


●タブロス・モールにて
君は少し空いた時間をタブロス・モールにて潰していた。いわゆるウィンドウショッピングである。
「……?」
ふらりと立ち寄った文具店では、店先のワゴンで何やら特集をしているようだった。
近寄ってPOPを見れば、『香りの文具キャンペーン』とのこと。
香るインクとガラスペンのセット、香りのついた便箋、文香……。なるほど、香る文具とは色々あるものだ。
『香りを秘めた封筒を開いた人は、まず鼻をくすぐる香りを印象に残すでしょう。普通の手紙よりもインパクトのある、雅で優美なお手紙を大事な人に送りませんか?』
そうPOPには丁寧な筆文字で書かれている。
君は『大事な人』というところで、パートナーを思い出す。
いつもは口頭や電話、メールで連絡するが、たまには手紙もいいだろう。
君はワゴンの中から、香りを選び出した――。
そして君は、彼に手紙を送る。
手紙だから、面と向かって読まれるのはなんだかおかしいから、君はその場にはいない。
「そろそろ、読んでいる頃かな」
カフェでゆっくりと喫茶を楽しみながら、君は思いを馳せる。
香りを伴う手紙に、彼はどう思うだろう?
どんな顔をして読み進めるだろう?
そう思いながら、またカップを口に運んだ――。


●内容:書いた手紙を読んだ彼について描写します
●場所:手紙を読む場所は自宅です
●手紙
どちらが書いても構いません。
手紙の内容は必ずプランに明記してください。(むしろプラン全部が手紙の本文であることを推奨)
手紙を読む方は、手紙についての反応をプランに明記してください。
●消費ジェール
文具購入費と喫茶費で500ジェール消費します。
●文具
香り付きインク:薔薇、ラベンダー、ヴァイオレット、紅茶
香り付き便箋:いちご、りんご、おれんじ、れもん、そーだ、こーら
文香(封筒に入れるお香):白檀、梅、金木犀、桜
※選べるアイテム・香りは1つだけです。
OK:ラベンダーのインクを使う
OK:梅の文香を使う
NG:インクは薔薇で便箋はいちごで、白檀の文香を使う
NG:おれんじとこーらの便箋を混ぜて使う
混ぜると香りが混ざって悪臭になります。
お世話になっております。あき缶です。
《薫》シリーズのエピです。参加するとランダムで2種類の香水をゲットできます。
今回は、お手紙です。香り付き文具ってなんかワクワクしますよね。
万年筆やガラスペン、文香ってオシャレで、なんか憧れるんですが、手紙を出す習慣がないので使うところがなく、困ります……。


◆アクション・プラン
ハティ(ブリンド)
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紅茶の香りのインクに白無地の便箋 飾りはないが使い良さそうで陰影のきれいな、空押しの罫線が入ったものを選ぶ リンへ おかえり マフラー、よく使ってくれて嬉しい 初めての年賀状はアンタに書くんだろうと思ってた もう書かなくて済むのか 手紙を書かないから出すあてがなくなった事に気付かなかった アンタの居場所としてここが好きだったから アンタには骨を折らせたと思う 担ぎ屋のとのことがあって違うんだって気付いた 今はこの家が好きだ あの時はアンタが気付く材料をくれた 俺がリンに渡せるものはあるのか考えたが、ベッドには驚いた 返される気がないだろうアンタ だから俺も返されない方法を考えた 新しいペンを買ったんだ またアンタに手紙を書くよ |
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紅茶のインクを選択 『イグニスへ こうしてお前に手紙を送るのはたぶん初めてだな。 面と向かって言うには気恥ずかしかったので手紙にした次第だ。 正直な話最初の頃は、やたら押しは強いし人の話は聞かないし、 手のかかる子犬だ、俺が何とかせんと、と思ってたんだが。 気づいてみたらその明るさに、奔放さに、救われていたのは俺の方だった。 お前がくれた愛情を、今度は俺がお前にありったけ注いでやりたいから。 この先も、よろしく頼む。 (迷う様にインクの垂れた痕跡) 愛してるぜ、イグニス。 俺の最初で、最後の王子様。 秀 追伸 日頃素直になれない俺だから、 紅茶の香りに出会ったらこの言葉を思い出して欲しい』 |
