【ハロウィン・トリート】おかしつくろ!(あき缶 マスター) 【難易度:簡単】

プロローグ

●お菓子は買うだけのものじゃない!
 A.R.O.A.本部の近くにある、ナオキッチンスタジオ。普段は花嫁修業中のお嬢さんや、更に家族においしいものを! と意気込む主婦のおばさま、老後の楽しみに……と張り切るおじさま達で賑わうオシャレな料理教室だ。
「ナオキッチンスタジオのオーナーさんが、ウィンクルムの皆さんに持ち込み企画を持ってこられたんです」
 と言う職員の隣にいるのは、若い快活そうな女性。彼女がオーナーのナオだという。ナオは挨拶もそこそこに、すぐに企画について説明を始めた。
「ハロウィンでタブロスも盛り上がってますよね。で、ハロウィンといえば、お菓子! というわけで、皆さん、ウチのスタジオでお菓子作りしませんか?」
 なるほど、キッチンスタジオならば器具がそろっていて、初心者もとっつきやすい。インストラクターがいるから、大きな失敗もしないだろう。
「二人で仲良くひとつのお菓子を作るのもいいですし、お互い作りあって交換するって言うのもいいですし、……サプライズで作ったお菓子をあげるっていうのもいいですよね! ラッピング用品も取り揃えてありますよ~」
 とナオは力説する。
 そしてナオはキットとして用意したお菓子の写真つき一覧をボードに貼りだした。
「まずは型抜きクッキー。これは初心者さん向きです。型もたーっくさんありますからお楽しみに! 上級の人は、アイシングクッキーにも出来ますよ~」
 型抜きクッキーは袋一杯の量で200ジェールだそうだ。
「次に、ハロウィンといえばコレ! かぼちゃプリン~。これも結構簡単です。意外とほろ苦いカラメルがスパークリングワインにも合うので、大人な彼にもオススメ☆」
 こちらはプリンカップ2つ分で200ジェールとのこと。
「それから、やっぱりハロウィンには欠かせない、パンプキンパイ! パイ生地から作る本格派です。これは中級者以上って感じかな」
 大きめサイズのパイは、1つ300ジェール。
「最後、これはなかなかセンスがものをいう感じですが、ハロウィンケーキ! かぼちゃを練りこんだ黄色のスポンジケーキに、チョコソースをかけたケーキですよぅ!」
 ケーキは中くらいのサイズで500ジェール。飾りつけは各自自由なので、ある意味、上級者向けかもしれない。
 一緒にクッキーも作って、飾り付けを豪華にするのもオススメ、とナオは販促に余念がない。
「もちろん、二人で仲良くっていうのもアリですけど、作業台が五つある部屋を会場にしましたので、皆さんでワイワイっていうのもアリだと思うんですよ~」
 試食のときの紅茶はサービスしますからっ、とナオはウィンクルムたちを誘った。

解説

●内容:お菓子を作る

●お品書き
・型抜きクッキー:200Jr
・かぼちゃプリン(2個):200Jr
・かぼちゃパイ(大1個):300Jr
・ハロウィンケーキ(中1個):500Jr

・ラッピング材:100Jr
・ラッピング代行(材料費含む):200Jr

※クッキングスタジオには各種道具・材料がそろっていますので
 エプロン以外に用意するものはありません。
※ナオが控えていますので、食べられないほどの失敗にはなりませんが、
 あまり手出しはしないつもりです。

●プランについて
 誰が何を作るのか明記してください。
例1)神人と精霊で一緒にパイを作る。
例2)神人はプリン、精霊はクッキーを作る。
例3)神人一人でクッキーとケーキを作り、あとで精霊にあげる。

●判定について
 一般スキルと段取り力と直感力から、お菓子の出来を判定しますが、
 「段取りできるけど不器用だ!」とか「スキルもステータスも不利だけど、お菓子作りだけはプロ級な設定なんです!」とか
 特別に設定がある場合は、書いてくだされば考慮します。

ゲームマスターより

お世話になっております。あき缶でございます。
ハロウィンはお菓子のお祭りってことで、本格的なお菓子作りに挑戦です!
プロい人からズブのド素人まで、おいでませ~。
それにしても自分が作った食べ物は何であんなにおいしいんでしょうか。

リザルトノベル

◆アクション・プラン

(桐華)

  ケーキ食べたい
ケーキ。手作りケーキ
僕へのあてつけに美女といちゃいちゃしてた桐華さんの愛がたーっぷりつまったケーキが食べたいなぁ?

