慟哭屋敷の奪還(あき缶 マスター) 【難易度:難しい】

プロローグ

●悲しき館再び
「オーガ討伐の依頼だ。ちょっと敵も場所も厄介だが、受けてくれるか?」
 厳しい顔で、A.R.O.A.職員はウィンクルムに依頼について説明を始める。
「場所は旧ロバート邸という、山の中の屋敷だ。以前、A.R.O.A.で内部調査をしたって話を聞いた者も居ると思う」
 ウィンクルムによる調査で、旧ロバート邸にはリビングデッド二体とヤックハルスが棲息していることが明らかになった。
「討伐のための準備が整ったんでな、ようやくオーガ退治に乗り出せるというわけだ」
 オーガだけでなくデミ・オーガもいる上、全員自由に動いているため、比較的広い二階建ての屋敷のどこに居るかは分からない――というところが厄介である。
「以前の内部調査の時は、屋敷に電気も水道も通っていなかったんだが、それはこちらで復旧した。機器類は生きていたらしくてな。幸い屋敷の中に入らなくても、手続きだけ踏めば回復したんだよ」
 だが、電気をつければオーガ達は侵入者の存在に気づくだろう。
「奇襲を……ってことなら、電気をあえて点けないってのもありだろうが……」
 職員は顎を撫で撫で、提案する。
「広い屋敷で各個撃破するのは、後ろを別の敵にとられてピンチになる方が可能性が高いぞ。むしろ、電気を点けて、おびき出し、一網打尽にしたほうがいいと思う」
 逃げることも考えれば、広い玄関ホールが戦場として最適だろうと言い添え、職員はウィンクルム達を旧ロバート邸へと送り出した。

解説

●成功条件:デミ・オーガとオーガを倒す

●敵
 デミ・リビングデッド:メイドと貴婦人の2体
  移動速度はゆっくりですが、凶暴
  知性は低いですが、オーガに忠実
  噛み付いて攻撃してきますが、防御力は皆無

 ヤックハルス:ハイエナ頭のオーガ1体
  かなり素早いオーガで鼻が効きます
  伸縮自在の鉤爪で攻撃してきます
  知性は低いですが、卑怯者

●旧ロバート邸
 山の中にあり、人通りはありません。
 二階建てのお屋敷です。豪華な外観と内装で歴史を感じさせます。
 お金をかけて建築しただけあって、崩れそうなところはありません。
 電気や水道は生きているようですので、電気を点ければ暗さは問題ありません。

●旧ロバート邸内部(左右は全て「向かって右・左」です)
・1階 中央
  吹き抜けの玄関ホール(2階への大階段つき)
 1階 右側
  キッチン(裏口つき)、大食堂、倉庫(食料とリネン)
 1階 左側
  メイド部屋(窓なし)、ユニットバス(窓なし)、図書室

・2階 右側
  主寝室、応接間
 2階 左側
  ゲストルーム、トイレ(窓なし)

ゲームマスターより

お世話になっております、あき缶でございます。
この依頼は、以前の依頼『慟哭屋敷の主は今』の続きです。
読んでいなくても問題ありませんが、一度お目通し頂くと
分かりやすいかと存じます。

リザルトノベル

◆アクション・プラン

(桐華)

  屋敷の電気が何処で操作できるのか確認
中に入る必要があるなら、点けるまでは極力気付かれないようにしたい

旅人が一休みする体で、匂いの強い食べ物を広げて誘き寄せ
入口の扉に固いものを噛ませて、突入しやすいように
囮の数が2人を越えなければ僕もついてくけど、基本は桐華にお任せ

敵と遭遇した際、オーガの姿が無ければ誘き寄せる為にも逃げる振り
玄関ホールからは出来るだけ離れないようにしつつ、
後ろを取られないようにも注意して、各部屋の前でばたばた喧しくしようかな
あくまでも逃げてる感じで

敵の姿が3体とも確認できたら、僕はリビングデッド中心に攻撃
オーガに窓や扉のある場所へ向かわせないように注意
今度こそ、倒すんだから


高原 晃司(アイン=ストレイフ)
  いつぞやは倒す事ができなかったが…
今回は絶対に倒してやる!
成長した俺たちの力をみせてやろうぜ

俺はアインの行動補佐をするぜ
ヤックハルスが出てきたら注意しておかねぇとな
恐らくデミ・リビングデッドと一緒だろうから
まずなるべくアインを2階から狙えるように
2階に向かわせる
2階への道はアインと一緒に切り拓くぜ

基本攻撃を受けるのは俺の仕事だ
両手の剣で敵の攻撃を防ぎつつ行動を阻害できそうな部位を切っていくぜ

アインを無事に2階に行かせたら他の仲間の手助けをする
危なそうな奴には援護にまわる

もし2階が無理そうな場合は固執しないでおく
これで負けたらって考えると嫌だしな

ヤックハルスが逃げそうになったらアインに指示をだす


初瀬=秀(イグニス=アルデバラン)
  ようやっとリベンジマッチってとこか
あの時と同じと思ったら痛い目見るぜ?

