


『練り香水』というものをもらった。
それを受け取ったのは彼に似合いそうな香りだと思ったから。
「体温の高いところにほんのひと撫で、つけるだけ……か」
手首や耳の後ろ、腕の内側、足首に胸元やウエスト、首筋。
他人の手で触れられるのも恥じらいを覚えるような箇所だが、
自分のイメージした香りを身に着けているのかと思うと少し征服欲というものが刺激される。
しかも、それほど香りが強い訳ではなく、つけている本人しか分からないほどの微香だ。
(そ、そう、香水をつけるだけなんだから、おかしなことはない、はず、だ……)
邪なことを考えている訳ではない、自分に言い聞かせてはみるものの頬の熱に下がる気配はない。
「な、なにか上手いことを言ってつけられたらいい……かな?」
あの手この手を色々と考えていると、電話のベルが騒ぎ始める。
――電話の相手は、ちょうど考えていたパートナーの声。
「もしもし? これからそっち行くけど大丈夫?」
天運は我にあり、内心でそう思いながらガッツポーズ。
好機到来と思って一も二もなく返事を返す。
「よかった、じゃあすぐ行くからね!」
お土産待っててね、と言って電話はプツリと切られた。
(さて、どういう口実で付けてもらおうかな……)


お土産代として300Jr消費します
特に指定が無ければ描写もなく消費したのみとします
●目的
パートナーに練り香水をつけてみよう
●練り香水について
いわゆるソリッド(固形)タイプの香水で、香りは強くありません
軟膏のように塗って付けるものですがべっとりと付けず、ひとなで程度で十分です
付ける箇所は体温の高い部位になります
手首、足首>腕の内側>胸元やウエスト>耳の後ろ、首すじ
※右に行くほどお願いが難しくなりますので、ご留意ください
1・バニラ(濃厚な甘みのある香り)
2・マリンソーダ(爽快感のある涼しげな香り)
3・金木犀(優しくふんわりした甘い香り)
4・グレープフルーツ(甘酸っぱい柑橘系の香り)
5・ローズ(豊潤な甘みのある香り)
香りのチョイスは『数字』をプランに明記してください
●お願い
・頼む側(相手につける方)
パートナーにつけるまでの行動、つけている際の心情をプランに明記してください
『相手に渡して自分でつけさせる』行動はエピソードの主旨から外れますので、ご留意ください
・頼まれる側(相手に付けてもらう方)
練り香水をつけられることを一切知りません(PL情報)
頼む側から『つける際に』明確にお願いされた場合のみ、把握した状態で判断することになります
『電話越しで事前にお願いしていた』という行動は不可です
(部位に関しては親密度から考慮して、マスタリングが入る可能性はあります)
300Jr分のお土産についてや、頼む側への反応、つけられている際の心情をプランに明記してください
●諸注意
・多くの方が閲覧されます、公序良俗は守りましょう
(性的なイメージを連想させる行動は厳しめに判断します)
・『肉』の1文字を文頭に入れるとアドリブを頑張ります
木乃です、フレグランスイベントはまだまだ続く。
納品時に参加された皆様へ全8種類のうち、ランダムで2つの『香水』がプレゼントされますよー!
今回は練り香水をパートナーにつけてみようというエピソードです!
