大トラ運び(あき缶 マスター) 【難易度:とても簡単】

プロローグ

●とあるバーにて
 深夜、連絡を受けた君がバーの扉を開けると、店主は君を見るなりまるで救世主の到来とばかりに顔を輝かせた。
「ああ、待ってたよ!」
 がらんとしたバーの中、カウンターに突っ伏しているのは見まごうことなき君のパートナーだ。
「困ってたんだよー。店を閉めたいのにちっとも帰ってくれなくって」
 とペラペラ喋る店主に君は謝りつつ、酔いつぶれたパートナーに近寄る。
 ちいとも動かぬパートナーに途方に暮れた店主が、彼の手の紋章からウィンクルムだと判断し、藁をも掴む思いでA.R.O.A.へ問い合わせをしたのだ。
 A.R.O.A.から深夜の連絡が来た時は、何事かと流石の君も驚いたが、何の事はない。大トラを運んでくれという自分にしか出来ない依頼である。無論、無報酬だが。
 ため息をつきながら、君はパートナーを宥めすかして立ち上がらせる。
 そして彼を連れて帰ろうとした君の背中へと店主が気まずそうに声をかけた。
「お兄さん。すまないけど、その人のお勘定払ってくれないかい。そのぉ……四百ジェールになるんだけど」
 天を仰いで君は大きな大きなため息を吐き、財布を取り出した。
 それにしても一人で四百ジェールとは……彼も随分呑んだものだ。

 ――なにか、あったのだろうか?

解説

●大切な注意事項!!
 未成年の飲酒喫煙は厳禁。
 参加するウィンクルムはどちらかが必ず「二十歳以上」かつ、
 必ず「二十歳以上」の人が泥酔状態になってください!
 もし、未成年の人が泥酔状態になるプランを出された方はウィンクルムセットで『白紙扱い』とします。

●内容
 泥酔状態のパートナーを家に連れ帰る。
 描写は道中~介抱まで。
 公序良俗に違反する内容は描写しません、採用しません。
 酔ってるからって襲っちゃダメ、絶対!

●費用
 呑み代として400jr消費します。

ゲームマスターより

お世話になっております。お酒大好き、あき缶です。
べろべろ状態の人って、いつもとは違う面が見れてある意味面白いですよね。

何度も申しますが、未成年の泥酔禁止!
あと、酔った勢いでの御無体も禁止!
ウィンクルムは酔っても紳士ですぞ!

リザルトノベル

◆アクション・プラン

(桐華)

  わぁお。桐華さんがぐでんぐでんだー
もー。成人男子を運ぶのがどんなに大変か知らないわけじゃないだろうに
ほらほら桐華さん、帰るよー

幾らなんでも飲みすぎだよー
はいはい、僕が悪いんですねー
そうだねー、僕も判ってやってるからねー
もーごめんってば。これでも反省はしてるんだからー

よっこら寝かす。重たかったー。はいお水
そう言えば、桐華が酔い潰れてるのなんて初めて見た
君は僕を秘密主義って言うけど、僕だって君の事、何にも知らないんだよ
好きな物も、趣味とか、家族…は、居ないんだっけ
君が、僕をどう思ってるかも
でも、酔いに任せて言うなんて、なし
言う気があるなら、素面の時に教えてよ

お休み、桐華
いつもごめんね。ありがとう



ハティ(ブリンド)
  普段酒の匂いもさせないリンが泥酔とは
俺の前では酒を飲まないように
何か思うところがあるのかもしれない
…のん気な死因だな
認めないだろう事は想定して声掛け
どうした、まるで酔っ払いだが
酒に逃げるって柄でもないだろう
ここも(家の)外だぞ、リン。迎えに来た
女だったとして、それでは送って帰るのは無理そうだがな
三秒以内に起きなければ酔っ払いと見なす
いちにい、よし帰るぞ
目が覚めたか?
詫びと支払いを済ませ、肩を貸しながらの帰路
公園で小休憩
まっすぐ帰る気分じゃなかったみたいだし、いいだろ
何で家では飲まないんだ?
…俺に構うなよ、アンタの家なんだ
俺も構わずジュース買っとくから、ほら
ペットボトルで乾杯
今日のところは水だが



