戦慄おばけやしき『呪い家564番地』(あき缶 マスター) 【難易度:とても簡単】

プロローグ

●こわ~~い民家
 タブロス市内に、最恐とうたわれるおばけやしきが出来た。『呪い家564番地』という名のおばけやしきは、一見、普通の民家である。
 しかも、廃墟とか古民家などではなく、近代的などこにでもありそうな一般庶民の平屋建ての住宅だ。売家の看板が門戸にひっかかっている。
 ――この家は、常に格安で売りに出されている。なぜなら買った家族全員が必ず不審な死を遂げるからだ……。
 というストーリーがつけられたこの民家型おばけやしき。お客は、家の一番奥にある、写真立てに花を供えて裏口から出る……というミッションを与えられ、一組ずつ家に送り込まれる。
 そこで、恐怖の出来事に襲われるという寸法だ。
 なお、入場料100ジェールを払えば、普通の脅かされ方をする白い花を渡されるが、もっと怖くしてほしい人は追加で60ジェール払えば、赤い花に変えてくれる。逆に、怖さは控えめでという人は、50ジェールで黄色い花に交換してもらえる。
 絶叫マシーンでよくあるような、アトラクションの内部で撮られた写真もあとで購入できるし、リタイアせずに出口まで来れば踏破証明書も買うことが出来る。タブロス最恐のおばけやしきの踏破証明書は、結構レアなアイテムのようだ。
 既に体験した人のレビューによれば、中は本当にどこにでもありそうな民家で、キッチンや風呂、トイレなどもあり、どこでも怖い思いをするという。勝手にテレビがついたり、固定電話が鳴ったり、いきなり何かに襲われたり、とバラエティ豊かな恐怖の体験ができるようだ。電話をとった人は、それはもう身の毛のよだつ思いがしたらしい。
 だがやはり、おばけやしきはネタバレのない方が楽しめるだろう。これ以上の情報は仕入れず、『呪い家564番地』に挑戦してみようじゃないか。

解説

●内容
 タブロス最恐のおばけやしきに挑戦する
 おばけやしきの詳細は秘密ですが、人が演じる系のおばけやしきのようです

●ジェール消費(アイテム発行はございません)
・入場料 100ジェール/人
・黄色い花(脅かし度10%) 50ジェール
・赤い花(脅かし度100%) 60ジェール
・家の何処かで撮られたびっくり写真 80ジェール
・踏破証明書 30ジェール

ライトと脅かし度50%の白い花は、標準でついてきます。
何も指定がなければ白い花を持って挑戦です。

●プランについて
 神人・精霊それぞれの怖がり度を必ず0~10で指定してください。
  怖がり度0:ちっとも怖がりません。興味もなさそうで、総スルー
  怖がり度1:おばけやしきに興味はあるようで、じっくり観察します
  怖がり度2:物音がしたら自分から率先して見に行きます
  怖がり度3:何かあればおそるおそる自分からアクションを起こします
  怖がり度4:少し叫びますが、泣かずに歩いて進めますし、アクションも起こせます
  怖がり度5:びっくりすれば、アクションを起こさず、思わず叫んで走ります
  怖がり度6:びくびくし、走りながらも何とか進めます
  怖がり度7:全部走り抜けるけれど内容は覚えています
  怖がり度8:泣きながら走り抜けます。内容はうろ覚え
  怖がり度9:途中でリタイアします
  怖がり度10:泣き叫んで中に一歩も入れないままリタイアします

●注意
 基本的にウィンクルム単位での挑戦となりますが、プランで双方からの同意があれば合同で一組として描写いたします。
 お化け役は絶対に皆さんに触りません。
 皆さんもどれだけ怖くても攻撃してはいけません。物損もNGです。
 リタイアすると宣言した時点で、電灯がつき、
 お化け役のスタッフが優しくリタイア用の出口に案内してくれます。

ゲームマスターより

お世話になります。暑い日が続くので、一足先にゾッとしませんか。
ちなみに、本気でホラーになるので、ご注意を……うひひひひ……。

リザルトノベル

◆アクション・プラン

(桐華)

