プロローグ
●女の子が好きなもの
「ドレスとスイーツに興味がある者はいないか?」
A.R.O.A.職員の男の口から、突然、厳めしい顔に似つかわしくないきらきらしたワードがとび出した。何やらチケットのようなものを取り出した男曰く、
「タブロス市内のイベント会場で、ドレスとスイーツをテーマにしたイベントがあるらしくてな。知り合いにチケットを押しつけられた」
チケットをぴらぴらとはためかせながら、男は深いため息をつく。苦々しい表情を隠そうともせずに、それでも男は催しの詳細を語り出す。どうやら何としてでも、チケットを誰かに引き取ってもらいたいらしい。
「イベントのメインはスイーツをモチーフにしたドレスの展示。色も形もとりどりのドレスは、どれも試着が可能だそうだ。それから、飲食スペースもテーマに忠実らしい。何でも、こちらはドレスをイメージしたタルトを提供しているんだとか」
情熱的な真っ赤なドレスを模したラズベリーのタルト。女の子らしさとポップさを兼ね揃えた淡いイエローのドレスはレモンのタルトに。女の子の気持ちを盛り上げるベビーピンクのドレスはフランボワーズのクリームをたっぷり使って表現し、たっぷりのブルーベリーを乗せたタルトはまるでクールでセクシーなブルーのドレス。それから抹茶クリームを使った、個性的なグリーンのドレス・タルトも忘れずに。
「正直タルトに興味がなくはないんだが……ひとりでそんなところに出かけようとは思えないからな。チケット、欲しい者がいれば持っていってくれ。このチケットがあれば、飲食以外は無料で楽しめるぞ」
と、いうわけで。
ドレスとスイーツに溢れたイベント、よければ参加してみませんか?
解説
●イベントについて
タブロス市内のとあるイベント会場で開催されるドレスとスイーツをテーマにしたイベント。
イベントの正式名称はエピソードタイトルと同じく『ドレス・スイーツ・ドレス!』です。
チケットがあれば無料で会場に入れます。
●ドレスの試着について
女性なら、スイーツをモチーフにしたドレスがどれでも無料で試着できます。
試着希望の方は、その旨と共にお好みのスイーツをプランに記載頂きますと、そのスイーツをイメージしたドレスを描写いたします。
スイーツの指定がない場合は、こちらでドレスを選ばせて頂きます。
●ドレス・タルトについて
飲食スペースで食べられる、ドレスをモチーフにした5種類のタルト。
詳細はプロローグでご確認ください。
お値段は、ドレス・タルト1個と紅茶のセットが80ジェール。
全種類制覇したい! という方のためにドレス・タルト5種盛り(ドリンクなし)200ジェールもございます。
紅茶セットをご注文の場合は食べたいドレス・タルトをプランにてご指定ください。
指定のない場合は、こちらでタルトを選ばせて頂きます。
●プランについて
公序良俗に反するプランは描写いたしかねますのでご注意ください。
また、白紙プランは描写が極端に薄くなります。お気を付けくださいませ。
ゲームマスターより
お世話になっております、巴めろです。
このページを開いてくださり、ありがとうございます!
女の子の好きなものをぎゅっと詰め込んでみました。
皆さまに楽しんでいただけるよう力を尽くしますので、ご縁がありましたらよろしくお願いいたします!