フラル(サウセ)
  バーにいた相棒を回収。
肩を貸し、一緒にアパートに戻る。
さすがに酔っぱらいを担いで行くのは重いな…。

リビングのソファにサウセをおろして横にする。
体を冷やさないよう自室から毛布を持ってきて、かける。
その後台所から水を持ってきて飲ませる。

コップを片付けようと台所に行こうとしたら、サウセに服の裾をつかまれた。

いつもと違う口調と一人称。
もしかして、まだかなり酔っぱらっているのか?

隣に座り彼の頭を撫で、「どこにも行かない」と伝えて落ち着かせる。

少し落ち着いたようで安堵したら、ふと、仮面が気になった。
いつもつけている仮面。
彼の素顔は気になるが、こんなときに見るのは失礼にあたる。
相棒を安心させることに努めた。



明智珠樹(千亞)
  千亞さん、申し訳ございません。
私ちょっと飲み過ぎてしまいました★
(ご機嫌&足元フラフラ)

千亞さん、たまちゃん休憩したいですー。
(公園ベンチへ)
身体が火照ってます、私。
(服はだけさせ、妖艶に笑み)
お水美味しいです
(零し、拭かれ)
…千亞さんはお優しいですね。そしてテクニシャン…!

何もないですよ?
千亞さんの愛くるしさを熱弁してたらお酒すすみ過ぎただけです★

冗談じゃないですよ。
こんなに千亞さんでいっぱいになると思いませんでした。
千亞さんてば罪作り!魔性の小兎ちゃん!
これ以上私を夢中にさせてどうする気ですか!
大好きですよ、愛しいですよ…!
(千亞に迫り。顔を近づけ……電池が切れたようにポテリと眠る)



暁 千尋(ジルヴェール・シフォン)
  アドリブ大歓迎

先生が酔い潰れるとは珍しいこともあるものですね
無茶言ってないで、しっかりして下さい

よりによって泣き上戸ですか…また面倒くさい…
そこまで言ってませんよ!
あーもう、泣かないでください
化粧が落ちて怖…いえ、何でもありません

(そういえばお店は何度か来ましたが、自室に入るのは初めてかも)
あ、思ったより普通だった
(整列した化粧品類を眺めて)…いや普通ならあり得ないものもありますけど
はぁ…クレンジングは一体どれですかね?

先生、ちょっと失礼しますよ
化粧落とさないと肌に悪いのでしょう?
じっとしててください

…ここにいますよ
僕はどこにも行きません

(なんだか子供みたいだ)

