


●宝石姉妹ピンチ
タブロスから少し離れた南国の海、パシオン・シー。
君はちょっとしたバカンスとして、夏の日をこのコバルトブルーの海で過ごす予定だった。
自動車で一日。ようやく辿り着いたパシオン・シーを満喫しようと、歩き始めたその時。
君は、A.R.O.A.から緊急の呼び出しを受けてしまう――。
呼び出された場所は、パシオン・シーのゴールド海岸中心地、コーラルベイのとあるホテルの一室だった。
「ごめんね、こんな時に」
と申し訳無さそうな職員は、アロハシャツ姿である。彼もまたゴールドビーチに遊びに来た最中の呼び出しだったようだ。
「ゴールドビーチの端に、ジェダイト一家のプライベートビーチがあるんだ。そこに、デミ・トロールが出たんだよ!」
ジェダイト一家といえば、タブロスでも有数の金持ちだ。ジェダイト一家の美しい五人姉妹、通称宝石姉妹は連日マスコミに動向を注目されているセレブである。
「運が悪いことに、宝石姉妹がプライベートビーチで遊んでいたんだ……。ついさっき、通報があってね。急いで、ここらへんにいるウィンクルムに招集をかけたって次第」
もう既にデミ・トロールが現れたとあっては時間がない。タブロス中の女の子の憧れ、宝石姉妹の身に何かあっては大変だ。
君たちは急いで、ジェダイト一家のプライベートビーチへと、職員が用意したハイヤーで向かうことにした。
ハイヤーの運転手は、おっかながり、君たちを下ろしたらすぐに去ると言い張る。彼らも生活がある。しかたがないだろう。
車内で、職員が急ごしらえでまとめた資料に目を通す。
敵はデミ・トロール一体。トロールは石を喰らう巨人だが、とてもタフで、石だろうが肉だろうがなんでも食べる上に、常に腹ペコ。しかも、常時少しずつ傷を回復する特殊能力を持っている。
長期戦になるのは必至だ。だが、トロールの動きは非常に鈍重だ。普通の人間でも全力で逃げ回れば危険はない。
通報時のトロールは、物置小屋(セレブの物置小屋なので非常に大きい)を一心不乱に食べていたという。小屋が食い尽くされる前に急行し、姉妹を避難させて、デミ・トロールを倒すべきだろう。
だが、避難といっても考えることがいろいろある。
まず、街への逃亡はダメだ。彼女たちはセレブであり、有名人だ。そんな人達が街に水着姿で逃げてきたら、街中がパニックになってしまう。
次に、海への逃亡だが、彼女たちは海遊びの最中だったから簡易的なボートなどはあるだろう。でも、満ち干きを考えると、長時間海にいれば流されてしまう可能性がある。海へ逃がす場合は、短期決戦が不可欠だが……デミ・トロールはタフだ。
彼女たちが立てこもっている休憩用のコテージを死守するのも一案だ。コテージを巨人であるデミ・トロールにかじられないように護るのは難しそうだが……。
海かコテージ、どちらかを選ぶしか道はないだろう。
ハイヤーはあと数分で目的地に着くという。
車内で簡単に作戦を練った君たちは、一目散にビーチへと駆け出した。


●成功条件:デミ・トロールの排除と宝石姉妹の無事
●敵
デミ・トロール 1体
石の棍棒と石のような皮膚を持つ、超タフな4mの巨人
負傷すると1ターン毎にちょっとずつ回復していきます
この世に存在する物体ならなんでも食べますし、常に腹ペコです
頭脳は単純馬鹿で、動きは非常に鈍重
●プライベートビーチ
ゴールドビーチの端にある、ジェダイト一家の関係者以外立ち入り禁止のビーチ
巨大な物置小屋と休憩用のコテージ(冷暖房・お風呂・キッチン完備)があります
真っ白な砂浜と鮮やかで透明度の高いコバルトブルーの穏やかな海は
西に面していて、夕方は絶景となります
●宝石姉妹 全員美しい女性で、タブロスのセレブ姉妹として注目されています。
長女ユークレース(22):儚げだが芯は強い。ストレートロングヘア
次女フローライト(18):ほがらかでのんびり屋。ウェーブセミロング
三女アゲート(17):優しいしっかり者。ポニーテール
四女パイロープ(14):人懐っこく元気で快活。ボブカット
五女チャロアイト(12):無邪気で健気。ツインテール
最初は全員固まって休憩用のコテージの隅で途方に暮れ、震えています。
浮き輪やボートを所持しているようです。
お世話になっております、あき缶でございます。
美女を護るナイトとして、ウィンクルム達、頑張ってくださいませ。
緊急事態なので、相談期間は短めです。ご注意を。
トロールをかっこ良く倒せたら、美女と楽しくビーチで遊べるかも……?


