【薫】あなたの想いを香りに託して(真名木風由 マスター) 【難易度:とても簡単】

プロローグ

 それは、年が明けてすぐのこと。
 何気なく通り掛かった雑貨屋で、ダイアリーが売られていた。
 とある所では、1年の初めである1月に、想い合う同士でダイアリーを贈り合い、1年共に過ごそうと約束し合うという日があるらしい。
 買ってみようか、折角だから互いのものを選ぼう、という話になり、『あなた』達は雑貨屋へ。
 特集が組まれているだけあり、ダイアリーは色々なものがある。
 パートナーのことを考え、彼に合ったダイアリーを選ぶ『あなた』。
 見つけて、レジへ持って行き、贈り物であることを告げると、特集だけあり、贈る相手へ手紙を添えることが出来るのだという。
 手紙……メッセージカードじゃないのかと思ったら、その理由はすぐに分かった。
 贈る相手へ心を込めた想いを伝える為、手紙にはアロマオイルを1滴垂らし、手紙に香り付けを行うのだという。
 開封した時に淡い香りが鼻腔を擽り、相手の心にふんわり入っていくのだそうだ。
 香りの種類も男女兼用といった種類が揃っており、選ぶのに困ることはないだろう。
 また、便箋も種類が幾つかあり、こちらも趣味に合わないものしかないという事態はなさそうだ。
 手紙を書く場所も個別スペースがあるようなので、相手に見られることはない。
 今年1年過ごすパートナーの為に選んだダイアリー、それを贈る自分の想いを一言でも手紙に記し、渡せたら。
 たまには、こういう贈り方もいいか。
 『あなた』は、手紙を書くことにした。

 『あなた』の想いは淡い香りとなって、パートナーの心へ届くだろうか。

解説

●出来ること
・選んだダイアリーを贈る際に添える手紙を書く(神人・精霊共通)

●時間帯
・午後3時前後

●ダイアリー
・電子系のもの・高級過ぎるものでなければ、あるものとします。

●便箋・封筒
下記から選択となります。
A:シンプルな白の便箋と封筒
B:四葉のクローバーが押し花された和紙の便箋と封筒
C:青空が描かれた爽やかな印象の便箋と封筒
D:子猫と子犬がじゃれあう写真がある便箋と封筒
E:白に金と銀の縁取りがされたシックな印象と便箋と封筒

●アロマオイル
下記から選択となります。
ア:バラ
イ:ラベンダー
ウ:グレープフルーツ
エ:ペパーミント
オ:ミルラ

●手紙の内容
・プレゼントに添えるメッセージ。最大100文字までとします。
たった一言(単語)だけでもOKですが、こちらをお任せにすることはご遠慮ください。

●消費ジェール
・ダイアリーを両者が購入したとして500jr消費

●注意・補足事項
・個別描写ですが、店内で他のウィンクルムに会った場合、挨拶や軽い雑談程度の絡み描写を任意で行います。
・公共の場です。TPO注意。
・ダイアリーを贈るまでとなります。贈った後の詳細はメイン描写にはなりません。

ゲームマスターより

こんにちは、お久し振りです。
真名木風由です。

今回は寿GM主導の連動エピソード【薫】関連のエピソードとなります。
該当エピソードにご参加いただけますと、素敵な香水が配布されます。
全てコレクト出来るよう頑張ってください。

久々であること、描写密度を上げたいことより募集人数も多くないですが、ご都合あったら、相手を想って香りを添える優しい時間をお過ごしいただければと。

それではお待ちしております。

リザルトノベル

◆アクション・プラン

セラフィム・ロイス(火山 タイガ)

  (顔見た瞬間、触れた瞬間、心が弾んで今日は特に駄目かも
色々過ぎって)赤面

雑貨屋に惹かれて歩みがゆっくり
(贈り合い、いいな。あ、でもタイガはまめじゃなさそうだから必要ないかな
…思い切って)
タイガ、あの

ばっ…そんなに顔に出てる?嬉しいけど照れるから!
タイガがよければしたくて

それなら良い物みつけないとね
※普段より声が弾んで舞い上がり


タイガが喜んで使いやすく持ちやすい物…
■格好いい太陽と月のイラストのフリースペース多い週間レフトタイプ
思い出の
自由に書けるよう。暗号や絵日記になったりして(微笑