  怖がり度:1
赤いお花をお願いしまーす

お化け屋敷っていいよね。このドキドキ感とかさ
驚かそう、怖がらせようって感じの演出がわくわくしちゃう
あと合法的にくっつけるのが良いよね
桐華には、僕がこういうの平気だって知られてるからできないけどー

ね、ね、ここなんか出そうじゃない?いかにも出そうじゃない?
お風呂場はやっぱり鉄板だよね
後子供部屋とか
写真立ての人って、誰なんだろうね。まじまじ見ちゃう
電話かかってきたら迷わず取る!桐華に代わらせたら怒るかなぁ?
桐華さーん。怖いなら怖いって言ってねー。あ、手繋いで歩く?

踏破証明欲しいなー。写真も記念に買う
撮られるからには一回くらいは思い切り怖がっとこう
フェイクの無駄遣い


木之下若葉(アクア・グレイ)
  ◆怖がり度5
(本当にびっくりしたらアクア抱えて走り抜けます)


お化け屋敷
何だかその名前聞くと夏だなって気がするよね

ん。え、行くの。本当に?
いいけれど、俺お化けって言うよりびっくり系苦手だから
変なリアクションするよ。多分


白い花を受け取って民家の中へ

うわあ……いかにもって感じの凝った内装で……
スタッフの意気込み感じるからじっくり見たいけれど……うわあ……
何だろうこれ絶対右からとか壁からとか来るよね
あの窓なんて絶対見るなオーラ出ているものね

アクア、その扉は何か出てきそうだから触らないで欲しいなーなんて
え、これ?コレはほらアレだよ、アクア専用のシートベルト

……ん。無事に一番奥まで言って花供えて帰ろうね



シルヴァ・アルネヴ(マギウス・マグス)
  2:赤

心情
マギはオバケが怖いかって知らないけどさ
もし怖がってそうだったら、いつも守って貰ってるぶん
今日はオレがマギを守るぞ!

行動
という意気込みで、繋いだマギの手をぎゅーっと握る
……なんか微かに笑われたような?

なぜかマギの髪が一筋ピーンと立ってた。
「寝癖か?珍しいなー」とマギの頭を撫でて直していたら
手を緩くにぎり返されちょっと嬉しい。
やっぱ怖いのか?可愛いなー。

『のろいやころしばんち』
って読み方で良いんだっけ?物騒だよな。
でも興味深々だから、マギと手を繋いだままビックリネタを
じっくり観察!
「あの血まみれとか、Σ骨が……とか、内臓どばーとか凄かったな」

何事も無く写真立てに花を供えられる……かな?


信城いつき(レーゲン)
  入場料、赤い花、写真、証明書
怖がり度;5(好奇心の強さで見に行って返り討ちに脅かされ、レーゲンのもと飛んでに帰ってくる)

怖いけど、せっかくだから、とことん行かないと!
あ、なんか向こうの方から音がした。
ちょっと見に行ってくる!(直後に盛大に悲鳴)
怖かった~
あ、今度はあっちで…(以下同様)

お化けに攻撃はしないよ……でもここまで脅かされっぱなしなのも悔しいんで、脅かしかえそうかな
(パーカーを前から着て、フード部分が顔にくるように
ねぇねぇ、これでフード顔にかぶったら、
のっぺらぼうみたいに見えない?
次にお化けが来たらこれで脅かしてみようっと



セイリュー・グラシア(ラキア・ジェイドバイン)
  怖がり度2。
好奇心山盛り。何でも見に行きたい。
白い花とライトを手にいざ行くぜ。
何か物音がしたら見に行かねば!(わくわくわく)
ラキアが不安げに「何か居たらどうするの」
って俺の服の裾握って呟く様子が新鮮だぜ。
怖がる姿も可愛いじゃん。撮影された写真は買う。
踏破証明書もGETするぞ。

何かに遭遇してこそお化け屋敷の醍醐味。
(実際の幽霊等の方が平気というラキアの方がある意味怖い気がするぜ。精霊独特の感性?)
電話が鳴れば率先して取る。何言ってくるかな?
オレオレ詐欺的な内容だったら説教だ(え?
怖がるラキアがいつもより密着率高くて嬉しい。
頼られるのは嬉しいぜ。
最近護られる事が増えてきたから主導権を取り返すぞ。