◆アクション・プラン
高原 晃司(アイン=ストレイフ)
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ひゃっほい!美女と戯れれるのだったらやりがいがあるぜ!俺頑張っちゃうぜ! 俺は前衛で補佐をする 今回は短期決戦なんでダメージを蓄積させていく方針で行こうかと思ってる トロールは動きが鈍いみたいだし 素早く動いて敵の足をコネクトハーツで斬っていく 俺が斬った後にそこにアインの射撃をすれば更に効果倍増だしな 上手くアインと連携していきたい ただ攻撃一辺倒に集中してると意外にトロールの攻撃を受けちまうかもだから 敵の攻撃にも気を配っておくぜ どうしても攻撃が当たるようだったら両手の剣で防ぐぜ 仕事が終わったら美女と一緒に遊びたいな 彼女達に遊ぶ元気があればの話だけどな? |
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持ち物 携帯電話、爆竹 時間は無いけれど、無理は禁物だよ トランスを済ませ物置小屋へ 手頃な大きさの石があれば拾っておこう 状況を把握してから突入 トロールに石を投げ、携帯を鳴らして注意を引き付ける 建物に二次被害が出ない辺りまで誘き出す ティートさんからロープを受け取れたら セイリューさんと協力し強度のある木などに 高低差をつけて結び簡易的な罠作成。転倒を狙う 回復する隙を与えないよう他の人が攻撃した傷に重ねて追撃 棍棒での攻撃を警戒、危険な時は注意促し石や砂を撒いて目潰しを狙う 周囲と連携して孤立しない、させない 戦闘終了後、支部に連絡し迎えの車などの手配を要請 コテージで人数分のタオルを確保しボートを迎えに行く |
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双眼鏡持参 デミに気付かれないようにコテージに入る 「会えて嬉しいですよ」と笑顔で安心させ 「仲間が奴の注意を引いた隙に静かにボートに乗り込んで海に逃げよう」と説得 俺が一緒に行くから怖くないと《会話術》も活用し宥める トランス ランスに敵の処理を頼む 「彼女達は任せろ。ランスはオーガを頼む」 ランスが嫉妬してたら、頭と獣耳の後ろをかきかきと撫でてやるる 「間違いとか無いから」汗 俺を信用しろって; ボートが2艇あれば分乗、無ければ定員厳しいけど全員で乗る 俺は漕ぎ手 全力で離岸 趣味や海で何をするのが好きかなど雑談で気を紛れさせてあげたい 戦闘の状況は双眼鏡で確認し、敵が倒されたら帰還 ◆事後 姉妹も含め、皆で海を満喫したい |
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お嬢さん達を海に逃がし、 その間に皆でデミ・トロールを倒そう。 現場に到着し敵を視認したらトランスするぜ。 「さっさと倒して、海で遊ぼうぜ!」 せっかく遊びに来たのに邪魔しやがって。 デミ・トロールの注意を女の子からそらすため デミ・トロールの足元に爆竹を投げつける。 一連ほど火をつけて次々爆発させて注意を引き 味方の精霊達が攻撃し易い隙を作るぜ。 羽瀬川さんと協力し、敵の死角に入ってロープでトロールの足元を引っ掛けて転倒を狙うぜ。 転ばずとも敵の動きを阻害出来れば有利じゃん。 自分や見方が負傷しないように工夫しながら敵の注意を引く。無茶はしない。 敵を倒したら、この海岸で遊ばせてくれないかな。皆で泳いだりしよーぜ。 |
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ったく、おっさんがバカンスとか言うから… でもまぁ先輩の戦いを参考にするチャンスか、オレすげーお荷物だけど トランスに特に抵抗は無いが髭が痛い ちゃんと剃れよな 足引っ張って怪我するんじゃねーぞおっさん。置いて帰るからな 安全を考え姉妹をボートへ避難誘導 コテージ内にロープ等道具があるか聞き、あれば取りに行く あるなら倉庫内だろうけど、取りに行くのは無謀かな 姉妹が水着のままならチャロアイトにぶっきらぼうに上着を掛ける 下も長袖なので躊躇い無 大丈夫だからもう少し我慢してくれ 遠巻きに戦闘観察、感心 ああやって戦うのか 戦闘後話しかけられたら …(おっさん助けろ、の視線 女性苦手、子供なら平気 矛盾の場合他の方に準拠 |