◆Eオ
僕をイメージ
『書き終わった時、思い出で一杯にしよう。想いを込めて』ふとオイルをハート形(見えなくても遊び心


蒼崎 海十(フィン・ブラーシュ)
  ダイアリー:仕事に使えるよう機能性重視
使いやすくたっぷり書けるシンプルな記入欄のもの
丈夫さや重量感も考慮
スタイリッシュなワインレッドをチョイス

便箋・封筒:C(青空がフィンのイメージだから)

アロマオイル:ア(想い出の香・エピ31)

手紙の内容『このダイアリーと一緒に過ごす一年が、フィンにとって幸福な時間となるように、願いを込めて。今年も宜しく。俺の傍に居て下さい。海十』

何を書くか悩んで…素直な気持ちを書いた

香り…気付くかな?…気付かれたら…反応に困るけど

フィンから貰った手紙とダイアリーに嬉しさがじわじわ
今年も傍に居てくれるという約束の言葉…だよな

有難う、大切に使う
フィンとの思い出を沢山書けたらいい


葵田 正身(いばら)
  いばらの視線を追えば雑貨店前。
自分も気になる素振りで立ち止まれば安堵した雰囲気。
他人を気遣い過ぎる所は相変わらずです

一冊選んでくれないか?

その思い遣りを別の方向に使用して貰えないかと。
予想通りの困り顔には気付かない振りです

今年の物はまだ購入していなくて。等と。
普段は予定すらメモしないので
つまりは口実ですが、代わりに選んでくれと返ってきたのは
少々予想外ですね

ダイアリー:蝶の図柄
便箋:D
アロマ:エ

迷う事無く選び。
便箋には『一冊目のダイアリーを君に贈る』

香りも柄も薔薇を選ぶかと?
蝶の求める花は既に私の目の前にあるからね

贈られた物は彼らしく。
此方にも香りだけでなく
何度も薔薇の名を綴ることになりそうです


●蝶は白薔薇へ翅を下ろす
(……あ)
 いばらは、視界の端に留まった雑貨屋の特集に気づいた。
(……うばらの言う通り、ダイアリーを買った方がいいんでしょうか)
 青薔薇の名を持つ弟から、兄貴は忘れっぽいんだから日記でも付けたらと言われたことを思い出す。
 クリスマスだって失念してて、葵田 正身の自宅に上がり、大きなホールケーキの上にあった可愛らしいチョコプレートにあった『Merry Christmas!』という文字を見るまで頭になかった、なんてこともあったばかり。
 そう思ったら買った方が───そう思いかけたいばらは、緩く頭を振った。
(今は葵田さんのお買い物を優先……)
「ダイアリー特集?」
 隣を歩いていた正身が、足を止めた。
 倣って足を止めたいばらが、「1年の始まりだからでしょうか」と正身を見る。
 その表情を見、正身は心の中で苦笑を零した。
(相変わらず、他人を優先させる)
 正身がそのことを話題にしたのは、いばらの視線を追ったからだ。
 その視線に含まれているものを見れば、いばらが興味を持ったことは想像がつく。
 まだ、うばらの言う『表情の違い』の見分けは初心者だと思うが、これは判った為、正身は足を止めて話題にした。
 そうでなければ、いばらは口にしない。
 だって、今日は自分が散歩……目的あってのものでもないウィンドーショッピングに誘ったのだから、いばらが自身を優先させることはないだろう。
 気を遣い過ぎる、とは思うが、気難しくとも可愛い弟のような存在はそういう意味では甘え下手なのだろう。
「葵田さんも購入をお考えなのでしょうか」
「今年の物はまだ購入していなくて」
 『も』という辺りにいばらの本音が少し見えたが、正身はそれを指摘しない。
 口にしたら、いばらは気を遣わせてしまったと気にしてしまうだろうから。
(その思い遣りを別の方向に使用して貰えないかとは思うが……)
 劇的に変えろと言われても、困惑させてしまうだろう。
 正身はそう思うから、「一緒に選びましょう」と提案するいばらへひとつお願いをする。
「いばら、選んでくれないか?」
「え……」
 予想通り、いばらはその表情に困惑を浮かべた。
 が、正身は知らない振りをする。
 だって、正身は普段の予定もメモにすることすらしていないから、ダイアリーは持ち歩いていない。本来必要としていない。
 それでも、それを言ったのは、口実だ。
 いばらへ、自分の分も買っていいのだという。
「でも、過ごした時間もまだ短く、好みも判りません……」
「いばらの選択を疑っていないよ」
 正身が戸惑ういばらへそう言うと、いばらは少しの間逡巡した。
 承諾にもうひと押しかと思っていると、いばらが口を開く。
「では、僕のもお願いします」
 少々予想外の返答だったが、正身は勇気を出したであろういばらへ口元を綻ばせた。
「責任を持って選ばせて貰おうか」

