


グリーンヒル公園。
タブロスの新市街にあるこの公園は、グリーンヒル男爵の趣味で集められたサボテンが有名である。
公園内はちょっとした迷路のようであり、男爵が使用した東屋やベンチもそのまま残っていて、見る以外の楽しみも兼ね備えていた。
それだけでなく、巨大な温室もあり、そこには南で花咲く植物が来場者の目を楽しませてくれるのだ。
近場でお手軽に休日を楽しみたい市民にとって、憩いの場───『あなた』達も憩いに来た『筈だった』。
目の前で、パートナーが大変なことになっている。
許容量オーバーすると、案外客観的に事態を見られるのか、思わずパートナーをまじまじと見てしまう。
ここは、公園内の温室。
南国が再現されたかのような温室を歩いていたら───パートナーが植物に求愛されました。
普通だったらパニックを起こすが、パートナーが余りにも植物から熱烈に求愛されている為に許容量オーバーしたらしく、状況整理に入る『あなた』。
そういえば、この温室に最近幾つか新しい植物が来た。
自分達だって、それなら見に行ってみようかと気軽に来た位だし。
あれ、でも、確か、ちょっと前にタブロスにそこそこ近い場所でオーガ騒ぎがちょっとあって。
長距離運転者用の休憩所だったよな……一般人もいたけど、タブロスにそこそこ近かっただけあってウィンクルムがすぐに駆けつけて、犠牲者もなくて良かったという話で。
輸送中の植物があったらしく、それも無事だった……。
…………。
『あなた』は、最近の、自分は関わってないけど、耳には挟んでいたそれを思い出し、顔を引き攣らせた。
あ れ か 。
目の前のあの方は、どう考えても『無事』な方の振る舞いではありませんよね?
不幸中の幸いか、角はない。デミ・オーガ化はしていない。
ただし、瘴気の影響で、ちょっと(?)アカン方向に目覚めたっぽいだけだ。
とりあえず、一目惚れされたらしいパートナーを救出しよう。
それから、この植物には言って聞かせて、これからの人生(植生?)について話さなければ。
最大の問題は───この求愛をどうやって止めることかな!!


●状況整理
・神人か精霊のどちらかがオーガの瘴気の影響を受けて自我が芽生えてしまった下記植物のいずれかから熱烈な愛情を受けます。
ア:ハイビスカス
イ:パパイヤ
ウ:マンゴー
エ:ウツボカズラ(食虫植物)
オ:サラセニア(食虫植物)
・求愛を受けていない神人・精霊は自分が携わっていない最近の事件で植物がこうなってしまったことに気づく形。
・デミ・オーガ化はしていない。
・ただし、瘴気の影響で自我が芽生えてるから、求愛が熱烈過ぎるのと求愛の妨害に対しては容赦しないらしい。
●出来ること
・植物から、パートナーを取り戻す。
周囲が温室であり、休日で訪れていた為、タブロスという土地柄もあり、当然トランスしていませんし、出来ません。バトルコーディネートも全面的に適用されません。
相手が植物なので乱暴な真似をするより、愛されているパートナーと連係し、戦闘以外の方法で取り戻しましょう。
大事なのは、パートナー愛です。
・植物を瘴気の影響から解放する。
ウィンクルムなので特別なことをする必要はありません。
傍にいるだけでも効果はありますが、触れたりすると、より効果的です。
・解放された植物に人生(植生)や今後の生き方について話し合いましょう。
言葉は話せませんが、人間の言葉は理解しているようです。
伐採されてくれと言ったら、絶望で泣いていると受け取れる態度を取る程度には感受性もあるようです。
移住なりこれからも来場者を楽しませるなり(その方法なり)を説いてあげてください。
●注意・補足事項
・今回は個別描写です。
・一般の人だったら大変なことになってた為、公園管理事務所側から報酬が支払われる形となり、感謝として公園内の出費も全面的に免除されます。お財布の心配はしなくていいです。
・選んだ植物によってはパートナーが白い灰になりそうなので、終わったら、フォローしてあげましょう。親密度は上がりませんが、上がる切っ掛けになるかも。
こんにちは、真名木風由です。
今回は、シリアスな戦闘はない(ある意味戦闘ですが)、休日のちょっとしたハプニングとなります。一応、ハピネス寄りなので難易度は低いです。
植物は、妨害方法が異なったり、パートナーの精神的ダメージも異なるかもしれませんが、好みで選んでいただいて大丈夫です、ご安心ください(?)
