


●der Tod
君は夢見が悪かった。
だから、他人事には思えなかったのかもしれない。
山林にオーガが出たという。
小さな山だが、近隣に村があるので危ないと、A.R.O.A.と関係当局は合議の上、村人達を避難させた。
だが土地勘のないウィンクルムに山狩りをさせるのは危険だ。
だから、飢えたオーガを無人の村に釣りだす作戦をA.R.O.A.は提案した。
「冬の山は貧しい。食うものなんて無い筈だ。だからすぐ近くの村に餌があれば、オーガはやってくるだろう」
神人が村でうろうろしていれば、釣餌としては十分だ。
それに山林なんて見通しの悪い場所で戦うより、村の広場で戦った方が地の利も良い。
「一日では終わらない仕事かもしれない。その間の身の回りの世話は……こちらにツテがあるので大丈夫だ」
職員は苦い笑顔を浮かべて、一冊の資料を差し出した。若いポブルスの写真が添付されている。
「君達の当面の村での世話は、このロラン・リウという男がしてくれる。彼はこの村に住んでいてね……『かつてウィンクルムだった』よしみで、無償で事件解決まで君達の面倒を見ると言ってくれた」
かつて、ウィンクルムだった。
つまり、今はウィンクルムではない。
なぜなら、契約した神人たるジキール・エバーゲルが――死んだから。
「あぁ、条件が一つだけあって。ロランは今、天涯孤独の女の子と住んでいるんだ。彼女が一緒に居ることに、同意して欲しいとのことだ。そもそもロランが住んでいる屋敷は、この少女の持ち物だからな。出て行けとはこちらも言えんよ」
少女の名前はユズリア・エバーゲル。つまりジキールの妹だ。
ジキールは村の豪農の息子だった。
ある日、一家はオーガに襲われ、兄妹だけが生き残った。その時ジキールは神人として覚醒し、ロランと契約した。
だがジキールは任務中に命を落とし、ユズリアは天涯孤独となってしまったのだ。
ロランは、ジキールの遺言を守り、ユズリアの身の回りの世話をしているという。
「君達が泊まるエバーゲル家の目の前は広場なんだ。オーガとの戦闘にはおあつらえ向きだと思うぞ」
さほど骨を折る相手ではないよ。と職員は努めて明るく言うのだった。
村は牧歌的な山の中の農村だ。広い石畳の広場を囲むように居並ぶ家々の中、ひときわ古いがしっかりとした大きな屋敷こそがエバーゲル家である。
「ようこそいらっしゃいました」
ポブルスの青年が慇懃に腰を折り、ウィンクルムを迎えてくれる。
彼の隣に立つ美少女も、深く頭を下げた。この二人がロランとユズリアだ。
一同は二階の広い部屋に通された。
広場を見下ろせるこの部屋の窓で、交代で監視をしていれば、いつかはオーガが来るだろう。
手っ取り早く広場を神人が徘徊し、オーガに見せ付けてやるのも、リスクはあるが有効そうだ。
そうやって戦略を考えている間も、君はどこか胸が痛かった。
昨日の夢見が悪かったからかもしれない。
――君が死ぬ夢を見たんだ。
――なぜだか、特に悲しくもなかった。


●成功条件:オーガを倒す
●敵
ヤックアドガ:1体
山林に潜むいのしし頭のオーガ。角による猪突猛進なる突進が武器。
一撃の攻撃力はかなり強いが、命中しづらく、知能は低い。
かなり飢えているため、気性は荒いが体力は低い。
●NPC:ロランとユズリア以外の村人は避難済み
ロラン・リウ:ポブルスの20歳
契約した神人ジキール・エバーゲルを守れなかった過去をもつ。
神人の遺言に従い、ユズリアの世話をしている。
ジキールと相思相愛であり、今もジキールを愛している。
元ロイヤルナイトだが、もうスキルは使えない。
ユズリア・エバーゲル:15歳の美少女
ジキールの妹であり、天涯孤独だが親の遺産により困窮はしていない。
大好きな兄とロランの仲を応援していたし、ロランの今の心も知っている。
●エバーゲルの屋敷
広場に面して建てられた、二階建ての大きな屋敷。
二階には広場を一望できる窓がある。
●広場
そのうち食べ物を求めてヤックアドガが訪れる場所。