 店内は特集だけあり、ダイアリーが沢山あった。
「あれ、正身さんもダイアリーを?」
 正身が目的のものを探して歩いていると、蒼崎 海十が声を掛けてきた。
 彼らもダイアリー特集に惹かれてやって来たらしい。
「いばらと互いのものを選ぼうという話になってな」
「俺もフィンと、です。ダイアリーを贈り合う所もあるなんて初めて知りましたが、フィンは世界中を旅していただけあって知ってました」
 恋人のフィン・ブラーシュへ贈るという彼はそう笑みを零し、「良いものが見つかるといいですね」と去っていく。
(実はそんなに年齢変わらないんだが)
 大人びて見えるが、正身はまだ学生である。
 海十とはジャック・オー・パークで逃げ出した動物達の捕獲で知り合ったということもあり、そのことをまだ説明していない。
 少々の悩みを実感したが、ダイアリー自体は特に悩まなかった。
 白地にアオスジアゲハが翅を下ろして休んでいる図案のもので、即決したから。

(どれにしましょう……)
 いばらは悩みに悩んでいた。
 どういうダイアリーがいいのか、過ごした時間の短さから推測することが出来ない。
「あれ……いばら?」
 別の方向から、正身以外の声で呼びかけられ、いばらが顔を向けた。
 以前、ジャック・オー・パークで動物達の捕獲が縁で知り合ったセラフィム・ロイスが声を掛けてきたらしい。
「いばらもダイアリーを買いに来たの?」
「ええ。葵田さんと。……『も』?」
 人見知りのきらいはあるが、面識のある相手であり、また、セラフィムが無遠慮に距離を詰めて来なかったこともあり、いばらが会話を切り上げず応対すると、セラフィムもそうだと気づく。
「タイガと贈り合おうと思って」
 火山 タイガのダイアリーを選んだというセラフィムは照れくさそうだったが、嬉しそうで。
「タイガなら何でも喜んでくれると思うけど、凄く喜びそうなもの、使い易くて持ち易いものがいいかなって思って選んでたら、思ったより時間が掛かったよ」
「……ありがとうございます」
 セラフィムの言葉を聞いたいばらが頭を下げ、身を翻す。
 見送るセラフィムが「いいものが見つかるといいね」と優しく呟いたのが聞こえた。

 いばらがラッピングされたダイアリーを持って店の入り口へ向かうと、正身は既にいた。
「特集ならではのサービスがあって、驚いてしまった」
 正身はそう言うが、あまり驚いていないように見える。
「開けていいですか?」
「では、私も」
 交換して開けてみると、蝶の図案のダイアリーが。
 添えられている封筒は子犬と子猫がじゃれあっている。
 開けると、清涼感あるすっきりとした香りが鼻腔を擽った。
『一冊目のダイアリーを君に贈る』
「これがいばらが選んでくれたダイアリーか」
 薫る手紙へ目を通していると、贈ってくれた本人が自分が贈ったダイアリーを手にしていた。
 黒革の小振りなダイアリー。
 高価なものではない為、本革かと聞かれると自信はないが、手触りは良いと思ったし、小振りだから邪魔にならないと思ったのだ。
 何より、黒のシンプルさが、正身によく合うと思ったから。
 正身が真っ白な封筒から真っ白な便箋を取り出すのは、少々緊張する。
「……バラだな」
「お揃いになるかと思ってました」
 正身がいばらが選んだ香りに瞳を細めると、いばらがまっさらな自分を手渡したような気分を覚え、気恥ずかしさから顔を俯かせる。
「蝶の求める花は既に私の目の前にあるからね」
 だから、選ばなかった。
 そう言われ、いばらは「何だか恥ずかしいです」と小さく呟く。
 正身はその様に人知れず笑みを深めた。
 彼らしい贈り物……このダイアリーには何度もバラの名が記されるだろう。
『よろしくおねがいします』
 その、瑞々しく甘い香りと共に。

