


「今日は何てツイてない日なんだ……」
貴方はガックリと項垂れました。
今日は何でもない『普通の一日』の筈でした。
なのに、何故なのか、次々とトラブルが貴方に降りかかっています。
まず、朝、寝坊しました。
慌てて飛び出して来たため、携帯端末も財布も家に忘れました。
財布がないため、お昼ご飯も食べられません。
それでも何とか、片付けないといけない用事は済ませました。
凄く頑張りました!
なのに……。
「定期落とした……!」
空に吠えたい気持ちです。
そう、今日一日、移動が出来ていたのは、通勤定期があったから。
その頼みの綱さえ、貴方は落としてしまったのです。
「不幸中の幸いなのは、定期は今日で切れる所、かな」
ハハハ。
空元気で笑ってみるものの、お腹がグーっとなりました。
「お腹減った……」
当たり前です。昨晩の夕飯を最後に、ご飯は食べていません。
「どうしよう……」
途方に暮れていた貴方に、ふっと彼の顔が浮かびました。
もしかして、だけど。ここ、彼の部屋に近いような?
彼とは、勿論、貴方が契約している大切な精霊、パートナーです。
連絡もせずにいきなり押しかけてもいいだろうか?
けれど、今は彼に頼るしかない気がしました。
ポツリ。
「あれ?」
空を見上げると、大粒の冷たい雨が落ちてきます。
「雨……!」
最早躊躇している場合ではありません。
貴方は記憶を頼りに、彼の部屋へと駆け出したのでした。


突然パートナーの家を訪れて、ご飯を食べさせて貰おう!というエピソードです。
ツイてない人となるのは、神人さん、精霊さん、どちらでも構いません。
どちらの役割となるか、プランに明記をお願いいたします。
プロローグは、パートナーさんと同居していないパターンですが、
精霊さんと同居している場合でも、『近くに彼の居る職場や学校などがある』など、
自由にシチュエーションは調整いただいて問題ありません。
以下をプランに明記お願いいたします。
・訪れる部屋について(どんな所なのか)
・パートナーに振る舞って貰う料理と、それは手作りなのか
・料理への反応
なお、晩御飯の費用として、「300Jr」一律出費となりますので、あらかじめご了承ください。
ゲームマスターを務めさせていただく、『得意料理は肉じゃが!』の雪花菜 凛(きらず りん)です。
お腹が減っている時にいただくご飯は、とっても美味しいですよね!
特に寒くなって来ましたし、あったかいご飯なら、更にテンションが上がります♪
執筆中、飯テロになりそうな予感に震えておりますが、是非お気軽にご参加頂けたらと思います。
皆様の素敵なアクションをお待ちしております!


◆アクション・プラン
月野 輝(アルベルト)
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ツイてない人 ■状況 前回請け負った任務(履歴No43)で精神が酷く凹んだ状態 そこへ不運が重なり完全に落ち込み 雨でびしょ濡れになりつつ精霊の部屋へ辿り着く ■心情 急にごめんね なんか色々あって…アルの顔がすごく見たくなって… その…(お腹が鳴り)こんな時でもお腹って空くのね…おかしい(笑顔を作る お風呂!? え、うん、そうね…ありがとう…… (借りたタオルとシャツを持って風呂場へ (並んだ料理に目を瞠り わ、シチュー?これ、どうしたの? アル、お料理できたのね 味、薄いわよ?(微笑んで 変ね、なんだか段々しょっぱくなって… 私、あの時どうすれば良かったの…?(ぎゅっと抱き付き 二人で食べるご飯はとても温かくて美味しいわね… |