今回は事前にトランスしておく
(耳元で小さく)
期待してるぞ、騎士殿?
…わかっちゃいたが効果てきめんだな…

囮につられて敵が出てきたら玄関から中に突入
最初はリビングデッドの相手
もう片方はイグニスに狙わせてフリーの方を相手取る
動きを良く見て噛みつかれんように、殴ったら即離れるを意識
リビングデッドを倒し切ったらヤックハルスの相手

ヤックハルスの動きには常に注意
イグニスは扉の前に配置、俺は接近して移動妨害
攻撃は通らんでも1発2発くらいなら耐えられるはずだ
逃走しないように退路を塞ぐ様に包囲
逃げようったってそうはいかんぞ!



羽瀬川 千代(ラセルタ=ブラドッツ)
  持ち物
酢入りの瓶、爆竹、食料

正直まだメイドさんのことを夢に見る時があるんだ
でも逃げていたら駄目だよね
皆と、ラセルタさんと一緒にオーガを倒したい

屋敷へ入る前にトランス
囮役の動きがあるまで扉の前で待機
中の様子を窺えるよう扉は少し開けておく

単独行動にならないように精霊と連携
食料を囮にしてリビングデッドの注意を引く
向かってくる方向が誘導出来れば射撃も狙いやすいかもって
剣を構えておき噛みつかれそうになったら薙ぎ払う
自分の身は自分で守るよ、足手纏いにはなりたくない

オーガとは一定距離を保っておく
攻撃する間に隙を作らぬよう支援
酢入りの瓶を投げつけて威嚇、爆竹で注意を逸らす



アキ・セイジ(ヴェルトール・ランス)
  報告書に色々有ったから対策を立てて現地にいける
不安は多少和らぐよ

◆侵入前
屋敷を一周
ツッカエ棒やノブと窓枠飾等を紐で結ぶ事で裏口を簡易封鎖
逃亡阻止…ま、念の為な

◆侵入
電源投入しトランス
皆と入り、入口を内から施錠しノブを括る
俺達も腹を括るぞ

最初に1Fをクリアにしたい
挟撃を防ぐためだ

まず1Fなるべく固まって捜索
棚や物陰も有るから異臭にも注意して油断せず探索
敵は広間に誘き出しつつ倒す

見終わった扉の前の床に釘を半分打ち込み簡易封鎖
これで窓からも逃げられない
敵が居たら広間に誘う形で倒す

2Fに上がる奴を見送りランスに合流
「あとは囮役の皆が来るのを此処で待つ」

オーガは俺も強打!
「喰らえフライパン!」←朦朧狙い



●おとり
 チカッチカッと瞬きながらも、玄関ホールにある立派なシャンデリアは息を吹き返した。
 オレンジの上品な光が叶と桐華に降り注ぐ。
「……改めて、立派なお宅だねえ……ゲホゲホ」
 叶は玄関扉の脇にあったスイッチに手をかけたまま、ため息を吐き、舞い上がった埃で咳き込む。
 その様子を冷たく見やり、部屋の中央で桐華は持ってきた荷物をほどくと、レトルトパウチをあけ、カレーを皿にあける。暖めた方が匂いは広がるが、火を使うのは危ないから、冷たいカレーで妥協する。
 むわりとスパイスの香りが漂い始めたのを確認し、叶は玄関扉を確認する。
 観音開きの扉には外から棒を挟んであり、うっすらと外からこちらがうかがえるようになっている。こちらを伺っている仲間と目配せをし、叶はあえて足音高く桐華の傍に寄った。
「囮仕事が板についてきたねぇ」
 肩と軽口をたたかれ、桐華の眉間のしわが深まる。
「言っている場合か」
「まぁまぁ、激励しているだけじゃないか。ファイト、桐華!」
 そもそも物音や人の声を出さないと、オーガをおびき寄せる役目を果たしたことにならないだろう。と叶は囁き、ついでにトランスさせた。
 電灯が点き、調理した食物の匂いがして、人の話し声と物音……これだけ揃えば、さすがに目標も気づくだろう。
 ウィンクルムは五感を研ぎ澄ませ、接近する気配がないか細心の注意を払う。

