【ハロウィン・トリック】VS主人公補正(あき缶 マスター) 【難易度:普通】

プロローグ

●白雪殺せ
 タブロス中に広がっているトラオム・オーガの事件は、とうとうA.R.O.A.にまで犠牲者を出した。
 職員はウィンクルムたちを、医務室で昏々と眠り続けているアラフォーの女性の前に案内した。
「彼女は、うちの職員のメリッサ・オーガンだ」
 そして枕元においてある絵本をとり、ウィンクルムたちに見せる。
「絵本、つまり夢の内容は『白雪姫』。……有名だからいちいち説明しなくてもいいとは思うが」
 魔法の鏡が『この世で一番美しいのは白雪姫』と言ったから、嫉妬したお妃が白雪姫を殺しにかかる話だ。
 猟師に逃がされた白雪姫は森の中で七人の小人と暮らすものの、お妃が変身した老婆に渡された毒りんごを食べて死んでしまう。
 ガラスの棺に入れられた白雪姫だが、通りかかった王子のキスによって生き返り、王子と結ばれるのだ。
「結末をよく知らない者もいると思うから、そこだけ説明しておこう。王子と白雪姫の結婚式で、お妃は焼けた鉄の靴を履かされ、死ぬまで踊らされるんだ」
 職員は『白雪姫』の恐ろしいラストを説明し、
「……メリッサの寝言から恐ろしいことが分かった。どうやらメリッサはお妃様の役になってしまっているようだ」
 と、彼女がこのままでは窮地に陥ることを伝え、そして苦い顔で続けた。
「しかも白雪姫がオーガだ。メリッサはA.R.O.A.の職員として優秀だな。そこまでは突き止めて、寝言で我々に伝えてくれた」
 そこまで説明したとき、眠るメリッサが大声を上げた。
「ああ、王子がガラスの棺に近づく! やばいわ。せっかく殺したのに、オーガが目覚めてしまう!」
 それを聞き、職員も顔色を変える。
「このままでは、絵本通りメリッサが焼けた靴で踊りながら死んでしまう! 彼女が死んだら、現実世界のメリッサも石になってしまうんだ。時間がない! 急いでくれ!」
 この夢を解決するには二通りある。
 まず、メリッサにとってハッピーエンドになること。どう考えてもこの場合は、『この世で一番美しい白雪姫』を消すこと。
 そして、オーガを倒すこと。オーガは白雪姫だ。倒すべきは白雪姫である。
 つまりは、白雪姫を殺るしかない。
 ……だが白雪姫はこの絵本の主人公だ。
 主人公補正がバリッバリに効いている事は間違いないだろう。『悪いお妃』に与する立場になるウィンクルムに、夢の中の味方なんていない。

解説

●成功条件:白雪姫の抹殺

●敵:白雪姫以外は、神人でも有効な攻撃を与えられます。

 白雪姫(トラオム・オーガ)
  超絶ウルトラ可愛いお姫様。性格設定は、健気・純真・清純。
  お妃以外の登場人物は、彼女のことがだーいすき!
  姫本人は弱い。
   助けを求める:森の小動物を召喚する
   応援する:王子・従者・小人のいずれか1名を強化・回復
 
 王子
  姫にべたぼれの王子様。姫をかばう。
  レイピアを使って果敢に戦うイケメン。

 従者(1人)
  王子に忠実な家来。剣を使って王子と姫を守り抜こうと頑張る。
  王子より少し強い。

 小人
  斧やシャベル、つるはしで戦う小人達。姫のことが大好きなので命賭けて戦う。
  もちろん、七人いる。従者の半分くらいの強さ。

 森の小動物(小鳥・りす・うさぎ)
  姫が助けを呼ぶたび、召喚される。毎回、小鳥・りす・うさぎの3体。
  小人並みの攻撃をしてくるが、攻撃されると爆発して大ダメージを与える(ヤグルロムの幻と同様)
  3体が全滅するまで、次の3体が召喚できない。

●場面
 王子が姫にキスをして、姫が蘇った瞬間の場面からスタート。
 ぐずぐずしていると森を出てしまい、結婚式シーンになって、メリッサが焼け死ぬ。

●メリッサ・オーガン(38)
 A.R.O.A.職員のお局様。トラオム・オーガについての知識もある。
 夢の中ではお妃様になっている。
 魔法の鏡でオーガの正体を突き止め、寝言で現実世界に伝達した。
 お妃様の役を利用して、自力でなんとかオーガを退治できないか試行錯誤していたが、
 オーガの主人公補正でことごとく失敗している。
 今は、森の中に潜んで状況を監視中。