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インターホンに出ると彼がいてびっくり 近くまで送って下さる事はありましたが 直接来られたのは初めてです …ど、どうしたんですか? 理由とお腹の音を聞き 縋る様な目につい頷いて中へ (家族以外の男の人を入れた事がないので緊張します) …す、少し待っていて下さい 玄関で止め 散乱する服を寝室へ隠し …ど、どうぞ 今作れそうなのはオムライスでしょうか 人参、玉葱、ピーマン…食べられます? 尋ね レシピを参考にぎこちない手つきながら 喜んでもらえる様に一生懸命<調理 玉葱に苦戦 卵はご飯へ被せる様に乗せて ケチャップでハートを描いて完成 …どう、ですか? 恐る恐る 喜ばれたら照れ笑い …良かった もっとお勉強しておきますね ※1DKのアパートに一人 |
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厄日ですわ… 髪型が上手くきまらなかったり財布を忘れたり付いてない事が続く ふとヴェルナーの家はこの辺りだったと気づく しかしみっともない所を見られる訳には… (雨が降ってきて)ああ、もう。軒先ぐらいは借りさせて頂きますわ! 合流できて家の中へ 何もありませんわね…、生活感がありません らしいといえばらしいでしょうか 料理待機中こういう時は手伝った方がとは思うが やった事がないので失敗するのがいやで大人しく座り いただきます 美味しい… 出来そうなイメージがなかったのですが意外と上手なんですね ああ、巻いたのが落ちたようです(普段全身図) 変わったの気づいていましたの? ヴェルナーはどちらがいいと思います? …切りませんわ |
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今日は本当ツイてません。 いつもの通り、手品でお金稼ぎしようとしてたんですが、きょうに限って何故か失敗ばかり。 綺麗な造花は折れるし、消えるはずのボールが消えなかったり、簡単なトランプやコインの手品ですらちょっとミスるし…。 お客さんもあきれて行っちゃうし、全然稼げなかったし…。 このままじゃ、またご飯抜きになっちゃいます…。 あ、そうだ、アメリアさん家行きましょう! 「アメリアさーん!ご飯食べさせてくださーい!」 そう言った瞬間追い出されそうになりましたが、手作りご飯貰いました! 見た目は凄くいい和食定食です。 味?味は…ものすっごく、普通ですね!(笑) 普通が最高の褒め言葉だと思ったのに…。 ※アドリブ大歓迎 |
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雨に濡れてきたらしいノアにタオルを渡す 夕飯?私もまだだから準備できなくはないけれど 別にお店は教えてくれなくていいわ。その手には乗らないんだから 料理は家にあるもので簡単に キャベツ、にんじん、ブロッコリーをレンジにかけてゆでたパスタに和える そこへインスタントのお吸い物の素を 軽くトーストしたバケットと白ワインを添えて完成 手抜き?料理っていうのは工夫が大事よ 一人で暮らすようになってから随分経つもの 自分で食べるものくらいは作れるわ はい、乾杯 たまには誰かと食事するのもいいわね 自分の料理を誰かに振る舞うのって初めてだけど おいしそうに食べてくれるとうれしいものね 雨は止んでるわよ 帰って自分のベッドでお休みなさい |
●1.
(厄日ですわ……)
アマリリスの溜息が、少し冷たい空気に溶ける。
朝、髪型が上手く決まらなかった。
そして、家を出てから財布を忘れた事に気付いて、そこからはもう最悪。
はぁと再び溜息が漏れた所で、彼女の脳裏に彼の顔が浮かぶ。
『アマリリス様』
名前を呼んで、微笑む彼──ヴェルナーを思い描いた所で、彼女は首を振った。
彼の家はこの近所だった筈。だとしても、だ。
(みっともない所を見られる訳には……)
ぎゅっと拳を握った所で、ポツリと頬に何かが当たった。
いつの間にか空には分厚い雲。雨粒が次々と降り始めている。
「ああ、もう。軒先ぐらいは借りさせて頂きますわ!」
アマリリスはアスファルトを蹴って駆け出したのだった。
ヴェルナーの話によると、彼の実家はタブロス郊外なのだが、利便性を取り市内のアパートで一人暮らしをしているとの事だった。