自分の選んだ香りで相手を包み込むって、ちょっと官能的ですよね。
そんな大人の雰囲気ただようエピソードでございますが、
いつも通りセクシャル過ぎる内容は、厳しめに判断しますのでご留意ください。
それでは、皆様のご参加をお待ちしております。


◆アクション・プラン
初瀬=秀(イグニス=アルデバラン)
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肉 頼まれる側 (お土産のドーナツを手渡し) お前が妙にテンション高いときは大体何か企んでる時だよな…… イグニス。何考えてるか正直に言え、今なら怒らないから はあ、練り香水?つければいいのか?(受け取ろうと ……は? いやいやいやいやちょっと待て、なんで!? いやそういう問題じゃねえから! (露骨にしょんぼりする様子に) ぐっ……痛いところを…… (人前では照れ臭いので接触を避けている自覚あり) ~~~あぁもう!わかったから! 俺のイメージ、って…… こいつはなんでこうさらっと言ってのけるのか っ、!(びくりと身を震わせ) 大丈夫だから! どうしてくれんだ、これから先この香りを嗅ぐ度に ……肌に触れた熱ごと思い出すだろうが |
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3 ほい。お土産。(という名のインスタント珈琲詰め合わせ 「クロちゃん家ってば、何もないし?」 これなら暫く置いといても持つよね。 丸い青のクッションに座り、練り香水片手に話す。 「妹に押し付けられてさー」どうせならクロちゃんに塗ろうかと。 「体温の高いところに塗るんだって」(説明を読む けど男の腹とか触ってもねえ。 「手首でいいから貸してよ」(掌を上に向けて右手を出す 少しか。少しってどんぐらいだろ。 ……まあ、いいか。(取り過ぎ 腕まで傷だらけなんだよなあ。(手首から肘の内側までをひと撫で 聞いたことないけど、何してたんだろうな。 「思ったより合うね」(匂いを嗅ぐ 「こっち捲って」 手に残ったのを自分の左腕内側に塗る。 |
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つけられる方 最近家を空けてる しぶしぶ留守番してる相棒に土産買ってきた 伸ばされた手警戒 様子違う? 掴まれ困惑 塗る? 嗅がせろっておかしいだろ 嗅がれる図想像 微赤面 拒否 相棒が引いたのが意外 強引に塗ってくると思ったのに 顔は平常だがしょんぼりさせた気がする 「手なら…いいよ 塗られ香水と認識 嗅いで 「バニラ…お菓子か僕は 冗談めかし 最近相棒を甘やかしてる自覚があり 今も嬉しそうな顔になったの見てほんわりした自分に苦笑い 嗅がれ変なドキドキ いつもと態度違って調子狂う (寂しかったのか? もしそうなら可愛い奴とかつい思う ずっと嗅いでるから恥かしくなる 逃げたい そうだ土産! 「人気店の肉まん並んで買ってきたんだ、肉だぞ!うまいぞ! |
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肉 2 お土産は新しくできたお店のケーキ 美味しいと評判だったので、きっと気に入ると思……は? いきなり何ですか?(訝しがりながらも言われるままに 緊張する…というか、くすぐったいです (あとなんていうか…照れます ……?(ふわりと漂った香りに首を傾げ 何をつけたんですか? はぁ…言ってくれれば、普通につけるのに ていうか、つけるなら手首とかで良かったのでは? 嫌いじゃありませんよ いえ、キツイ香りは苦手ですが… 必要性がないので、自分では使わないだけです (少し考え込んで 先生は、この香り好きですか?じゃあ使います 今のところ、先生といる時間が一番長いですから あなたが不快になるようなものは身に着けたくないです |
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肉 アンタ、いつも辛い食べ物は体に悪いっつって、近づけようともしなかったのに、どういう風の吹き回しだよ…? …ふーん……なんか、企んでんのか? 急に焦りだした相方を見て、なにかが怪しいと思い始めた やだ ……って言ってもどうせ引かねぇんだろ? だったらもう別に良い 良いっての。…てか、塗るタイミング見計らねぇで良いだろ 当たり前だろ。断るに決まってんじゃん… すべすべ……って、おい。思ってることそのまま出てるんですけど 身に覚えのなさそうな様子の相方に溜息 出てたっつの 手首、すべすべか? と塗られてない反対側の手首を見て、首傾げ |
●満たされる欲求
ゼノアス・グールンの細長い尻尾は不機嫌そうに揺れている。
ここ最近、李月が多忙なために一緒に過ごす時間が『全く』と言っていいほどないからだろう。
「リツキがいないーつまんなーい」
リビングのソファでゴロゴロと寝転がるゼノアスは、唇を尖らせながら手に持つ小さな丸缶を見つめた。
――ガチャ。
溜め息を吐く李月は、ずり落ちてきた眼鏡を押し上げながらリビングに入ってきた。
「お帰り、リツキ!」
主人の帰りを待ちわびていた大型犬のように、騒がしく駆け寄ってくるゼノアスに李月は視線を向ける。
「はいはい、ただいま……これあげる」
「土産か? サンキュー♪」
李月が袋を手渡すと、ゼノアスは嬉々として袋の中を覗きこむ。
その間に李月はコートを掛けて、自室に荷物を置いてこようとリビングを出ようとする。
「待て待て! あー、疲れたろ。首揉んでやるよ」
「……肩、じゃなくて?」
慌てて呼び止めるゼノアスに、李月は眉をひそめた。
おおよそ用いられる労いの言葉は『肩を揉む』であり、『首を揉む』という言い回しは滅多に聞かない。
困惑する李月はなんらかの意図を感じ、ジリジリと間合いをとろうとする。
――しかし、『お預け状態』だったゼノアスは、堪えきれなくなっていた。
手に練り香水を一撫でつけると、缶を落としながら手を伸ばす。
「~~っ! ちょっと塗らせろよ、んで嗅がせろ!」
「ぬ、塗る? 嗅がせろって、なんかおかしいだろっ」
状況を把握出来ていない李月のことも構わず、ゼノアスが強引に腕を掴んでかかる。
(もしかして、僕の匂いを嗅ぐのか?)
