プロローグ
●あー、女神様―
ぱらり、ぱらり。
一覧を捲り、君はどの任務を受けるか思案する。
オーガの討伐、デミ・オーガの討伐、オーガらしきものの調査……さまざまな依頼が並ぶ中、一つだけ、変わったものが並んでいた。
「儀式への参加……?」
不思議そうに君が呟くと、パートナーが隣から一覧を覗き込んできた。
彼は人差し指で頬を掻きながら、この受付娘に任務の詳細を求めた。
「えっとですね。その任務は少し変わっていて、儀式を執り行うのが目的ですね」
受付娘はファイルから資料を取り出し、眼鏡を調えてから詳細を口にする。
「この村では、大昔に強力なオーガで現れたっていう言い伝えがあるんです。
そのオーガは女神ジェンマの加護を強く受けたというウィンクルムによって討伐されたらしいんですが、これ以降、オーガの侵入を阻む為に儀式が行われるようになったんです。
この言い伝えや儀式の信憑性自体は……かなーり怪しいんですが、実際にオーガが現れたということもないんですね。
なので、効果があるかもしれないならやっぱりやっとこうっていう考えでして」
そして儀式はウィンクルムの手によって執り行われなくてはいけないという決まりらしく、こうしてA.R.O.A.に依頼が出るのだという。
ふーんと相槌を打ったパートナーだが、君は肝心の儀式の内容を聞いていないことに気付いた。
「儀式の内容ですか?
えーっとですね……こう、高く積み上げた積み木を、一人一個ずつ抜いてさらに上に積み上げるゲームって知ってます?」
「ああ、ジェン
「はい、それをジェンマでやるんです」
……。
…………。
なんですと?
「愛の女神の杖、ジェンマでやるんです」
「え、馬鹿なの?」
「……そこはノーコメントで。毎年、勇士から借りてやってるそうです。
自前のジェンマを持ってるなら、マイ・ジェンマ補正とかいうのがつくそうですよ?」
なんじゃそれ。
とても頭がおかしい任務だとは思うが、興味を引かれたのもまた事実。
君は、気の迷いで任務を引き受けてしまったのであった――
解説
●目的
ジェンマを積んで遊ぼうぜ
戦闘?なにそれおいしいの?
●ルール
集まった皆でジェンマします
綺麗に積み重なったジェンマを引き抜いて一番上に重ねるというゲームもとい儀式
皆でわいわい楽しめるなら、負けとか気にしない。
一組単位で一手となり、一手ごとに神人と精霊が交代することになります
(例:一手目は神人、二手目が精霊、三手目が神人)
●必須
A(6面ダイス)・B(6面ダイス)を挨拶の段階で振ってください
Aが十の位、Bが一の位となります(例:Aが4・Bが3なら43)
この数値+抵抗力が強さです
なお、神人がジェンマを装備している組は補正が発生します
詳細は秘密
●その他
コメディ不可避です
キャラ崩壊発生もあり得るのでそこんとこよろしく
他の参加者さんとのやり取りもプランに含まれる場合は、しっかり照らし合わせて盛り込んでいただけると助かります
ゲームマスターより
なんか、つい、カッとなって。
リザルトノベル
◆アクション・プラン
ニッカ=コットン(ライト=ヒュージ=ファウンテン)
今日は気合い入ってるわよ ジェンマでジェンマしちゃうなんて面白いじゃない! それにね、こんな時だからこそハリセンを装備してきたのよ ハリセンなんていつ使うの、今でしょ!(握りこぶし 人生初のジェンマを楽しみたい そして更にこんな時だからこそライトに入れられるかもしれない1発に全神経を研ぎ澄ませます そう、もしもライトの一手によってジェンマが崩壊したその時に、ニッカの手に握られたハリセンが唸るのです 毎日の裁縫で鍛えたこの腕にかけて←慎重に引き抜き上へと積み上げるわ ごめんなさいね、背がその、あまり高くはないものだから踏み台なんか用意してもらえると助かるわ どこに積めば倒れないか、などは考えてません 全ては直感です |