桐華さんが料理からっきしなのは知ってるけどナオさんのアドバイスもあるからきっと大丈夫だよね
僕もお菓子は得意じゃないから、邪魔にならない所で型抜きクッキー作ってる
後で桐華のケーキに一杯飾ろう

おうち帰ってからも食べたいから、上手く出来そうだったら2袋分作っちゃってもいいかな
一つでっかいハートのクッキー作って、桐華にあげる
ちょっと焦げてても気にしなーい
僕のでっかい愛を受け取るがいい

僕の分が済んでも余裕があったら、他の子の作ってるの眺めてよう
楽しそうなのを見てるのは、楽しい



高原 晃司(アイン=ストレイフ)
  俺はアインの為にプリンとケーキを作るぜ
普段の料理は作るが菓子はあんま作った事ねぇんだよな…
だが気合で頑張るぜ!

菓子作りって分量が命ってのは聞いたことあるぜ
だから分量とあと焼き時間とかは絶対に間違えないようにするぜ
アインの為に作るのはべ、別に好きとかそういうのじゃねぇ…
ただ、世話になってる礼だ
お、男が男に恋をする訳ねぇだろ!
でも…なんつーか…丁寧に愛情込めて作るつもりだ

上手くできたらドヤ顔でもしておこう
あ、あときっちりラッピングもしておくかな
ラッピングもきっちり気合いれるぜ

「あ、アイン!い、いつも世話になってるから…よかったら食べてくれ!」
絶対手作りっていうのはいわねぇ!


ハティ(ブリンド)
  本で学んだ調理スキルも使って南瓜プリン作り
リンのクッキーも楽しみ。知る限り初めてキッチンに立っているのを見るし、よく切れる包丁で俺は楽しい
帰ったらまず刃を研ぐところから始めようと思う
人聞きの悪い言い方をするなよリン
ただ持っていると少し落ち着くだけだ
俺も他の神人のようになれればと思ってはいるんだ、思っては
しかし一部エプロンが様になりすぎじゃないだろうか
皆の手際を見て参考にしつつ、形やデコレーションにそわそわ
俺もプリンの表面に何か施したい…かといってカラメルも諦めたくないんだがどうすれば良いですか先生
ココアパウダーなら大人の味を壊さないだろうか
うまく出来たらリンのクッキーとトリックオアトリートする



羽瀬川 千代(ラセルタ=ブラドッツ)
  使い慣れたエプロンと三角巾2枚ずつ持参
折角ならとパンプキンパイに挑戦
早々に相手を捕まえておき助力を仰ぐ
一人じゃ心許ないから、傍で助けて貰えると嬉しいな?

俺は主に実働担当
空いた時間で使った道具を整理しつつ作業進行
困った時は素直にナオさんを呼ぶ

お菓子は滅多に作らないけれど、何だか楽しいかも
ラセルタさんの貴重なエプロン姿も見られたしね
うん?知らない一面を発見出来て、単純に俺が嬉しいだけだよ

相手とパイの焼き上がりを観察
ふふ、完成が待ち遠しいのは俺も同じだからね
(っ、また距離が近いような……気にし過ぎ、なのかな

完成後は自分が先に毒見もとい試食
!ええ、と……ハッピーハロウィン(パイ乗せたフォーク口元へ運び


アキ・セイジ(ヴェルトール・ランス)
  買った方が美味いのにそんなにほしいのか…
プリンが盗られた時もやたら気にしてたもんな
お菓子大好きテイルスだったんだな(くす
分かった分かった
味は保障しないぞ(汗

◆プリンを作る
どうせ作るなら良い物にしたいし喜んで貰いたい
そうだ!(と閃く
誕生日プレゼントにしようと買っておいたアレを…

うち1個に『アンウーの息吹』をマジパンに包んで隠す
そのまま隠すと噛んで歯が欠けるかもしれないからな

カラメルアートでランスのマンガ絵を描き、ラッピングして渡すよ

★指輪に気付かれたら
俺も…ほら(と『サラリスの涙』を見せる

《ディスペンサ》も使えるけどさ
そういうのじゃなくてもさ、これでいつでも繋がってられ…あ、いや、なんでもない;



