ホントの気持ち(木乃 マスター) 【難易度:簡単】

プロローグ

『二者面談のお知らせ

 神人の皆様を対象とした、二者面談を実施することに致しました。
 面談の内容は、精霊との日頃の関係性について及び、対話を行う上での悩みについての聞き取り調査となります。
 少数枠、任意での参加となりますので希望される方は受付係までお申し付けください』

「面談……」
 本部の掲示板に張り出されていた広告を見つめながら、あなたはぽつりと呟いた。
 神人に顕現したことで生まれた、精霊との関係性。
 精霊との交流が始まったばかりで不安がある者、長く付き合っていくうちに芽生えてきた悩みを抱えている者。
 そうした心の内に溜まる疲れを気にかけることも、A.R.O.A.の担う役割なのだろう。
(……申し込んで、みようかな)
 決して、現状に不満がある訳でない……否、不満があると思わないようにしていたのかもしれない。
 受付の方へ足を向けると、あなたは二者面談の申し込みを済ませた。

 ――数日後。
「皆、集ってくれてありがとう」
 恭しく一礼する職員の前に並んでいたのは、精霊達だった。
「皆にはこれから二者面談を行うご自身のパートナーのお話を聞いてもらう」
 職員の発した言葉に、精霊達は互いに困惑した表情を見せる。
「お、おい、二者面談だろ? 話聞いてるってバレるのは気まずいっつぅか……」
「面談の様子ははマジックミラー越しに確認してもらう。決して、隣で話を聞かれていることが発覚することはない……聞いたお話を活かすも、忘れるも皆次第だ」
 ただこれだけは忘れないで欲しい――神人は皆一様に、あなたとの繋がりをとても気にしているのだと。

 神人の到着前に別室で待機するようにと案内される中、好奇と恐れの入り混じる複雑な心境で精霊はろうかを歩いて行った。

解説

参加費として300Jr消費します
※こちらのエピソードは女性側に公開した『本音のコトバ』と同じ内容のエピソードです

今回は神人を対象に二者面談という名の中途報告をお伺いします
神人と聞き取り調査を行う職員の隣の部屋に精霊がマジックミラー越しにお話を聞いている状態です

精霊が隣の部屋にいることを神人は知りません、知る方法も一切ありません。
(なんらかの方法で気づいた、という行動も不採用とさせて頂きます)

☆神人の皆さんには以下の調査シートが配られており、以下の質問について確認されます
1.精霊とのこれまでの交流について(初参加の方は第一印象で)
2.精霊との現状の関係について
3.精霊との関係上にある悩みについて
4.精霊との関係を今後どのようにしていきたいか

プランには上記の質問への解答をプランに記入してください
(対応する数字の下に解答を記入してもらえれば読みやすくなると思います)

☆精霊の皆さんは神人の解答に対する心情をプランに書いてください

・こんな話聞いてられるか!俺は離席する!! 
・神人の面談に乗り込んでいくぞうぉぉぉぉぉっ!!!
・俺はここにいるぞー!!(バタバタバタバタ)
という感じになってしまいますと、親密度上昇はしませんので主旨に則って頂けますようお願いします

●諸注意
・多くの方が閲覧されます、公序良俗は守りましょう
 (特に過度な性的イメージを連想させる恐れがある場合は、厳しめに判断します)
・『肉』の1文字を文頭に入れるとアドリブを頑張ります

ゲームマスターより

木乃です、こちらは男女同時エピソードでございます。

今回は神人の皆さんの抱える本音や悩みをこっそり聞いちゃうお話です。
面と向かって言えなかった言葉も飛び出しちゃうかもしれません。

職員は悩みについて話を聞いてくれますが、アドバイスや否定的な意見を述べることはありません。
あくまで聞き取り調査として、皆様に一言だけ励ます言葉を残すに留めます。
ちょっぴりマジメな雰囲気でお送りいたします。

それでは、皆様のご参加をお待ちしております。

リザルトノベル

◆アクション・プラン

初瀬=秀(イグニス=アルデバラン)