(頭を撫でて)
お休みなさい、先生


●夜風に吹かれて
「あの、ほんと、すみませんでした……」
 千亞は肩をすぼめ、神人の呑み代を払うべく財布を開ける。
 店主に四百ジェールを渡した千亞は、そそくさと財布を仕舞いこむと、今度は泥酔状態の神人へと歩み寄る。
「おい、珠樹……」
 バーカウンターに突っ伏していた明智珠樹は、愛しい兎の声を聞くなり、笑顔でバッと顔を上げた。
「千亞さん、申し訳ございません。私ちょっと飲み過ぎてしまいました★」
 満面の笑みで朗らかに言われ、千亞は思わず後ずさる。
「み、見れば分かる……」
 精霊がこくこくと頷くのを、蕩けそうな笑顔で眺め、珠樹は自分としては『すっくと』、だが実際はぐんにゃりと立ち上がった。
「迎えに来てくださったんですね~。では帰りましょう、帰りましょう。ご主人、お世話様でしたー」
 千鳥足で出口へ向かおうとするのがなんとも危なっかしく、千亞は慌てて珠樹に駆け寄り、肩を貸す。
「おい、大丈夫か? ……あの、すみませんでした。じゃあ!」
 口早に店主に挨拶をし、千亞は珠樹を連れて外へと出る。
 酔っ払って火照った体の珠樹と密着していると、まだ肌寒い夜の空気も心地よい。
「流石に重……」
 身長差ざっと二十センチ、体重も珠樹の方が重いため、千亞にとっては重労働だ。
 そろそろ疲れてきた頃、ずっと何やら上機嫌に鼻歌を歌っていた珠樹が、意味のある言葉を口にした。
「千亞さん、たまちゃん休憩したいですー」
「え? ……休憩? あぁ賛成」
 突然の一人称『たまちゃん』に、千亞は一瞬驚くも、発言内容に異議はないので、彼を手近な公園へと引きずっていく。
「もー、あと少しだから、ちゃんと歩けよっ。よいせっ」
 一番近いベンチに珠樹を座らせる。放り投げるようになってしまったのは、小柄で非力な千亞が珠樹を動かすには、反動を利用するしか無かったからだ。
 ぐたっとベンチの背もたれに持たれ、珠樹は妖艶にゆらぐ瞳を千亞に向ける。
「体が火照ってます、私」
 ぷつんとシャツのボタンを片手で外し、胸板を半分まろび出させると、珠樹はフフッと誘うように笑ってみせる。
 だが千亞には、ちっとも通用しなかったようだ。ムッと眉をひそめ、千亞はビッと人差し指を珠樹に突きつけた。
「おい何はだけてんだ、ここで全部脱ぐなよ!? 水買ってくるから、座ってろよ」
 どこにも行くなよっ! と言いながら、千亞は公園の出入り口の傍らに設置されている自販機へと走っていった。
 コインを入れて、一番安い水のボタンを押すと、すぐさまガコンと音を立ててペットボトルが落ちてくる。
「よっと……」
 身をかがめて結露するくらい冷えたボトルを取り出し、千亞はふいと上を向く。
 ルーメンの月が眩しい。
(朝まで帰ってこないのはよくあるけど、ここまで酔ってるのは初めて見たな……)
 なぜあんなにも酔ってしまったのだろう? という疑問が浮かび、千亞は思考に耽りかけたが。
「っと、こんなことしてる場合じゃなかった。あいつおとなしくしてるだろうな……?」
 まずは酔漢の介抱だ、と千亞は走ってベンチへと向かった。
「はい、水」
 と蓋を開けたボトルを差し出すと、珠樹は素直に受け取り、唇から溢れさせながらも半分ほどを一気に飲み干した。
「お水美味しいです」
 あふれた水がはだけた彼の胸を伝っていく。
「おい、溢れてるぞ」
 ドキリともせず、千亞はハンカチで珠樹の首から胸を拭った。
「……千亞さんはお優しいですね。そしてテクニシャン……!」
 と笑う珠樹に、千亞は呆れたように息を吐いて、一言だけ返した。
「この酔っ払い」
 そんな冷たい返答にも、珠樹はただただ楽しそうに笑うだけだ。
 普段以上に陽気な彼に、『普通ではない』と感じて、千亞は心配そうに兎耳を垂らす。
「……あのさ、珠樹。何かあったのか?」
 と隣りに座って、気遣わしげに顔を覗きこんでくる赤い瞳に、珠樹は微笑んで首を傾げた。
「何もないですよ?」
「でも……」
 なにか言いたげな千亞を遮って、珠樹は朗らかに続ける。
「千亞さんの愛くるしさを熱弁してたらお酒すすみ過ぎただけです★」
「愛くるし……冗談だろ?」
 珠樹の話した内容を咀嚼し、その内容に真っ赤になった千亞だが、
「冗談じゃないですよ」
 珠樹に真面目な顔で反論され、ングと黙る。
「こんなに千亞さんでいっぱいになると思いませんでした」
「なっ……そっ……」
 ますます赤くなり弱る千亞に、珠樹はニコッと笑って顔を近づけながら怒涛の勢いで言い募る。
「千亞さんてば罪作り! 魔性の小兎ちゃん! これ以上私を夢中にさせてどうする気ですか! 大好きですよ、愛しいですよ……!」
「え? ちょ、近い……な、何する気だ……!? わっ」
 鼻先がくっつきそうな距離に近づかれ、千亞は半ば覚悟すら決めてギュッと目をつぶる。
 が。
「んぐう」
「……え? 寝た!?」
 珠樹は寝落ちていた。
「おい、珠樹? 風邪引くぞ? おーい……」
 少しゆすぶってみたが、起きる気配がない。
 溜息は吐いたものの、千亞は不思議と嫌な気分ではなかった。
「……少し寝かせておく、か」
 珠樹の体をそっと動かし、千亞の腿に頭が来るようにしてやる。
 優しくサラリとした黒い髪を撫で、千亞は微笑んだ。
「こんな時に口説くな、馬鹿」
 さあっと風が吹き抜ける。だが、寒くはない。そんな春の夜。

