


A.R.O.A.本部の電話が鳴りっぱなしだ。
テルラ温泉郷近くにオーガやデミ・オーガが急激に集まり人々を襲い始めたことは、近隣住人のみならず、当然A.R.O.A.本部にも大きな衝撃を与えていた。
本日何十本目かの電話をとったA.R.O.A.女性職員は、すぐさま受話器を耳から30センチも離した。
「自宅に帰ったら、オーガがいたんです!」
相手男性の声は、ほかの職員にも聞こえたようだ。何名かが弱く首を振る。それを見、女性職員は受話器を耳元に戻した。救援依頼は多く『オーガやデミ・オーガを見た』程度では、優先できないのが現状だった。
「……オーガとおっしゃいますと、テルラ温泉郷近隣の方ですか? それでしたら情報は得ています。とりあえずオーガから離れ、安全な場所で待機していてください。ウィンクルムが向かいますので……」
「でも、自宅には娘と息子がまだいるはずなんです!」
「えっ?」
女性の顔色が変わる。
「僕と妻は仕事で村外に出ていたのですが、戻ってみると村人が村の外で一か所に集まっていました。そこで僕らは、村にオーガの襲撃があったことを知ったんです」
そこで男性はいったん言葉を切った。重い空気が、受話器の向こうから伝わってくる。
「村にいた人間はみんな無事に逃れたとのことだったんですけど、その中に、娘と息子がいない。うちには台所に食糧保存のための地下室があるのですが、何かのときはそこでパパとママを待ちなさいと言っていたんです。まさかと思い家に戻ってみたら……半壊した家屋の中、デミ・ウルフに混じって、猪の頭をしたオーガがいたんです。それも二匹も!」
「猪というと……ヤックアドガですね」
ここで驚いては、男性の動揺を誘うだけだ。職員はあえて淡々と答える。
「では、ヤックアドガのいるご自宅の地下室に、子供さんたちが取り残されていると、そういうことですか?」
「ええ、きっとそうです! 娘のアカネは15歳で、息子のセイヤはまだ5歳なんです。ああ、こんなことなら何かあったら逃げなさいと教えておけばよかった。素直ないい子たちなんです。デミ・オーがならまだしも、オーガでは僕たちも手出しができない。お願いだ。少しでも早く、ウィンクルムのみなさんにこちらに来ていただきたい!」
男性の悲痛な声に、自身も子供を持つ職員は目を閉じた。
暗い地下室、頭上から聞こえる恐ろしいヤックアドガの足音、そして咆哮。オーガのいる家に残されている子供たちは、どんなにか心細いことだろう。……どんなにか、助けを求めていることだろう。
「わかりましかた」
職員は胸の奥から押し出すように、低い声を出した。
「急いでウィンクルムを向かわせましょう。子供さんのことは心配でしょうが、けして、オーガに無謀な戦いを挑まないように、ウィンクルムの到着を待ってください。大丈夫、あなたの子供さんは、必ず助け出します」


テルラ温泉郷から、歩いて三十分ほどの場所にある村で起こった事件。
オーガに襲われた村に残された姉弟を救い出してあげてください。
彼らは自宅の台所にある地下室にいると思われます。
しかしその上には、猪の頭を持つオーガ、ヤックアドガが二匹。ヤックアドガは頭部の巨大な角で攻撃をしてきます。力強い攻撃は受けると危険なので、避けながら、確実に退治することをおすすめします。
姉弟を助け地上に出ると、デミ・ウルフが襲ってきます。子供たちにけがをさせないよう、上手に守りながら、無事に両親たちのもとへと連れて行ってあげてください。
(デミ・ウルフの数は参加PL数×2匹とします)
子供たちを救出するための戦闘、という実にシンプルな任務です。
が、相手はオーガ。
皆さんで協力して倒してください。


◆アクション・プラン
リチェルカーレ(シリウス)
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可能なら家の間取り 台所の場所を確認して 迷わず最短時間で台所まで入れるように 侵入場所から離れたところに 誘き出すため生肉を置いて 敵に見つからないよう 静かに素早く台所へ 2人の名前を呼んで 見つけたら安堵の笑顔 がんばったね さぁ 一緒に帰りましょう? 怪我がないか確認 消毒液や包帯等 念の為に持っていく 子どもたちを庇う形で移動 敵に遭遇したら トランス状態に 戦いの間 不安を和らげるよう声かけ 大丈夫。お兄さんたちは強いんだから。 少しでも役に立ちたい 敵の動きを見て 不意打ちがわかれば伝える 万が一敵が襲ってきたら 一歩前に出て盾に 光が入る場所なら 手鏡で目を眩ませる 全て終われば2人を抱きしめて |
