死闘の3時間を切り抜けよ(らんちゃむ マスター) 【難易度:普通】

プロローグ


「すみませんが一日だけお暇を頂きたいんです」

 丁寧に頭を下げる女性職員の一言から全ては始まった。
突如襲う張り詰めた空気、女性職員の言葉に耳を疑う他の職員達は動揺し言葉が出ずにいた。
そんな中、休みを貰いたいと言った女性職員に、男性職員は声をかける。

「…な、なんで急…に」
「それが遠い親戚が五つ子を産んで二年経つらしくて、有給溜まってたし会いに行こうと思って」
「いやいや五つ子ちゃん可愛いっすけど!!…でもあの…い、いつお休みするんですか!?」

冷や汗の止まらない職員達はすかさず自分のスケジュール帳を開き女性職員の返事を待った。
んー…と声をもらした後、女性職員は満面の笑みでこう答えた。

「明日」
「うあぁあああああああああっ!!!」
「よっしゃあああ私明日夜勤だぁあああああ!!!」
「くっっそぉおおおおおおお」

歓喜と絶叫の中、黙って休暇を許可した上司は、崩れ落ちる職員を見て小さなため息を吐いた。



 A.R.O.A.本部内に設置されている部署は数多く存在し、各自必要不可欠な役割を果たしている。
その中でも穏やかな空間だと評判なのが此処、A.R.O.A.本部北館にある『広報課』
市民からの情報や連絡を受け取るだけに留まらず、困り事や相談窓口なども設置されており
他の職員の間では彼等の事をウィンクルムと市民の交友の架け橋…と呼ぶ者もいた。

…そんな穏やかで暖かな部署が、たった三十分で半壊寸前になるなど誰が想像しただろうか。

「こんちはー!資料届けに…どしたの皆」
 大きなダンボールを持ったA.R.O.A.職員と貴方達は、広報課へとやって来た。
ダンボールで視界を半分隠された状態の貴方は、一緒に来た職員の動揺に驚きダンボールを下ろす…するとそこには。

「ど、どうしよう…おしまいだぁ…」
「明日よ来るな、明日よ来るなぁ~!」
「……いや、何があったらそうなるの」

両膝から崩れ落ち、涙を流す広報課の職員の姿があった。
彼等のオーバーリアクションに呆然とする貴方の隣に、困りながらも笑う職員が立つ。
 その職員は他の職員よりも年老いており、制服を覆うように可愛い割烹着を着ていた。
ふと目が合った貴方に、女性職員は「びっくりするわよねえ?」と楽しそうに笑う。

「明日私が休むから、明日勤務の子はああやって嘆いてるのよ」

…どういう事なのか分からない貴方は首を傾げる。
女性職員は「騒がしいからちょっと出ましょう」と、ダンボールを運んだ貴方と職員を休憩室へ招いた。



「猪本さんは、広報課のお母さんって呼ばれててね?託児所の保母さんもしてるの」
 お茶を差し出す猪本さんから受け取りつつ、頭を下げる貴方に職員は説明してくれた。
どうやら保母さんである猪本さんが【一日だけ】の休暇を取る事が決まったらしく、それで広報課はあの状況になったんだとか。
…おかしな話だ、いつも頑張っている保母さんが休んだっていいじゃないか。
そう思って首を傾げる貴方とパートナーに、猪本は嬉しそうに笑った。

「お兄さん達は優しいのねえ…でも仕方ないのよ、託児所ってとても大変だから」

猪本さんだけで託児所を切り盛りしているわけでは無いはずだと返す貴方に、職員は小さく頷く。
だが猪本はまた楽しそうに笑うと、ゆっくりと首を左右に振った。

「他にも若い保母さんや保父さんはいっぱいいるわ…でもねえ、皆若いから振り回されちゃうのよ」
しっかりしてても終わる頃にはクッタクタになっているのと話す猪本に、貴方は益々疑問符を増やしてしまった。
一緒に聞いた職員も、どうやら同じらしく「なんででしょうね?」と目を合わせる。



