


「この薬さえあれば、今日こそ彼に声を掛けられる……!」
新市街北部にある『ハト公園』。
穏やかな日差しが心地良い午後の事でした。
一人の青年が決意の眼差しで公園の入り口を潜りました。
青年の名前はハル。
目指すは公園にある焼きトウモロコシの売店。
ハルは、そこで働く店員の青年に淡い恋心を抱いています。
内気なハルは、どうしても店員に声を掛ける事が出来ずに居たのですが、今日は違います。
店員に声を掛けるべく、ハルは入念な準備をしていました。
そっとポケットを探り、指先に当たる小瓶を確かめます。
小瓶の中身は、『勇気の出る薬』。
これを飲めば、みるみる勇気が湧いてくると、本には書いてありました。
何とも怪しげな物ではありますが、ハルは真剣です。
薬学の道を志すハルが、図書館で『勇気の出る薬』の作り方が載っていた本と出会ったのは、一ヶ月前。
それから、ずっとこの小瓶の中身を作るべく奮闘してきました。
ついに薬が完成した今日、早速ハルは店員の元へ向かっているのでありました。
「僕は……この薬で変わるんだ……!」
その時、指先に力が入り過ぎてしまったせいでしょうか。
小瓶がポケットから零れ落ちてしまいます。
「あ……!」
無情にも瓶は地面に落ちて割れ、次の瞬間、ピンク色の煙が溢れ出たのです。
その煙を吸い込んだ瞬間、ハルに急激な変化が訪れました。
無性に服が脱ぎたい。
兎に角脱ぎたい。
もう、脱ぐしかない!
突然服を脱ぎ、下着姿となったハルに周囲がどよめきます。
「ちょっと、君……!」
慌てて声を掛けようとしたある男性が、もくもくと広がるピンクの煙を吸ってしまいました。
すると、
「好きだー!!」
男性はそう叫ぶと、隣に居た連れの男性に、いきなりキスをし始めたのです。
変化はそれだけではありませんでした。
どんどん広がっていくピンクの煙を吸った人々が、様々な奇行に走り出しました。
ある人は、ハル同様に服を脱ぎ、下着一枚の姿に。
ある人は、ところ構わず目のあった人にキスをする、キス魔に。
ある人は、近くに居る人にぎゅっと抱き着く、ハグ魔に。
ある人は、幼子のようになり、連れの人に甘える状態に。
ある人は、『にゃー』としか喋れなくなり、猫のような行動を取る状態に。
公園内は大パニック状態です。
奇行に走る人と、難を逃れたものの奇行に走る人の犠牲になる人。
平和な公園の午後は、ピンク色の煙に包まれたのでした。


ハト公園でのパニックに巻き込まれるエピソードです。
以下の行動が可能となっております。
・ピンクの煙を吸い込み、奇行に走る。
・奇行に走った人を止めたり、被害にあう。
ピンクの煙を吸う方は、奇行の内容をプラン内に明記をお願いいたします。
奇行の内容は、プロローグ内に記載したものの中から、お好きなものを一つ選んでください。
被害にあう場合は、必ず神人さんか精霊さんのどちらかが奇行に走る必要があります。
※他キャラ様の奇行の被害にあうという行動は出来ませんので、ご注意ください。
なお、ピンクの煙の影響は、約1時間で収まります。
また、薬の影響が切れた後、その影響を受けていた間の記憶は一切残りません。
※焼きトウモロコシは、売店で20Jrで購入出来ます。
ゲームマスターを務めさせていただく、猫になって惰眠を貪りたい!雪花菜 凛(きらず りん)です。
今回は、思いっ切りコメディです。
普段は有り得ない行動をしてみる、またはしているパートナーにドキドキしてみませんか?
是非、お気軽にご参加ください!