リザルトノベル
◆アクション・プラン
リーリア=エスペリット(ジャスティ=カレック)
職員の方からチケットをいただいた。 せっかくなので、ジャスティを誘って行ってみることにした。 素敵なデザインのドレス、そして、美味しそうなスイーツ。 どれも魅力的で、思わずうっとりしてしまう。 試着は無料でできるようだったので、一着選んで着てみることにする。 どれにしようかなと悩みながら色々なドレスを見てみる。 ふと、ジャスティなら、どれが似合うと言ってくれるだろうか?と思う。 直感で赤いドレスを選び、着てみた。 ジャスティに「似合うかな?」と照れながら聞いてみる。 着替えたら、紅茶とラズベリーのタルトを注文。 とても美味しそうで、食べるのが楽しみ。 ジャスティに「今日はつきあってくれてありがとう」とお礼を言う。 |
リチェルカーレ(シリウス)
ドレスとケーキ、の言葉に思わず手を伸ばしてしまったけれど そういえば シリウスに何も聞いてなかったっけ チケットを後ろ手に隠し 心配そうに彼の顔を見ながら予定を尋ねる 行ってもいい という答えに満面の笑顔 ありがとう!と弾む声で ドレスタルトプランを選択 折角なので試着させて貰う 選んだのはレアチーズタルト 彼の前に出る時前に 着せてくれたスタッフに 「似合っていますか?どこかおかしいところはありませんか?」 心配そうに尋ねる 彼の前に緊張の面持ちで立ち 評価を待つ 似合うと言われれば花のような笑顔 2人分の紅茶をカップに注ぎながら あなたはどんなケーキが好き? いつか作ってプレゼントしようと 一緒にきてくれてありがとう |
夢路 希望(スノー・ラビット)
(素敵なドレスがいっぱいです) 様々なデザインに思わず見入ってしまいます …見るだけでも楽しいですが せっかくなので着てみたい、です 「あ、あの。ユキは、どんなスイーツが好きですか?」 さり気なく聞き出せたら そのモチーフのドレスを探して試着に 着替えたら、ドキドキ、ユキの元へ (あぅ…顔が熱いです…) 試着を楽しんだら、次はタルトです 「えっと…紅茶セットで。タルトは、ラズベリーを」 本当は全部食べてみたかったけど 体重が心配なので控えます …でも、視線は思わずユキのタルトへと… 「あっ、いえ、そんなつもりじゃ…!」 意地汚い子だと思われたでしょうか でも…うぅ… 「…あ、あの…じゃあ、私のも、一口…」 …交換、ということで |
八神 伊万里(アスカ・ベルウィレッジ)
今日は、日頃の感謝も兼ねてアスカ君に美味しいタルトをご馳走したいです。 せっかくですし、少しだけドレスを試着してみましょうか。 ブルーも大人っぽくて素敵だけど、このラズベリーのモチーフのドレス、アスカ君の瞳の色みたいですごく綺麗…… 「ど、どうですか……?この格好、おかしくないですか?」 お披露目は少しだけにして、元の服に着替えてからラズベリーのタルトと紅茶のセットをいただきます。 どれも美味しそうだけど、食べ過ぎると晩ご飯が入らなくなっちゃいますからね。 紅茶を飲んで少しゆっくりしたら、遅くならないうちに帰りましょうか。 「今日は付き合ってくれてありがとうございました。私はとても楽しかったですよ?」 |
クロス(オルクス)
心情:少しは仲良くなれたと自負しているが、もう少し近づきたい。だからこの依頼を受託したんだ!甘い物も食べれて一石二鳥だしな! 行動:確かこれってドレス試着もあるんだよな?よし、紅茶セットとレモンタルト頼んでドレス着よう。べっ別にオルクの為じゃねぇからな!オルクに可愛いとか似合ってるとか言われたいからじゃない!たっ多少は思ってなくもないけど… とっ兎に角、依頼は楽しい時間と美味しいスイーツを二人で話しながら食べる。それに訓練していても息抜きは大切!オルクも最近仕事続きで全然休んでないから、少しでも休めれば良いなって思ったんだけど…良かった、喜んでもらえたみたいで(微笑)(礼にキスされて真っ赤な顔) |
●あまくてかわいい
チケットを手に、リチェルカーレはふと気づく。ドレスとスイーツ、の言葉に思わず手を伸ばしてしまったけれど。
(そういえば 、シリウスに何も聞いてなかったっけ……)
チケットを後ろ手に隠して、パートナーのシリウスの様子を窺うリチェルカーレ。本人は何気なさを装っているつもりだが……。
