シェイカーとサイフォンで夜景を(あき缶 マスター) 【難易度:とても簡単】

プロローグ

●休日前の夜を過ごす
 タブロスのA.R.O.A.本部から数本通りを挟んだ先にある飲食店ビルの最上階テナントに、バールが入ったらしい。
 店の名前は『コレット』。
 どちらかといえばバーに近い小さな店で、ポブルスのバーテンダーとディアボロのバリスタ、ウェイトレスの三人でやっているそうだ。
 出来たばかりでまだ客は少ないが、行った者によればつまみの類は少ないものの、ドリンクに関しては味、種類共にピカイチだという。
 口コミが広がれば、きっと人気店になるだろう。
 また、窓に面したカウンターからは、高速道路が見えて、夜は車がまるで天の川のようだという。
 バールのあるビルは十階建てで、都会の喧騒からも離れているから、タブロスの夜景を見ながら静かな大人の時間を過ごすにはもってこいだろう。

 飄々としたバーテンダーは、客のイメージに合わせたオリジナルのカクテルを作るのが趣味だそうだ。
 バリスタは粗暴そうな外見の割に、愛らしいラテアートが得意だという。
 あと、噂ではこのバーテンとバリスタ、恋仲だとか……。

 君はバールに興味を抱き、パートナーを誘って行ってみる事にした。
 席は、夜景が楽しめる窓際カウンターと、向かい合って話し込めるテーブル席、そしてバーテンダーやバリスタと話を楽しむカウンターがあるのだそうだ。
 つまみが少ないとのことだから、どこかで夕食は済ませておくとしよう。
 店は、明け方までやっているということだから、おしゃれな夜を楽しむとしようじゃないか。

解説

●概要
バールで大人な夜を楽しむ
飲食店のみが入っている雑居ビルの最上階(10F)に出来た小さなバール『コレット』
店内はバーカウンター以外は間接照明を使用しており暗いため、
大きな窓から夜景が良く見え、眼下には眠らない高速道路がある

●料金表(単位は全てジェール)
・チャージ料
 窓側カウンター 30
 2人掛けテーブル 20
 バーカウンター 10

・ドリンク
 アルコール 60
 ノンアルコール 50

 ラテアート(応リクエスト) 70
 貴方だけのオリジナルカクテル 80

・フード
 ナッツ 80
 チョコ 80
 チーズ 80
 サブレ 80

●店員
・バーテンダー:アドニス(26)
 黒髪赤目白肌のポブルス
 話好きで飄々とした綺麗系お洒落男
 実はシャルルとは恋仲

・バリスタ:シャルル(25)
 金髪茶目普通肌のディアボロ
 粗暴そうだが可愛いもの好きで思いやり深いカッコいい系男子
 実はアドニスとは恋仲

・ウェイトレス:ミキコ(22)
 茶髪黒目普通肌の女の子
 空気の読める可愛い系女子
 アドニスとシャルルの仲を応援中

●注意
 未成年の飲酒喫煙は禁止です!
 プランには、必ず席を明記してください

ゲームマスターより

お世話になっております。あき缶でございます。
相談期間は短いですが、ゆったりしたおしゃれな時間をどうぞ。
飲みながら、店員に恋の相談なんてのもいいかもしれません。
カクテルには各種ジュースや紅茶を使うので、ノンアルコールも充実していますよ。
ちなみにバリスタとバーテンダーは語源はどちらも「バーで働く人」だそうです。

リザルトノベル

◆アクション・プラン

初瀬=秀(イグニス=アルデバラン)

  窓側カウンターでゆっくりと
一応同業だからな、ついでに勉強させてもらおうか
俺はラテアートを注文
そうだな……(隣を見て)こいつのイメージの動物で
(無茶振りしたかな、と笑いつつ)
おいイグニス、お前酒……あぁそうか、成人だったなお前
俺からすりゃ充分子供だ
大人扱いしてほしいなら日頃の行いを振り返ることだな?
という訳でまずは飲み終わるまで静かにしてみろ

ラテを飲みながらイグニスの様子を観察
黙って大人しくしてりゃそれこそ王子様なんだがなあ
……お姫様、か
俺にとってのこいつはどういう存在になった?