ゲームマスターより

お世話になっております。あき缶でございます。
絡め手を考えなくていい、純粋な戦闘ですね!
ウィンクルムは完全に悪役ですけれども!
まるで、餡子が詰まったパンに挑む菌のようです。
でも、菌のほうを応援したくなったりしませんか?
私はします。

あ、メリッサは放っといていいです。解決すれば勝手に目覚めますんで。

リザルトノベル

◆アクション・プラン

(桐華)

  かわいこぶってるだけのお姫様なんて可愛くないね
僕はもっと聡明で一生懸命な美人を知ってるよ

基本はクリアレインで小動物狙い
次の3体を呼ばれないよう、小動物が残り一体になったら攻撃対象を変更
小人が4人以上なら小人、以下ならお姫様狙い
上記>従者>王子で視界晦ませる機会と必要性があれば狙う

敵の爆発・味方のカナリアの囀りの範囲内に敵を巻き込ませたい
同じ範囲内に味方が入らないように注意、必要なら誘導を
伏せたり、敵を盾にしたりして、自分が巻き込まれないようにも注意

素早く動き出せる位置を常に探して、立ち回りに注意
お姫様に近い位置を陣取っておいて、逃げ出そうとしたら回り込みたい
無理でも他の子が追えるよう道を拓くよ



初瀬=秀(イグニス=アルデバラン)
  焼けた靴を履かせて踊らせるような奴が
果たして清純なのかと
つうか顔しか見てねえだろ王子そして従者も止めろよ
……おっといかん熱くなった
悪いが眠ってもらうぞ、次は永遠にだがな!

まずは姫を狙えるようにする為数減らし
小動物は1体だけ残して放置
遠距離で仕留められる奴に任せてこっちから手を出さない
小人>王子>従者の優先で狙う
数が減ってきたら敵を引き付けて姫へのガードを剥がす
最終的に姫さえ仕留めりゃこっちのもんだから全滅は狙わん

戦闘しつつ包囲するように立ち回り
できるだけ逃走経路を減らす
逃げられそうなら最優先で追いかけて移動妨害
ドレスで逃げ切れると思うなよ
アラフォーなめんじゃねえぞコラァ!
今だやれイグニス!!


アキ・セイジ(ヴェルトール・ランス)
  《パン籠》と同時に弓攻撃で敵の視界奪取を試みる

「その白雪は本物ではない」
樹を遮蔽物に、適宜位置取りを変え、小人や動物から順に射る
仲間と離れすぎないよう敵を包囲したい

「本物じゃない。魔物なんだ!」←嘘じゃない
説得が聞かなくても言葉で注意力を削げれば良いんだ

小動物の突進をうける形で抱き締め、フードに包んで矢で枝にフードを突き刺したい
生きたまま宙吊りにしたいのさ

敵数が減ったら「すり替わってるんだ」と更に主張
弓のタゲを姫に集中!(庇って当たっても慈悲は無い
「目を覚ませ」

姫が正体を現したら王子達にも加勢させたい
*メリッサが間に合えば更によし

・接近戦では小人の武器を拾って使う
・時計の”時間遡及”も適宜活用



セイリュー・グラシア(ラキア・ジェイドバイン)
  目的:敵の攻撃を分散させる!

白雪姫の事は精霊達に任せるぜ。
遠距離武器ないから小動物も他の人に任せる。
自爆に巻き込まれないように注意するぜ。

白雪姫は小人より王子やその従者を応援すると思うので(小人優先だと王子の立つ瀬が無かろう!)
王子やその従者を優先し攻撃。スポーツ特技も応用し勝負だ!
「愛の為に負けられない戦いがここにはある!」
冷静に敵の動きを見て敵の攪乱を目的に攻撃をする。
手足を中心に狙い戦闘力を奪うように攻撃するぜ。
こっちもそうされないように注意しながら攻撃。
「王子、お前は彼女の事何も知らないだろ?」
と王子を心理的にも揺さぶるぜ。
他の人複数から王子・従者が狙われている場合小人を標的にする。



瑪瑙 瑠璃(瑪瑙 珊瑚)
  レディファーストというわけではありませんが、
トラオム・オーガでも、お姫様を傷つけるのは躊躇うな。
けれども、任務は果たさなければ。