●ナイト出陣
車から走り出たウィンクルム達は二手に分かれた。
宝石姉妹が身を隠しているコテージと、今まさにデミ・トロールに貪られている物置小屋である。
「彼女達は任せろ、ランスはデミ・オーガを頼む」
コテージに走ろうとするアキ・セイジは、そう言って精霊を見て、足を止めた。
「どうした?」
ヴェルトール・ランスの顔は決して明るくはない。不満げである。
「……いや、別に」
むすっと返ってきた回答にセイジは困ったように頭を掻く。
「別にって顔じゃないだろう…………」
そこでハッと気づくのは、精霊が嫉妬しているのではないかということ。
「……間違いとかないから」
言い聞かせて、セイジはランスの耳の後ろを掻いてやった。
「分かってる。お前を信じてる」
少しだけ愁眉を開き、ランスはセイジを抱き寄せた。
「そんなことしている場合かっ」
だがぎゅっと抱きしめる前に、セイジは赤面しながらランスの腕から逃れ、コテージへと走って行ってしまった。
「おっさん、俺もコテージに行くから! 足引っ張って怪我するんじゃねーぞ、置いて帰るからな」
ティートはそんな憎まれ口をたたきながら、精霊の無精ひげが目立つ頬へと唇を寄せる。
「翔けよ梟」
薄茶の猛禽の羽がチラチラと舞い、梟とティートの体がうっすらベージュに輝き始めた。
「ちゃんと剃れよな、痛いんだから」
ムゥと眉をひそめるティートに梟は苦笑して肩をすくめる。
「さぁて行くかね」
奔る――シノビの敏捷な動きでトロールに急接近し、砂地を踏み切って飛翔。
「お前さんの相手はこっちだ」
目を狙って手裏剣を投げる。カツンと硬い音がして、手裏剣はトロールの額に当たった。
「おっと、外したか。……なんせ久々だからな」
梟は片眉をそびやかすとトンボをきって、砂浜へと着地した。
注意を小屋から離そうと、トランスを終えた他のウィンクルムたちも動き出す。セイリュー・グラシアはトロールの足元で爆竹を破裂させ、羽瀬川 千代は拾った大き目の石を投げたり携帯電話から大きな電子音を鳴らしてみる。
「……うまくいかないな」
トロールがあまり反応を見せないので、千代はがっかりするが、ラセルタ=ブラドッツはショットガンを撃ちながら言う。
「いや、奴は鈍重だ。気づいていたところで迅速な反応を見せられないだけだろう」
ラセルタの言ったとおりだった。
トロールはゆっくりと食事をやめ、気が遠くなるような速度でウィンクルムたちに向き直った。
「おっ? よしよし」
うまくいったと高原 晃司は頷き、短剣「コネクトハーツ」を鞘から引き抜く。
「美女と戯れるために頑張っちゃうぜ!」
晃司はトロールの足へと走りこむ。
セイリューと千代もトロールの足元へと急いだ。ロープを張ってトロールを転ばせる作戦だ。
しかし。
「手ごろな木がないね」
街側にはヤシがあったが、浜側にはロープを結び付けられるような場所がない。
仕方が無いので、片側はヤシにくくりつけ、もう片側はセイリューと千代で引っ張ることにした。
ず、ずん。
晃司の一太刀に気づいてもいないのか、トロールが足を踏み出す。
「うおっ」
晃司は踏み潰されそうになり、間一髪で避ける。
アイン=ストレイフの銃弾がトロールの石のような足を削った。
神人に何かあれば一大事だ。アインの視線は、晃司とトロール両方に油断なく注がれている。
トロールはそのまま歩き始めた。
「今だ、せえの!」
セイリューと千代が渾身の力でロープを引く……も。
「!」
トロールの硬くて重い足はロープを引きちぎった。
「これじゃあ、ロープで縛るってのも無理ですな」
ロープ作戦の失敗を見て、アインが呟く。