●冷蔵庫に100%ジュースを
 珍獣を見るような目でハティは、バーカウンターのブリンドを見下ろしていた。
(普段酒の匂いもさせないリンが泥酔とは)
「お客さん、さっきからこんな調子でさぁ、困ったよー」
 と暢気に言う店主にハティは、
「面倒をかけた」
 と言いながら料金を支払う。
 そのやりとりがうるさかったのだろうか。ブリンドは鬱陶しそうに手をゆるゆると振った。
「何だァ……? 外でやってくんね」
 意識はあるようだ、とハティはブリンドに向き直る。
「どうした、まるで酔っ払いだが」
「眠くて死にそうだが酔ってねーよ」
「……のん気な死因だな。酒に逃げるって柄でもないだろう」
 真面目に言葉を返すと、ブリンドはヤケのように笑ってのけぞった。
「どっちかっつーと酒から逃げなかった結果じゃねえか? はははは」
 手で顔を覆って、もう片方の手で追い払うように手を振る。
「いーから、外でやってくれ」
 だが手の動きとは裏腹にハティはブリンドの傍らまで近寄っていく。
「ここも外だぞ、リン。迎えに来た」
 家の外という意味ではバーだって立派な外だ、とハティはあくまでも真面目に酔っ払いの相手をする。
「知り合いの女かと思った」
「女だったとして、それでは送って帰るのは無理そうだがな」
 何を言うのか、と首を傾げるハティの頭をガシと掴んで、ブリンドは、
「送って帰るって先生かよ? え?」
 と撫で回す。
「おカテー頭ほぐしてやんよー。えー? ハティよぉー」
 にやにやと悪い笑みを浮かべながらブリンドは神人に絡む。
「テメーはあれか? タマついてんのか? ちゃんと男なのか? ああ?」
 とハティの顔を覗きこもうとしたブリンドは――ガツンと顎に頭突きを受けて沈んだ。
「……三秒以内に起きなければ酔っ払いと見なす。いち、にぃ、よし帰るぞ」
「さん、はどうしたぁ! この石頭!」
 ジンジン痛む顎を宥めすかして、ブリンドは、早々に背を向けたハティにツッコミながら立ち上がった。
「目が覚めたか?」
 まっすぐに青い瞳を向けてくるハティに、ブリンドは眉を顰める。
「……おう。……すげー嫌な方法でな……」
「なら帰るぞ。店主、すまなかったな」
 ハティは、主人に頭を下げるとブリンドに肩を貸し、店を今度こそ後にした。
 道すがら、ハティは呟く。
「珍しいな、泥酔なんて」
 それにふてくされたようにブリンドはボソボソと返す。
「……たまたまだ。たまたま」
 たまたま睡眠不足で、夕飯を食べそこねて。
 空腹の胃に入ったアルコールは、ブリンドの『自分も知らねぇ自分』を表層に出してきそうで――帰れなくなった。
 ハティに見せたくない自分が深層から出てきそうだと、考えてしまうと足が動かなくなったのだ。
「おい、こっち家じゃねえぞ」
 公園へと入っていくハティにブリンドが言うと、
「まっすぐ帰る気分じゃなかったみたいだし、いいだろ」
 ハティはそれだけ答えて進み続けた。
 ブランコにブリンドを座らせ、水を買ってきたハティは向き合うようにブランコの柵めいた鉄棒に腰を預ける。
 ブリンドに水を投げ渡し、ハティは問う。
「なんで家では飲まないんだ?」
 ブリンドはハティの前では酒を飲まない。
(何か思うところがあるのかもしれない)
 と思いながらハティはブリンドを見据えた。
 その真っ直ぐな視線から逃れるようにブリンドはペットボトルの蓋を見下ろす。
「……俺は、お前の家にしてーんだよ」
 よくわからなかった。でも、言葉には出来ない部分が分かる気がした。
「…………俺に構うなよ、アンタの家なんだ」
 ハティはそう言って、自分の分のペットボトルの蓋をあける。
「俺も構わずジュース買っとくから」
 ハティの言葉を聞いたブリンドは立ち上がり、ぽよんと自分のボトルとハティのそれを乾杯のようにぶつける。
 そして一気に水を飲み干してから、ブリンドは言った。
「冷蔵庫のあれな、甘すぎんだよ。買うなら100%のやつにしとけ」
「……?」
 きょとんと見上げてくるハティに、ブリンドはぶっきらぼうに言い放った。
「俺も飲む」