最初に小人を倒した後、王子を攻撃する為、珊瑚の援護に入ろう。

手薄だと思う小人は、オ・トーリ・デコイで誘導してみよう。
反応しない場合、小人の背後から接近し、攻撃を仕掛ける。

または、他の仲間が複数の小人から集中攻撃されている場合、小人の一人を背後から一文字に切りつけ、こちらに気を惹かせながら攻撃。

小人がまだ残っていたら、他の神人達の援護に回って戦う。
残りの神人達で倒しきれるなら、王子を攻撃しに行く。

その時、周囲に小動物が一匹でも近づいてくるようなら、即座に離れておこうか。



●白雪姫復活ッ!
 ガラスの棺に収められた、毒りんごを食べて息絶えた白雪姫。
 彼女の唇に王子様が唇を寄せるとなんということでしょう、白雪姫は息を吹き返したのです。
「ばんざーいばんざーい」
 七人の小人たちが跳ね跳んで喜びます。
「ああ、白雪姫。なんて麗しい娘さんなんだ。私とどうか結婚して下さい」
「……はい」
 はにかみ、嬉しそうに王子の求婚に応える白雪姫。
「わーい、王子様ばんざーい白雪姫ばんざーい」
 従者も二人の幸せに泣いて喜びます。
 そして白雪姫は王子様の国で、幸せに……。

「させるか」
 ザッと白雪姫を抱きかかえる王子の前に立ちふさがるウィンクルム達。
「その白雪は本物ではない」
 弓に先端が青く光る矢をつがえ、アキ・セイジは姫を睨め据える。
「王子様、怖いですわ……」
 怯えた顔で姫が王子に縋りつく。
「大丈夫ですよ、姫。私がお守りいたします」
 ずらりと銀に光る剣を抜き、王子はウィンクルム達を睨み返した。
 それを見て、
「王子、私もついておりますぞ」
 従者も槍の穂先を敵へと向けた。
 小人たちも先ほどまでの愛らしくのどかな様子はどこへやら、手に手に斧や鉈やシャベルやハンマーを持ってじりじりと距離を詰めてくる。
「メリッサ! 聞こえてるんだろ? 魔法の鏡を持ってきてくれ! こいつらに真実を告げるんだ!」
 ヴェルトール・ランスは森の茂みに向かって叫ぶなり、キャンディーワンドから火球を放った。
 甘い香りが森にふわんと広がるが、現れた魔法は可愛らしいものではない。小さな火球が白雪姫達の頭上で、まるで風船に空気が入るように膨らんでいく。
 がさがさと遠くの茂みが揺れたので、ランスの声はメリッサに届いたのだろう。彼女の鏡が間に合うかどうかは未知数だが。
「なんてこった、こいつらは悪いお妃の手下だ!」
 ランスの言葉を聞いて、小人たちが色めき立つ。挑発には十二分だったようだ。
 どちらが正義か悪か……主人公を討つべく、『現世の正義』が『童話の悪』となって主人公とその仲間たちに襲いかかる――!