パートナーを愛で取り戻し、植物を解放し、これからの人生(植生)について道を示しましょう。
これもまた、ウィンクルムとして重要なことです。たぶん。
それでは、お待ちしております。


◆アクション・プラン
柊崎 直香(ゼク=ファル)
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ハイビスカス 対象:神人 僕の愛は有料なんだけど? うんざりと自分に纏いつく植物観察し。 ハイビスカス。疲労回復や滋養強壮の薬効だったかな 自ら発揮か。成程無駄に元気だ それに比べて。 ゼク。何ぼんやりしてんの 駆けつけて救い出そうとするものじゃないの とうとう本気でボケた? 珍しい事態って。 うん、本当にボケたみたいだ もういい自分で何とかする引き千切れるかなこれ ……ゼク? んー……僕痛いのやだよ怖いよぅ、と涙声。 おおちょっと緩んだ それ植物かゼクかの二択じゃん 僕は、ゼクがいい 解放されたらこれからも温室で頑張ってねとエール 僕の愛は有料だって言ったでしょ きっちり払って貰わないと これもお仕事とキ……お別れのハグでさよならを |
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フィンがサラセニアに求愛される 呆然→胸の奥からフツフツと湧き上がるこの感情は… 絶対にフィンは無事に取り戻す! フィンは…俺のものだ 返してくれ 植物にきっぱりと言う 誰にも譲れない ただ…アンタもフィンに惚れているなら、ハイ、そうですかという訳にはいかないだろう 俺を殴るなり、蹴るなり(?)、好きにしろ それで気が済むなら、俺は受け止める 気が済んだら、フィンを離してくれ そして、頼む 別の相手を見つけて欲しい この通りだ(頭を下げ フィンを解放出来たら、抱き着く よかった… アンタ(食物)も有難う(握手 今後の生き方:アンタ達は俺達には出来ない方法で人を癒す力がある ここで人を癒して欲しいんだ 終了後: フィンの頭を撫で慰める |
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植物園でウツボカズラを見ていたらいきなり襲われた。 どうしてこうなった!! 「そういえば、ウツボカズラには小さい哺乳類を捕食するような種類もあるって何かで見たことがあるな…。」とつぶやく。 青ざめた様子のサウセを見て、「すまん」と謝る。 サウセと一緒に植物を可愛がる。 撫でたり「可愛い」と伝えたりと色々してみる。 「食虫植物は個性的な姿が愛されているな。 お前も可愛いぞ。 きっと、お前を見に来た人はその姿に癒されたり魅了されたりするだろう。 だから、無理しないで自分らしさを素直に表現するといいと思うぞ?」 抜け出した後、このように説得してみる。 事態が収拾したら、自分の発言で不安にさせてしまった相棒を慰める。 |
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エ 視界が暗くなったと思ったら頭から捕食されてたよ ツタに絡まれるし、最悪だ… こんな所で死にたくないよ 食べてもおいしくないと必死で訴える 話を聞ふっ!あはははは! しぇ、背中はらめえ!弱いかりゃあ! 写真撮ってないで助けてよお! 今の求愛だったんだ 解放されたけど諦めてないみたい 初めてなわけないでしょ? だいたい俺…そうか、これ言えばいいんだ 俺、彼女いるから 君の気持には応えられない ごめんね 葉を撫で元気づけ、公園で暮らすよう提案 悪い虫を退治する植物系ヒーローを目指したら? きっとファンがつくよ 新しい恋も見つかるかもね ねえ、君からも…なに固まってるの? …ああ。また見られてるよ 肌に視線が絡みつくみたいで、ぞわぞわする |
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神人/イ 何何何っ!何で今木のてっぺんにいるの!? (大きな葉で抱え上げられた) 飛び降りたら手引っ込めたりしない?…信じるよ、えいっ……今すごい音したよね お願い、ミカをいじめるのダメ! ちょっと性格に難ありだけど、これでも俺のパートナーなんだから! え?俺も何か言え?あの、俺好きな人いるんだ わっ、すごくしょげてる!ごめんね……(なでなで) どんな人かって、あの…俺を大事にしてくれる人で 俺も同じくらい大事にしたくて…なんでミカにやにやしてるの!? そっか1本は寂しいよね。一杯仲間がいたら寂しくなくなるかな 仲間が増えるようお願いしてみるよ ところでミカさっきの大丈夫?怪我してない? べ、別に心配してるわけじゃ…… |
●日頃の行いって……
ゼク=ファルは、時間停止していた。
目の前では、柊崎 直香がハイビスカスから熱烈な求愛を受けている!