  肉

1:何やかんや言いながら保護者的に接してきた
2:一応。一応は恋人……のはず
3:……あー。なあ。
キス、ってどう持っていけばいいんだろうな(真顔)
いやなんかあいつ
「子供っておとうさんとおかあさんが夜にキャベツ畑でキスすると
コウノトリが持ってくるんですよね!」
とか言い出しそうで!
そしてそんなん言われたら俺はどうすれば!
……いやあいつももう成人した立派な大人だし、
ちゃんと学校行って保健体育の授業も受けてんのは知ってんだが
あれだな、夢を見てるのかも知れん
4:……まあ、あれだ
人並みに恋人同士でやるようなことはできるようになりたいん、だが
(口ごもり)
あーもう!そうだよ慣れてねえよ悪かったな!(やけくそ)


蒼崎 海十(フィン・ブラーシュ)
  肉
1.第一印象は良くなかったのですが…
あ、フィンが悪いとかそういうのではなく…
俺はオーガを駆逐したいとそればかり考えてて
フィンはそういうタイプには見えなかったので

でも、彼がパートナーで良かったと思います
そのお陰で俺は俺を取り戻せたから

2.恋人同士…です
契約した時から同居してて…
フィンが家事全般こなしてくれるのに感謝してます

3.フィンは俺より一枚も二枚も上手で…
いつも余裕で…勝てなくて
俺ばかりが頼ってしまっているんじゃないかって
家事とか手伝える所は手伝ってますが…もっと俺に頼って欲しい

4.フィンに頼られるようになりたいなと思います
俺を支えてくれるフィンを、俺も支えたい
守られるだけじゃない
俺だって


新月・やよい(バルト)
  肉

引篭もりの僕には
精霊の手を借りずに此処まで来るだけで、必死だったりする

1.オーガとの戦闘を数回と、デー…外出を数回
2.友人?

お礼というより、恩返し
僕は彼から、あまりに多くのものを貰いすぎている
様々なものを、過保護なほどに

だから僕も彼に何かをあげたいのです
そういって本を握り締める
大切な人だから
支えられるばかりではなく支えたい
僕は…彼とフェアな関係になりたいんだと思う
けど、自信が無くて…笑顔のまま、声が震えた
彼の故郷の味を、試行錯誤

でもこの事は、バルトには内緒にお願いいたします
気を使わせてしまう

話せて楽になった気がします
ありがとうございました

もう少し頑張ってみよう
明日も
その先も
君の傍に居たいから



スコット・アラガキ(イナフナイフ)
  肉

1
よく遊びに誘ってくれる
少し変だけどふつーにいい人だよ

初めての戦闘依頼でね
必ず守るって指切りしてくれたんだ!
依頼は結局おじゃんになったけど。あはは!(手を膝で拭い)

2
俺は仲良くしたいって思ってるよ?
でも、うまくいかなくて

3
悪口を言うようで嫌だけど
ぐいぐい迫られて怖いんだ
ふざけて嫌がらせみたいな事もされるし…

一番困るのは無表情な事
何を言っても冷たい眼で見返されるばかりで

どうしてふつーの顔をしないのかな
俺はきちんと笑ってるのに
なぜだ?
なぜ?

4
他の友達みたいに、彼ともふつーに仲良くしなければ…
(鏡中の険しい顔に気づき、笑みを作り)
い、いや。したいんだ
だから、互いが心地よくなれる距離を見つけたいな♪


 背の高い観葉植物がひとつと、ローテーブルを挟んで一人用のソファがふたつ。
 そして、壁に埋め込まれた横長い鏡がひとつ――それが、面談用に用意された個室の風景だった。
 促されるまま席に着いた、ほんの3m向こうの鏡の奥にパートナーが居るとは誰が予想できるのだろう?