●黒檀のように黒き破壊者
「こんなちゅらかーぎーがオーガ?! くそー! 夢なら醒めてくれー!」
 話には聞いていたが予想以上の姫は愛らしさだ。思わず助けてやりたくなる。瑪瑙 珊瑚が頭を抱えて顎を落とす。
「……レディファーストというわけではありませんが、トラオム・オーガでも、お姫様を傷つけるのは躊躇うな」
 瑪瑙 瑠璃も眉根を寄せた。しかし、このまま見逃す訳にはいかない。ウィンクルムは『白雪姫』の狩人のように獣の心臓を持って帰る訳にはいかないのだ。
「けれども、任務は果たさなければ」
 短刀を鞘から引き抜けば、青く光る刀身があらわになる。瑠璃は迷わず小人へ踊りかかる。
 ガギィンッと大きな音を立てて、短剣と斧が組み合った。ギギギと押し合う。瑠璃のほうが身長が高いから、鍔迫り合いも体重をのせられる分有利だ。
「くっ、なんと暴力的な連中だ……」
 従者が槍を持って、瑪瑙コンビに襲いかかろうとする。だが、槍を双剣が挟んだ。魚を思わせるダガーを容赦なく槍に押し付け、桐華は無言で槍をひねる。
「うぐっ」
 従者が桐華との戦闘に集中せざるを得ない状況になっているのを見計らい、珊瑚が王子の背後に回ろうとし……、切っ先を顔すれすれに突きつけられた。
「っと、勘のいい王子様さー」
 双剣の左で剣を上に弾き、空いた下半身へと右を差し込む。
「いいよー。桐華、その調子。みんなと一緒に頑張ってね」
 飄々と精霊の働きを褒めた叶は、セイジと同じ弓を構え、時を待っていた。
「いやあっ、誰か助けてくださいましっ」
 と白雪姫が叫び、森から三匹の愛らしい小動物が現れるこの時を。
「来たね」
 すぐさまリスに矢を当てる。だが一撃で倒せるほどの威力はなかったらしい。リスはキキッと鳴くだけで、爆発も倒れもしなかった。
「うーん……まぁ、しょうがないか」
「動物は任せたぜ。俺の相手はこっちだ!」
 と、叶の肩をポンと叩いたセイリュー・グラシアが持つ日本刀は長い。セイリューの背丈ほどもある長刀だ。その刀『長月』をブンと振る。
「くっ」
 敵もさるもの、身を反らして刃を避けた王子はその動きのまま流れるようにセイリューへと剣を刺す。カウンターの刺突が見事に決まり、セイリューの腰に深く刺さる。
「ってぇ! でも、愛の為に負けられない戦いがここにはある!」
「んじゃ、まじゅんゆいまーるーといくかね」
「ああ!」
 痛みをぐっと我慢し、セイリューは珊瑚と共に王子と剣を交え始めた。二対一、王子が押され始める。
「殿下ぁ! くっ」
「よそ見していると、痛い目にあうぞ。……助太刀させるわけには行かないんでね」
 従者が王子を心配そうにみやると同時に桐華のダガーが従者の心臓を狙う。あいにくダガーは刺さらなかったが、かすって血を流させることには成功した。
 小人たちが姫を守る王子や従者を助けようと、セイリューや瑠璃、桐華に向かう。
 小さな男たる彼らの刃は、ウィンクルムの足を傷つけるには格好の位置にあった。
「くぬひゃー、やっけーな小人さぁ! 考えることは同じってか」
 珊瑚がうっとおしそうに小人を蹴る。彼も王子の膝を狙ってバランスを崩そうと考えていたので、全く同じことを敵からやられていることになる。
「ああ、セイリュー……。でも、俺には俺の役目が……」
 傷つく神人を見て、痛そうに目を伏せるラキア・ジェイドバインだが、複数の光輪を自らの周囲に浮かべると素早くランスの前に立つ。
「白雪姫を倒せば他の敵を殲滅する必要は無いんだから……。頼むよ、ランスさん」
 と緑の瞳がエンドウィザードのテイルスをとらえるなり、ランスの詠唱が終了した。
「任せとけ。パン籠を喰らいな!」
 姫の頭上で膨らんでいた火球が姫へと降っていく……が。
「キキィッ」
「チチィッ」
「キッ」
 小鳥、リス、ウサギ……姫が喚んだ動物たちが姫の頭上へと飛び上がり、炎を受け止め爆発して散っていった。
「ああっ、動物さん達が……!! ああぁ……」
 悲しそうに泣き伏せ、姫は森の仲間達の犠牲を悼む。
「大した演技力だ。この後、妃を焼けた靴を履かせて踊らせるような奴が果たして清純なのかと」
 ぶすっと面白くなさそうな顔で、姫の泣いている姿を見ていた初瀬=秀はそう吐き捨てると、フライパン片手に小人に殴りかかる。
「主人公補正とか知りませんね。勝った方が主人公ですよ。お覚悟を!」
 イグニス=アルデバランのワンドから飛び出したプラズマが、上空で破裂し、姫や王子、小人の一部を弾いていく。
「全く……若くてかわいくて性格いいとか罠ですよ、罠! そんな都合のいい人間がその辺に転がってれば苦労しませ……」
 イグニスは睨んでくる小人たちを認め、慌てて付け足した。
「って秀様が言ってました!」
「言ってねえ! 俺に矛先向けるな!」
 すかさず秀のツッコミが飛んでくる。