自問したら目が合って反射的に視線を外し
不自然になってなかっただろうか
……すまんシャルル。今珈琲の味、さっぱりわからん



羽瀬川 千代(ラセルタ=ブラドッツ)
  二人掛けのテーブル席へ
明日は休みだし、たまには二人で飲もうと思って…変かな

注文したオリジナルカクテルで小さく乾杯を
ん、こっちも飲んでみる?(グラス差し出し
(ラセルタさんこそ他意は無いみたいだけど、何となく気恥ずかしい)

確かに俺はお酒に強い方だと思うけれど
度数の高い物は殆ど飲まないから実際はどうだろう
……酔うと記憶が無くなるとか、気が大きくなるとかよく言うでしょう
自分の事を管理出来なくなるのは、ちょっと怖いなって
ええと、ちゃんと介抱し……聞いてないね(溜息

微睡む相手に気付けばそっと顔覗き込み
(今日は酔いが回るの早い。やっぱり疲れてたのかな)
……俺にも、もっと色々晒してくれていいんだよ?(頬突き


アレクサンドル・リシャール(クレメンス・ヴァイス)
  依頼で帰りが遅くなった日に思い切って精霊を誘う

保護者扱いじゃないぞ?
俺、クレミーと来たかったから誘ったんだ

バーカウンターに着く
オリジナルカクテルを頼む

え?俺はともかくクレミーは別にノンアルコールじゃなくても……
ちぇー。ほろ酔いのクレミーちょっと見たかったなー。
後3年は長いなあ
うん?勿論「ずっと一緒」だ
あ、じゃあ20歳の誕生日ここで祝ってくれるか?

(カクテルを見て)
綺麗だなあ、これ何で作ってるんだ?
こんな風に見えるって言われると、何だかくすぐったいな
ちょっと大人の気分だ

どっちにしても遅くなるし俺の家に泊って行ってくれよ
もうちょっとおしゃべりしたいんだ
あ、お風呂も一緒に行こう
銭湯楽しいぞ?



市原 明良(シンディ・フィラメント)
  落ち着いたバーだな。
詳しくは知らないがバーカウンターで飲んでる映像とかよく見るよな。僕達もカウンターにしてみるか。
僕達はまだ未成年だからアルコールは飲めないがノンアルコールのカクテルもあると聞いてそれに興味があるんだ。
「貴方だけのオリジナルカクテル」ってやつ。
僕に作ってくれない?自分のイメージって自分じゃあまりわからないからさ。ちょっと気になってな。

こんな時間帯まで外に居るってのは実はあんまりなくて少し緊張してる。
夜景ってこんなに綺麗なんだな…うちの周りは基本的になんもないからな

…僕が言うのもなんだが…バーに来てラテを飲むのか?まぁお前の無理にかっこつけたりしないところはその…気にいってるぜ。





シルヴィオ(ジークベルト)
  バーカウンターでバーテンとやりとりしながら飲む
俺にはマティーニを。ジークはどうする?
オリジナルカクテルはどうだ。おもしろそうじゃないか

仏頂面してないで笑えよ。カクテルに華やかさが出ないぞ?
まあ、お前が馬鹿笑いするところはさすがに想像できないが
笑っているところは見てみたいと思うぞ?
そのためにここへ誘った、というのもなくはないんだからな
というわけなんだ。この能面の口元が緩むくらい美味いのを頼むよ(バーテンダーへ)

それじゃあまずは乾杯しようか
何に?そうだな…俺達の未来に?
ふふ、冗談だ。半分くらいはな
笑わなくてもいいけどな。半分は本気なわけだし
お前がいてくれたらこの先心配はいらない
そんな気がしてるのさ