●約束の為に
 スコット・アラガキはソファが体躯に合わないようで、何度か腰を揺すらせてようやく落ち着けることが出来た。
「スコットさん、第二契約者であるイナフナイフさんとのご関係はどうですか?」
「よく遊びに誘ってくれるね、少し変だけどふつーにいい人だよ」
 スコットの解答に、隣の部屋から覗き込んでいたイナフナイフは盛大に吹きだす。
(受けるわぁ、絵に描いたようなイイ子ちゃん解答やないの)
 スコットの前では無表情を演じているイナフナイフだが、今日はどうあっても気づかれることはないらしい。
 彼を縛るものはなにもなく、イナフナイフは張り付いた笑みを浮かべるスコットの横顔を愉快そうに見つめる。
 それを知る由もないスコットは職員との会話を続ける。
「初めての戦闘依頼でね、必ず守るって指切りしてくれたんだ!」
 それはよかった、と相槌を打つ職員がバインダーに視線を落とす。
 ――スコットの脳内に、あの時の感触が蘇り背筋にゾワリと悪寒が立つ。
「……依頼は結局おじゃんになったけど。あはは!」
 視線が逸れた隙に、スコットは指切りをした手の感触を拭おうと膝にゴシゴシと擦りつける。
 イナフナイフはその行動の意味をよく分かっていた。
(で、出たあ~! わっかりやすい肉体言語~)
 ゲラゲラと笑い転げたい衝動を抑え、クツクツと笑いを噛み殺すイナフナイフを見つけた日にはスコットは鬼の形相を見せただろう。
 職員はバインダーに留めている調査シートを見つめ、神妙な面持ちを浮かべる。
「では、現状の関係はどうでしょう? あまり芳しくないようですが……」
 しかしスコットはなんでもない風に返す。
「俺は仲良くしたいって思ってるよ?」
 ――でも、上手くいかなくて。
 なんでかなぁ? と首を傾げ腕を組むスコットにイナフナイフは嘲笑を浮かべる。
(仲良くとか嘘やん、さっきの動きはなんやねん……あの手の動きが全てですやん)
 わっかりやすい言動とってる自覚がないんやろなぁ、とイナフナイフはほくそ笑む。
 職員は良ければ話せる範囲で教えて欲しい、とスコットに尋ねた。
「悪口を言うようで嫌だけど、ぐいぐい迫られて怖いんだ。ふざけて嫌がらせみたいな事もされるし……」
「それはちょっと、困りものですね」
 唸り声をあげる職員に同意を示すスコットは心底困っているように見える。
 しかし、当の本人は至って真面目だった。
「僕はふざけてません、本気で嫌がらせしてます」
 小馬鹿にした笑みを浮かべるイナフナイフは、悪びれた様子もなく独りごちる。
(化けの皮引き剥がしてひぃひぃ言わせたい、それだけ)
 喉奥で笑いを堪え、目の前で続く茶番劇をイナフナイフは食い入るように眺める。
「一番困るのは無表情なことなんだ、なにを言っても冷たい目で見返されるばかりで……どーしてふつーの顔をしないのかな」
 俺はきちんと笑ってるのに。
 なぜだ? なぜ? なぜなぜなぜ――。
「あっははは!! 能面みたいな笑顔に合わせてふつーにしてますよぉ???」
 堪えきれずにゲラゲラと笑い声をあげるイナフナイフは、これ以上口から出ないように片手で押さえ、反対の手で膝を叩く。
 ――部屋の中ではスコットの横顔がみるみる強ばっていく。
「他の友達みたいに、彼ともふつーに仲良くしなければ……」
(お、能面ヅラが力んでひきつっとるやないの)
 ニヤニヤと可笑しそうに口元を歪めるイナフナイフの方に、スコットの視線が向く。
 鏡に映る自身の表情に気づいたのか、すぐに笑顔を繕う。
(うわぁ~気持ち悪い。さっさとその愛想笑いすっこめたらええのに)
「スコットさん?」
 職員がどうしたのかと尋ねると、スコットはさっと視線を戻した。
「い、いや、なんでもないよ。……えと、仲良くはしたいんだ!」
 強引に話題を戻すと何事もなかったようにスコットは話を押し進めていく。
「だから、互いが心地よくなれる距離を見つけたいな♪」
「そうですね、距離感を計りかねているだけかもしれませんし」
(いや、要は距離を置きたいだけやん)
 職員の的外れなコメントに思わずイナフナイフは心の中で指摘する。
「でも、できない相談ですねえ! ぼかァその他大勢でいる気はありませんので今後もぐいぐい行きますよ」
 明るく言い放つイナフナイフの表情がスッと冷たいものに変わる。
(お人形さんとおままごと遊びなんて、死んでも嫌じゃ)
 ――醜いツラ晒すまで、とことんどつきまわしたるわ。
(忘れられていても約束は約束です。今度こそ、必ず守る)
 刺し違えてでも守らなければならないのだから……イナフナイフは横目でスコットを一瞥する。