首筋にゼノアスの顔が寄せられ、間近で堪能される構図が脳裏に浮かぶ――李月の頬が微かに朱に染まる。
「や、やめろよ!」
李月は迫るゼノアスの手を、力いっぱい振り払った。
「いいだろ、ちょっとくらい!」
「……僕の気持ちは関係ないんだね」
声を荒げて不満を漏らすゼノアスに対し、李月は沈んだ声を漏らして表情を曇らせる。
ゼノアスは息を飲み、どうしてそんな態度をみせたのか、すぐに解った。
(オレ、リツキを困らせてる?)
李月の言う通り、本人の意思を無視して無理やりに済ませることは可能だ。
――しかし、それは自分の欲求。
李月の望んでいることではないと、今なら解る。
……ゼノアスはゆっくりと、掴んでいた手を離す。
「わりぃ、無理強いはできねぇな」
あっさりと手を離され、李月は拍子抜けした。
いつもなら強引に迫ってくるだろうに――それどころかバツが悪そうな顔をして、尻尾をしょんぼり垂れている。
(ちょっと、言い過ぎたかな)
珍しく反省している様子に、李月は毒気を抜かれてしまった。
「首は抵抗があるけど、手なら……いいよ」
「ホ、ホントか!?」
許しを得たゼノアスは一転して、表情を明るくさせる。
そんな様子を見て安心する自分に、甘やかしているなと李月は内心呟く。
意気揚々と落とした缶を拾い、李月をソファに座らせると、再び固形の香水を指に乗せる。
「気に入ってくれっかなぁ」
ゼノアスが両手で李月の手首を包み込み、そっと指を這わせると、ほのかに甘い香りが漂い始める。
「なにか匂いがすると思ったら、香水か? しかもバニラ……お菓子か、僕は」
呆れ半分、冗談半分に李月が言うと、すっかり上機嫌なゼノアスがニカッと笑顔を見せる。
「オマエから香ったらいいなって思っちまったんだよ」
満足げに語るゼノアスに、ほんわり和んでいる自分が居て……李月は僅かに苦笑い。
「でも、ホント良い匂いだ」
ゼノアスが李月の手を顔に寄せ、じっくりと香りを堪能する。
(な、なんだろう……いつもと態度が違うせいか、緊張するというか、調子が狂うというか)
――その答えは、普段の態度を思い返して解った。
(寂しかったのか?)
現に、目の前に居る青年は手を握っているだけだというのに、幸せそうな表情を見せている。
……そして、スンスンと鼻を鳴らしていた。
(さ、さすがに居た堪れなくなってきた、この状況を脱するには……そうだ!)
「さっきのアレ、人気店の肉まん並んで買ってきたんだ、肉だぞ! うまいぞ!」
さぁ食べようじゃないか!
