


●硝子の礼拝堂
イベリンにある硝子の礼拝堂『チャペル・クリスタ』。青く透き通ったすべて硝子で出来た荘厳で幻想的な建物だ。
一年を問わず、挙式希望者が後を絶たない。だが特にクリスマスという雪もちらつく記念すべき時期には、硝子が氷を思わせて似合いだと考える者が多いのだろう、特に予約が多かった。
「なのにですね、大変なことに『チャペル・クリスタ』に黒き宿木の種が埋まっていることが判明したんです」
A.R.O.A.職員はそうウィンクルムに告げた。総ガラスだから遠目にも分かりやすかったのは不幸中の幸いであった。まだ誰も瘴気の餌食にはなっていない。
「まだ出芽もしていないようです。今なら何事も無く駆除できるはず。早急に種を駆除しないと、たくさんの結婚式を待つカップルが血の涙を流すことになります」
黒き宿木の種の駆除、それはウィンクルムの絆の力をぶつけることだ。
「まぁ簡単に言うと、『チャペル・クリスタ』で擬似結婚式してほしいんですよね」
職員はそう言って笑う。
「衣装とかレンタルできますから。立会人はいませんから擬似結婚式ですけど」
無人の礼拝堂で、二人きりで愛を誓う。いや、愛でなくても、絆を誓う。そうすれば種は枯れ果てるという。


●内容:硝子の礼拝堂で擬似結婚式
親密度が1以上上がれば、自動的に種は駆除されるので、特にプランで種のことを気にする必要はありません。
●消費ジェール:服のレンタル代で600ジェール頂戴します
●詳細
チャペル・クリスタは小ぢんまりした礼拝堂、すべてガラス製なので冷えます。
瘴気発生のおそれがあるため、一般人は入ってこれないので、二人きりで擬似結婚式をします。
衣装は和洋問わず・女装もOKですが、何を着るのか明記のこと。
ほかの人とは会わない、個別ハピネスです。
24時間、どの時間の指定もOKです。何も指定がなければ昼間です。
おせわになっております。あき缶でございます。
出発日が早いから気をつけてくださいね。
結婚式って言ってるけど、別に何か誓ってくれればなんでもいいですよ。
早朝の陽の光を浴びながら、昼間の温かい日光の下で、夕暮れの真っ赤な世界で、夕闇の薄暗い中で、夜の闇に包まれて……硝子の礼拝堂は時間によってさまざまな顔を見せてくれるでしょう。


◆アクション・プラン
初瀬=秀(イグニス=アルデバラン)
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……何で俺こんな格好なんだ(ウエディングドレス いやおかしいだろ!?別に両方タキシードでもよくないか!? つうか寒い!何故真冬の真夜中を選んだ!死ぬわ! ……はぁ。疲れた (チャペルの天井を見上げ) 変わんねえな、ずっと いや。変わんないのはお前だけか 俺は。変わったよ お前に会って、こうして賑やかに毎日過ごして いつからかそれが、当たり前になってた なあ、イグニス 頼みがあるんだ お前の時間を、少しだけ ……俺が死ぬまででいいから、分けてくれないか? ……!なんだよ、それ あぁくそ、誰のせいだと思ってる……! 全く、敵わないな、お前には (吹っ切れたように笑い) ……愛してる、イグニス 健やかなる時も病める時も どうか共に、傍らに |
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※夜明け前に式。普段着(白の手袋のみ着用) 受けられる任務があって良かった…。今の俺じゃ戦うこともできない みんなが戦ってるのに俺ひとりさぼって家にいて… (村人から責められた過去を思い出す)…また、重い気持ちがのしかかって動けなくなる 本当にいいの?今の俺、何もできないよ レーゲンからの笑顔と問いが本当にうれしい。 まだ笑うことも泣くこともできないけど、同じくらいの気持ちなんだって返したい おそるおそるレーゲンの手袋を取って、左手の文様にキス だけどそれだけじゃ足りないんだ 右手にもキス 俺の両手全部あげるから、レーゲンの両手もちょうだい。 ウインクルムとしてだけじゃない。全部。 「…ずっとそばにいて、ください」 |