●秘めた思い
「す、すみません、あやうく寝坊してしまうところでした」
 会釈する新月・やよいは、一人で本部まで赴くことにかなりの労力を使ったようで、肩で息をする姿がそれを物語っている。
 バルトは隣の部屋から慌ただしく席に着くやよいの姿をじーっと凝視していた。
 パートナーがデスクに両肘をついて顔の前で手を組み、しかめっ面を浮かべているとは、やよいは思いもしないだろう。
(何故、俺に言わないのか)
 言いたいことがあるのなら直接言って欲しいし、面談と言う名の聞き取り調査に申し込んだ理由も皆目見当がつかない。
 自分は必要ではないのかと、悩めるバルトの眉間にさらに深いしわが出来た頃に面談が始まった。
 やよいは姿勢を正すと、持っていた本を膝に置き直し話し始める。
「彼とはオーガとの戦闘を数回と、デー……外出を数回したくらいです。今は友人?関係になると思います」
 疑問符を付けたやよいの一言に、バルトは不満そうに溜め息を吐く。
(なんでそんな言い方するんだよ)
 別に友人でいいじゃないかとブツブツごちるバルトだが、会話を聞き逃さぬよう耳をそばだてる。
「世間的には友人だと思いますが」
「あはは……普段から心配ばかりおかけしていますので、友人だなんておこがましいかなって」
 次第にやよいの表情に陰が差し始める。
「世話を焼いてもらってばかりですし、そろそろお礼を……いえ、恩返しをしたいと思っているのです。僕はバルトから、あまりに多くのものを貰い過ぎています」
 ――様々なものを、『過保護』なほどに。
(……え?)
 バルトは予想外の言葉が耳に入り、唖然とした。
 『過保護』だなんて、今までそんなつもりはなかった。
(……いや、待て、俺は新月を守りたいあまり、新月の本音を考えてなかったんじゃ)
 そう思うと心当たりは山のように湧いてきて、押しつけがましさを感じられ胸の奥にズシリと重石がのしかかる。
 両頬を思い切り叩くとバチン!と大きな音が立った。
(しかし、新月が恩返しって……聞いていいのか?)
 嬉しい反面、バルトの迷いを表すように、狼の耳はそわそわ忙しなく揺れる。
 ひりつく頬をそのままにバルトが視線を戻すと、やよいはうな垂れていた。
「僕も彼に何かをあげたいのです」
 やよいの手は、持っていた本にすがるようにギュッと握り締められる。
「大切な人だから、支えられるばかりではなく支えたい。僕は……彼とフェアな関係になりたいんだと思う」
 けど、自信が無くて……浮かぶやよいの笑顔はぎこちなく、声には震えが伴う。
「自分なりに試行錯誤しているのですが、故郷の味というものは再現が難しいですね」
 チラとやよいが視線を本に落とすと、バルトも気になり目を凝らす。
 よく見るとやよいの指は絆創膏だらけで、目元にクマが浮かんでいた……そして、本の背表紙がうっすらと見える。
 ――料理の本?
(そういえば前に冷たい弁当は食い飽きた、って話をした気がする)
 俺は料理が出来ないから……まさか、お礼って?
 バルトは緩みそうになる口を片手で押さえつける。
「今日の事は、バルトには内緒にしてもらえますよね?」
「勿論です、面談の内容を他言することはありません」
 職員はやよいの問いに嘘は言っていない。
 バルトは本人の口から出た言葉を聞いているだけで、誰かから知らされた訳ではないのだから。
 言葉の真意を知らぬやよいは安堵して微笑を浮かべる。
「よかった、気を使わせてしまうのも偲びないので。話せて楽になった気がします」
 ありがとうございました、やよいは深く頭を下げる。
 一方で、バルトの胸の内には大きなしこりが出来ていた。
(俺は、これからどうしようか)
 やよいの望みと悩みを知って、どのように振る舞えばいいのか。
 チラと視線を向けた先には、大事そうに料理の本を抱えて席を立つ相方の姿。
 表情も先ほどと変わって、少し明るさを取り戻している。
(今分かることは、互いに努力が必要らしいってことか)
 今も、これからも、あいつの隣にいる為に……俺には新月と対等に接する努力が必要なのだ。
 バルトはもう一度自身の両頬を思い切り強く叩いた。
 反省と新たな決意を込めて、より一層気を引き締めようと自戒する。