離れようとする李月の手を、ゼノアスは離そうとしない。
「今は肉より菓子がいいぜ」
満たされる欲求に、ゼノアスの寂しさは消えていた。
●気合を入れて
(相手はレンたんだし、素直につけさせてくれないよね……)
エルレインはバッグのポケットに忍ばせた缶を指で撫で、小さく溜め息を吐く。
しかし、大人しく引き下がってばかりはいられない……かぶりを振って、弱気な気分を振り払う。
「……なに言われても、絶対屈しないんだからっ」
グッと拳を握りしめると日野 聯の家のインターホンを押した。
――中から面倒そうに顔を出す聯に、先手必勝と好物である激辛のお菓子を渡す。
「レンたんっ。はい、お土産!」
満面の笑みで袋を差し出すエルレインに、聯は露骨に怪訝な雰囲気をかもしだす。
「アンタ、いつも辛い食べ物は体に悪いっつって近づけようともしなかったのに、どういう風の吹き回しだよ……?」
「え、えへへ、たまになら良いと思うの、たまになら」
しかし、聯は『はい、そうですか』と鵜呑みにしない。
「……ふーん……なんか、企んでんのか?」
その一言に、エルレインの身体はギクリと強張る。
額からたらーっと冷や汗が流れ落ちていく。
「へっ? た、企んでないよーぜんっぜん! レンたんの気のせいじゃないかしらっ」
あたふたと慌てふためき、両手をバタバタと激しく上下に振りながらエルレインは誤魔化そうと試みる。
――聯の視線の冷ややかさ、マイナス5度相当。
(うぅ、あきらかに怪しまれてる……)
日頃の行いによるものか、単に聯の人見知りの激しさによるものなのか。
訝しがる聯の視線に屈しそうになるが『今日はめげずに、果敢に、当たっていこう!』と心に決めてきたのだ。
この程度でへこたれてなるものかと、エルレインは自身を心の中で叱咤する。
「まぁ、いいけど。寒いし早く上がったら?」
勧められ、エルレインは聯の家に上がっていく。
当の聯の興味はすでにお菓子に向いており、封を切って唐辛子の刺激臭を漂わせながらボリボリと頬張っていた。
(うう……し、仕方ないか……)
如何様な手段をとっても、おそらく聯の猜疑心を深めるばかりだろう。
それならいっそ、正直に言ってしまった方が数段マシだ。
エルレインがバッグの内ポケットに手を伸ばす。
「――レンたん!」
「ん?」
口に赤い食べカスを付けている聯に、エルレインが意を決してポケットから引き抜く。
「これ、塗らせてっ? 貰ったんだけど……」
「やだ」
間髪入れずに断る聯の言葉に、エルレインが重ねて頼もうとすると――。
「……って言ってもどうせ引かねぇんだろ?」
だったらもう別にいい……聯は菓子を食べる手を止めずに、視線を逸らす。
「え、い、良いのっ? ほんとに?」
エルレインは信じられない様子で、聯に問い質すと大きな溜め息が返事の代わりに返された。
「良いっての……てか、塗るタイミングなんて見計らねぇでも良いだろ」
「そうなんだけど……言ったら断るもの、レンたん……」
眉を寄せるエルレインに、聯はいよいよもって面倒そうに顔をしかめる。
「当たり前だろ。オレの意思とか関係なく迫られたら、断るに決まってんじゃん」
だから、今回は一応聞いてきたから大目に見てやる――と、呟き。
聯は『さっさと済ませて』と言わんばかりに、ぷいっと顔を逸らした。
エルレインは練り香水を指に取る。
「これ金木犀の香りなのよ、甘くて良いわよねぇ」
鼻歌交じりに聯の手を取ると「あらっ!」と声を上げる。
「レンたん、手がすべっすべ……! 良いなぁ、キレイ」
手首に塗ろうと手を取ると、瑞々しい素肌を羨ましそうに見つめる。
「すべすべ……って、おい。思ってることそのまま出てるんだけど」
聯は呆れながら一瞥し、膝に乗せた菓子袋をゴソゴソと漁る。
ハッとエルレインは肩を強張らせた。
「こ、声に出てた?」
「出てたっつの」
嘘つく必要なんかないだろうと反論する聯に、エルレインは首を傾げるばかり。
(というか……すべすべか?)