●贈り合う日々を彩って
(今日は特に駄目かも)
 タイガと繋ぐ手から温もりを感じ、セラフィムは強く自覚していた。
 頭に過ぎるのは、豪華客船アクサの夜。
 タイガの顔を見ただけで、こうして手を繋いでいるだけで……昨日のことのように蘇ってきて、幸せに心弾むけれど、顔が熱い。
 何か話題を探そうとして、雑貨屋が目に留まった。
 ダイアリーを、想い合う同士で贈り合う……その言葉に心惹かれるのは、タイガと一緒にいるからだろう。
(贈り合い、いいな。あ、でもタイガはまめじゃなさそうだから必要ないかな)
 セラフィムは思い切って声を掛けるよりも早く、タイガが足を止めた。
「やるか?」
「えっ」
 まるで先回りしたような問いに、セラフィムがぽかんとなった。
 タイガがセラフィムを見、笑う。
「セラのことなら任せろ」
 歩みが急にゆっくりめになったと気づいたタイガはセラフィムの視線を追っていた。
 そして、その理由に気づいたのだ。
「そんなに顔に出てる?」
 動揺するセラフィムへ、タイガは頷き、「結構、読み取る自信あるぞ!」とセラフィムの額をちょんちょんつついた。
「ばっ……嬉しいけど照れるから!」
 タイガにしか見せないその表情は、タイガにとって全て宝物である。
「普段ダイアリーは書かねーけど、セラから貰ったもんなら続けれそうだしさ。それに、こういうイベントは一緒に楽しみたいし?」
「タイガが良ければ……したい、な……」
 タイガはセラフィムの不器用な本音に笑うと、手を引いて雑貨屋へ。
「なら、決っ定ー!」
「良い物見つけないとね」
 はにかむセラフィムの声は普段より弾んでいて、嬉しいのだと判る。
(抱きしめたい! 今すぐっ……は、人目あるから駄目かチクショー)
 セラフィムが真っ赤になって怒って、口を利いてくれなくなることを知っているから、タイガは自重した。

(後で合流って分かれたはいいけど……)
 タイガは特集されているダイアリーを巡りながら、悩んでいた。
(セラならどれに惹かれ……)
 考えていたら、誰かとぶつかった。
「あ、悪ぃ……って、正身、ダイアリー買いに来たのか?」
 タイガがぶつかったのは、選んだダイアリーを手にしていた正身だった。
「いばらとお互いのを選んでいる最中だ」
 経緯を話してくれた正身は特に迷わず、いばらへ贈るダイアリーを選んだらしい。
「沢山あって、まだ悩んでて」
「私はこうだと思うのがあったから悩まなかったが……」
 タイガの言葉に正身がこう言った。
「連想して決めるといいかもしれないな」
「連想……」
 何か、きっかけが掴めた気がする。
 正身にお礼を言って、タイガはダイアリーを吟味した。
(あ、これいいな)
 タイガが手にしたのは、可愛らしい動物が描かれたダイアリーだ。
 動物園の仲間達が仲良く音楽会を開いているらしい。
(動物好きだし、愛嬌あっていいか)
 タイガはショコランドで出会ったカヤコアラを食べるという変わった任務を思い出す。
 あの時、セラフィムは平気だと聞いていてもカヤコアラを食べられず、遠巻きに見ていたのだ。
(キラリンタイガーが顔を千切ろうものなら、慌てて止めそうだしな)
 もちっとした絵柄の中に、『俺っぽい』虎を発見し、カヤコアラからキラリンタイガーへ想像をシフトする。
 タイガ達は会ったことないが、友人達が遭遇したキラリンタイガーはイチャイチャシーンを見ると、自分で顔を千切って、お裾分けするらしいので、セラフィムが慌てそうだ。
(俺はセラが悲しむようなことしないから……頼んだぞ)
 タイガはもちっとした絵の虎にそう語りかけた。