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子供達が取り残されてるなんて… しかもデミじゃなくオーガ! 早く助けに行かなくちゃ きっと怖い思いしてるもの! アカネちゃん、セイヤ君、今助けるわ 待っててね! ■戦闘 現場へ着いたらトランス状態になるわね 恥ずかしいなんて言ってる場合じゃないわよ とにかく一刻も早く台所へ デミの方はとりあえず放置 家の周りに餌用の肉を撒いて時間稼ぎしておきましょう オーガの相手はアル達に任せて、私達神人は地下の入口を捜すわ 入り口を見つけたら外から名前を呼んであげるの そして「助けに来たからもう大丈夫よ」って言ってあげたい 少しでも安心して欲しいから ■救出できたら セイヤ君はまだ5歳、私が負ぶっていくわ いざという時には私が盾になりましょう |
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オーガの相手は危険だと思いますが皆さんなら大丈夫だって信じてます 子供達も救出して無事にみんなで帰りましょうねー! オーガとの戦闘ですからトランスしておかないとですねー 山吹さん頑張って下さいね!怪我しちゃイヤですよ 戦闘中は少し離れた場所にいますね デミは襲ってこないようなら無視です無視! 只でさえ強敵相手ですのに刺激して加勢されたりすると厳しいですよー 地下の子供達はきっと不安ですよねー 助けにきたよ、もう大丈夫だよって地下室に声を掛けましょう 少しでも安心して貰えればと オーガ討伐後は子供達を救出ですね あと少しだけ頑張りましょう! デミから子供達を守りぬきましょうね こちらにくるようなら小刀で追い払いますよー |
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子供達、きっと凄く怖いわよね、早く助けてあげなきゃ! 私も怖いけど……また何も出来ないなんて嫌だもの。(※自由設定参照) 対オーガ戦の前に、トランス状態になっておく、わねっ。 (は、恥ずかしいけど、作戦や子供達を助ける為だものっ) 戦うのはヴァル達に任せるけど、何か手伝えそうなら手伝うわねっ。 あと、隠れてるだろう子供達に 「もう少しだから待っててね!」って声を掛けておくわ。 オーガを倒したら子供達を救出。良く頑張ったわね、偉いわっ。 まだ敵がいるかもだし、周囲に気をつけつつ帰りましょ…… 本当に敵がいたの!? 疲れてるだろうけどヴァルや他の精霊さん達に戦ってもらって、 神人や護衛の精霊さん達で子供達を守るわねっ。 |
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目的:子供の救出 心情:心細いだろうに…早く助けたいものだ 手段: 念の為、明かりを用意。敵の目印になり危険性はあるが、台所下が明るい保証はない。 事前にトランス状態になっておく。 台所へ直行し、声を張り上げることで救援が来たと安堵させると同時に救援が来るまで声を出さないよう動かないよう釘を刺す。音を発しては、そちらを狙われかねないからな。 救出後は、子のガード、特に幼い方が安堵で駆け出す可能性があるのでそれに注意。手を引く。 別の敵の可能性も考慮し、目だけでなく五感を研ぎ澄まして、周囲に気を払う。 有事の際は身を挺して庇う。(年上の方が幼い方を庇わないようこの点も要注意) 親に渡すまでが任務、注意するさ |
「今回の相手はオーガですか……」
アルベルトと山吹。二人が同時に発した同じ言葉に、月野輝とファリエリータ・ディアルは、胸の前で両手をぎゅっと握りしめた。
「早く助けに行かなくちゃ。ねえ、アル」
「子供たち、きっとすごく怖いわよね……。ヴァル、オーガと戦うのは危険だとは思うけど、頑張ってね」
「皆さんなら大丈夫だって信じてますー。だけどオーガとの戦闘ですから、トランスしておかないとですねー」
テレーズは山吹を見上げた。こくりとうなずく山吹は「お願いします」とわずかに膝を曲げる。