表札に彼の名前を確認して、アマリリスは深呼吸をする。
どう話を切り出すか。思考を高速回転させて、考えている時だった。
「アマリリス様?」
「ッ!?」
背後から声を掛けられて、アマリリスは思い切り肩を跳ね上げ振り返った。
「どうしたんですか? こんな所で」
目を丸くしてこちらを見ているのは、ヴェルナーだ。買い物帰りだろうか? 腕に紙袋を抱えて手には傘を持っている。
『それはこっちの台詞ですわ』と言いそうになるのを堪えて、アマリリスは笑顔を作った。
「近くまで来たものですから」
「濡れているじゃないですか!」
微笑む彼女の髪も服も濡れている事に気付いた彼は、慌てた様子で、
「風邪をひいてしまいます。中へどうぞ。タオルをお出ししますので」
そう言うと、鍵を使って扉を開く。
アマリリスは促されるまま、彼の部屋へ足を踏み入れた。
(何もありませんわね……生活感がありません)
必要なものしかない殺風景な部屋。
(らしいといえばらしいでしょうか)
真面目一辺倒の堅物な彼らしいと、少しの苛立ちと納得。
「アマリリス様、これで拭いて下さい」
真っ白なタオルを手渡され、彼に有難うと笑顔を向ける。
「適当に座って、待っていて下さい」
ヴェルナーはそう言うと、キッチンへと歩いていった。アマリリスはタオルで濡れた身体を拭いてから、おずおずとソファへ腰を下ろす。
窓の外に目を遣ると、先ほどまで小振りだった雨が強くなっていた。
コトリと、テーブルにカップが置かれる。
見上げるとヴェルナーが微笑んだ。
「ホットミルクです」
「有難う。頂きますわ」
白いカップを手に取り口を付けると、ホッとする温もり。
「……今日は、色々ツイていない事が起こりましたの」
温かいミルクを飲みながら、アマリリスはここに来た経緯を彼へと説明する。彼はいつもの真面目な様子で話に耳を傾けて、
「大変でしたね。雨が止むまで、こんな所で宜しければゆっくりしていって下さい」
そう微笑んだ。
(ああ、もう……)
アマリリスは赤くなった顔を見られないよう、そっと俯いたのだった。
「夕飯を食べていきますか?」
暫く他愛無い話をしていたが、一向に雨が上がる気配はなく。窓の外を見たヴェルナーが、急にそんな事を言ってきた。
「口に合わないかもしれませんが」
謙遜した様子で眉を下げる。
「お願いしますわ」
アマリリスが笑顔で答えれば、彼は畏まりましたと立ち上がった。
直ぐにキッチンから、包丁のリズミカルな音が響き始める。
(こういう時は手伝った方がいいのかしら)
彼の背中を見ながら考えるも。料理の経験がないアマリリスは大人しく座っておく事にした。失敗するのは絶対に嫌だ。
ヴェルナーは随分と料理に慣れている様子だった。包丁使いも、鍋を振る仕草も、迷いが無くスムーズだ。
「お待たせしました」
やがてテーブルへ出来上がった料理が並べられる。
豚肉とにらを卵でとじた、豚ニラ玉。
白いご飯とお茶も付けて貰い、二人で食卓を囲む。
「いただきます」
一口食べて、アマリリスは大きく瞬きした。
「美味しい……」
「よかったです」
ヴェルナーが嬉しそうに微笑んだ。
「意外と上手なんですね」
「健康な身体を作るには、食事が大切ですから」
全くもって彼らしい。
思わずクスッと笑いを漏らすと、彼の視線が自分の髪に向いている事に気付いた。
雨に濡れた事で真っ直ぐになった髪。
「ああ、巻いたのが落ちたようです。変わったの気付いていましたの?」
彼はコクリと頷いた。
「ヴェルナーはどちらがいいと思います?」
微笑んで尋ねてみると、彼は即答する。
「もう少し短い方が動きやすいのではと思います」
そう言うと思った。アマリリスが僅か口元に苦笑を浮かべると、
「今の長さはふわふわしていて、時々触りたくなります」
続いて聞こえた彼の言葉に、目を瞠る。
「……切りませんわ」
ぷいっとアマリリスはそっぽを向いた。
「す、すみません! 怒らせてしまったのなら、謝ります……!」
ヴェルナーの慌てた声を聞きながら、アマリリスは紅潮した頬が元に戻るのをひたすら待ったのだった。
●2.