●白い花、電話
 普通の家だ。少し、古ぼけている以外は。まさかここがタブロス最恐のお化け屋敷だとは、何も知らなければ気づかないだろう。
 ガレージでチケットを売っている人も、一見すればただのフリーマーケットをしている一般市民にしか見えない。
「それではいってらっしゃい」
 セイリュー・グラシアとラキア・ジェイドバインに白い花をわたして、スタッフの青年は無表情で玄関に続く階段を指さした。
「造花でも可憐な君に癒されるよ……」
 どきどきしそうな胸に白い花を抱き込み、ラキアは不安げに家を見上げる。なんだって今日は曇り空なのだろう。雰囲気が出てしまうではないか。
 ガチャンとノブを押して、家に入る。玄関の靴箱の上に、レースの敷物と枯れ切った花が飾られたホコリまみれの花瓶。本当に極普通の建売住宅で、生活感にもあふれている。
「こんなに枯れて腐るまで放っておくなんて……」
 植物を愛するラキアには信じられない光景だ。すぐに取り替えてあげたい。
「……つまり、放っておかれてるんじゃないの。世話をする人が、死ん……」
「やめて。作り話なんでしょ。気配とか、ないし……」
 セイリューが説明しようとすると、ラキアは眉をひそめる。幽霊なら気配でわかるからまだマシだ。だが、作り物には気配がないから驚いてしまう。
 道順などが示されていないので、とりあえず廊下を進む。廊下にはドアがいくつかあったが積極的に開けてまわろうとまでは思わない二人だ。でも、セイリューは物音がしたら調べたいと、注意を払っている。
「どっかで音がしないかなー」
「セイリュー、好奇心猫を殺すって言葉あるよね。何にでも首を突っ込むと危険だよ」
 少し怖い声でラキアは忠告するが、正直に言えば怖いものに自ら突っ込みたくないだけだ。
 ――プルルル、プルルルル。
「!? ひーん、セイリュー!」
 突然鳴り響く電話の音に、ラキアは思わずセイリューの腕にしがみつく。
 だがセイリューは予想の範囲内だとばかりに、
「お、電話だ!」
 どこから鳴っているのかとあたりを見回す。
「音は……ここか! …………え?」
 ――プルルル、プルルルル。プルルル、プルルルル。
 音は鳴り続けている。
 だが、セイリューは困惑したかのように立ち尽くした。
 ――プルルル、プルルルル。プルルル、プルルルル。プルルル、プルルルル。
 音は、『壁の中』から聞こえていた。
 ――プルル……。
 ようやく呼び出し音が止まる。
 無言になった二人はそのまま進んだ。リビングダイニングキッチンに出る。薄暗い掃出窓は曇りガラスで、外が見えない。
 右手の棚の上には電話機と写真立てと花瓶が鎮座している。
「これがゴール?」
 案外早かったな、と拍子抜けしながらもセイリューは花瓶に花を供えるべく、進みだす。
 ――ピリリリリ、ピリリリリ。
「!?」
 突然、電話機が受電した。
「セ、セイリュー!」
 ラキアが止めようとするも、セイリューは今度こそ、と受話器を上げて耳に当てる。
 音は特にしない。
 無言電話……? いや。呼吸音?
『……まど』
 かすかな声がセイリューの鼓膜を震わせた。
「え? 窓?」
 セイリューが左を向こうとした時、セイリューにひっついておどおどと周囲を見回していたラキアが、
「ひぃ!」
 と叫んだ。
 曇りガラスの向こう、誰か人影が張り付いていた。曇っていて鮮明ではないが、こちらをじっと見ている。
「!? セッ……キッ、キッチン!」
「ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……」
 視線が左の窓に集中している間に、背後のキッチンの陰から、白装束の血まみれの女が呻きながら這い出してくる……。
 ぎゅううとラキアにしがみつかれて、セイリューは彼を庇いながらも立ち尽くす。
 ――ツー、ツー、ツー、ツー……。
 電話はいつの間にか切れていた。