「全ては未来のために」
テレーズは目を閉じ、山吹の頬にそっと口づけた。
「……今回は、からかいませんよ」
「ええ、恥ずかしいなんて言ってる場合じゃないもの」
アルベルトの頬に輝の唇が触れたのは一瞬のこと。
「異界の友よ来たれ……召喚!」
傍らで、にぎやかに騒いでいるのはファリエリータとヴァルフレード・ソルジェである。
「さ、作戦のためだから! 子供たちを助けるためなんだから!」
顔を真っ赤に染め上げたファリエリータに、ヴァルフレードは苦笑する。
「わかっているから、そんなに照れるな。それより早く」
とんとん、と自身の頬を指すヴァルフレードを見つめ、ファリエリータはキスをする。
「新たなる力、束ねん」
「やっぱりキスって照れくさいんだね」
銀雪・レクアイアはそう言って皆を見渡した。自身はもうすでにトランス状態になっている。リーヴェ・アクレシアは、いつだってためらわずに銀雪の頬に口づけるのだ。
「その光は剣となれ、その光は盾となれ」
インスパイアスペルを発する声は凛々しい。任務に対する意志の強さがそうさせるのだと、銀雪は思っている。
リチェルカーレは持参した生肉を手に、周囲を見渡していた。A.R.O.A.からの情報によると、オーガは子供たちが隠れている台所にいるということだった。家の中では戦うには狭いし、音が聞こえる子供も恐怖だろう。だからこれでオーガを外におびき寄せるつもりだった。
「あそこが、子供たちのいる家ですね」
遠目に確認し、足を一歩踏み出す。その肩にシリウスの手がのった。
「……俺が行く」
そのほうが早いからお前は動くな。口より雄弁な瞳が語り、リチェルカーレは頬を膨らめた。その表情のまま、シリウスの頬に唇を押し付ける。
「この手に宿るは護りの力。……シリウス、怪我をしないで」
囁くリチェルカーレにシリウスは、静かにほほ笑んでみせた。
※
肉を持って家に向かうシリウスの後ろには輝が続いている。輝が持つ肉は、デミ・オーガを引き寄せるためのものだ。
ほかのメンバーは、オーガがいるという台所に向かっていた。その途中、生き物の気配を感じ、一行は目的の家の陰に隠れた。顔だけ出して確認すれば、寄ってくるのはデミ・ウルフ。彼らの立派な嗅覚が、肉の匂いを嗅ぎつけたらしい。もし肉を持っていなかったら、ウィンクルム一行は真っ先に襲いかかられていたかもしれない。
「ウウウ……」
口からよだれをたらして歩くデミ・ウルフは全部で十匹。とりあえずこちらは放っておけと、窓から家屋の中を見る。猪の顔を持ったヤックアドガは、ちょうどこちらに向かってくるところだった。デミ・オーガと一緒になって、肉をほふるためだろう。
「計画通り、神人たちで子供を探そう。精霊はオーガを頼む」
二匹が外に出るのを確認した後、そう言って、リーヴェは台所に入っていった。食糧庫が明るい保証はない。念のためにと持参した明かりをつける。
「入口はどこだ?」
床には目印らしきものはなく、一見しては場所がわからない。
「助けに来たぞ!」
リーヴェは声をはり上げた。これが聞こえてくれるといいが。しかし床下からの反応はない。
「助けに来ましたよー」
テレーズも呼びかける。するとかすかに、女の子の声が聞こえた。
「……誰?」
「A.R.O.A.所属のウィンクルムだ。食糧庫の入り口がわからない。可能なら床を叩いてみてくれるか」
リーヴェが言うと、とんとん、と床の下で音が鳴らされる。
どうやら床を引き上げる取っ手は、収納式になっているようだ。
「私が開けるわ」
ファリエリータが床を上げ、リーヴェが暗闇へとランプを差し入れる。中には怯きった少女と、彼女に抱きしめられている、小さな男の子が見えた。
「アカネちゃんと、セイヤくんね」
輝の問いに、こくんとうなずく姉と弟。
「もう大丈夫よ」
その言葉に、アカネとセイヤは大粒の涙をこぼした。
※
デミ・ウルフたちは、ヤックアドガが来るとエサを食べる場を譲り、そのままどこかへ行ってしまった。オーガでも上下関係があるのだろうか。
ヤックアドガはエサを食んでいる。茶色くかたい毛がみっしりと生えた敵は、こちらに気付いている様子はなかった。
「チャンスだな」
ロングソードに猛獣の爪の力を憑依させ、ヴァルフレードがつぶやいた。隣では、アルベルトもスキルを発動させている。剣が大きな爪となり、アルベルトの腕と一体化する。