石畳が敷かれたかなり広い円形広場。戦場として不足なし。
●その他
ウィンクルムは全員、昨日「パートナーが死ぬ夢」を見たという前提があります。
お世話になっております。あき缶でございます。
戦闘に特化することも出来ますが、ユズリア・ロラン・ジキールの関係を踏まえて、ウィンクルムが感傷に浸る心情系にすることも出来ます。
どちらに重きを置くかは、全員のプランの傾向で決定します。
仮に全員が、NPCとの対話や心情に特化したプランだと……オーガさん行殺で事件解決となります。
行殺の場合は、心情や対話が秀逸であった場合「大成功」判定とします。(ハピエピのような判定基準になります)


◆アクション・プラン
叶(桐華)
|
囮は昼間のみ、なるべく団体行動で行うよ 早めに済ませたいし、早く釣りたいな 何日も続くのは困るな…今は眠りたくない …あの人じゃない夢は、初めてだ ロランさん達と話せる機会があったら今回のお礼と… 個人的なこと、一つだけ聞きたい …亡くしたパートナーを、再び得ることは 裏切りになると、思いますか 答えがどちらでも、変わらないんだけどね 咎められたくもあるし、許されたくもある…気がする 聞いて、みたかっただけ 夜は、桐華の傍に そういえば桐華に「死にたがり」って言われたことがあるけど…後を追う気はないんだよ? …いまは なくした事を悔いるよりは、ちゃんと生きたいと思うもの …なんて、結局は僕の我侭に桐華を巻き込んだだけだよね |
|
死んだ男が隣でピンピンしている これが夢らしい夢だとすれば俺がこれまで見てきたものはただの記憶なんだろう 生きている相手が死ぬ夢を見るのは久しぶりだ 見張りの間は忘れられた 近くに居れば無意識に目で追ってしまうのに気付いているのかいないのか 時間外になっても距離が開く事はない リン、休まないのか 気のない返事にだったらと続ける 付き合ってくれないか 皆に声を掛け、日中に囮を決行 リンには同行、物陰で待機してもらう 誰の事を言っているか聞こえてはいたが 返せたのは一言だけだ アンタが死ぬ夢を見た 告げれば振ってくる拳は避けず受け止める どうすれば何でもなかったように出来るのか考えていたが、そうか …見てすぐに言えばよかったのか |
|
■ 昼間のみ神人(極力数人で行動)が交代で広場で囮 戦闘直前、無理なら開始後隙を見てハイトランスジェミニ ■ 他の神人も囮なのはあんまりよくないけど 精霊が…イルドが囮じゃなくてよかった あんな夢見ちゃったから もしイルドが死んだら… おっさんはもう生きる価値なんてないわよね 殺されたのなら、相手を殺して、それで「終わり」? あ、あるかしら?神人のしての価値は 新しい精霊を見付けて、ウィンクルムになって、依頼をこなして だんだんイルドの事を忘れていって、新しい精霊と笑い合う? でもその笑顔はきっと空っぽ もしおっさんが死んでも、イルドは死んじゃ駄目よ おっさんの分まで生き続けてね 守るから、イルド、死なないでね 死なないでね |
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自分の一部がもぎ取られたかと思った 目覚めてすぐにランスの部屋の戸をノックした そんな朝 ◆戦闘 交代で囮 ハイトランス オーガ・ナノーカ送信画像で接近を知ったら皆に伝達 魔法の後、槍で貫く もやもやを忘れたくて渾身の力で! ◆ロラン達と 彼等と話しガイドのPL情報をPC情報に転換 それと今朝の夢をあわせ、我が事のように心が痛む ウインクルムでなくなった事をどう思ってるかを聞くのは怖い 失った力は愛する人を守れなかった罰だなどと、思っていやしないかと心配だ 無償の強力に心から感謝 けれど俺は同情はしない 彼女もきっと貴方達が助かって良かったと思ってるから 貴方達の幸せを願ってるから… 墓参りに行っても良いでしょうか そこで俺達は… |
|