●その砦を落とすは今ではない
 夜のアパートでもルーメンの光と町の灯りが薄っすら入ってくるから、完全な闇ではない。それに自宅であればなおのこと、何がどこにあるかは手探りでも分かる。
 暗いリビングのソファに狙い通り相棒のサウセを横たえ、フラルは思わず肩のコリを解すように回した。
「さすがに酔っぱらいを担いで行くのは重いな……」
 バーで潰れていたサウセを回収して、帰ってきたのだ。しかもサウセは前後不覚で、自分では歩いてもくれなかったために、フラルの身体的負担は大きかった。
 だが一息ついている暇はない。
 ようやく部屋の照明を点けたフラルは、そのまま自室へ向かうと、毛布をひとつ持ってきて、サウセにかけてやる。
 それからフラルは台所へと向かい、コップに水を満たしてソファへと戻った。
「サウセ……」
「……ん……?」
 仮面の下なのでサウセの瞼は開いているのかどうかよくわからないが、身じろいだので意識が戻ったらしい。
 サウセは、一瞬此処がどこかわからなかったらしいが、すぐ隣に神人がいることや見慣れた周囲の風景にすぐ状況を飲み込んだらしい。
「すみません……」
 サウセは蚊の鳴くような声で謝りながら身を起こす。
「ほら、飲めるか?」
 フラルがコップの水を勧めると、サウセはそっと受け取って半分ほどゆっくり飲んだ。
 ふぅと息を吐くあたり、酔っぱらいの精霊は少し落ち着いたらしい。
「もういいか?」
 とコップを片付けようと、立ち上がりかけたフラルの服の裾をサウセはとっさに掴む。
「行かないで。『ぼく』を置いていかないで……!」
 縋るように訴える口調は、いつもとは違う。
(もしかして、まだかなり酔っ払っているのか?)
 フラルは倒さない安全な場所にコップを一時退避させると、もう一度腰を下ろした。
 そしてサウセの頭をそっと撫でる。
「どこにも行かない」
 こくんと幼い仕草でサウセは頷いた。
 サウセがこんなに酔っ払ったのは、過去のことを思い出してしまったから。――長い長い孤独を酒で塗りつぶしたくて。
 フラルが自分の孤独を癒してくれる。
 だから、そばに居て欲しい。
『どこにも行かない』
 ずっと、ずっと……誰かにそう言って欲しかったのだ。
 欲しかった言葉を受け取り、サウセは長い安堵の息を吐くと、フラルの膝を枕に寝てしまった。
「……落ち着いたか……」
 ほっとしたフラルだが、ふと自分のすぐ側で寝入る彼の顔半分を隠す仮面が『いつでもはがせる』状態にあることに気づく。
 サウセの素顔が見たくないといえば、嘘になる。
「…………いや」
 フラルは首をひとつ横に振って、衝動をやり過ごした。
 こんな時に見るのは、卑怯だし、失礼だ。
 外から聞こえる環境音を聞きながら、フラルは幼子のような彼の眠りを護ることに努めた。

