


●Cigar BAR『AMBER』
豪華客船アクサの中にある、子供禁制の場所……それがシガーバー『AMBER』だ。
琥珀や枯葉を思わせる、落ち着いた暖色の調度品に囲まれ、白熱灯の柔らかい間接照明がお洒落な大人の世界。
アルコールとそれに合う食事、そしてもちろん葉巻が提供され、ひとときの社交を楽しめる。
「いらっしゃいませ」
慇懃に銀髪のバーテンが君を迎える。名札には『アラシュ・ノクターン』とあった。
バーテンの助手たるアシスタント・バーマンはまだ幼そうだ。従業員は飲酒しないから、未成年でもいいのだが。彼の名札には『ツクヨ・ツルバミ』とある。
「どうぞ、ごゆっくり」
席に通してくれた金髪のウェイターの名札は『セツラ・アマンダ』。
今日はこの三人が、この小ぢんまりとした大人の隠れ家を演出してくれるのだろう。
君はメニューを眺める。
ひと通りの蒸留酒は揃っているようだ。変わったところだと、アブサンがあるのが目を引く。またカクテルはバーテンに要相談だが、一般的なものなら用意してくれるそう。
食事は本格的なものではなく、あくまで酒の肴を目的にしたもの――ナッツ、チーズ、チョコレート、レバーパテとバゲット、野菜スティック。
葉巻もリストがあった。分からなければ、ウェイターがおすすめのものを教えてくれるとあるから、安心である。
ともかく、注文をしよう。
君はパートナーと相談の上、オーダーのために手を軽く挙げた。


●概要:シガーバーを楽しむ
●まずは注意
必ず『座る場所』、『注文するものと数』を明記
酒と葉巻のバーですので、未成年参加禁止
大騒ぎ禁止
酒・葉巻については現実にある商標の使用はできません
(↑ヒント:らぶてぃめっと世界にキューバはありません)
●メニュー
お酒:一杯 50ジェール(必ず一人一杯は注文してください)
ブランデー、ウィスキーなどひと通りの蒸留酒
アブサンなどのひと通りのリキュール
カクテル(希望を伝えればバーテンが作ってくれます)
葉巻:一本 200ジェール(必ず一組一本は注文してください)
食事:一皿 100ジェール
ナッツ盛り合わせ
チーズ盛り合わせ
チョコレート盛り合わせ
レバーパテとバゲット
野菜スティック
●場所
カウンターとテーブルを選べます。
カウンターの場合、従業員とも話ができます。
お世話になっております。あき缶です。
シガーバー! それは渋いオトナを愛する者の聖地!
……ちなみにあき缶は、煙草吸えません。
従業員の名前に聞き覚えがある方、ビンゴです。ご本人です。
近況とか聞いてあげてもいいですし、お仕事中だから放置してあげてもいいです。


◆アクション・プラン
叶(桐華)
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吸うっていうか、吸えるよ 昔口寂しい時に、たまにね 今は全然吸わないけど…桐華は、煙草平気だった? ふぅん。君が吸うなんて、ちょっと意外 カウンター席でお願いします チーズの盛り合わせに…ブランデーを二杯 お久しぶり、なんて言って気付いてもらえるかなぁ?元気そうで何より 仕事の邪魔にならない程度に近況を聞いて、お酒と葉巻をのんびり 気になるから、セツラをこっそり捕まえて聞くよ ねぇ、いずれあの子を殺すつもりなのは変わらないの? 別に止めないよ。羨ましいだけ 桐華は、結局僕を殺すつもりなんて無いんだろうし でもね どうにかして殺して貰えるよう、追い込んでいくつもり 内緒だよ、セツラ …これで、少しは躊躇ってくれることを祈るよ |
|