●adagio
 少し狭いエレベーターが十階を告げ、扉を開く。眼前のバール『コレット』のドアは黒く、すりガラスが嵌ったシンプルなものだった。
 真鍮色のバーを握って押し開けると、澄んだカウベルがカランカランと頭上で鳴って、二人をゆったりしたジャズが包み込む。
「いらっしゃいませ」
 暗い店内でぼうっと光るバーカウンターの中から、グラスを磨いているバーテンダーが微笑む。
「お好きなお席へどうぞ」
「ど、どうも……」
 初めてのバールに、気後れしながらもアレクサンドル・リシャールは足を踏み出した。
 目の前は大きなはめ殺しの窓で、宝石をばら撒いたようなタブロスの夜景が広がっている。
 気づかれないように控えめにキョロキョロしながら、アレクサンドルはバーカウンターの背の高いチェアに腰掛けた。
 その隣に腰掛けつつ、クレメンス・ヴァイスがクスッと笑む。
「確かにここは、あんさんが一人では入れる店やあらへんねぇ」
 精霊の笑い混じりの言葉に、神人は、むぅと唇を尖らせ、
「……別に保護者扱いじゃないぞ」
 と言い返すと、ライトを受けて輝く酒瓶たちを眺めながら明るい表情で、
「俺、クレミーと来たかったから誘ったんだ」
 と続けた。
「さよか……」
 面映い気持ちになって、クレメンスは少しフードを下げる。
「ご注文はいかがいたしましょうか?」
 と尋ねるバーテンダーことアドニスに、アレクサンドルはオリジナルカクテルを頼んだ。
「あ、俺、未成年だからノンアルコールで」
「ほな、あたしも同じノンアルコールで」
 隣から聞こえた言葉に、アレクサンドルは振り向き、戸惑ったように言う。
「え? 俺はともかくクレミーは別にノンアルコールじゃなくても……」
 だが、クレメンスも戸惑ったようにアレクサンドルを見返した。
「へ? 一人だけ飲んでも楽しないし……」
 注文は確定した。アドニスは微笑みだけで了承を伝えると、棚や冷蔵庫から手際よくドリンクの瓶を取り出していく。
「ちぇー」
 アレクサンドルはチェアの背もたれにもたれかかり、
「ほろ酔いのクレミーちょっと見たかったなぁ」
 と不服げに呟いた。クレメンスは彼を困ったような口調でなだめる。
「いや、そんな楽しいもんやないと思うけど……。あんさんが飲めるようになったら、改めて一緒に来よ?」
「あと三年かぁ、長いなぁ」
「そないに急いで大人にならんでも。……『一緒に生きよう』いうんは、短い話やないんやろ?」
 先日、夏祭りで花火をした時の言葉を口にされ、アレクサンドルは背筋を伸ばした。
「もちろん。『ずっと一緒』だ。……じゃあ、二十歳の誕生日、ここで祝ってくれるか?」
 十七の誕生日は『今までずっと一緒』だった家族と祝った。二十歳は『これからずっと一緒』にいる精霊に祝ってほしい。
 アレクサンドルの真剣な眼差しに射され、クレメンスは深く頷く。
 そのとき、スッと音もなくコースターの上にグラスが乗った。
「三年後のご予約ありがとうございます」
 と茶目っ気のある言葉と共にアドニスからカクテルが供された。
 アレクサンドルには、コリンズグラスに満たされた透き通る真っ赤な飲み物。クレメンスも、同じグラスだが、マドラーがささっている。グラスの中は透明な炭酸に、ミントが沈んでいる。
「わぁ……綺麗だなぁ。これ、何で作ってるんだ?」
「カシスジュースと……赤に深みを加えるためのグレナデンシロップですね。レモンが隠し味です」
「確かにアレクスの色やね」
 アレクサンドルの特徴的な髪色に合わせた、すこしだけ暗めのレッドはベリー系の愛らしい香りがする。
「こんな風に見えるって言われると、なんだかくすぐったいな」
 飲めばとても甘いが、レモンで後味がキリッとしまる。
「ちょっと大人の気分だ」
 へへ、と笑う神人を微笑ましく見、クレメンスもグラスを口に運んだ。
 炭酸はあまり強くはない。炭酸水ではなくガス入りのミネラルウォーターがベースなのだろう。優しい刺激に、ミントの香りが鼻をくすぐり、初夏の森の風を思わせる。
「お好みに応じて、マドラーでミントをつぶして下さい。ミントに砂糖をまぶしてあるので、時間がたって溶けてくると、また違う味がしますよ」
 アドニスが付け加える。それはまるで――二人の仲が、時間と共に甘くなっていくような……。
 グラスが空になり、店の奥に控えめに飾られた時計を見て、クレメンスは夜が深まっていくのに気づいた。
「あまり遅ぅならんうちに帰さんとね」
 まるで十二時を知ったシンデレラ気分のアレクサンドルは言ってみる。
「俺の家に泊まっていってくれよ。もうちょっとおしゃべりしたいんだ。ほら、どっちにしても遅くなるしさ」
 クレメンスは戸惑うも、年上の大人らしく優しく諭した。
「へ? 用意何もしてへんよ。……ほら、もう帰ろ? おしゃべりの続きは、また今度。な?」
「えー」
 不服げな神人に、精霊は微笑む。
「だって、『ずっと一緒』なんやろ?」