●白い花、水場
「ワカバさん、面白そうですねっ」
 先日見たホラー映画をいたく気に入っているアクア・グレイは、ニコニコと木之下若葉を見上げた。
「う、うん……」
 あまり同意しがたい若葉は、あまりこういうビックリ系のアトラクションが得意ではない。
「なんというか、次々購入されては家族が変死するっていう設定が頷けるよね。不気味だけど、普通すぎて何も知らない人なら買っちゃいそう」
 玄関で、うわあ……と小さく呟きながら薄暗い家の中をライトで照らしながら、若葉は眉をひそめる。
「どこからでも来そうで……」
「あっちがリビングでしょうかね。なら、こっちの扉を……」
「いやそんな、行かなくてもいい扉は開けなくても……むしろ、その扉は何か出てきそうだから触らないで欲しいなー」
 え? といいながら、朗らかな笑顔のままアクアは扉を開けてしまった。
「うわ。……洗面所?」
 人二人立てばいっぱいになるくらいの狭い洗面所だった。右手には、型板ガラスのアルミサッシドア。おそらく浴室だ。
 ライトを洗面所に向けると、なんだか茶色のシミが多い。まるで血のついた何かを洗ったような……。
「わー、凝ってる……」
 若葉は引きつったような笑みを浮かべ、ライトを上に動かした。鏡へと。
「わぁ!」
 アクアが歓声を上げる。鏡に血まみれの手形がベタベタついていた。
「っ」
 ぎくりと肩を震わせ、若葉はとうとうアクアの背中から腕を回した。
 また致命的に怖くはない。こういう静的な脅かしなら、ホラーは平気な若葉だから、耐えられる。
「あれ、ワカバさんどうしたんですか?」
 怪訝そうに振り向いてくるアクアを、
「え、これ? コレはほらアレだよ、アクア専用のシートベルト」
 などとごまかし、若葉は、
「早く一番奥まで言って花供えて帰ろうね」
 と先を促す。
 シートベルト? と不思議そうなアクアだったが、すぐに合点とばかりに頷いた。
「なるほど、安全柵みたいな感じですねっ」
 その時、風呂のドアの閉め方が甘かったのだろうか。
 カチャ、……ギギギィ……。
 何もしていないのに、静かにドアが開きだした。
「え……」
 二人して風呂場を注視する。ドアの向こうはごく普通の青いタイル貼りの風呂場だ。
 だが。
 ドサッ!!
 大きな音とともに風呂の天井から首吊り死体が落ちてきた。ブラブラと揺れる死体を眺めるまでもなく、
「!!」
 若葉はアクアを横抱きにして、洗面所から飛び出した。
 焦りすぎて奥ではなく別の廊下を走っていこうとする若葉に、横抱きにされながらアクアは楽しげに、
「あ、そっちに走るとお化けさん居ますよー! 多分!」
 などと言う。
 そして案の定、障子を勢い良く開けて、麻袋をかぶった大男がナタをふりあげながら、
「あ~~そ~~~ぼおおおおおおお」
 とくぐもった声で叫びながら若葉を追いかけてきて、若葉は大喜びのアクアを抱えたまま、しばし民家を右往左往するハメになるのであった。