●頼り、頼られ
「第一印象は良くなかったのですが……あ、フィンが悪いとかそういうのではなく」
 蒼崎 海十は言いにくそうに第一声を発すると、ぽつぽつと話し始めた。
「俺はオーガを駆逐したいとそればかり考えてて、フィンはそういうタイプには見えなかったので」
 フィン・ブラーシュは視線を泳がせる海十の横顔をマジックミラー越しに見つめ、初めて出会った日のことを思い出す。
(そうだよね)
 あの日に見た海十の眼差しはよく覚えている。
 オーガを倒すことに執念を燃やしていた、暗く冷たさのこもった瞳を今でも覚えている。
(『お前は命を賭けて戦えるのか?』なんて聞かれたっけ)
 今では落ち着きを取り戻したように感じられるせいか、遠い日の出来事のように思う。
「でも、彼がパートナーで良かったと思います」
(え?)
 不意に耳に入った海十の一言に、フィンは続きの言葉に耳をそば立てる。
「おかげで俺は『俺』を取り戻せました、気づかない内に抱え切れないほど抱え込んでたんだなって今なら分かります」
 力なく笑みを浮かべる海十に、フィンも神妙な面持ちを浮かべた。
(俺も海十がパートナーで良かったよ。海十だから……俺も『俺』で居られるんだよ)
 フィンの中でのしがらみも海十と関係が深まるにつれて、ほどけていく感触を確実に感じていた。
 職員は要点を調査シートの端に書き留めて、海十に視線を戻す。
「現在は当初に比べてかなり親密な関係のようですね」
「し、親密……そう、ですね。こ、恋人、ですから」
 言葉を続ける海十は恥じらいもあってしどろもどろしながら返答していた。
「契約当初から同居しているのですが、フィンが家事全般をこなしてくれることも感謝してます」
 ……頬を赤らめる海十の様子を覗いているフィンは、緩む口元を手で押さえデスクに突っ伏している。
(こ、恋人……海十の口から聞いちゃうと、凄い威力……!)
 こんなニヤケ顔を見られたら海十はどんな顔をするだろう、帰りは見つからないように気をつけようとフィンは改めて注意を払うことに決めた。
(ふふ、でも海十の世話を焼くのが俺の生き甲斐……なんて言ったら気を遣わせちゃうだろうな)
 ――だから、これは俺だけの秘密にしておこう。
 鼻歌でも歌いだしそうなほど上機嫌なフィンだったが、その表情はすぐに変わった。
「でも、やっぱり気になるというか、少し悩んでしまうんですよね」
 そう切り出す海十の眉間に僅かにシワが浮かび上がる。
「フィンは俺より一枚も二枚も上手で、いつも余裕で……勝てなくて」
 俺ばかりが頼ってしまっているんじゃないかって、最近は出来る範囲の家事も手伝うようにしているものの、海十としては腑に落ちていなかった。
「もっと俺に頼ってほしい、なんて贅沢な悩みでしょうか」
(……驚いた)
 海十が抱えていた悩みはフィンにとって、悩ましくも可愛らしいものだった。
(俺に勝てないだなんて、俺は海十に負けてばっかりなのに)
 余裕に見えるポーズだって、海十の前で格好つけてるだけなんだよ?
 悩める青少年には薄い膜のような、微かな隔たりに感じられるようだ。
「フィンはいつも支えてくれて、でも、俺もフィンを支えられるようになりたいです……守られるだけじゃない、俺だってフィンを守れるんだって」
 それは海十が明確に対等な扱いを求めているからなのだろう。
 悩ましげに語られた言葉に、フィンは視線をデスクに落とす。
(頼ってるよ……心から。海十なしの生活なんて、もう考えられないもの)
 ――海十のいる場所が、俺の帰る家であり、海十の隣が、俺だけの場所。
(俺がどんなに海十をカッコイイと思ってるか……隠してたら見えないものか)
 どれだけ支えられているか、海十にはちゃんと教えなきゃいけないなぁとフィンはぼんやりと思いながら視線をあげる。
 視線の先に指先が白くなるほど握り締められた海十の手が映った。
(海十になら、ちょっぴり情けない姿を見せてもいいかな)
「キミが思うほど、俺も『カッコイイお兄さん』じゃないんだぞ?」
 フィンは柔和な笑みを浮かべ、鏡越しに悩む海十の横顔を見つめ呟いた。


