さつきのきつさ(キユキ マスター) 【難易度:普通】

プロローグ

●不思議な喫茶からのご案内

 <さつきの喫茶より、ツツジ園のご案内>

 みなさま、元気にお過ごしでしょうか? <さつきのきつさ>店長でございます。
 今年もまた、ツツジの咲き誇る季節がやって参りました。
 皆様により一層ツツジを楽しんで頂くため、パズル好きの店主がとっておきの謎を添えて、おもてなしいたします。

 場所 タブロス市郊外『さつきの喫茶』
 開催 パズルを解きながら、よりツツジを愛でる会

 パズルを解いて、指定された種類のツツジの花を巡る催し物です。
 ツツジの種類や意外と知らない生い立ちなど、皆様のお役にもたつちょっとした豆知識をご用意しました。
 もちろん、パズルを解きながら違うルートを散策されても構いません。
 また、パズルを解けなかった場合のペナルティも一切ございませんので、ご安心ください。

 ※喫茶へ入ると、店長が皆様のパズルの結果を見にお伺いします。
  解けなかった場合は店長による解説講座が開かれてしまうかもしれませんが、あしらかず(^ω^)
 ※当店店長はツツジだけでなく、多くの花を愛しております。
  そのため、愛ゆえに暴走してツツジでない話が出てくるかもしれません。あしからず(´∀`;


●実際に行った人を掴まえた
 ツツジを観る、というのは分かるが、パズルとは何だろう。ちょうど掲示板の前を通り掛かった神人に尋ねてみた。
「あの、先輩。このツツジ園って行ったことありますか?」
 彼女は示されたダイレクトメールの貼り紙を見て、ああ! と手を叩く。
「そうだね。ツツジじゃなくて、秋桜(コスモス)のときに行ったことあるよ」
「…? ツツジではなく?」
「庭園っていうか、季節の花が満開になると凄いんだ、ここ。何月に行っても、何かしらが見所なんだよ」
「へえ…」
 それは凄い。
 じゃあ、と貼り紙の一点を指差した。
「この『パズル』っていうのは?」
 彼女はくすりと笑った。
「すっごく簡単なんだけど、いろんなパズルを手渡されるんだ。朝イチの会は人数限定の貸し切り状態になるから、結構オススメ」
 ん? この人やたら詳しいな、という疑問が目線に乗ったらしい。彼女は顔文字のように (ゝω・)テヘペロ! と可愛らしく笑ってみせた。
「私、パズル解くの大好きでさ。ここの店長と友達なんだ」
「そうだったんですか」
 ところで、どんなパズルがあるのだろう?
「そうだね…。朝イチの会なら、A4くらいの用紙に園を回る順番が謎かけされてるんじゃないかな?」
 魔方陣とか回文とか、なぞなぞとか迷路とか、ええっと他にも…。あっ、やっば! 私、相棒と待ち合わせしてるんだった!
「気後れせずに行ってみなよ。パズルって、意外と面白いよ?」
 じゃあね! と彼女は駆けて行ってしまい、話のお礼を言いそびれてしまった。

「ツツジか…。1回、ちゃんと見てみるのも良いかな」

解説

●詳細
ツツジを愛でつつ、パズルを楽しみつつ、お茶菓子を頂きましょう。

・朝一番の「ツツジを愛でよう会」
 抹茶と和菓子のセット付きで、参加費60Jrとなります。

・パズルは初心者向けの簡単なものです。
 数字を使うもの、ひらがなを用いるもの、を予定しております。

●プランについて
・通常のハピネスプランに加えて、パズルが得意か/好きか、といった嗜好を少し記載して頂けますと助かります。
 (記載がない場合は、皆様のプロフィールを元にアドリブで書かせていただきます)
 また、一般スキルをお持ちの場合はそちらも考慮いたします。

 例1)パズルにはあまり興味が無い。でも数字には強い。
 例2)パズルは好きだけど、ナンプレとかは苦手。あ、でも迷路なら任せろ!