「まずは足を狙いましょう。あの堅そうな頭で突撃されちゃ、かないませんからね」
「機動力をそぐか、そうだな」
アルベルトとヴァルフレードの会話に、山吹が言葉をはさんだ。
「待ってください。気休め程度にしかならないでしょうが、これを」
山吹は自分を含む仲間に薄いシールドを張った。オーガ相手では心もとない防御だが、ないよりはましだろう。
「ご武運を」
「ああ、頼む」
「山吹さんも気を付けてくださいね」
アルベルトはオーガに忍び寄った。後ろには、銀雪。アルベルトと銀雪、そしてヴァルフレードとシリウスが組んで、一匹ずつオーガに当たり、背後で山吹がサポートをする。これは事前に決めていた策だった。
ヤックアドガはエサしか見ていない。アルベルトは大きく息を吸うと、大爪となった刃で一閃、敵の足をなぎ払った。
「グヒイイ!」
「やった!」
響く銀雪の声。ヤックアドガは転んだまま丸い体を持ち直せずに、足で地面をえぐるのみだ。しゃにむに頭を振り、角でアルベルトを狙うが、後方に飛んだアルベルトには届かない。
「残念。エサに夢中になっていたからです」
アルベルトはそう言って、背中側からヤックアドガに近づいた。傍らに立ち、迷うことなく心臓に剣を突き立てる。
ヴァルフレートは苦戦していた。どうやら最初の切りこみが浅かったようだ。もう一匹のように地に伏すことなく、ヤックアドガはこちらを向いた。
「グオオオ」
短い脚が地を蹴って、そのまま猪突猛進、まっすぐに突っ込んでくる。
「やべっ」
ヴァルフレードはぎりぎりのところで攻撃をかわした。あと十数センチ場所が違えば、石さながらの頭の餌食になっていただろう。振り返る。曲がることを知らないのだろうか。なんと、ヤックアドガは後方で、そのまま大木にぶつかっていったのだ。
「危ないっ、倒れるぞ!」
誰かの声。みしみしと音を立てて倒れる木。それは運良く、子供と神人の残る家屋とは反対方向に倒れていった。
「……あの石頭はまずいな」
こちらを向き直す敵を見、ヴァルフレードが言う。
「突っ込まれたらアウトだ。そう簡単には止められない」
「それなら……」
ヴァルフレードの横から、シリウスがオーガめがけて駆けていく。
「おいっ」
オーガはまだ走り出す前。シリウスは二本のダガーを手に、止まったオーガの周りを回り始めた。きらり、ダガーの刃が光り、たた、と足音が響く。ヤックアドガはくるくると踊るようなシリウスを目で追った。何とかして仕留めたいが、スピードに体が追い付かないと、そんなところか。
シリウスの小さな刃がヤックアドガの肌を削る。そのたびに、ヤックアドガは低い声で吠えた。
「足止めとはやってくれる」
ヴァルフレードは再び武器を構えた。今なら敵は、シリウスに夢中だ。
「加勢します」
倒れたオーガの向こうから、アルベルトと銀雪もやって来る。
「じゃ、俺は右から。アルベルトは左からでいいか?」
「ええ、結構ですよ」
「行くぞっ」
ヴァルフレードの声がゴーサイン。二人は同時に飛びだした。
突撃してくる仲間に一瞬ちらりと目をやって、シリウスはヤックアドガの眉間を切りつけた。
「グアア……」
吠える敵から離れたのは、もちろん仲間の攻撃の邪魔にならないためだ。
左はアルベルトの巨大な爪。右はヴァルフレードの獣の爪。二人がオーガの体を切りつけたのは、寸分違わぬ同じタイミング。
ヤックアドガが振り回した角は二人をかすめたが、大きな傷にはいたらない。
周囲に断末魔の声を残し、ヤックアドガは倒れ伏した。
※
ドサリと地に響く音を二度聞いて、神人と子供たちは恐る恐る、家の中から顔を出した。その目に映ったのは、猪のような敵が地面に倒れている状況。傍らには精霊たちが立っている。
「……オーガ、倒してくれたのね」
初めて見る敵に驚き震えながら、アカネが精霊たちを見上げた。
「……ええ。よく頑張りましたね。もう大丈夫ですよ」
アルベルトはにこりと笑って、少女の頭に手を置いた。
あれ、これどこかで……。輝は戸惑いを感じたが、アカネの腰にぴたりと抱き付いているセイヤを見、ふるふると頭を振った。考え事をしているときではない。この子たちを無事に親のところへ送り届けるまでが任務なのだ。
「私はアカネの手を引こう。銀雪、万が一のときは子供たちを一番に守ってほしい」
「大丈夫、言われてなくてもわかってるよ。リーヴェ」