●血のように赤き維持者
 がぁがぁと鳴きながら、戦場をうろうろするぜんまい仕掛けのアヒルさん『オ・トーリ・デコイ』。瑠璃が放ったものだが、既に相手が何者か分かっている状況では、誰もアヒルにはひっかからないらしい。そもそもこの森の生き物は全て白雪姫の味方なのだから、アヒルがうろうろしていても不審とも危険とも思わないようだ。
 珊瑚とセイリューは小人の妨害を受けつつも、なんとか王子を追い詰めていく。
 邪魔しようとする従者は桐華が阻止する。攻撃を華麗にタップのような足さばきで避けるも、前後で別々の攻撃を挟み撃ちされると、さすがの桐華でも辛いものがある。
「なかなか乱戦だねぇ……」
 再び姫が喚んだ小動物の小鳥を、なんとか撃ち落とした叶は溜息を吐いた。ウサギはイグニスがワンドから放つ魔法で倒してある。リスは次の召喚を阻止するべく放っておいてあるが、先ほど同様、姫の盾となって死ぬ可能性があるから安心はできない。
「なぜ姫を倒そうとするんじゃ! お妃の娘じゃろうが!」
 小人がギャアギャアとウィンクルムを非難しながらシャベルを振り回す。すっかりお妃の手先だと思い込んでいるのだ。妃役のメリッサを救うために戦ってるので、あながち間違いではないが……。
「お姫様は秀様だけで十分なのですよ!」
 小人めがけて魔法弾を放ち、イグニスは勝ち誇ったように言う。
「ええい。恥ずかしい話、ドヤ顔ですんな、イグニス!」
 秀は思わず顔を真っ赤にして叫ぶも、イグニスは心底なぜかわからないと言うふうに首を傾げる。
 白雪の頭上に甘い香りを伴って魔法陣が浮かぶ。
 ランスの魔法は、相手を追いかけ熱線を投射し続けるものだ。
 リスが盾になったが、リスを焼き殺してもなお、魔法陣は浮かび続けた。
「セイジ!」
 すかさずランスが神人を呼ぶ。倒れた小人から奪ったハンマーを振り回していたセイジがランスに駆け寄り……そして、ぶすっと命じた。
「かがめ、届かない」
「おっと、悪い」
 腰を折るセイジの額に、ランスの唇が当たる。力が注ぎ込まれて、みなぎっていく。
 その感覚が、ランスは嬉しい。セイジの力を受けて戦えるという感覚が。
 微笑すら浮かべるランスの前、ずっと反撃するバリアを張っていたラキアが悲鳴をあげた。
 ラキアの視線の先には、倒れ伏すセイリュー。
 姫の応援を受け、雄々しく立ち上がった王子が、
「悪いお妃の手下め! 正義が成敗してくれる!」
 と剣をセイリューに袈裟懸けに振り下ろしたのだ。
「違う。正義じゃない。その白雪は本物じゃない。魔物なんだ!」
 セイジが怒鳴る。
「悪者が何を言う。姫を悪くいうことは許さんぞっ」
 小人が怒り狂って、セイジに鉈を振り下ろした。ランスに力を分け与えた反動で動きがにぶっているセイジに、鉈は薪割りがごとく見事に当たる。
「目を……さま、せ……」
 ゆっくりとセイジが崩れ落ちた。
 目の前で神人に致命傷を負わされたランスの顔が怒りに染まる。しかし詠唱を止める訳にはいかない。ラキアもセイリューに駆け寄りたいのを抑えて、ランスの護衛を続けているのだ。自分だけ我を忘れることはできない。
「やってくれるじゃねーか!」
 代わりに鉄槌を下したのは、秀のフライパンだった。もう二度と動かない小人を見下ろし、
「アラフォーなめんじゃねえぞ、コラァ!」
 気を吐く秀である。
「……早く。ランスさん」
「わかってる!」
 ラキアの低い怒りのこもった言葉に、ランスは苛立ちを隠さない大声で返した。詠唱の時間がこんなにもどかしかったことはない。
 神人はどうしても精霊に比べて力が弱い。長丁場の消耗戦を強いられたが、小人は既に壊滅状態、残るは従者と王子だけ。
 セイリューを倒した王子は、鬼神のような猛烈な剣戟で珊瑚を圧倒する。瑠璃が加わるも、小動物を呼ばずひたすら応援を続ける姫の力で、まるで王子は不沈艦のようだ。
「がんじゅーな、いきがさぁ」
「そうだな、なまら頑丈だぁ」
 瑪瑙の二人は、息を切らし、互いの里言葉で言い合う。お互い、もう限界に近い。次、一撃くらえばセイリューの隣に転がることになるだろう。
 桐華は手練の従者の抑えで精一杯だった。
(姫を狙う余裕は与えちゃくれないか……)
 従者のめまぐるしい刺突を時に受け、時に避けながら、桐華も両手のダガーで無数の刺突を返す。
 範囲攻撃の内側に引き寄せるという思惑すら十分にさせてもらえない。
 むしろ……。
「とどめィ!!」
 桐華の胸を貫く槍の柄を伝う赤。
「さすが、王子の従者だけあるな」
 桐華は口から一筋血を流し、とうとう従者の実力を認めて落ちた。
「それが私の殿下への忠義だ! ぎゃああああっ」
 と叫ぶ従者の目に青い矢が刺さり、従者は後ろにバッタリと倒れる。
 断末魔を聞き、矢の主である叶は溜息を吐いて、
「一矢は報いたよ。よく頑張ったね、桐華」
 と小さく呟いた。
 なんとかランスの熱線魔法陣を耐え切った姫。攻撃力は皆無でも、体力だけはあるらしい。これが物語の根幹をなす主人公の力だろうか。
「つうか顔しか見てねえだろ王子! 姫には悪いがもう一度眠ってもらうぞ、次は永遠にだがな! イグニィス!!」
「はいっ」
 満を持して、イグニスのワンドが姫の心臓を焼く力を放つ。
「きゃあっ」
 姫の愛らしい悲鳴を聞きつけ、王子は瑠璃に振り下ろそうとした剣を放り投げ、姫の方に身を投げだした。
「射線が……!」
 秀が目を見開く。
 強烈なエナジーを肩代わりした王子は胸を焼かれ、
「ひ、め……にげ……て」
 ぶすぶすと煙を吐きながら息絶えた。
「王子様ぁっ、王子様あああっ」
 聞いているだけで胸が苦しくなるほどの慟哭をあげる姫だが、そんな声に惑わされるほど心に余裕のあるウィンクルムは一人も居ない。
「かわいこぶってるだけのお姫様なんて可愛くないね。僕はもっと聡明で一生懸命な美人を知ってるよ」
 という叶の口調は軽くとも、声は低い。
「ランスさん、終わらせて」
 ラキアの絶対零度の声にかぶせるように、ランスが怒鳴る。
「わかってるって!! セイジに貰った力で、終わらせる!!」
 再び姫の頭上に熱線を放つ魔法陣が出現する。
 慟哭をピタリとやめ、慌てて森に逃げ込もうとする白雪姫だが、無駄だ。魔法陣は何処へ逃げても対象を追いかける。姫がどんなに泣き叫び、走り回ろうと、容赦はしない。
 燃えていく可憐なる姫君。彼女のまわりには複数の死体が転がり、さながら地獄絵図だが、それを見届けるウィンクルム達は心すら揺るがさない。
 誰も彼もが、姫が耐え切った場合に備えて、武器を構えたままだ。
 しかし、オーガもここまでだった。王子に重なるように姫は炭になった。
「正義が勝ったぜ、セイジ」
 キャンディーワンドを下ろし、ランスは動かないセイジに向けて、声をかけた。
「セイリュー!」
 ラキアがマジックブックを乱暴にとじて、神人に走り寄ろうとする。
 その瞬間、世界が崩れていく。真っ白な光に包まれていく。
「待って、セイリュー。セイリュー!!」
 ラキアの白い指が、セイリューの血に塗れた髪に届いたと思った途端、ウィンクルムらの意識は『白雪姫』の世界から現世へと放り出された。