「ようやっとリベンジマッチってとこか」
 初瀬=秀は扉の向こうの桐華達に注意しつつ、はやる心を抑えていた。以前、この館に調査にきたときはまだ力及ばず、オーガを前にして撤退を余儀なくされたのだ。
「イグニス」
 秀は後ろから彼の頭に顎を乗せるようにして、館を覗き込んでいる精霊に声をかけて振り向く。
「あっ、秀様重たかったですか?」
 あわあわとイグニス=アルデバランが神人の頭を顎置きにしていたことを謝ろうとするも、秀はそっとイグニスの耳元に口を寄せた。
「期待してるぞ、騎士様? ――顕現せよ、天球の焔!」
 小さなリップ音と温もりをきっかけに、イグニスの体に力がみなぎる。
 しっぽをピーンと伸ばしたイグニスは、思い切り胸を叩いた。
「お任せを! 三体とも必ず倒して見せますよ!!」
(……分かっちゃいたが、効果てきめんだな……)
 秀だけでなく、他のウィンクルムもトランスを済ませたのか、精霊は皆オーガを倒す力の顕現により、うっすらと光っていた。
「今回は絶対に倒してやる!」
 意気軒昂な高原 晃司が拳を握った時、外にまで漂う腐臭に皆が気づいた。
「うぅぅがぁああ……」
 切なげな吐息めいた咆哮を上げながら、生ける屍のメイドことデミ・リビングデッドのおでましだ。
「……ヤックハルスは? 貴婦人は?」
 てっきり一緒に出てくると思った晃司は眉をひそめる。
「バラバラに行動しているという情報だったからな。つるんでいる訳じゃないんだろう」
 紐を手にしているアキ・セイジは、外から窓や裏口などを封鎖してきたらしい。彼は厳しい顔で自分の考えを述べると、
「各個撃破できるなら、戦況は有利だろう。行こう」
 と突入を提案した。他の面々も異論があるはずもない。デミ・リビングデッド一体でも、一組のウィンクルムだけに任せるのは危険だ。
 一気に扉を開け、まずは晃司とアイン=ストレイフが切り込んでいく。
「アイン、オーガが出たら二階だ! 道は俺が切り開く!」
「ええ、分かっていますよ。でも、無茶は禁物です」
 叫ぶ晃司に対し、アインの返答はおちついたものだ。年齢と経験の差が如実にあらわれた。
「うぅ、何度見ても怖いね……」 
 秀とイグニスに続いて館に入った羽瀬川 千代は、腐りかけたメイドを見て、顔をゆがめた。
 以前、館の調査に来た時に目撃し、逃亡劇を繰り広げたアンデッドを、千代は何度も悪夢に見ている。
「千代、怖気づいている暇はないぞ。いつまでも屋敷の価値も分からぬ輩を、ここにのさばらせているわけにはいかんからな」
 腰が引けている神人を叱咤するラセルタ=ブラドッツだが、彼も自分の神人の夢見を悪くさせているアンデッドには怒りを覚えている。ここで完膚なきまでに倒し、千代の眠りを平穏に導かねばならない。
「う、うん……頑張るよ」
 最後にセイジとヴェルトール・ランスが入り、セイジは扉の鍵をかけてしまった。
「!?」
 ガチャンと大きく響いた錠の音にギョッとする仲間達に、セイジは告げる。
「俺達も腹を括るぞ」
 退路を閉ざし、不退転の覚悟。
 それが果たして吉と出るか凶と出るか……。