皆様の素敵なアクションをお待ちしております♪
※ゲームマスター情報の個人ページに、雪花菜の傾向と対策を記載しております。
ご参考までにご一読いただけますと幸いです。


◆アクション・プラン
スウィン(イルド)
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さ~て、今日は焼きトウモロコシを食べに行くわよ~♪ 美味しいんでしょうね、楽しみだわ!…? (ピンクの煙をスウィンだけ吸い込んでしまいふらりと倒れそうに) …にゃ~ん♪(中身猫化・イルドから離れない・ ゆっくり瞬きしながらイルドを見つめる・ イルドの尻尾にじゃれる・撫でられてうっとり・ 擦り寄って甘える・何か言われても「?」な感じ・ イルドの頬をグルーミングしようとして止められる・等 最後はイルドの膝枕でお昼寝→効果が切れて起きる) …ん?おっさん今寝てた? (寝ぼけて膝枕には気付かず。それまでの行動を話され) はぁ?そんな事するわけないでしょ~? イルドも寝てて夢でも見たの? さ、早く焼きトウモロコシ買いに行きましょ |
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桃色の煙… (毒ガスだとマズイ) まて、ランスはこっち来るな と、俺も鼻と口を押さえて去ろうとするが… ◆概要 猫になった(?)セイジと獣使いなランス?! ◆詳細 僅かに吸った煙に思考が麻痺して猫になってしまう ・意識が僅かでも残ってたら 努めて人として振舞おうとし、公園から離れようとする なんとかしてくれとランスに訴える 撫でて可愛がられるとそれどころじゃないと拒む でも薬の影響で猫の本能と意識が次第に勝っていき、声も反応も思考も猫に変わっていく ・完全に忘我状態だったら 猫として行動し、逃げる ハムっと噛んだりもする 狼ランスに狩られ、四肢を押さえつけられ組み伏せられたら怯える 首とか舐められたら、食べないでにゃああと哀願 |
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行動:煙を吸い込み奇行に走る 被害者は神人、内容はハグ魔 テオのアイスを買いに出て来たが、何だか公園が騒がしいな…なんだなんだ? と近寄る …ん?なんだこの煙… ……なんだろう、此処にいる皆が凄い愛おしくなってきた 人類…いや精霊だってみな兄弟!仲良くしようじゃないか皆ー!! と抱きしめまくる! ん?何だテオその顔は?お前も抱きしめて欲しいのか?いいぞいいぞ~っ 騒動後は自宅でテオから何があったのか詳しく聞かされて悶絶必死 ああでも、テオに抱きつく事が出来たのなら ちょっと嬉しいかな… |
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【心情】 そういや、この煙って匂いあるのかねぇ。 あと、あの割れた瓶。アレ売ってたっけ? 【行動】 琥珀ちゃんとハト公園を歩いてる時に、煙を見るかもしれないねぇ。 匂いが気になるから、2人で一緒に嗅いでみようと思う。 【奇行の被害側】 ははっ、まいったなぁ~! 琥珀ちゃんが僕の右足につかまって「パパ」なんて言い出したよ~。 周りの人に見られちゃったら恥ずかしいのにさ。 っていうより僕、完全に父親扱いされてんじゃない!? でもまあいいや。 琥珀ちゃんが正気に戻るまでパパの振りして機嫌をとろうーっと。 【その後】 きっと何も覚えてないだろうから、気を取り直すつもりでね。 焼きトウモロコシ2人分買って、一緒に食べながら帰ろうか。 |
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◆行動 仲間には標準語、珊瑚に対しては沖縄弁で喋る。 珊瑚の愚痴を背に、ハト公園を歩いている時 突然、煙が珊瑚の方に濃く拡がるのを見て彼を突き飛ばすが、 その際に自らが煙を吸い込んでしまう。 ◆奇行 しばらく放心状態が続き、口調は北海道弁。 自分に向き直った珊瑚に両肩を揺さぶられると、 無言で珊瑚に抱きついたまま、押し倒そうとする。 「コライユ、寄しかかるよ」 押し倒した際は、珊瑚に「めんこい」などと言う。 また、珊瑚の顔に接近したり、耳元で意味不明な言葉を囁く。 反撃されても「きっかない子だ」と言って再び押し倒そうとする。 ◆奇行後 「……おれ、何かしたかい?」 身に覚えがないまま、珊瑚から説教され、ハト公園を後にする。 |
●1.