「つまり、物理で殴って短期決戦しかないってこったな!」
小細工なしだ、一気に行く。と晃司は怒鳴った。
セイリューも怒鳴り返した。
「そうだな、さっさと倒して海で遊ぼうぜ!」
トロールの腕がゆっくりと上がり、そして重たい棍棒に引き落とされるように勢い良く落ちてくる。
「下がって!」
叫びながら、ラキア・ジェイドバインは己の周囲に光輪を複数出現させると、最前列へと走った。
ライフビショップの反撃技『シャイニングアロー』は術者のみを守るスキルだ。皆を守るためには皆を庇える位置に立たねばならない。
巨大な棍棒はラキアの頭上で光に跳ね返され、トロールの顎を砕く。
文字として表記できない珍妙な大音声が響いた。己の棍棒で痛手を負ったらしい。だがジワジワと顎のヒビが治っていく。これがトロールの特殊技能、自動再生である。
「厄介なこって」
梟が呟く。
次の瞬間、トロールの足からシュウシュウと煙が上がり、内部から黒く焦げていく。
「姉妹がコテージから離れた。気合入れなおすぜ!」
トロールの足を焼く魔法を放ったランスが指差す先には、沖合いへと進んでいくゴムボートが二艘あった。
●コテージの姫君たち
少し時間は巻き戻り、コテージにて。
「こんにちは。助けに来ましたよ」
セイジが薄暗いコテージで控えめに声を張る。
「……女って得意じゃないんだよな」
セイジの後ろでティートがボソリと零した。
「あ、A.R.O.A.の方、ですか……?」
おずおずと女の声が奥から届く。長女ユークレースの声だ。
「ええ、皆ウィンクルムです」
応え、声の方へと進む神人二人は、部屋の隅でバスタオルに包まり、五人の美女が震えているのを発見した。
「すみません、お世話になりますー」
ほっとしたような笑みを浮かべ、次女フローライトがセイジたちに頭を下げた。
「宝石姉妹の皆さんですね。会えて嬉しいですよ」
笑顔でセイジは姉妹に近寄り、
「仲間が交戦中です。奴の注意を引いている隙に、ボートで海へと逃げましょう。一緒に行きますから」
「ボ、ボートってこんなのしかないのだけれど」
三女アゲートが指差すのは、ゴムボート二艘だ。勿論救命艇のような専門的なものではなく、可愛い模様のついたゴム玩具である。三人乗れれば精一杯といったところだろう。
「他に何かないか? ロープとか……」
「殆どのものは物置よ。ココにはキッチン用品とかタオルとかしかないの」
ティートの問いにハキハキと四女パイロープが答えた。
「十分です。……ティートさんも漕いで。全力で離岸する」
こそっとセイジに指示され、
「えっ、……分かった」
狭い艇内で女と一緒にいなくてはいけない状況に、ティートは苦い顔をしたが拒否もできない。
「じゃあ行くぜ」
とボートを抱えて進むティート。
セイジは彼女たちを先に行かせ、最後尾を歩いた。
浜でボートに姉妹を乗せる。ティートはアゲート、パイロープ、チャロアイトを。セイジはユークレースとフローライトを乗せ、思い切り海へと押し出した。櫂が漕げる程度の深さになったら、乗って、オールを使う。
ティートの方は、定員オーバーで、ゴムがたわみ、水が入ってきそうだ。まだチャロアイトが軽い子供なので、転覆は免れている。
「はやく、はやくっ!」
パイロープが自らの手も使って漕ぐ。アゲートは上手くバランスをとれるように自分の位置を調整し、パイロープの激しい動きでもボートがひっくり返らないように気を使っている。
「はやくはやくー」
面白がったチャロアイトが真似を始めた。
一生懸命オールを漕いで併走していたセイジが、声をかける。
「ここらへんでいいよ。あまり遠くへ行くと戻れなくなる」
ぷかぷかと炎天下の海上に浮かぶゴムボート。
「あつい~……」
日射で熱せられたゴムの上、チャロアイトがぐでりと呟く。
ティートは彼女達が炎天下なのに水着しか着ていないことに気づくと、上着を脱いで末娘チャロアイトの肩にかけてやった。
「えっ?」
「……俺は下も長袖だから大丈夫」