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夜 冷えるけど…出来るだけ人目は避けたかったから フィンがドレスを食い入るように見てて、着てほしいんだろうなと察し 疑似だからこそ、出来る格好かなって フィン以外が見ないなら…と、女性用のAラインドレスを着る ベールを被ったとはいえ、やっぱり恥ずかしい…あんまり見るな 静かだな …フィン 俺はここで一つ誓いたい 俺の夢 聞いてくれるか? 死んだあの人の影を追ってたけど…俺自身の未来の夢を 俺みたいに…オーガによって心の傷を負った人の助けになりたい 俺がフィンに救われたように誰かの力になりたい カウンセラーみたいな 音楽も続けながら目指したいなって …フィンが居たから、見つけた夢 これからも…俺の傍に居て下さい ああ、一緒に行こう |
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衣装:2人ともタキシード 時間帯:夕方 サウセの言葉に少し驚く。 契約した当初から比べるとかなり自分を表に出すようになってきたが、ここまでなのは珍しい。 凄い決心をしたような感じが伝わってくる…。 彼の気持ちを聞いて、照れる。 普段は控えめなのに、こういうときは妙にまっすぐだよなこいつ…。 素顔を見せ、自分に対して誓いを立てたフラルの姿に、ドキッとする。 決心してちゃんと見せてくれたんだ。 自分も、言わないとな。 オレも、お前と一緒に並んで進みたい。 過去と向き合って、少しでもお前に弱いところを見せられるようになれたらと思う。 守れるように、強くなる。 これが、お前への誓いだ。 さらに顔が熱くなった気がする…。 |
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共に白のフロックコート 夜 「緊張は本番に取っておけ」と言って恋人繋ぎ、硝子に感嘆して歩く イェルから切り出された話に驚く 「両方取り乱したら話になんねぇだろ」 俺が普段通りに振舞わなかったら、取り乱せねぇだろうし、死ぬ自分を責めるだろ 「いつから?雨の中傘差さないで帰って楽しかったから、もしかしてと思ったんで、厳密に言えばそこだ」※EP6 確信はもうちょっと後だが、自覚はそっちより早かったのは確かだ 気遣いたい、支えたい、か 「ありがとうな」 呼び捨てにしてきた顔が可愛くて 気分用にと持参してたヴェールを被せる 「今のイェルを月に見せるのも勿体ねぇ」 ヴェールで俺以外にイェルが見えないようにしてキス 誓って、離さねぇよ |
●黄昏
黒いタキシードに身を包んだサウセは、祭壇の傍らで、小さく口の中で唱えるように呟く。
「誓いを立てる……。愛でなくても良い……」
模擬結婚式をしてきてくれ、と言われたが、誓うものはなんでも良いとも言われた。
ならば、とサウセは胸に決めている誓いがある。
今日こそ、今こそ、フラルに向き合って……。
「サウセ、おまたせ」
少し遅れてきたフラルは、銀のタキシードをまとっていた。
硝子越しに入ってくる夕日で、礼拝堂全体が朱色に染まり、フラルのタキシードも朱を混じらせて金色に見えた。
フラルはそのまま、赤いヴァージンロードを進んでくる。
今日はふたりきりだ。だから誰の介添えもない。
サウセのそばまでやってきたフラルは、挙式するカップルのようにサウセの前に立つ。