カウンターで。 クロちゃんも今日ぐらいは飲むこと。何にする? 「ブランデーかな。おすすめあったらそれで」(1杯 葉巻も甘いのとかがあるならそれがいいな。(1本 えーと、カットと。火付けもお願いして。 「あ、チョコの盛り合わせも一皿」 お、ほんとにこれ甘い感じする。(葉巻を味わう 「三人とも元気そうだね」(安堵 その恰好も様になってるよ。前よりゆっくりできてる? (祝勝会だし、こんな会話が限度かな。上手くやってるなら良かった)(少し気にしてた 「葉巻吸ったことあんの?」(クラウに ふぅん?(深くは聞かず、内装を見渡す 騒がしいのも嫌いじゃないけど。(見るのを止め、お酒を一口 休憩は静かな方が好きだし。この雰囲気いいなあ。 |
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カウンター席にて。 オーダーは葉巻と12年物のウイスキー。 それとビターなチョコレートを。 意外と合うんだ、この組み合わせは。 火を貰って一服。 良い葉だな等と、バーテンと言葉を交わし。 躊躇うツレに微かに笑って、火を貸す。 「思い切り吸い込むなよ?噎せるぞ」 言ってる間に咳き込んでる相棒に更なる笑いを噛み殺し。 大人を主張する割に(実際いい歳だが)妙に子供っぽい所が、存外可愛らしい。 …口にはせんが。拗ねられそうだ。 『じゃあ、こういうのも知らんだろ』 触れる程に間近で囁き。 新たに頼んだ二本目の火は、アルの葉巻から奪う。 シガーキス。 喫煙者には他愛無い戯れなんだが。 気兼ねなく吸えるからだろうか? 今夜は妙に、楽しいな。 |
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アブサン・ロック3 太めの甘いドライシガー1 超最悪…あの猫耳が一緒じゃないとダメなんて 一服して気分転換したいわぁ あら、素敵なバーねぇ…大人の隠れ家って感じぃ? なんでテメェが居んだクソ猫耳 …チッ、わぁったよ(一人分空けて (マジ腹立つ… つうか勝手に頼むなっての へぇ、綺麗な緑色ねぇ…猫耳毟んぞ (解ってて煽ってるな…性悪め …助言なんて珍しいじゃなぁい? あっそ、お気遣い痛み入るわー(棒 …悔しいけど、甘くて美味しいわね (肺に入れてたら確かにむせたわ…くそぅ !?…このお酒、喉が…焼ける し、知ってて頼んだわね!? こ、こんの…! 3杯目…まずい、酔ったかも ルードに頼るのはヤだけど、眠気が… んん…あんたなんか嫌いよぉ |
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夜景でも…と出た所で発見。後をつけ店頭 気づかれて躊躇しつつも隣へ (同い年の大樹をみつけ安堵) ◆ 機嫌よさそうだね 子供じゃない。1月4日に20歳になったんだ大人だよ そうだよ(不機嫌 ジュース? ■むせ涙目 からっ、何?騙すなんて酷いよ。水、何か(口に入れられ …さっきみたいに辛いならお酒はもういい あ…飲める (皆お洒落でトキワもかっこよくて…僕も立派な大人になれるのかな それにしても熱い。心拍数早くて…これが酔うって事?) ?!良好!仲良くしてる そう、かな(違う意味でも熱い。タイガの事考えると頭が一杯で) トキワは?どう 無理だよ。モデルやれるだけ整ってないし (今、別人みたいだった) だからっ(紛らわしに飲む 酔い潰れ |
●琥珀のバーにようこそ
むすっとした顔で、豪華客船の柔らかい絨毯をずかずか踏み進んでいく、がっしりとした体躯を誇る男。
レオ・スタッドは、イライラを隠さぬまま、アクサの中を大股に歩んでいく。
「超最悪……」