見張りは交代制で行う 飢えてるオーガをおびき寄せるには神人が囮になるのが一番手っ取り早いと思うんで、昼間は広場をうろつく 囮をする時は他の神人とまとまって行動 「なるべく他の神人達と行動するつもりだし、勝手にどっか行ったりはしないけど…?なんかお前おかしくないか?」 …なんか誤魔化された気がする イチカのやつやっぱり変だ あいつが死ぬ夢を見たけれど…なんだか現実味がなくて、それほど悲しい夢だと思わなかった そう思ってしまったことがなんだか引っかかる あの夢が本当になってしまったら…俺はどう思うんだろう…? ああくそ、もやもやする…!! とりあえず、今はこれから現れるオーガを倒すことだけに集中しよう |
●白昼の広場
うろうろと広い円形広場を神人たちが歩く。
森に潜むオーガを少しでも早く釣り出すために、釣り餌は能動的に動くことを決めた。
「なるべく他の神人達と行動するつもりだし、勝手にどっか行ったりはしないけど……? なんかお前おかしくないか?」
怪訝な顔で首を傾げる天原 秋乃に、イチカ・ククルは困ったように微笑んだ。
「いやあ、ユズリアちゃんが美少女だから、張り切ってるんじゃないかなーって思ってさ。あんまり突っ走るとだめだよー?」
ヘラヘラッと笑みの種類を切り替える。
「そんなんじゃないって……」
「秋乃、いくわよー」
「とにかく大丈夫だからな!」
スウィンの声掛けに、秋乃は返事をして、他の神人たちに合流すべく走り去っていった。
「いってらっしゃい」
と笑顔のまま手を振ったイチカだが、バタンと屋敷のドアがしまるなり、ことりと笑みを落とした。
「誤魔化せた、かな。秋乃は鈍感だから、大丈夫かな」
――秋乃は、勝手に遠くに行かないでね?
「死ぬときは、僕の側で、ね……? あの人の最期には、間に合わなかったけれど。秋乃のことは、最期まで僕に見せて……」
暗く呟くイチカは、今朝の夢を思い出す。
己の腕の中で秋乃が果てる――それはなんとも甘く蕩ける禁断の果実。
そんなことなど露知らず、
「イチカのやつ、やっぱり変だ」
広場で眩しい陽光を浴びながら、秋乃はまた首をひねっていた。
広場を一望できる、エバーゲル家の二階にあるベランダに通じる窓から、桐華はパートナーの頭を見下ろしていた。
「……ちっ」
イライラする胸をギュウと握りしめ、桐華は仕事である『監視』に集中しようとしていた。
桐華のイライラは朝からずっとだ。
原因は簡単、夢見の所為――叶が死ぬ夢。いなくなる夢。消える夢。
「なんだって囮なんか……」
放っておいたって、飢えたオーガは食料を求めて村へやってくるのに。わざわざ危ない橋を渡る必要なんて、ない。
しかも叶は、直前までトランスはしないと言い出した。
(それは、わかるけど)
桐華は後ろに控えている元ウィンクルムのポブルスをチラと見る。
彼に今、トランスの光景は苦痛だろう。
――気持ちは、分かる。つもりだ。
ある意味、ロランは叶と似ている。叶と違うところは、今もウィンクルムかどうかだ。
(……妬いてる場合じゃない。……分かってる)
ガキのように乱れる心を、桐華の理性があざ笑った。
「早めに済ませたいな」
一方、広場を歩く叶は焦燥すら交じる視線を周囲にむけていた。
「何日も続いてほしくない」
眠りたくないから。
(あの人じゃない夢は、初めてだ)
同じことの繰り返しではある。登場人物が桐華にすげ代わっただけだ。
「他の子も囮っていうのも、あんまりよくはないけど……」
スウィンはヒリヒリする広場の空気を感じながらも、自分も同じような気持ちなのでそれに違和感はなかった。
「イルドが、囮じゃなくてよかった」
今朝の夢は、あの大事なディアボロが死ぬ夢だった……ぞっとしない。
「もし……」
彼が死んだら。と思うと、スウィンは空虚な気持ちで体がいっぱいになる思いがする。
「そしたら、おっさんに生きる価値はないわよね」
うつろな目で、スウィンは倒れこむようにベンチに座る。
ぼうっと天を見上げる。皮肉なほどに真っ青で、日光が温かい。
仇は討つ。それから……。それから……?
