


繋がらない端末。
行き先を知らない時間。
今朝から姿を見ない君を探して、街中をふらりと彷徨って。
幾度も携帯端末に目を落とす。
――せめて、行き先くらいは教えて欲しかった。
そこまでの義務もなければ、聞く権利も実際はないのだけれど。
街を歩いて、通い慣れた店で時間を潰す。
隣に君がいないことがこんなにも退屈だなんて思いもしなかった。
それでも、君はなにも、今も、知らせてはくれなくて。
昨日は何か気に障ることを言ったかな、なんて詮のないことを考えて。
持て余した時間の中、結局すぐに会いたくて、君の部屋の前で待ってしまう。
突然の雷雨に不安を駆り立てられながら。
時間を見遣って、過ぎる時間があまりに遅くて。
不安で、心細くて、怒りにも似た感情すら湧きおこる。
この感情を、人は何と呼ぶのだろうか。
会いたい。
会いたい――。
陽が落ちて、しばらくたった頃。
「どうしたの?」
聞きたかった声が降り落ちてくる。
目を向けて。
「――ッ!」
思わず抱き締めた。
どこへ行っていたの?
なにをしていたの?
疑問符は溢れてくるのに。
戸惑う君に、感情ばかりが先走ってしまう。
会いたかった。
たったその一言が、唇から零れるまで、もう少しだけ。
僕の心の内側を聞いてよ――。


丸一日、連絡がつかなかったパートナーへ感情を吐露してください。
言い合っても大丈夫ですが、喧嘩はしない方向でお願いします。
待つのは、神人さんでも精霊さんでも大丈夫です。
部屋の前としてありますが、パートナーさんが来そうな場所なら特に問いません。
連絡がつかなかった側(待たせた側)は、理由を話して慰めてあげるもよし、ひたすら宥めすかすもよしです。
予定を伝えたのに忘れていた可能性は大いにあるかもしれません。勘違いで寂しくなっちゃっただけかもしれません。
独占欲が勝り過ぎて、妄想に掻き立てられて感情的に怒られるかもしれません。薄着だったらなおさら……。
なんかよくわからないけど、捨て犬捨て猫みたいな目で見つめられるかもしれません。なんかよくわかんないけど。
パートナーが突然、音沙汰もなくいなくなったら、相方さんはどんな反応をするのかな、という感じです。
1日と言わず、2~3日前から音信不通、とかでも大丈夫です。
落ち着かなくてうろうろしていたので、300Jr使用しました。
丸1日でも、音信不通になると不安だったりします。
その感情がどんなものか、興味津々です。
待たせた側が、待っていた側を見てどんな反応をするのかも気になります。
本気の失踪から、ちょっと笑えるお話まで幅広くお待ちしておりますね。


◆アクション・プラン
ミサ・フルール(エミリオ・シュトルツ)
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最近 護衛の仕事が忙しいみたいで、夜中にエミリオが出て行く姿を見かけるけれど・・・。 無理していないかな、怪我していないかな。 3日も音信不通だなんて心配だよ。 私は不安を紛らわす為に今日もエミリオの部屋で彼の帰りを待っていた。 ・・・すごい、雨・・・(雷が落ちて) ひゃっ?! ・・・早く、早く帰ってきて、エミリオ・・・っ 突然背後から誰かに抱きしめられ、でもそれが彼だと分かると泣きじゃくりながらエミリオに抱きつきます お帰りなさい! 心配したんだよ・・・! 彼の胸に顔を埋めると女物の香水がして、知らない香りに胸がざわつきます。 ねぇ、本当に仕事に行っていたの・・・? わ、わたし、私のこと、ひっく、嫌いになった・・・? |
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待たせた側 リヴィエラ: (駆け寄ってきたロジェに) お父様の声が…聞こえた気がしてお屋敷に行ったんです。 お父様の幻でも良い、ロジェに悪夢を見せないでくださいって言いたくて… そうしたら、奥から黒ずくめの人達が数人出てきて、 私…人ごみに紛れて必死で逃げたんです。 もしかしたら、あの人達はマントゥールなのではないかって… えへへ、この擦り傷は、その時に転んでしまっ―― (嗚咽を漏らすロジェに抱き付かれ) ロジェ…? 私、心配をかけてしまったのですね。 (ロジェの背を優しく撫で) ごめんなさい…もう無茶はしません。 貴方の傍から離れません。 大丈夫です、貴方に無断で私は死んでしまったりしませんから…ね? |