「ここがリセちゃんの部屋かぁ。女の子らしい、かわいい部屋だね」
ノア・スウィーニーは、キョロキョロと無遠慮に部屋を見渡した。
「台所も広くて使いやすそうだし」
「はい、タオル」
リセ・フェリーニは、そんな彼を半眼で見つつ、タオルを差し出す。雨に濡れて来た彼は、髪も服もうっすら濡れている。
「有難う」
ノアは微笑んでタオルを受け取り、長い髪に付いた水滴を拭き始めた。
「そういえばリセちゃん、夕飯食べた?」
「夕飯? まだ食べてないけど」
リセの答えに、パァッとノアの表情が輝く。
「よかったら、俺にも食べさせて貰えると有り難いんだけどー……」
お願いと両手を合わせて、ノアはリセを見つめた。
「その代わりといってはなんだけど、今度おすすめのお店を紹介するからさ。当然俺のおごりで」
そう付け加えて、パチンとウインクする。
「別にお店は教えてくれなくていいわ。その手には乗らないんだから」
リセは小さく息を吐き出すと、エプロンを手に取った。
「部屋のもの、勝手に触らないでね。大人しく待ってるのよ」
「やったー! 流石リセちゃん! 大人しく待ってるよー」
嬉しそうに喜んでソファに座るノアに、少しだけ笑ってしまってから、リセは台所で調理を始める。
まず鍋に水を入れて、火に掛ける。
沸騰するまでの間、キャベツ、にんじん、ブロッコリーを適当な大きさに切り分けた。
「リセちゃん、包丁使うの上手いんだねー」
リズミカルな音に、ノアがそう声を掛けると、
「一人で暮らすようになってから随分経つもの」
そんな返事が返ってくる。
「ちゃんと自炊してるんだー」
感心したようなノアの声を聞きながら、リセは沸騰した鍋のお湯に塩を加えた。
それから、パスタと放射線状に広げて入れる。
パスタがお湯の中に沈み込むのを待ちつつ、先程切った食材をレンジに入れて加熱を開始した。
鍋を軽く掻き回してから、バケットを食べやすいサイズに切っておく。
「手際もいいなー」
ソファでごろごろしながら、ノアは楽しそうにリセの様子を観察していた。
「気が散るから、テレビでも観てて」
「えーリセちゃんを見てる方が楽しいよー」
首を振る彼に、リセは小さく息を吐き出し、視線は気にしない事にする。
バケットをトースターに入れると、パスタを一本引き上げて、指先で千切りゆで加減を確認した。
「うん、良さそうね」
パスタをざるにあけて水気を切る。
レンジで加熱の終わった食材、そしてインスタントのお吸い物の素を加えて和え、皿に盛付けた。
軽くトーストしたバケットと共に、テーブルへ並べる。
インスタントを使うのは手抜き?
いいえ、料理っていうのは工夫が大事。
最後に白ワインを開け、ワイングラスへ注いで──完成。
「お待たせ」
「わぁ、おいしそうだね!」
ノアが瞳をキラキラさせて料理を眺めるのに、少し照れくさそうにしながらリセはエプロンを脱いだ。
向い合って座り、グラスを手に取る。
「じゃあまずは、こんな機会をくれたこの雨に乾杯~」
「はい、乾杯」
カチンとグラスの鳴る軽やかな音。
ワインを一口飲んでから、ノアは早速パスタに手を付けた。
「ん……? 初めて食べたはずなのになんか食べ慣れた味のような……」
じっくりと味わって、ノアが大きく瞬きする。
「あれかな。お母さんの味、ってやつ? なんだかホッとするよ」
にっこりと微笑んで、リセを真っ直ぐに見つめた。
「自分で食べるものくらいは作れるわ」
僅かに頬を染めながら、リセはワインを飲む。
「美味しいよ、リセちゃん」
ノアはニコニコと笑顔で、パスタを口に運んだ。
(多分インスタント。でもアレンジきいてるし、全然アリ。普段からちゃんと料理してるんだろうな)
パートナーの新たな一面を見れて、ノアは心もお腹も満足だ。
(自分の料理を誰かに振る舞うのって初めてだけど……美味しそうに食べてくれると嬉しいものね)
リセは、美味しいを連呼するノアを眺めながら、温かい気持ちが込み上げるのを感じている。
「ごちそうさま~」
綺麗に食べ終えて、ノアは両手を合わせた。
「今晩泊まっていってもいい?」
続けてサラッと言われた言葉に、リセは微笑む。
「雨は止んでるわよ。帰って自分のベッドでお休みなさい」
窓の外では、雲の隙間から星が光輝いていた。
「あら、それは残念」
ノアは軽く肩を竦め、微笑んだのだった。
●3.
