかのものだった。
「ふふ、セイリューも頭に蜘蛛の巣がついちゃってるよ」
 なかなかとれにくいそれをとって貰いながらセイリューが笑う。
「そういや、さっきなんか引っかかった気がしたんだよな」
「はい、綺麗にとれた」
 指先が離れていくのを見ながら、セイリューも同じくラキアの髪の毛に手を伸ばす。
「ラキア、髪の毛長いからな」
 少し多めに絡んでいる蜘蛛の巣を、採り始めるのだった。
 

 それから少しして、精密に埋まった地図をアキが、セイリューとラキアが作ったのと照らし合わせさらに精度をあげて行く。
 どちらも地図を作りながらの作業だったため少々時間は食っていたが、その分とても精度が良かった。
 このまま村人に渡して、遺跡の地図として使ってなんら問題はないだろう。
「それにしても、ここは本当に古いんだな」
 書物が残されていれば、調べようと思っていたアキだったが、ここを破棄する際持ち去ったのか、それとももっと前に盗賊にでも入られて持ち去られたのか。
 めぼしい物は何も残されていなかった。
「壁画も、ほとんど判別不可能だったのが残念だ」
 少しだけ残っていたのは写真にも撮ったため、そこから詳しく調べれば何か分かるかもしれない。
 本当に残念そうに水を飲みながら言うアキに、ヴェルトールが小さく笑う。
 遺跡の中に戻ろうと片づけを始めた頃、人の気配に気がついたのだろう。
 しゅるしゅると音が聞こえ、ラミアが顔を覗かせた。
「すまない、ここに居ては行けないんだ」
 アキのレイピアに突き刺され、咄嗟に尻尾で攻撃を仕掛けてくるのをセイリューの音もなく抜かれた太刀受け止めた。
「俺の魔法喰らったら死ぬかもな?」
 ヴェルトールのその言葉に、元々人を襲おうと考えていなかったのだろう。
 すぐに逃げ出したラミアを深追いはせず見送くるのだった。
「さて、行くとしようか」
 ラキアの言葉に、再び遺跡の中にと戻って行った。


●探索再び開始
 休憩をしっかり取り、疲れも癒された四人は、再び遺跡の中に戻って来ていた。
 もう半分以上の探索を終えているのが地図からも分かる。
「そろそろ、祭壇の所にでそうだけど……」
「そうなると、ひょっとしたら罠てんこ盛りかもな」
 アキとヴェルトールのその言葉に、ラキアも頷く。
「やっぱり敵対宗教なら、信仰の対象は壊したいだろうしね。そんな輩を排除しようとすると思うよ」
 そんな会話を四人でしていたのだが、
 隙間を探ってみたりしながら回転床を回避していたが、回転床は重さに反応するようでなかなか探し当てるのには骨が折れた。
 ぐるりと回った体が、どちらから来たのか方向感覚を狂わせる。
 ラキアやアキがチョークで印を書いていたお蔭で、そこまで迷うこともなく進んでこれていた。
「……うわっ!」
 一つ、穴を避けた先にさらにもう一つ……床にしてはやけに柔らかい何かだった。
 とっさにヴェルトールが掴んだのはラキアの腕だ。
「え、わ……っ」
 穴? に落ちそうになる二人をアキとセイリューが助けようとするが、一歩及ばず。
 二人とも穴の中におち……てはいなかった。
「……」
「……」
 正確に言うと落ちてはいたが、膝よりちょっと下で済んでいた。
「これ、腐葉土とかがたまったのかな」
「もともとは落とし穴だったぽいね」
 これまで見てきた落とし穴と同じような状態らしいとアキは判断し、地図に書き込んでおく。  
「それにしてもこれ、立て続けになってたりするし、教会の人たちも間違って落ちたりしたんじゃ?」
「ありそうだな」
 無事、穴から脱出した二人も頷く。
「足、ひねったりしてないか?」
 セイリューが心配そうに二人に問いかける。
「大丈夫だよ」
 ラキアが確認しながら言えば、ヴェルトールも頷く。
「よし、気をつけて行こうか!」
 印をつけ終わり、アキがそういえば皆が頷く。
 それから暫し、さらに慎重に足を進めるのだった……。