契約することになった精霊のことが、レオはあまり好きではない。自分が神人に顕現してしまったがために、どこに行くにも精霊と一緒でないといけなくなったのは、非常にストレスであった。
「……一服して気分転換したいわぁ」
レディース向けアパレル業界に身を置くレオは、プライベートのひとりごとであっても、仕事で使っている女口調が出てしまう。
しかし船内は基本的に禁煙。デッキも遠い。ますます苛立ちそうになった時、レオはおあつらえ向きの場所がすぐそこにあることを、看板で知った。
「あら、素敵なバーねぇ……大人の隠れ家って感じぃ?」
バーテンに慇懃に迎えられ、やれやれようやく喫煙できると顔をほころばせかけたレオは、見知ったテイルスを見て、顔を歪めた。
「なんでテメェが居んだ、クソ猫耳」
クソ猫耳ことルードヴィッヒは、鉄面皮をひくりとも動かさず、
「それは俺の台詞だ、席なら空いているぞ」
と言って、テーブルの隣の席を指した。
ハァ? と大きな声を上げかけたレオに、ルードヴィッヒは先手を打つ。
「騒ぐな、雰囲気を損なう。……シガーバーは、静かなものだ」
「………………チッ」
わぁったよ、と蓮っ葉な返事をし、レオはルードヴィッヒのテーブルに近づき、しかし彼が進めた隣席ではなく、斜め前に座って、そっぽを向いた。
ひょいと『AMBER』のドアを開けようとした叶を見て、桐華は思わず零す。
「吸うんだ……?」
このバーはシガーバーだ。喫煙者が入る場所である。
ん? とばかりに叶は首を巡らせ、口元を綻ばせる。
「吸うっていうか、吸えるよ。昔口寂しい時に、たまにね。今は全然吸わないけど……、あ」
叶は一旦ドアから手を離し、桐華に向き直る。
「桐華は、煙草平気だった?」
「煙草なら、昔少しだけ……」
その返答に、叶は意外そうに目を瞬かせる。
「ふぅん。君が吸うなんて、ちょっと意外」
でも、煙草が平気なら遠慮無く。と上機嫌で叶は今度こそバーのドアを開ける。
「カウンター席でお願いします」
とテキパキ席につき、頬杖をついた叶は隣に腰を下ろした桐華を見上げた。
「ここのは葉巻だろ。興味はある」
「葉巻は初心者、と」
叶は頷き、そして店員に顔を向ける。
「お久しぶり」
バーテンはチラと叶と桐華を見て、そして少し目を見開いた。
「ああ、アンタたちか」
「元気そうで何よりだよ」
叶は穏やかに微笑んだ。
「……奇遇だな、今日は見知った顔がそっちにもいるんだぜ」
バーテンは穏やかに叶の数席右を指した。
「ああ、ほんとだ」
叶は頷く。バーテンの指す先には、眼帯の神人と褐色肌のマキナがいる。
近くで話題になっていることに気づかぬまま、
「クロちゃんも、今日ぐらいは飲むこと」
カウンターのスツールに腰掛けた柳 大樹は、クラウディオに命じるように告げた。
「……私は護衛なのだが」
困惑気味にクラウディオは呟くも、大樹が言うなら仕方ないと飲み込むくらいには、二人の関係は柔らかくなっている。
おもむろにクラウディオは口布を下げ、フードをとった。ぱさりと乾いた音がして、銀髪が揺れ、鉄錆色の歯車めいた耳が覗く。
そんな二人を見つけ、セラフィム・ロイスはほっと息を吐いた。
夜景を見ようと思って船室を出たセラフィムが、トキワの後をつけていたら、こんなバーに辿り着いてしまった。大人の雰囲気がムンムン伝わってくる世界に気後れしていたが、同年代の大樹が先客として居るなら、安心だ。
「ん?」
ひょいと奥のテーブルに既に座っているトキワが、神人を見つけて手を軽く挙げて招いてくる。
「機嫌よさそうだね」
薄暗いバーに戸惑いつつも、トキワの隣にやってきたセラフィムに、
「一案件終わってな」
とトキワは答える。
トキワは手にしていた葉巻を口に当て、ふっと吹いた。それからおもむろに灰皿に葉巻を置く。自然に灰を落とした葉巻は、じんわりと眠りについた。