油屋。(サマエル)
ダイス結果:56 ジェンマ ただの儀式(げぇむ)と侮ってはならぬ これは、己の精神力が試される試練の儀なのだ 皆でこのジェンマ、どこまでも高く積み上げようじゃないの! 精霊の作戦に従いつつ 真ん中のジェンマから抜き、頃合いを見て徐々に両端を攻める 両端が抜けたところから上に積み上がるジェンマ、 これを抜き、さらに積み上げる一連の流れには 技術と精神力が試される……ッ! 訳:バランスが崩れてきたら冒険せず慎重に抜いていく 後半戦は真剣そのもの、ボケなし笑いなしでお送りします |
ロア・ディヒラー(クレドリック)
|
アンダンテ(サフィール)
ジェンマでジェンマ? 何だかよく分からないけど面白そうね! 順番とルールをよく確認して頑張るわ 要は引き抜いて積み重ねればいいのでしょう? 簡単じゃない ジェンマって杖だしバランスは取り辛そうね これを取るとあちらが危ないかしら でもだからといってこちらを取ると傾くような…? (考えるの面倒になった)まあ、女は度胸っていうわよね! 直感で選んで引き抜く 崩しちゃったらてへっと笑って誤魔化しつつ他の参加者の方の応援に回るわ サフィールさんの番になったら応援するわ きっとサフィールさんなら素晴らしい引き抜き技を披露してくれるはずよ 儀式っていうから堅苦しいものを想像してたけど案外楽しいものなのね 他の場所でも流行らないかしら |
ノエル(アレキサンダー)
・儀式法の元のゲームへの知識:無知 ・ゲームについては精霊に聞く ・慣れてきた頃、悪戯心が疼いて捻った置き方をしたくなる <変わった手法の儀式じゃなぁ。 しかし元のゲームについて我輩もノエルも解らんなぁ…ああ、其方はやった事があるかの? やった事があるのであれば、我輩に教えるのじゃ!> <うむ…なかなか難しそうじゃな…慢心で集中力を切らしたら、崩れてしまいそうじゃ…> <ああ、儀式と言う事を忘れかけそうになっておった でもまぁそうだな、我輩もいけるところまではいきたいなぁ> <…ただ引いて積むのは飽きたのう…何か面白い積み方は…何じゃ、ダメか> ・儀式後、精霊にパペ無しで声をかける 初仕事、おつかれさま…なのさ…。 |
●答:知りません
何だこれ。
サフィールの頭に浮かぶ疑問。しかし、賢明な彼はその疑問を頭の中からさっさと箒で掃きだした。
深く追求したくない、追及したらロクでもない思考に行き着くのが目に見えている。
ふぅと小さく息を吐き、アンダンテを見ると楽しみだといわんばかりにウキウキそわそわしている。
サフィールからの視線に気付いたアンダンテが笑みを向ける。
「何だかよく分からないけど面白そうね!」
そんな彼女の手には愛の女神のワンド「ジェンマ」がばっちり握られている。
マイ・ジェンマ制度をフル活用して、全力で楽しむつもりなのがよく分かる。
しかし、サフィールはパートナーの性格をよく知っている。
おっとりぼんやり。前向きで、粘り強いというか諦めが悪いというか。そして、とてもそそっかしい。
最後の部分からして、慎重さを求められるこのゲームの性質とは相性が悪いと言えるだろう。
正直に言えば、ビリになるのは一向に構わないというか気にならないというか心底どうでもいいが――他の参加者の為にまともなゲームにする必要が大いにある。
アンダンテから目を離さないようにしなければ。サフィールの気苦労がいろいろヤバいことになるのは分かりきっていた。
本人は気付いてないっていうか気付きたくなかったかもしれないけどね。ふぁいとー。
「変わった手法の儀式じゃなぁ。しかし、元のゲームについては解らんなぁ……ああ、其方はやった事があるかの?