●sostenuto
「マティーニを」
 バーカウンターに座り、シルヴィオはアドニスに慣れた様子で『カクテルの王様』を注文した。
「かしこまりました」
 大き目のミキシンググラスを取り出し始めるアドニスを横目に、シルヴィオは戸惑っている様子の精霊に話しかける。
「ジークはどうする?」
 黒髪のファータ、ジークベルトは無表情のまま眉を下げた。
「何にするかと言われても……普段こういう小洒落た店には入らないからな……」
 メニューにあるカクテルの名前を見ても何がなにやら分からない。と、ジークベルトは弱る。
 バールなど、友人であり主であるシルヴィオに誘われなければ一生入ることはなかっただろう。
「オリジナルカクテルはどうだ? おもしろそうじゃないか」
「それでかまわない」
 寡黙な精霊は、端的に返す。
「というわけだ。頼む」
 マティーニを差し出すアドニスに、シルヴィオが連れの注文を伝える。
 アドニスは微笑んで頷き、ジークベルトに向けて尋ねる。
「特にご希望は?」
 ジークベルトは少しの間を置いて、
「……弱くはないから強めのものでも大丈夫だ」
 とだけ伝えた。
 グラスを取り出し始めたバーテンダーの仕事ぶりを眺めながら、
「仏頂面してないで笑えよ。カクテルに華やかさが出ないぞ?」
 と神人は言う。
「別に酒に華やかさなどいらんだろう……」
 仏頂面のまま、ジークベルトは言い返す。確かに、朗らか笑顔のジークベルトをイメージしたカクテルなんて、ジークベルトのカクテルとはいえない。
 苦笑し、シルヴィオはカウンターに肘をつく。
「まあまあ。さすがに馬鹿笑いしているようなのは想像つかないが、ジークの笑っているところは見てみたいと思うぞ? そのために連れてきたっていうのもあるんだからな。……というわけで、この能面の口元が緩むくらい美味いのを頼むよ」
「おい、そうハードルを上げてやるな」
 手を止め、やりとりを眺めていたアドニスは黙って微笑むと、おもむろに鮮やかな水色のリキュールと透き通る紅色の酒瓶に手を伸ばした。
「お?」
 二人とも思わず瓶を見つめる。水色も紅色も、ジークベルトのイメージとは違う気がした。
 視線に気がつき、バーテンダーは悪戯っぽく笑う。
「ここからですよ」
 と氷で満たされたゴブレットに、水色と紅色が注がれ、ステアされた瞬間、二人は納得する。
 出来上がったのは、水墨画を思わせる黒……。
「どうぞ。……口元が緩むといいんですが」
 カランと氷のぶつかる音が涼しげだ。
「それじゃあ、まずは乾杯しようか。そうだな……俺達の未来に?」
「なんだそれは」
 シルヴィオに従ってグラスを持ち上げたものの、少し呆れたようなジークベルトは、ぽつんと続ける。
「俺達の未来か……どうなっているんだろうな」
「ふふ、真面目だな。冗談だよ。半分くらいはな」
「む。……笑うところだったのか?」
 反応を間違えたかと眉を僅かに寄せる精霊に、シルヴィオは明るく首を横に振る。
「いや、いいけどな。半分は本気なわけだし」
 カチリと静かにグラスがキスをする。
 ショートのマティーニはあっという間にシルヴィオの喉奥へと辛味だけを伝えて流れていった。
 ジークベルトの薄墨色の酒は、グレープフルーツの爽やかな酸味に柑橘独特の苦味と、薬草めいた甘苦い香りが絡み合って、不思議と美味かった。
「お前の心配を取り除くために俺がいるようなものだ。これまでもこれからも、それは変わらん。いつでも俺を使え」
 ほの甘い酒の味が少しだけジークベルトの口を軽くする。
 いつもより饒舌な彼を見て、眼鏡の奥の瞳を大きくしたシルヴィオは朗らかに応えた。
「お前がいてくれたらこの先心配は要らない。そんな気がしてるのさ」