「消えたの?」
「ああ、葉巻は消すもんじゃない。手放してやれば勝手に消える」
と灰皿を興味深そうに覗きこむセラフィムに、説明してからトキワは口端を上げた。
カウンターに優雅に腰掛けた月岡 尊の態度は堂々としたものだ。場馴れしているのが明らかである。逆に、隣に所在なさ気に座っているアルフレド=リィンはキョロキョロ周囲を見回していて、初めて来ましたというのがありありと分かる所作であった。
「こういうところは初めてか?」
尊が尋ねると、アルフレドは頷き、
「酒はともかく。……葉巻……どころか、煙草自体初めてで」
「ほぉ」
尊が頷くと、アルフレドは言い訳めいた言葉を小声で継いだ。
「だって健康に良くなさそうじゃないスか」
それが普段から体育会系そのもののアルフレドらしい返答で、尊は思わず笑ってしまった。
笑われた、と思ったアルフレドは顔を真っ赤にして、目をそらしてしまう。
●ご注文は如何ですか
尊は、バーテンに流れるようにオーダーする。
葉巻と、十二年もののウィスキー。そして。
「あと、ビターなチョコレートを」
バーテンが頭を下げ、了解したのを認め、尊は笑む。
「意外と合うんだ、この組み合わせは」
「お決まりになりましたか?」
アシスタント・バーマンが、チョコレートの盛り合わせを尊に提供しつつ、アルフレドに尋ねる。
「こ、このヒトと同じ物を……」
それから、アルフレドは小さく付け加えた。
「あ、でも。葉巻は初心者向けのでお願いしゃす……」
バーマンは笑顔で頷いた。
「はい、そのように伝えておきますね」
大樹は、バーテンにブランデーを注文した。
「銘柄は?」
「おすすめでいいよ。あ、葉巻は甘いのがいいな。あ、チョコの盛り合わせも一皿」
それをちらりと横目で見て、クラウディオは、大樹が甘味を好むという情報に確信を得る。
(健康が心配だが)
といつもどおりの護衛思考を巡らせつつも、クラウディオはウィスキーと、軽めの葉巻を、
「Vカットで」
と注文した。
そっぽを向いて、窓から見える夜の海を眺めていたレオだが、チラリと横目で見たルードヴィッヒが、やれやれと言わんばかりの様子なのに、神経を逆撫でられた。
(マジ腹立つ……)
と思っている間に、勝手にルードヴィッヒはウェイターを呼んで、レオの分まで注文を済ませてしまった。
「……勝手に頼むなっての」
むかっ腹にまかせて、歪んだ顔を向けても、ルードヴィッヒはまゆ一つ動かさない。
「お前は吸うのだろう、葉巻と強い酒を」
と涼しい声で言うのだ。
「こんなとこくるたぁ悪ガキだな」
揶揄するようなトキワの言葉に、セラフィムはムッと眉を寄せた。
「子供じゃない。一月四日に二十歳になったんだ。大人だよ」
「そうか?」
セラフィムは不機嫌に頬を膨らませた。
「そうだよ」
その様子が面白かったのか、トキワは笑うとウェイターを呼んで、サマーファンを、と注文した。
既にトキワの手元にはブランデーの杯がある。
メニューを眺めた叶は、そうだなーと呟いてから、
「チーズの盛り合わせに……ブランデーを二杯」
と注文する。
「葉巻はいかがなさいますか?」
とアシスタント・バーマンに尋ねられ、桐華は首を僅かに傾げた。
「流石に吸ったことがないから、お勧めを。一本ずつ二本で、できれば違う種類で」
●紫煙と酒精
「じゃ、大人の仲間入りにやってみるか?」
とトキワが渡してきたブランデーグラスに、セラフィムは口を素直につけた。
「あつっ、何? 騙すなんて酷いよ。水、何か」
喉を焼く強いアルコールに、目を白黒させてむせるセラフィムに、トキワは笑いながら、チョコレートを口に放り込んでやる。