ピンポーン。
「どちら様ですか?」
「……ノゾミさん、突然ごめんね」
インターホン越しに聞こえた声に、夢路 希望は目を見開いた。
「ユキ……?」
「うん」
間違いなく、パートナーのスノー・ラビットの声。
希望は慌てて玄関の扉を開いた。そこには、遠慮がちに微笑むスノーの姿。
「……ど、どうしたんですか?」
「……あの、突然ごめんね」
スノーの眉毛と耳がしゅんと下がる。
「お店が忙しくてご飯食べ損ねちゃって……お腹空いた、けど、お財布忘れてきたみたいで」
そこで、ぐーっとスノーのお腹が鳴った。
「携帯も電池切れてて、家まで我慢しようと思ったんだけど……ノゾミさんの家が近くだって事、思い出して……」
ぐうぅ。
「突然女の人の部屋に、しかもこんな理由で訪ねるなんて失礼だと思ったんだけど……」
頬を染め、恥ずかしそうにスノーは希望を見つめる。
「何か食べさせてもらえない、かな……って」
縋るような瞳に、希望はコクンと頷いた。
家族以外の男の人を部屋に入れた事はないけれど、彼を放っておける訳がなかった。
「……す、少し待っていて下さい」
そう告げてから、希望は駆け足でリビングへと戻る。
散乱する服を、取り敢えず全部寝室へと隠した。これで多分、大丈夫な筈だ。
「ど、どうぞ」
玄関へ戻ると、緊張する胸を押さえて、彼をリビングへと案内する。
「……ここがノゾミさんの部屋」
白とベージュで統一された、落ち着いた雰囲気のリビングダイニング。
(……何だかドキドキする)
彼女の匂いに満ちた部屋に、スノーは顔が熱くなるのを感じた。
「……えーっと」
希望はオープンキッチンに入ると、冷蔵庫を開けて食材を確認する。
(今作れそうなのはオムライスでしょうか)
「人参、玉葱、ピーマン……食べられます?」
「うん、大丈夫だよ」
尋ねると彼はふわりと微笑んだ。
「よかった……直ぐに作りますから、待っていて下さい」
希望は微笑みを返すと、エプロンを身に着ける。常備していたレシピ本を開くと、早速調理に取り掛かった。
まずは、食材を刻む所から。
ベーコン、人参、ピーマンは食べやすい大きさに。玉葱はみじん切り。
(う……目にしみます……)
玉葱の皮を剥けば、その刺激で涙が出てきた。
「ノゾミさん? 大丈夫?」
スノーの心配げな声が聞こえ、希望は顔を上げて慌てて首を振る。
「玉葱が目にしみただけですので……大丈夫、です」
「何か手伝う事はない?」
「大丈夫、です。ユキは座って待っていて下さい」
スノーの為に、自分で調理したい。そう思う。
希望の決意に満ちた笑顔に、スノーはそっかと頷いた。
「テレビ観てもいい?」
「はい。楽にして、待っていて下さいね」
スノーは希望の邪魔にならないよう、テレビを観る振りをしながら彼女を見守る事にする。
一生懸命調理する彼女の姿に、胸には温かい気持ちが込み上げていた。
「……よい、しょ……」
薄く焼いた卵をケチャップライスへ被せる様に乗せて、綺麗に包んだ。仕上げにケチャップでハートを描く。
「出来ました……!」
「うわぁ、美味しそう!」
完成した綺麗な形のオムライスに、スノーは瞳を輝かせた。
希望が自分の為だけに作ってくれたご飯。胸が高鳴る。
「お茶をいれます、ね」
希望にお茶を入れて貰い、スノーは手を合わせた。
「……崩すの勿体ないけど、いただきます」
遠慮がちに卵にスプーンを入れると、ケチャップライスと一緒に一口分掬い上げる。
ぱくり。
「……どう、ですか?」
希望は恐る恐るスノーの表情を伺う。
顔を上げた彼の顔には、輝く笑顔があった。
「美味しい!」
「……良かった」
ほぅっと希望は安堵の吐息を吐き出す。
「とっても美味しいよ、ノゾミさん! 凄く幸せな気分っ」
スノーはふわふわした微笑みを見せ、夢中でオムライスを口に運んだ。一口毎に幸せが溢れて、心もお腹も満たされていく。
その様子を瞳を細めて眺めながら、希望は頬杖を付いた。
「もっとお勉強しておきますね」
もっともっと、貴方の笑顔が見たいから。
●4.