「何か言いたげだな」
端的に指摘され、びくりと跳ねるリチェルカーレ。観念し、心配そうにシリウスの顔を窺いながらイベントについて説明する。
「あの、ね? ドレスとスイーツのイベントが、あるの。それで、シリウスと一緒に行けたらなぁって……」
予定、空いてないかしらとパートナーを見上げれば、シリウスはやれやれとため息をついて。
「……特に用事はないから。付き合ってもいい」
「本当に?! わぁ、嬉しい……! ありがとう、シリウス」
顔には満面の笑み。礼を伝える声は、歌うように弾ませて。
はしゃぐリチェルカーレを見やって、シリウスもごくほんのりと顔に笑みを乗せた。
「オルク!」
決意に満ちた表情で、クロスはパートナーのオルクスへと声をかける。オルクスはその声に惹かれるように顔を上げ、
「どうした、クー? ふふ、真剣な顔も可愛いな」
ふっと笑い、甘い言葉を零してみせた。真っ赤になるクロス。
「か、可愛いとか言うな馬鹿! 折角俺が、真面目な話をしようとしてるのに……」
「真面目な話? ふむ、どんな話なんだ?」
「あ……甘い物、好きか?」
「……甘い物?」
思わず聞き返すオルクス。『甘い物』とはまた真面目とは程遠いような響きの言葉だが、クロスは真剣そのものだ。
「で、どうなんだ?」
「甘い物は好きだ。……だが、それがどうしたんだ?」
後半の質問はどうやらクロスの耳には入らなかったようで、クロスはやった! とばかりに顔を輝かせている。そして、手渡されたのは一枚のチケット。
「ドレスとスイーツのイベント……?」
「一緒に食べにいかないか、甘い物」
ふむ、と顎に手を当て思案に耽るオルクス。クロスは彼からの返事を、どきどきしながら待った。少しは仲良くなれたと思う。けれど、もう少し近づきたい。そんな思いから、オルクスをイベントへと誘ったクロスである。しばしの間の後、オルクスが出した答えは。
「いいな。一緒に出かけよう」
「そ、そうか……!」
嬉しいと素直には言えないクロスだが、その顔は明るく輝いていた。
●貴方のためのスイーツ・ドレス
イベント会場のメインホールは、色とりどりのドレスに溢れている。スイーツを模したドレスはどれも美しく、可愛く、そしてとっても美味しそう。
(素敵なドレスがいっぱいです)
ホールを飾るドレスたちに、夢路 希望は思わず目を奪われる。そんな希望の隣を行きながら、パートナーのスノー・ラビットは、赤い目をふんわりと和らげて。
「どのドレスもキラキラしてるね」
「は、はい。……見ているだけでも、楽しいです」
「ふふ。ノゾミさんの目もキラキラしてる」
「……!」
悪戯っぽく微笑みかけられて、真っ赤になり俯く希望。それでも、勇気を出して声を振り絞る。
「あ、あの。ユキは、どんなスイーツが好きですか?」
「好きなスイーツ?」
問いに、スノーはきょとんと小首を傾げた。
「……そうだなぁ。甘い物は大体好きだけど、アップルパイとか……りんごを使ったスイーツ、かな」
アップルパイ、と希望は口の中で呟く。そういえば、これまで見て回った中にそんなドレスもあったような。
「えっと、その……少し、待っていてもらえますか? ど、ドレスを……」
「あ、試着してくるの? それじゃあ、楽しみに待ってるね」
にこやかに送り出されて、希望はぺこりと頭を下げアップルパイのドレスを目指す。折角だから、ドレスを着てみたい。そしてどうせなら、スノーの好きなスイーツ・ドレスを。
お目当てのドレスは幸いすぐに見つかり、希望はスタッフの力を借りてドレスに着替えた。どきどきする胸を持て余しながら、スノーの元へと急ぐ。
「お、お待たせしました……」
スノーは、ドレスを眺めながら希望の戻るのを待っていた。希望の声にくるりと振り返り、ぱぁと顔を輝かせる。
「ノゾミさん、可愛い」
そのドレスは、希望にとてもよく似合っていた。
煮詰めたりんごをイメージした甘い蜜色の膝丈ドレスには、シナモン色の上品なラメが光る。その上から重ねられるのは、パイの部分を模した、深い金色のレースボレロだ。ドレスのAラインが、女性らしさと可愛らしさの両方を演出していた。
「へ、変じゃないでしょうか……?」
「全然! とっても素敵だよ。……それに、何だか美味しそう。スイーツを模したドレスだからかな?」