 一方、いばらと別れたセラフィムは手紙を書くコーナーでフィンと偶然会っていた。
「こういうのもいいよね」
 そう笑うフィンは海十を思って選んだダイアリーだという。
 彼が手にしているのは、四葉のクローバーが押し花にされた和紙の便箋と封筒。
「四葉のクローバーは幸運を運ぶから。セラフィムのもシックだよね」
「シンプルだけど……これが1番僕らしいかと思って」
 フィンへ話しながら、セラフィムは何だか照れてしまう。
 選んだダイアリーだって、太陽と月の、何だか格好いいイラストのもの……海十がフリーマーケットで自分達にと歌った歌をフィンも聴いている。言わずとも気づくだろう。
(それだって、テネブラを見ながら、一緒に工芸茶飲んだからだし)
 タイガが選んだ月星静夜はタイガがセラに見立てて選んだもの。
 セラフィム自身もタイガに見立てて紅空美月を選んだ、けれど……。
「セラフィム自身を贈るみたいで、素敵だね」
 じゃあ、とフィンは去っていく。
 が、セラフィムはアクサの夜を思い出してしまい、それどころじゃなかった。

 タイガが買い終わって、店の入り口に行くと、セラフィムが既にいた。
「一緒に開けるのはどうだ?」
「嬉しいけど……何か照れる」
 タイガの提案にセラフィムは恥らうも、承諾してくれた。
 声を掛け合い開け、互いの為に選んだダイアリーが目に飛び込んでくる。
「書く場所一杯あって、楽しそうだな、これ」
「そういうのを選んだんだ。暗号や絵日記になるかもしれないけど」
 週間レフトタイプのダイアリーを見て喜ぶタイガへ、セラフィムも微笑を向ける。
 手の中のダイアリーもタイガが自分を想って選んでくれたのが嬉しい。
 やがて、互いの封筒を手にした。
「あ……グレープフルーツ?」
「当たり」
 シンプルな白の封筒から白の便箋を取り出すと、セラフィムは香りの正体に気づいた。
 柑橘系の爽やかだが落ち着いた香りはオレンジの甘さにはないもの、心が落ち着く気がする。
『手紙じゃ足りねぇから「好き」ていいに行く。セラの毎日が楽しくなるように』
 手紙に記されたタイガの文字は、グレープフルーツの香りと共に心の中にすっと入り、心が満たされていく。
 それを見届けたタイガが封筒を開けてくれた。
 白に金と銀の縁取りがされた便箋がタイガに運ぶのは、ミルラの香り。
『書き終わった時、思い出で一杯にしよう。想いを込めて』
 甘みと苦味を感じさせる個性的な香りは、気持ちを明るくする効果、希望を持たせてくれるような心持ちにしてくれるとのことで、タイガにとってそうありたいと思うセラフィム自身の想いあってのもの。
「ありがとな、セラ」
 嬉しそうに笑うタイガが手を差し伸べるから、セラフィムも手を重ねる。
 タイガの手が覆うようにして自分の指と絡んでいくのは照れるけど……セラフィムは解きたいと思わない。
(僕自身を込めたから)
 恥ずかしいから言わないけど、便箋へアロマオイルをハート形に落としたように、ミルラに乗せてタイガへ自分の想いを届けたのだから。

●昨年から今年へ繋げて
 正身と軽く言葉を交わした海十の手には、既にフィンの為のダイアリーがある。
(やっぱり贈るからには使って欲しい)
 ダイアリーは使ってこそのもの。
 海十はそう思うから、ウィンクルムとしての任務だけでなく、日常にも仕事にも使えるよう機能性を重視した。
 丈夫だけど手にするに重くないもの、中を開けば使い易いと感じられるものを。
 記入欄はシンプルなもので書くスペースがあった方がいい。
 そうして、選んだものだ。
(フィンに、似合いそうだし)
 スタイリッシュなワインレッドは、フィンのさり気なく洗練された様に似合うと思う。
「え、手紙……?」
 店員からサービスの話を聞いた海十は提示された便箋と封筒の見本を見た。
 真っ先に飛び込んだのは、青空の便箋と封筒。
 それは、フィンの瞳を思わせる澄んだ青色をしていた。
「こちらで」
 それ以外、目になんて入らない。
 青空は、海十にとってのアルカディア。