●下拵えしよう
 クッキングスタジオのオーナー、ナオは揃った男性陣を眺め回し、満面の笑みを浮かべた。
「ウィンクルムご一緒の共同作業も、それぞれの単独作業も、サプライズ用のこっそりメイキングも、ぜーんぶおまかせあれ!」
 それぞれのステンレス調理台の上には、磨き上げられた調理器具と材料がデンと乗っかっている。
「それでは、デキる方はお渡ししたレシピを見ながら、どんどんと。自信のない方は遠慮せずに早めに私にヘルプを求めてくださいね~。では、はじめてくださーい!」
 彼女がパンと手を叩けば、スタートの合図。
 一同は一斉にお菓子作りにかかった。
「ケーキ早く食べたいな~。桐華さんの愛がた~~~~っぷりつまった美味しい手作りケーキー。楽しみだなーー。僕へのあてつけに美女といちゃいちゃしてた桐華さんの愛がふんだんにつまってるかぼちゃケーキ~」
 あてつけのような歌めいた言葉を繰り返しながら、叶は自分が作るクッキーのための薄力粉を振るっている。
 先日のイベントに対する遺恨がまだ残っているらしい。
 その歌めいた叶の言葉を黙って、しかし渋面で聞きながら、桐華はレシピ通り、袋入りビスケットを袋のまま麺棒で黙々と砕く。
(お前も俺放置してそっくりさん構ってたんだからお相子だろが……)
 と思っているが、拗ねている彼にそんなことを言おうものならもっと面倒なことになる。
「ケーーキーーー」
「はいはいわかったよ! どんな仕上がりになっても絶対に食えよ」
 桐華は、せめてそれだけはと、言い返す。だがうちに秘めたる苛立ちのおかげか、とてつもない速さでビスケットは粉になった。
(えーと、これに溶かしバターを加えるのか……。『レンジで温めますが、目を離さないでください』……了解)
 分量通りに耐熱ガラスに入っているバターの塊80gを、桐華はレンジの中に収めた。
 いかんせん桐華はこういうコトが苦手なので、溶かしバターひとつ作るのも真剣そのものである。
「ふふん、頑張ってるじゃない」
 叶はその背中を満足気に眺め、練ったバターに砂糖を混ぜ始めた。

 同じく砂糖を練りこんだバターに溶き卵を混ぜているブリンドだが、隣で不穏な大きな音が聞こえてくることに驚いて、ボウルから視線をハティに移した。
「うおおお、何やってんだお前え」
 ドスッ、ダンッ、バンッ、ガンッ、ゴンッ!
「……南瓜を切っている。俺はプリンを作るんだ」
「うん、知ってる。それに見ればわかる。が、南瓜どころか調理台ごとイキそうなんだけど?」
「つい勢い余った。よく切れる包丁だ。持っていると少し落ち着く」
「包丁でハイになんのやめろ! 楽しそうで何よりだが、ハッピーブレードが料理教室ってサスペンスか!」
「家に帰ったら刃を研ぐところから始めようと思う」
「やる気になるのは悪い気はしねえが、そこから始めるのかよ。つーか、切り過ぎじゃないか? よそからもらってきてないか?」
「そうか?」
「……あとで残った分はペーストにしろ」
 はぁとため息を吐き、ブリンドはバター練りを再開する。いや、ツッコミのついでに練っていたので、十分すぎるくらいもうボウルの中身はモッタリとしていた。
 もう一度大きくため息を吐き、ブリンドは薄力粉に手を伸ばした。