ゲームマスターより

男性用エピソードでは初めてとなります。キユキと申します。
この度はエピソードをご覧いただき、ありがとうございました!

みなさま、パズルはお好きですか? やってみると結構面白かったりします。
でも電車の中でナンプレ解いてる、おじいさまやおばさまのレベルは高すぎます…。
ちなみに「パズル」という括りだと、テxリスやぷxぷよも仲間ですね。

リザルトノベル

◆アクション・プラン

大槻 一輝(ガロン・エンヴィニオ)

  ツツジ…なあ。
ツツジってアレだろ?
ほら、ガキがたまーに蜜を吸ったりしてる。

パズルを解いて、指定された種類のツツジの花を巡るって事はツツジに関するアンサーが出る確率が高いか、若しくは場所関係か…?

うっし、んじゃ行きますか。
魔方陣・回文・迷路は任せろ、但し謎々は任せた!
ツツジの種類とか分かんねーからな。
知恵が無いなら知識で代用せんとあかん。

えっと・・・・ここが、こうで。此処が・・・(ぶつぶつ←のめり込み

っしゃぁぁぁ!解けた!余裕余裕!
ほら行くで!




柊崎 直香(ゼク=ファル)
  パズルとか面白そーとは思ったけど朝早いのは苦手。
もうちょっと眠っていたかった感じ?
ま、歩いてるうちに覚醒するよね

パズルは好き。迷路も好き。
でも数字は苦手だし、
目的地? 適当に歩けばいつかは着くよ派です。
難しそうなのはゼクに振ろう。なんとかなるなる
あ、でも言葉遊びは得意だから平仮名とかはいけそう?

いいんだよ、今日はツツジを見にきたんだからさ
街角で見掛けることはあるけど、
じっくりツツジさんオンリーを愛でるってのは初めてかな
いろんな種類があるんだね、と散策。
はいはい、ちゃんとゼクの指示どおりのルートを進みますよ

解けても解けなくてもテンチョさんのお話は聞きたいな
どんな知識もお菓子もお茶も美味しく頂くよ


セイリュー・グラシア(ラキア・ジェイドバイン)
  迷路系パズルは好き。数字は苦手。
苦手系パズルが出たらラキアに任せる。
ラキアが花好きだから見せてあげたいと思い連れてきた。
「ツツジは小さい時に花の蜜を吸って遊んだぜ」
公園に沢山咲いてたからな。巧く花を採ると蜜が吸えるんだ。
ピンクとか白いのしか見た事無かったけど朱色もあるのかと、つい無意識に花を取ってしまった。
あ、と思った時にはラキアに花を取り上げられてた。
しまったな、花を採ったりすると怒るよな。
綺麗だったからつい手が伸びてしまった。
「ゴメンよ」とわんこが耳垂れた様な感じで反省。
悲しませるつもりは無くて、ただ綺麗だからつい・・そのまま密吸いそうになったのは小さい時の条件反射で。驚かせてゴメン。



あふ。
『柊崎直香』は小さな欠伸を溢した。早い朝は苦手だ。時間を確認してみると、朝イチの『ツツジを愛でよう会』には間に合ったようだ。彼の隣で、『ゼク=ファル』が呆れたように息を吐く。
「何度起こしたと思ってる」
 え、僕の記憶には1回しかございません。
 ……なんて思ったものの、直香は口には出さずににっこりと笑う。うん、我ながら賢い。

「おお、皆様揃いましたか」

 ツツジ園の入り口に、白髪混じりの紳士然とした男性が立っていた。ビニール加工を為された厚手のエプロンに、首元は手拭い、手元は軍手。腰のベルトに下がる革鞄からは、剪定用具と思しきものが幾つも覗いている。