「っふふ、こういうのはやってみなくちゃ分からないのよ…そうだわ、お兄さん達一日保父さんやってみない?」


楽しそうに微笑んだ猪本は「あなた達になら安心してお願いできるわ」と言った。
一日保父さん…突然頼まれた事に動揺するも、パートナーと目を合わせる貴方に猪本の手が伸びた。
細いしわのあるひんやりとした手で包まれる手は、不思議と温かく感じる。




「お願い、できるかしら?」

解説

□目的□

A.R.O.A.本部内にある託児所の保母さん【猪本】の代役として保父さんとなり
勤務時間である三時間を乗り越える事です。


職務内容は以下の三つのみです
・子供達と遊ぶ
・子供達のお昼寝を手伝う
・職員である保母さんと保父さんのお手伝いをする
簡単でしょう?…いや、正式には【簡単に見えるでしょう?】


託児所に預けられた子供達はとても個性豊かです。
やんちゃすぎる子だったり超マイペースだったり…はたまた皆の輪に打ち解けられない子もいるようですね。
お母さんやお父さんと離れている間を受け持つのが貴方のお仕事です。
子供達が「寂しい」と言うのを忘れてしまえるように保父さん頑張って下さい。

保父さんである以上、普段着や私服というわけにはいきません。
動きやすい服装を用意しておきましょう…何をするか分かりませんからね。

それと、A.R.O.A.託児所限定【手作り保父さんエプロン】を着用してもらいます。
普通のエプロンで良ければ支給しますが
可愛いアップリケ付きの公式エプロンの方が子供ウケはバッチリかもしれませんね。


託児所限定エプロン(うさぎさん)ピンク・パステルグリーン・スカイブルー 【300Jr】
託児所限定エプロン(くまさん) クリーム・ピンク・オレンジ       【350Jr】
託児所限定エプロン(恐竜さん) ブラック・パステルグリーン・クリーム  【400Jr】

恐竜さんは子供達に人気なようで、制作が追いつかないんだとか…
申し訳ないですか少しだけお値段はりますね?
その分デザインは凝っているので、お値段以上の仕上がりかと!

どんな事をして三時間を過ごすのか、子供達と仲良しになれるのか。
若い職員と同じように、クッタクタになって共倒れしないように注意しましょう。



何して遊ぶか考えました?
…それじゃあ、子供達が待っていますので、エプロン着て待ってて下さいね。

ゲームマスターより

お久しぶりです。らんちゃむです
今回は穏やか広報課を絶望させるレベルの代役を務めるとか…。

個性豊かで感受性のある繊細で敏感な子供達と、どうやって打ち解けるかが問題のようですね。
…好奇心旺盛の子供なら懐いてくれるでしょうけど、全員がそうとは限りません。
皆さんなりの優しさが子供達に届いて、楽しい三時間になりますように。


…余談ですが、職場体験で保母さんを一週間経験したらんちゃむです。
どちらかと言えば…クッタクタでした。 お尻触られすぎて殺気を感じるレベルでしたよ…!


皆さんもお尻に気をつけて、いってらっしゃい!

リザルトノベル

◆アクション・プラン

アキ・セイジ(ヴェルトール・ランス)

  装備:恐竜さんエプロン

よろしくなっ(抱え

●職員の手伝い
これは俺に任せとけ部門だ
掃除洗濯に給食前後の運搬等どんとこい
事務仕事?ますます任せなさい(ぐっ
一寸園児の名簿みせて貰って良いですか?(名前と特徴と趣味把握

●子供の相手
最初は子供達の遊びに付き合い、一寸したら童話の読み聞かせをしよう
ランスとの遊びから漏れた子供を俺が面倒見る工夫さ
さっき獲得した情報も混ぜて、全員が活躍する即興ドラマにアレンジ!
⇒園児の反応で展開を変える
*プランとリザルト♪