「じゃあ私はセイヤ君をおぶっていくわ。ね、セイヤ君、お姉ちゃんのおんぶでいいかな?」
「……うん」
セイヤはおとなしく姉の足から離れ、輝のほうへと歩いてくる。そんなことなら私がと、パートナーのアルベルトは言い出さない。わかっているのだ。まだ危険は去っていないことを。
「子供たちも精霊の皆さんも、けがはありませんね?」
消毒液や包帯の入ったポーチを手に、リチェルカーレが確認する。誰もがうなずき、リチェルカーレはほっと安堵の息をついた。
「まだ敵がいるかもだし、周囲に気を付けつつ帰りましょ……」
ファリエリータはきょろきょろとあたりを見回した。とりあえず家の周囲には何もいないようには見えるが、安心はできない。たとえばさっきオーガに肉を譲るようにして去ったデミ・ウルフが戻ってくる可能性だってあるのだから。
アカネと手をつないだリーヴェと、セイヤをおぶった輝を中心に、一同は歩き出す。とりあえず、村から出れば一息つけるだろう。
さくさくと草の生えた道を行く。
「ねえ、ぼくのおうち、あいつらのものになっちゃうの?」
ぐすぐすと泣きながら、セイヤが問いかけた。
「あいつら?」
輝が聞き返す。セイヤは輝の肩をぎゅっとつかんだ。
「お兄ちゃんたちが倒してくれた奴じゃなくて、オオカミみたいの。あいつら、まだ倒してないもん」
子供たちがいなければ、捜索・退治することもできたかもしれない。しかし守るべき存在を抱えた今、そうすることは得策とは言えないだろう。
「あいつらがいなければ、帰ってこれるのに」
「……また退治しに来ますよー。そうしたらおうちに帰れますって」
テレーズが言うが、セイヤは不満顔だ。
「セイヤ、わがまま言わないの」
叱るアカネに、セイヤは「だって」と唇を尖らせ……ひ、と息をのんだ。
「デミ・ウルフだ!」
ヴァルフレードが叫び、現れた敵に向かっていく。アルベルトも同様だ。
「せめて子供たちを送るまで待っていてくれればよかったんですがね!」
スキルを発動したまま、二人はそれぞれの武器を振り回した。
山吹はシャイニングアローを発動した。体の周りに光輪が現れる。
「万が一と言うこともありますからね」
シンクロサモナーの二人は、十数メートルの先で、体に獣の力を憑依させて戦っている。相手はデミ・ウルフ。オーガよりは弱い。でも戦う精霊にも疲労はたまっている。
「あっ!」
二人の間を抜けた敵が二匹、こちらへと向かってきた。
「ガルルルル……」
鋭い牙をむき出しにして、デミ・ウルフは幼い子供たちに目を向けた。リーヴェがアカネを抱きしめ、輝はセイヤを抱えて背を伸ばす。子供たちは守らなくてはいけない、どうしても。彼らの前に、剣と盾を構えた銀雪と、光輪を身にまとわせた山吹が立ちふさがる。
「守るのは、俺の役割だよ」
「子供たちには指一本触れさせません」
「ガルウッ!」
デミ・ウルフは大きく口を開いて、襲いかかってきた。避ければ後ろにいる子供たちが犠牲になる。
銀雪はとっさに剣を手放し、両手で盾を突き出した。ガギィッ! デミ・オーガは勢いそのまま盾に食らいつく。
「くっ……」
さてここからどうするか。この力を片手で止めることは不可能だ。隣に立った山吹にも、デミ・ウルフが爪を向けている。しかしこちらは光輪が攻撃を弾き返しているようだった。山吹は顔をしかめるも、敵の攻撃は届いていない。
「俺が行く!」
シリウスはダガーを構え、銀雪の前のデミ・ウルフに斬りかかろうとした。……が、できなかった。さらにもう一匹、デミ・ウルフがこちらに突撃してきたからだ。
「だめだ、こっちが先だ!」
牙をダガーで受け止めて、胸のあたりに蹴りを入れる。吹っ飛ぶ獣。しかしまだ生きている。
とどめを刺すべく、敵のもとへ向かう。銀雪の前の敵はそれからだ。しかしそのとき、テレーズが飛び出した。
「もう、追い払いますよー」
「テレーズさん!」
山吹が呼ぶも、テレーズは小刀を片手に、銀雪の前のデミ・ウルフへと向かっていく。それをきっかけに、ファリエリータとリチェルカーレも武器を手に取った。
「お前ら、危ないだろ!」
デミ・ウルフの背中にダガーを突き立て、シリウスが踵を返して向かってくる。……それより早く。
「グオオッ」
銀雪の盾を噛んでいたデミ・ウルフが、神人たちに牙を向けた。そしてぎりぎり、銀雪が剣を拾って突き出すより先に、リチェルカーレに飛び掛かる……!