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珊瑚へ お前がこの手紙を読んでいる頃、 自分は大学のカフェでホットミルクを飲んでいる。 上手く言えないが、最近思う事があるんだ。 いつもお前に対して口煩くなるのも、 悪態を吐くのも、お前に気を許してるからだって。 時々、お前がパートナーよりも弟みたいに感じるんだ。 心のどこかで放っておけないのかもしれない。 でも、時には笑わせてくれたり、支えてくれたな。 今のおれには……それが心強い。 だからそんな陽気さと温かさを持つお前の隣で おれは、これからもウィンクルムを続けていきたい。 便箋は、お前のイメージでおれんじの香りを選んだ。 気に入ってくれたら嬉しい。 ここまで読んでくれて、ありがとう。 したっけ、また大学でな。 瑪瑙瑠璃 |
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書く側 ゼノアスへ 出逢って1年数ヶ月 初めての戦闘は仮想ゲームの中だった 震えるだけの役立たずを命がけで守ってくれて感動した 最近は、僕のせいで大怪我させてしまって 覚悟はあったのにサクリファイスを失念してしまった事を大反省した 自分の使えなさにがっかりする なのにお前はなんでもない事みたいに笑って それに僕は救われてる 僕に戦う理由があるなら 強くなりたいお前を手伝う為 怪我をさせない為 絶対死なせない為 笑ってほしい為 と今は思う 頼りなさは精進する 僕の覚悟、進学はしない 今年はお前ともっと色んな所へ行くからな! それと、このまえ馬鹿って言ってごめん 李月より 追伸 今日は学校早く終わるから、近所のカフェにいる 買物して帰る |
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文香/梅 最近、思うことがある 君の言うとおり僕はどこかずれていて、思いがけないところで君を心配させている 記憶は幼馴染みの件以来全く戻ってくる気配はないし、その上迷惑ばかりかけている それでも僕を見捨てないでくれてありがたく思う どれだけたくさん本を読んでいても分かるようになるのは今まで知らなかったことだけだけど 先のことは誰にだって分からない だから、僕の周りの誰かがいなくなる前に伝えておきたい …直接会って伝えるのは、またの機会に回す 僕は君みたいな精霊が相棒で良かったと、心からそう思う だから、これからもどうかよろしくお願いします |
●たよりないきみのささえ
サフィニアが封筒を開くと、ふわりと甘酸っぱい薫りが鼻をくすぐった。
「……これ、咲祈が」
宛名と差出人をもう一度確認し、間違いなく神人のしたためたものだと分かったサフィニアは、お洒落な仕掛けに微笑む。
そして彼は丁寧に二つに折られた便箋の中身を読み始め、
「最近、思うことがある……?」
書き出しに少し眉をひそめた。
咲祈は失われた記憶の一端を思い出した。それは彼が亡くしてしまった彼女のことだ。それから咲祈は、どこか遠くを見ているような目をしていることが多かった。
その理由がこの手紙にあるのであれば、理由をサフィニアに打ち明けてくれるのであれば。それは嬉しいことだ。
今は、平気そうに以前とかわりなく読書漬けの毎日を神人は過ごしているが、サフィニアはずっとそれを見て、心配していた。
記憶がなかったのだ。目が覚めたら何も覚えておらず、しかしオーガと戦う運命だけは背負わされていた咲祈。