「おかしい。どうしてこんな事に……」
路上で、ユークレースは真面目な顔で小さく呟いた。
いつも通り、路上で手品を披露して、食費を稼ぐ筈だったのだ。それが……。
「綺麗な造花は折れるし、消える筈のボールが消えなかったり、簡単なトランプやコインの手品ですらちょっとミスるし……」
口に出してみると、本当におかしかった。
ツイてないにも程がある。
お陰で、折角集まったお客も呆れて去っていく始末。
勿論、夕飯代を稼げる筈もなく。
「このままじゃ、またご飯抜きになっちゃいます……」
ぐー。
空腹を訴えるお腹を撫でて、ユークレースは瞳を伏せた。
「あ、そうだ、アメリアさん家行きましょう!」
ポンと手を打って、ユークレースは顔を上げる。
我ながら名案だと呟きながら、手品道具を仕舞うと、彼女のアパートを目指し歩き出した。
「アメリアさーん! ご飯食べさせてくださーい!」
「帰れこのバカ!」
扉を開けたら、いつもの笑顔があって。いつものように図々しい台詞。
アメリア・ジョーンズは、思い切り半眼で扉を閉めようとした。
「待ってくださいよ、アメリアさん」
ガッ。
ユークレースは素早く扉の間に足を滑り込ませ、笑顔のまま扉に手を掛ける。
「放しなさいよ!」
ギギギ。
「放したら、閉まっちゃうじゃないですか」
力で彼に敵う筈も無かった。ユークレースは難なく扉を開けて中へ入ってくる。
「あー本当、今日はツイてなかったんですよ」
そう言いながら、ユークレースは疲れたーとソファへ座り込んだ。
「お腹減りました」
「何寛いでるのよ、出て行きなさいよ!」
「アメリアさん、今日の夕飯は何ですか?」
「人の話聞いてるッ?」
「寒かったので、温かいご飯がいいです」
「ダーッ」
アメリアは地団駄を踏んで、大きく息を吐き出した。話が噛み合わない。いつものことだけど。
「仕方ないから作るけど、食べたらさっさと帰るのよ!」
「はーい」
ユークレースはテーブルに置いているファッション雑誌をパラパラを捲り始める。
アメリアは手早くエプロンを身に着けると、調理に取り掛かった。
(ご飯は二人分炊いてあるし、魚も二尾ある……って、何でちゃんと二人分あるのよ!)
いつもの事だけども、きちんと用意してしまっている自分が信じられない。
「アメリアさん」
「な、何よ!」
突然ユークレースに話し掛けられ、アメリアは塩鯖を手に吃った。
「この雑誌……服のセンス、悪いです」
アメリアは無言で彼におたまを投げ付けたのだった。
塩鯖の南蛮漬けに切り干し大根、お味噌汁とご飯。
並んだ和な夕食を眺め、ユークレースは笑顔で両手を合わせた。
「見た目は凄くいい和食定食ですね。早速いただきます」
「『見た目は』って何よ! 残したりしたら許さないから」
アメリアに睨まれて、箸を手にユークレースは笑う。
「残しませんよ~」
ぱくっ。
アメリアがしゃもじを手に固唾を呑み、彼の反応を待っていた。
「あぁでも、味は普通ですね!」
ブチッ。
「帰れ! この鈍感男!」
アメリアのしゃもじが、ユークレースの後頭部へ炸裂する。
「何で怒るんですか~」
もぐもぐ。
箸は止めずにユークレースが抗議した。
(普通が最高の褒め言葉だと思ったのに……)
「怒るに決まってるでしょ、バカ! 食べるの止めなさいよッ」
「ヤです」
「没収よ、没収!」
「全部食べます。残しません~」
賑やかないつもの二人の夕食は続く。
●5.