●お昼寝
ランスも一緒に寝かしつけるのも想定内だ
お疲れ様、ランス(くす

★悪戯
最初はビックリ
でも、ランスに何か考えがあると思うから、安全は確保しつつ軌道修正しよう



瑪瑙 瑠璃(瑪瑙 珊瑚)
  子どもは苦手・・・・・・。
というより、一緒に遊び慣れていないんだ。
見ている分には、可愛いけどな。

高校のジャージ服の上から、うさぎのエプロンを着る。
ズボンのポケットには、万が一に備えて、
左にハンカチ、右にポケットティッシュを入れる。

子ども達とはジグソーパズルで遊ぶ。
保育士さん達にテーブルがあるか聞いてみよう。

3時間で遊び尽くせるかわからないが、
最初はトランクから100ピースの箱を用意。
子ども達に遊んでみないかと声をかけよう。

飽きてきたら100ピースずつ増やしていきながら、
最終的には1000ピースまで遊べるようにしよう。
「お兄さんの前でケンカしない。
いいかい?皆で仲良く遊ばないと、楽しくないぞ?」



スコット・アラガキ(ミステリア=ミスト)
  アドリブ歓迎

エプロン
神:緑のうさぎ
精:黒の恐竜 を 押しつける!

子供たちの相手だね?
遊びも昼寝も得意だからまっかせて

やんちゃな子たちに人間アスレチックで対抗だー
仁王立ちした俺の体を子供たちによじ登ってもらう
天辺まで登れたら高い高いだ

まだ遊びたい?俺も俺もー
でも昼寝の時間だってさ
布団のなかに隠れろーっ
見つからないように静かに…静かに…(すやぁ

楽しかったねぇ!でもさすがにちょっと疲れたよ
子供の頃は一緒に遊んでるつもりだったけど
大人が俺たちに合わせてくれてたんだなぁ

この仕事引き受けた理由?
猪本とミストが似てたからかな
手がつめたくて、あったかいとこ

帰り道には手を繋いで、歩幅を合わせて歩きたいな




「今日は猪本先生の代わりにお兄さん達が皆と遊んでくれるそうです、ご挨拶しましょうねー さん、はい」
「おにーさん、よろしくお願いします!」

 数人の子供達は、一同を見て目をキラキラさせながら元気いっぱいに挨拶をした。
同じように頭を下げよろしくお願いしますと返せば、それだけで子供達の目に輝きが増していく。
職員達と朝の挨拶が終わると、一同は二手に分かれ職務を開始した。


 アキ・セイジ、瑪瑙 瑠璃、ミステリア=ミストは職員室へ戻り職員と三時間で何をするかの相談を……パートナーはその間、子供達と遊ぶ事となった。
「それじゃあこれから三時間、よろしくお願いしますね」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
「僕達も猪本さんがお休みだなんて初めてだから……結構甘えてしまうかもしれません」
苦笑いを浮かべる職員に、精一杯頑張りますと言葉を返せば職員達は嬉しそうに笑った。
三時間のスケジュールを確認し終え、簡単な注意事項を説明されるのはあっという間に終わっていた。

「それじゃあ……アキ・セイジ君には僕と一緒に事務をやってもらえるかな」
「分かりました」

「じゃあ瑪瑙さんとミステリアさんは私と一緒に子供達の所に混ざっていきましょうか」
「……?あの、事務は二人だけでいいんですか」
「ええ、どちらかと言えば……あっちのほうが大変なのよ」
瑠璃の問いに女性職員が子供達の方を示せば、視線の向こうでぎゃあぎゃあとはしゃぐ子供達がいた。
視界に入るパートナーが腕を左右に引っ張られ争奪戦をされているのが見える。

「おにーちゃんは俺達とお馬さんするんだー!」
「やーあ!おにーちゃんはゆみちゃん達とお絵かきするのー!」
「いだだだ……お、思ったより力あるんだな……ちょ、ちょっと待って!な!」
「……ほら、ね?」
「……行きましょうか」
何故か引っ張られているのが自分に見えてしまった瑠璃は、足早に争奪戦をされている瑪瑙 珊瑚の元へ向かった。
ミステリアもパートナーであるスコット・アラガキの傍に入り、子供達との交流を始める事に。