そして記憶が蘇ったかと思えば、辛い内容で……大丈夫なわけがない、とサフィニアは思う。
サフィニアは先程よりも真剣に文字を追う。
――君の言うとおり僕はどこかずれていて、思いがけないところで君を心配させている。
そうだ。彼は記憶が無いからか、どこか儚くこの世に存在していないのかもしれないと思うくらい、希薄な時がある。そしてこの世に存在していない者のように、現実離れしていて、サフィニアが世話を焼かなければならないこともしばしばだ。
――記憶は幼馴染みの件以来全く戻ってくる気配はないし、その上迷惑ばかりかけている。
咲祈が自らをそう認識していて申し訳ない気持ちになっていると知り、サフィニアは苦く笑う。確かに呆れたり、驚いたり、少し疲れたりすることも無いとは言い切れないが、彼の世話を焼くのは、悪くないと思っているのに。
――それでも僕を見捨てないでくれてありがたく思う。
と、謝意を伝えられては、小恥ずかしい。はにかみながら、サフィニアは続きを読み進めた。
――どれだけたくさん本を読んでいても、分かるようになるのは今まで知らなかったことだけだけど、先のことは誰にだって分からない。
彼の読書好きの一端を知った気がする。サフィニアは何も知らないからこそ、書物ででも知識を得たいのだろう。
――だから、僕の周りの誰かがいなくなる前に伝えておきたい……直接会って伝えるのは、またの機会に回す。
彼女を失った彼にとって、この一文は重たい。サフィニアは眉を下げた。いつか、口頭でも言ってくれるのだろうか。『僕は君みたいな精霊が相棒で良かったと、心からそう思う』と。
これからも良かったと思ってもらえるように、サフィニアには何が出来るだろう。
「今、俺ができることは咲祈の近くにいること。あとのことはその時になって考えれば、今はまだそれで良い」
そう自分に言い聞かせるように呟き、『だから、これからもどうかよろしくお願いします』と締められた手紙を、精霊は丁寧に封筒におさめた。
表情は苦笑だ。
「こんなこと伝えられたら、なんとしても俺が守らないと……」
面映ゆそうに呟き、サフィニアは手紙を大事にしまいこんだ。
●ふりかえればさくら
冷蔵庫の扉に、封筒が貼り付けられていた。
「……なんだこれ」
ゼノアス・グールンはいぶかしげに封筒を手に取り、表裏を見返して、自分宛てであること、そして書き手が神人である李月であることを知って、口端を上げた。
「なんだなんだいじらしいじゃねーか」
中を覗こうと封をあけると、ふわっと春の香りがした。
「これ、桜か……」
ゼノアスはこの香りの名前を思い出し、近所で毎年美しくピンクに咲く樹木をぼんやりと連想した。
とりあえず、当初の目的である作り置きしておいた昼飯を冷蔵庫から取り出して、レンジに入れる。
あたためを機械に任せたゼノアスが食事の準備を整えたころ、レンジが任務完了を音で知らせてきた。
テーブルに温かい昼食を並べ、ゼノアスは食べ進めながら、便箋の中身に目を通す。
――ゼノアスへ。出逢って1年数ヶ月。
そう書き始めた李月は、初めての戦闘依頼について回想と反省、そして守ってくれた精霊への謝意を記していた。
思い出話は最近の依頼の話に繋がる。ゼノアスの重傷、それをカバーできなかった自分を責める言葉。
――自分の使えなさにがっかりする。
「気にするこたねーよ」
ゼノアスは、思わず口に出して言い返した。書き手は目の前に居ないのに。
居ないくせに、ゼノアスの言葉に上手く沿うように、手紙は続いていた。
――なのにお前はなんでもない事みたいに笑って、それに僕は救われてる。
李月は、手紙の後半を覚悟を埋めていた。頼りないところは精進する。そのために進学せず、今まで以上にゼノアスといろいろな場所へ行く、と。
彼の戦う理由、それは、強くなりたいゼノアスを手伝う為、怪我をさせない為、絶対死なせない為、笑ってほしい為……。すべてゼノアスの為だとあった。