意識したこともなかった聯は、赤い粉末まみれの手を見つめた。
●触れられる喜び
「秀様、どうぞどうぞ!」
イグニス=アルデバランは満面の笑みを浮かべ、初瀬=秀を招き入れる。
「そうだ、これ土産のドーナツ」
秀は持ってきた紙箱をポンとイグニスに手渡す。
「ひ、秀様の手作りですか!? 大事にとっておきますねっ」
「傷むから食えよ!?」
目をキラキラと輝かせるイグニスに、秀は冷静にツッコミを入れると……イグニスが妙に上機嫌であることに気づいた。
「待て、お前が妙にテンション高いときは大体何か企んでる時だよな……」
秀の言葉に、ドーナツ入りの箱を掲げて小躍りしていたイグニスの動きがピタリと止まる。
「イグニス。何考えてるか正直に言え、今なら怒らないから」
ジロ、と凄むように注目する秀に、くるりとターンを決めたイグニスが首を傾げる。
「えー何にも企んでないですよ?」
いつもの笑顔を浮かべながらイグニスが箱を置くと、代わりに置いていた小さな缶を手に取る。
「ただ秀様にですね、これを付けて頂きたく!」
サッと差し出すと、怪訝そうな表情を浮かべながら秀は凝視する。
「はあ、練り香水? つければいいのか?」
「あ、いえそうでなくて」
手に取ろうとする秀の前から、素早くイグニスが引き戻し――。
「私につけさせてください!」
とびきりのド直球スマイルを浮かべるイグニスに対し、秀の思考が一瞬止まる。
「……は?」
練り香水とは、たしか塗るもので。
塗るということは、肌に触れる必要があり。
触れるということは、イグニスの手が自分の身体に――。
「いやいやいやいやちょっと待て、なんで!?」
「えっなにゆえ!? 痛くしないですよ!?」
「いやそういう問題じゃねえから!」
というか誤解を招くような言い方はやめろ! と付け加えながら必死に断ろうとする秀に、イグニスは次第に眉をハの字に垂れていく。
「……人目を気にせず、秀様にゆっくり触れるいい機会だと思ったんですが」
駄目ですか……?
しょんぼりと尻尾の先も下向きにしたイグニスの姿に、秀の良心が呵責する。
(ぐっ……痛いところを……!)
人前での接触を避けていることに、自覚はある。
――単に照れ臭いだけだが、そのせいで我慢させてしまっている。
今はイグニスの家で二人きり、他の誰かに見られることはないのだ。
「~~~あぁもう! わかったから!」
根負けした秀が『好きにしろ!』と言わんばかりに降参の意を示すと、イグニスの表情がみるみるうちに輝きだす。
「! ありがとうございます!!」
満面の笑顔を浮かべるイグニスは秀を座らせると、隣にちょこんと腰掛けて蓋を開く。
軟膏の表面を撫でるように指先を滑らせる。
「この香水、秀様のイメージなんですよ」
「俺のイメージ、って……」
缶とイグニスの指先から感じられる、グレープフルーツの香り。
「甘いだけじゃなくてほろ苦い大人っぽさ、的な!」
これが自身に抱かれているイメージなのか……と理解させられ、秀の羞恥が煽られる。
(こいつはなんで、こう、さらっと言ってのけるのか)
溜め息を吐きそうになる自分をどうにか抑え、視線を僅かに逸らすと――不意に首筋を撫ぜられた。
秀の身体がビクリ、と大きく震える。
「っ、!」
「? あれ、くすぐったかったです?」
覗きこんでくるイグニスの顔は、それはとても嬉しそうで。
ようやく触れられた事実を噛みしめているようだ。
「大丈夫だから!」
動揺を悟られまいと、秀は少し強い口調で主張する。
慈しむように撫でおろされる指先に、秀の心臓は早鐘を打つ。
(どうしてくれんだ、これから先、この香りを嗅ぐ度に……肌に触れた熱ごと思い出すだろうが)
赤らむ頬が見えてしまわぬよう、逸らした顔に手の甲を押し付ける。
――そんな秀の姿に、イグニスは眩しそうに目を細めていた。
(普段よく嗅ぐ香りじゃない方が、特別な感じがしますね)
今だけは、自身の想う香りをまとって欲しい――口に出さず、イグニスは心の中で呟く。
●言葉の裏に
「いらっしゃい、チヒロちゃん」
「お邪魔します」
暁 千尋がジルヴェール・シフォンの家に上がると、すぐにリビングに通された。
「この間、新しく出来たお店のケーキなんですよ」
美味しいと評判を聞いていた千尋は、ジルにも賞味してもらおうと人気の品を選んできた。
「ふふ、お土産ありがとう。でもその前にちょっとこっちに来て」
「……は?」