「ふふふっ」
ふと思いついた『価値』にスウィンは暗く笑う。
スウィンには神人としての価値はある。きっと、A.R.O.A.から新しく適合する精霊を紹介され、また契約して、オーガを倒す使命に傾倒していくのだろう。
そのために、新しいイルドではない精霊と親しくなって、笑い合って……。
「虚しいわね」
心から、笑えるだろうか。イルドが死んだ後。
太陽がまぶしすぎて、スウィンは固く手を組むとうなだれる。祈るように組んだ手の上に額をのせる。絞りだすように、血を吐くように、スウィンは吐息だけで呟く。
「……守るから、イルド、死なないでね」
太陽の光がスウィンを焼いて色濃い影を落とした。
彼を窓から眺めるイルドは今日の夢を思い返していた。
(あいつが死んだなら、殺した奴を殺す。それで俺の役目は終わりだな。……あぁでも、俺が死んでもスウィンは生きればいい。相棒とか恋人とか作って……)
そこまで考えて、ギリと歯を噛む。
(自分以外と笑い合ってんのは……気に入らねーな)
スウィンの対角線上のベンチの影に腰をおろすブリンドを、すぐ側でハティはじぃっと見下ろしていた。
(死んだ男がピンピンしている……)
「なぁにじろじろ見てんだ。物陰に隠れてる意味ねぇだろ」
不機嫌を露わにし、ブリンドはハティに言う。
「そうだな」
こくんと頷き、ハティはアッサリとその場を離れた。
「……嫌に素直だな。いや、普段から結構素直な部類か」
ブリンドは顔を手で覆った。とにかく太陽が熱いくらいに眩しい。
人が死ぬのは……正直、言うほど珍しいことでもない。ブリンドも、ハティが思っているより余程、世間一般の常識からは逸脱した人生を送っている。
(……見てやがるな)
ブリンドはひしひしと視線を感じる。あの青の視線を。ハティがブリンドから視線を逸らさない。
「生きている相手が死ぬ夢は、久しぶりだ」
ハティはブリンドを遠くから眺めながら、息を吐く。
いつもは死んだものが死んでいる記憶の再生ばかり。非現実的なものが夢だとしたら、今朝の夢こそ『夢らしい夢』だった。
「二回目か。夢で殺すの」
ハティからあえて視線を外し――そうでないとガッチリ目が合ってしまう――ブリンドはベンチの影で呟く。
「何を言っても野暮にしかならねえ気がする」
ハティには、『片腕になりたかった人』がいることを、思い出の宝石が生る木で聞いた。その人は、今はもう存在しない。
「……伝えちゃいねぇんだろうなぁ……」
言えばよかったんだ。死んだら、聞くことも出来やしないのに。
ブリンドはガシと頭をかき混ぜ。俯く。日光がじりりと項を焼いて、暑い。冬のくせに。
●悔恨の屋敷
広場に放った監視用アヒルの映像に異常は見受けられない。小さく息を吐いて、アキ・セイジは画面から視線を外した。
振り向けば、監視役をイルドから交代したヴェルトール・ランスが窓に貼り付いている。
これが現実だ。今朝の喪失感を埋めるように自分に言い聞かせる。夢は嘘だ。ランスは生きている。夢ですら自分の一部がもぎ取られたような気分だった。現実だったら――想像もしたくない。
「無償のご協力に心から感謝します」
セイジはロランに頭を下げた。