「お兄さんの前でケンカしない、……いいかい?皆で仲良く遊ばないと、楽しくないぞ?」
「ほあ!珊瑚おにーちゃんが増えた!」
「……いや、増えてはいないんだけど」
 瓜二つな瑠璃が珊瑚の救出に割り込めば、子供達は瑠璃の顔を見てとても驚いていた。
少々パニック気味の子供達に、もう一度挨拶をすると、争奪戦をしていた片方の子供が瑠璃のエプロンを掴む。
「じゃあウサギさんエプロンのおにーちゃんはゆみちゃん達と遊んで?」
「じゃあ恐竜のおにーちゃんは俺達と遊んでー!」
遊んで遊んで、そう言って膝元にしがみつく子供達に困惑する瑠璃はふと、隣にいたパートナーへ視線を向ける。
珊瑚は膝元に寄る男の子の頭をくしゃくしゃと撫でながら、分かったと返事をしていた。
「……そんな困った顔すんなよ、頑張れ」
「困ってはいない……とは思う」
へらりと笑ったパートナーが少し離れた場所で遊びだすのを眺めていると、ゆみちゃんと名乗った女の子が瑠璃の肩を叩く。

「瑠璃おにーちゃんは何して遊んでくれる?」
「……パズル、持ってきたんだ」
「パズル!?」
知らぬ間に瑠璃の傍にいた数人の子供達は嬉しそうに目を輝かせて、すぐに遊ぼうとテーブルへ瑠璃の手を掴み誘う。
あっという間に受け入れられた事に驚きながらも、掴まれた小さな手に自然と口元が緩んだ。

「あ、おにーちゃん笑った」
「え?」
パズルを取り出して準備をしていると、ゆみちゃんが嬉しそうに瑠璃を見て微笑んだ。
キラキラとした目に瑠璃を映すと、ゆみちゃんはもう一度笑ってみせる。
「笑うと知らない人とすぐお友達になれるって先生が教えてくれたの、瑠璃おにーちゃんも笑うといいよ」
「ねー!」
隣に座る子供達と一緒に首を傾げて声を合わせるゆみちゃん。
何処か子供らしくない大人びたところが見えて、瑠璃は口元を抑えた。
「っ……ああ、そうするよ」
バラバラとテーブルに広がったピースを数人で相談しながら組み合わせていく中、瑠璃の傍には子供達が離れなかった。



「お馬さんだー!」
「しっかり掴まるんだぞー!」
「はーい!」
 男の子達を乗せてお馬さんごっこをする珊瑚は、背中に乗った子供達に注意をしながらゆっくり進んでいく。
一歩一歩進んでいくだけで、背中に乗っている男の子達は嬉しそうにはしゃいでいた。
「よーしここまで、次の子に交代だ」
「次は僕とはるちゃんだよー!」
 小さな腕を力いっぱい上げた男の子と、その子に引かれる小さな男の子が珊瑚の前に現れた。
はるちゃん、と呼ばれた男の子は恥ずかしそうに珊瑚を見上げると、目元をうるませる。
泣かれると思い、ドキッとした珊瑚だが、はるちゃんと呼ばれた男の子は珊瑚の傍に寄ると背伸びをして耳打ちをした。

「……せんせー、ゆっくり歩いてね」
「ん?……おう!任せとけ」

すぐに返事をする珊瑚にホッとしたのか、一緒に来た男の子と背中に乗ると、珊瑚の背中にしがみつく。
「しっかり掴まるんだぞー、んじゃあ出発ー!」

お願いされたので、先程よりも少し遅めに進んでいく珊瑚。
背中越しに聞こえる震えた声ははるちゃんと呼ばれた男の子のものだろう。
四つん這いになって進んでるとはいえ、少し高い自分の背中に怖がっているのだとすぐに分かった。
……慣れるまでゆっくり進んでいくと、次第に震えた声はなくなっていって。

「こ、こわくない」
「お?はるちゃんもう大丈夫か?」
「うん!……ありがとうせんせー」

先生、そう呼んで背中を撫でられた珊瑚は、背中じゃなく別の何処かがくすぐったくなった。
緩む口元を抑え、子供達の示した目的地まで歩み出す。

「よーし到着だー!」
「お、いらっしゃーい!」

頭上から降る声に子供達を下ろした後顔を上げれば、仁王立ちしているスコットの元に辿り着いていた。
珊瑚から降りた男の子達は、仁王立ちするスコットまで辿り着こうと必死によじ登っている。