「ツツジ、なあ。ツツジってアレだろ?」
 ほら、ガキがたまーに蜜を吸ったりしてる。
 庭園の入口からツツジ園を見上げて、『大槻一輝』は周りへ視線を戻した。何となく、神社の境内のようなイメージを受ける場所だ。
「どうやら、あの男性が例の店長のようだね」
『ガロン・エンヴィニオ』は、にこにこと微笑みを絶やさない紳士を観察する。この人物が顔文字を散らしてDMを作ったのかと思うと、中々にお茶目ではなかろうか。

「やあ、これは凄いね。あの色鮮やかな処、全部ツツジじゃないか?」
『ラキア・ジェイドバイン』が、広く小高い斜面一面を埋める色に唸った。そんな彼の様子を盗み見て、『セイリュー・グラシア』はホッと息をつく。
(喜んでくれて、良かった)
 ラキアは花が好きだ。セイリューは花にはあまり詳しくないが、ツツジなら馴染みがあるので取っつきやすい。

「さて皆様。本日は朝早くにお越し頂き、誠にありがとうございます」

 わたくし、<さつきの喫茶>店長でございます。どうぞよろしく。
 庭園の入り口でにこやかと立っていた男性は、やはり喫茶の店長であったらしい。彼は自身の後ろ、小高い斜面一面を埋める彩りを示した。
「当庭園、ただいま盛りのツツジを愛でる会。さっそく皆様に楽しんでいただきたいと思います」
 パッ、と。それは手品のように、店長の右手に3枚の封筒が現れた。
「こちら、本日のお題でもあるパズルです。それぞれ違う種類のパズルが1つずつ入っています」
 どうぞ、と差し出され、直香、一輝、セイリューは、それぞれに顔を見合わせながら1枚ずつ封筒を手に取る。ついでにペンも受け取った。
 店長は次いで、反対の手に持つ3枚のビラをひらりと振る。
(いつ取り出したんだ?)
 誰も現場を見ていない。謎だ。
「こちら、ツツジ園のイラスト地図となります」
 今度はゼク、ガロン、そしてラキアに地図が手渡され、皆パートナーと共に地図を覗き込む。丘の斜面に広がるツツジ園は、おおよそ9つのブロックに分かれているようだ。
 7 8 9
 4 5 6
 1 2 3
 このように区画に数字が振られ、8と9の間にある道を少しだけ進むと、<さつきの喫茶>が建っているらしい。ここから丘を見上げて、ちらりと見える屋根がそれだろう。入り口は1の小脇だ。喫茶店長は執事のように参加者たちを見送る。

「それでは皆さま、いってらっしゃいませ」


●アナグラム
 封筒を開けると、正方形の白い紙。折り畳まれたそれを広げ、直香はこてんと首を傾げた。
「なんだこれ?」

 じつつきつさ→1
 おおらむきさ→6
 ほきしんりま→7
 ひにけれみ→9

 彼の上から、ゼクも4つのひらがな文を見下ろす。彼が何かを言う前に、直香がわかったぁ! と声を上げた。
「これ、1つ目! これ『さつきつつじ』だよね!」
 隣に矢印で書かれている数字はよく分からないが、正解の自信がある。ゼクが直香の目の前を指差した。
「どうやら、そのようだな」
「え?」
 彼の指差した方向を見ると、木で作られた立て札があった。木目に目立つ白いインクで『サツキツツジ』と書かれている。
 そのすぐ隣にはぶわり、と絨毯のように所狭しと咲くヒラドツツジ。紅色は中心に行くほど赤に近く、白はすべて真っ白に、薄桃色には紅色が差し色に。5枚の花弁を持つツツジが咲き乱れ、青空に眩しい。
「あれっ? ねえゼク。これ、街でよく見るやつだよね」
「ああ。『ヒラドツツジ』という種類だったんだな」
 へぇ、知らなかった! と呟いた直香は、名前の立て札が二重になっていることに気がついた。立て札の上半分にはツツジの名前、下半分は別の板が重なって、パコリと上へ開けるようになっている。覗き込むように下の板を上げて、直香は目を瞬く。
「『4』って書いてある。何だろ?」
 手元のパズルを見ても4の数字はないので、関係なさそうだ。もう一度パズルを見た直香は、そこでピンと来る。
「分かった。これ、2つ目は『おおむらさき』だ!」
 んー、でも3つ目と4つ目は分かんないなあ。目的地は、適当に歩けばいつかは着くって思ってるし。
 ゼクを見上げた直香だが、彼は何のリアクションも返してくれない。
「お前が楽しむんだから自力で解けよ」
 と来た。無理なの知ってるじゃん、と頬を膨らませれば、ゼクは溜め息を吐く。でも、そんな溜め息なんて聞こえなーい!
 直香はゼクの手にパズルの紙とペンを押し付け、タタッと前を駆けた。