 エプロンに三角巾と本格的なスタイルの羽瀬川 千代は、周辺をうろつこうとしているラセルタ=ブラドッツを呼び止めた。
「ラセルタさん」
 自分と同じ格好になってくれ、とエプロンと三角巾を笑顔で差し出す。
 不遜な眼差しでエプロンを見下ろすラセルタに、千代は続けた。
「一人じゃ心許ないから、傍で助けて貰えると嬉しいな?」
 じっと見上げられ、ラセルタはフンと鼻で息を吐くと、優雅な仕草でエプロンと三角巾をとった。
「良いだろう、但し俺様は高いぞ?」
「ありがとう。じゃあ、俺が主に動くから、ラセルタさんはレシピを教えてね」
 とパンプキンパイのレシピを手渡され、ラセルタはサッと目を通し、頷く。
「なるほど、任務の時と逆の立場だな。面白い。俺様が勝利に導いてやる」
 ニィと笑ったラセルタ……キッチンスタジオがまるで戦場のようである。
「よろしくね」
「ふむ。まずはパイ生地だな。冷蔵庫にある角切りのバターと薄力粉・強力粉をこのボウルに入れろ」
 レシピ片手にボウルを指さすポーズがさながら魔術召喚のようだ。
 ポーズと態度に不釣合いな三角巾とエプロン姿に思わず笑いそうになった千代は、頷くと冷蔵庫にパタパタと足早に向かった。

(料理は作るが、菓子はあんま作ったことねぇんだよな……)
 レシピを睨み、高原 晃司はうーんと唸る。
「たしか分量が命ってのは聞いたことあるぜ」
 幸い、ほぼすべての材料は計量済みだった。
「あとはオーブンの温度と焼き時間を間違えないようにしなきゃな」
 ひと通りの作業の流れを叩き込み、晃司は気合を入れると早速カボチャを蒸す作業に取り掛かった。
 その間にプリンとケーキの型の準備を整える。プリン型にはバターを、ケーキ型にはクッキングシートを。
 その時、ナオが、
「当然ひとりじめじゃなくって、今回のお菓子はお二人で召し上がるものですよね。食べてもらう人のことを考えながら作ると、美味しくなりますよ~。だって大好きな相手ですからね!」
 と教壇の方から誰にともなく声をかける。
(食べて貰う人……アインだな、うん)
 もちろん、晃司は精霊のためにお菓子をつくるのだ。チロリと隣で作業工程を物珍しそうに眺めているアイン=ストレイフを見やり、晃司は心のなかで頷いたものの、
「べ、別に好きとかそういうのじゃねぇ……」
 頬を赤くし、ぶつぶつと呟きながら晃司は蒸しあがったカボチャをマッシャーで潰していく。
(ただ、世話になってる礼だ。お、男が男に恋をする訳ねぇだろ!)
 ウガーッと心のなかで叫びながらも、手つきは丁寧な晃司である。
 ほう、とばかりに晃司の顔の変化に目ざとく気づいたアインだが、
(それにしても晃司は誰に上げるのでしょうね? もしかすると既に彼女とかできててその方に上げるのでしょうかね?)
 と見当違いなことを考えていたのであった。

「買ったほうが旨いのに……そんなに欲しいのか。お菓子大好きテイルスだったんだな」
 くすくす笑いながらアキ・セイジは、かぼちゃプリンのカラメルソースを作っている。
 以前、プリンが盗られた時もしきりに気にしていたヴェルトール・ランスを、すっかり甘味に目のない奴だと思って、微笑ましい気持ちなのだ。
(プリンはセイジと食べたかったんで気にしてたんだけどな……。ま、今更言うのも恥ずかしいし、菓子好きなのも本当だから、いいか)
 それにセイジが笑っているなら、それでいい。ランスはクッキー生地をヘラでまとめながら、内心で納得をつける。
 なんとかここまではうまくできた。普段ヘラもボウルも触らないので、手つきがぎこちないのはしかたがないだろう。
 あちこちにくっついて広げにくいラップフィルムに悪戦苦闘しながらも、なんとか生地を包み、冷蔵庫にしまいこむ。
 そうやってランスがラップと格闘中の間に、ランスはこっそりと粉砂糖とアーモンドプードル、牛乳を練っていた。出来上がったマジパンで、あるものを包む。
 そして冷蔵庫へと向かったランスの目を盗み、セイジは型に流し込んだプリン液の中にマジパンをそっと沈めた。