やった事があるのであれば、我輩に教えるのじゃ!」
もごもごと蛙のパペットを動かし、ノエルがアレキサンダーにせっつく。
腹話術のように見せかけようとしているが、マスクで隠した口元がもごもごと動いているのがよく分かる。
アレキサンダー自身、家族で軽くやった程度だが、経験者は皆そのくらいだろう。教えるには充分だ。
小柄なノエルを見下ろし、苦笑いを零してからルールを説明してやる。とはいえ、A.R.O.A.で職員が説明したことから改めて教えなければいけないことはそうない。
「他に分からないことは?」
アレキサンダーの言葉に、ノエルは蛙のパペット共々首を振った。
「充分である」
「大丈夫そうだね」
ノエルを席に促し、アレキサンダーはその後ろに続く。
今回は遊びに近い任務だからいいが……きちんとした討伐任務などでは、彼女の会話方法だと仲間との意思疎通どころか戦闘そのものに支障を来たすだろう。
どうにかする必要がある、とノエルの背中を見ながらアレキサンダーは思った。
とてもどうでもいいことかもしれないけど、マペほにゃららは権利的な意味で危ないかもしれないっぽい。
某番組の造語らしいので控えさせてもらいます、まる。
「ジェンマでジェンマしちゃうなんて面白いじゃない!」
気合充分のニッカ=コットンの手にはハリセン。
そのハリセンを、ライト=ヒュージ=ファウンテンは不信の目で見ていた。
何故、今日に限ってハリセンを持っているのか。
いや、とライトは頭を振る。考えるまでも無い。きっとライトへ振るう為のものだ。
もし、ライトがジェンマ・タワーを崩せば、ニッカはすぐにハリセンを振るうに違いない。
ニッカはハリセンなんていつ使うの?今でしょ!という雰囲気を漂わせているので、疑う余地は無い。
ライトは溜息一つ零し、ニッカと共に己の席へと向かうのであった。
たゆん。
たわわな双丘が揺れる。油屋。はジェンマ・タワーを前に、びしりとジェンマを翳してポーズをとった。
「ジェンマ ただの儀式(げぇむと読もう)と侮ってはならぬ。これは、己の精神力が試される試練の儀なのだ」
彼女が動くたびにぱゆんたゆん揺れる胸部が書いてる人には眩しい。はらしょー。
いいぞもっとやれ。キャラ崩壊ばっちこい。
向かい側の席に座るロア・ディヒラーが「油屋ちゃん、どうしちゃったんだろ……」と呟いている。
そのお隣のクレドリックが「心因性の多重人格かもしれん。面白い」などと物騒なことを呟いてたりもするがそこは軽やかにスルーしよう。
幸か不幸か油屋。本人には聞こえてないし。
乳女さん……き…ます…か……聞こえますか……?今……あなたの心に、直接語りかけています……
そんな油屋。にどこからともなく――ではなく、彼女の真後ろからサマエルが天の声のように囁きかける。
つかぬ事をお聞きしますが……どうして、こんなことになったのでしょうか……?
「知らね」
天の声は一刀両断された。これがおっぱいの本当の威力に違いない。
サマエルはなんともいえない様子で目を細め、ジェンマ・タワーと向かい合うのであった。ぼいん。
「はい、それではマイ・ジェンマをお持ちの方。お預かりしますね」
ざわ。村人のまさかの回収発言に場がどよめく。
あるてぃめっとでらぶてぃめっとな貴重品である為、アンダンテは強張った笑顔を浮かべ、ジェンマをぎゅっと握り締めた。
油屋。は、回収するのか、へー、と興味深そうにしている。
村人はウィンクルム達に胡散臭いウィンクをして見せた。
「ご安心ください。必ずお返ししますから。なので、これに名前を書いて下さいね」
アンダンテと油屋に配られたのは、大きな白い無地のシールと油性ペン。
まさか……。サフィールは咄嗟にジェンマ・タワーを見た。積み上げられたジェンマには、全て名前が書かれたシールが貼られていた。
女神の加護を受ける儀式なのに、女神の杖の扱いが雑すぎやしないか。
そう思うサフィールの横で、アンダンテが感嘆の声を上げた。
「確かにこれなら、間違えようがないものね」
感心したアンダンテは、さらさらとシールに名前を書いて迷わずジェンマにぺたり。
それでいいのかと、アレキサンダーが物言いたげに見ていることには気づかない。
一方、油屋。がシールを受け取ろうとすると、サマエルが横から奪い取るようにして受け取った。
流れるようにペンのキャップを外し、濁流のように止めることが出来ない勢いで『乳女』と書いてジェンマに貼り、押し付ける勢いで村人に引き渡した。
油屋。は笑顔を浮かべている。
ただし大人しい人なら腰がひけるような、と形容されるものだが。現に直視してしまったニッカがたじろいでいる。
しかし、サマエルは「はっはっはっは」と白々しく笑いながら、油屋。の無言の抗議を受け流すのであった。
●答:やっぱり知りません
何だこれ。
本日二度目のサフィール・クエスチョン。残念ながら回答者はいない。
彼とアンダンテの周囲には盾のようなものを持った屈強な村人×4。
三順目を迎え、アンダンテがジェンマを引き抜こうとした途端に、彼らはわらわらとやってきたのだ。
バランスが取りづらそうだが、手前のジェンマを抜くと反対側の下段が危ないだろうか?