●ずれ
 腐り落ちそうなメイドの動きはのろい。集中攻撃を浴びせるウィンクルムたちを眺め、セイジとランスは戸惑っていた。
 固まって捜索すると思っていたのに、皆戦闘に夢中だ。
 そもそも作戦が、他の四組とずれていることに気づく二人。
 困惑したセイジは、助言を求めるようにランスを見上げた。
 ランスは入り口で詠唱態勢で待ち構えておくつもりだったので、捜索に一緒に行く気はないという。
「まだメイドもオーガも来ていない。セイジ一人で館を探すのは危なすぎる」
 賛成できない、とランスは厳しい顔をした。
「挟撃が……」
 まずは一階を確認し、挟み撃ちにならないようにしたい。とセイジは主張するも、
「皆この玄関ホールに居るんだ。セイジが玄関扉を閉めたし、挟み撃ちにはならないさ」
 ランスがそうセイジを宥めていると。
「しょうがないね。もうちょっと囮をやろうか」
 叶が玄関ホールから廊下へと向かいだした。
「叶!」
 桐華が咎めるも、
「桐華は他の子のお手伝いしてあげてね。自分のことは自分でしっかり守ってください。そんで、僕のことは構わないでください」
 と叶は強く言う。桐華が、何を言い返そうかと考えている間に、それを沈黙の了承と取ったのか、叶はパッと笑った。
「君がそういうの嫌がらない子で、僕とっても嬉しい。大丈夫、鬼ごっこは得意なんだから」
 他の部屋の方へ向かおうとする叶を、セイジが追う。
「俺も行く!」
 叶が敵を誘い出すつもりなら、セイジの思惑と同じだ。複数で行けば、大丈夫だろう。
 ランスは迷う。一緒に行くべきか、それとも……。
 その時、彼は不意に二階に気配を感じた。
 ランスは、一人だけ戦闘に加わっていなかったことで、貴婦人リビングデッドの出現に気づくことが出来たのだ。
「二階だ!」
 ランスの声に、いち早くアインが階段を見上げ、
「ヴァアアア……」
 と吠えながらよろよろと近寄ってくるリビングデッドに銃弾を浴びせた。
 秀もアインの発砲より一瞬遅れて、精霊に指示を飛ばす。
「イグニス、今だ。あっちにぶちかませ!」
「はいっ」
 元気よく返事をし、イグニスの杖から貴婦人へエナジーが注ぎ込まれる。
 貴婦人の止まって腐った心臓から発火。
「ヴァアアアア……!」
 悲鳴をあげながらも死に切れない貴婦人が、古ぼけたボロボロのドレスごと火達磨になって、階段を転がり落ちてくる。
 彼女の起きざまを狙い、桐華が動く死体を切り刻む。
「畜生、オーガはまだかよ!」
 マンゴーシュとボーンナイフでメイドをめった刺しにしながら、晃司は苛立たしげに叫ぶ。
 ずっと入り口前でオーガの出現を待ち構えるつもりだったランスだが、やはりここで待ちぼうけなど出来るわけがない。
 桐華と共に神人の後を追おうとするが、燃え続ける貴婦人が邪魔をする。
「知能は低くても、卑怯者らしいし……」
 メイドが噛み付きそうになるのを剣で払いのけ、千代は未だ現れぬオーガについて思案する。
 動物でも、危ない時は身をひそめて様子を見る。
 ヤックハルスもまた、人間がどのように動くのか伺っているのかもしれない……。
「どけ、こいつの止めは俺様がさす。千代の安眠のためにもな」
 秀の前に腕を出して制止し、ラセルタはメイドにピストルを突きつけた。
「うがぁあうっ」
 ピストルごと腕にかぶりつこうと、メイドが口を大きく開いた瞬間。喉の奥、脳幹めがけてラセルタは弾丸を放った。
「うぶっ」
 ぱぁんっとメイドの醜い崩れた顔が崩れ、くたくたと首から下が力を失う。
「邪魔だ!」
 アインやランスの協力も得て、桐華がようやく貴婦人を倒し、叶達を追おうとしたとき。
 ドガァンッ。
 大きな破壊音が廊下から響いてきた。
「オーガだ!」
 晃司が叫ぶ。リビングデッドを全て倒した今、破壊音を出す者などひとつっきり。
「あのバカ!」
 桐華が舌を打つ。
「セイジ!」
 音のほうにはセイジと叶が居るのだ。
 走り出す桐華とランスに皆が続く。