●オーブンに任せよう
 クッキーの生地が十分落ち着いたようだ。冷えた生地を、クッキーを作る者が、それぞれ作業台の上で薄く伸ばしていく。
 クッキーを冷やしている間に見繕った抜き型を、鼻歌交じりに生地に当てては天パンに並べていく叶。チラッと桐華の作業の様子を覗くが、案外楽しげにこなしている。
 桐華は料理が苦手だが、ある意味混ぜて焼くだけのケーキなので、煮物などの料理に比べれば簡単な部類なのだろう。
 それに――桐華は、叶に優しい気持ちを抱いていた。
 わがままを言ってくれることが嬉しい。出来上がれば、素直に喜ぶだろう。その顔も微笑ましい。
(世話のやける、でかい子供め)
 年上相手だが、拗ねた叶を相手にするのは面倒な反面、少し楽しい。
 予熱を済ませたオーブンに生地を流し込んだケーキ型を入れれば、桐華の仕事の大方は終了だ――焦がさなければ、だが。

「……なかなか難しいな……」
 もたもたしていると、打ち粉をしているのに麺棒や手に生地がベトベトとくっついていく。
 ランスが困っていると、プリンをオーブンの中にいれたセイジがアドバイス。
「一旦冷やすといいぞ。バターが溶けてきているんだ」
「なるほど!」
 素直に感心し、ランスは生地を冷蔵庫に戻す。
 もともと段取りは苦手な方ではないランス、次は素早くやればよいと作業の軌道修正を行った。

 どうにかこうにかプリンをオーブンに送り込めたハティは、ブリンドの仕事ぶりを観察する。
「猫だ」
「おう、ココア生地で黒猫だ。ハロウィンっぽいだろう」
 細いしっぽ部分を千切らぬように注意しながら生地を型から外し、天パンに乗せつつブリンドは返事をした。
 ハティが作りすぎた蒸しカボチャは、クッキーに無理やり練りこんだ。型もカボチャの形である。
 看板に偽り無し。結果オーライだ。
 天パンの上に楽しげな形が次々とのっていく様子に、ハティはワクワクしてきたらしく、
「俺もプリンの表面に何か施したい」
 と言い出す。
「これ使うか?」
 ブリンドは余っていたココアパウダーをハティに差し出した。

 プリンとケーキをオーブンに任せた晃司は、フゥと息を吐く。あとはうまくオーブンがやってくれるだろう。
「いつの間にか料理が作れるようになっていたんですね」
 思っていた以上に手際よく二つものお菓子を作った晃司に、アインは舌を巻いた。
 いつまでも晃司は子供だと思っていたが、知らぬ間に自分には出来ない料理が上手になっていて、アインは面映い気持ちになる。
「ん、まぁな。普段の料理くらいなら……」
「いつもコンビニでのお弁当でしたし、朝もお互いに仕事で忙しいですし……正直、晃司が料理を始めてたなんて気が付きもしませんでしたよ」
 素直に賞賛するアインに、晃司はくすぐったそうに身をすくめる。
 そろそろ甘い香りがキッチンスタジオ中に漂い始めた。
 顔をほころばせた晃司だが、すぐに顔を引き締めた。
「い、いや、ここからが大事だよな。生焼けとか焦げたりしたら台無しだ」
 プリンの焼き加減を確かめるべく、竹串を手にオーブンヘと向かう晃司を、アインは優しく見つめていた。

 他の面々と違い、パイ生地からとりかかった千代達は少し遅れたものの、なんとか格子状のパイ生地で蓋をした、まるで絵に描いたような見事なパイを予熱済みのオーブンの中に入れる。
「四十分から四十五分、底まで火が通るまで焼けとのことだ」
 ラセルタが告げ、千代がオーブンを設定する。ピッと返事をして、オーブンが焼き工程を始めた。
「ふー。お菓子は滅多に作らないけれど、何だか楽しいね。ラセルタさんの貴重なエプロン姿も見られたし」
 ようやく終りが見えたパイ作りに、千代は安堵の息を吐き、ラセルタに微笑んだ。
 ラセルタは不思議そうに首を傾げる。
「俺様のエプロン姿を見ると何か良い事でもあるのか?」
「うん?」
 予想外の返事に千代は、一瞬きょとんとするものの、穏やかに笑った。
「知らない一面を発見出来て、単純に俺が嬉しいだけだよ」
 何を言うんだ、と呆れた溜息を吐き、ラセルタは意地悪そうに歯を見せた。
「その程度で喜ぶならとっておきを教えてやる。俺様のスリーサイズは上か……」
 千代が泡を食ってラセルタの口をふさごうとするのを、ラセルタはニュッと千代の頬を摘むことで止めた。
「冗談だ。本気にするな」
 そして手近にあった椅子をオーブンの前に据えた。
「俺様が指揮したパイだ。完璧で無くてはならない。万全を期すため、見届ける。お前はあちらで待っていて構わん」
 だが千代はもちろん首を横に振る。
「ふふ、完成が待ち遠しいのは俺も同じだからね」
 と隣に並ぼうとすると、ひゅるんとラセルタの黒い矢印のようなしっぽが千代の腰に巻き付いて、引き寄せた。
「……ならもっと此方に寄れ、見えないだろう?」
「う、うん……」
 千代は、近い! と思うものの、気にしすぎだったらまた誂われる、と気にしないことにした。