かといって上のを取れば傾くような。悩んでいたアンダンテは面倒になったので思考を放棄した。
「女は度胸って言うわよね!」
ピッチャーにデッドボールをぶつける勢いで、直感頼りに杖を引き抜く。
すると、勢いがよすぎた為かぐらり、傾くジェンマ・タワー。すると、盾というか抑えの板を持った村人がタワーの補強にかかったのだ。
いきなりのことで驚くウィンクルム達に、先程ジェンマを回収した村人が殴りたくなるようなウィンクを投げてみせた。
「これがマイ・ジェンマ補正です」
「……これを補正と申すか」
パペットを動かし、ノエルがぽつり。
隣のアレキサンダーが引きつった笑みを浮かべている。
「とても心強いわね!」
満面の笑みでサフィールを振り返るアンダンテが眩しい。
あまりの眩しさに油屋。が目を逸らす。ぴゅあーすぎて書いてる人が溶けそうです。
「……度胸じゃなくて愛嬌だ」
どうにかこうにかツッコミを搾り出したサフィール。
すでに彼はお疲れのようです、なんでだろうね。
四順目。
ジェンマ・タワーを前にノエルのパペットが小刻みに動き出した。
「……ただ引いて積むのは飽きたのう」
ぽそり、小さな呟き。
他のウィンクルム達には聞こえなかったようだが、パートナーのアレキサンダーには丸聞こえだ。
「ノエ、これ儀式だから変な企みはダメ」
「何じゃ、駄目か」
先回りして釘を刺すアレキサンダー。
残念な表情を表す為か、ノエルのパペットの顔がくしゃりとひしゃげる。むぅという唸り声がマスクの下から聞こえた。
「仕方ないのう……」
一応は納得した様子のノエルを見て、アレキサンダーはほっと息を吐いた。
皆でワイワイ楽しむゲームは大家族生まれゆえなれてはいるが、女神の杖でやるとなると緊張してしまうものだ。
そんなアレキサンダーの前で、ノエルは無難にジェンマを引き抜き、無難に積み上げた。
ライトは一度屈みこみ、足元の台をどける。
小柄なニッカとノエルには踏み台が用意されているのだが、色んな角度からジェンマ・タワーを見たい今のライトには少々邪魔だったのだ。
右側、左側、様々な角度からジェンマ・タワーの様子を窺う。
しっかりと検討した末に、ライトは『アキ・カン』という名前シールが書かれたジェンマを手に取った。
ニッカが緊張の面持ちで見守る中、ライトはゆっくりとジェンマを引き抜く。
詰めていた息を吐き、今度は小さく息を吸う。
慎重にジェンマを詰み、暫く様子を見るも崩れる気配はない。ライトはそろりそろりとジェンマから手を離した。
「見てるだけでもすごく緊張するわね」
「そうですね」
タワーが崩れなかったことに、ライトは内心ほっとしていた。
こんなアホみたいな行事は滅多に無い。折角の機会、長く楽しみたいのだ。
五順目。
引き抜いたジェンマの感触を、ロアは指先で何度も確かめていた。
仲間が持っているのを見たことはあるが、実際触ってみるのは今回が初めて。
「ロア?」
「あ、ご、ごめん!」
向かい側の席から油屋。に声をかけられ、ロアは我に返った。触れたことが無いものだった為、ついつい手触りを楽しんでしまった。
勿論、クレドリックは、何故ロアがジェンマをすぐに積み上げなかったかは察していた。
けどまあ、クレドリックさんですし。ロアさん観察の方が大事です、今日も彼の心のカメラが仕事しています。
ちょっと焦った様子のロアを見て、油屋ぐっじょぶとクレドリックさんが思ってるかどうかは置いといて。
ロアがジェンマを持ち直すと、光の粉が舞った。
触れてみたいという衝動を懸命に堪えながら、ロアはジェンマをタワーの上へと積み上げた。
六ぼいん目。
精神制御の術を持つサマエルの心は揺るがない。油屋。が
手番の度に、胸部のぼいんでジェンマを崩してしまうのではないかと心配していたりもしたが、揺るがない。
おっぱいは揺れてたけど、それは置いといてぼいん。
サマエルは、このジェンマなるゲームじゃなかった儀式が積み木とはまた違ったものだということをよく理解していた。
絶妙なバランスでたっているジェンマ・タワー。同じ要領でやれば倒壊するだろう。
まあ、マイ・ジェンマ補正(物理)で崩れるのは防げるかもしれないけど、大胸筋をぴくぴく動かしながらジェンマ・タワーを支える村人達は見たくない。
ジェンマ・タワーを上・中・下、三つの区画に区切って考えることにしている。
すでに虫食いのような穴が多数出来ている今、サマエルは下を狙うことにした。下だけにごめんなさいついぶっこみたくなったんです。
揺れを最小限に抑えることは重要だ。揺れていいのはおっぱいだけだ。むしろもっと揺らそ?