ピンク、そしてピンク。
ピンク色の煙が風に乗り、公園内へ広まっていきます。
一人、そしてまた一人。煙を吸い込んでは、おかしな行動に走り出していました。
その時、東雲 燈夜は、偶々パートナーの好物であるアイスクリームを買いにハト公園の近くを歩いていた。
「……ん? なんだなんだ?」
何だか公園内が騒がしいのに気付いた彼は、自然と公園内へと足を向ける。
「なんだ?この煙……」
公園内に足を踏み入れた彼へ、もやもやとピンク色の煙が纏わり付いて来る……!
鹿鳴館・リュウ・凛玖義は、 琥珀・アンブラーと共にハト公園を散歩していた。
「りくぅ! 煙ぴんくいっぱい! すごい! みんな、ぴんく!」
公園の入り口辺りに立ち込めるピンク色の煙。
それを見た琥珀が、繋いでいた凛玖義の手をぐいぐい引っ張る。
「なんだろうねぇ?」
ピンクの煙は、何だか美味しそうな匂いがするような気がした。
そうなると匂いを嗅いでみたくなる訳で。
凛玖義と琥珀は、ピンクの煙へ向かって歩いて行く。
瑪瑙 瑠璃と瑪瑙 珊瑚もまた、二人でハト公園内を歩いていた。
「いっぺーあちさんやー! うーたーとーん!」
正確には、珊瑚が沖縄弁で喋りまくり、瑠璃がそれを背中で聞きながら歩いている状態だ。
いつもの平和な風景。
の筈だった。ピンク色の煙が視界に入るまでは。
「!?」
急にこちらを襲って来たピンクの煙。
危ないと思った瞬間、瑠璃は珊瑚を突き飛ばしていた。
ピンク色の煙が見えた瞬間、アキ・セイジの脳裏に浮かんだのは、『毒ガス』という単語だった。
「待て! ランスはこっち来るな」
「セイジ?」
後ろを歩いてくるヴェルトール・ランスに鋭い声でそう告げ、自分も鼻と口をハンカチで押さえる。
直ぐに逃げようとした彼に、無情にもピンクの煙は襲い掛かってくる。
「さ~て、焼きトウモロコシの売店は何所かしら~♪」
スウィンはご機嫌な足取りで、公園内の売店を目指していた。
「美味しいんでしょうね、楽しみだわ!」
ハト公園といえば、名物の焼きトウモロコシ。
幸せそうなスウィンの顔を見て、パートナーのイルドの口元も僅かに綻ぶ。
しかし、そんな二人の背後にも、ピンク色の煙が迫っていたのだった。
●2.
纏わり付いて来たピンクの煙を吸い込んでしまった燈夜は、大きく瞬きした。
胸の奥が、何だかポカポカしている。
辺りを見渡すと、下着一枚でポーズを取るおじさん、猫のように地面を転がる少年、キスを迫って殴られている青年。
様々な奇行に走る人々が視界に映った。
(……なんだろう。何だか、凄く……)
とても普通じゃない状況の筈なのに、それらの人々が、とても活き活きして輝いて燈夜には見える。
(此処にいる皆が、凄い愛おしくなってきた……!)