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朝から玄関先で三日前に帰ってくるはずだったその家の主を待つ 専用の着信音が鳴る気配がない… 一日なら家族に捕まったのかと思うけど昨日も帰ってこなかった …変なことに巻き込まれたのか? 雨が降り出して更にマイナス思考に。 傘取りに行くか一瞬迷うがこの場を離れるのが不安でそのまま。 一週間前のチハヤの顔が兄の顔と重なり頭の中ぐるぐる。 ちーくんを男の人として気になり始めてるからちーくんも帰ってこない? 不安で張り裂けそうになってたところチハヤ帰宅 胸叩いて色々文句言うが言葉にならず 抱き着いた時の彼の匂いと必ず戻ってくるという約束に安心 関係の進展を望んでも罰は当たらないのかも…と考える 心配させた罰としてお泊りを要求 |
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疲れて帰宅 精霊を心配させてはいけないと笑顔 ただ今戻りました 遅くなってすみません 顔を合わせた精霊が僅かに眉を寄せる カレーの匂いのせい? 着替えてきますね 手首を掴まれる 手当てをするもう一人の精霊の姿が浮かび …えぇ、ちょっと どう言うか言い淀む 精霊の硬い声 何を考えているかは分からないが カルヴァドスといたことを揶揄されているのは分かる 怒気と瞳の奥の哀しい色に言葉が出ない 精一杯暴れて振り解き、そのまま抱き着く …拒むなら、こんなことせずに逃げます 目を見て 今日のできごとは今から順番に話します ただひとつだけ先に謝まらせてください 逃げて、ごめんなさい 幸せな気持ちになれないキスを…ジューンと交わしたくなかったんです |
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あ、あれ? ザシャ…? どうしてうちに? というか、いつからここに…? あ、朝からっ!? あっ そうでした…携帯、忘れちゃって たぶん、部屋にあると思います AROAに用事があって 新しい精霊のことでした …ごめんなさい、心配かけて はい、元々そのつもりだったので…… いつもとどこか違うザシャに戸惑い え、えっと…あ、どうぞ入ってください どうしてここまで自分に執着するのか 特に自分が好きで、というわけでもなさそうだ どうしても彼への疑問は残ってしまうが、いつものように彼を家に入れる え? 今なにか言いました? …そう、ですか |
●
「遅い」
マユリが扉を開きかけた途端、声が飛んだ。
「あ、あれ? ザシャ……?」
「……もう昼だぞ」
蹲るように座り込んだザシャが、マユリを見上げる。
「どうしてうちに? というか、いつからここに?」
様子を見るに、待ちくたびれたと言わんばかりだ。つい今しがた来たわけでもないだろう。
「いつって……朝」
「あ、朝からっ!?」
軽く数時間は待っていたことになる。
「どうして……?」
「携帯鳴らしても出ないから、なにかあったのかと思った」
「あっ。そうでした……携帯、忘れちゃって」
出先でマユリ自身も多少不便な思いをした。
「たぶん、部屋にあると思います」
「……なにしてたんだ?」
「え?」
「朝から、なにしてたんだよ」
朝から出かけるような用事。しかも、こんな時間までかかるようなこととはいったい何なのか。
ザシャの疲れた様子は、もやもやとした苛立ちと不安も手伝っているのかもしれない。
「A.R.O.A.に用事があって」
「……A.R.O.A.? なんでオマエだけなんだよ」
A.R.O.A.の用事ならば、ザシャも同行するべきだったのではないのだろうか。