●雪のように白き創造者
「成功したようだな! 君たちならやってくれると思ってたぞ!」
 A.R.O.A.職員が喜色満面の声をあげ、ウィンクルムは夢から目覚めた。
 目の前のベッドの上には、上半身を起こしたメリッサが座っている。
「お疲れ様でした、そして本当にありがとうございました。……鏡が間に合わなくてごめんなさい。城が遠い上に、作りつけだったもので……外すのに難渋してまして」
 と深々頭を下げるメリッサ。
「いや、一緒に戦ってくれたことは変わらない。ありがとう」
 セイジがメリッサをねぎらう。その様子をランスは微笑ましく見守る。
「セイリュー、よかったぁ……どこも痛くない?」
 きょとんとしているセイリューに、ほっとしたラキアが尋ねると、体のあちこちを見回した彼は不思議そうに頷いた。
「夢みたいに平気だぜ。まぁ夢だったんだけど……」
「そう……ああ、夢で本当に良かった……」
「おっと、大丈夫か?!」
 ほっとしすぎて倒れそうになるラキアをセイリューが慌てて支える。
「ぎりぎりだったな」
 肺腑の底から吐き出すような溜息を吐き、瑠璃は珊瑚に言う。珊瑚も素直に頷いた。
「いっぺーちゅーばーな相手だったさぁ」
 叶は、傷ひとつ無い胸を不思議そうに見下ろしている桐華に微笑みかける。
「頑張ったね。あ、ちゃーんと仇はとっといたからね。僕が」
 これで、とクリアレインを握って見せる叶に、桐華は頷く。
「……夢だったけど、桐華さんや他の子が倒れていくのを見るのは、…………きついね」
 言葉を選んで選んで、叶は『きつい』と形容した。
「なんだかんだで姫を倒すまでに全員倒しちまったな」
 結果オーライだが、と秀は頷く。
「ふふ、でも勝ててよかったですね。ええ、お姫様は秀様だけで十分です」
 安堵したように頷きを返すイグニスが、もう一度あの恥ずかしいセリフを言ったが、
「~~~~ッ」
 今度は、イグニスを秀は睨むだけにとどめておいた。なんだかんだで恥ずかしいが、嫌ではなかったから。