「ツツジさんオンリーを愛でるのは初めてだな〜」

 ツツジ、ツツジ、どこを見てもツツジ。
「あっ、あったよゼク。おおむらさき!」
 その名前が書かれた立て札の前で、ゼクは直香の目の前にイラスト地図を突き出した。
「次は7へ行けば良いんじゃないか?」
「えっ?」
 曰く、文字列の横の数字は、地図の区画番号じゃないかと。
「なるほど! ……そっかぁ、ゼクは柔軟な思考足りてなさそうって思ったけど」
 そうでもないんだ、と褒めたのに、お前は柔らかすぎると返ってきた。やわらかすぎるとか言うなー。
 はいはい、ちゃんとゼクの指示通りに進みますよ、っと。
(にしても、ゼクに花って似合わないんだけど)
 まるで何かの視察に来たお役人みたい、なんて直香は思う。
(いつものことながら、もっと楽しそうにしよう?)
 そうすれば、僕ももっと楽しくなれる気がするんだけどなあ、なんて。


●魔方陣
 封筒の中には1枚の紙。ペラっとした中身を開いて、一輝はおぉ、と小さな声を上げた。ガロンも彼の広げた紙を見、ふむと笑みを浮かべる。
「カズキの得意そうなパズルだね」

 2 ? 6
 ? 5 1
 ? 3 ?

『?』の部分は左下から順に、1・3・4・8の数字が振られている。ガロンはもう1枚手渡されたイラスト地図を見て、おや? と首を傾げた。
「解く分には、ツツジの知識は必要なさそうだけれど…」
 イラスト地図の上部には、『各区画で答え合わせが出来ます』と書いてある。
(なるほど)
 よく考えてある。これなら、嫌でもツツジを見なければならない。
「うっし、んじゃ行きますか」
 一輝はパズルを手に歩き出す。

 えっと……ここが、こうで……ここが……。
 早速のめり込んでしまった一輝に、ガロンは苦笑した。
(のめり込むのは良いが)
 街中でも見掛けるツツジの群れを、目に入っていないのか一輝は通り過ぎてしまう。サツキツツジとヒラドツツジの向こうは、ツツジ科だがツツジ属ではない種類が固まっているらしい。奥深い。
 ガロンがツツジの名前を立て札で確認しながら眺めていると、一輝が突然にガッツポーズを見せた。
「っしゃぁぁぁ! 解けた! 余裕余裕!」
 ほら行くで! と笑う彼から、ガロンはパズル用紙を受け取る。

 2 7 6
 9 5 1
 4 3 8

 見事に数字が埋まっていた。縦横斜め、列すべてが足して15となる魔方陣か。
 そこでちらり、とイラスト地図の存在が過ぎり、ガロンはもう一度地図を見下ろす。
「おや、これは……」
 色鮮やかなツツジ科の花々、一番手前にある立て札には『キレンゲツツジ』とあり、周りにはアザレアという名前も見受けられる。ガロンは立て札が二重になっているものを見つけ、下の板を捲る。そうして、自身の考えが当たったことに満足した。
「カズキ」
 丘を登りかけていた彼を呼ぶ。
「何だよ?」
 問うてくる一輝に、立て札の下の板を捲るように言う。訝しげに板を捲った一輝は、あっと声を上げた。
「パズルに書いてあったもう一個の数字って……」
 キレンゲツツジの下には『8』とある。
「ちょっと1のとこ見てくるな!」
 1の区画にある立て札には、『4』とあることだろう。駆け戻っていった一輝の後ろ姿に、苦笑する。
「少しは周囲を見て歩いても良いと思うよ」
 随分と綺麗に咲いているじゃないか。
 クスリと零して、ガロンは色鮮やかに咲くキレンゲツツジを撫でた。