 一方、フィンはダイアリーを持ってレジへ移動している最中にいばらと会っていた。
「どういうのを贈ろうかは決まったのですが、欲しいのが見つからないんです」
「解る。ここ、沢山あるよね」
 先にセラフィムと店内で会ったといういばらはその会話で正身へ贈るダイアリーのヒントを得たそうだが、特集されているだけあって、その理想に合致したものが見つからないらしい。
 フィンも海十のを探すのに苦労はしたから、いばらの欲しい方向性を聞き、自分が見ていたダイアリー付近にあったことを伝えると、「ありがとうございます」とお礼を言う彼と別れた。
(海十、喜んでくれるといいな)
 自分が贈ったものを、海十が使わない訳がない。
 フィンはそれが解っているから、海十が使い難いと思うようなものを選んだりしない。
 ウィンクルムとしての任務のものでも、バンドのライブや練習の予定のものでも、勿論自分と共に過ごす休日も……全て書き込めるよう記入欄は飾り気のなくとも余裕あるものを。
 それに加え、彼らしいデザインのもの、蒼系のものを。
 ふと、目に飛び込んだのは、青空を見上げる勿忘草の写真。
 手にして開いてみると、表紙の写真に反し、フィンの理想通りの構成となっており、これにしようと思った。
(海十が俺を見上げてるみたいだから)
 フィヨルネイジャの悪夢の中、交わした誓いも共に響かせた歌も。
 悪夢の結末ではない、夢の未来で再び叶えてみせる。

(いざ書くとなると、悩むな)
 海十が手渡された便箋と封筒を手に書くスペースを探していると、書き終わったらしいタイガに遭遇した。
「俺の使ってたスペース空いてるぞ」
「ありがとうございます。あ、タイガさん、何書きました?」
 タイガが自身が使っていたスペースを指し示すと、お礼を言った海十は「具体的でなくてもいいんですが」と自身がちょっと悩んでいることを伝えた。
 フィン本人に言うのは恥ずかしいが、誰かの意見は参考にしたい。
 そんな言い訳を心の中でするが、タイガは「セラに言いたいこと書いた!」と全開の笑顔で答え、ラッピングの為にレジへ歩いていった。
(フィンに言いたいこと……)
 どうしよう、それはそれで恥ずかしい。
 フィンに甘い、というのは自覚している。
(フィンは反則過ぎるんだ)
 例えば、ヤックドーラの瘴気アイスを喰らって、試練を乗り越えた時、皆見てたのに抱き寄せて、(盛大に腐った)ヤックドーラを喜ばせて、彼(?)が散った時なんか敬礼してたし。瘴気を何とかしなかったくせに(無茶振り)
 ウエディングドレスなんか着せたりするし、仕返ししようとしたら、反撃してくるし。
 それもこれも将来の約束をしてくれるフィンを自分から永遠に卒業させたくないから、物理的に小さくなろうが自分から覗きを守る為に物理的に一肌脱ごうが許してしまう訳で。
 それも珊瑚のお守りやらミルフィオリやらで盛大にバレてるけど。
 ……反則だ。
 昨年……特に後半を色々思い出した海十は、タイガも言っていたが、素直な気持ちを書くのがやはりいいと思い、言葉を記していく。

 セラフィムと言葉を交わしたフィンは、その言葉を記して思う。
(案外難しいものだね。伝えたいことの欠片しか書けなかった気がする)
 溢れる言葉はあり過ぎて、この便箋1枚だけに収められるものではない。
 海十と共にある日々は、全てフィンにとって宝物だから。
(だって、海十は絆の色って言ってくれたからね)
 ウィンクルムになって見えるようになったもうひとつの月は、血の色から絆の色になった。
 その変わりゆく日々の中に、自分はいたのだ。
 ウィンクルムとして活動するようになったのは、去年の1月、あと少し経った位の頃からだから、去年はほぼ海十といた……だから、今年も。