●綺麗に飾ろう
 部屋中にバターと砂糖の甘い香りが充満する頃、次々にオーブンが出来上がりを知らせた。
 千代達のパイはまだだが、コレにはデコレーションの必要がないから、実食のタイミングは同時になるだろう。
「上手に焼けてますよ~、次はデコレーションですね! 最後まで頑張って!」
 ナオがクッキーやプリン、ケーキ組を励ます。
「此処から先は、内緒だ」
 セイジはランスをグリンと回した。
「な、内緒と言われると気になるだろ、見せろよー」

 ハティは真っ黄色のプリンにボーダー柄になるように線状にココアパウダーをかけた。
 ブリンドがクッキングシートでマスキングしてくれたのだ。
「……ほっとくとお前、プリンにドサッとココアかけそうだからな」
 ブリンドがピシリと言うものの、ハティは返す言葉がない。そうなる気が自分もしたので。

 出来上がった黄色のケーキに、叶の作ったクッキーが山ほど刺さっていく。
 家や猫、お化けにカボチャ……。
 無造作に見えるが、黄色のステージの上に、ハロウィンの物語がファンシーに描かれた。
「ふふん、いい感じにデコレーション出来たね」
 とすっかり拗ねた態度は消え失せた様子の叶に、桐華は内心ほっとする。
 だが叶がひとつだけクッキーをケーキの上にのせず、こっそりもう一つの袋に隠したことを桐華は知らない。

 晃司は特にプリンやケーキに飾り付けはしなかったが、丁寧にラッピングを施していた。
「最後までキッチリ気合いれるぜ」
 黒の不織布に包んで、鮮やかなオレンジのりボンをきゅっと結ぶ。
 可愛らしいハロウィンプレゼントが出来上がった。
「ほほう、上手いものですな」
 アインは真剣な様子でラッピングに取り組む晃司を眺め、感心したように顎を撫でた。

●お口へ運ぼう
 香り高い紅茶が人数分のカップに注がれた。お疲れ様でした、とナオが労い、そして後はごゆっくりとばかりに退室する。
「これ以上長居したら、私、おじゃま虫ですからね~」
 と笑いながら。

「あ、アイン! い、いつも世話になってるから……よかったら食べてくれ!」
「!」
 ずいっと差し出された黒いプレゼントに、アインはあっけにとられた。
 まさか贈り先が自分とは思わなかったのだ。
「やれやれ……こういうのは女性にあげるものでしょうに」
 と肩をすくめながらも、アインはありがたくプレゼントを受け取る。
 そして紅茶を二つ取ってくると、晃司に言う。
「でも折角ですし、ここで食べてしまいましょうか。紅茶もありますしね」
 アインはラッピングを破かぬように綺麗に解き、まだ熱を持つケーキを切り分けていった――。

 パイの破片を散らしながらサクッと小気味良い音を奏で、千代の手でパイはラセルタにサーブされた。自分の分も皿に乗せ、千代はまずは自分が毒味、とばかりにフォークに刺したパイを口に運ぶ。
 熱々ホックリのカボチャの甘味とサクサクした香ばしいパイの食感がなんとも言えず美味だ。あまり甘くはないので、軽食として扱うことも出来るだろう。
 千代は味の感想を言おうとしたが、ラセルタは間髪を入れず千代の目を見つめて言う。
「千代、Trick or Treat?」
 そして口を開けてみせた。食べさせろ、というジェスチャー付きで。
「!」
 どぎまぎしながらも、千代は慌ててフォークに一口大に切り分けたパイを乗せる。
「ええ、と……は、ハッピーハロウィン……」
 照れながらも千代は、ラセルタの唇へとフォークを運んでいく。