「いいえ。今やできることはこれくらい、ですから」
ロランが神人を亡くし、神人の遺言を守って彼の妹の面倒を見ているということは、聞いている。
パートナーを失うことの恐ろしさは、夢で味わった。だからセイジは胸の痛みに共感する。
「ロイヤルナイトだったくせに、自分の神人ひとり、守れなかったんです。ウィンクルム失格ですよ」
でも、オーガとは戦いたい。故に、今回の協力を申し出たのだ、とロランは言う。
「いや、僕が守れなかったのは、ひとりじゃないですね。ユズリアの兄を奪ったのですから。もうロイヤルナイトの力はありませんが、ユズリアをこれ以上傷つけたくないから、僕はここにいる。出来ることがあるなら、やり尽くしたいのです」
セイジは言葉を失う。何を言えばいいのだろう。
神人はきっと精霊だけでも、妹だけでも生き残ったことを喜んでいるだとか、それゆえに同情しないとか、そんな言葉は慰めどころか、彼らに対する嘲弄になるだろう。
「墓参りに行っても良いでしょうか」
セイジはふいに言ってみる。
だが、丁寧に拒絶された。
「申し訳ない。あの場は、僕とユズリアだけの場所なんです。他の誰にも踏み入れてほしくない。想いが分かる者同士の大事な場所なのです」
微笑みながらもポブルスの瞳は鋭かった。急に心を閉ざされた。そんな気がした。
そうだろう。同じウィンクルムとはいえ、初対面に近い相手に『何が分かる』と思われてもおかしくはない。
「それでは夕飯の準備をしますので、僕はこれで。何かご入用なものがあればいつでもお申し付けください」
ロランは慇懃に礼をして、二階から辞す。
扉が閉まった音がして、窓側からセイジの耳にランスの声が飛び込む。
「先に死ぬなよ」
とっさに振り返って反駁する。
「確率的には魔法使いの方が後だ」
神人を護るのが精霊の使命なのだから、その言葉に何の根拠も理論性もないけれど。
「ダメ」
「しかし」
「でもダメ」
諦めてセイジは静かに返事をする。
「……いかないさ」
そっと歩み寄るセイジの頭をランスが優しく撫でる。
「死ぬなよ」
「おかえりなさいませ、お疲れ様でした」
初日は釣果なし。日も暮れて危なくなってきた、と神人たちが引き上げてきたのに行き合い、ユズリアは丁寧に頭を下げた。
「皆様のお部屋は監視のお役目を考えまして二階に作らせましたので、そちらで夕食が出来上がるまでおくつろぎを」
という屋敷の女主人たる少女の言葉に甘え、一同が二階へ向かうと、階段ですれ違うようにロランが降りてくる。
それを見て、叶がロランを追って仲間から離れて階下へ降りる。
「ロランさん」
「はい?」
にこやかに振り向いたポブルスに、叶は頭を下げる。
「本当に今回のこと、ありがとう」
「お気になさらず。できることをしたいだけです」
「一つだけ、個人的なこと……聞いても?」
と言う叶の目が昏くて、ロランは首を傾げながらも、キッチンの中に案内する。ポブルスらしい洞察力の高さで、今から叶がしようとする質問が込み入った内容であると悟ったのだろう。
「……亡くしたパートナーを、再び得ることは裏切りになると、思いますか」
ロランは瞬き一つして、
「申し訳ありません。僕には、わかりません」