「バーなんだから当たり前」
「さっきみたいに辛いならお酒はもういい」
とふくれっ面になるセラフィムを宥め、トキワは笑う。
「軽めから行くか。ほら、来たぞ」
セラフィムは、自分の前に置かれた、黄色く濁った液体に満ちてチェリーが飾られたコリンズグラス――『サマーファン』に目をぱちくりさせた。
トロピカルな甘い香りが漂ってくる。
「ジュース?」
「低めのアルコールだし、ロングでじっくり飲むものだから、初心者には向いているだろ」
首を傾げたセラフィムに、トキワが説明してやる。
恐る恐る口をつけたセラフィムは、ホッとした。
「あ、飲める」
ふはぁと紫煙を吐き出し、尊は良い葉だな、とウェイターに頷いた。
隣のアルフレドの手と口は、戸惑い気味に酒とチョコレートを往復している。
「ライティングは、後になさいますか?」
とウェイターが尋ねるので、尊は助け舟を出してやった。
「葉巻はほっとくとすぐ消える。どうする?」
「あ、じゃ、じゃあ」
とようやく手を伸ばすので、ウェイターはカシャンとギロチンカッターでヘッドを切り落とすと、ガスライターでじっくり葉巻を炙って、フットが真っ黒になってからアルフレドに渡した。
「どうぞ、咥えてふかしてください」
「思い切り吸い込むなよ? 噎せるぞ」
尊が付け加えるも、もう遅い。
盛大に吸い込んで、げほげほとアルフレドは咳込んだ。なんせ、煙草を吸ったことがないから『ふかす』の意味がわからなかったのだ。
「そういうのは早く言ってくださいよ……」
と涙目で眉をひそめるアルフレドに、尊は『存外可愛らしい……』と笑いを噛み殺して肩を震わせ、ウェイターは丁寧に説明する。
「肺に入れずに、口の中に煙を溜めるようにしてみてください」
レオは、出されたゴブレットのような器に入れられたアブサンの鮮やかな緑に感嘆の息を吐く。
しかも、コップに橋のように渡された独特の形をした匙の上に乗った角砂糖は、アシスタント・バーマンの手によって点火され、怪しい色を放って燃えて溶け落ちていくではないか。
「へぇ、綺麗ねえ」
「ご丁寧に無知を露呈せずとも良いのだぞ?」
ロックのウィスキーを舐めつつ、ルードヴィッヒは冷たく、レオの感嘆を切り捨てる。
「猫耳毟んぞ」
「ほう……やってみろ」
ルードヴィッヒの尻尾が器用にくねり、睨みつけてくるレオの脚を撫でる。
(性悪め……)
レオの眉根がまた寄る。ルードヴィッヒは、全て分かったうえで煽っているのだ――出来もしないくせに、と。
アブサンに角砂糖を混ぜた後、ウェイターによってレオの前に火のついた葉巻が供される。
「いつもの調子で吸うとむせるぞ、味わうように吸え」
ルードヴィッヒがチロと視線だけレオに向けて、声をかける。
「助言なんて珍しいじゃなぁい?」
葉巻を受け取りながら、レオが片眉を上げると、
「同席している俺が恥をかきたくないだけだ」
とルードヴィッヒは冷め切った言葉で切り捨てる。
「あっそ、お気遣い痛み入るわー」
ふんと鼻を鳴らし、棒読みでレオもお返しし、葉巻を堂に入った様子でふかした。
「……悔しいけど、甘くて美味しいわね」
この葉巻はルードヴィッヒのチョイスのはずだ。彼の選択眼は確かであることを認めざるを得ず、レオは歯噛みする。
それに、助言に従わずに吸い込んでいたら、きっと無様にむせていただろう。
(くそぅ)
いらいらと葉巻をふかすレオを見て、ルードヴィッヒは内心で嘆かわしい、と呟いた。
葉巻とはゆったりと吸うものだ。
(それに葉巻を吸う姿は完全に男だな、三文役者が)
冷笑し、ルードヴィッヒはそれきりレオには目もくれず、淡々とナッツに手を伸ばした。
すると、急にむせる音が聞こえ、ルードヴィッヒは眼球だけレオに戻した。