さて、とフラルが息を吐いた瞬間、勢い込んでサウセは口を開いた。
「フラルさん」
「どうしたの」
呼ぶ声に強固な意思を感じ、フラルは戸惑いながらも尋ねた。
出会った当初に比べれば、サウセは自分の気持を出すようにはなってきていたが、こんなに強い想いを感じたのは初めてだ。
「フラルさん、私は……あなたとちゃんと向き合いたい……です。あなたの横に並びたい」
サウセの言葉に、思わずフラルは頬を染める。
(普段は控えめなのに……)
いざというときは、驚くほどまっすぐなサウセ。
「だから……」
サウセが言葉を続けたので、フラルは思考をやめて、サウセを見つめた。
「だから、あなたに、素顔を見て欲しい……」
フラルは少なからず驚いた。だが、驚きの声は懸命に飲み込む。ここで怯ませてしまってはいけないと思ったのだ。
サウセはゆっくりと仮面に手を伸ばし、そしておもむろに外していく。
フラルは固唾を呑んで、その様子を見守った。
初めて見るサウセの素顔――いつか眠っている間に外して中を見てみようと思ったこともあるくらい、フラルが見たかった彼の素顔が、彼自らの意思で晒されている。
ドキンとフラルの心臓が跳ねた。
「……仮面をつけたままのほうが、確かに楽です。でも、それではいけない」
素顔のサウセは青い瞳を細めて苦笑した。
「素顔でフラルさんと向き合いたい。あなたの横に並んで、前にすすめるようになります」
言葉を失っているフラルに、サウセは神妙に告げる。
「これが、あなたへの誓いです」
(……決心して、ちゃんと見せてくれたんだ……)
フラルは胸が熱くなる想いがした。サウセの決心の重さを慮ると、胸どころか体中が熱くなってきた。
「だったら、オレもちゃんと言わないとな」
フラルは泣きそうなくらいの感情のうねりを胸中で抑え、ただ微笑んだ。
そしてきょとんとしているサウセに、目を閉じて頭を垂れて誓う。
「オレも、お前と一緒に並んで進みたい。過去と向き合って、少しでもお前に弱いところを見せられるようになれたらと思う」
すいと瞼を上げ、フラルはサウセに笑いかけた。
「守れるように、強くなる。…………これが、お前への誓いだ」
言い切った瞬間、フラルは頬を押さえた。
(……ますます熱い)
それを優しく見つめ、サウセは慈愛に満ちた笑みを浮かべる。
「照れたフラルさん、可愛い……」
「可愛いとか、言うな」
言い返すフラルの声は、蚊が鳴くように微かだった。
夕日はそのまま沈んでいき、夜の帳が下りていく。冷えていく礼拝堂の中、しかし二人の胸は氷すら溶かしそうなほどに、熱いものに満ち溢れていた。
●宵の口
日は完全に沈みきり、闇が硝子の礼拝堂に満ちていく。フットライトが点々と灯るから、夜でも歩みに困ることはない。
それでも、カイン・モーントズィッヒェルとイェルク・グリューンは手指を絡み合わせてつなぐ。
「……」
いわゆる恋人繋ぎと呼ばれる手のつなぎ方をされて、イェルクは照れるのだが、それをどうとったか、カインは無愛想に、
「緊張は本番にとっておけ」
と言って、繋ぐ手にぐっと力を込めた。
(恥ずかしいことを言う……)
ますます照れながらも、イェルクは素直にカインに手を引かれてヴァージンロードを歩いた。
歩きながら、イェルクは切り出した。
「私をずっと気遣って下さってますよね」
星空をそのままうつしだす硝子の天井を見上げて、その透き通った美に感嘆していたカインは、イェルクに視線を移した。
視線だけで、何を言い出す? と如実に問いかけてくるカインに、イェルクは苦笑した。
イェルクと同居したのも、家で仕事をするのも、すべてカインがイェルクに孤独を味あわせないため。
「あの夢でも普通に振舞ってましたが、あれもですよね?」