そんな空気を察したのか、マユリが言葉を継ぐ。
「新しい精霊のことでした」
「精霊絡み……」
「……ごめんなさい、心配かけて」
ザシャは眉をひそめ、ふっと短く息を吐いて立ち上がったかと思うと、マユリの腕を強く掴んだ。
「ザシャ……?」
「オマエにはオレだけがいればいいんだ。他の精霊なんていらない」
「はい、元々そのつもりだったので……」
必要であれば考えも変わるのだろうが、今のところ、マユリは新たな精霊との契約を考えてはいない。
そう伝えても、ザシャはどこか不安げで、いつもと少し様子が違って見えた。
「次、そのことで呼び出されたら断れ」
「え、あ、でも……」
「いいから断れ」
ザシャは、なにか言いしれない感情を抱えている。
それは分かるのに、その感情が何かを明確に知ることは、マユリにはできなかった。
掴まれた腕がそろそろ痛い。
「え、えっと……あ、どうぞ入ってください」
扉を開けて中へと促す。
ひとつだけ分かるのは、ザシャがマユリに執着をしていると言うこと。
自分だけがいれば――。
そこまで言ってしまえるのに、その根拠が分からない。
特別、マユリを好きだと言うわけでもないように思えた。
だとすれば、彼のこの執着の正体はなんなのだろうか。
「……なあ」
ザシャがぽつりと、ほとんど聞き取れないような声で言葉を漏らす。
「オマエ、いなくならないよな……?」
「え? 今何か言いました?」
マユリの耳には届かなかった言葉。
ずっと、気になっていた。
一時の幻であったとはいえ、マユリを失うかもしれない怖さを味わったザシャは、訪れるかもしれない現実として、あの日のことが気になっていた。
だから、顔を見ずにはいられなかったのだ。
安心したかったのかもしれない。
そこにいると信じたかったのかもしれない。
朝からいなくて、あの日の幻が現実になってしまったのではないかと考えると、堪らなくなった。
「……いや、良い」
ザシャは頭を振る。
「……そう、ですか」
マユリもその先を問い詰めることはせず、家の中へともう一度促しただけだった。
●
夜中に出かけるエミリオ・シュトルツの姿は見かけるのだが、この3日ほどはまるで連絡が取れない。
護衛の仕事が忙しいようだと言うことは分かるが、ミサ・フルールには不安な時間だ。
無理はしていないだろうか。
怪我はしていないだろうか。
(……心配だよ……)
そんな不安から、その夜はエミリオの部屋で彼の帰りを待つことにした。
雷鳴が遠くに聞こえたかと思えば、すぐに打ち付けるような音があたりを包む。
「……すごい、雨……」
ここのところ、夜になると連日雨が降る。一時のものだとしてもエミリオへの心配は募っていく。
そわそわと落ち着かずにいると、遠くにあったはずの雷鳴が突然、轟音と共に窓を揺らすほど空を震撼させた。
「ひゃっ?!」
耳を塞いで小さくなりながら、びりびりと響く雷をやり過ごす。
「……早く、早く帰ってきて、エミリオ……っ」
祈るように呟く。
すると、背後から誰かに抱き締められた。
「……ミサ?」
「……っ、エミリオ……」
その声を、聞き違えるはずがない。
「寝てると思ってた。どうしたの?」
優しい声が耳元に落ちると、堪えていた涙が頬を伝う。
「エミリオ!」
たまらずに抱き着くと、彼は宥めるように背を撫でる。
「おかえりなさい! 心配したんだよ……!」
「ただいま、心配かけてごめんね」
縋るように胸に顔を埋める。
エミリオの腕。彼の体温。そして――ミサの知らない、女物の香水の香り。
思わず、抱き締められた腕を解くように、エミリオの身体を押し返す。
「って、どうして俺から離れるの?」
「本当に仕事に行っていたの……?」
胸の内側がひどくざわめく。
そのざわめきは不安から疑心へと形を変える。
「わ、わたし、私のこと、ひっく、嫌いになった……?」
せり上がる嗚咽を堪えながら、ミサはその一言を必死に紡ぎ出す。
けれど、エミリオは困ったように笑う。
「もしかして俺が浮気したと思ってる?」
知らない女物の香りなど、そんな理由くらいしか思い当たらない。