(やれやれ、葉巻でむせなかったかと思えば、アブサンでむせるか)
「このお酒、喉が……焼ける」
「少量で出されれば察しがつくだろう」
それくらいならわかると思って、あえて何も言わなかったがな。とルードヴィッヒは氷のような視線をよこした。
「し、知ってて頼んだわね!?」
「水が欲しいなら口移ししてやろうか」
「こ、こんの……!」
どこまで人をからかうのか、とレオは拳を固めるも、ルードヴィッヒは一笑に付す。
「冗談も理解できないか。……ここは静かなバーだ。空気も読めんか?」
「ぐっ。うぐぐ……」
心底悔しげにレオは歯噛みし、拳を下ろすと、やけのようにアブサンを煽って、むせかけつつも、無理に余裕ぶって葉巻を口に運んだ。
「……こういう味か」
注文通りカッターを変えて、Vカットされた葉巻を口にし、クラウディオは呟いた。
酒をちびちびと飲みつつ、クラウディオは隣の大樹を観察する。大樹は酒より肴のチョコレートを食べる回数のほうが多いようだ。アルコールに慣れていないからだろう、とクラウディオは内心でこんな時でも冷静に分析していた。
ウェイターに差し出された、フラットカットされた葉巻をくわえ、大樹は、おっと目を開く。
「ほんとにこれ甘い感じする」
「チョコレートのような甘いものが合うブランデーには、そのシガーが合うと思いますよ」
バーテンが答え、大樹は頷いた。
「三人とも元気そうだね」
「おかげさまで」
穏やかに会釈するバーテンに、大樹は続ける。
「その恰好も様になってるよ。前よりゆっくりできてる?」
バーテンのアラシュ、ウェイターのセツラ、アシスタント・バーマンのツクヨの三人の出会いは、大樹もよく知っているが、到底穏便とはいえなかった。
よく知っているがゆえに、大樹はずっとこの三人の暮らしぶりを心の隅で気にしていたのだ。
「ええ、思ったよりずっと」
とツクヨが頷くので、大樹は何度も頷いた。
「そっか。上手くやってるなら、よかった」
桐華は、葉巻をふかす叶の横顔を眺めて思う。
(……なんか、新鮮だな、こういうの)
ずっと長く付き合ってきたが、いつも叶の新しい側面を見ている気がする。特にこのアクサという船で。
葉巻を吸うという行動を取る叶の顔は、立派な大人のそれで。普段の子供っぽい雰囲気はすっかり鳴りを潜めている。
(こいつの素顔はどれなんだか)
叶はアラシュに近況を聞いては、穏やかに頷いている。
アラシュ・セツラ・ツクヨの三人とも、平穏そうで、桐華も少しほっとしていた。
特にツクヨには無理強いをした自覚があるので。
「なんとかやれてるようで、よかった」
という叶の言葉に、桐華も強く頷きたかった。
●夜は静かに更けいく
叶はすいと自然に席を立った。
桐華は酔いでぼうっとしているのか、隣の叶が立ったことにも気づいていないようだ。
叶はそのまま、すうっとウェイターのセツラに声をかける。
「お手洗いですか?」
と尋ねるセツラに、叶は笑顔を横に振った。
「ううん、ちょっと君とおしゃべりしたかっただけ」
「へぇ」
仕事用の慇懃さを捨てたセツラの鮫歯が覗くが。
「ねぇ、いずれあの子を殺すつもりなのは変わらないの?」
叶の笑顔が吐き出した言葉の鋭さに、セツラの顔がこわばる。
「は?」
「別に止めないよ。羨ましいだけ」
「……止めるも止めないも。俺はもうそんなつもりねーから」
「あれ、そうなの」
セツラは、息を吐き、手袋を脱ぐと素の手の甲を見せてくる。
「あれっ」
契約の紋章を認め、叶は目を見開いた。
「二人目、になった。だからもう、いいんだ」
「そう、なんだ。そっか、それならいいんだ。ここは、おめでとう、かな?」
うんうんと頷いて、叶は自分の席へと踵を返す。