それは、イェルクが死んでしまう夢。死ぬと告げられたイェルクに対して、普段通りにカインは接した。明日も目覚めるかのような態度で、眠るイェルクを見送った。
「……両方取り乱したら、話になんねぇだろ」
カインが我を失ったら、イェルクは自分を攻めるだろう。それに、死ぬ本人が感情も出せずに逝ってしまうのだけは止めたかった。
カインはイェルクを見つめ、足を止める。いつのまにか二人は祭壇の前にまで辿り着いていた。
イェルクもカインの目を見つめ、まっすぐに次の問いを投げかける。
「いつから私の事好きでした?」
「いつから? 雨の中傘差さないで帰って楽しかったから、もしかしてと思ったんで、厳密に言えばそこだ」
即答された言葉に少なからずイェルクは驚く。雨の日の、おふざけのデートごっこ。そのときから、好かれていたなんて。
目を見開いて黙りこむイェルクに、カインは続けた。
「確信はもうちょっと後だが、自覚はそっちより早かったのは確かだ」
感情を自分なりに整理できたのだろう。イェルクはようやく微笑む。
「私にも気遣わせてください。あなたを支えたい」
そっとイェルクが告げた想いを、カインは口元を緩ませて聞いた。
「そうか、……ありがとうな」
「……私こそ、ありがとうございます。…………カイン」
思い切って関係を一歩踏み出すための呼び方。緊張と照れで少し、依存も独占欲も強いディアボロの声は震えた。
それを愛らしいと感じて、カインはそっとコートから白い薄物を取り出すと、ふんわりとイェルクの頭にかぶせてやる。
「これ、は」
花嫁がかぶるようなヴェールだ。
「今のイェルを月に見せるのも勿体ねぇ」
上がりかけている満月のルーメンを背で隠すようにして、カインはイェルクの唇に、自分のそれを落とす。
一瞬だけのぬくもりだったが、それで今の二人には十分で。
「離れるつもりないので。……覚悟してください」
「誓って、離さねぇよ」
月は見えない、二人だけの誓いを固く交わす様。
●小夜
夜はどんどんと更けていき、ルーメンは空を駆け上がる。
徐々に世界は眠りに落ちていき、ただでさえ静かな礼拝堂の周りは、ほぼ無音になっていた。
ちょうどいい、と 蒼崎 海十はまだ照れの残る顔で、自分自身を見下ろした。純白のAラインウェディングドレスに、ヴェール――完全に『花嫁さん』姿である。
硝子の礼拝堂は、外部の熱を遮るものがないので、どんどん夜気を取り込んで、昼の間に溜め込んだ熱を放っていって冷える。
寒くても、人目のない夜が、海十にとっては都合が良かった。
「綺麗だ……!」
「……あんまり見るな」
白い長い絹手袋に包まれた手を突き出し、感激して見とれてくるフィン・ブラーシュの視線を遮る海十。
それでも、衣装を選ぶ際に食い入るようにこのドレスを見つめていたフィンの気持ちを察して汲んでやるくらいには、海十はフィンを好いている。
「ふたりきりでよかった」
フィンは別の意味で、人目のない夜を喜ぶ。
「だって、他の人に見せたくない」
「いい加減にしてくれ……」
弱り切った声に、フィンは流石に謝罪の言葉を口にする。あんまり言い過ぎると拗ねて、脱いでしまいかねない。
二人は、冷えた木のベンチに隣り合って座った。祭壇の後ろにある、月光を通して荘厳に輝くステンドグラスを見るとはなしに眺めながら。
「静かだな」
海十の言葉は、静かすぎる礼拝堂に想像以上に響いた。
「そうだね」
「……フィン」
海十は決心したように、精霊を呼ぶ。
「俺はここで一つ誓いたい」
すっくと立ちあがり、海十はフィンの前に立つ。祭壇に背を向けた彼の純白のドレスがうっすらと月光を反射して光る。
自分を優しく見上げてくるフィンの顔をまっすぐに見たまま、海十は言う。
「俺の夢、聞いてくれるか?」
「うん、勿論」
フィンは何を訊くのだと言わんばかりに、頷いた。