驚いているチャロアイトに少しズレた返事を早口でして、ティートは視線をあらぬ方向へ向けた。
ティートを見て、思い出したようにアゲートがタオルを皆の頭にかけてやる。
「あの、ウィンクルムさんも、どうぞ……」
「どっ……ど、どうも」
どぎまぎし、蚊の鳴くような声で礼を言うと、ティートはアゲートからタオルを受け取った。
沖合いから浜を見ると、ウィンクルムたちが巨人相手に果敢に戦っている。空中をひょいひょい舞うのが自分の精霊だろう。
「大丈夫だ。だからもう少し我慢してくれ」
仲間の頼もしい戦闘を認め、ティートはぎこちなく笑うと姉妹を励ました。
セイジも双眼鏡で戦闘の様子を注視している。トロールの足から発煙しているのは、ランスの魔法が効いたからだろう。
大きな怪我人も出ていない。戦闘は順調のようだ。
「大丈夫ですよねー?」
フローライトがユークレースに水を渡しつつ尋ねる。
「ええ、勿論。大船に乗ったつもりでいてください。これは小船ですけれど」
セイジは気を紛らせてあげようと、姉妹と話し続けた。
●巨人猛る
宝石姉妹が避難できたならば、遠慮会釈はもういらない。
アインはトロールを見上げた。
「硬いですね」
ランスの魔法は確かに打撃だったが、ジワジワと足の火災は回復していっている。だが回復しているからといって、魔法は連発できない。ここぞの時まで温存すべきだ。
トロールは鈍重だが、一撃一撃が非常に重い。振り回される石の棍棒は皆、なんとかクリーンヒットは逃れているが、それでも鈍痛で苛まれる。もしマトモに食らえばその場で昏倒してしまうだろう。
ただ頭は良くないから、視界にいない宝石姉妹や攻撃してこない神人のことなど欠片も考えていなさそうなのは助かる。
最前列で冷静に状況を見ていたラキアは、セイリューと千代に後退を進言した。
「ここはもう精霊に任せて。巻き込まれると危ない」
無茶は出来ない。セイリューは頷いて下がった。
一方、千代はラキアの言葉に頷くものの、ラセルタに近寄り爆竹を手渡す。
「ふん、悪食め。これでも味わうと良い」
と言うなり、ラセルタは、トロールの大きく開いた口へと火の点いた爆竹を投げた。
バチバチバチッと激しい音がして、己の棍棒でひびがはいっているトロールの顎から、パラパラと石のような皮膚が剥がれ落ちる。だが、トロールは笑みながら爆竹を嚥下した。弾けるキャンディ程度の刺激しか受けていないようだ。
あまりダメージが入っている様子はないが、それでも千代は満足げに頷いた。
「ラセルタさん、時間はあまりないけれど、無茶は禁物だよ」
精霊を励まして、千代は今度こそセイリューの元へと下がる。
ラセルタは神人達が安全な場所まで下がったことを確認し、トロールを睨みあげた。
「本当に何でも食べるとは。見ていて気分が悪いな。優雅なバカンスのためにも早々に片付けよう」
再び梟が舞い上がる。
「今度は当てさせてもらうぞ」
猛禽の如き速度で手裏剣が飛ぶ。そして、予告どおりトロールの右目にそれは突き刺さった。
流石に痛いらしい。トロールが棍棒を持ったまま悶える。
「うおっ! ッ!」
棍棒を避けようと空中でとっさに身をひねったことでバランスを崩し、梟は堕ちる。
落下地点は、ラキアが作り出した聖域の中だった。すぐに痛みが癒されていく。
「チャンスだ、行くぜアイン!」
晃司が暴れるトロールへと殺到する。どんな動きをするか分からない危ない状況だが、隙だらけでチャンスでもある。
「おらっ食らえー!」
膝にコネクトハーツをつきたてる。何度もアインと二人で攻撃を根気よく重ね、ヒビを入れた場所に、渾身の力で短剣をねじ込む。
「晃司、離れてください」
リボルバーを真っ直ぐに二丁構え、アインが指示を飛ばす。パッと引いた晃司が空けた穴めがけて、正確無比な弾道で弾丸が飛び込んでいく。
とうとう片足が砕け散った。
「ふん、これでもう足の回復はできまい。……散れ、倒れるぞ!!」
ラセルタがバランスを崩すトロールの倒れる先を誘導するべく銃を撃つ。誰も居ない方向へ押すように。
ずずぅううん!!