(そっか、契約したら殺さないのか。桐華も、結局僕を殺すつもりなんて無いんだろうしね)
バーの真ん中、最も暗い場所で叶はうっそりと笑んで、薬指のRing of Eidを撫でる。
「でもね。どうにかして殺して貰えるよう、追い込んでいくつもり……」
その笑みを、自分の席から見た桐華は思う。
またろくでもないことを考えている、と。
その内容を知っているようで、桐華はしっかりとそれを見つめたくなくて、酒を煽った。
酔いのふわふわした思考に今は揺蕩っていたかった。
慣れた手つきで葉巻を扱うクラウディオに、大樹は尋ねる。
「ねぇ、葉巻吸ったことあんの?」
クラウディオは首を横に振り、
「養父が好んでいた」
門前の小僧習わぬ経を読む、とはこのことか。
「ふぅん?」
大樹は深入りせず、ぐるりと大人の世界を見回した。
「騒がしいのも嫌いじゃないけど。休憩は静かな方が好きだし。この雰囲気いいなあ」
酒を嗜みながら、薄く笑む彼に、クラウディオはまた冷静に考える。
このような場は大樹にとって落ち着く場所らしい。
(健康を考えると控えさせるべきだが。精神状態を鑑みるに偶は必要だろうか)
護ることの難しさを考えながら、クラウディオは紫煙を口の中に含んだ。
葉巻は、紙巻煙草と違ってゆっくりと減っていく。
「咥えてばかりじゃ味がわからないだろ」
尊はからかうようにアルフレドに言う。何の気兼ねなく喫煙し、飲酒も出来る環境が、尊には合っているのか、今日は妙に楽しい。
何か言いたげなアルフレドの咥えた葉巻に、尊は葉巻を咥えたまま近づける。
「!」
なんてことをしてるんだ、と目を激しくしばたたかせたアルフレドを、尊はケラケラ笑った。
「シガーキス。……葉巻じゃできないがな」
葉巻はじっくりと炙らなければ火が点かないが、紙巻だったらこれで火が点く。と尊は言う。
「喫煙者には他愛無い戯れなんだが」
うっすら笑む尊を見て、アルフレドは思う。
(ミコトさん、今日はよく喋るし、笑うな)
彼も酔っているのだろうか……?
(じゃあ、俺の鼓動がやけに早いのも)
きっとアルコールのしわざだ、とアルフレドは無理やり自分の動揺を酒のせいにして、せわしなくグラスを口に運んだ。
三杯目のアブサンを口に運びながら、レオは焦っていた。
ぐらぐらする。これはかなり酔ってしまった証拠だ。
「まずい……」
思わず口をついて出てしまったレオのひとりごとに、ルードヴィッヒはピクンと猫耳を揺らす。
「……酔ったか」
「……あんたに頼るのはヤだけど……」
瞼がどうにも重たい。
ルードヴィッヒは、口端を上げると、すいと立ち上がって、レオの隣に腰を下ろす。
「醒めるまで肩を貸してやろう。貸しが増やせるしな」
普段なら意地でも寝ないだろうが、あまりの酔いに素直にコテンとルードヴィッヒの肩に頭を乗せたレオは、譫言のように呟く。
「んん……あんたなんか嫌いよぉ……」
酒の酔いでぼうっとなりながら、セラフィムは場の雰囲気にも酔っていた。どきどきと胸の鼓動が煩い。
(皆お洒落でトキワもかっこよくて……僕もこんな立派な大人になれるのかな……)
「どうだ、虎坊主とは?」
セラフィムの元々の契約精霊を話題に乗せると、セラフィムは弾かれたように背を伸ばした。
「?! 良好! 仲良くしてる」
「ふうん、ウィンクルムとしても成長したか。確かにこの数ヶ月で大人っぽくなった」
したり顔のトキワの言葉に、セラフィムは照れて顔を伏せる。
「そう、かな」
これ以上この話を続けると、心臓が破れてしまいそうで、セラフィムは自分から話題を変える。
「トキワは? どう?」
酒杯を重ねているのにトキワは涼しい顔ではぐらかす。
「ぼちぼち。仕事ついでに今度モデルにしてやろうか?」