と答えるので、叶は苦笑する。
(返事なんてどうでも、変わらないんだけどね。聞いて、みたかっただけ)
と端から諦めていた質問だった、として、戻ろうとした瞬間、ロランの唇が動く。
「でも。ジーキルなら、今度こそ守れよって笑って応援してくれる、だろうな、と」
泣きそうな顔で、ロランは笑う。彼の目は叶を見てはおらず、遠くにある日々を見つめていた。
「……ありがと。…………夕飯、楽しみにしているね」
叶は彼の悲しみを受け止め、目を閉じると、そっと礼を述べて、キッチンを去った。
●各々の夜
ばふんとベッドに横たわり、秋乃は板張りの天井を見つめる。
イチカが死んだ夢を反芻する。
「……それほど、悲しくなかったんだよな。現実味、なくって」
でも、悲しくないわけが、無いと思うのだ。
「あの夢が本当になってしまったら……俺はどう思うんだろう……?」
もやもやする、と秋乃は寝返りを打って、顔をシーツに埋めた。
すると夜の監視を交代してきたイチカが、秋乃の部屋に戻ってくる。
「ただいま」
がばりと秋乃が顔を上げる。
「なぁ、イチカ。なんかごまかしてないか?」
唐突に尋ねられて、イチカは一瞬虚を突かれたように黙るが、すぐにヘラッと笑った。
「え? ああ、昼の? ごめんね、僕としたことが辛気臭くなっちゃったね。気にしないで?」
「~~っ」
そう言われると、次に続けるセリフが思いつかない。秋乃はまたバフンとシーツに埋まった。
「お疲れ様」
イチカと交代して監視についた桐華のところに、叶がやってくる。
「寝ないのか」
「寝たくないんだよね」
それ以上は聞かず、桐華は視線を窓に戻す。
今日は彼から目を離したくないから、むしろ好都合だ。
「そういえば桐華に『死にたがり』って言われたことがあるけど……後を追う気はないんだよ? ……いまは」
問わず語りのように、叶が突然話しだす。
「なくした事を悔いるよりは、ちゃんと生きたいと思うもの」
暗い広場を、煌々と街灯が照らすから、一層ルーメンの月光が、頼りない。
「……俺は叶より年下で、叶より小さいけど……叶ほど、嘘もつかないつもり」
桐華は答えにならないような返事をする。
「守らせろとも、頼れとも、忘れろとも、言わないから……少しは、信じろ」
「……ん」
と返事をしながらも、叶は自嘲の笑みを浮かべ、思う。
(結局は僕の我侭に桐華を巻き込んだだけだよね。ごめんね)
交代だ、とランスがやってくる。
桐華は叶を連れて、部屋を出る。
「寝ないなら、朝まで付き合うから」
「うん、ありがと」
桐華の申し出を、叶はありがたく受け入れた。
●早朝の解決
まだ日も上がりきらぬ、朱色の世界で、屋敷は急に慌ただしくなった。
ヤックアドガが寝入る人々を襲おうとやってきたのだ。
監視役だったブリンドが、休んでいるであろう仲間に知らせるように高らかに銃声を鳴らす。
呼応するように屋敷から飛び出してきたウィンクルム達。
「ようやく出てきやがったな!」
「いくわよ、イルド! 燃え上がれ炎!!」
ハイトランスジェミニで、双方の力を分けあい、スウィンとイルドがオーガに躍りかかる。
(イルド、絶対に守るから!)