依頼結果:成功
MVP

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター あき缶
エピソードの種類 アドベンチャーエピソード
男性用or女性用 男性のみ
エピソードジャンル 戦闘
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 普通
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 5 / 2 ~ 5
報酬 通常
リリース日 10月17日
出発日 10月24日 00:00
予定納品日 11月03日

参加者

会議室

  • [23]瑪瑙 瑠璃

    2014/10/24-00:00 

    ありがとうございます。
    明日はお互い頑張りましょう。

  • [22]叶

    2014/10/23-23:57 

    わぁい、ご意見ありがとうー。
    イグニスんとこの魔法、当たるように射線開けれるよう桐華にお願いしとくね
    瑠璃君とこの珊瑚君が王子なら桐華には従者寄りに動いて貰う方が効率的かな。超特急で仕上げてくる!

  • プランは出せた。
    後はうまくいく事を祈るばかりさ!

    相談諸々、皆さんお疲れさまでした。

  • [20]瑪瑙 瑠璃

    2014/10/23-23:53 

    すいません、簡潔にお話します。
    自分は小人を倒した後、王子様を攻撃しに行く予定です。

    珊瑚は王子様を背後から奇襲しつつ、向こうからの攻撃をオブリガードで反撃。
    王子様を倒したら、白雪姫へ攻撃の機会を伺っているそうです。

  • [19]瑪瑙 瑠璃

    2014/10/23-23:42 

  • [18]初瀬=秀

    2014/10/23-23:39 

    ぎりっぎりで何とか顔だせた…

    うちは俺が基本小人で姫が逃げそうなら逃走阻止。
    神人の攻撃は姫には通らないっぽいからあくまで移動妨害だな。

    イグニスは初撃でカナリアを姫を確実に巻き込むようにぶっ放して、
    以降は隙あらば姫を狙いつつ射線が通らなきゃ弱った敵狙って数減らしって感じか。
    スキルはカナリアと乙女の恋心Ⅱ、両方1発ずつなんで
    全部姫狙いで当てていくつもりだ。

  • [17]叶

    2014/10/23-22:47 

    ぎりぎりまで調整はするよー。
    桐華さんには王子と従者、どっちかフリーの子をってお願いしてるよ。
    …ので、みんなどの辺狙ってるかーっての把握できると、フォローしやすくて結構嬉しいなーって思うんだけど、
    教えて貰うわけにはいかない?

    僕は小動物基本の、ラストワンで対象切り替え。
    4人以上なら小人、以下ならお姫様>従者>王子くらいで逃走防止と目晦まし狙い
    桐華さんは前述通り、従者か王子のフリーな方。流石に二人一片は無理だしね。
    詠唱中の子の補佐と、範囲攻撃の巻き込み誘導と、逃走防止と…
    色々注文つけてあるから、そん中で特にこれして欲しいーってのあったら優先するよ。

  • [16]叶

    2014/10/23-22:40 

  • [15]アキ・セイジ

    2014/10/23-20:54 

    プランは出せている。
    うまく行くといいな。

  • [14]叶

    2014/10/23-13:22 

    飛び道具持ってないから探してくるねーって言った矢先に飛び道具拾ってきたから一個前の発言消しました。
    クリアレイン拾えたから、僕も小動物対応できるようになったよ。
    …個人的な好みだけで言うなら、桐華さんとお揃いでメインとサブの二本持ちしたいんだけど…(ごにょ)

    桐華の方は、サポート的な事なら幾らでもできるから、ご注文あれば言ってくれると幸い!
    とりあえずは王子か従者あたりの前でちょろちょろして、妨害とか体力削りして貰おうかなぁって思ってる所だよ
    姫の傍から引き離すよりは、カナリア使うならあえて近くで巻き込ませた方が良いかもね

  • [12]初瀬=秀

    2014/10/23-04:21 

    あー、俺も飛び道具は手持ちにはないな……
    小人のどれかをコネクトハーツかフライパンで殴ってる予定。
    エンドウィザード2人いるし、イグニスはカナリアでの範囲攻撃を狙っていこうかと。
    姫を対象にすれば王子やら従者も巻き込めるかね?