「ほら、こっちにきて、もう一度俺の香りをよく確かめてごらん」
抱き寄せて、エミリオが今度は逃げられないようにとぴったりと身体を密着させる。
「なにかの香りに似ていると思わない?」
言われて、ミサはもう一度その香りを確かめた。
知らない匂いだ。けれど、似た香りを知っている。
「これって……」
「そう、お前が愛用している香水だよ」
アスピラスィオンの香りだ。
だが、ミサの知っている香りとはだいぶ違うようだ。
「違う香りに感じたのは、つけてから時間が経ってるのと、俺自身の匂いが混ざったからだろうね」
同じ香水でも、つける人が変われば香りも変わる。
「でも、なんで同じ香水なんかつけてるの?」
「……そこまで言わせるつもり?」
見上げたエミリオは、顔を赤くして照れた様子を見せた。
わざわざ女物の香水をつける理由――。
「お前に会えない間、同じ香りを身に着けることで寂しさを紛らわしてたんだよ……バカ」
照れ隠しのようなキスをされる。
少しくすぐったい理由にミサが微笑むと、お互いを確かめるようにキスを繰り返した。
●
朝からリヴィエラの姿が見当たらない。
義父なら何か知っているかと思ったが、分からないと言われた。
――なんで……なんでなんだ!? あれほど一人にはなるなと言ったのに!
一人にしたくなくて、一緒に学校にも通うようになった。登下校の時間すら、一人にしたくなかったのに。
家の周りをうろうろとしながら、リヴィエラが何も告げずにいなくなった可能性を考える。
――まさか、寝ている間にマントゥール教団に攫わ、れ……?
奴らなら、それくらいのことはできただろう。
どれほど神経を研ぎ澄ませて警戒していても、気配を消して近づく程度ならできたかもしれない。
迂闊だった。
額を抑え、その可能性を消しきれず、焦りと共に苛立ちが募っていく。
「あ、ロジェ……?」
「――ッ!」
声にはっとして顔を上げる。
「リヴィ……エラ……?」
力なくその名前を呼ぶ。よく見ると、膝を擦りむいているようだ。
思わず駆け寄り、その肩を掴んだ。
「リヴィエラ! どうしたんだ、どこでこんなケガを……!」
「……お父様の声が……聞こえた気がして、お屋敷に行ったんです」
「ばっ――」
言いかけた言葉は、リヴィエラの次の言葉に飲み込まれた。
「お父様の幻でもいい、ロジェに悪夢を見せないでくださいって言いたくて……」
いつも、目覚めはひどい悪夢だ。
彼女を失うと言う、最悪の、あの男からの呪いのような悪夢。
リヴィエラは、そんなことを気にして自らの危険を顧みずに――。
「そうしたら、奥から黒ずくめの人たちが数人出てきて……私……人ごみに紛れて必死で逃げたんです」
このリヴィエラの判断は正しかっただろう。
もし、突っ立ったままだったら、あるいは声を掛けたりなどしていたら、リヴィエラは戻ってこなかったかもしれない。
「もしかしたら、あの人たちはマントゥールなのではないかって……」
「そう……だな……」
「この擦り傷はその時に転んでしまっ――」
ぐっと、強く縋るように、崩れ落ちる精一杯を堪えるように、リヴィエラの身体を抱き締めた。
「ロジェ……?」
言葉など、出てこなかった。
口を開けば嗚咽が漏れ出そうだった。
必死にかみ殺して、苦しそうに身を捩るリヴィエラに構うこともできず、ただ、その温もりが腕の中にあることに安堵した。
「マントゥールに……、っ……」
だめだ。
堪えても、溢れてしまう感情はもう、自分自身ですら制御できない。
「攫われたのかと思った……っ!」
「ロジェ……」
「君が、殺されてしまっ、たのでは……と……!」
リヴィエラの腕が背に回されると、優しく撫でられる。
「私、心配をかけてしまったのですね。ごめんなさい……もう無茶はしません」
「あの屋敷には行くな、もう一人でどこへも行くなよ……!」
「はい。貴方の傍から離れません。大丈夫です、貴方に無断で私は死んでしまったりしませんから……ね?」
あやすような声にふっと息をつく。
リヴィエラの顔は見れなかった。見たら、おそらく気付かれてしまう。
――あの男……許さない……!