●ワードスクエア
 白い紙を広げ、セイリューは首を捻る。残念ながら、迷路ではなかった。かといって数字でも無かったのだが……。
「えっと、これは文字を埋めればいいのか?」
『?』には左下から1・2・3・4と数字が書いてあり、数字に対応する縦横各文字列に対するヒントがある。

 さ ? ?
 つ つ じ
 き ? ?

絨毯のように咲き広がるヒラドツツジ、それよりも小ぶりのサツキツツジ。
「やあ、どれも綺麗だね」
 今はツツジが盛りだが、他の季節も花々が素晴らしいのだろう。愛情込めて咲いた花は、どれも美しい。愛おしげに花へ話しかけるラキアの横で、セイリューはパズルに頭を悩ませる。
「えっと、4の列のヒントは『卯月八日』?」
 何のことやら、さっぱり解らない。3の行のヒントは『冬のウグイス』だ。これも解らない!
「うあー、ダメだ。ラキア、解いてくれよ!」
「仕方ないなあ」
 別の時分にも来たいし、今度はセイリューがパズル解いてね。
 心中で苦笑しながら、ラキアはパズルに目を落とした。

 ヤマツツジの区画、ミツバツツジの区画、あらゆるツツジに囲まれて、セイリューは子どもの頃を思い出す。
「ツツジは小さいときに、花の蜜を吸って遊んだぜ」
 公園に沢山咲いてたからな。巧く花を採ると蜜が吸えるんだ。
「そうだね。街の中でも、ヒラドツツジがよく咲いているしね」
 1の列のヒントは『茶で使う道具』。こんなものか、とラキアはパズルから顔を上げた。

 さ さ こ
 つ つ じ
 き う ん

(あっ、こんな朱色のツツジもあるのか)
 セイリューは無意識の内に、朱色の小振りなツツジの花を手に採っていた。ハッとしたラキアが彼の手からそれを取り上げる。
「駄目だよ!」
 我に返ったセイリューが、叱られた子犬のようにシュンとする。項垂れた耳が見えるようだ。
「ご、ごめんよ……」
 子どもの頃を思い出して、つい蜜を吸おうとしてしまった。謝るセイリューに、ラキアも咄嗟に怒鳴ってしまったことを悔いた。
「あ、うん……俺の方こそ、怒鳴ってごめんね」
 でも、少しは大目に見て欲しい、とも思う。この朱色のツツジは『レンゲツツジ』。他に比べて強い毒を持つツツジなのだから。

ツツジの広がる丘の上、喫茶の建物が見えてきた。


●答え合わせに柏餅
 店長自ら給仕の茶と菓子は、池の傍に建つ喫茶のテラスにて振る舞われた。
「うわあ、柏餅!」
 目を輝かせた直香に、ゼクは季節イベントの存在を思い出す。
「そうか、こどもの日か」
 直香はおしぼりを使うと、いっただっきまーす! と早々に柏餅へ齧り付いた。こういう姿を見れば、歳相応なのだが……。
 テーブルに置いていたパズルの紙を見て、店長が眉尻を下げる。
「ああ、やはり最後のものは難しかったですか」
 アナグラムの3つ目の答えは『ホンキリシマ』、4つ目の答えは『ハナグルマ』だ。
「4つ目の答えがハナグルマであることは実物で分かったが、なぜこの答えになるのかが分からん」
 お手上げだ、と告げたゼクに、店長は笑う。
「そうですね、中級者向けと言っても良いものですので」
 では解説をしましょう、と彼はペンを手にした。
「元の文字は『ひにけれみ』です。この上に『はなぐるま』と書いてみましょう」