「無理だよ。モデルやれるだけ整ってないし」
「そんなこたぁない。……俺には」
口説き文句のような言葉と、暗い照明の下の悪い大人の顔に、セラフィムはまた頬を赤く染め、慌ててサマーファンを煽る。
「っ! だからっ!」
そんなセラフィムを見つめながら、トキワは懐かしげな目をした。
(寂しいとか苦しいとか嬉しいとか……今のお前は、色んな感情逆撫でていくよな)
ずっと諦めだけの男のはずだったのに。トキワは葉巻に再度点火しようとライターに手を伸ばしかけ、やめた。
「そろそろ介抱の時間か」
セラフィムがぐでりとソファに寝そべりそうなのを見て、トキワは腰を上げた。
そろそろ夜も深い。大人の時間もそろそろお開きだろう。



エピソード情報 |
|
|---|---|
| マスター | あき缶 |
| エピソードの種類 | ハピネスエピソード |
| 男性用or女性用 | 男性のみ |
| エピソードジャンル | ロマンス |
| エピソードタイプ | ショート |
| エピソードモード | ノーマル |
| シンパシー | 使用不可 |
| 難易度 | とても簡単 |
| 参加費 | 1,000ハートコイン |
| 参加人数 | 5 / 2 ~ 5 |
| 報酬 | なし |
| リリース日 | 12月28日 |
| 出発日 | 01月06日 00:00 |
| 予定納品日 | 01月16日 |

2016/01/02-18:12
ちと出遅れたか。スマンな。
月岡尊と、ツレはアルフレド。
レオ達と……そうか。セラフィムの精霊とも、初めましてになるな。
よろしく頼む。
喫煙者の肩身の狭さは……解るな(肩を揺らし)
俺らはカウンターの方に行こうかね。
こういうのは先達に倣うのも愉しみ方の一つだろうし。
2016/01/02-14:24
私もテーブル席かなぁ、こんなオッサンと至近距離で話しても面白くもなんともないし。
ルード「奇遇だな、俺も筋骨隆々でなよなよした男と肩を寄せ合い酒を呑むのは御免だと思っていた」
テンメ…ゲフンゲフン。
2016/01/01-23:13
あ。どうもこんばんわ・・・かな?僕セラフィム
後あそこにいるのがトキワ(バーの中を指差し)よろしく頼むよ
レオとルードヴィッヒは初めまして
他はものすごく久しぶりだったり、顔なじみか
!そうか、トキワとは皆はじめましてだった。
バーに入るの初めてで挙動不審にならないようしないと
僕らはテーブルの予定だけどカウンターも興味あるんだよね(悩)
2016/01/01-19:16
やほやほ、叶と愉快な桐華さんだよ
レオさん達は初めましてだよね。あとの子はお久しぶりやらこないだぶりやらー…
セラフィムんとこの相方さんも初めましてなのか。よろしくねー。
大人ーな雰囲気のバーを満喫しちゃい隊。楽しみたいね。
僕らもカウンターにおじゃましてちょろっとご挨拶ぐらいしたいなーって思ってるよ。
2015/12/31-15:39
レオさん達は初めましてー。
柳大樹と、こっちがクラウディオ。(斜め後ろを親指で示す
他の皆さんはお久しぶり。
葉巻初めてだし、カウンター行こうかなあ。
少し話もしてみたいし。
2015/12/31-13:13
はぁ~い☆ みんな、初めまして♪
私はレオ・スタッド、そこの愛想の欠片もない猫耳オヤジがルードヴィッヒって言うんだけど。
女の子の前では吸わないように気をつけてるんだけどぉ、喫煙に厳しい人が増えてなかなか肩身が狭いのよねぇ…!
こういう『大人の隠れ家』みたいな感じで、しかも吸っていい場所があるなんて超サイコーなんだけど☆
今から超ワクワクしてるわぁ! よろしくねん♪