 海十が店の入り口へ向かうと、フィンが軽く手を上げた。
「一緒に開けようよ」
 店内であった正身といばら、セラフィムとタイガも店の外で贈り合ったものを開けていた話をすると、海十も「ま、まぁ……いいけど」と頬を赤らめながら応じてくれる。
 去年の今頃だったら、そんな必要はないと言っただろうし、そもそもダイアリーを贈り合う間柄じゃないと断っただろうから、自分達の軌跡を感じた。
「あ……グレープフルーツ」
 海十がその心に入り込む香りの名を口にする。
(俺の好みで、選んでくれたんだ)
 記されている、『海十のスケジュール管理のお役に立てたら嬉しいよ。俺自身も海十の力になりたい。今年もオニーサンの料理、沢山食べてね。フィン』という言葉以上にそのことが嬉しい。
 共にあるダイアリーも、忘れていないというメッセージがあって……嬉しさが沸き起こってくる。
 フィンも、海十の手紙を開く。
 彼の心に運ばれる香りは───
(香り……気づくかな? ……気づかれても……反応に困るけど)
 海十がそう見守る中、フィンが海十の素直な気持ちを読む。
『このダイアリーと一緒に過ごす一年が、フィンにとって幸福な時間となるように、願いを込めて。今年も宜しく。俺の傍に居て下さい。海十』
 その頬が嬉しそうに緩んで、それだけで海十は嬉しくなる。
「凄く嬉しいよ。大切に使うね」
「俺も大切に使う。フィンとの思い出を沢山書けたらいい」
 ありがとうの言葉を交わすと、フィンが海十の腕を引き寄せた。
「この香り……キスした時のこと、思い出すね」
 忘れる筈がない。
 酔うようなバラの香りの中、確かな口づけを交わした。
 互いにバラを飾り合い、この幸せが醒めないよう歩いたあの日、フィンが話した過去を海十は受けとめてくれたから。
「わざわざ言うなっ」
 海十の顔色は、やっぱり絆の色だ。
 そして、今年も来年もその先も傍にいるという約束の確信。
 フィンは、「家に帰ってから言うね」と海十の先を行く譲歩で笑った。

 贈りたい想いは、あなたの心で香り立つ。



依頼結果:大成功
MVP
名前:蒼崎 海十
呼び名:海十
  名前:フィン・ブラーシュ
呼び名:フィン

 

メモリアルピンナップ


( イラストレーター: 純友良幸  )


エピソード情報

マスター 真名木風由
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 男性のみ
エピソードジャンル ハートフル
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 とても簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 3 / 2 ~ 3
報酬 なし
リリース日 01月04日
出発日 01月10日 00:00
予定納品日 01月20日

参加者

会議室

  • [6]蒼崎 海十

    2016/01/09-23:56 

  • [5]葵田 正身

    2016/01/09-16:54 

    葵田と申します。同行の精霊は、いばら、と。
    宜しくお願い致します。

    色々と種類があって迷う、のでしょうかね。
    買い物が楽しい物であった事を思い出しましたよ。
    どうぞ良い時間を。

    (※再投稿にて発言番号飛び。すみません。)

  • [3]セラフィム・ロイス

    2016/01/09-03:23 

    どうも。僕セラフィムと相棒のタイガだ
    海十たちはもう常連さんだね。葵田と、いばらは初めましてだよね。よろしく

    ダイアリーか・・・一年間使う物を贈りあうって何か素敵だね。
    ・・・大事な人なら特に
    せっかくの機会だし良い物を贈れるよう頑張って探そうと思う
    ダイアリーに手紙にアロマオイルに、手紙の内容も考える事多いからね

  • [2]蒼崎 海十

    2016/01/07-22:42 

  • [1]蒼崎 海十

    2016/01/07-22:42 

    蒼崎海十です。
    パートナーはフィン。
    皆様、よろしくお願い致します!

    ダイアリー、一年ずっと使うものですから、良いものを選びたいですよね。
    アロマオイルも色々あって悩むな…。

    よい一時となりますように。


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