「……でっけえー!」
「アハハ、俺もお馬さんしたかったんだけどこっちのがいいかなーって」
「だと思う!皆てっぺんまで頑張れよー!」

珊瑚が応援をすれば、子供達は嬉しそうに返事をしてスコットをよじ登っていった。




「……先生、折り紙ちょうだい?」
「先生?……ああ俺か」
 ズボンの裾を引っ張られ振り返れば、こちらを見上げる女の子が折り紙が欲しいと声をかけていた。
スコットの傍に立って子供達を見守っていたミステリアだが、すぐに職員室へ向かい折り紙をもらってくる。

「ほら、これでいいか?」
「ありがとう」

女の子は折り紙を受け取ると、部屋の隅に寄せられていたテーブルの前に座って折り紙とスケッチブックを広げた。
一人静かに遊ぶ女の子の傍に座ると、女の子はあわててスケッチブックを体で隠した。
「先生見ちゃダメ」
「見えてない、大丈夫」
「ほんと?」
「ああ、ほんとだ」
「……じゃあよかった まだ内緒なの」
テーブルいっぱいに広げられた折り紙や画用紙をはさみで切ったり繋げたりする女の子に、ミステリアは問いかけた。
女の子の名前はやよいといい、皆にはやよちゃんと呼ばれているらしい。
皆で遊ぶのも好きだが、静かにものを作る事に今日は専念するのだと答えた。

「……皆で遊びなさいって、先生はやよを怒る?」
「あ?俺が?」
「時々先生が怒るの、だから先生も怒るのかなって」
首を傾げるやよいに、ミステリアはゆっくり首を振るとやよいの作っていたものを見よう見まねで作り出す。
その行動に少しだけ驚いた表情を見せた彼女に、ミステリアは静かに口を開いた。

「無理に人の輪に入らなくてもいい 自分にできることを通して繋がってきな」
「……先生は猪本先生みたいに優しいのね」

嬉しそうに笑うやよいは、ミステリアに対しての警戒心が解けたようで、折り紙の折り方や画用紙をどう切るかなどを教えてくれた。
「……そういえば、これは何を作ってんだ?」
「まだ内緒、先生はやよと一緒にわっかを作って」


にやりと笑ったやよいが人差し指をミステリアに押し付けると、ミステリアはふっと息を吐いて頷いた。





 お馬さんごっこ、人間アスレチック……パズル、折り紙……。
いろいろな遊びをしている中、中央で男の子達を中心に遊んでいたヴェルトール・ランス。
他のウィンクルム達と一緒にいる子供達とは少し違い、やんちゃな子供達ばかりが集まっていた。
「ランス先生抱っこー!」
「はいはい抱っこなー……よいしょっと」
「いいな!俺も抱っこしてよー!」
 構って欲しいあまり、ランスの足元を力いっぱい叩く男の子は足元で抗議をした。
一人を片手で抱くようにすると、足元を叩いていた男の子の腹部をくすぐって相手をする。
お腹をくすぐられた男の子は、それだけで満足のようで大笑いして転がり回った。

「おらおらー!先生の足叩いていいのか~?」
「わはははは!ごめんなさい!ごめんなさい!」
「よーしいい子だ、すぐに謝れるのはいいことだぞ!」

息を思いっきり吸う男の子の頭をそっと撫でると、男の子は少し反省したのか大人しくなった。
ランスの周りを走り回る男の子達を見守っていると、女性職員に声をかけられた。
隣に座って一緒に子供達の相手をしながら、職員はランスに子供達の事を少し説明する。

「この子達は一番やんちゃなんですよー……大丈夫ですか?」
「子供ってのはこれくらいがいいんじゃないですかね」
ニッコリ笑って子供達の相手をするランスに、女性職員は嬉しそうに笑った。
職員の話によると、猪本が今日休むという事は数日前から話があったらしく……職員は承知していたのだが
どうやらそれを、子供達にも聞かれてしまっていたという。