●夢見る誤解
(おおう、なんだかドキドキしますね……!)
 イグニス=アルデバランはそわそわと落ち着かない様子で尻尾を揺らしていた。
 今日は親愛なるお姫様、もとい初瀬=秀が面談をするらしいと招集を受けてきたのだ。
「ふふー、秀様の本音が聞けるなんてまたとないチャンスですよね!」
 ばれないように静かにしなくてはと、ワクワクしながらイグニスが待っていると程なくして件のパートナーが隣の部屋に入ってきた。
 席に着くと挨拶もそこそこに秀の面談は始まった。
「最初は手がかかる奴だなと……まあ、なんやかんや言いながら、保護者のように接してきたように思う」
「うんうん、年の差が大きいとよくあるお話しですね」
 腕組みしながら溜め息混じりに語る秀を、職員は安心させるように相槌を打つ。
「契約されてからだいぶ経過されて、今はかなり落ち着いてるようじゃないですか」
 にこやかな職員とは対照的に、秀は視線を泳がせる。
「今は……一応、一応は恋人……のはず」
 照れくささもあるのか、口ごもりながら発した言葉は聞き耳をたてていたイグニスも聞き取れた。
「恋人!」
 ぴこーん! とイグニスの尻尾が伸びると天井を指す。
(ふふふー、そうですよ!恋人ですよ!)
 その一言で心満たされていくイグニスはキラキラと青い瞳を輝かせ、ご機嫌な笑顔を浮かべる。
 感心しながらバインダーにペンを走らせる職員に、秀は渋い顔で見やる。
「……あー。なあ」
 言いにくそうな雰囲気を感じた職員は、首を傾げながら先を促す。
 それでも迷いが残っていたのか、数秒の間を置いて秀は口を開いた。
「キス、ってどうもっていけばいいんだろうな」
「……きす?」
 真顔で言い放つ秀に職員は呆気にとられた。
「いや、なんかあいつ……『子供っておとうさんとおかあさんが夜にキャベツ畑でキスするとコウノトリが連れてくるんですよね!』とか言い出しそうで! そんなん言われた日には、俺はどうすれば……!」
 頭を抱えてテーブルに突っ伏す秀を見て、イグニスはわなわなと唇を震わせていた。
(し、秀様……私をなんだと……!)
 夜であることはまだしも、キャベツ畑でする必要もないし、ましてコウノトリが子供を連れてくる訳がないことくらいイグニスも知っている。
「大丈夫ですよ、いくらなんでも私そこまでピュアっ子じゃないです!」
 力説して主張するようなことかはさておき、秀の心配が杞憂であることは間違いない。
(だからこう!ぐっと!迫ってくれてもいいんですよ! ……はっ、これはもしや)
 秀様は私と接吻を交わしたいと望まれている、つまり――。
(むしろあれですね、私が迫ればいいんですよねOKわかりました!)
 方針はガンガンいっちゃう感じにしようとイグニスは一人怪気炎をあげる。
 ……職員もどう答えたものかと唸り声を漏らしていると、秀がむくりと上体を起こす。
「いや、あいつももう成人した立派な大人だし、ちゃんと学校行って保健体育の授業も受けてんのは知ってんだが……あれだな、夢を見ているのかも知れん」
『イグニスはそんな破廉恥な行いを知らない』と思い込みたい自分が居るのだと、秀は背もたれに寄りかかり天を仰ぎ見る。
 こっそり聴いているイグニス本人は既に心は有頂天、先ほどのショックも吹き飛んでいた。
(うんうん、秀様は照れ屋ですものね! ここはやはり私がリードするところ!ロマンチックでムーディなシチュエーションをご用意しますので少しだけお待ちくださいね!)
 心の中で叫ぶイグニスの声はもちろん秀には聞こえていない。
「まあ、あれだ」
 相も変わらず険しい表情で向き直る秀は、テーブルに肘をついてもたれかかる。
「ひ、人並みに恋人同士でやるようなことは……その、できるようになりたいん、だが……どうしたらいいもんかと、色々考えちまって」
 もごもごと口ごもる秀の視線は右往左往、頬には僅かに恥じらいの赤。
 ――皆まで言わずとも、よほど鈍感でなければ秀の心情は伺える。
「色恋に不慣れですと、踏み出す一歩が重いんですよねぇ」
「……あーもう! そうだよ、慣れてねぇよ、悪かったな!」
 温い笑みを浮かべる職員に向かって、秀はテーブルに拳を打ち付けながらヤケクソに叫んだ。
 そんな風に照れ隠ししてしまう秀の姿が、イグニスには愛おしくて仕方がない。
(そういうところも全部可愛らしいですよ、秀様!)
 鏡の向こうに見える『お姫様』に、イグニスは胸をときめかせながら情愛の念を送る。