●ゆだん
 そもそも人間である神人と精霊とでは、身体能力に大きな差がある。神人はオーガとの戦闘に耐えうる力を持たない。だが、精霊にトランスで、オーガに対抗する力を与えることが出来る。
 つまり、オーガにとって神人は危険な存在であり、倒しやすい存在。ならば……見つけ次第、屠ろうとして当然だ。しかも、精霊を伴わないならば尚更のこと。
 廊下も叶がつけたのだろう。煌々と灯りがついていた。
 そこで一同が見たものは――へたり込むセイジに爪を振り下ろそうとするハイエナ頭のオーガ、そして倒れ伏す叶。その奥に、砕けたドア。
 千代は青褪めながらも、とっさに用意していたモノを投げる。
 それはオーガの脇をすり抜け、落ち、破裂する。
 バチバチバチバチッ。
 けたたましい音がオーガの後ろで鳴り響いた。
「?!」
 爆竹に驚き、オーガが振り返った。
「これ以上どなたも怪我されないうちに倒さなければ! お覚悟!」
 イグニスは、オーガがこちらに向き直る前にと、すかさず最後の『乙女の恋心』を放つ。
 音と急な熱に混乱するオーガへ、瞬時にランスは朝霧を発生させた。充満する霧で、オーガの視界が奪われる。
 素早く桐華が霧に飛び込み、二人をこちら側へ引きずり出した。
 秀がぐったりした叶を受け取り、広い玄関ホールへと奔る。
「攻撃が通らなくても、一発二発なら耐えられると思ったんだが……」
 秀は背負った叶が息をしていることに心から安堵した。気絶しているだけのようだ。
 いつまでも狭い廊下に居るのは危険だ。千代も、呆然としているセイジの背を押し、秀に続く。
「オーガが逃げる前に、玄関へおびき出せ!」
 秀が後方へ叫ぶ。廊下はオーガ一体でギリギリの幅だ。ヤックハルスの横をすり抜け、挟み撃つことは出来ない。
 オーガは見えづらい視界でも、標的が消えたことに気づいたらしい。ウィンクルムを追いかけ始める。
 玄関ホールへと誘導するように逃げながらも、ラセルタは銃を撃った。
「貴様の相手はこちらだ」
 神人から注意をそらさなければならない。彼らは、精霊に比べれば無力に近いのだから。
「アイン二階だ! もう邪魔はいないしな!」
 走りながら晃司が併走する精霊に改めて指示する。
「ええ。でも晃司も一緒に二階。私の後ろにいてもらいますよ」
「なっ……攻撃を受けるのは俺の仕事で……」
 戸惑いを見せる晃司にアインは真顔で告げる。
「見たでしょう。神人がオーガの攻撃を受けるとどうなるか」
 今までのデミ・オーガやネイチャーとは訳が違うのだ。神人は精霊に力を与えることは出来ても、自らはオーガに対抗する力をほぼ持たない。精霊とてトランスしなければ、オーガを倒すことは出来ない。それほどにオーガは強大な存在なのだ。
「……わかった」
 アインの真剣な声音に、本気を知った晃司は素直に頷いた。
 二人で階段を昇り、玄関ホールを俯瞰できる位置をとった。
 すでにオーガはホールにいる。視界がまだ霧ではっきりしないからか、片足をカレーに突っ込んでいた。
「早く私の後ろへ。いつ逆上してこっちに向かってくるか分かりませんから」
 ハイエナ頭に標準を向けつつ、アインは晃司に指図する。
「わかった。絶対に倒してくれよ」
「お任せを」
 晃司の声が落ち着いた。先ほどまでの激情は鳴りをひそめ、冷静さを取り戻せたようだ。アインは少し安堵し、狙いを定め、オーガを撃った。
 遠距離攻撃を四方八方から受け、単純なるオーガはその度に攻撃者へ突進しようとしては、背に別の攻撃を受けて、突進の方向を変えた。
 素早いオーガに中々攻撃クリーンヒットとはいかなかったが、それでもジワジワとオーガを傷つけ消耗させていく。
 そのうち、埒が明かない状況に業を煮やしたか、オーガはそわそわし始めた。
「退路を塞ぐ! 逃げようったってそうはいかんぞ!」
 と、逃亡の雰囲気を感じた秀が、ナイフを手にオーガへ迫ろうとするのを、立ちはだかって止める桐華。
「進路妨害なら俺がやる。アンタは後ろに下がってくれ」
「だが……」
 桐華は秀に続けた。
「人が怪我するの、叶が嫌がるんだ。アイツの注文、多いから」
 秀は頷き、ナイフを鞘に収めた。粗暴で大雑把なセリフだったが、桐華の心配は伝わった。だから秀は、彼の意思を尊重する。
「……わかった。頼んだぞ」
 右廊下へと走っていく桐華に声をかけ、下がる秀に、廊下の左側を護るイグニスも涙目で告げた。
「秀様、無茶はしないでください……」
 淡々とも思えるほど冷静にラセルタは銃を撃つ。
「さすがオーガ、何をしてきてもおかしくないと思っていたが……。これ以上は神人に、オーガの指一本たりとも触れさせん」
 ラセルタの背後には、物陰に隠れる千代と叶、セイジがいる。
「大丈夫?」
 回復系のジョブの精霊はいないし、特に手当てが出来るものも持ち合わせていない。それでも出来る限りのことを、と千代は囮用に持ってきていた食料からジュースを、セイジに差し出した。
「……俺は大丈夫だ。オーガの爪を避けようとして、滑っただけだから。それより叶を。不意打ちだったから何にもできなくて…………」
 ジュースを飲み、気を落ち着けたセイジは一つ頭を振って、立ち上がる。
 そしてフライパンを握ってオーガへと向かった。
「ちょっと!」
 千代の驚いた声に、
「一矢報いないと気がすまない」
 と返し、セイジは思い切りフライパンを振りかぶる。
「喰らえ、フライパン!」
 ガイーンッ――良い音がした。
 ヤックハルスがふらつく。
 すかさず、ランスがエナジーをオーガへと注ぎ込む。
 マトモに喰らった魔法に、ヤックハルスは苦しみ悶えた。
「……貰いました」
 呟いたアインは、静かに引き金を引く。
 正確無比な一撃――スナイピングで、オーガの首が吹き飛んだ。
「……よし」
 かみ締めるように、晃司は呟き、倒れ伏すヤックハルスの遺骸をじっと見下ろした。