燈夜はすうっっと息を大きく吸い込んだ。
「人類……いや精霊だってみな兄弟! 仲良くしようじゃないか皆ー!!」
気付けば、燈夜はそう叫んで、通りがかった散歩中の犬を思い切り抱き締めていた。
驚いた犬がキャンと鳴くが、燈夜は構わず頬擦りする。
「ハハハハハッ、何て可愛いんだ、こいつぅー!」
「ちょ、ちょっと君?」
飼い主のおじいさんが困惑の表情で燈夜を見た。
「おじいさんも、仲良くしようぜ!」
そんなおじいさんもハグ。
ついでに地面を転がっていた少年もハグ。
兎に角、視界に映る愛おしいものをすべてハグ。
「東雲お前もか!」
不意に知っている声が聞こえたかと思うと、燈夜は襟首を引っ張られ、声の人物の方へ向けられた。
「やめないか、相手が困っているだろう」
菫色の瞳が細められ、燈夜を見下ろしていた。
「ん? テオ」
パートナーである彼の名前を呼ぶと、テオドール=フェーエンベルガーは深く溜息を吐く。
「何やってるんだ、まったく」
「何だ、テオ。その顔は? お前も抱きしめて欲しいのか?」
燈夜はにへらと満面の笑顔になると、
「いいぞいいぞ~っ」
そのままぎゅっとテオドールを抱き締める。
(どうやら、ピンク色のあの煙を吸うと、こうなるようだな……)
テオドールは燈夜の背に手を回し、がっちりホールドすると周囲を見回しそう判断した。
「抱き付くなら俺だけにしろ」
そう告げると、燈夜を離さぬよう腕に力を込める。
これ以上、他の奴に抱き付かせる訳にはいかない。
これは、燈夜が他の皆に迷惑をかけないため。
嫉妬ではない、断じて。
そう心の中で呟きながら。
●3.
「さて、匂いはあるのかねぇ?」
凛玖義は興味深げに瞳を細めると、立ち込めるピンク色の煙を眺める。
その足元を琥珀がタタッと前に出て、大きく煙を吸い込んだ。
途端、ぶるっと琥珀の身体が震える。
「何かヘン……鼻、むずむずするぅ」
琥珀はそう言うと、眉と顰めてくるりと凛玖義の方へ振り向く。
「……ふぇっ、へくちっ!」
そして、凛玖義へ向かって大きくくしゃみをした。
「大丈夫か? 琥珀ちゃん」
凛玖義が、心配してその顔を覗き込んだ瞬間、
「パパ」
確かに凛玖義の事をそう呼ぶと、琥珀は急に彼の右足にしがみついた。
そして、すりっと頬をすり寄せてくる。
「こ、琥珀ちゃん?」
「パパ……」
琥珀がぎゅっと更にくっついて来る。
凛玖義は少しの間停止した後、ポリポリと頭を掻いた。
(もしかしなくても……僕、完全に父親扱いされてんじゃない?)
「ははっ、まいったなぁ~!」
周囲を見渡す。
見られたら恥ずかしいと思ったが、ピンクの煙のお陰で周囲もそれどころではないようだ。
だとしたら……問題はない。全くない。
(琥珀ちゃんが正気に戻るまでパパの振りして機嫌をとろうーっと)
そうと決まれば、凛玖義は優しい微笑みを浮かべて琥珀の頭を撫でる。
なでなでなで。
「んんー」
琥珀の瞳がトロリと溶けた。
その様子が愛おしく、一層優しさを込めて髪を梳くと、不意にぽろりと琥珀の瞳から涙が零れた。
「パパ、会いたかったぁ~」
そう言うと、力を込めぎゅっと足に抱きついて来る。
「……うん、パパだよ」
そう囁き背中を撫でてやると、琥珀は更に瞳に涙を浮かべた。
そして、凛玖義のズボンで鼻を噛んだのだった。
●4.