にこにことスノーは答える。希望はまた、熟れたりんごのように真っ赤になった。
(お、美味しそう……!? あぅ……顔が熱いです……)
でも、スノーが褒めてくれた。そのことが、希望にはとても嬉しくて。だから、
「ありがとう、ございます」
兎耳の王子様にも、それから、スイーツ・ドレスの魔法にも。
ホールへと足を踏み入れたリーリア=エスペリットを出迎えたのは、色も形も様々なたくさんのドレスたちだった。
「わぁ、可愛い……!」
実は可愛い物が好きなリーリア。思わず声を上げた後で、今日はパートナーのジャスティ=カレックと一緒だったことを思い出した。慌てて後ろを振り返れば、ジャスティは今やっとホールに入ってきたところで、リーリアは密かに安堵の息を吐く。何となく、可愛い物に目を輝かせているところを見られるのは、気恥ずかしいような気がして。
けれど。
「このドレス、ポップで可愛い! あっ、あっちのはお姫様みたい! どれも素敵ね……」
いつの間にか、すっかりドレスに夢中になってしまう。一方のジャスティはというと、自分そっちのけでうっとりとドレスを眺めているリーリアに文句を言うでもなく、彼女の後についていく。リーリアの意外な一面を知ることができたのは、彼にとって新鮮な驚きだった。はしゃぐ彼女が、何だか可愛らしく思われる。
ふと、リーリアがジャスティの方を振り返った。
「ねえ、ジャスティ。ドレス、試着してみてもいい?」
やや照れ臭そうに、リーリアは小首を傾げてみせて。
「ああ、構いませんよ。どうぞ、気が済むまで楽しんでください」
ジャスティの返事を受けて、リーリアはまた、ホール中を回り始めた。
「これも可愛いけど、あっちも捨て難いなぁ。どれにしよう……」
数多あるドレスに目移りしているうちに、リーリアは、ジャスティならどれが似合うと言ってくれるだろうかといつの間にか考えていて。対するジャスティも、リーリアに似合うのはどのドレスだろうかと考えを巡らせていた。
と、その時。
二人の視線が、一着のドレスに注がれた。
それは、ラズベリータルトをモチーフにした情熱的な真紅のドレス。裾は膝上まで、腰から下の部分はふんわりとしたシルエットで、愛らしく元気な印象だ。それでいて、生地と色合いのおかげか上品さも兼ね備えている。
(これにしよう。最後は結局、直感になっちゃったけど)
(リーリアの瞳と同じ色ですね……彼女によく似合いそうだ)
スタッフを呼んで、早速ドレスに着替える。試着室から出てきたリーリアを見て、知らずジャスティは目を見開く。ドレスは、まるで彼女のためにあつらえられたかのように、リーリアの魅力を引き出していた。
「どう? そ、その……似合うかな?」
照れたように問うリーリアは、物語に出てくる姫君のように美しくて。
「――とてもよく似合っていますよ」
気づけばジャスティは、心に浮かんだ通りの言葉を口にしてしまっていた。
「いいか、これは護衛なんだからな。神人をひとりにしておくとか、危ないからっ」
スイーツ・ドレスを見て回る八神 伊万里の後に続きながら、アスカ・ベルウィレッジは伊万里に、そして自分に言い聞かせるように言葉を紡ぐ。これはデートではないし、自分は決してドレス・タルトにつられたわけでもないというのがアスカの主張である。
「はい、アスカ君は私を守ってくれているんですよね。だから今日は、日頃の感謝も兼ねてアスカ君に美味しいタルトをご馳走します」
「ま、まあアンタがそういうんなら仕方ないけど」
伊万里の真面目な言葉にそう返すも、正直なもので甘い物好きのアスカの尻尾はぴんと立っている。
と、伊万里が急に立ち止まった。くるりとアスカの方へと向き直り、
「折角ですし、少しだけドレスを試着してみてもいいですか?」
澄んだ緑の瞳を瞬かせて、軽く首を傾げてみせる。
「別にいいけど……」
「ありがとうございます。それじゃあ、ドレスを選ぶのでちょっと待ってくださいね」
早速ドレスの吟味を始めた伊万里を見やって、アスカはぽつりと呟く。
「女ってこういうの好きだよな……」
ため息など零してみるが、どこかそわそわしているアスカである。
伊万里は展示されているドレスの前に立って腕を組み、
「ブルーも大人っぽくて素敵だけど……」
でも、と視線を隣のドレスに移す。