●赤い花、テレビ
 信城いつきは、怖さ増量の赤い花を握って張り切っていた。
「怖いけど、せっかくだから、とことん行かないと!」
 とかたっぱしからドアを開けては、惨殺の跡のような血まみれの部屋やら、首吊り現場の風呂やらに遭遇して、悲鳴を叫びながらレーゲンの元に戻ってくる。
「あ、あっちから音が。ちょっと見に行ってくる!」
 と飛び出したいつきは、今度も勢い良くノブを引き開ける。
 ピエロが一人、何もないフローリングの部屋の真ん中に立っていた。
「なんだ……」
 しかし、ピエロは耳まである大きな笑顔のまま、くねくねと変な動きをし始める。
「な、なんだよ、なんだよ!」
 くね、くね、くねくねくね!!
 思った以上のスピードで近寄ってくるピエロの不気味さに耐えかね、いつきはドアを閉めて走って戻る。
 怖かったと言いながら戻ってくる神人に、レーゲンは呆れ返っていた。
「いつき、落ち着いて。どうして怖がるのにわざわざ向かっていくのかな」
「だってせっかくのおばけやしきだろ。赤い花も買ったんだし……」
「怖がってるのか楽しんでるのか……」
 ため息一つつき、
「お化けの人に攻撃しちゃ駄目だからね」
 と忠告するも、
「お化けに攻撃はしないよ……でもここまで脅かされっぱなしなのも悔しいんで、脅かしかえそうかな」
 とパーカーを前後ろ逆さに着て、フードをかぶって『のっぺらぼう』に扮しようとするいつきの手を引き、レーゲンはつかつかと進む。
 不気味な家なのだが、いつきが何かやらかさないかと心配なレーゲンには、それどころではない。
「そんなさっさと進んだら面白くないよ! あ、ちょ、このドア、このドアだけ開けさせて」
 いつきはリビングの手前のドアを開いた。
 ラグの上に液晶テレビがぽつんと置いてあるだけの部屋だった。
「テレビか。勝手につくとか言ってたっけ?」
 といつきが言った途端、テレビが映る。
 ザーッと砂嵐が数秒映ったあと、ビデオレターらしき一人の男がカメラに向かって話しかける映像に切り替わった。
「元気にしていますか? お父さんは元気です……」
 と他愛のないセリフが続く。そして突然。
「ウワアアアアアア!!!!」
 絶叫した男は何者かに空中へと引っ張られ、消えた。
「えっ」
 驚いているいつきの手を引いて、
「はいはい、終わったみたいだし、行くよ」
 レーゲンは部屋を出る。
 二人が部屋を出た瞬間、ドサリ、と男と同じ服を着た血まみれの死体人形が床に落ちたが、二人は幸か不幸か気付かなかった。

●赤い花、子供部屋
 ニコニコ笑顔で叶は赤い花を振り振り、呪い家を進む。
「お化け屋敷っていいよね、このドキドキ感とかさ」
 人型に見える壁のシミや明かり取りの窓をよぎる黒い影やらを笑顔で見やり、
「驚かそう、怖がらせようって感じの演出がわくわくしちゃう」
 と言ってのける叶は、まったく怖さを感じていない様子。
「あと合法的にくっつけるってのがいいよね!」
 と抱きつこうとして、サッと精霊に避けられるが、叶もはじめからその反応は見越している。
(桐華には、僕がこういうの平気だって知られてるからできないけどー)
 逆に叶も、桐華がこういうたぐいのものが苦手であると知っている。
 精霊が不機嫌そうなのは、それを知った上でお化け屋敷に連れてきたという事自体が気に喰わないのだろうな、と叶は内心苦笑した。
 桐華にとっては、叶が怖さ増量の赤い花を購入したこと自体も不機嫌の元である。
「桐華さ~ん、怖い? 別にそうでもない? ふふー、大丈夫大丈夫、僕が居るから」
 ぱふぱふと軽く背を叩いて、叶はスキップに近い軽い足取りで歩いて行く。
「ねー。そんなぴったりくっつくなら、手つないで歩く?」
 しばらくして、叶はヒョイと振り向いて、すぐ近くを歩く精霊に声をかけた。
「つなぐかバカ」
 即答する桐華だが、かなりのやせ我慢だ。
 最恐ときいた時点で、何が起こるかとビクビクしてしまう。
「ね、ね、ここなんか出そうじゃない? いかにも出そうじゃない?」
 笑顔で叶が指差すのは、ファンシーな札がかかったドア。
 古ぼけて色が抜けているファンシーな札には、『のお部屋』とだけ書かれていた。名前に当たる部分が黒い油性ペンで執拗かつ乱暴に塗りつぶされている。まるで半狂乱で塗りつぶしたかのように。
「子供部屋~。鉄板だよね!」
 叶はそれはもう楽しげだが、桐華の表情は反比例的にむっつりしていく。
「怖いなら怖いって言ってねー?」
「言うか」
「それじゃーゴー♪」
 問答無用で叶はドアを開けた。
 ――ぎっしりと部屋いっぱいに詰め込まれた黒いおかっぱで着物を着た女の子の人形……。
「あれーこれじゃあ入れないね」
 異常な光景に硬直している桐華はそっちのけで、叶はつまらなそうに言う。
 ギョロリと一斉に人形の目が動く。
「お?」
 ひょいと人形に触ろうとする叶を桐華が叱る。
「そんなもん触るな」
 その言葉が終わるなり、全ての人形の口が、かぱんと開いて人間のような白い歯を剥きだした。
『うひひひいひひひひひひひきひひひーー!!』
 哄笑を浴びせてくる人形を、面白そうに眺めている叶は動く気がないらしい。
 もう我慢の限界だった。桐華はドアを蹴り飛ばすように閉める。その途端、笑い声は嘘のように止まった。
「……桐華、怖かった?」
 さすがに桐華の気持ちを汲んで、その場を離れる叶は、服を掴みたそうに何度か手を開閉する桐華に尋ねる。
「……別に。それより叶が怪我した時のほうが……」
「あはは、わかりやすいウソー」
 お化け屋敷で朗らかに笑う叶は、にこにこと微笑んだ。
「はいはい、強がらなくてもちゃんと泣かなかったの知ってるよ。だからやめてよ、そういうの。この電話出たいなー……壁掘ったらやっぱダメだよね……」
 そう言っていなして、壁から鳴る呼び出し音の正確な場所を探ろうとする叶を、桐華は今日一番の不愉快そうな顔で睨んだ。
(本当、面倒臭い)
 はぐらかす神人が、嫌だ。
「ねえねえ、どこで写真って撮られるんだろうね? どうせなら盛大に怖がってみせようと思ってー」
 どこまでも脳天気を装う神人が。