瑠璃に突き飛ばされ、珊瑚はその場に尻餅を付く。
顔を上げた珊瑚は、瑠璃がピンクの煙に包まれるのを見た。
煙は瑠璃を巻き込んだ後、吹き付けた強い風に乗って去っていく。
「…………」
煙を吸い込んでしまった瑠璃は、焦点の定まらない瞳でぼーっとしていた。
珊瑚は慌てて立ち上がると、その背後から両肩を揺する。
「瑠璃?」
ゆさゆさゆさ。
しかし、反応はない。
更に心配になった珊瑚は、瑠璃の前に回って強く両肩を揺さぶった。
「……」
瑠璃の瞳が、珊瑚の瞳を捉える。
いつもと何かが違う。
そう珊瑚は感じ取った。
次の瞬間、珊瑚は瑠璃に抱きしめられていた。
「!?」
突然の出来事に、珊瑚の思考も動きも停止する。
「コライユ、寄しかかるよ」
「瑠璃? ちゃーし……うおぁ!」
やっと口を開いたと思ったら、瑠璃はそのまま珊瑚をその場に押し倒した。
背中と後頭部を地面にぶつけ、珊瑚の視界が一瞬チカチカ点滅する。
その耳元に瑠璃の唇が囁いた。
「めんこい」
カーッと珊瑚の顔に血が上る。
「ふざけんな! たーがやーなんかと、にびちすっか!」
叫ぶように抗議し、瑠璃を押し退けようとその胸板を押した。
「きっかない子だ」
しかし、彼は一向に意に返さず顔を近付けてくる。
「ふらー!」
バタバタと暴れるが、拘束はより一層強くなるだけ。
一体全体、瑠璃はどうしてしまったのか。
「くぬひゃー!」
迫る瑠璃の顔を押しやりながら、珊瑚は見てしまった。
周囲も、同じような事になっている。いや、もっと酷い事になっている人も居る。
どうやら、あのピンクの煙を吸ってしまった人は、おかしな行動を取ってしまうらしい。
この瑠璃のように。
冗談ではない!
耳元で瑠璃が何か囁いてくるが、珊瑚には彼が何と言っているか分からなかった。
●5.
「セイジ! そっちに行っちゃ駄目だって!」
ランスは、猫のように四つん這いで逃げるセイジの背中を追っていた。
「……にゃーん」
一瞬止まり、チラリとランスを振り向き一声そう発すも、彼は再び前へ走り出す。
二本の足ではなく、両手両足の四本で。
どうやら、あの煙が原因でセイジは猫になっているらしい。
非常事態の筈なのに、ランスはニヤける口元を隠せずにセイジを追い掛けていた。
普段のカチッとした冷静で理性的なセイジと、理性を無くした猫のセイジ。
そのギャップが、堪らなかった。
「けど、逃げちゃうのは困る」
セイジが木に登り始めたのを確認すると、ランスは丁度視界に入った売店へと駆け込む。
マタタビ枝に、猫じゃらし。
公園にはペットを連れてくる人も居るからか、道具は揃っていた。
「……これも買っておこう♪」
ついでに、何故か売られていた猫耳と猫尻尾のアクセサリーを購入して店を出る。
「にゃーん」
セイジは木の上で、自分の手の甲を舐めていた。どうやら毛繕いのつもりらしい。
「セイジ~」
ランスは長身を活かし、腕を伸ばして猫じゃらしをセイジの鼻先へ突き付けた。
ピクリと反応したセイジの視線が、猫じゃらしに釘付けになる。
「ほーら、降りておいで~」
動物学の知識をフル活用し、マタタビ枝との二重攻撃を加えると、セイジは木から飛び降りて来た。
「……っと、危ない!」
猫になりきっているとはいえ、身体は人間だ。
ランスは慌ててその身体を抱き留める。
「にゃ、にゃーッ!」
するとセイジは毛を逆立てるようにして、ランスの腕の中から逃げようと藻掻く。
「ダーメ! もう逃さない」
どさり。
ランスは軽々とセイジを押し倒すと、その四肢を押さえ付け彼を組み伏せた。
暴れる身体を縛るように首筋を舐めると、セイジがビクッと震えて、怯えた瞳で見上げてくる。
「にゃーにゃー!」
「だーいじょうぶ。食べちゃったりはしないよ」
ランスは瞳を細めると、彼の髪を優しく撫でたのだった。
●6.