それは置いといてたゆん、いかな揺れも許さないとばかりに、サマエルは息を押し殺す。
精神をコントロールすることにより、手の震えすらない。
ジェンマが抜けてもタワーは揺れることなく、重ねられてもやはり、揺れることは無い。
その様子を見て、サマエルは満足気に笑った。
「完璧です★」
サフィールは背中に強いプレッシャーを感じていた。
当の本人――アンダンテに自覚は無い。ぴゅあーな彼女はぴゅあーに応援しているに過ぎないが……。
「きっとサフィールさんなら素晴らしい引き抜き技を披露してくれるはずよ」
ハードルが上がって今や棒高跳び(ただし棒は無い)へと変わっている。
我関せずと行きたいところだが、プレッシャーに左右されない術を彼は持ち合わせていなかった。
それでもサフィールはじっくりとジェンマ・タワーを眺め、どのジェンマを抜くか見極める。
慎重に、選んだジェンマを引き抜き、タワーの頂上に積み重ねた。
七順目。
脚立のように階段状になっている踏み台の、一番高いところへ登ったニッカ。
今では、女性にしては長身のロアの元にすら踏み台が用意されている。
裁縫の腕は磨いている最中で今はまだ拙いが、それでもこの腕にかけて慎重にジェンマを引き抜く。
裁縫とジェンマを引き抜くことになんの因果関係があるのかというツッコッミは置いといて。
「そーっと、そーっと……」
自身に言い聞かせながら、ゆっくりとジェンマを乗せる。僅かにぐらつくジェンマ・タワー。ひやりとしたが、揺れはすぐに収まった。
しかし、この均衡がかなり危ういものだということは一目瞭然。
ニッカはタワーをこれ以上揺らさないように、細心の注意を払いながら踏み台から降りた。
「なかなか難しそうじゃな……崩れてしまいそうじゃ」
ノエルの囁きに、アレキサンダーは静かに頷いた。
かなり集中して掛からなければ倒れてしまうだろう。
スローモーションのように遅い動作で、アレキサンダーはジェンマ・タワーへと手を伸ばす。
触れた瞬間、タワーが揺れた為、動きを止める。少しの間を置いて、収まる揺れ。
緊張のあまり口内に溜まった唾液を嚥下し、覚悟を決めてアレキサンダーはジェンマを引き抜いた。
ジェンマ・タワーはぐらつくも、ここもどうにか崩れずに済んだ。
そろりそろりと近付き、今度は引き抜いたジェンマを重ねに掛かる。
しかし、ジェンマがタワーに触れた瞬間――タワーの頂上からゆっくりと傾く。
ガラガラとタワーが崩れる音は、儀式の終わりを告げる鐘のようだった。
●答:知ってても教えません
何だこれ。
散乱した女神の杖を、サフィールは冷めた目で眺めていた。
ウィンクルム達の周囲を取り巻く村人達が、「これで今年も安泰だー!」「じぇーんまっ!はいっ、じぇーんまっ!」「今年は俺達の仕事少なかった……」だとか好き勝手騒いでいる。
ちなみに、一番最後の言葉はマイ・ジェンマ補正(物理)担当の村人達のものである。
ずっしりと肩にのしかかる疲労感と戦いながらも、村人達に促されてジェンマ・タワーがあった場所から離れる。
アンダンテがサフィールの顔を覗きこむようにしながら、隣に並んだ。
「お疲れさま。儀式っていうから堅苦しいものを想像してたけど案外楽しいものなのね」
「……ここの儀式が特殊なんです」
「あら、そうなの?他の場所でも流行らないかしら」
儀式は流行らせるものではない――というツッコミがサフィールの咽元まで上ってきていたが、反応することすら面倒だった為、口にはしない。
曖昧な相槌を打って誤魔化そうとして……サフィールが気付いた。
「アンダンテ、自分のジェンマは……!?」
「あ、忘れていたわ」
呑気に答える神人を尻目に、精霊は慌ててジェンマ・タワーの残骸へと走っていった。
ジェンマ・タワーを崩してしまった瞬間はひやりとしたが、お祭り騒ぎの村人達を見てアレキサンダーは安堵した。
ゲームのようであるとはいえ、仮にも儀式だ。お人好しの彼は台無しにしてしまったのではないかと不安に思ってしまったのだ。
ほっと胸を撫で下ろしているアレキサンダーを見つめていたノエルが、ふいにマスクをずらした。
ほんの少し、ギリギリ口元が見える程度ではあるが――
「初仕事、おつかれさま……なのさ……」
パペットが喋っている風を装うでもなく、ノエルが自力で喋った。
驚きのあまりにアレキサンダーは暫くの間、硬直したままだった。
愛の女神・ジェンマ。
愛を司るということは、きっときょぬーなのだと思う。
そのことに気付かせてくれてありがとう、ウィンクルム!これからも見守っててください、ジェンマ!!