●grazioso
「お、今回はちゃんと注文できたな」
 ノンアルコールオリジナルカクテルを注文した市原 明良を見て、シンディ・フィラメントは軽口を叩く。
 視線だけで抗議の意を受け取ったシンディはヘラリと笑って、怒るなよと言う。それからぐるりと店内を見回し、小さく囁いた。
「俺、こんなバー初めてだから緊張する……」
 明良も囁きで返す。
「落ち着いたバーだよな。……僕も、こんな時間まで外にいるっていうのがあんまりなくて少し緊張してる……」
 二人で慣れないバールで、セオリーらしきバーカウンターに座っていると、まるで止まり木にフラフラ掴まり身を寄せ合う巣立ち直後の小鳥のようだ。
 アドニスの仕事を興味深そうに眺めながら、ポツンとシンディは零す。
「俺もアキのイメージのカクテル見てみたいけど。アキってさ、なんか結構自分がどう見られてるのか気にするよな」
「自分のイメージって自分じゃあまり分からないからさ、ちょっと気になってな」
 と返答する神人の横顔を見つめ、シンディは思う。
(自分に自信がないって奴なのかな。姉ちゃんとよく比べられてたって言ってたし)
 あまり折り合いが良くないらしい彼の姉の姿を思い浮かべ、シンディは首をかしげた。シンディからすれば、彼女も悪い人には見えないのだが……。
「そちら様はどうなさいます?」
 アドニスに声をかけられ、シンディは慌ててメニューをつかんだ。
「あ、えっと。あ! ラテアートがあるんだ。俺これにする! 可愛いのがいいなぁ」
「……バーに来てラテを飲むのか?」
「? 悪いか?」
「いや、まぁ……お前の無理にかっこつけたりしないところはその……気に入って……」
 きょとんとしているシンディのまぶしい視線を受け止めきれず、もごもごと口の中でぼやかせる明良の前に、いつの間にかドリンクが置いてあった。
 ロックグラスの中で、ごつごつとしたロックアイスの浮かんだ緑の液体がとろりと揺れる。
 ほどなく バリスタの手でシンディの前に置かれたのは、花柄が泡に描かれたラテ。
「おー。写メ撮ってもいい? あ、アキのも撮るから飲まないでくれよ!」
 店員に了承を得てから、シンディは携帯端末を取り出してラテを撮影しだす。
 明良のカクテルは、抹茶が香るほろ苦い飲み物だった。ただ苦いだけでなく、奥にミルクチョコレートが隠れていて、優しい甘さで心が落ち着く。
 ほっと一息ついて、もう一度明良は後ろの窓に映る夜景を眺めた。
「夜景ってこんなに綺麗なんだな……うちの周りは基本的になにもないからな」
 明良は、田舎の実家を思い出す。そちらの夜は、星は綺麗だが、周囲は闇に飲み込まれているのだ。
 夜なのに賑やかで眩く明るいタブロスの夜は、明良の知らなかった世界だった。