スウィンの心を知らないイルドは、果敢にオーガに迫る。
「死ぬとか死なないとか……その前に殺させねえ!!」
オーガの背面から桐華がいつも以上に苛烈に双剣をふるう。七色の光が飛沫のように散らばる。
「あぁもう、もやもやする! とりあえず、今はオーガを倒すことだけに集中ッ!」
秋乃は苛立ちを矢に込めて、オーガに突き立てる。
ヤックアドガの向こう見ずな突進など、テンペストダンサーたるイチカには児戯と同じ。難なく避ける。
「おら、こっちだ!」
ハティが振るジェンマの光を受け、ブリンドの古銃がオーガを追い詰める。
「前衛、ありがとな! いくぜ、とっておきだ。喰らえ!!」
ベランダに出てきたランスが、霊錫から火球を放った。オーガの頭上で巨大に成長した炎が爆ぜる。
燃え上がるヤックアドガめがけて、セイジが槍を持って飛び降り、串刺しに処す。
あっという間にオーガ討伐は成った。
「……で、何があった? こっちばっか見やがって」
銃を収め、ブリンドはハティにズカズカと寄ると開口一番問う。
黙るハティにブリンドは続けた。
「そうして死ぬまで黙ってるつもりかよ。みすみす死ぬつもりはねえが、言いたい事あんなら生きてる内に言えよ」
――それは……あの人に、だろうか。だがもう、言えない。だから、リンには言えと。
そこまで飲み込み、ようやく無表情にハティは一言で返す。
「アンタが死ぬ夢を見た」
「……はぁ~~」
溜息を吐いて、ブリンドは天を仰ぐ。
そして拳を固める。
「勝手に殺すんじゃねー!」
ボガッと大きな鈍い音と共にハティが吹っ飛んだ。
(どうすれば何でもなかったように出来るのか考えていたが、そうか。……見てすぐに言えばよかったのか)
頬は腫れたが、ハティの気分は晴れやかだった。
「お疲れ様でした。そしてありがとうございました」
と労うロランに、イチカは笑顔で尋ねる。
「ところでさ、ロラン君達は僕達になにかした?」
「え?」
キョトンとするロランに、イチカは言うのだ。
「だって変じゃないか。こんなに都合のいい夢をみられるなんて」
「いいえ、何もしていませんよ」
ロランは笑顔で返事をした。
「引きあわせたのかも、しれませんけれどね」
朝日が昇る。
また今日も、太陽は明るく世界を照らすだろう。
誰が欠けたとしても、変わらぬ光量で。
| 名前:叶 呼び名:叶 |
名前:桐華 呼び名:桐華、桐華さん |



エピソード情報 |
|
|---|---|
| マスター | あき缶 |
| エピソードの種類 | アドベンチャーエピソード |
| 男性用or女性用 | 男性のみ |
| エピソードジャンル | 恐怖 |
| エピソードタイプ | ショート |
| エピソードモード | ノーマル |
| シンパシー | 使用不可 |
| 難易度 | 普通 |
| 参加費 | 1,000ハートコイン |
| 参加人数 | 5 / 2 ~ 5 |
| 報酬 | 通常 |
| リリース日 | 02月20日 |
| 出発日 | 02月27日 00:00 |
| 予定納品日 | 03月09日 |

2015/02/26-23:20
プランは提出できたよ。うまく行ってると良いな。
さて、一息つこう(ザクロの一口ゼリーをつまむ
サイコロA+2:ゼリーの数
【ダイスA(6面):5】
2015/02/26-00:35
顔出せてなくてごめんね。囮作戦に反対はないし、おっさんも囮やれるわ。
まだプラン白紙だけど、対話より心情に特化する予定。
2015/02/26-00:28
ブリンド:
となると心情寄りっつーのと、囮は決行ってのは決まりと考えて書き進めて良さそーか。
あれこれしていいんじゃね。俺らもちょっと文字数と戦ってくるわ。
囮は日中のみ、まとまってっつーのも了解。
2015/02/25-23:31
囮に対して反対は無いよ。交代すれば屋敷の方のケアもできるだろうし良いと思う。
囮以外の戦闘については、多少触れないと事件解決までの道筋が分からないから分かるように書く予定。
2015/02/25-23:12
ぼちぼちプランも詰め詰めしてこーって感じだし、囮すること自体は反対は無いって捉えていいかな?