  • オレ達は遠距離武器持っていないから
    その辺のコトは遠距離武器持っている人に任せた!
    小動物わざと1匹残すの事、了解したぜ。

    ラキアが攻撃するには
    シャイニングアローⅡでのカウンター攻撃になるので、
    白雪姫の対処は他の人にお願いしたい。
    (攻撃してこないと反撃も出来ないから)
    王子か従者、小人あたりと・・・かな?
    ランスさんの魔法詠唱中の護りは任せろ!

  • [10]アキ・セイジ

    2014/10/21-21:29 

    初瀬さんの言う「逃がさないこと」も大事だというのに同意、その辺注意して位置取りするよ。

    俺の弓の初撃は戦乱になる前に撃つ。
    相棒のランスは《お日様と散歩》(タゲを3R追尾してダメを与え続ける攻撃魔法)を主に使う。
    詠唱中は無防備になるの彼はラキアさんの近くにいると思う。

  • [9]叶

    2014/10/20-21:49 

    改めましての叶と愉快な桐華さんだよ。
    結構久しぶりだったり密かに初めましてだったりする子もいるけど、宜しくねー。

    目覚めた直後って事は…最初は森の動物たちは居ない状態なんだよね。
    ん、ん、最初から姫様真っ直ぐ狙えれば狙いたいところだけど、
    王子が間違いなく傍に居るだろうし、小人も近い位置に居そう―って思うと、
    せめて小人の半分くらいまでは数減らさないと狙いにくそうかなぁって印象。
    長期化するのも考え物だし、倒す順番が大事になりそうー?

    小動物には飛び道具で攻撃して、次を出されないために最期の一体は残しておけたらってのに同意―。
    あわよくば敵同士の巻き込み事故とか狙えたら楽になるかな。
    とは言ったけど、エンドウィザードの子の魔法使うよりは、弓持ってる神人にお任せした方がお得かな。
    折角の魔法、出来るなら強い従者か厄介な姫にぶつけて欲しい!

    後は、姫を狙ったら小人や王子が庇ったりするなら、わざと庇わせて動きを制限できるかもーとか、
    具体的にどうとは考えてないけど、そう言うのもできるのかなっておもってるところー

  • 白雪姫さえ仕留めれば他の個体は仕留める必要がないよな。
    小動物は自爆もあるから、それも注意しないと。

    白雪姫が蘇った瞬間からスタートなら、
    小人の家にある(ありそうな)物品は使えるかもしれない。
    白雪姫の口から転がり出た毒りんごとか。
    家具・家財とか?

  • [7]初瀬=秀

    2014/10/20-18:49 

    テンペストダンサー×2
    エンドウィザード×2
    ライフビショップ×1
    遠近回復とバランスよくそろった感じか?

    戦力比はこっちが10人、向こうが13体。
    強さ順で並べると
    従者>王子>小人×7(従者の半分程度の強さ)=小動物(召喚制限・爆発)>姫
    ってとこか。
    小動物はわざと1体残しときゃそれ以上は増えないかね。

    ともかく数を減らすのと、姫に逃げられないようにするのが肝心か。

  • [6]瑪瑙 瑠璃

    2014/10/20-01:12 

    ‥‥‥皆さん、お疲れ様でした(※参加者の競り合い的な意味で)。

    シルビアさん、海牛、青色食堂でお世話になりました。
    瑪瑙瑠璃です。今回もよろしくお願いします。

    回復されて長丁場化されること考えたら、お姫様を取り囲んで先に倒したいですね。
    小動物は飛び道具で攻撃といった所でしょうか。

  • [5]アキ・セイジ

    2014/10/20-00:47 

    アキ・セイジだ。よろしく。

    相棒はウイズのランス。
    しかし敵の数が多いな。それも何とかしなくては。

  • [4]初瀬=秀

    2014/10/20-00:36 

    大激戦を見た気がする。初瀬と、相方のエンドウィザードのイグニスだ。
    大体同席したことがあるかね?よろしくな。

  • [3]叶

    2014/10/20-00:35 

  • [1]瑪瑙 瑠璃

    2014/10/20-00:14 


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