「きゃあっ!」
「くそっ、この馬鹿!」
なんとかそれを止めたのは、敵の前へと体を滑り込ませたシリウスだった。迷わず敵の首を狙う。
隣では、光輪に弾き飛ばされたデミ・ウルフに、テレーズが小刀を向けている。
山吹が叫ぶ。
「テレーズさん、あなたも引いてください。大丈夫、このデミ・ウルフは倒れます!」
「でも、私もお手伝いしたいんですー」
「危ないですから!」
テレーズは渋々身を引いた。その数秒後、彼女の目の前で、デミ・ウルフはどさりと倒れ、命を失った。
「輝、大丈夫ですか!」
「ファリエ、平気か!」
遠方で戦っていたアルベルトとヴァルフレードが戻ってくる。
「こっちは大丈夫よ」
「ヴァルこそ! 疲れているのにありがとう」
二人はにこりとほほ笑んだ。
※
「お父さん!」
「ああ、アカネ、セイヤ!」
子供たちを見るなり、父親は涙を流して駆け寄ってきた。小さな二人をぎゅうぎゅうと抱きしめるものだから、セイヤは父の背中をバンバン叩く。
「痛いよ、離してよ!」
「離すものか。お前たち、台所の収納庫に隠れていたんだろう? 言いつけを守って偉かったな。助けてくれたお兄さんとお姉さんにはちゃんと礼を言ったか?」
父親の腕の間から、二人は「ありがとう」と口にする。
「お父さん、これで家に戻れる?」
「ああ、敵がいないと確認がとれれば、きっと帰れるだろう」
父の言葉に、セイヤは「よかったあ」と声を上げた。
「ぼくたちの家が、あんなやつらにぐちゃぐちゃにされるの嫌だもんね。もうあんなの、来ないといいね」
増え始めたオーガの存在は何を意味しているのだろうと、ウィンクルム一行は考える。しかしこの小さな命を守ることができたことを、今はなにより誇らしく感じていた。



エピソード情報 |
|
|---|---|
| マスター | 瀬田一稀 |
| エピソードの種類 | アドベンチャーエピソード |
| 男性用or女性用 | 女性のみ |
| エピソードジャンル | 戦闘 |
| エピソードタイプ | ショート |
| エピソードモード | ノーマル |
| シンパシー | 使用不可 |
| 難易度 | 普通 |
| 参加費 | 1,000ハートコイン |
| 参加人数 | 5 / 2 ~ 5 |
| 報酬 | 通常 |
| リリース日 | 05月05日 |
| 出発日 | 05月13日 00:00 |
| 予定納品日 | 05月23日 |

2014/05/12-19:42
輝さん、ありがとうございます。アカネさんと輝さん、セイヤくんを中に庇うようにして移動すると良いかしら。
誰も怪我をすることなく、無事に帰ってこれますように…
皆さん、よろしくお願いします。
2014/05/12-13:38
プラン書いててちょっと思ったのだけど、
セイヤ君ってまだ5歳よね。
救出してデミ達から逃げる時に、走るにせよ歩くにせよ、
大人に付いていけないんじゃないかしら。
と言うことで、私、セイヤ君を負ぶって行く事にしたわ。
その方が速く移動できそうな気がするの。
最終日に追加でごめんなさいね。
でもこれくらいなら微調整の範囲よね。
そしてあと半日くらいで出発ね。
改めまして、皆さん、よろしくね。
2014/05/11-22:26
>輝さん
あ、すみません言うの忘れてました。祝辞ありがとうございます!