●あんど
「う……」
 痛む肩をかばいながら、叶は上体を持ち上げた。
「気がついた!? よかったぁ」
 いきなり視界いっぱいに飛び込んできたのは、千代の顔。
「あれ、僕……?」
「オーガの不意打ちをくらって気絶していた。一緒に居たのに、何も出来ず、すまない」
 隣に腰を下ろし、セイジが頭を下げる。
「君は?」
 だが、叶はセイジに真剣な顔を向けた。
「え?」
「君はなんともない?」
「あ、ああ。俺は大丈夫」
 すると叶は心から喜んだのだ。
「よかったぁ~」
 と。
 そして、自分を取り巻くウィンクルムたちを見回し、頷いた。
「うん。他の皆も大きな怪我はしていないみたいだね。オーガも無事に倒せたみたいだし、何より何より」
 そして、自分の精霊の顔で視点を止め、朗らかに言う。
「ああ、桐華も怪我しなくてよかった。君が怪我するのは嫌だからね。そんな怖い顔しないの。ちゃんとお手伝いできた?」
 なんでもないような叶に、桐華はとうとう怒鳴った。
「馬鹿! 俺だって叶が怪我するのは嫌だ! 普段『護って』とか言うくせに、何が『構わないでください』だ!」
「彼はちゃんと援護してくれたぞ。保証する」
 差し出がましいようだが、と遠慮がちに秀は口を添えた。
「………………ごめんね」
 俯き、叶は小さく呟く。生まれながらの神人として、幼い頃からオーガに襲われ続けていた。オーガの恐ろしさは知っていたはずなのに。桐華を得て、気が大きくなっていたのか。もしかしたら、子供の頃の経験があるから一人でも平気だと思い込んでいたのかもしれない。
「フライパンの威力にはびっくりした。台所にいるセイジにはヘタな事は言えないな」
 ランスはセイジの手にまだ握られている黒いそれを指す。
「なんだよそれ」
 頬を膨らませるセイジに、ランスは笑う。
「なんてな」
 そして一気に笑みを消した。
「俺だってぞっとしたよ。あの時、止めるか、一緒に行けばよかった」
「ランス……」
 セイジが言葉を探していると、
「ふん、お礼参りも済んだ。重傷者も居ない。ならば、さっさと撤退するぞ。次は、落ち着いてこの屋敷を見物したいものだな」
 ふいと廊下からやってきたラセルタが一同に帰還を促す。
 廊下の電灯は消えていた。ラセルタが消してきたらしい。
 ウィンクルム達は互いに、言いたいことは戻ってから……と、誰もが何かを抱えながら山を降りることにしたのだった。



依頼結果:普通
MVP

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター あき缶
エピソードの種類 アドベンチャーエピソード
男性用or女性用 男性のみ
エピソードジャンル 戦闘
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 難しい
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 5 / 2 ~ 5
報酬 多い
リリース日 06月19日
出発日 06月29日 00:00
予定納品日 07月09日

参加者

会議室

  • [16]初瀬=秀

    2014/06/28-23:57 

    そしたら敵が来たら玄関から突入だな
    イグニスを図書室前の扉に配置する、これで左側への逃走は制限されるかと
    (メイド部屋とユニットバスに窓がないため)
    俺らはリビングデッドの相手をしとく、イグニスの火力でさっさと片付けられれば
    ヤックハルスの応援に向かうからな