 罠を潜り抜け漸く四人が辿りついた先に、今までで一番立派な扉が現れる。
「ここだな」
「地図でも、ここだけははっきりしてるよね」
 アキとラキアが地図を確認して言えば、一人では開けれそうにない扉を、セイリューとヴェルトールが息を合わせて引っ張っていく。
 錆が多少落とされていたことから、誰かがここを使っていたことは確かだ。
 ぎしぎしと音を立てながら開く扉。 
「どんなお宝があるのか、楽しみだ」
 アキの瞳が楽しげに輝く。
「罠とかここにもあるのかな」
 首を傾げつつラキアが言う。
「全体にはなさそうだけど、どうだろうな……」
 扉を開け終わり、ヴェルトールも首を傾げた。
 セイリューが一番先に立ち、一歩踏み出す……。


●宝箱の発見
 きっと、大昔はきらきらと輝くステンドガラスが美しかっただろうその大広間は、今はもうガラスが割れ、神を模したと思われる像も形をほとんど留めていなかった。
「やっぱり誰か使ってたみたいだな」
 セイリューが覗きこみ、少なくとも床に何も仕掛けがなさそうだと確認する。
 アヒルさんも駆使したが、問題はなさそうだと中に入れば、そこは比較的綺麗に保たれていた。
 この神殿の要の場所である、無下に扱わなかったのだろう。
 そのお陰か、祭壇は、すぐに見つけられた。
 ここを使っていた者たちも大切にしていたのだろうか。
「よし、探してみるか!」
「そうだな……ランス、こっち手伝って」
「任せろ!」
 手分けした方がいいだろうと、アキがヴェルトールと一緒にセイリューとラキアとは違う方へ向かう。
「じゃぁ、ラキア、オレらはこの祭壇をまずは調べようぜ」
「そうだね」
 祭壇は何かの石で出来ているようで、細かな模様が描かれている。
「んー、なんか隙間があったりするかと思ったけど、なさそうだな」
「綺麗な細工があるだけだね」
 植物や、何かの儀式のような物が掘られているそれにはお宝が隠されている気配はなかったが、それこそがお宝になりそうなものだ。
「きっと、儀式のやり方をこれに記したんだろうね」
   