●花の眠りは平穏に
 ひっくひっくと泣く麗しい男性を見下ろし、暁 千尋は途方に暮れていた。
「先生が酔いつぶれるとはめずらしいこともあるものですね」
 急な呼び出しに何事かと思えば、ジルヴェール・シフォンが酔っ払っていた。
 ジルヴェールは、
「ワタシだって飲みたい時くらいあるわよぉ!」
 わぁんと泣き伏せたかと思えば、
「ひっくひっく、帰るのやだ~」
 いやいやと頭を振り、
「チヒロちゃんおんぶしてぇ!」
 と両手を突き出す。
「無茶言ってないで、しっかりして下さい」
 おんぶは無理だと伝えると、えーんと泣き出すシフォン。
 困り果てて、
「よりによって泣き上戸ですか……また面倒くさい……」
 と思わず千尋が零すと、ジルヴェールはそれを耳聡く聞きつけ、
「わ、悪かったわね! どうせワタシは面倒くさいわよ!」
 と両腕を振り回して叫んだ。
 そのまま、ジルヴェールは叫び続ける。
「どうせワタシは女にも男にもなれない中途半端な存在よ! 綺麗に見せかけてるけど、中身は結構ボロボロなおじさんよ! 筋肉痛とか三日後にきちゃうんだから! だからってそこまで言わなくても良いじゃない! うわーん!!」
 びええっと盛大に泣き始めたジルヴェールに、焦って千尋は言い返す。
「そこまで言ってませんよ!!」
 そもそもここはまだバーだ。店の中で叫ぶ内容ではない、と千尋はジルヴェールを無理やり引きずる。
「ほら、もう帰りますよ!!」
「うえーん、チヒロちゃんがめんどくさそうー! やっぱり面倒くさいんだわー!」
「外で泣かないでください! 化粧が落ちてこわ……いえ、何でもありません」
「うえーん、お家帰るー!」
「はいはい、帰りましょう帰りましょう」
 宥めすかして千尋はなんとかジルヴェールを彼の自宅へと送り届けた。
 ジルヴェールの家は、彼の店と同じ場所にある。店の部分には何度も入ったことがあるが、
(自室に入るのは初めてかも……)
 『特殊な男性』の部屋に入るとあって、千尋はある意味覚悟を決めたのだが。
「あ、思ったより普通だった」
 どんな部屋だと思っていたんだ、千尋。
 きちんと整頓されていて、清潔感のある部屋だ。
 部屋を見回した千尋が、整列した化粧品類という『普通の男性の部屋』には無い物品達に集中している間に、ジルヴェールはベッドに飛び込む。
「はぁ、先生ったら着替えもせずに……。……えぇと……あ、これですね」
 ようやく見つけた目当ての物の側面には、拭き取り用クレンジングであることが記載されている。
「こんなの使ったこと無いんですけどね……」
 と言いながら、千尋は、コットンをつまみ、瓶に書いてある通りの分量を染み込ませた。
「先生、ちょっと失礼しますよ」
 とベッド脇にしゃがみ込んだ千尋は、液を吸い込んで重たくなったコットンをジルヴェールの頬に押し当てた。
 うぅ、水~などと唸っていたジルヴェールだが、顔の上でそろそろと動いていく冷たい感触に、くすくす笑ってみじろいだ。
「うーん? なぁに?? ふふ、くすぐったいわ」
「じっとしててください。化粧落とさないと肌に悪いのでしょう?」
 と言いながら世話を焼く千尋に、ジルヴェールはなされるがままだ。
(この子、どこでクレンジングとか覚えたのかしら……?)
 と酔っ払い特有のフワフワした思考を巡らせながらも、ジルヴェールは心地よさそうに喉の奥を震わせた。
「チヒロちゃんの手、冷たくて気持ちいい」
「……はい。出来ました。あと水でしたっけ」
 と立ち上がろうとする千尋を、ジルヴェールはゴロリと寝返りを打って引き止める。
「チヒロちゃん行っちゃうの? 独りにしないで……」
 うるうると目を潤ませ、甘えるように縋るジルヴェールを見て、千尋は苦笑する。
(なんだか子供みたいだ)
「……ここにいますよ」
 しゃがみこんで、幼子に言い聞かせるように優しく千尋はジルヴェールに囁いた。
「僕はどこにも行きません」
「ふふ、約束よ」
 嬉しそうに花綻ぶように笑み、小指を差し出そうとして……ジルヴェールの意識はそこで途切れた。
「おやすみなさい、先生」
 眠気に負けてしまった彼の頭をそっと撫でて、千尋は微笑むのだった。
 