そこに飾られていたのは、ラズベリーパフェをモチーフにしているというプリンセスラインのドレス。深い赤色を基調としたドレスの裾の部分にはフリルやドレープがたっぷりと入っていて、なるほどパフェのような豪華さと華やかさだ。
(このドレス、アスカ君の瞳の色みたいですごく綺麗……)
早速スタッフに手伝ってもらってドレスに着替える。試着室から出てきた伊万里は、完璧にドレスを着こなしていた。が、本人は自分のドレス姿が不安で仕方ないようで。
「ど、どうですか……? この格好、おかしくないですか?」
問われて、アスカはまたまたため息をついた。
「アンタはまたそんな動きづらそうな格好して……転んでも知らないからな」
「うっ……そ、そうですよね。ごめんなさい……」
アスカの言葉を額面通りに受け取り、しゅんと落ち込む伊万里。
「あー……ま、まあ、いつものイインチョーって感じとはまた違って見えるのはちょっと驚いた、かも」
あまりの落ち込み様に精一杯のフォローを入れれば、伊万里は驚いたみたいに顔を上げ、それから花のように微笑んだ。
「ありがとう、ございます。私、着替えてきますね」
「もう、気は済んだのかよ」
「はい。だってこの格好だと、アスカ君とタルトが食べるのに不都合ですから」
応えて、伊万里はにっこりとした。
「わぁ……!」
ホールでリチェルカーレとシリウスを待っていたのは、女の子の夢をぎゅぎゅっと詰め込んだような、愛らしいスイーツ・ドレスたち。
ドレスに夢中になり、ふわりと人混みに消えてしまいそうになるリチェルカーレの名を、ごく反射的に口にしてシリウスは手を伸ばす。
「リチェ!」
細い腕を掴んだら、彼女ははっとしたようにシリウスの方を振り向いて。
「もっとちゃんと周りを見ろ……迷子になるぞ」
「ごめんなさい……。ありがとう」
零れるのは、花綻ぶような笑み。
もう勝手に傍を離れないからと約束した少女の、少し後ろをシリウスは行く。シリウスはといえばドレスにもスイーツにも興味はないのだけれど、目をキラキラさせながら楽しそうにドレスを見て回るリチェルカーレを見ていると、不思議と退屈することはなくて。
「このドレス、素敵……」
ふと、リチェルカーレが足を止める。彼女がうっとりと見上げるのは、レアチーズタルトをモチーフにしたワンピース型のドレスだ。可憐な純白のドレスを彩るのは、タルトをイメージした淡い茶色のレースリボンと、裾からちらりと覗く同色のフリル付きのパニエ。ふわっとしたシルエットが、女の子らしく可愛らしい。
「試着、してみてもいい?」
散歩をねだる子犬のように、リチェルカーレはシリウスを見上げる。別に構わないと短く応じて、シリウスはリチェルカーレがスタッフと試着室に消えるのを見送った。
「似合っていますか? どこかおかしいところはありませんか?」
スタッフに心配そうに尋ねながら試着室から出てきたリチェルカーレのドレス姿に、シリウスは僅か目を瞠る。緊張しきりの面持ちで、それでもじっと自分を見上げてくるリチェルカーレの視線に耐えかねて、シリウスは目を逸らした。それほどに、ドレスを身に纏ったリチェルカーレは愛らしくて。
「……悪くないないんじゃないか?」
似合ってるとぼそり付け加えれば、リチェルカーレはぱああと顔を輝かせて。とろけるようなその笑顔に、シリウスはふと魅入られてしまう。
神人と精霊に、スイーツ・ドレスの幸せな魔法は降り注ぎ。
事前にタルトと紅茶のセットを予約したクロスとオルクスは、ドレスが展示されているホールへと向かった。
「なるほど、菓子をモチーフにしたドレスか。面白い試みだな」
ドレスを眺めるオルクスはどこか楽しげで、クロスはそんなオルクスをそっと見やって密かに笑む。
(ドレスの試着もあるのか。クーが着たらさぞかし似合って可愛いんだろうな)
そんなことを考えながらとりどりのドレスに目を奪われていたオルクスは、ふと視界から、その肝心の『クー』が消えていることに気づく。
「オレとしたことが……少し、疲れているのかもしれんな」
最近仕事続きで少しも休む暇のなかったオルクスである。自身の不甲斐なさにやれやれとため息も漏れるが、まずはクロスを見つけるのが急務だ。人波の中に見慣れた姿を探そうとした、その時。
「……クー?」
「お待たせ、オルク。どうかな? ……って、別にオルクのために着たわけじゃないんだけどな! 全ッ然!」