一応、あんまり文字数圧迫したくないし、お屋敷の人とお話する機会も欲しーかなと思って、
方針として「囮は昼間のみ、なるべく団体行動で行う」って、
一文だけでもいれれないかなーと思ってるところー
ざっくり方針だし、一人でも書いてれば大丈夫かなって思うから、
字数足りなかったら削って貰えればいいよ、僕んとこに入れとく
そんで、戦闘行動よりはお話とか思う所あれこれの方に偏ったプランにできないかなーって考えてるけど、如何だろー
2015/02/25-03:51
叶さんも一緒してもらえるのは助かる。その時はよろしくお願いしたい。天原さんも、構わなければ一緒に。
広場を見渡せる場所があると言っても二階なので、外に出る時はブリンドに少し離れて待機してもらおうかと思ってる。
対話等の事も考えるなら見張りは交代で行うという前提は崩さず、時間外を自由に使ってもらい、囮を考えている俺も時間外に皆に声を掛けてから外に出るという形を取ろうかと考えたがどうだろう。
2015/02/25-02:13
確かにざっくりとした作戦はあったほうがいい気がしますね
ガイドのほうで提示されているように「神人が広場をうろついて囮になる」ってのが一番手っ取り早い気がするんで、俺もそうしようと思ってる
…ハティや叶さんと同じってことかな
2015/02/24-10:10
んーと、大体行殺モードとはいえ、ざっくりと方針ぐらいはあった方がやりやすいかな?
基本は交代で監視しーの、オーガ出てきたら倒しーのだと思うけど、
ハティ君とこは広場うろうろする感じを想定してたのかな。
僕もその方が早いかなーと思ってるから、ご一緒しても良いかな。
一緒にーって言っても、思う所それぞれだろうから、並んでお喋りって感じにはならないかもだけど
あ、どうせ待ってれば来るんだから囮は反対ーとかあったら言ってね。
その時はお外には出ないで、お屋敷の中でお話窺ったりに終始するだろうし。
2015/02/23-21:53
挨拶が遅れてしまってすまない。(……最近ずっとこれ言ってる気がしてきたな…)
ええと、天原秋乃とパートナーのイチカだ
俺も心情寄りのプランで考えてたぜ。戦闘特化のプランにはならないと思う
あとは文字数みて、余裕ありそうだったら…って感じか
2015/02/23-12:48
よいしょとお邪魔します叶と愉快な桐華さんだよー。
なんとなーく心情系な方向になりそうかなーって言う印象だけど、
多分ハティ君とおんなじ感じで、囮とかちょっと心情に関わる戦闘プラン?は入るのかなーって。
戦闘って言うか作戦部分って言うか…戦闘に関わる部分っていうか?
うんまぁ、文字数とかと相談しながら、戦闘方面はしゃらっと削る可能性は高いけどね!
2015/02/23-01:40
ハティとプレストガンナーのブリンドだ。
前衛職が充実。今回は後方から援護させてもらうな。皆よろしく頼む。
俺たちは…とりあえず手っ取り早く広場への誘い出しを考えてた。なので心情に寄りつつ、戦闘にも触れる形にはなるだろうか。
どこまで詰められるかはまだわからないが。
2015/02/23-00:27
スウィンとイルドよ、よろしくね。心情系にしたいと思ってるわ。
全員心情特化で敵行殺の場合、プランに戦闘の事は入れなくて大丈夫、なのよね?
戦闘希望の人がいた場合はプランに戦闘の事も入れるつもり。
2015/02/23-00:16
アキ・セイジだ。相棒はウイズのランス。よろしくな。
ちなみに、バトルと心情のどちらでいくかはまだ未定だ。