「ずっと……死んだあの人の影を追ってたけど。俺は……俺自身の未来の夢を見つけたんだ」
海十は自分自身の夢を語る。
「オーガによって心の傷を負った人の助けになりたい。俺がフィンに救われたように誰かの力になりたい」
それは海十のような人の助けになりたいということだ。
「カウンセラーみたいな感じ、かな。音楽も続けるけど、そんな存在を目指したいなって」
フィンが居たから、見つけた夢だ。と海十は締めくくる。その瞳は、希望に満ち溢れて、星よりも強く輝いていた。
それを受け止め、フィンは我が事のように喜びを表情に現す。
笑みを浮かべ、そして……フィンは目を閉じて、一つ大きく深く息をした。
「俺もね、夢ができた」
海十を見上げ、フィンは自分の夢を告げる。
「故郷の記憶を残したいって思ってる」
フィンの故郷はオーガによって破壊され、失われた。フィンはその苦い思い出を見たくない、と戻ることすら避けていたはずだ。
海十の表情から、心配めいたものを読み取り、フィンはなだめるように苦笑する。
「実は仕事の合間に、今はメモみたいなものだけど……書いてるんだ」
そしていつか、とフィンは静かに歌うように言う。
「いつか、海十と一緒に故郷に行って、海十に案内したい。もう何もない場所だけど、確かに俺が家族が、皆が生きていた頃の事を話しながら歩きたい」
すっくと立ち上がり、フィンは海十に手を差し伸べた。
「一緒に来てくれますか?」
海十は迷うことなくその手に自分の手を重ねた。
「ああ、一緒に行こう。……これからも……俺の傍に居て下さい」
フィンは海十に、言葉ではなく行動で返事をした。
海十のヴェールをそっと持ち上げ、誓いのキスという形で……。
●深更
しんしんと冷えきった真夜中の真冬の『チャペル・クリスタ』。
「っくし!」
あまりの冷え込みに思わずくしゃみをし、初瀬=秀は情けない顔で硝子に映る自分を見やって肩を落とした。
「……なんで俺こんな恰好なんだ」
純白のウェディングドレス! 四十二歳のどこからどう見ても大の男が!
「秀様、今日は一段と可愛いですよ!」
硝子に映るイグニス=アルデバランは満面の笑みで、ぐっと親指を立ててみせる。ちなみにこちらは白いタキシードをビシッと完璧に着こなしていた。王子様然としていて、やたら似合う。
「いやおかしいだろ!? 別に両方タキシードでもよくないか!?」
つっこみだせば止まらない、秀は両手で露出した肩を包む。
「つうか寒い! 何故真冬の真夜中を選んだ!?」
「え、だって昼間だったら万が一があるって言って着てくれないかと思って」
しれっと返ってきた答えに、
「死ぬわ!」
硝子が震えるほどの全力ツッコミを叫んだあと、秀は脱力してうなだれた。
「……はぁ。疲れた」
イグニスは、そんな秀を励ますように頭上を指差す。
「あとほら、星が綺麗ですよ!」
なるほど、満天の星空だ。天井を見上げたまま、秀はぽつんと呟いた。
「変わんねえな、ずっと」
それから秀は、床に視線を落とし、自嘲めいた笑みを零す。
「いや。変わんないのはお前だけか。俺は。変わったよ」
「変わり、ましたか?」
きょとんと首を傾げるイグニスの方へ、秀は首を巡らせた。
「お前に会って、こうして賑やかに毎日過ごして。いつからかそれが、当たり前になってた」
もう二度とチャペルになど、行くことはないと思っていた。心の傷が刻まれた場所だから。
なのに、こんなふうにバカなやり取りを交わせるくらいに平気だ。
それは、イグニスといるからだろう。
秀が、眩しそうにイグニスを見やると、イグニスは本当に嬉しそうに笑んでいた。
「……そうですね。沢山、笑ってくれるようになりました。それは本当に、本当に嬉しいです」
秀はそんなイグニスの笑みを、泣きそうな顔で見つめ、そして声をかけた。