「うん、うまい」
「そりゃ、きっちり材料は計量済みだし、レシピ通りなんだから食えないレベルにはならんだろう」
 プリンを飲み下し頷くハティに、ブリンドは憎まれ口を叩く。
 サクサクと黒猫クッキーを口に運ぶブリンドだが、内心はハティが失敗しなかったことに胸をなでおろしていた。ついでに包丁でハイになったハティによる惨劇が怒らなかったことにも安堵していた。
「リンのとトリックオアトリートしてくれ」
 ずい、とプリンの皿をブリンドの方に押しやり、ハティが言う。
「……それ言うならトレードな」
 何が言いたいのか分かるあたりがウィンクルムの絆だろうか。ブリンドはすんなりクッキーの皿をハティの前にずらし、自分はプリンを引き寄せた。

 プリンの上には白いチョコレート、チョコレートにはカラメルで愛らしいテイルスのミニキャラが描かれている。
「あ、これ俺? すげえ!」
 渡された箱から愛らしいプリンが登場し、ランスは目を輝かせた。
「食べてみてくれ」
 とセイジはスプーンをランスに手渡した。
 一口目でヒットするだろうか、そこまではさすがのセイジも計算できず、ハラハラとランスを見守る。
「うん、うま……」
 あれ? とランスはプリンを覗き込み、白いマジパンを掘り出した。
「これ?」
 中を見ろ、とセイジに促されるままマジパンを割ったランスは息を呑む。
「ちょ、これって……!」
 中に入っていたのは紫の石が施された銀の指輪。幻の龍アンウーの息吹が結晶化したと言われる高価なものだ。
 思わぬ発掘物に目を白黒させているランスに、セイジはもう一つの指輪を見せた。
「俺も……ほら」
 青い石の指輪――それは『アンウーの息吹』と対になり、魔力を受け渡すことが出来るという『サラリスの涙』。
「ディスペンサも使えるけどさ、そういうのじゃなくてもさ、これでいつでもつながって……いや、なんでもない……」
 もごもご、どんどんセイジは羞恥で語尾があやふやになっていく。
 普段から二人の仲は近いと感じていたが、それが形になって目の前にある。そんな気がして、ランスは思わず呟いた。
「そっか……俺たち繋がってんだ……」
 お互い指輪を嵌めてみる。キラキラ光る指輪が、今まで以上に二人を引き寄せる気がして、二人は思わず笑みをこぼした。

「クッキー多いな」
 ケーキの上に刺さったクッキー以外にも在庫がある、と袋を取り出した叶に、桐華はさすがに呆れた。
「お家に帰ってからも食べたいからね」
 ふふ~んと笑いながら、叶は袋に手を入れ、ゴソゴソと探っていたが、すぐに目当ての物を引き当てて、桐華の目の前に差し出した。
 大きなハートのクッキーだ。他のクッキーより数倍大きいため、焼きムラがあるようだが、叶は。
「焼き加減は気にシナ~イ」
 と笑い、言ってのけた。
「僕のでっかい愛を受け取るがいい!」
 桐華は、
「でっかい愛、ね……」
 と呟き、目を閉じた。やれやれ、と思う気持ちと、くすぐったいけれど嫌じゃない気持ちが胸に渦巻く。
 なかなか受け取らない桐華に叶が焦れる、その直前。とてもいいタイミングで桐華は目を開いた。
「これじゃ、まだ足りないだろ」
 そっとクッキーを受け取り、叶の唇に当てる。
 それからこれ見よがしに、叶の唇が触れた場所を齧った。
「今はこれで勘弁してやるよ。そのうち、お前のほうから出来るようになれ」
「ふぇ……っ」
 みるみるうちに叶の耳が充血する。
 そしてササッとテーブルの下に叶は潜りこんだ。まるで避難訓練のようである。
「おい?」
 と覗きこむ桐華に、叶はぷいと背を向ける。羞恥のあまり、微妙に震えているようだ。
「おい、……さらっと流すと思ったのに。照れるのか」
「うううるさい」
 蚊の鳴くような声で言い返される。
「こら、出てこい。潜るな」
 桐華がたしなめるも、二十七歳のいい大人な叶は動かない。
「悪かった、俺が悪かったから。ケーキ、食うんだろ」
 呆れ半分の声が、叶の頭上から彼を宥めてくる。
「あーんとか、お前好きだろ。してやるから、出てこいよ」
 うう~っと唸っていたが、ケーキも食べたいし、あーんも好きなので、まんまと釣り出される叶なのだった。
「言ったからには、ちゃんとあーんしてよね」
「わかったわかった」
 ぷうと頬を膨らませる叶に、桐華は頷く。
(どっちがオトナなんだか……本当に世話の焼ける、でかい子供だな)