●赤い花、写真
「なあなあ、ここって『のろいや ころしばんち』でいいんだっけ? 物騒だよな」
「ちょうどここ、三十七区画なんですよね。三七五六四……みなごろしとか」
 ぞっ。
 軽口を言い合って、自分たちの言葉に背筋をぞくぞくさせたシルヴァ・アルネヴとマギウス・マグスは、気を取り直して玄関をくぐる。
 片手には赤い花。もう片方の手で、シルヴァはマギウスの手を握る。
 かすかに笑ったマギウスは、すぐに表情を無に戻し、
「しかしここは……」
 と生活感あふれるくせに不気味な家を眺める。
 だが、
「よっし、行くぞ!」
 目を輝かせてシルヴァが進むので、楽しそうな彼が嬉しくてマギウスも彼の手を握り返して続く。
 精霊が手を握り返したことにシルヴァは喜び、今日は自分が彼を護るのだと決意を新たにする。
(やっぱ怖いのかな、かわいいなー)
 少し意味は勘違いしているようだが。
「写真立てに花を供えるといいますけど、写真は誰の写真なのでしょうね?」
 と話を振ったマギウスは、自分の考えとして、
「自分たちの写真だったりして?」
 と言ってみる。シルヴァとマギウスは顔はふたごのように似ているから、奇妙な写真になるだろうと苦笑しながら。
「隠し撮りの写真が、それなのか? それはそれで凝ってるけど……」
 と言いながら開けた部屋が、テレビの部屋。
 手をつないだまま、ビデオレターを見て、二人は落ちてきた父親の死体をまじまじと見下ろす。
「なるほど、ビデオで異次元に飲み込まれた父親の成れの果てが今落ちてきたということですね」
 と詳細を考えてみるマギウスの隣で、いろいろな角度から死体を観察するシルヴァ。
「結構うまく出来てるぞ、これ」
 作り物だと思っているからちゃんと見れるのだが。
 電話に出て、窓を見て、キッチンの這う女に追いかけられ、麻袋のナタ男に追い回され、子供部屋で無数の人形に笑われ、ピエロに迫られ、風呂でビックリし、血まみれの部屋を飛び出して、ようやくもう一度リビングダイニングキッチンに戻ってきた。
「フルコースだったな」
 と疲れながら、シルヴァはとうとう写真立てを手に取る。
 無表情でじいっとカメラ目線になっている赤ん坊を、抱く女性の写真だった。
「子供の顔が不気味だけど……」
「普通のスナップ写真ですね」
 すこしがっかりしながら、任務である花を花瓶に供える。
 その途端、写真が変わる。
 赤ん坊の顔が中心から螺旋を描くようにぎゅるぎゅる歪み、女性は口が裂けて、満面の笑み。
「うわ!」
 二人はさすがに驚き、足早にゴールである裏口へ急ぐ。
 キッチンは、シンクに臓物、鍋に人間の手が入っていて、まな板の上に骨がむき出しの足首が置いてある以外は特段何もなかった。
「よく出来てるよなー。凄い」
 ひとしきり感心して、二人は堪能した、と裏口から出ようとしたが。
「シルヴァ?」
 繋いだ手がガクンと引き戻され、マギウスは不思議そうに振り向く。
 シルヴァは、リビングダイニングキッチンのドアを注視していた。
「あれ……」
 と言われるままにマギウスがシルヴァの視線を追うと、ドアを覗きこむように、髪の長い赤いワンピースの女が棒立ちになっていた。
 なんだか嫌な気分になり、マギウスは眉をひそめてシルヴァの腕を少し強めに引いた。
「行きましょう」