●tranquillo
 店の隅のテーブル席で向かい合って腰を落ち着けた羽瀬川 千代は、どこか不審そうなラセルタ=ブラドッツの視線を受け止めて、困ったように笑った。
「明日は休みだし、たまには二人で飲もうと思って…………変、かな」
「いや、おかしくはない」
 端的に否定を返しつつも、ラセルタは千代を観察する。
(千代から酒の誘いとはどういう風の吹き回しかと思ったが……この能天気な顔ならば、他意はなさそうだな)
 注文を聞きに来た店員にオリジナルカクテルをそれぞれ注文し、ラセルタは椅子の背に片腕をまわしてくつろいだ。
 程なくして到着したカクテルは、ラセルタの分は落ち着いて上品な芳香の漂う気品あるバイオレットフィズで、千代は馥郁たる香りを放つ山吹色の緑茶でさらりと割った大吟醸だ。
 バールの静かな空気を破らぬよう、小さい声で乾杯をして、二人は同時に酒を含んだ。
 千代のカクテルは、緑茶のコクのある甘みと大吟醸の軽やかな甘みがするりと喉を通り、飲みやすい。
 ラセルタのカクテルは、まるでスミレの香水を飲んでいるような贅沢な香りなのに、レモンの酸味で爽やかな味わいだ。
 唇から離したカクテルグラスをテーブルに置き、すいっと台に指を当てて千代へと滑らせたラセルタは、
「そちらをよこせ」
 と尊大に言う。
 何も他意はなさそうなラセルタに対して、この行為が間接キスになると思うと気恥ずかしい千代だが、顔には出さずに快くフルートグラスを差し出す。
「ん、こっちも飲んでみる?」
 そして、山吹色の大吟醸を口に運んだラセルタは、
「千代のほうが好みだ。代わりに俺様のをくれてやろう」
 とそのままフルートグラスを己のものにしてしまった。
 しかし大吟醸は本当にすぐに人を酔わせてしまう。
「……相変わらずの酒豪ぶりだな。表情がまったく変わらないとは」
 ラセルタは少しとろんとした目で、千代を睨む。千代は苦笑して『睨み』をいなした。
「確かに俺はお酒に強いほうだと思うけれど……度数の高いものは殆ど飲まないから実際はどうだろう」
 今回も、度数の高い大吟醸はジンベースのフィズと交換されて、ラセルタの手の中にある。
「ほら、酔うと記憶がなくなるとか、気が大きくなるとかよく言うでしょう。自分のことを管理できなくなるのはちょっと怖いなって……」
 冷静な千代の説明が気に食わないのか、ラセルタは不機嫌に口を挟む。酔いが思った以上に深いのか、すこし絡み酒の様相を呈してきている。
「お前はお堅い。全て酒のせいにすればいいものを。俺様とサシで飲む際には、いくらでも醜態を晒してかまわんぞ」
 ずずいと顔を千代に近づけたラセルタは言い放つ。
「むしろ、酒に飲まれた千代が見てみたい」
 ……ラセルタの目は、素面だった。千代は息を呑む。
「ふん」
 どっかと椅子に座りなおしたラセルタは、静かに酒を口に運んでいく。気を取り直し、千代もフィズを飲みながらとりとめのない話をしていたが、ふとラセルタの相槌がなくなったのに気づいた。
「あれ」
 いつのまにか舟をこぐ精霊に、千代は微笑む。
(今日は酔いが回るの早い。やっぱり疲れてたのかな……)
 精霊へと腕を伸ばしながら、千代は小さく小さく、
「俺にも、もっといろいろ晒してくれていいんだよ?」
 囁きと千代の指が、美しい輪郭を形作るラセルタの白皙の頬をそっとつついた。
 とたんに伸ばした腕をディアボロが掴む。
 驚く千代をぐいと引き寄せ、拗ねた口調で、
「なら、お互い様だ。俺様に隠し事は無しにしろ」
 と言うラセルタの青い目が、熱を孕んでいたのは、酔いかそれとも――。