砂煙を上げてトロールが倒れる。暴れようとするトロールにランスが最後の魔法を放つ。
「トドメだ!」
発火先は頭。
頭脳が焼かれれば流石のトロールももう動けない。ゆっくりばたつかせていた手足は糸が切れたかのように落ちた。
「姉妹が戻る前に死体を隠さないとな」
とランスは言うものの、四メートルもの巨人を隠す場所などビーチのどこにもない。
一方、手際よく千代はA.R.O.A.に連絡し、処理を依頼した。
「じゃあボートを迎えようか」
コテージで新しいタオルも確保した。と千代は漕ぎ戻ってくるボートに優しい目を向けた。
●ナイトと姫君
戻ってきたボートにラセルタはうやうやしく近寄り、胸に手を当てて挨拶すると、ボートから降りやすいように手を差し伸べた。
ラキアももう一艘の方で同じように姉妹を手助けする。
「もう大丈夫だよ」
といつの間に用意したのか、ラキアは可憐な花を姉妹一人一人に手渡した。
「サマになってるー……」
女性が苦手な自分には随分縁遠い行動だ、と先にボートから飛び降りたティートは遠い目でラセルタやラキアを見やった。
「この度は急な要請にも拘らず、迅速なご対応本当にありがとうございました」
ユークレースが姉妹を代表して礼を述べ、姉妹は一様にウィンクルムに頭を下げる。
平和を取り戻したビーチは、まだ日が高く、海も穏やかにキラキラと青に輝いている。
「でもあんなのがあったら、もうココじゃ遊べないかな……?」
セイリューが惜しそうに青い海を見やる。戦闘後に貸切に近い素晴らしい景観のプライベートビーチで遊びたかったのだが……半壊している物置小屋の横に巨大なデミ・オーガの遺体が転がる浜辺で遊ぶのはまずそうだ。
しかし、
「あ、大丈夫だよ。うちのビーチ広いから、もっと向こうのほうでなら楽しく遊べると思う。ここが気に入ったなら、是非遊んで行って?」
とパイロープは彼の心配を笑いとばす。
「いいですね。ではお言葉に甘えて」
セイジが頷く。せっかくだから、皆でパシオンシーを満喫したい。
「お兄ちゃんたちと遊んでいーの?! じゃあ、お兄ちゃん一緒に遊んでー」
チャロアイトが笑顔でティートの腕を引いた。
「えっ」
「あの、よろしければ、一緒に遊んでください」
アゲートがチャロアイトの肩を抱いてティートに微笑む。
「っ」
チャロアイトはなんとか子供だと思えば大丈夫だが、アゲートまで育ってしまうと女性として見てしまって、苦手意識が浮上する。ティートは困った挙句、梟に目線で救援を求めた。
梟はニヤニヤとその様子を見ていたが、あまり放置するのも憐れになったか、固まってしまったティートを不思議そうに見ているアゲート達に近寄る。
「ごめんね、坊や調子が悪いんだ(嘘だけど)。代わりにおっさんで良ければ付き合うよ」
「うー……うん、じゃあおじさん遊んでー!」
チャロアイトは一瞬残念そうに顔を曇らせたが、すぐに人の良い笑顔を浮かべる梟に飛びつく。
「よーし、ビーチボール持ってきたから遊ぼうぜ!」
ランスが膨らませたボールを投げあげる。
陽気な声を上げているが、セイジが気が気ではないランスだ。一生懸命互いに分かり合おうと歩み寄って、ようやくセイジはランスに好意を示しかけてきた。そこで美女が五人も現れて、セイジが向こうに靡きはしないかと不安でたまらない。セイジを信用していないわけではないが、それとこれとは別問題だ。嫉妬をしないほど、ランスは人間ができているわけでもない。ランスが目で常に神人を追いかけてしまうことに、当の本人は気づいているだろうか……。
「あ、ビーチボールなら得意。負けないぞー!」
パイロープが勢いよく挙手して応じる。
「お、元気満々か! よっしゃ、俺も混ぜろ!」
彼女達に遊ぶ気力が残っているかどうか心配していた晃司だが、杞憂のようだ。ならば、と勢い込んで美女とのビーチボールに興じることにする。
しょうがないので、ティートもビーチボールに参戦することにした。これなら黙っていても何とかなるだろう。
「……元気なことだ」
大騒ぎは得意ではない、とラセルタは肩をすくめる。
「それでは、お礼にもなりませんがー、コテージにお風呂がありますから、いかがですかー?」
にこにこと微笑んで、フローライトがコテージに大人組を誘う。彼女の手にはラキアから渡した花が五輪。コテージで活けるらしい。
「冷たいお飲み物もご用意できますし、ちょっとしたおつまみもあります。デッキからビーチボール観戦も出来ますよ」
ユークレースも是非と重ねて一同をコテージに誘った。