 ラキア達がそう解釈していた頃、アキとヴェルトールは近くにあった神の像の台座を調べていた。 
 ぽちり、と何か突起のようなものに肘が触れる。
「……っ!!」
「セイジ!」
 ぐいっと腰に腕が周り、引き寄せられたの同時にガタン! と音を立てて槍が飛び出してきた。
 それは折れていて命の危機こそなかったが、目にでも当たれば怪我をしていたかもしれない。
「大丈夫か?!」
「あ、あぁ、すまない」
 目視や傘だけでなく偽装やフェイクの知識を使って探してみてはいる物の、やはりまだまだ駆けだし程度の知識では看破するのは難しいようだ。
「怪我は?」
「大丈夫だ、ありがとうランス」
 お礼を言い、さてこれも壊してしまおう……と手を掛けた所で、仕掛けの奥に、空洞があるのを見つけた。
「ひょっとして」
 壊した後、手を伸ばし引っ張り出したのは古びて埃をかぶった宝石箱。
 埃を丁寧に拭いとり、ライトの光の元へさらけだす。
「宝箱見つけたのか、おめでとう!」
 セイリューとラキアもやってきて覗きこむ。
 中を開けてみれば、宇宙のような色合いのペンダントが二つと、その周りを青や赤や緑や透明、そして紫色の玉が埋めていた。
 ライトの光に照らされ、それはまるで自分から光輝いているようにも見える。
 ラキアが暫し見詰めた後、ひょっとして、と唇を開く。
「誰かの宝物?」
 光モノが好きなのはハーピーだが、ひょっとしたらそんなモンスターが隠したのかもしれないし、本当にゴブリン王の宝物だったのかもしれない。
 もしかしたら、この宗教団体に居たかもしれない小さい子供の宝物だったのかもしれなかった。
「何かの宝石……ってわけじゃなさそうだな、多分ガラス玉だ」
 アキが手に取ったそれを触って確かめてみるが、明確な違いが分かるわけではない。
 不思議そうな顔をするヴェルトールにアキが説明をする。
「ガラスよりも水晶の方が冷たく感じるんだ。とはいえ、ちょっと本格的にはきちんと調べないと分かりづらいな」
「ま、どっちにせよ山分けしようぜ!」
「そうだな、よし、わけよう!」
 ペンダントはそれぞれ一つずつ、あとは綺麗に山分けしたガラス玉を丁寧に仕舞って行く。
「ゲットだぜー、なーんてな」
 ヴェルトールが笑えば、ラキアも微笑みそっとライトにガラス玉をかざす。
「綺麗だね」
「冒険の果てに宝物ゲットとかって、王道でいいよな」
 セイリューもつられて微笑み、ガラス玉を再度見詰める。
 とはいえ……。
「まぁ、まだ探索は終わってないんだけどさ」
「そうだな、あとちょっと空白がある」
 アキが再度、地図を取り出したのだった。


●さぁ、冒険の話をしに行こう。
 空白部分を埋めつつ、慎重に進む。
 ほとんど罠もなく、残りは特記するような物もなかった。
 空が赤く染まった頃、ぐるりと一周回って入口へ戻ってきた四人。
「疲れたー」
 ぐいっと背伸びをし、セイリューが笑う。
 休憩をはさんだとはいえ、常に緊張が続いた一日だったのだ。少々体だけでなく、心にも疲労感を感じるだろう。
 とはいえ、その疲労は嫌なものではないのは、セイリューの笑顔が物語っていた。
「よし、あとは村人に報告だな」
 赤い髪を風に揺らし、忘れ物がないか、破損しているものがないかを点検していたラキアがその言葉に顔をあげた。
 彼にも少々疲労の色が見えていたが、やはりその疲労が決して辛いだけではないのが見て取れる。
「そうだね。まだもう一仕事だ」
 ラキアも頷く、村の方を確認しきっと村人も朗報を待って居るだろうと思う。
「大きな怪我がなくて良かったよ、セイリュー」
「ラキアのお陰だな」
 そんな会話をする二人を追いかけようとヴェルトールが声をかけた。
「俺らも行こうぜ、セイジ!」
 神殿を暫し見詰め、物思いに耽っていたアキがその言葉に視線を戻した。
 村へ向かう二人を見た後、ヴェルトールにと頷く。
「そうだな……あとは、職員にも報告に行こう」
 村人だけでなく、職員も気になっていたようだし、とどこか楽しげに瞳を輝かせ言うアキにヴェルトールもそれがいいと賛同する。
「そうだな。終わったことを伝えないと」
 その言葉に、アキがくすりと笑う。
「あぁ、冒険の話をしに行こう」
「冒険、か」
 そうだよ、と頷きまずは村へ行こうとアキとヴェルトールも帰路につく。

 今日の冒険譚は、きっと村人達によって次代へと語り継がれていくことだろう。
 ウィンクルム達の活躍によって、こうして一つの村に新たなる冒険譚が生まれたのだった……。



依頼結果:成功
MVP

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター 如月修羅
エピソードの種類 アドベンチャーエピソード
男性用or女性用 男性のみ
エピソードジャンル 冒険
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 普通
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 2 / 2 ~ 5
報酬 通常
リリース日 05月23日
出発日 05月29日 00:00
予定納品日 06月08日

参加者

会議室


PAGE TOP