  • [15]叶

    2014/06/28-23:02 

    はぁーい、じゃぁとりあえず桐華さんを屋敷にそぉいして敵さんの登場を待ちたいところ。
    基本的には周りの子の補佐をお願いする方向だよ。僕も頑張る。
    追撃できたら繋げてって、皆が攻撃しやすい状況に持って行けたら幸い、かな。

  • [14]アキ・セイジ

    2014/06/28-22:30 

    挟み撃ちを防ぐ為にまず1Fをクリアにしておきたい。
    それには俺も動くつもりだ。入口は相棒が守っててくれる。
    敵を見たら広間に誘う形で、な。

    ヤックハルスの逃亡防止に裏口は屋外から軽く封鎖(ツッカエ棒を噛ませるとかで)する予定。
    また、探索が終わった1Fの扉は、床に半分ほど釘を打ち込むことで簡易的に封鎖する。
    逃げられないようにするためだ。
    扉は観音開き含めて大抵廊下や広間の側に開くからな。
    ま、俺達も中にはいったら敵を倒すまでは外に出られないつもりで頑張るしかないってことさ。

    プランは提出した。
    リザルトで会おう。

  • [13]高原 晃司

    2014/06/28-05:26 

    ああ、流石に無理矢理はいかねぇから安心してくれ
    行けたら2階へ行って真上から射撃できる体制にもっていきてぇかな
    んじゃあメイン囮は桐華で大丈夫か?

    俺はなるべくアインが2階に上がれるようにアシストをしておく
    頑張れば敵の攻撃を防ぐ事ぐらいはできそうだしな

    もし2階に上がれなくともスナイピングでヤックハルスの足を撃って行動を阻害もできるだろうから
    上手くいけば桐華達素早い奴が追撃すればいいと思ってるぜ

  • [12]初瀬=秀

    2014/06/28-02:50 

    魔法2種持ってってもらえるのがありがたい。
    こっちで無印恋心2発持ってくんでこれでリビング対応できるかと思う。
    室内でカナリアをぶっ放す度胸はなかった。
    防御力皆無ってことで神人の攻撃もある程度通るんだったら儲けもんだが……どうだろうな

    志望者がいるなら囮は任せるぜ。

    フライパンも立派な武器だ……まあ好き好き、かね?
    効果は魅力的だが。

  • [11]アキ・セイジ

    2014/06/27-23:10 

    >初瀬さん
    じゃあ、「朝霧」による弱体化は相棒(ランス)に頼むとするよ。
    そうするとランスの攻撃魔法は、「無印恋心」一発のみということになる。
    朝霧の消費MPまじ大きい。
    魔法全般の消費MPがおおきいんだよな、わりと切実だ。

    >ALL
    というわけで俺のほうの魔法は「朝霧」と「無印恋心」だ。
    恋心はヤックハルスに使うので、リビングに魔法の援護はかからない。
    そのつもりでいてほしい。

    志望の人が複数居るから、囮はお任せするよ。

    クリティカルすると相手が1回朦朧となるフライパンというのをこの前手に入れたけど、
    …もってくかなあ(笑
    ヤックハルスが一回朦朧判定くらったらもうけものだが、ビジュアル的になんかチガウ感満載だ。

  • [10]叶

    2014/06/27-22:15 

    はいはーい、囮だったら、うちの桐華さんに押し付け…任せれるよ。
    火力は心許ないけど、エトワール使えば敵の攻撃かわせる方だと思う。

    合流は、扉閉めちゃうと大変かなぁって印象だし、少し開いた状態で置いといて、
    いつでも突入しやすい感じにしたら、どーだろ。

    と。アインに二階に配置して貰えたら心強いけど、
    敵の位置にもよるし、無理はしないでほしいってのが本音かな。
    勿論、行けそうな状況なら、サポートは幾らでもー。

  • [9]羽瀬川 千代

    2014/06/26-00:12 

    ヤックハルスは嗅覚が鋭くて、リビングデッドは食欲旺盛なようだから
    食料と囮で誘き出すのは良さそうですね。
    一人は流石に危険だと思うので、最低二人が妥当かな…?
    ただ、もし玄関が使えなくなったら合流までが大変そうではあるかも。

    高原さんたちが狙撃に回るなら、俺たちはリビングデッドの相手や
    他の方の攻撃補佐に回ろうと考えています。
    リビングデッドには距離を取って攻撃出来た方が有利に動けそうだし、
    スキル発動の時間も稼げたらいいな、と。

    叶さんの仰っていたように、オーガが同時に出て来ない場合は
    ある程度泳がせてみるのが良いと思います。

  • [8]初瀬=秀

    2014/06/25-15:05 

    囮か…1人、2人くらいなら向こうも数的有利で出てくるだろうか
    こう、山の中で迷って避難してきた体でついでに休憩っぽく食糧を広げてみるとか。
    囮立てるなら残りは敵が釣れた段階で突入って感じかね?