>カウンタースキル
他の方にも使えればもう少しお役にたてそうなのですが、無念です…。
私は現状の流れで特に異論はありません。
とりあえずこの方向性でプラン仕上げてしまいますねー。
2014/05/11-13:46
お二人とも、賛同有難う。
私、せっかちでごめんなさいね(汗)
>カウンタースキル
あ、そうよね。
「カウンター」なのだから、普通は本人に攻撃が来た場合発動よね。
子供達の護衛が増えるのは心強いわね。
他の3人が安心して戦えると思うわ。
もう、明日の夜出発なのね…早いわね……
大まかな作戦は決まったし、細かい調整ならまだ大丈夫そうかしら。
何か意見あったらよろしくね。
2014/05/11-11:54
作戦決定了解ですー。
もう明日の夜出発ですね。
無事に子供達を助けられるようみんなで頑張りましょう!
>カウンタースキル
解説文を読むに対象は術者のみな感じのようです。
銀雪さんとは逆側にいて子供達が狙われたら盾になる、という動きで行こうかと思ってます。
2014/05/11-11:19
反応遅れてごめんなさい!
そして作戦案ありがと! 私もそれでいいと思うわっ。
組分けも異論無しよっ。
シリウスさんとヴァルで組むのね、よろしくね!
2014/05/11-10:58
返信遅れてごめんなさい!
作戦、わかりました。
シリウスはヴァルフレードさんと組むことになるのかしら。
よろしくお願いします。
2014/05/11-10:25
>リーヴェさん
ありがとう、宜しくお願いしますね。
>テレーズさん
レベルアップおめでとう!
カウンタースキルは有難いわね。
子供達や、その護衛役の銀雪さんに掛けて貰えるといいかも?
返信がない方もいるけど時間もないし
[7]~[8]の作戦で決定させて貰っていいかしら…?
あとは組み分けね。
シンクロサモナーはアルベルトとヴァルフレードさんよね。
えっと… アルと銀雪さん、ヴァルフレードさんとシリウスさん
の組み合わせで良いかしら?
2014/05/10-22:58
目視でオーガが確認できたみたいですし壁はぼろぼろそうですねー。
既に半壊してるとはいえ依頼人さんの家だし、更なる被害は最小限で済ませた方がいいのかな?と思いまして。
とはいえオーガもいて子供達もいますしそんな悠長な事言ってる場合じゃなかったですねー。
オーガの実力も未知数ですし家よりみんなと子供達の安全が優先ですね。
レベルが上がりましてカウンタースキルが増えたので張り切ってトランスしていきますねー。
救助後は接近してオーガと戦った皆さんの消耗は大きそうなので、比較的軽傷で済んでそうな山吹さんには頑張って貰えたらなと思ってます。
2014/05/10-21:43
そうだな。了解した。
作戦も提示されたので問題ないと思う。
2014/05/10-21:14
半壊した家屋…一般的な家ならそんなに広くはないわよね。
ただ、半壊って言うのがどれくらいなのかが謎よね。
壁とか屋根とかほとんどないのか、ちょっと壁崩れてる程度なのか……
ただ、こちらの戦力ってライフビショップの山吹さん以外は
全員近接攻撃タイプなので大丈夫かなとは思うわ。
猪タイプなら、避けるのも何とかなりそうね。
まともに攻撃受けないように気を付けましょう。
それと、今回はオーガが相手なので、スキル使えない方もトランスした方がいいと思うわ。
皆さん、トランス状態になるの忘れないでね。
>テレーズさん
ええ、子供達への魔法お願いね。
重ね掛けも上手く行くと良いわね。
2014/05/10-01:02
以前参加していたリザルトが返ってきていたんですが、それを読んだ感じマスターさん次第かもですが防御魔法は重ねがけもできそうなのでその辺り意識しておきますねー。
>台所直行
私もそれでいいと思いますー。
デミは近くにはいるようですが解説通りなら救助までは襲ってこないと思うので、巻き込まないようにしつついければなと。
そういえば場所は半壊した家屋でしたね。結構狭かったりするんでしょうか?