ピンクの煙を吸い込んだスウィンの身体が、ふらっと傾く。
「おい、おっさん!?」
イルドがその身体を咄嗟に支えると、スウィンの瞳がうっとりと細められた。
そして、ゆっくりと口を開く。
「にゃーん♪」
「は?」
猫のようなその一声にイルドが眉根を寄せるタイミングで、スウィンは彼へすりすりと身を寄せて来た。
「お、おっさん……?」
「にゃ?」
イルドが恐る恐る呼び掛けるも、彼の口から出たのは、やはり猫の鳴き声のそれ。
「な、何だ? また俺の事からかってんのか?!」
「にゃー」
スウィンはゆっくり瞬きしながらじっとイルドを見つめると、彼の胸に頭を押し付けて来る。
(何かのどっきり企画とかじゃねぇだろーな!?)
イルドはスウィンに擦り寄られるまま、周囲を見渡した。
下着一枚でポーズを取るおじいさん。
猫のように地面を転がるおじさん。
ハグを迫って駆けまわる少年。
周囲はカオスの様相を呈していた。
(……あのピンクの煙のせい、みてぇだな)
イルドはそう結論付けると、スウィンを見下ろす。
と、スウィンが舌を出して彼の頬へ迫って来た。グルーミングのつもりで頬を舐めようとしているらしい。
「す、ストップ! ストップ!」
間一髪スウィンの額を押してそれを防ぎ、イルドは顔が熱くなるのを感じた。
「そりゃいつもトランスしてっけど、これは色々まずいだろ……!」
首を振って周囲を見渡す。
スウィンが元に戻るまで、落ち着く場所が欲しい。
「おっさん、あそこ、行くぞ」
空いているベンチを見つけると、イルドはスウィンを抱き抱えるようにして連れて行くと座らせる。
「にゃ~ん♪」
スウィンはご機嫌でイルドの尻尾にじゃれて来た。
「……どうしてこうなった」
「にゃー」
イルドが小さくぼやきその髪を撫でると、一層気持ちよさそうにスウィンは鳴いたのだった。
●7.
「ごめん、りく。はく、何か言った。あやまる」
そう言ってぺこりと頭を下げた琥珀を、凛玖義はにこやかに眺めて、
「琥珀ちゃんが気にするような事は、何もないよ」
そう答えた。
琥珀が『パパ』と言い始めて一時間程が経っていた。
急にハッと我に返った様子で、琥珀は凛玖義の足から離れたのだった。
煙の効果が切れたのだろう。
その様子から、影響を受けていた時の事は、何も覚えていないようだった。
(もう少し、琥珀ちゃんにパパって呼ばれていたかったな)
凛玖義がそんな事を考えているとは知らず、琥珀はすっきりしない様子で彼を見上げている。
「琥珀ちゃん、ちょっと待っててくれる?」
凛玖義はそう声を掛けると、丁度目の前にあった売店へ足を向けた。
「焼きトウモロコシ二つね」
店員に指を二本立てて、そう注文する。
醤油の焼ける香ばしい匂いが鼻孔をくすぐった。
店員から、焼きトウモロコシを受け取ると、一つを琥珀へと差し出す。
「はい、これは琥珀ちゃんの分」
「……! りく、これ、いーにおいっ」
曇っていた琥珀の表情が、パァと明るい色へを変わる。
「美味しいよ。食べながら帰ろう」
「はく、たべるっ」
琥珀は輝くような笑顔で頷いた。
そうして、凛玖義と琥珀は再び手を繋ぎ、焼きトウモロコシを楽しみながら公園を後にしたのだった。
「……おれ、何かしたかい?」
不思議そうに放たれた瑠璃の言葉に、珊瑚の肩がワナワナと震えた。
何も覚えてない?
人をあんな目に合わせて、あんな想いをさせておいて?
一時間も……あんな体制で……。
急に元に戻ったかと思ったら、今度は何も覚えてないだと?