この、隠しきれない憎悪を。
●
玄関先で朝からこの家の主を待ち始めて、だいぶ時間が経っている。
家族に会いに行ったチハヤ・クロニカが、1日遅れるくらいなら家族が帰してくれなかったのだろうと思えたけれど、昨日も帰ってこなかった。
今日で、3日目。
チハヤからの専用の着信音は未だ、鳴る気配がない。
(事件とかに巻き込まれた……?)
メイリ・ヴィヴィアーニの気持ちがひどく沈む。
1週間前のチハヤの顔が、兄の顔と重なった。
離れることは怖かった。そのまま帰ってこなかったら――。
曇るメイリの心模様のように、空が急激に分厚く黒い雲に覆われ、雨がざっと降りだした。
見上げて、泣きたくなる。
雨はだいぶ強い。傘を取りに帰るべきかと迷ったが、ここを離れることは不安だった。
もし、チハヤが帰ってきたら。
もし、何かあったら。
そう思うと動けなかった。
(ちーくんも帰ってこない……?)
チハヤのことが、一人の男性として気になり始めていることは、メイリ自身が一番よく分かっている。
大切で、特別で、そう思えば思うほど、いなくなった兄と何度も重なってしまう。
胸が押しつぶされそうな思いでいっぱいだった。
止むことのない雨に、足元までぐっしょりと濡れると、やはり体は芯から冷える。
分厚い雲のせいで時間も分からない。
座り込んで膝を抱えていると、頭上から声が落ちてくる。
「メイ?」
弾かれるように顔を上げたメイリは、チハヤの姿を認めるなりその腕に飛び込み、胸を叩く。
「心配……したのっ、どこ、いってたの、私……!」
「……ごめん」
チハヤもこの雨でだいぶ濡れてはいたが、それでもチハヤは温かかった。
――やっぱり、無理してでも連絡をするべきだったな……。
泣きじゃくるメイリを抱き締めて、宥めるように背を撫でる。
「予定通り出たんだが、崖崩れに巻き込まれて道が塞がれて……」
携帯もその時に落としてしまった。
「けが人も多かったし、俺は動けたから救護所を手伝ってバタバタして――」
――連絡ができなかった。
圧倒的に手は足りなかったし、どうすることもできなかったかもしれない。
それでも連絡を取ろうとしなかったことを、今さらながらに悔やんだ。
メイリの兄のことを知っているからこそ、どうにかすべきだったはずなのに。
少しずつ落ち着きを取り戻したメイリの身体をそっと離す。
「メイが悲しむようなことは二度としない。何があっても必ず戻ってくる」
逸らすことなくメイリの目を見つめ、誓いを立てるようにそう宣言する。
ずっと気付かないふりをしてきたメイリへの恋愛感情を渋々ながらにチハヤは自覚した。
「……約束よ」
濡れたメイリの瞳が、頼りなく揺れる。
頷くと、零れる涙を隠すようにメイリが再び抱き着いた。
「すごく心配したの」
「うん、ごめん」
「心配させた罰として、今日はお泊りを要求するの」
チハヤの思考が止まりかけた。
確かに、ずぶ濡れで帰すわけにもいかない。
今から着替えて服を乾かしていては、完全に夜だ。
――お泊りなんて……。
今しがた、認めた感情があるだけに不安で仕方ない。
――……頑張れ俺の理性。
●
――親睦?