ケーキの箱を受け取ったジルは微笑を浮かべると、皿もフォークも出さずソファに腰掛け、千尋を手招きする。
何事だろうか、眉をひそめ訝しがる千尋だが、断る理由もないので言われるままに隣に腰を下ろす。
「いきなり何ですか?」
「いいから、じっとしててね」
――スッと、ジルの手が千尋の首元に伸びていく。
「っ!」
驚いた千尋はソファの端まで後ずさり、ジルから離れた。
目を白黒させ、困惑する様子を見て、残念そうに眉を下げるジルを千尋は見つめる。
「……い、いきなりなにを?」
「ごめんなさい、驚かせちゃったわね。貴方に似合いそうな香りがあったから」
マリンソーダの練り香水を取り出して見せると、千尋は小さく溜め息を吐いた。
「はぁ……言ってくれれば、普通につけるのに」
「ふふ、ワタシがつけてあげたかったのよ」
呆れ顔を見せる千尋にジルはクス、と小さく笑みを浮かべる。
「それに、顔に近い方が香りがよく分かるでしょう?」
ジルの言葉に、千尋は眉間にシワを寄せた。
複雑そうな表情を浮かべると、気まずそうにぽつぽつと言葉を漏らす。
「首は神経が集中している過敏な部位ですし……不意に手を伸ばされると驚いてしまう、というか……いえ、先生がおかしなことをするとは思っていないのですが」
――要は『恥ずかしいから』と、暗に言いたいらしい。
もっともらしい主張をして、慌てている千尋の姿をジルは微笑ましく見つめる。
「……ていうか、つけるなら手首とかで良かったのでは?」
「そうね、今日は手首で我慢してあげるわ」
手を貸して、とジルが手を差し出すと、千尋も袖をまくって手を伸ばす。
練り香水を施した手首から爽快感のある、甘さを含んだ香りがじわりと溢れてくる。
「チヒロちゃん、こういうのは好きじゃない?」
ジルは千尋がこういった物を使っているところを見たことがないから、嫌いなのかと思っていた。
確認する前に付けていたものの、確認を込めて問いかける。
「嫌いじゃありませんよ、キツイ香りは苦手ですが……」
あまり必要性がないので、自分では使わないだけだと千尋は返す。
「なら、これプレゼントしたら使ってくれる? ……と言っても、試供品だから次のお出かけ前に使い切っちゃうだろうけど」
苦笑いを浮かべるジルを前に、千尋はしばし思考を巡らせる。
「先生は、この香り好きですか?」
「ええ、好きよ」
ジルの言葉を聞いて、千尋は僅かに首を上下した。
「じゃあ、使います。今のところ、先生といる時間が一番長いですから」
「ふふ、嬉しいことを言ってくれるのね」
顔を綻ばせるジルに対し、気恥ずかしそうに千尋は視線を逸らす。
「……あなたが不快になるようなものは身に着けたくないんです」
裏を返せば、先生の好ましい物を身に付けていたい、とも聞こえて。
付け加えられた言葉に、ジルは目を丸くして――伏し目がちに細めた。
「そういうこと、ワタシ以外に気軽に言っては駄目よ」
勘違いさせちゃうから。
マリンソーダの香る千尋の手を撫でながら、ジルは口元に弧を描く。
●手に手を重ね
「ほい、お土産」
柳 大樹はインスタントコーヒーの詰め合わせをクラウディオに渡す。
クラウディオはその箱をじっと見つめた。
「クロちゃん家ってば、何もないし?」
これならしばらく置いておいても保つだろう、何度も買い直すのは手間がかかる。
クラウディオも嫌がる素振りを見せることなく、台所の片隅に置くことにした。
(……大樹の私物が、少しずつ増えている)
クラウディオが視線を巡らせると、台所にチラホラと見える――自分以外の使うもの。
(何故だろう、嫌な気はしない)
一瞥して台所を後にすると、丸い青色のクッションを下敷きに座る大樹が顔を向ける。
「クロちゃん、これ妹に押し付けられてさー」
赤い丸型クッションに腰を下ろすクラウディオに、ズイッと差し出す。
クラウディオは不思議そうに、差し出された缶を見つめる。
「なんだ、それは」
「練り香水?って塗るタイプ香水なんだとさ、どうせならクロちゃんに塗ろうかと」
どうやら興味本位で持ってきたらしい。
「体温の高いところに塗るんだって、ウエストとかもアリらしいけど」
男の腹とか触ってもねぇ、という大樹がチラと視線を向ける。
「手首でいいから貸してよ」
大樹が掌を上に向けて右手を出すと、クラウディオは大樹の掌を見つめる。
ただただ、じーっと見つめるだけのクラウディオに、大樹は眉をひそめた。
(……もしかして、支障が出るから渋ってるとか?)