胸が痒くなるような喜びがこみ上げてきて、ゼノアスはニヘラと頬を緩める。
「居てくれるだけでオレの望みはきっと全部叶う、そういう存在なんだよオマエは」
上機嫌にゼノアスは手紙を最後まで読み切った。
先日、馬鹿と言われたことへの謝罪もあったが、今のゼノアスにとって『馬鹿事件』など些細なことである。
少し行を空けて、李月は追伸を書いていた。
『今日は学校早く終わるから、近所のカフェにいる。買物して帰る』
「へへへ……リツキのヤロウ、んじゃ迎えに行ってやるか」
食事を片付けるゼノアスの顔は緩みっぱなしだ。
こんなことを書かれては、早く顔が見たくなる。
家を飛び出し、李月がいるはずのカフェへと足をすすめる。
ふと見あげれば、まだ枝だけの桜。手紙の香りを思い出して、この花がほころぶ頃、彼とどこに行こうか、と今からゼノアスの気持ちは高まっていた。
「オレの神人……いや、オレのリツキ」
今までは、オーガと共に戦う神人として李月を見ていた。だが、李月本人から言葉をもらって、ゼノアスは李月という人間を改めて認識した思いだ。
新しい視点で見ることになった李月に早く会いたい。だから、ゼノアスは歩く速度を速める。
●あなたのかおり
「手紙かぁ……へへっ、まさか可愛い……」
届いた手紙の差出人を見て、可愛い女子……ではなく、神人の瑪瑙 瑠璃の名前があることに、瑪瑙 珊瑚は驚いた。
「……えええ……」
女の子とのロマンスが崩れ去る音を脳内で聞きながら、何を書いてあるのやら、と珊瑚は封筒にハサミを入れる。
なんやかんやで瑠璃との仲も長いが、このようにきちんとした手紙を貰うのは珍しい。
期待よりも不安がよぎりつつ、珊瑚は封筒から便箋を引き出した。なにやらいい香りがするけれど、珊瑚はそれより中身が気になる。
ごろんとカーペットに寝転び、ぐいと便箋を天井に向け、珊瑚は文面を追い始めた。
「珊瑚へ。お前がこの手紙を読んでいる頃、自分は大学のカフェでホットミルクを飲んでいる。……そこ、パンとコーヒーじゃねぇのか」
締まらない、と呟くも、当の珊瑚もコーヒーは飲めない。お揃いである。
人のことは言えない身だということに気づき、とにかく気を取り直して珊瑚は先に進む。
上手く言えないが、最近思う事があるんだ。
いつもお前に対して口煩くなるのも、
悪態を吐くのも、お前に気を許してるからだって。
時々、お前がパートナーよりも弟みたいに感じるんだ。
心のどこかで放っておけないのかもしれない。
「瑠璃……そんなにわんのこと、気にかけてくれてるなんて」
にやにやと珊瑚は顔を緩ませた。
でも、時には笑わせてくれたり、支えてくれたな。
今のおれには……それが心強い。
だからそんな陽気さと温かさを持つお前の隣で
おれは、これからもウィンクルムを続けていきたい。
普段は聞けないような、瑠璃の優しい評価する言葉が並んでいて、珊瑚は胸が暖かくなる思いがした。
「やしが、瑠璃。わんをそんな風に思っていたなんて、にひひ」
ついに笑みは顔だけでなく声にも溢れだす。
うきうきしてきた気持ちを抑えきれず、珊瑚は立ち上がってウロウロ歩き回りながら、手紙の続きに目を通す。
珊瑚をイメージして、便箋の香りを選んだとある。くんと鼻を紙によせると、甘くさわやかなオレンジの香りがした。
「これがわんぬイメージ、んふふふ♪」
改めてそう言われると、これからオレンジを見る度にやけてしまいそうだ。
「ここまで読んでくれて、ありがとう。したっけ、また大学でな。……っと、んふふ、ふふふふっ」
結びの一文を口に出し、珊瑚はたまらずベッドの上にダイブする。
バフンッとベッドのスプリングが軋んで、珊瑚が上下する。珊瑚の心も跳ねる。
歓声をあげながら、珊瑚は便箋を抱きしめ、ごろごろごろごろとベッドの端から端まで、何度も何度も転がるのだった。
●あたらしいめにゅう
今日何度目かのカレンダーを見る行動を済ませ、イグニス=アルデバランは肩を落とした。