来年もおっp(二重線で消されてある)この儀式を楽しみにしています。
―――村人A談
依頼結果:成功
MVP:
名前:油屋。 呼び名:乳女 ゴリラ 早瀬 |
名前:サマエル 呼び名:サマエル |
エピソード情報 |
|
---|---|
マスター | こーや |
エピソードの種類 | アドベンチャーエピソード |
男性用or女性用 | 女性のみ |
エピソードジャンル | 冒険 |
エピソードタイプ | ショート |
エピソードモード | ノーマル |
シンパシー | 使用不可 |
難易度 | とても簡単 |
参加費 | 1,000ハートコイン |
参加人数 | 5 / 2 ~ 5 |
報酬 | 少し |
リリース日 | 05月01日 |
出発日 | 05月07日 00:00 |
予定納品日 | 05月17日 |
参加者
会議室
-
2015/05/06-20:46
クル:
こちらもプラン提出したぞっ!
改めて皆、よろしく頼むのじゃ!
-
2015/05/06-20:35
-
2015/05/06-18:29
-
2015/05/05-15:45
こんにちは。アンダンテとサフィールさんよ。
今回はよろしくね。
不思議な儀式なのね。まるでゲームみたい!
とりあえず引っこ抜けばいいのよね?
どうなるのか楽しみだわ。
【ダイスA(6面):2】【ダイスB(6面):3】 -
2015/05/05-04:41
挨拶が遅くなっちゃったわ
あたしはニッカ、それから精霊のライトよ
よろしくね!
それにしてもジェンマでジェンマするなんて面白いじゃない
こういうの好きだわ
ライトはどうだか知らないけど、隠された一面が見られたりするのかしら(笑)
【ダイスA(6面):3】【ダイスB(6面):6】 -
2015/05/04-14:01
油屋。:
こんちはー!油屋。と、こっちはサマエルだよーっ!!
初めましての人もお久しぶりな人も宜しくねっ♪
サマエル:
どうしてこうなった
【ダイスA(6面):5】【ダイスB(6面):6】 -
2015/05/04-12:57
クル(※蛙のパペット片手にノエルがマスク越しに喋っております):
初めての依頼故、お初にお目にかかる
我輩はクルと申す、後ろのはノエル、更にその隣のものはアレキサンダーじゃ。
よろしく頼むぞ!
アレキサンダー:
ちょっと不思議な子だけど、宜しくしてあげてね。(苦笑)
初依頼がジェンマでジェンマって……ま、まぁウィンクルムにしか出来ない事なんだよね。
俺も気合い入れてこうと思うよ。
【ダイスA(6面):5】【ダイスB(6面):4】 -
2015/05/04-12:44
はじめましての方ははじめましてっ。
ロア・ディヒラーとパートナーのクレドリックです。
えっとどうぞよろしくお願いしますね!
…ジェンマで…。一度ジェンマを触ってみたいなぁと思ってたけどまさか積んで崩さないようにゲームすることになるとは思わなかったよ…(少し遠い目をしつつ)
これが儀式って言うなら、一応やる気出してがんばってみるけど…。
私よりもクレちゃんがこういうの意外と燃えるタイプだから、楽しんでくれそうかな。
【ダイスA(6面):2】【ダイスB(6面):2】