(周囲に同症状の植物は確認出来ない……)
求愛されているのは、直香だけ。
何ということだ!
「ハイビスカス。疲労回復や滋養強壮の薬効だったかな。自ら発揮って所? 成程、無駄に元気だ。でも、僕の愛は有料なんだけど?」
直香がハイビスカスにハグハグされながら、呆れた溜め息。
半眼で睨む先は、言うまでもなく時間停止したゼクだ。
「ゼク。何ぼんやりしてんの。駆けつけて救い出そうとするものじゃないの? とうとう本気でボケた?」
「あ、ああ……今、救助する」
ゼク、やっと時間が動き出した。
が、その表情は戸惑っているように見える。
付き合いが長い直香だから分かるだけなので、他人から見たら動じていないように見えるだろう。
(得してるよね)
と、ゼクがハイビスカスへ交渉に入る前に、とても素直なことを言いやがった。
「すまない、珍しい事態だったので思考が追いつかなかった」
「珍しい事態って。うん、本当にボケたみたいだ」
「こういう時、いつもは俺が巻き込まれる側だろう? それもハイビスカスとかではなく、ラフレシア辺りから求愛されている筈。自分が無事である奇跡に驚いていた」
※この辺りの言動にゼクのウィンクルム生活がどういうものか垣間見えるが、ゼクも成長したからこそ考えられることなので、ツッコミはしないであげてください。
が、ゼクが近寄ったことでハイビスカスは枝をくねくねして直香をゼクから遠ざけ、ゼクを枝でぱしぱし叩き始める。
「強い自我があるようだ。直香を渡したくないらしい。俺の今まで遭ってきた事態に照らし合わせると……」
「もういい。自分で何とかする。……引き千切れるかな、これ」
「直香、話しかけてみろ」
「……ゼク?」
ゼクが頼りにならないと動こうとした直香へ、ゼクが一言。
目を瞬かせる直香へ、ゼクがこう言った。
「言葉を解している様子だ。それならば、説得を」
それを聞いた直香は目を閉じて、深呼吸……目を開けた。
「……僕痛いのやだよ……怖いよぅ」
驚いた様子のハイビスカスの拘束が緩む。
「ハイビスカス殿、そいつは俺の大切な人なので返してくれ。その……怖がっている」
ゼクが怖がっているの部分で微妙に直香を見なかったが、真摯に訴える。
怖がっていると言われたからか、ハイビスカスが直香を花の部分で撫で撫でしてきた。
涙目に動揺する程度の感受性はあるらしい。
「それに、直香のことを本当に想っているなら、何よりも彼の意思を尊重すべきだと思うのだが」
「それ、ハイビスカスかゼクか選ぶってこと? …って、んん?」
ゼクの言葉に直香が口を挟むが、ハイビスカスが結構驚いているように見えた。
これは、もしかして。
「俺も最初は勘違いした。初心者が蹴躓く箇所だ」
ゼク、凄い真顔でハイビスカスの勘違いに同意した。
それでも、まだ求愛していた直香を離そうとしない。
「話を戻すが、直香……お前はどうしたい?」
ゼクが直香を見ると、直香は「僕放置で話が進まないで良かったよ」と盛大な溜め息をつきながらも、はっきり言った。
「僕は、ゼクがいい」
がーんとなるハイビスカス。
しかし、潔いのか、「そういうことなのでこれは返して貰う」と言ったゼクの前まで直香をそっと運んでくれた。
「瘴気はほぼ抜けたみたいだから、これからも温室で頑張るといいと思うよ」
直香を長期的に拘束していた為、ハイビスカスの瘴気も抜けていたらしい。
ちょっと寂しそうな様子で直香の頭を撫でてくれる。
「僕の愛は有料だって言ったでしょ。きっちり払って貰わないと」
だから、温室で励めという意味のようだ。