「だから今日は寂しいかなーって心配だったんですけど、よかったです」
引き続きよろしくお願いしますと言って、女性職員は職員室へ戻ろうとした……その時だった。
一人の子供が女性職員の背中を押したのだ。
バランスを崩した女性職員はそのまま転倒するかと思った……が。

「きゃっ……!」
「おっと!大丈夫ですか?」
「あ、アキさん……すみません」

様子を見ていたアキがかけつけ、転倒だけは避ける事が出来た。
受け止めようと立ち上がったランスは、そのまま女性職員を押した男の子をひょいと持ち上げ、自分の膝の上に乗せた。
悪びれる様子もなくケラケラ笑う男の子に、ランスは黙って男の子を見つめる。
沈黙に耐えられなくなった男の子は、口を尖らせ目をそらした。

「こうた」
「……」
「……こうた、返事は」
「はい」
「危ないじゃないか、転んで怪我したら大変だぞ?」
「……」
「職員さんが怪我してもいいのか?」
「……やだ」

時間差で自分のした事に罪悪感を持ち始めたこうたは、ランスの膝の上で小さくなっていた。
女性職員が大丈夫だからと止めようとするが、ランスは首を左右に振った。

「やっていいイタズラとダメなイタズラがある、お前がしたのは悪いイタズラだ」
「……だって、せんせーが猪本先生に休んでいいって言ったの聞いたんだもん」

大粒の涙をこぼして、猪本に休むように勧めた女性職員が許せないんだとこうたは言った。
アキが女性職員に視線を向けると、女性職員は小さく頷く。
「会議中にお休みの話があったんで、是非ゆっくりしてきて下さいって……私が言ったんです」
「そうだったんですね……」

なんの変哲もない返しが、まだ幼い子供にとって悪意のある言葉に聞こえたんだと女性職員は反省していた。
自分達から大好きな猪本を取ったと思っているこうたに、ランスは指で涙を拭って話しだす。

「猪本先生がいなくても、いい子にしていられる男の子はカッコいいぞ」
「!」
「いなくて寂しいのは分かるけど、危ない事をしたら猪本先生だって怒ると思うんだ」
「……うん」
「じゃあごめんなさい、出来るか?」

ランスの問いにこうたは膝を降りて、女性職員の前に立った。
頭を下げて、小さな声で「ごめんなさい」と言ったこうたを、女性職員はそっと抱きしめる。
背中を数回叩いてあげれば、ホッとしたのかまた大粒の涙をこぼした。
「よしよし……先生どこも怪我してないから、ランス先生達といい子に遊べるかな?」
「ぐず……っ……うん」
「偉い偉い……ランス先生、よろしくお願いしますね」

ありがとうございますと頭を下げた女性職員と共に、アキも立ち上がる。
まだ涙を残す男の子を撫でていたランスに視線を向けるが、ランスはこちらを向かなかった。
……ダメだと叱るパートナーの表情と、反省した子供を慰めるその表情は、アキにとって新しいパートナーの表情とも言えた。
「……凄いな、ランス」
「っ!セイジ、今俺の事褒めた!?」
「な!?……じ、地獄耳め……ッ、褒めたよ、凄いなって」


 各自子供達と様々な遊びをしていれば、時間はあっという間に過ぎていき、職員室にいた先生が「お昼寝」の時間を告げた。
「さーて、寝ない子はハゲザウルスが食っちまうぞー」
「俺も俺も!食べちゃうぞーっ」
「きゃー!ハゲザウルスこわいー!」
「珊瑚おにーちゃんもこわいー!キャーッ!」
「食われたくなければ布団に入れー」
「はーい!」

ミステリアと珊瑚の誘導により殆どの子供達が敷かれた布団に飛び込んでいく。
頭まで布団を被った子供達は、クスクスと笑い追いかけられるのを楽しんでいたが……すぐに大人しくなっていた。
数分もしないうちに、すやすやと寝息が聞こえてきた。