何度見たって同じこと。
「今日はお店定休日なので会えないですねー」
初瀬=秀の喫茶店が休みの日なのは変わらない。イグニスは寂しい、としょぼくれながら、自宅のポストを覗きに行った。
「ん?」
なにやら、ある。
手紙のようだ。
「あれ……」
誰からだろう、とポストの蓋を開けて一通の封書を取り出すイグニスは、宛名の文字を見て、すぐに解った。秀の字だと。
「んー……何でしょう?」
お使いメモにしては、あつらえが丁寧すぎる。
部屋に戻って腰を落ち着け、イグニスは封書を開いた。
そして、
「わ!」
思わず驚きの声を上げる。
高貴で馥郁たる香りがイグニスの前に飛び出したからだ。
「紅茶……ですねえ」
どうやらセピアの文字から香るようだ。
香りを楽しみながら、イグニスは手紙を読み始めた。
――イグニスへ。
そう始まった手紙。初めての、秀からの手紙。面と向かって言えないことを伝える手紙。
『正直な話最初の頃は、やたら押しは強いし人の話は聞かないし、手のかかる子犬だ、俺が何とかせんと、と思ってたんだが。
気づいてみたらその明るさに、奔放さに、救われていたのは俺の方だった。
お前がくれた愛情を、今度は俺がお前にありったけ注いでやりたいから。
この先も、よろしく頼む』
「………………」
呆然とイグニスは目を紙面からあげ……、それから深く息を吸って吐いて、もう一度読み始めた。
何度目か読んでから、イグニスは二枚目があることに気づく。
「わ、も、もったいない」
気づかなかった、と慌ててイグニスは便箋をめくった。
一行目は、インクで汚れていた。なにか迷う間にペン先から垂れたのだろう。
それから、それから。迷いに迷った末に、えいやと書かれただろう一文が、イグニスを撃ちぬいた。
――愛してるぜ、イグニス。俺の最初で、最後の王子様。
「~~~っ」
ふわわわぁと目を見開き、網膜に焼き付けるように二枚目を見つめる。
それからイグニスはいそいそとカメラ付きスマホを取り出して、手紙と封筒を画像データに取り込んだ。ついでに、画像を待ち受けに設定する。
「わ、私これ、明日辺り死ぬんですかね……」
幸せすぎる展開に殴りつけられたような気分で、イグニスは呆然と呟く。しかし、次の瞬間、ブンブン首を横に振り回した。
「いや! いやいやいや、死んでる場合じゃない! 死んでる場合じゃないですよ! そうですよ!!」
まだくちづけもしていない仲なのだ。今死ぬなんてもったいなすぎる。
「まだ死ねない! よし! 生きる!!!」
ぐっと拳を握り、無駄に気合を入れて叫ぶと、ふふふーとイグニスはとろけるように顔をほころばせる。
手紙の追伸には、『日頃素直になれない俺だから、紅茶の香りに出会ったらこの言葉を思い出して欲しい』とあった。
イグニスは知っている。最近、秀の店のメニューに紅茶のラインナップが増えたことを。
その意味を、今日知った。
イグニスは微笑み、明日はきっと紅茶を頼もうと思うのだった。
秀はきっと、その注文の意味を悟る。そして丁寧に淹れてくれるだろう。
●きみにおかえりをいうよ
帰宅すると家は真っ暗だった。ブリンドは、まだ同居人が帰宅していないことを悟り、淡々と部屋の電灯を点けた。
「……あ?」
机の上に見慣れぬ白い紙。
何の気なしに拾い上げて、ブリンドは紙を開いた。シンプルな白い紙だが、空押しで罫線が入っていて、趣味の良い便箋だった。
紅茶の香りを漂わせる茶色の文字を見て、ブリンドは呟く。
「……リンへ? あいつからか」
おかえり。ハティからの手紙はそんな挨拶で始まっていた。帰宅したブリンドが読むだろうことを見越して書いたのなら、書きたてほやほやの手紙ということだ。
ブリンドはコートも荷物も置かずに、手紙の中身を読み続ける。
マフラー、よく使ってくれて嬉しい。
初めての年賀状はアンタに書くんだろうと思ってた。
もう書かなくて済むのか。
手紙を書かないから、出すあてがなくなった事に気付かなかった。