「………………なあ、イグニス」
「はい?」
「頼みがあるんだ」
「はい、何ですか秀様?」
貴方の頼みごとならなんなりと、と笑っているイグニスに、秀は真剣な面持ちで願う。
「お前の時間を、少しだけ……俺が死ぬまででいいから、分けてくれないか?」
「……時間、ですか」
イグニスはしばし考えこむ。
予想外の反応に、秀が少し怯えすら顔に浮かべた頃、イグニスは口を開いた。
「一つだけ。条件があります」
まるで判決を待つ囚人のような表情の秀に、イグニスは続けた。
「少しだけ、でなく。私の全部、貰って頂きますよ。いらない、なんて言わせませんからね?」
「っ、なんだよ、それ」
ぼろりと秀の瞳から大粒の涙が一粒こぼれ落ちた。
「ほら泣かないで下さい、折角可愛いのに台無しですよ」
タキシードのポケットからハンカチーフを取り出し、イグニスは秀の頬を拭う。
「あぁくそ、誰のせいだと思ってる……!」
次々と流れてくる涙を手の甲で拭い、秀は吹っ切れたように笑った。
「全く、敵わないな、お前には」
そして、イグニスを見つめて、真面目に囁く。
「……愛してる、イグニス」
突然の直球に、雷に打たれたかのようにイグニスは息を呑んで言葉を失った。
そして、弾けるように笑顔になって大きく頷くのだ。
「はいっ! 私も大好きですよ、秀様」
ならば、と二人は祭壇の前へと進む。
互いに手を取り合って、模擬であっても、誰よりも真剣に二人は誓い合った。
「健やかなる時も病める時も、どうか共に、傍らに」
「喜びのときも悲しみのときも、この身が果てるその日まで」
イグニスは甘く囁くのだ。
「貴方を愛することを誓いましょう、私のお姫様」
●夜明
東の空が白み始めた早朝、信城いつきは落ち着かない様子で、白手袋をはめた手を擦り合わせた。服装は普段着で、まるで模擬結婚式をしようというようには見えない。
(受けられる任務があって良かった……)
鬱々といつきはガラスの礼拝堂を見回す。まだ黒々と禍々しい宿木の種は礼拝堂に食い込んでいる。
「今の俺じゃ……」
戦うことすら出来ない。
先日、思い出した過去にいつきの心は打ちのめされていた。
「みんなが戦ってるのに俺ひとりさぼって家にいて……」
記憶の中の村人たちがいつきを責める。いつきの気持ちはまたずぅんと沈み込んだ。
また動くことすら出来ないくらいに沈んでいるいつきを、気遣わしげに見やり、レーゲンはいつきをベンチに座るように促した。
自分も隣に座り、レーゲンは、寒くないかと尋ねる。小さく首が横に振られるのを見て、レーゲンは東を見やる。
「硝子だから夜明けの光も綺麗だと思うけど……もう少しかかりそうだね」
か細く『うん』と返事され、レーゲンは苦笑した。
「私といつきが強い絆で結ばれてない。そんな世界の方がおかしいんじゃなかったっけ?」
以前、白昼夢の中でウィンクルム失格を告げられたいつきは、
『ウィンクルム同士は強い絆で結ばれてるんだよね、俺とレーゲンが該当しないなんて、そんな世界の方がおかしいっ』
と啖呵を切ったのだ。
あの時の勢いはどこへやら、いつきは沈みきった声で、呟く。
「本当にいいの? 今の俺、何もできないよ」
「何もできなくなんかないよ」
レーゲンは即座にいつきの言葉を否定する。
ずっと、いつきは『諦めなかった』。占いの結果が悪くとも、悪夢を見て絆を引き裂かれそうになっても、ずっとずっと諦めたくないと、いつきは言い続けてきてくれた。
だから、今度はレーゲンが諦めない番だ。
「私も、諦めたくないよ。一緒にいたいよ」
はっといつきがレーゲンを見上げる。
レーゲンは穏やかに微笑み、いつきに問うた。
「……ずっとそばにいて、くれますか?」
ぶわりといつきの胸の中に温かな花が咲き乱れる。
(嬉しい……!)