●stringendo
 珈琲とフレンチトーストが自慢の喫茶店のマスターとして、ここがバールであろうが珈琲を扱うバリスタがいるならば、偵察しておかねばならない。
 と、初瀬=秀は、精霊イグニス=アルデバランに供を命じた。
 イグニスは勿論二つ返事で了承したのだが、
(偵察なら一人でも行けますし……これはデート! ですよね!)
 と、解釈したイグニスは上機嫌であった。
「ご注文は?」
 ついっとやってきた金髪の青年が、ここのバリスタのシャルルだ。
「俺はラテ。……そうだな、コイツのイメージの動物で」
 くいと親指でイグニスをさし、
(無茶振りしたか?)
 と楽しげに笑って秀はシャルルにラテアートを頼んだ。
「そちらは?」
「あ、じゃあ私は自分イメージのカクテルを」
 注文をとり終え、バーカウンターに戻っていくバリスタの背を見送り、秀はイグニスに言う。
「おい、イグニスお前酒飲んでいいのか?」
「え? 秀様、私は二十二ですよ? 立派な大人ですよ?」
「……あーそうか。成人だったな、お前。いつも騒がしいから子供かと思ってた」
 と笑う秀に、イグニスは頬を膨らませる。
「そう膨れるな。大人扱いしてほしいなら日ごろの行いを振り返ることだな?」
 そこまで言ったところで、注文の品が届く。
 愛らしくもこもこと盛られたフォームドミルクに刺さる甘いコーンスナックで角を模して、珈琲で目鼻をつけた雄羊ラテを、秀の前に置き、
「わぁ!」
 イグニスの前には、綿飴がふんわりと山盛りになったカフェグラスをシャルルが置いた。
「おぉ……?」
 グラスの中身はまだ綿飴しかない。
 するとシャルルと一緒にやってきたアドニスが、手に持っていたシェイカーを客の前でリズミカルにシェークし、蓋を開いた。
「さあ、クライマックスですよ」
 グラスに注がれるキンと冷えたマンゴーウォッカが、綿飴を溶かしていく。そして、溶けた綿飴から、大きなハート型の氷がひとつ、ふわんとウォッカに浮かんだ。
「可愛い!」
 イグニスの目が輝く。彼の子供っぽいところは、初対面のバーテンダーにも見抜かれているんだな、と秀は苦笑した。
「ごゆっくり」
 と二人が去る。
「すごいですねぇ」
「やっぱ俺からすりゃ、お前は十分子供だよ」
 秀は素直な感想を述べただけなのだが、イグニスは先ほどの会話を思い出し、むぅと眉を寄せる。
「子供扱いしないでください」
 また頬を膨らませたディアボロに、秀は軽く謝りながらも、
「じゃあ、まずは飲み終わるまで静かにしてみろ」
 と言い、カップに手を伸ばした。
「くっ、それくらいできますってば!」
 とイグニスは言い返すと、両手でカフェグラスをとり、口に運ぶ。ウォッカの苦味は、マンゴーのまろやかな甘みと綿飴の甘みでかき消され、とても飲みやすく、美味しい。
 心を優しく撫でるような味に、はぁとため息を漏らし、イグニスは夜景を眺めて思案する。
 どうにも秀は自分に、パートナーと言うよりは保護者の立場で接してくる。
 このまま仲良くなっていっても、親子や兄弟のような家族愛の関係にしかなれないような気がする。
 彼に惚れてもらうには、恋人になるには、何か一線が敷かれているような。
(どうにか子供扱いから脱却しないと、いつまでもこのままですよね……)
 愁いを帯びた目で、イグニスは流れる車のテールランプを傍観していた。
 一方、秀は珈琲を口に運びながら、イグニスの横顔を見ていた。
(そうやって黙って大人しくしてりゃ、それこそ王子様なんだがなぁ)
 イグニスは、自分を姫か何かのように扱おうとする。それは、彼の容姿にはぴったりとハマるのだが、いかんせん自分は、嫁に逃げられた四十二歳のちょっと強面の男で……。
(……お姫様、か……)
 似合わないと思うのだ。むしろこの年齢と容姿で、自分を素直に姫だとすぐ思える奴はちょっとおかしい。
(俺にとってのこいつはどういう存在になった?)
「!」
 眼が合った。
 秀は思案しているうちに、穴が開くほどイグニスを見つめてしまっていたらしい。さすがにイグニスも視線に気づいて、こちらを見てきたのだ。
「~~っ」
 とっさに顔ごと目をそらす。
「秀様、カクテル一口いかがですか?」
「いらん」
 上ずりそうな声をどうにかこうにか抑えながら、イグニスの提案を断った秀は、カップをあおり、顔に壁を作った。
(不自然になってなかっただろうか……)
 口の中に入ってくるカフェラテ。味がちっとも分からない。
(すまん、シャルル……)
 作り手として味わってもらえない悲しさは分かっているのだが、秀は内心謝りながら、気が落ち着くまでずっとカップを口に当てていた。
 この店は暗い。だから顔や耳が赤かろうが、きっとイグニスには分からないことが、秀の救いだった。
 うろたえる秀を見て、イグニスは口だけ微笑む。
(一歩前進、かな? 待っててくださいね、お姫様)



依頼結果:成功
MVP
名前:初瀬=秀
呼び名:秀様
  名前:イグニス=アルデバラン
呼び名:イグニス

 

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター あき缶
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 男性のみ
エピソードジャンル ロマンス
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 とても簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 5 / 2 ~ 5
報酬 なし
リリース日 08月29日
出発日 09月03日 00:00
予定納品日 09月13日

参加者

会議室

  • アレックスと、相方のクレメンスだ
    俺もぎりぎりもいい所だが、挨拶を

    いつもにぎやかだが騒ぐ場所じゃないって事くらいはわきまえてるから、安心してくれ
    俺は未成年だから酒飲めないけど、オリジナルカクテル頼む予定なんだ。
    皆いい酒飲めるといいな!

  • [2]羽瀬川 千代

    2014/09/02-23:33 

    こんばんは、ぎりぎりの挨拶となりましたがご一緒する羽瀬川です。
    皆様どうぞ素敵な夜をお過ごし下さいね。

  • [1]シルヴィオ

    2014/09/02-22:10 

    出発直前になってしまったが…シルヴィオだ。
    皆それぞれ旨い酒が飲めるといいな。よろしく。


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