「……寝るの早っ!」

「まああんだけ遊び回ったからなー……珊瑚もちょっと、眠そうだな?」
スコットの問いに大丈夫と答えようとするも、瞼が少しだけ重くなっているのに気づく。
薄暗くした部屋に流れる優しいオルゴールの音が、睡魔を更に引き立たせていた。
傍にいた子供にエプロンを掴まれていたため、身動きが取れない。

「……やば」
「あはは、エプロン掴まれたら逃げられない……よ……」
「……スコット?……って、何一緒になって寝てんだよ……どっちが子供かわっかん……」
「おーい、二人して爆睡……して、んじゃ……ね……」

 笑い声でいっぱいだった託児所が、オルゴールの音と寝息だけになった頃
職員と数人のウィンクルムによってお昼寝後のスケジュールの確認が行われた。
残されたのはお昼寝後のおやつの時間と、ほんの少しの遊ぶ時間。
おやつに関しての注意点を確認し終えると、アキから全員に話があると切りだされる。
「子供達のプロフィールを皆が遊んでいる間に確認してメモにまとめておいたので、よかったら確認して下さい」
「それは助かります……お昼寝中に把握しておきたいですね」

分かりやすく説明書かれたメモを流し見する瑠璃に、ミステリアが顔を上げてため息を吐いた。
何事かとアキが問いかけようとすれば、ミステリアは黙って子供達の方を指さす。

「でっかいガキが混ざってやがる」
「あ……ッフフ、すみません、うちのは想定内です」
「……珊瑚まで、何してるんだ」
子供達にまざって眠るパートナーに、一同は呆れながらも笑ってしまった。
職員達がクローゼットからタオルケットを数枚持ってきて、眠ってしまったウィンクルム達にかけていく。

「っふふ、大きな子供さんなんて初めて」
「ご苦労様です……僕達も大助かりでした」

夢の中にいる彼等には、職員達の感謝の言葉は……届いているだろうか。

「……皆さんも眠たかったら寝ちゃっていいんですよ?タオルケットあるし」
「いや、大丈夫です」

声が揃う三人に、職員は楽しそうに笑っていた。




 静かに眠っていた子供達と、釣られて眠っていたパートナーを起こしておやつの時間の時間へ。
寝起きでぼーっとしている一同を見て、目を覚ました子供達は楽しそうに笑っていた。
子供達の間に入って一緒におやつの時間を取る事になり、静かだった時間が嘘だったかのように笑い声が溢れていった。
美味しそうにおやつを食べる子供達を見る……なんてあまり無い体験に、一同は自然と楽しくなっていた。

おやつを食べ終える頃には次はどんな遊びかという話題でもちきりに。
男の子達はランス、スコット、珊瑚の三人と一緒にヒーローごっこをする事に。
女の子達は瑠璃とアキと共にジグソーパズルの続きをする事が決まった。

ぎこちない空気があった最初の頃とは違い、臨時で来た一同の言葉を素直に聞き入れる子供達は先生、先生と嬉しそうに呼んでいた。



「わー!大変だ!オーガが出たぞー!」
「グオー!」
「あっちにも出たぞー!」
「ガオー!」
オーガ役のランスとスコットに悲鳴を上げながら逃げる男の子達を、女の子達はパズルをしながら応援していた。
時折、パズルに集中するアキや瑠璃をオーガ役の珊瑚とランスが捕まえに来るなどアドリブも混ぜて
最終的には男女まざってオーガを倒す大ストーリーになってしまった。
ヒーロー役をした子供達は楽しかったのか、また明日もヒーローごっこをするんだと盛り上がっている。


子供達のテンションがピークに達した頃、職員からついに三時間を超えた知らせが届いた。
次の職員を交代する事になっている為子供達にブーイングを受けながらも一同は立ち上がり職員室へと向かった。

「……おっと、もう時間だ」
「先生もう来ないの?」

ずっとやよいの手伝いをしていたミステリアが立ち上がれば、やよいは少し寂しそうにしていた。
もう来ない、ハッキリ問いかけられる言葉に濁す事が出来ず黙るミステリアに、やよいはすぐ、笑ってみせた。