「お言葉に甘えよう」
ビーチボールよりも随分いい提案にラセルタは口元を緩め、フローライトの招待を受ける。
「行くぞ千代」
問答無用で千代も連行だ。
「じゃあ私もお相伴に預かりましょうかね」
アインが続く。
夜遅くまで、ジェダイト家との楽しいひとときは続いた――。
| 名前:羽瀬川 千代 呼び名:千代 |
名前:ラセルタ=ブラドッツ 呼び名:ラセルタさん |



エピソード情報 |
|
|---|---|
| マスター | あき缶 |
| エピソードの種類 | アドベンチャーエピソード |
| 男性用or女性用 | 男性のみ |
| エピソードジャンル | 戦闘 |
| エピソードタイプ | ショート |
| エピソードモード | ノーマル |
| シンパシー | 使用不可 |
| 難易度 | 普通 |
| 参加費 | 1,000ハートコイン |
| 参加人数 | 5 / 2 ~ 5 |
| 報酬 | 通常 |
| リリース日 | 07月10日 |
| 出発日 | 07月18日 00:00 |
| 予定納品日 | 07月28日 |

2014/07/17-23:54
ぎりぎりになってしまいましたが、無事プランを提出してきました。
セイリューさんの案を参考にロープを使う旨も記載しておいたので、
後は成功を祈るばかりです。
2014/07/17-19:14
返事遅れて申し訳ない。方向性も概ね把握した。
ロープの件は了解。羽瀬川さんと協力して
敵の足を巧くく引っ掛けてみる。
転倒までできなくても敵の動きは阻害できると思うからさ。
浜辺の看板などを巧く使ってロープをしっかり固定したい。
敵の注意を引くのに爆竹を沢山使って気を引くとかも考えた。
ラキアがサンクチュアリⅠをセットしていく。
負傷時の回復はこれで。
2014/07/17-10:02
>ティートさん
了解した。
デミが余所向いてる隙に、姉妹と一緒に気付かれないように静かにボートに乗りたいと思う。
>ALL
プランは提出済みだ。
うまくいくことを願っている。
それでは、リザルトで会おう。
2014/07/17-07:46
…やっぱりしたほうがいいか、わかった。ありがとうセイジさん。
千代さんはまとめありがとう。
夜ぎりぎりまで見にこれるか分からないから、その方向性でプランを書いておいた。
誘導はセイジさんと二人で行って、使える道具があるか聞いてあればオレが取りに行って千代さんかセイリューさんに渡す、余ればボートに繋ぐ
…あればな。
ボートに乗るのはセイジさんお願いしたい
2014/07/17-02:48
んー個人的にはロープで動きを阻害するのは悪い手ではねぇと思うが
短期決戦を狙ってるのにその時間があるかな?って所
神人の俺たちが担当って事になると
アキとティートあたりがボートに行くのであれば
あとは空いてるのは俺か千代、セイリューあたりだけど
俺もダメージ上昇に集中してぇからやってもらうとしたら千代とセイリューにお願いしてもらう形でいいかな?
もし一手を使わない行動であればガンアサルト最中にアインとラセルタが仕掛ければいいかな?って思った
最悪俺が行動不能になったらコネクトハーツは使って構わないから誰かパートナーの火力上昇をしてもらえると嬉しいな
2014/07/16-00:54
全員一通りご挨拶出来たし、今現在の大まかな方向性だけまとめておきますね。
俺が勘違いしている点があれば付け足して貰えると嬉しいです。
◆短期決戦を目指す
戦闘場所は陸、トロールをコテージと姉妹から引き離してから
◆姉妹はコテージから海へ避難させる
誘導、及びボートの付き添いに1名配置。候補者はアキさん、ティートさん
避難中に敵の注意を引いておく必要あり
>数人で引き付けて、目星をつけた場所などに合流する想定…?
転ばせる案だけれど…ガンアサルトで攪乱しながら
トロールの両足にロープないし何か巻きつけるのはどうだろう。
梟さんが敵の目を攻撃してくれるなら、死角を移動するのも容易く出来そうだし。
縛る物が無ければ、シンプルに膝辺りを強火力で叩くのが一番効きそうかな。
2014/07/15-08:56
アキ・セイジだ。
デミであれトランスしておくにこした事は無い。…と相棒が言ってる。
海が避難先で問題無い。
誰かが引き付けている隙にボートで脱出できたらいいと思う。
1人乗っていけば流される心配も減るだろう。オールくらいはあるよな?