依頼結果:大成功
MVP:
名前:新月・やよい
呼び名:新月
  名前:バルト
呼び名:バルト

 

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター 木乃
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 男性のみ
エピソードジャンル シリアス
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 4 / 3 ~ 4
報酬 なし
リリース日 04月25日
出発日 05月04日 00:00
予定納品日 05月14日

参加者

会議室

  • [5]スコット・アラガキ

    2016/05/03-23:54 

    スコットだよー。ちょっと悩みがあるから、誰かに吐き出したくなってね!
    こういう場を設けてくれるAROAの職員さんたちって、ホント親切だよねっ♪



    (一方そのころイナフナイフは、件の面談のお報せに
    『※第三者が居ないとは言ってない』と極細ミリペンで書き足していた)

  • [4]蒼崎 海十

    2016/05/03-23:51 

  • [3]新月・やよい

    2016/05/03-23:42 

    遅くなりました、新月と申します。
    パートナーはバルトです。よろしくお願いします。

    どうかお互いにとって、良き一時になりますように。

  • [2]蒼崎 海十

    2016/05/02-00:20 

  • [1]蒼崎 海十

    2016/05/02-00:20 

    蒼崎海十です。
    パートナーはフィン。
    皆様、宜しくお願いいたします!

    面談…少し緊張しますが、己の考えを纏める意味でも良いかもしれませんね。

    よい一時になりますように!

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