●卑怯な大人が遠い
 うーっと唸る白い頭を見下ろし、叶は肩をすくめる。
「わぁお。桐華さんがぐでんぐでんだー」
 この意識も危うい成人男子を運んで帰れ、というのが今日の叶のミッション。
「もー。君を運ぶのは大変なんだからねー。知らないわけじゃないでしょ」
 と言いながら、叶は桐華の肩を揺する。
「ほらほら桐華さん、帰るよー」
 それを桐華はむずがるように眉をひそめ、振り払う。
「うるさい。……そもそも、叶の所為だ……」
 もごもごと寝言のような不明瞭さで、桐華は神人を詰った。
「幾らなんでも飲みすぎだよー。はいはい、僕が悪いんですねー」
 と叶は桐華の文句を聞き流し、宥めながら、腕を肩に回して、
「よっこいしょっと」
 持ち上げる。
「じゃあ、マスター、ご迷惑おかけしましたー」
 と笑顔で店主に挨拶し、叶は桐華と店外へと出る。
「叶が、いつもいつも俺を振り回すから。子供ぶって、我侭で、パートナーを何だと思ってんだ……」
 桐華を背負うように肩を貸しているから、耳元にダイレクトに彼の愚痴が飛び込んでくる。
「そうだねー、僕も判ってやってるからねー。もーごめんってば。これでも反省はしてるんだからー」
 桐華に聞こえているのかどうなのか、よくわからないまま、叶もウダウダした愚痴にウダウダと応えながら、家路を急ぐ。
 冷たい夜風で火照った頬を冷まし、シーツの冷たさで体を冷やせば、ようやく桐華も意識がハッキリしてくる。
「はぁ、重たかったー。はいお水」
 と差し出されたマグカップに入れた冷水を、バツ悪そうに桐華は上体を起こすと、受け取る。
「桐華が酔い潰れてるのなんて初めて見た」
 叶の言葉は、どこか心配そうだった。
(飲みすぎた気がし始めた頃には手遅れだった。鬱憤晴らしなんて気もなかったはずなのに)
 と桐華は、今日の失態の原因を思い出し、ようやく冷めてきた酔いの最中に何を言っていたのか、薄ぼんやりした記憶を辿る。
(文句を言い過ぎた気もするけど……たまにはいいだろ)
 と自分で自分を納得させながら、桐華は水をちまちまと胃の腑へ送っていく。
 その様子をベッドの傍らに立って眺めながら、叶はつらつらとしゃべりだす。
「君は僕を秘密主義って言うけど、僕だって君の事、何にも知らないんだよ。好きな物も、趣味とか、家族……は、居ないんだっけ……」
 あと、と叶は視線と声のトーンを落とした。
「君が、僕をどう思ってるかも」
 ずるいよね、僕はちゃんと言ったのにね。と叶は桐華に聞こえないほどのかすかな声で呟いたのだが。
 幸か不幸か、夜の静寂がその呟きを桐華に届けてしまった。
(そういえば、叶からはちゃんと聞いた)
 ――ちゃんと好きだよ。
(……嘘だと、思ってた、けど……)
 本当だった、ならば。
 ならば、言わなくては。
「叶、俺は……っ!」
 勢い込んで言おうとした言葉は、叶の掌に塞がれて産まれ出ることが出来なかった。
「酔いに任せて言うなんて、なし。言う気があるなら、素面の時に教えてよ」
 悲しげに笑って、叶は首を横にゆっくり振る。
(ずるい)
 桐華は眉間にしわを寄せて、叶を睨む。
(言わせてないのは、お前だろう。聞く気があるなら、ちゃんと聞けよ)
 素面の時には、聞いてくれないくせに!!
 嗚呼、でも、もう酔いは醒めてしまったから、そんな文句ももう言えない。
「もう遅いし、寝ちゃいなよ。……おやすみ、桐華」
 叶は優しく桐華をベッドに寝かせ、布団をかけてやる。
 ぽんぽんと優しく布団を叩き、じゃあね、と叶は、桐華に有無をいわさずにベッドルームを後にした。
 バタンとドアが閉まる音がして、後は静寂。
「あぁ、くそ!」
 ヤケのように叫んで、桐華は寝返りを打った。
 ――叶が遠い。
 ドアの向こうで、叶は俯いて桐華の叫びを聞く。そして、そっと囁いた。
「いつもごめんね。……ありがとう」