オルクスの前に現れたクロスは、スイーツ・ドレスを身に纏っていた。先ほど注文したレモンタルトがモチーフのアンクル丈のドレスは、大人っぽく落ち着いたシルエットでありながらも、淡いイエローが女の子らしくキュートな印象だ。
「うん、やはり似合っている。流石クーだ、可愛いな」
微笑みを浮かべ、オルクスは、ぽん、と軽くクロスの頭に触れる。真っ赤になり、カチーンと固まるクロス。オルクのためではないと言いつつも、本当はやはり、オルクスに可愛いとか似合ってるとか言われたかったクロスである。嬉しくて声も出ない。
そんなクロスに、オルクスは優しく声をかける。
「ほら固まってないで、タルトを食べにいこう」
「え? こ、この格好のまま行くのか?!」
「勿論。まだ、眺め足りないからな。タルトを食べながら、じっくりと楽しませてもらうよ」
ますます真っ赤になるクロスだった。
●ドレス・タルトの甘い罠
「えっと……紅茶セットで。タルトは、ラズベリーを」
「僕は、ブルーベリーの紅茶セットで」
ドレスの展示を楽しんだ希望とスノーは、飲食スペースを訪れていた。注文を済ませれば、間もなく二人分の紅茶とドレス・タルトが運ばれてくる。
「わぁ。美味しそうだね」
「はい。それに、とっても綺麗……」
繊細な造りのタルトは、まさにドレスのような美しさ。
(本当は、全部食べてみたかったけど)
体重を心配して、一つだけで我慢した女の子らしい希望である。
けれど、自然と視線はスノーのタルトへと惹きつけられて……。
「ノゾミさん、僕のも一口食べてみる?」
視線に気づいたスノーが、柔らかく問いかける。
「あっ、いえ、そんなつもりじゃ……!」
意地汚い子だと思われたかもしれないと狼狽するも、スノーは王子様の笑顔でタルトをそっと差し出して。
「ほら、あーん」
口元まで運ばれたタルトを、拒絶する理由もなく。希望はドキドキしながら、タルトを口にした。
「どう? 美味しかった?」
「は、はい。あの、ありがとうございます……」
本当は、緊張しすぎて味はよくわからなかったのだけれど。でもそのタルトは、とても幸せな味がした……ような気がした。
「あ、あの……お礼に、私のも一口どうぞ。交換、ということで……」
「わ、ありがとう。嬉しいな」
花が綻ぶようなスノーの笑みに、希望の胸はますます高鳴って。
幸せな時間は、ゆっくりと過ぎていった。
リーリアとジャスティは、何となく気まずい空気の中に身を置いていた。
(うう、何で私、このタルトを頼んじゃったんだろう……)
注文する時には、心はウキウキと弾んでいたのだ。どのタルトも美味しそうで、食べるのが楽しみだった。でも、リーリアの注文したラズベリーのタルトは、どうしても先ほど試着したドレスを思い起こさせてしまって。
リーリアは、ブルーベリーのタルトを静かに口に運ぶジャスティをちらと見やった。試着の際の彼の言葉が思い出されて、頬が火照るのを感じる。
不快だったわけではない。嬉しかったからこそ、どう接したらいいのかがわからない。
「……食べないのですか、リーリア」
気づくと、ジャスティはもうタルトをほとんど食べてしまっていた。
「あ、食べる。食べるわ!」
「なら、さっさと食べてしまってください。……それを見ていると、どうしてもさっきのことを思い出してしまう」
応えたジャスティの耳は、よく見ればほんのりと朱に染まっていて。
(……何だ、一緒だったのね)
お互いに意識してしまっていたのだと、そのことを思うとふっと気が楽になった。思わず、笑みが零れる。
「……何を笑っているのですか」
「ううん、何でもないわ。……ねえ、ジャスティ」
「何でしょうか」
「今日は、付き合ってくれてありがとう。楽しかったわ」
真っ直ぐな言葉に、ジャスティは僅か目を見開いて。
「……僕も、退屈ではありませんでしたよ」
捻くれた返事に、リーリアはくすりと笑みを漏らした。
伊万里が普段着に着替え終われば、お待ちかねのデザートの時間だ。
「私は、ラズベリーのタルトと紅茶のセットをいただきますね」
「俺はおすすめの抹茶のタルト」
二人とも、他のタルトにも目移りしたのだが、
「どれも美味しそうだけど、食べ過ぎると晩ご飯が入らなくなっちゃいますからね」
「本当は全部食べたいけど、晩ご飯を作って待ってくれてる人がいるし」
声が、ぴたりと揃った。