それならそうと言って欲しいのだが、と思っていると――。
「了解した」
クラウディオはおもむろに左袖をめくり始めた。
「匂いを発するものを付けたことがなくてな」
香る物をつけてしまうと、身を潜めていても自分が隠れていることを主張してしまうようなものだから。
そう言いながら左肘までめくりあげたクラウディオは、差し出された大樹の手に自身の手を任せる。
(あー……そういう意味、ね)
嫌がられた訳じゃないならいいか、と胸の内で呟きながら大樹は蓋を開ける。
鼻腔をくすぐる僅かな芳香に、クラウディオの瞼が僅かに細められる。
「花由来の香りのようだが、なんの香りだろうか」
「金木犀だったかな、木に咲く小さいオレンジの花の……」
そこまで大樹が説明すると「把握した」と、短い言葉が返ってきた。
(少しか。少しってどれくらいだろ)
ほんのちょっとでいいから、と念押ししてきた妹の言葉が脳裏をよぎるが……具体的な量についての話が思い出せない。
(……まぁ、いいか)
大樹は適当にとればいいだろうと、缶の中に詰まった軟膏に指を軽く押し込み、すくい上げる。
――指の上に小さな真珠くらいの大きさが乗っているが、明らかに取り過ぎである。
そんなことも気にせず、大樹はクラウディオの手首に塗っていく。
(腕まで傷だらけなんだよなあ)
手首からひじの内側まで指を滑らせていると、クラウディオの色黒い肌がどうしても目に入る。
尋常ではない事情を抱えているのだろう、容易に想像させるものの、理由は計り知れない。
(聞いたことないけど、何してたんだろうな)
疑問が首をもたげ、クラウディオの顔を見やる。
クラウディオは、大樹の指先を見つめているように感じた。
「思ったより合うね」
語りかけると、クラウディオの身体が微かに強張ったような気がした。
大樹が顔を近づけて香りを確かめれば、金木犀の優しい香りが感じられる。
「そうか」
返ってきたのは短い返事。
「クロちゃん、こっちめくって」
差し出された左腕、クラウディオは言われるまま袖をめくっていく。
大樹はそのまま手に残っていた分を、自身の左腕に塗り始める。
(私よりも、大樹に合う匂いではないだろうか)
大樹から同じ香りを感じると、クラウディオの瞳が静かに揺らいだ。
| 名前:初瀬=秀 呼び名:秀様 |
名前:イグニス=アルデバラン 呼び名:イグニス |
| 名前:李月 呼び名:リツキ |
名前:ゼノアス・グールン 呼び名:ゼノアス/ゼノ |



エピソード情報 |
|
|---|---|
| マスター | 木乃 |
| エピソードの種類 | ハピネスエピソード |
| 男性用or女性用 | 男性のみ |
| エピソードジャンル | ロマンス |
| エピソードタイプ | ショート |
| エピソードモード | ノーマル |
| シンパシー | 使用不可 |
| 難易度 | 普通 |
| 参加費 | 1,000ハートコイン |
| 参加人数 | 5 / 2 ~ 5 |
| 報酬 | なし |
| リリース日 | 02月02日 |
| 出発日 | 02月11日 00:00 |
| 予定納品日 | 02月21日 |

2016/02/10-06:24
イグニスと秀様です!
ふふー、遊びに来てくれるのでちょうど良かったです!チャンス!
ちゃんとつけさせてくれるでしょうか、頑張らないと
皆様もファイトです!
2016/02/08-15:32
こんにちわっエルレインです! 神人は日暮聯…で、ひぐらし・れんと読みます。
どうぞよろしくお願いしますねっ
香水は3かな? レンたん、待っててね…!
2016/02/08-10:21
よろしくおねがいします
…自分の家に帰るのに何だか嫌な予感が??
2016/02/07-01:35
2016/02/05-21:30
3。つまり金木犀だね。
ダイスの神様の言う通り、っと。
2016/02/05-21:27
柳大樹でーす。よろしく。(右手をひらっと振る
練り香水ねえ。
んじゃ、とりあえずダイスでも振ろうかな。
6が出たら振り直す。
【ダイスA(6面):3】