カーッと赤くなると、珊瑚はキッと瑠璃を睨み付けた。
「当たり前やっさーろ!」
びしっと指差し、瑠璃が悪いと主張する。
「謝れ! うぬひゃー!」
「……謝れ、と言われても……」
何をしたか分からないのに、何を謝ればいいのか。
あのピンクの煙を見た所まで、記憶はあるのだが……その後の事が、どうしても思い出せない。
珊瑚を怒らせる『何か』をしたのだろうが……何をしたか分からないと、謝りようがない気がする。
瑠璃が困惑の色を見せると、珊瑚はダンッと地面を片足で蹴った。
「ぬーやてぃんしむさ! 謝れ!」
「謝る理由を……」
「かしましい! 謝れ!」
その後も、珊瑚は決して理由は教えてくれなかったが、ひたすらに瑠璃を説教したのだった。
イルドは、自分の膝枕で眠ってしまったスウィンの髪を優しく撫でていた。
(おっさんの意志じゃないし、仕方ねーよな)
幸せそうなその寝顔に、自然と口元が緩む。
こうしていると……とても可愛い。
可愛い?
浮かんだ単語に、イルドは慌てて首を振った。
何を考えているんだか! 相手はスウィンなのに。
「……んー?」
睫毛を震わせ、スウィンの瞳が開いた。
イルドの膝枕から身を起こすと、ふわーと欠伸をして大きく伸びをする。
「おっさん、今寝てた?」
「……寝てたというか、何というか……覚えてない、のか?」
「何の話?」
きょとんと首を傾げるスウィンに、イルドはこれまでの彼の行動を掻い摘んで話した。
「はぁ? そんな事するわけないでしょ~?」
しかし、スウィンは全く信じていない顔で、カラカラと笑う。
「イルドも寝てて夢でも見たの?」
「ばッ……夢見てたのは、おっさんの方だろ! 人の膝を枕にしやがって……」
「はいはい。そんな事より、さ、早く焼きトウモロコシ買いに行きましょ」
そう言って、いつもの調子で歩き始めたスウィンの後を、イルドは慌てて追い掛ける。
(……覚えていなくてよかった、のか?)
でも、自分だけ振り回されて釈然としない気もする。
イルドは複雑な想いで、スウィンの背中を見たのだった。
「セイジ、よく似合ってるよ♪」
ランスは、ニコニコと満面の笑顔でセイジを眺める。
「にゃー」
屋台で買った猫耳と猫尻尾を着けられたセイジは、ランスの腕の中で小さく鳴いた。
ランスはご機嫌な様子で、彼の喉や頭を撫でる。
そこで、セイジの瞳に理知の光が戻った。
「……え? ……ッ!?」
状況を把握するなり、慌てて思わずランスを突き飛ばすようにして、その腕の中から脱出する。
心臓が早鐘のようだった。
一体、何がどうしてあんな事になっていたのだ?
ふと、目の前の噴水に自分の姿が映る。
その自分と目が合って、セイジの羞恥心が爆発した。
血の気の引いたセイジの身体がフラリと傾くのを、ランスがさっと支える。
「セイジ、大丈夫?」
「~ッ……」
大丈夫な訳、ないだろう!
そう言いたかったが、言葉にならない。
「あの変な煙の所為だから」
ポンポンとランスが肩を叩いてくる。
「……ッ……猫耳と尻尾は、お前の所為だろうがッ!」
「あれ? やっぱりバレちゃった?」
ランスは全く悪びれなく笑った。
「よく似合ってるよ、セイジ。俺達、お揃いだな♪」
自分の狼耳を指差して、そんな事を言ってくる。
「似合ってないし!」
セイジは全力で否定したのだった。
「してないしてないそんな事俺してないぃいいいいい!」
燈夜は自宅でそう叫んでいた。
「ちゃんと聞け東雲」
テオドールは、そんな彼を半眼で見ながら言葉を続ける。
「お前は煙を吸った途端、誰彼かまわず抱擁をだな」
「嘘だぁあああああ!」
テオドールによって無事自宅に帰る事の出来た東雲だが、記憶が欠落していた。
公園でピンクの煙を見てからの記憶がないのだ。
そこでテオドールに訳を尋ねたのだが……返って来たのは、とんでもない行動の数々だった。
「俺、覚えてないしぃいい! してないしぃいいいいい!」
「こら耳を塞ぐな……そして最後には俺とだな」
「へ?」
思いがけない言葉が聞こえた気がして、燈夜は耳を塞いでいた手を緩めてテオドールを見た。
「だから、最後は俺に抱擁して……仕方が無いから、そのまま家に連れ帰ったんだ」
「…………マジで?」
「嘘を吐いてどうする」
テオドールはいつもと変わらぬ様子で、少し呆れた顔で燈夜を見つめている。
「……そっか」
テオに抱きつく事が出来たのなら、ちょっと嬉しい。
そんな台詞を飲み込んで、燈夜は小さく笑った。
覚えていないのが、少し悔しい。
「東雲?」
「な、何でもないッ。迷惑かけて悪かったな、テオ」
「まったくだ。アイスも食べられなかったしな」
「う、埋め合わせは今度必ず……!」
「……期待しておこう」
フッとテオドールが微笑み、燈夜もまた彼に笑みを返したのだった。
騒ぎの収まった公園のベンチで、ハルは一人、海よりも深く落ち込んでいた。
あれは、勇気の出る薬ではなかったのか?