そんなもの、深める必要などない。
とはいえ、ジュニール カステルブランチはカルヴァドスと約束をしていると言う秋野 空をしぶしぶに送り出した。
料理を作って食べるのだとは聞いたが、詳しいことまでは聞かなかった。
あらかじめ知らされていた帰宅時間も、予定よりずいぶんと遅い。
――ソラのいない時間はこんなに不安で退屈だっただろうか……。
一緒に暮らし始めてだいぶ経つが、いつも隣には空がいた。一人での時間の使い方など、もうほとんど覚えていない。
ぼんやりと、あてのない時間を過ごしていると、扉の開く音がした。
「ただいま戻りました。遅くなってすみません」
笑顔で顔を覗かせる空からは、カレーの匂いがする。
眉を寄せると、空は少し気まずそうな顔をした。
「着替えてきますね」
「ソラ――!」
手首を掴む。今朝はなかったはずの絆創膏が視界に入ると、ふつと激情が湧き起こった。
「怪我をしたんですか?」
「……えぇ、ちょっと」
歯切れ悪く言葉を濁す空が、そっと目を伏せる。
――止められない……。
空を壁際まで追い詰める。
「楽しかったですか……俺といるより」
空の瞳がわずかに曇った。
相手がもし『カルヴァドス』でなかったなら、あるいはこんな気持ちなど持たなかったかもしれない。
問い詰めなかった自分も悪いが、空から行き先を聞かなかった。
それは――アイツの部屋だから……?
「二人きりでカレーを作って食べて……それからどうしたんですか?」
一度目が合うと、空は黙ったままそっと視線を外した。
「――ッ!」
ひどい嫉妬だと分かってはいる。
けれど、その嫉妬を抑えられない。
空を捕まえて、自分のものだと主張するように強引な口づけを求めると、空は持てる限りで暴れ、抵抗して振り解いた。
ここまで拒まれたのは初めてだ。空はいつも、照れて拒む仕草を見せることはあっても、本気で拒んだりはしない。
「俺を、拒むんですか……」
心が痛い。
そこに『カルヴァドス』がいるだけで、こんなにも苦しい。
アイツは、カルヴァドスではないのに……ッ!
一度は振り解かれたはずの空の腕がジュニールをそっと抱きしめた。
「……拒むなら、こんなことせずに逃げます」
真っ直ぐに、空の瞳が向けられる。曇りのないその瞳に、息が詰まりそうになる。
「今日のできごとは、今から順番に話します。ただ、ひとつだけ先に謝らせてください」
空の指先が頬に触れて引き寄せるように顔が近づく。
「逃げて、ごめんなさい。幸せな気持ちになれないキスを……ジューンと交わしたくなかったんです」
ひどい嫉妬だ――。
空はこんなに真っ直ぐに見つめてくれる。
疑ったわけではない。ただ、不安だっただけだ。
真実を告げることを避け、勝手に不安になって、勝手に嫉妬をして。
「……俺も、すみませんでした……。聞かせてください、今日のこと」
壊れ物に触れるように抱き締めて、その偽りなくもたらされる温もりに目を閉じる。
「そして、その後でいいので……ソラと幸せなキスをさせてください」
空が小さく笑う。
向けられる笑顔に強く彼女を抱きしめると、内側から温かさが広がった。
| 名前:秋野 空 呼び名:ソラ |
名前:ジュニール カステルブランチ 呼び名:ジューン |



エピソード情報 |
|
|---|---|
| マスター | 真崎 華凪 |
| エピソードの種類 | ハピネスエピソード |
| 男性用or女性用 | 女性のみ |
| エピソードジャンル | ハートフル |
| エピソードタイプ | ショート |
| エピソードモード | ノーマル |
| シンパシー | 使用不可 |
| 難易度 | とても簡単 |
| 参加費 | 1,000ハートコイン |
| 参加人数 | 5 / 2 ~ 5 |
| 報酬 | なし |
| リリース日 | 08月14日 |
| 出発日 | 08月23日 00:00 |
| 予定納品日 | 09月02日 |

2016/08/22-23:28
2016/08/19-22:33
2016/08/19-22:04
2016/08/19-06:59
どうも。マユリといいます。
よろしくお願いします。
2016/08/18-17:40
2016/08/18-07:56
2016/08/18-07:56