その気持ちを、どうしても顔に出すことが出来ないけれど、いつきの内面は爆発しそうなくらい喜びに満ち溢れていた。
この気持ちを、涙でも笑顔でも外に出せないいつきは、どうにか伝えたいと周囲を見回し、そしておずおずとレーゲンの手袋に手を伸ばす。
レーゲンは拒まず、いつきの好きなようにさせてくれる。
だから、レーゲンの左手の手袋を脱がせて、契約の紋様に口付けた。
(足りない……っ!)
次は右手に同じようにキスをしてから、いつきは手袋を脱ぎ捨てた自分の両手を、レーゲンに差し出した。
「レーゲンの両手をちょうだい、俺の両手全部あげるから!」
レーゲンは、いつきの手をそっととって、いつきと同じようにキスを贈る。
「ウインクルムとしてだけじゃない。全部!」
いつきは駄々をこねるように声を上げる。
たまらなくなったレーゲンはいつきを腕の中に閉じ込めた。両手だけでなく、いつきの小さな唇にもキスを落とす。
白んできた空から、強い光が現れる。
太陽が昇って、チャペルの霜を溶かしていく。露に変わった霜が、チャペルをまばゆく輝かせていた――。
| 名前:信城いつき 呼び名:いつき |
名前:レーゲン 呼び名:レーゲン |



エピソード情報 |
|
|---|---|
| マスター | あき缶 |
| エピソードの種類 | ハピネスエピソード |
| 男性用or女性用 | 男性のみ |
| エピソードジャンル | ロマンス |
| エピソードタイプ | ショート |
| エピソードモード | ノーマル |
| シンパシー | 使用不可 |
| 難易度 | とても簡単 |
| 参加費 | 1,000ハートコイン |
| 参加人数 | 5 / 2 ~ 5 |
| 報酬 | なし |
| リリース日 | 11月26日 |
| 出発日 | 12月01日 00:00 |
| 予定納品日 | 12月11日 |

2015/11/30-23:37
レーゲン:
そして同時にプラン提出の報告を。
ばたばたになってしまったけど、無事提出完了したよ
みんな幸せな時間を過ごせますように。
2015/11/30-23:37
イグニス:
わー遅刻感が凄まじいのですがイグニスと秀様です!
皆様よろしくお願いしますね!お幸せに!
……
(ぺらっ)(情報誌を捲っている)
!秀様ー!
(何か見つけたようだ。開きっぱなしのページはドレス特集)
2015/11/30-23:34
2015/11/30-23:32
2015/11/30-23:32
さて、とそろそろ出発か。
どの時間帯でもいい時間が過ごせるといいな。
って訳で……
2015/11/30-21:56
>フィン
ドレスか。
イェルは全力で拒否したな。
(言いつつ、煽り体制)
しっかし、今ドレスって種類多いよな。
選ぶの大変そうだと思うぜ。
嫁の身体はひとつだろうに。
お色直し入れても2着ありゃ十分だよなぁ。
何度も染め直しってのも変だし。
海十だと、意外にプリンセスラインとか似合いそうだが、ロングトレーンは裾捌き慣れてなくてきついかもな。
これとか、裾もそこまでだし、似合うかもなくくく。
>海十
俺達も夜だが、お互いいい夜になるといいな。
……まぁ、年上の恋人に任せるといいぜ?(凄く面白そうに笑ってる)
2015/11/30-15:37
2015/11/30-15:36
フィン:
フィンです。パートナーは海十。
皆さん、宜しくお願いするね!
ウェディングドレス……凄くいいよね~…綺麗だなぁ
(カインさんが置いてくれた結婚情報雑誌を捲りながら)
見たいなぁ(チラチラ)
海十:
コホン。
俺達は夜に出向く予定です。
良い一時になりますように。
2015/11/29-13:32
2015/11/29-13:32
カイン・モーントズィッヒェルだ。
パートナーは、イェルク・グリューンな。
今回は個別みてぇだが、お互いいい時間過ごそうや。
服装ねぇ……。
時間帯から決めた方がいいかもなぁ。
(撲殺出来そうな結婚情報雑誌を参考に開きつつ)
あぁ、会議室に置いておくから、読む奴は好きに読んでくれ。