図書館で見つけたこの本。
やっぱり嘘だったというのか……。
暗い気持ちで件の薬のページを開く。
「……あれ? ここ、ページがくっついてる……気付かなかった」
糊付けされたようにくっついているページを、ハルは慎重に開いていった。
「……え?」
何とかページを開いて、ハルは大きく目を瞠った。
そこには、こう書かれていたのだ。
『勇気とは、羞恥心を超えた先にあります。
奇行に走った後は、もう何も怖くない状態になるでしょう』
「……【勇気の出る薬】=【奇行に走る薬】……? って、最初からそう言ってよー!!!!」
ハルの叫びが公園内に響き渡ったのだった。
Fin



エピソード情報 |
|
|---|---|
| マスター | 雪花菜 凛 |
| エピソードの種類 | ハピネスエピソード |
| 男性用or女性用 | 男性のみ |
| エピソードジャンル | コメディ |
| エピソードタイプ | ショート |
| エピソードモード | ノーマル |
| シンパシー | 使用不可 |
| 難易度 | 普通 |
| 参加費 | 1,000ハートコイン |
| 参加人数 | 5 / 2 ~ 5 |
| 報酬 | なし |
| リリース日 | 04月18日 |
| 出発日 | 04月24日 00:00 |
| 予定納品日 | 05月04日 |

2014/04/23-10:44
……しまった。
明日が出発日なのに……遅れてしまってすいません。
先輩方、初めまして。自分は瑪瑙瑠璃といいます。
当日は相方が煙に口うるさく言ってますので、かなり迷惑をかけると思います。
場合によっては自分が奇行に走るかもしれません。
現地がとんだ迷惑っぷりですから、先輩達がどうハジけても自分は気にしない……予定です。
なので明日は思いっきりやって下さい。
……失礼します。
2014/04/22-19:09
遅れちゃったね、鹿鳴館・リュウ・凛玖義だよ。
スウィン君は鐘つきとセレッソ、アキ君はデミ・ベアー以来かな。
東雲君と瑠璃君は初めてだね、よろしく。
とりあえず、あのピンクの煙の匂いを琥珀ちゃんと一緒に嗅いでから、奇行に走ろうかな。
念の為、皆の迷惑にならない所で奇行に走るつもり。
でも、逆に琥珀ちゃんが奇行に走ったら気をつけなきゃ。
2014/04/22-11:58
ピンクのケム…
!!
『にゃーっ、にゃーっ!』
2014/04/22-00:26
スウィンよ、お初さんも知ってる人もよろしくぅ。
おっさんが奇行に走って、相方が被害にあう予定。
…皆お互い様よね?はっちゃけちゃいましょうよ!ちゃんと見なかった事にするわよ~
2014/04/21-22:05
東雲燈夜だ 宜しくな。
まだしっかりとは決めてないが…一時間位で効果は消えるというし、恐らく煙吸って奇行に走ると思う。まぁ見なかったことにしといてくれ←
それじゃ、お互い頑張ろうな。