扉を開けて、アルベルトは目を瞠った。
「輝……ずぶ濡れじゃないですか!」
「急にごめんね」
力無く顔を伏せているのは、彼のパートナー、月野 輝だ。
「なんか色々あって……アルの顔がすごく見たくなって……」
ポタリ。
輝の艶やかな黒髪から、水滴が落ちる。
雨に濡れた彼女は泣いているようだった。
「その……」
そこで、彼女はお腹を押さえる。満足に食事もしていないのか、空腹を訴える音が鳴った。
「こんな時でもお腹って空くのね……おかしい」
ぎこちなく口元を上げる彼女の手を、アルベルトは掴んだ。
「アル?」
少し強引に彼女を部屋に引き込むと、迷わずバスルームへと連れて行き押し込む。
「とりあえず温まってきなさい」
「え?」
「このままでは風邪をひいてしまいます。大丈夫ですよ、覗いたりしませんから」
優しく微笑む彼に、輝は涙腺が緩みそうになる自分を感じた。慌てて俯いて頷く。
「うん、そうね……」
「タオルと……着替えはこのシャツで我慢してください」
「ありがとう……」
アルベルトは輝の頭をポンポンと撫でると出て行く。
「ありがとう」
もう一度呟いて、輝は濡れた服を脱ぐのだった。
輝が落ち込んでいる理由は、分かっている。
アルベルトは火に掛けたシチューの鍋を混ぜながら、小さく息を吐き出した。
先程の輝の姿を思い出すだけで、胸の奥が抉られるように感情がざわめく。
「アル」
背後から彼女の声が聞こえて、アルベルトは振り返った。
「お風呂、ありがとう」
大きなシャツに身を包み、風呂上がりの蒸気した頬、伏し目がちな彼女には、何とも言えない破壊力があったが、アルベルトは深く考えないように努める。
「夕飯にしましょう」
温めたシチューと用意していたサラダ、パンをテーブルに並べた。
「わ、シチュー? これ、どうしたの?」
輝が驚きに目を丸くする。
「作ったんですよ。市販のルーを使った物ですがね。実は作り過ぎて、昨日から食べてるんです」
「アル、お料理できたのね」
輝は微笑んで、アルベルトの引いてくれた椅子に座り、両手を合わせた。
「いただきます」
スプーンで掬って一口。シチューはとても温かい。
「味、薄いわよ?」
「ルーが足りなかったみたいです」
アルベルトの答えに笑って。
それから、視界がぼやけた。
「変ね、なんだか段々しょっぱくなって……」
ぽろぽろと溢れる涙。堰を切ったように溢れて、上手に笑えない。
ふわりと、温かい腕が身体を包んだ。
「無理に笑わなくて良いですよ。言ったでしょう、私には全部出して下さいと」
アルベルトに抱き締められて、その言葉と体温に感情が弾ける。
「私、あの時どうすれば良かったの……?」
時間は巻き戻らない。
けれど、もっと何か出来たのではないかと考える思考を止められず、自分を責める事しか出来ない。
真面目な彼女だから、優しい彼女だから、繰り返し自問するのだろう。
(貴方が自分の中で答えを出すまで、私は貴方の心を包みましょう)
「シチューの味付け……調整しましょうか」
暫く経って、輝がポツリとそう言った。
「そうして貰えると助かります」
アルベルトが微笑み、輝は笑った。久し振りに見る、彼女の笑顔だった。
「ケーキもありますけど食べますか?」
「ホント? 甘い物、食べたかったの」
空には、明るい星が輝き始めていた。
Fin.
| 名前:月野 輝 呼び名:輝 |
名前:アルベルト 呼び名:アル |
| 名前:リセ・フェリーニ 呼び名:リセちゃん |
名前:ノア・スウィーニー 呼び名:ノア |



エピソード情報 |
|
|---|---|
| マスター | 雪花菜 凛 |
| エピソードの種類 | ハピネスエピソード |
| 男性用or女性用 | 女性のみ |
| エピソードジャンル | ハートフル |
| エピソードタイプ | ショート |
| エピソードモード | ノーマル |
| シンパシー | 使用不可 |
| 難易度 | 普通 |
| 参加費 | 1,000ハートコイン |
| 参加人数 | 5 / 2 ~ 5 |
| 報酬 | なし |
| リリース日 | 11月04日 |
| 出発日 | 11月09日 00:00 |
| 予定納品日 | 11月19日 |

2014/11/08-21:25
おぉ~どんまいどんまい(手品に対して拍手)
あ、ノアだよ。よろしくね。
おなか空いたねぇ…困った困った。
2014/11/08-17:38
2014/11/08-03:37
2014/11/07-00:32
アルベルト:
ユークレースさんとジョーンズさんには初めまして。
他の皆様には先程ぶりとお久しぶりです。
私はアルベルト、こちらで凹んでるのがパートナーの神人、月野輝です。
輝:よろしくお願いします…(ぺこり)
アルベルト:
とりあえず彼女の事は気になさらず。
どうぞよろしくお願いします。
さて、どうしたもんですかね……(輝を見て何やら思案顔)
2014/11/07-00:19
初めまして。僕はユークレースと言います。以後お見知りおきを。
手品で皆さんを楽しませ…あれ?(花を出したがしおれた)