あとは猪の頭となると行動も猪に似てたりするんでしょうか。
それだと直進攻撃してきそうなので動きは読みやすくなりそうですね。
>普通の人にも防御魔法
試してみて損はないと思うのでやってみようかと思いますー。
2014/05/08-23:54
連投ごめんなさいね。
で、具体的には、とりあえずデミの方は相手にせずに、
まっすぐ台所に向かうのがいいんじゃないかしら。
何だったら家の周りにエサでも捲いて外に誘き出しておけばいいかな、と。
それで先に言った組み分けで、防御のロイヤルナイト、回避力のテンペストダンサー
のお二人がそれぞれオーガの気を反らしてくれれば、その間にシンクロサモナー二人が
致命傷を与えられないかな、と。
神人の私達は、精霊達が戦ってくれてる間、
子供達に声を掛けて励ましてあげるのがいいわよね。
テレーズさんの言う通り、助けが来たって判るだけでも、きっと心強いもの。
2014/05/08-23:53
文字数気にして言葉足らずだったかしら、ごめんなさい。
私が二組に分けると言ったのは、オーガが二体だからなのね。
デミ・ウルフはテレーズさんが言ってるように、
「救出して地上へ出ると襲ってくる」と書かれてるので、
まずはオーガへの対処を…と思ったの。
救出した後は、姉弟に防御魔法かけて、防御の高いロイヤルナイトの銀雪さんが
子供達の護衛として張り付き、その周りを他の3人で守りながら戦うのが
効率良いのでは…と考えてたのね。
普通の人間にも防御魔法が効くのなら…なのだけど。
2014/05/08-23:25
連投失礼しますー。
>護衛班と引き付け班
オーガをどうにかした後なら役割を分けて行動するのはいい案だと思いますー。
その場合はちょっと対オーガとはまた別の班分けになりそうでしょうか?
救出するとデミ・ウルフが襲ってくると明記されてますし、先に救出するのはオーガを討伐なり撃退なりの目処が立ってからでないと厳しそうかなと思います。
2014/05/08-23:17
こんばんは、テレーズと申します。
パートナーはライフビショップの山吹さんです。
今回はよろしくお願いしますねー。
はい、輝さんはこの間ぶりですね。お世話になりました!
二組に分かれるの賛成です。
全体攻撃は1体を早急に倒せる可能性が高くなるのがいい所ですが、フリーの敵が出てしまいますしね。
ファリエリータさんも仰ってますが今回は救出対象者がいますので、両方共こちらに注意を引ける二組編成がいいと思いますー。
戦闘音が響くと子供達も不安でしょうしなるべく台所からは引き離したいですね。
逆にこちらの声も届くと思いますので励ましつついければなーと思います。
とりあえず私達は防御魔法頑張りますねー。
2014/05/08-21:53
はじめまして、リーヴェ・アレクシアだ。
パートナーはロイヤルナイトの銀雪・レクアイア。
よろしく頼むよ。
敵の数が多いな。
慎重さが求められる任務だと思うが、効率も見なければ残された子供達が危ない。
チームを分けるという輝の意見に賛成する。
その場合は、ひとつは迅速に子供への護衛に向かう班、ひとつは敵をひきつける班、というような、目的を分けて対処した方がいいと思うがどうだろうか。
2014/05/08-21:50
ファリエリータ・ディアルよ、よろしくねっ。
パートナーはディアボロのシンクロサモナー、ヴァルフレードよ。
子供達、きっとすごく怖い思いしてるわよね。早く助けてあげなきゃっ。
輝は作戦案ありがと!
二組に分かれるのはいい案だと思うわ。
一体を全員で相手した方が確実だとは思うけど、
一体を相手してる内にもう一体が子供達を見つける……なんて事にならないとも限らないし。
2014/05/08-20:35
はじめまして。
リチェルカーレと言います。パートナーはマキナのテンペストダンサー、シリウスです。
よろしくお願いします、ね。
デミ・ウルフ10匹とオーガが2匹…頑張らないと、いけませんね。
早く倒そうと思ったら輝さんの言うように、2チームに分けるのも良さそうです。
2014/05/08-11:30
初めまして、こんにちは。
月野輝と言います。パートナーはシンクロサモナーのアルベルト。
共々よろしくお願いします。
テレーズさんはこの間ぶり(小さく手を振り)
今回はデミだけじゃなくオーガもいるって事だし頑張りましょうね。
子供達、早く助けてあげないと(握り拳ぎゅっ)
こちらの戦力をザッと拝見して、オーガへは防御バリア張って貰った上で、
シンクロサモナー+ロイヤルナイト、シンクロサモナー+テンペストダンサー
と二組に分かれて対処したらと思うのだけど、どうかしら?
一体へ全員攻撃の方がいい?