アンタの居場所としてここが好きだったから、アンタには骨を折らせたと思う。
担ぎ屋のとのことがあって違うんだって気付いた。
今はこの家が好きだ。
あの時はアンタが気付く材料をくれた。
俺がリンに渡せるものはあるのか考えたが、ベッドには驚いた。
返される気がないだろうアンタ。
だから俺も返されない方法を考えた。
新しいペンを買ったんだ。
またアンタに手紙を書くよ。
たった一枚に収まる短い手紙だった。
丁寧なフォントだが、筆圧の強さに、書き手の緊張を感じとり、ブリンドはまさかまた早まったことを言い出すのではないかとヒヤヒヤしながら読んだのだが、ハティにしては随分あけすけに好意をしめす内容で、逆の意味で緊張したのだな、と今なら納得できた。
ふ、とブリンドは口元に笑みを浮かべる。
「確かにこれに返せる気はしねえ」
だが手紙というものは、普通は返信して、やりとりするものだ。そう常識を教えてやってもいいのだが。
ブリンドは返信の言葉に迷う。元々ブリンドも、手紙なんてものは得意ではない。
どうにも口が悪いブリンドだ。ハティの機嫌を損ねる結果になりかねない。
せっかく本人が『また手紙を書く』と言ってくれているのに、気が変わられてもつまらない。
ハティからのクリスマスのプレゼントであるマフラーも、クリスマスには間に合わなかったブリンドのプレゼントであるベッドも、そして二人が対峙したデミギルティが巻き起こした事件も、ハティの中に何かを残している。
そう分かる手紙は、貴重品だ。
「ご丁寧に予告を寄越すとは相変わらず律儀なやつ」
ブリンドは返事を書くことは諦めた。
机に行って、無造作に積んである本から迷い迷い一冊引き出す。
これは、ブリンド専用の本。
ハティには理解できず、仕事仲間に貸すこともない本を選ぶのは骨が折れたが、なんとか一冊選び出せた。
ぱらりとめくって、気に入ったページに手紙を挟み込む。
インクの香りらしき紅茶のそれは、淡すぎて他のものに移りそうにもなかったが。
ブリンドは上機嫌に、湯を沸かし始めた。
そろそろ戻ってくるであろう差出人と一緒に飲むコーヒーを仕立てるために。
| 名前:ハティ 呼び名:お前、ハティ |
名前:ブリンド 呼び名:リン、ブリンド |
| 名前:初瀬=秀 呼び名:秀様 |
名前:イグニス=アルデバラン 呼び名:イグニス |



エピソード情報 |
|
|---|---|
| マスター | あき缶 |
| エピソードの種類 | ハピネスエピソード |
| 男性用or女性用 | 男性のみ |
| エピソードジャンル | ハートフル |
| エピソードタイプ | ショート |
| エピソードモード | ノーマル |
| シンパシー | 使用不可 |
| 難易度 | とても簡単 |
| 参加費 | 1,000ハートコイン |
| 参加人数 | 5 / 2 ~ 5 |
| 報酬 | なし |
| リリース日 | 01月19日 |
| 出発日 | 01月28日 00:00 |
| 予定納品日 | 02月07日 |

2016/01/27-18:35
ようやく、書き終わった……。
挨拶が遅れましたが、瑪瑙瑠璃と相方の珊瑚です。
咲祈さんは初めまして。
手紙を書くのは久しぶりですね。
今回は悩んだ末、おれんじの香り付き便箋を選びました。
今度は、珊瑚にどんな香りが好きなのか聞いておこう。
2016/01/26-20:57
出遅れたか、初瀬とイグニスだ。
さて、何の香りにするか……紅茶かソーダかね……
2016/01/22-13:56
やあ、咲祈だ。よろしく。
香り…僕は梅の予定。
2016/01/22-10:56
悩むな。俺は紅茶だろうか…。何枚か書き直す気もするし、ガラスペンも持っていないのでインクにしようと思う。
2016/01/22-06:08
李月とゼノアスです
よろしくお願いします
香は時期的に桜かな