 はなぐるま
 ひにけれみ

 口の端に付いた餡こを舐め取り、直香も身を乗り出した。
「……あっ」
 ひらがなの五十音順で、1文字下げたということか。耳障りの良さを優先し、濁点を抜いたという。脱帽だ。
「ねえ、テンチョさん。ツツジさんいっぱいだけど、どれくらい種類あるの?」
「国内だけで40〜50種といったところですね。園内は30種程度です」
「……国内だけ、ということは」
 ゼクの言葉に、店長は頷く。
「海外も含め、600種と言われていますね」
 品種改良が盛んなのですよ、と続く説明に、身近なツツジの意外な一面に驚く。
 良い温度の緑茶が、喉越し良く直香とゼクの喉を通った。


●レッツ、パズルトーク!
 柏餅の他に選べる菓子は、ツツジをモチーフにした練切。見た目がとても愛らしい。
「店長さん。もっと難しいパズルはないんですか?」
 一輝は菓子そっちのけで、店長へ問う。問われた店長は嬉しそうだ。
「おや、このパズルはお気に召しましたか」
「はい。思ったより面白かったです」
「では、本日他の方へお渡ししたパズルも見てみますか?」
 手渡された2枚の紙に、一輝はまたも夢中になってしまった。ガロンは苦笑して肩を竦める。
「このパズル、すべて店長さんが?」
「ええ。ファミリー向けや参加人数が多い場合は、うちのスタッフも創りますよ」
 あまり縁がありませんか?
 そうですね、ジグソーパズルや数独を見掛けるくらいで。
「お客様の場合、論理パズルなんかお得意そうですねえ」
「論理パズル?」
「条件ABCがあり、結果Dを導き出す……という形のものですね。文章による謎かけです」
 有名なのは『正直と嘘つき、2人の子どもの話を元に正しい道がどちらか選ぶ』ものですね。
 一輝はちら、と目線を上げ、店長と話すガロンを見た。
(よく分かるな、店長……)
 ぱっと見爽やかだが、胡散臭い感じがやはり見えるのだろうか、と一輝は些か失礼なことを考えた。
(性格もあんま良くないしな)
 いや、悪いやつではないんだ、と胸中で誰かに言い訳をしながら。


●店長、独壇場
『笹子』は冬の、さえずりに至っていないウグイスのことです。『茶通』は茶道具の1つですよ。
『機運』…これは分かりますね。最後の答えは『故人』となります。もちろん、『個人』でも構いませんが……。
「卯月八日とは、旧暦の4月8日に行われていた行事です。山神を祀ったり、先祖を供養したりしていたのですよ」
 今でも、その風習が残っている地域もあると聞きます。
 パズルで出てきた言葉の意味を、喫茶の店長はそれぞれ分かり易く教えてくれた。知らなかったことばかりだ。
 店長の話はさらに『ツツジにも毒のあるものが』と移り変わり、セイリューを驚かせた。
(もしかして、あのときラキアが怒ったのって……)
「観賞用植物といえど、あまり油断は出来ないのですよ。鈴蘭も、可憐な見た目に反して全身が毒ですし」
「えっ?!」
「そう強いものではありませんから、触った後に手を洗えば大丈夫ですよ」
 驚くばかりのセイリューに、少し教えておいた方が良いのかな、と考えたラキアである。
「危ない、という意味だと薔薇の刺が引き合いに出されますが、こちらは薔薇の鑑賞会もあるのでしょうか?」
 尋ねたラキアに、店長が心持ち身を乗り出した。
「もちろん! 薔薇の季節は年中ではありますが、この庭園では梅雨前と冬に開いておりますよ」
 梅雨なら紫陽花、夏なら向日葵や鬼灯も。一般参加で時計草の品評会なんかも行っておりまして。秋なら菊と秋桜が人気ですねえ。
(トケイソウってなんだろう……)
 向日葵以降について行けなくなったセイリューは、店長が今年の一番茶と言った緑茶を啜る。苦みが少なく、飲みやすい。
(……楽しそうだな)
 花にあまり興味が湧かないことが、少し申し訳ない。ラキアと店長の会話を聴きながら、思う。
(もっと話してみるか)
 まだ、彼と契約を交わしてからそんなに経っていない。これからもっと、知っていけば良いのだ。