伊万里は思わずくすりと笑みを零し、アスカは照れ臭そうに頭を掻く。
「紅茶を飲んで少しゆっくりしたら、遅くならないうちに帰りましょうか」
「……だな」
「今日は付き合ってくれてありがとうございました。私はとても楽しかったですよ?」
「俺も……まあ、悪くはなかった」
「またどこかへ出かけられたら嬉しいですね」
帰る場所があるから、どこにでも飛び立てる。
欠片の陰りもない笑みを向ける伊万里に対し自分も僅か目を細めて、「また機会があったら」とアスカは応えた。
リチェルカーレは、自分とシリウス、二人分のティーカップに供された紅茶を注いだ。ふんわりと、さわやかな香りが辺りに満ちる。テーブルには、フランボワーズとレモンの二つのドレス・タルト。
「シリウスは、どんなケーキが好き?」
「唐突だな。どうした?」
「いつか作って、プレゼントしようかと思って」
はにかむように笑んだリチェルカーレを見やって、シリウスはレモンのタルトをつつく。
「……甘すぎないものなら、食べられる 」
答えが返ってきたことがよほど嬉しいようで、リチェルカーレの笑みはますます明るくなった。
「甘すぎないケーキ、考えておくから」
それから、ね。
「一緒にきてくれてありがとう」
真っ直ぐな言葉に、とっさには何と返せばいいのかわからなくて。シリウスは、甘酸っぱいタルトを口に運んだ。
クロスとオルクスも、飲食スペースでドレス・タルトを楽しんでいた。
「なあ、オルク。……楽しい、か?」
おずおずと切り出された問いに、オルクスは柔らかく笑んで答える。
「ああ、楽しいぞ。折角クーがオレのために気を回してくれて、ドレスまで着てくれたんだからな。今この時間を楽しまないと」
「そうか……よかった。オルクも最近仕事続きで全然休んでないから、少しでも休めればいいなって思ったんだ」
オルクスの答えに、クロスは柔らかく目を細めて。
「うん。クーのおかげで良い息抜きになったよ、ありがとう」
これからもよろしくな、オレの大切なパートナーさん。
言って、オルクスはふわりとクロスへと笑いかけた。
依頼結果:成功
MVP:
エピソード情報 |
|
---|---|
マスター | 巴めろ |
エピソードの種類 | ハピネスエピソード |
男性用or女性用 | 女性のみ |
エピソードジャンル | イベント |
エピソードタイプ | ショート |
エピソードモード | ノーマル |
シンパシー | 使用不可 |
難易度 | とても簡単 |
参加費 | 1,000ハートコイン |
参加人数 | 5 / 2 ~ 5 |
報酬 | なし |
リリース日 | 03月20日 |
出発日 | 03月31日 00:00 |
予定納品日 | 04月10日 |
参加者
- リーリア=エスペリット(ジャスティ=カレック)
- リチェルカーレ(シリウス)
- 夢路 希望(スノー・ラビット)
- 八神 伊万里(アスカ・ベルウィレッジ)
- クロス(オルクス)
会議室
-
2014/03/27-22:16
えっと、あの、初めまして。夢路希望です。
パートナーのユキ――えぇと、ラビットさんと、参加です。
宜しくお願いします。 -
2014/03/25-21:50
初めまして、八神伊万里です。
こちらはパートナーのアスカ君。
ご一緒するみなさん、よろしくお願いします。
素敵なイベントになると良いですね。 -
2014/03/25-19:47
初めまして。
私はリーリア。パートナーはジャスティって言うの。
とても素敵なドレスで、選ぶのに悩みそうね…。
今回一緒に参加のみなさん、よろしくね。 -
2014/03/25-11:59
折角だし、挨拶でもしとくか。
皆さん初めまして。
俺はクロス、パートナーは俺の上司でもあるオルクスだ。
確かにケーキとか甘い物は好きだし、魅力的だと思う。
けっ決してオルクが仕事で忙しいから息抜きに最適だとか、ドレス着た自分に対して感想を求めてるとかでもないからな!(焦照)
兎に角!一緒に参加する方々、宜しくお願いする。
-
2014/03/24-20:37
ええ、と。折角なのでご挨拶を。
リチェルカーレと言います。私の精霊のシリウスと参加します。
ケーキもドレスもとっても素敵…!
一緒に参加する皆さんも、どうぞよろしくです。