「大丈夫、やよもう一人で出来るよ」
「……そうか、頑張ってな」





「三時間お疲れ様でした、あとは僕達に任せてください」
「こちらこそありがとうございました」

思ったよりも早く過ぎてしまった三時間、一同はクタクタになっていた。
だが何故か「疲れた」とは口から出ず、誰もが「楽しかった」と笑っていた。
着替えを終え、見送りに来た子供達に別れの挨拶をして出ていこうとした……その時だった。

「待って!」

一同の前に飛び出した女の子は、ちょっとだけ待ってと一同を呼び止めた。
ミステリアが振り返れば、そこには先程まで一緒に折り紙をしていたやよいの姿が。
隣に立っていたのはパズルを一緒にしていたゆみこ、お馬さんごっこをしたはるか……そして。
イタズラをしてランスに叱られた男の子、こうたの姿もあった。

「皆……どうした?」
「せんせー、遊んでくれてありがとう!やよ達からプレゼント」

背中に隠されたソレは、金色の折り紙で作られたメダルだった。
手作りでヨレヨレになってはいるが、金色のメダルには一人一人の名前が書かれている。
やよいがずっと作っていたのは、自分達へ送る金メダルだったのだ。

「……こりゃあ、驚いたな」
何を作っているんだと聞いたミステリアが、やよいから金メダルを受け取る。
全員の金メダルの裏には、「あそんでくれてありがとう」と書かれてあった。


「また!遊びにきてね!」
「ばいば~い!ばいば~い!」

笑顔で手を降る一同に、我慢できず涙を流す子供達は、見えなくなるまで……力いっぱい手を振り続けた。




依頼結果:成功
MVP
名前:アキ・セイジ
呼び名:セイジ
  名前:ヴェルトール・ランス
呼び名:ランス

 

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター らんちゃむ
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 男性のみ
エピソードジャンル コメディ
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 普通
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 3 / 2 ~ 5
報酬 なし
リリース日 11月11日
出発日 11月19日 00:00
予定納品日 11月29日

参加者

会議室

  • [5]アキ・セイジ

    2014/11/18-22:18 

    質問お疲れ様でした。
    プランは提出できたよ。うまくいくといいな。

  • [4]瑪瑙 瑠璃

    2014/11/18-21:36 

    蛇足かもしれませんが、細かい所を問い合わせてみました。
    プランの見直しになって下されば、幸いです。

    1、託児所の広さ
    広さは学校の教室2つ分くらいを想像しています。

    2、預けられている子供の平均年齢層や平均人数
    子供の年齢は4~6歳 普段は多いですが、臨時保父さんが参加する日には
    7~10人の子供達がいます。

    3、子ども達とは外でも遊べるかどうか
    外で遊ぶには本部内ですので、予め許可を取らなければいけません。
    ですので外では遊べますが、参加日は室内で遊んでもらう事になります

    4、代理保父さんは、交代しながらか、休まないで3時間するのか
    休まないで3時間です、途中お昼寝の時間があるのでぶっ通し…というわけではありませんが

    5、「玩具や縄跳びなどは持ち込めるか」に関しまして
    自分の家にありそうな物か、コンビニなどで簡単に手に入るものであれば、持っていくことは可能です。
    その玩具で実際に遊んで良いかどうかは、プラン内で託児所で確認を取ると良いでしょう。

    以上になります、連続投稿失礼しました。

  • [3]瑪瑙 瑠璃

    2014/11/18-20:34 

    子どもの相手は、緊張しますね。瑪瑙瑠璃です。
    スコットさんは初めまして。アキさん、白雪姫ではお世話になりました。

    子どもは嫌いではないのですが、自分自身あまり遊び慣れていません。
    この顔つき(目つきが悪い為)で逃げられないか心配です。

  • [2]アキ・セイジ

    2014/11/16-00:06 

    アキ・セイジだ。相棒はウイズのランス。よろしくな。
    子供の相手か…これは気合を入れて掛からねば…(エプロン握り締め)

  • [1]スコット・アラガキ

    2014/11/14-21:43 

    わーいわーい、初めてのお仕事だっぞー(その場でくるくる)

    スコットとミストだよ、よろしくねぇ
    猪本さんのかわりにがんばるよー


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