 外のテントで踏破証明書に名前を書きながら、スタッフが朗らかにシルヴァ達に問う。
「ところで何が一番こわかったですか-?」
「……最後の、赤いワンピースの女の人かな」
「え?」
 怪訝そうなスタッフに、マギウスが別のスタッフから受け取ったビックリ写真を示す。
「ほら、ここにも映ってます」
 壁の電話を探している二人の顔が写っているのだが、背後に赤いワンピースの女がじっと立っていた。
「っ」
 スタッフの顔色が変わったことに二人は気づかないまま家に帰ったが……。

 次の日から諸事情により、『呪い家 564番地』が閉鎖された。
 お化け屋敷に『本物』が出てしまったからという噂が囁かれている。
「もしかして、この女が……?」
 本物の心霊写真を手に入れてしまったのかもしれない。
 その後、しばらくシルヴァは夜中一人でトイレに行けず、マギウスと一緒でしか眠れないようになってしまった。

 しかし、すぐに閉鎖されてしまった伝説のお化け屋敷の踏破証明書は本当にレアなアイテムとなった。
 証明書をもらったシルヴァ、叶、いつき、セイリュー、若葉は、暫くの間とてもうらやましがられたという。



依頼結果:普通
MVP
名前:シルヴァ・アルネヴ
呼び名:シルヴァ
  名前:マギウス・マグス
呼び名:マギ

 

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター あき缶
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 男性のみ
エピソードジャンル サスペンス
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 とても簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 5 / 2 ~ 5
報酬 なし
リリース日 07月03日
出発日 07月10日 00:00
予定納品日 07月20日

参加者

会議室

  • セイリュー・グラシアだ。今回もよろしく。
    お化け屋敷をラキアと思い切り楽しんでくる予定だ。
    お化け(物理)達を触っちゃダメってのは・・・頑張るぜ。
    (色々と無意識に手が出るタイプなのさ・・・)

  • [3]叶

    2014/07/09-02:15 

    はーいお邪魔様ー。叶ちゃんと愉快な桐華さんでーす。
    わっくわくのどっきどきでタブロス最恐に突撃するよ。
    桐華さんが得意じゃないらしいけど僕しーらない。
    悲鳴とか絶叫とか聞こえてくるのかなーってのも、ちょっぴり楽しみだったりするよ。
    ま、なんにしなんにし。お互い楽しんでこよーね。どうぞ宜しくー。

  • [2]木之下若葉

    2014/07/08-23:14 

    お久しぶりですと初めまして。
    パートナーのアクアと木之下だよ。
    揃って宜しくお願い致します、だね。

    こっちは先日ホラー映画を見て目を輝かせていたアクアに誘われてしまってね。
    ん。行くけれどさ。びっくり系、か……。……うわあ……(遠い目)

  • [1]シルヴァ・アルネヴ

    2014/07/06-20:19 

    オッス、初めましての人もいるか?
    シルヴァ・アルネヴと、相棒のマギウス・マグスだ
    よろしくなー。

    “タブロス最恐”のおばけ屋敷って面白そうだよなー
    オレのワクワクが止まらないぞ。

    怖さ増量とかできるらしいけど、どうしようかなー。


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