誰も希望が無ければ俺がボートに乗っても良いが、六人と言うとかなり満載だな。
ボートの速度は期待しないでくれ。
相棒は「恋心2」をセットする予定だ。
戦いは可能な限りコテージから離しつつ、かつ、姉妹に注意を向けさせずにいきたいと思う。
転倒を狙うのは賛成だ。
さて、どうやって転ばせるか…。
2014/07/15-07:44
ちょっと修正したんで再度発言
お一方の反応が無いけど、締め切り日の時間が取れるか分からなくなったんで悪いけど発言するわ
一応修正が出来なかった時の為にプランには「矛盾が出たら皆に合わせる」と入れておくけど。
戦いは翻弄するにせよぶっぱなすにせよ、フクロウのおっさんには気を引いてもらう役回りでいいかな?
スキルとかないからそれ以外出来る事ないし。一応目や口に攻撃はしてもらおうと思う。…流石にそこは柔らかい…といいけど。
両目潰したら闇雲に暴れそうなんで奴の右目集中して狙うつもり。
あと姉妹を避難させる場合、一応姉妹がトロールの視界に入らないようにしたいな
トロールは普通の人間でも全力で逃げ回れば危険はないらしいし、
火力ぶっぱでいいんじゃない?っと思ったけど…甘い?
あとは避難誘導する人間かな、避難させないならケアに向かう人か。
道具類がコテージにあるようならオレが行ってこようかと思うけど。
あんまり女性相手したくないんだよね。
そんで、これは初歩的な質問だったら悪いんだけど…
スキル持ってないし敵はオーガでもないけど、トランスって必要?
2014/07/14-03:24
うっす!晃司とパートナーのアインだよろしくな!
編成は
プレストガンナー2
シノビ
ライフビショップ
エンドウィザード
だな
スキル的には遠距離が多いな
俺も姉妹の安全を考えると海に避難させた方がいいとおもうが
正直自動回復を持ってる奴に対して短期決戦ができるかどうかが怪しいな
手間取ってたら波に流されて今度は救助が難しい気もする
短期決戦を目指すのであれば
行動が鈍いのを利用してプレスト二人がガンアサルトで翻弄しつつエンドウィザードの魔法でぶっぱなすか
もしくは一か八かで全員で高火力スキルをぶっぱなすかだなー
俺は多少危険だがコネクトハーツによる威力上昇を狙ってみるつもりだ
2014/07/14-02:53
羽瀬川 千代とパートナーのラセルタさんです。
ティートさんは初めまして、セイリューさんとアキさんはこの間振りです。
どうぞ、宜しくお願いしますね?
避難先は悩みどころですが、姉妹さんの安全を第一に
考えるなら、海へ避難する案を推します。
コテージと物置の立地は不明ですが、其処まで離れているとは思えませんし。
物置小屋は既に荒らされている最中ですから、
道具類はコテージ内を探した方が確実かもしれませんね。
遮蔽物が何も無い砂浜や海で戦うのは不利だと思うので、
俺もトロールは陸…物置小屋付近に留めて倒すのがいいかなと。
4mの体躯で自由気儘に動かれたら厄介ですよね…(ごくり)
まずは転ばせるなり足を攻撃するなりして、動きを止めに掛かりたいところです。
倒れてくれた方が急所的な箇所にも攻撃しやすそうですし。
2014/07/14-01:15
(見回し)レベルたっか…
初めまして先輩方。オレはティート、こっちのおっさんはフクロウ。ジョブはシノビ。
この間ウィンクルムとして登録したばかりの新米なんで戦力になれるか不安だけど、よろしく
姉妹をボートに乗せて海に逃がして、トロールは陸で倒すってのは出来ないのか?
のろまで馬鹿らしいし、姉妹を追おうとしても攻撃したらこっちに目標を変えてくれそう。
ロープがあったら海に逃がしても流される心配はなくなりそうなんだけどな、物置小屋にないかな。
戦う時は、おっさんに囮してもらって先輩方には攻撃に専念してもらったほうが良いかなと。
おっさんはシノビでおまけにレベル1、トロールには攻撃通りにくいだろうし。
素早さだけはそれなりだから目の前でうろちょろして気を引くくらいはできると思う
言いたいことまとまってないな…悪い
2014/07/13-21:19
セイリュー・グラシアだ。
ティートさんは初めまして。
羽瀬川さんは今回もヨロシク。
お嬢さん達をどちらに逃がすのが有利かな。
このまま休息用コテージを死守して海に移動する危険を回避するか。
とても泳げそうにないデミ・トロールを海に誘き出す方を有利と取るか。
ただし海だとオレ達も攻撃しづらいし、お嬢さん達が溺れる危険性もある。
加えて敵の大きさは4mもあるし。
海でも色々と工夫しないと、有利になるどころか
不利な状況を背負い込むだけになりかねない。
皆はどう思う?