依頼結果:大成功
MVP
名前:暁 千尋
呼び名:チヒロちゃん
  名前:ジルヴェール・シフォン
呼び名:先生

 

メモリアルピンナップ


( イラストレーター: 浅ノ丸  )


エピソード情報

マスター あき缶
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 男性のみ
エピソードジャンル コメディ
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 とても簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 5 / 2 ~ 5
報酬 なし
リリース日 03月24日
出発日 03月30日 00:00
予定納品日 04月09日

参加者

会議室

  • [5]明智珠樹

    2015/03/28-21:08 

    ご挨拶が遅れました、明智珠樹です。紛れもなく泥酔している方です、ふふ。
    保護者は白兎の千亞さんです。こんな夜ぐらい狼になっていいのよ…!嫌ですかそうですか。残念です。ふふ。

    さて。
    泥酔する桐華さん!ブリンドさん!サウセさん!ジル様!
    妄想がたぎりますね、トキメキが止まりませんね!気づけば皆精霊さんですね!

    どうぞ皆様良き夜をお過ごしください、ふふ。ふふふふふふふ……!

  • [4]暁 千尋

    2015/03/28-19:20 

    同じく素面の暁千尋です。宜しくお願いします。
    先生が泥酔するとは珍しいですが…面倒なことになりそうですね…はぁ。
    何はともあれ、皆様も道中お気をつけて。

  • [3]フラル

    2015/03/28-07:04 

    おはよう。
    今回は珍しく酔っぱらった相棒を解放する素面のフラルだ。
    よろしくな。
    しかし、酔っぱらいを持ち帰るのって大変だよな…。
    なんとかして家まで連れて帰らないと…。
    とりあえず、ふぁいとなー…。

  • [2]ハティ

    2015/03/27-23:58 

    素面の方のハティだ。よろしく。
    思わぬところで集合したな。遅くにお疲れ様だ。皆帰り道気をつけて。

  • [1]叶

    2015/03/27-23:32 

    やっほーやっほー。
    泥酔状態の桐華さんを引きずりに参上しました叶でーす。
    酒は飲んでも飲まれるなだねぇ。皆たいへんそー。
    お互いがんばろー…かな?なんにしなんにし、どうぞ良しなにねー。


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