    動きの遅いデミはともかくオーガは確かに対策とらんと逃走されそうだな
    スナイピング、命中回避低下と合わせれば成功率上がるかもしれんな
    あとは戦闘中に2階に回り込む方法か

    問題は俺の相方は朝霧の戸惑いが使えないってことだが。(まさかの最大MP不足)
    うちのができるのは乙女の恋心(無印2発・Ⅱ1発)カナリアの囀り(1発)のどれかだな
    なんで狙うならアキの相方のランスに頼まなきゃならんのがな…

  • [7]高原 晃司

    2014/06/25-02:57 

    んー…あんま知性は高くねぇから肉とか食料で誘き寄せるかあとは誰かひとり囮になるかどうかだな
    明かりをつけておけば不意打ちを狙ってくるだろうが出てくると思うんだよな

    オーガを逃がしたくないのであれば
    玄関ホールの2階部分にアインを配置して上から攻撃や逃げそうであれば狙撃して逃がさないようにするっていうのはどうだ?
    出来るかどうかわかんねぇがスナイピングで足を狙って行動阻害できるかやってみる

  • [6]アキ・セイジ

    2014/06/24-00:14 

    五人目、アキ・セイジだ。よろしくな。
    前回は参加できなかったので、今回参加できて嬉しい。
    AROAの報告書あたりで知ったと言う事で合流する予定だ。

    相棒はウイザード、使用魔法はアクションによって変えるつもりなので現段階では未定だ。
    乙女の恋心(炎の単体攻撃魔法)とカナリアの囀り(プラズマの範囲攻撃魔法)と朝霧の戸惑い(敵の命中回避低下)が使用の候補だ。

    戦闘場所は玄関広間というのにも賛成。
    ただし、ヤックハルスが素直に出てきてくれるかが心配かな。なにか一手要ると思う。

  • [5]叶

    2014/06/23-23:55 

    わぉ。寂しい思いは早々に免れたや。やっぱり知ったお顔が居るって心強いねぇ。

    電気って屋敷の外でブレーカーとか弄れるのかな。
    懐中電灯ぐらいは持ってった方が困らないかなーって思いつつ…
    誘き寄せる時は、灯りをつけた上で大声で騒ぐとかしたら、出てきてくれるかな。

    何よりオーガを逃がしたくはないから、姿の見えてるのがリビングデッドだけとかなら、
    あんまりがつがつ戦わないで、ちょっと逃げる振りとかしてもいいかなって思ってる所。

  • [4]羽瀬川 千代

    2014/06/23-22:21 

    羽瀬川 千代です。皆さん宜しくお願い致します。
    今回こそはお屋敷の奪還、成功させたいです。

    俺も玄関ホールでの戦闘が良いと思います、広さは十分にありましたし。
    敵を誘き出すなら、俺達も敵に囲まれないように
    何かしら工夫したほうが良さそうですね…。

  • [3]高原 晃司

    2014/06/23-00:10 

    晃司だぜ。前回はオーガをちらっと見ただけだったが今回は思う存分戦えるのか!
    この前は悔しい思いをしたが…
    今度こそ勝ってみせるぜ!

    電気も回復してるし変な場所から潜入するよりは堂々と入ってった方がよさそうだな

  • [2]初瀬=秀

    2014/06/22-15:06 

    初瀬だ。相方はエンドウィザードのイグニス。
    叶はまた会ったな、今回もよろしく。
    俺も玄関ホールでいいんじゃないかと思う、逃走対策とかも考えんとな。

  • [1]叶

    2014/06/22-04:03 

    はぁいお邪魔様ー。カナって言います。相方はテンペストダンサーのキリカ。
    前回はこっそり探索するしかなかったけど、今回は大暴れできそうだねぇ。

    とりあえず職員さんにもオススメされてるし、
    玄関ホールで誘き寄せ、でいいんじゃないかなって意見を上げつつ、
    のんびりとご一緒してくれるお仲間さんを待ってまーす。よろしくね。


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