●<ツツジを愛でる会>終幕
 朝早くにパズルで頭を使い、甘いお菓子と程よいお茶でひとごこちも付いた。誰もがそろそろお暇を、と考える時分を計り、奥へ引いていた喫茶の店長が戻ってきた。
「さて、皆様。本日は<パズルを解きながら、よりツツジを愛でる会>へご参加頂き、誠にありがとうございました」
 これにて、朝一番の<ツツジを愛でる会>は終了となります。
 そんな言葉と共に、店長は参加者たちを店の外へと送り出した。

「楽しかったよ、テンチョさん! 今度は僕、『ツツジ』って漢字書けるようにしてくるね!」
 ツツジの漢字が『髑髏(ドクロ)』に似ている諸説の話を、直香は気に入ったらしい。ついでに『薔薇』も書けるようなってやろう、なんて決心している。
「茶と菓子も美味かった」
 ゼクも言葉少なながら、有意義だったと結論づけたようだ。

「そういえば店長さん、何で<さつきの喫茶>って名前にしたんですか?」
 ひらがなにしたら回文ですけど、と素朴な疑問を呈した一輝に、店長は頷く。
「回文も理由の1つですよ。他にも、私の生まれたのが皐月の頃であったり、もちろんツツジのこともありますし」
「それも全部、パズルのネタに?」
「なりますねえ」
 ガロンの返しに店長はからりと笑い、(この店長、出来る……)と一輝が変な方向に感心したことは、内緒だ。

「な、なあラキア。今日どうだった……?」
「とても楽しかったよ。店長さんとはもっと話したいところだったけど」
 なぜか、また不安げな子犬のような雰囲気がセイリューに見える。ラキアはさすがに、彼に失礼な例えかとその考えを振り払った。
「機会が合えば、また来てみたいかな。向日葵の迷路なんて面白そうだ」
「迷路か、それなら俺も解けそうだな……」
 ややぎこちないながら、セイリューも笑みに変わる。



 三者三様のお客様を見送り、<さつきの喫茶>店長はさて、と肩を回した。
「通常開店まで、あと30分。準備を進めなければ」
 一旦『OPEN』に替えた立て札を『CLOSE』にして、彼は店の奥へと戻っていった。



 End.



依頼結果:成功
MVP
名前:柊崎 直香
呼び名:直香
  名前:ゼク=ファル
呼び名:ゼク

 

メモリアルピンナップ


( イラストレーター: 九廸じゃく  )


エピソード情報

マスター キユキ
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 男性のみ
エピソードジャンル ロマンス
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 普通
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 3 / 2 ~ 5
報酬 なし
リリース日 04月23日
出発日 04月29日 00:00
予定納品日 05月09日

参加者

会議室

  • [3]大槻 一輝

    2014/04/28-00:23 

    大槻です。
    宜しくお願いしますね。

    …まあ、パズルは程々に。
    あまり特殊な知識を要するものでなければ恐らく大丈夫でしょう。

  • セイリュー・グラシアだ。よろしく。
    数字系パズルは苦手。迷路系なら何とか?

    精霊のラキアが花好きだから
    綺麗な花を見せてあげたい・・かな。

  • [1]柊崎 直香

    2014/04/27-20:40 

    パズルは好きだけど実力が伴わない派です、クキザキ・タダカです。
    よろしくねー。

    出発日が早めなのでご注意ー?
    ツツジの見頃に間に合うといいな。


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