依頼結果:大成功
MVP
名前:
呼び名:叶
  名前:桐華
呼び名:桐華、桐華さん

 

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター あき缶
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 男性のみ
エピソードジャンル コメディ
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 5 / 2 ~ 5
報酬 なし
リリース日 10月22日
出発日 10月28日 00:00
予定納品日 11月07日

参加者

会議室

  • [8]ハティ

    2014/10/27-22:04 

    ケーキ作ってくれるのか。いいな。
    そして誕生日プリンがすごそう。カラメルアートか。俺はココアパウダーで何か描けないかなと思ってる。
    ステンシル?みたいな手法で。
    リンもクッキーを作るみたいだ。失敗しても食えるものが残るようにだとか。
    …何としても成功させたい。

  • [7]叶

    2014/10/27-20:47 

    僕んとこは桐華さんにケーキをねだった!
    個人的にはクッキー作るつもりー。ナオさんが、豪華になっていいってお勧めしてるから!

    桐華、料理はあんまり得意じゃないみたいだけど、センスはどんなもんなんだろうなー。
    違う意味でも楽しみ。

    (キラキラのおめめ)
    プリンに誕生日プレゼントってなんかすごいロマンチック…!
    桐華さん、桐華さん、すっごくロマンチック!!

    桐華「やらねぇぞ」

  • [6]アキ・セイジ

    2014/10/27-17:29 

    俺はプリンでランスはクッキーかな。
    プリンの上にカラメルを細く搾り出してマンガ絵的なものを書く予定だ。
    カラメルアート?的な…。

    あと、誕生日のプレゼントに渡すつもりだったものを中に忍ばせることにしたよ。
    驚かせてやるんだ(くす

  • [5]ハティ

    2014/10/26-22:09 

    何作る?俺はかぼちゃプリン…に挑戦してみるつもりだ。
    プリンを作る人いたら参考にさせてもらうかもしれない。
    リンも何か作らないか誘ってみる。

  • [4]叶

    2014/10/26-01:34 

    こんばんわー。何だか先日ぶりな子ばっかりだねぇ、叶と桐華さんでっす。
    料理からっきしな桐華さんでも、アドバイス聞きながら頑張れば食べられないものにはならないでしょーって事で、
    手作りのお菓子をねだろうと思ってるところー。

    僕は初心者向けのお菓子作りを楽しむつもりだけど、時間余ったらみんなのとこ眺めてても良い?
    邪魔はしないからー。自分が普段お菓子作りとかしないから、どんな風に作ってるのか気になるの。

  • [3]ハティ

    2014/10/25-21:47 

    …ということはアキさんと羽瀬川さんは家事をするんだな。
    ハティとブリンドだ。よろしく。菓子を作るのは今回が初めてだな。
    道具は用意されていると聞いたが、調理スキルの本を持って行こうと思っている。
    用量用法を守ればきっと。

  • [2]羽瀬川 千代

    2014/10/25-00:49 

    こんばんは、羽瀬川千代とパートナーのラセルタさんです。
    どうぞ宜しくお願い致します。

    ふふ、ラセルタさんも基本的に家事をしない人だから気持ちは分かります(背後ちらと見遣り
    何を作るか迷いますね…それに、他の方と一緒に作っていくのも楽しそうです。
    楽しく美味しく、お菓子作りが出来たら良いなと思います。

  • [1]アキ・セイジ

    2014/10/25-00:22 

    アキ・セイジだ。

    スイーツ作りの経験を通して、
    うちの「家事をしない同居人」に家事を覚えてもらうというのはどうだろうか…
    (ランス「えー、んなこと言わずに楽しくやろうゼ」)

    ともあれよろしくな。


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