「思わせ振りは止めろ」
「はいはい。じゃあね」
これも仕事になると直香がお別れのキスをするよりも早くゼクが釘を刺したので、直香は頭を撫でてくれた枝に軽くハグだけしておいた。
●友情っていいね
「え、何っ! 何で、俺、木のてっぺんにいるの!?」
信城いつきはパパイヤに抱えられ、木の上にご案内状態。
「チビ、見晴らしの感想は?」
「結構高……って、そんな場合じゃないよっ!」
「いや、重要だからな?」
ミカは、溜め息交じりにツッコミを返す。
パパイヤは近づくと、その実を落としてくるのだ。ダメージを考えれば、地味な攻撃であったとしても迂闊に近づけない。
ならば、方法はひとつだ。
「え、重要? 何で?」
「チビが飛び降りるからに決まってるだろ」
間。
「え、俺飛び降りるの!? 大丈夫!?」
「受け止めてやるから、飛び降りろ」
「手引っ込めたりしない?」
「するか! いいから早く飛び降りろ!」
ミカが、半信半疑のいつきに言い放つ。
パパイヤが阻止に動くが、ミカは腹を括って駆け出す。
「……信じるよ、えいっ……」
パパイヤに引き止められたものの、いつきはパパイヤから飛び降りた。
ミカが下敷きになる形で、いつき着地。
が、ミカの頭にパパイヤの実がごすんと落ちた。
「ミカ、大丈夫? 今凄い音したよね……?」
「チビのくせに余計な心配するな」
いつきの心配に苦笑したミカの頭へパパイヤの実が追加。
予想通り、地味な大ダメージを受けているミカの頭をいつきが庇った。
「お願い、ミカをいじめるのダメ! ちょっと性格に難ありだけど、これでも俺のパートナーなんだから!」
「俺を現在進行形で下敷きにしているチビが言っても説得力ないぞ」
反論することは色々あるが、とりあえず退け。
ミカの言葉を受け、いつきは慌ててミカから退いた。
頭をさすりつつ立ち上がったミカは、パパイヤを見上げる。
「こんなチビだけど、生憎、こいつは売約済なんだ。……ほら、お前も言ってやれ」
「え? 俺!?」
「自分で言った方がいいだろ。俺が赤裸々に語った方がいいって言うなら……」
「わー! わー!」
いつきは、話し始めようとするミカの口を必死に手で塞ごうとする。
勿論、ミカは自分から話すつもりはなかったりする。
だって、こうした方が絶対面白いし。
「あの……俺好きな人いるんだ。って、あ、ごめん……でも、俺、だから、応えられなくて……」
(相手がいなくてもパパイヤの求愛には応えられなくないか?)
パパイヤが凄くしょげているのを見て焦ったいつきが、パパイヤの幹を撫でる。
それを見つつ、ミカは心の中でツッコミしたが、とりあえず状況把握しておく。
涙を流せたら泣いているんじゃという勢いのパパイヤが、そういえば、パパイヤの実を落としてこない。瘴気の影響が薄れているのか?
そうこうしている間に、いつきは何故かパパイヤとコイバナ状態に移行していた。
「どんな人かって、あの……俺を大事にしてくれる人でね。だから、俺も同じ位大事にしたくて……何で、ミカがにやにやしてるの!?」
「気のせいだろ」
話途中で気づいたいつきがこちらを見るが、頬を染めながらコイバナするいつきに面白がっていたミカはただにやにやするばかり。
「でも、1本は寂しいよね。他に君と同じように自我が出た子がいないか確認して、いたら、一緒にして貰えないか頼んでみる。そうしたら、寂しくなくなるかな」
いつきの説得に応じたパパイヤを見て、ミカはよく分からないが事件解決と思うことにした。
管理事務所へ確認しに行くいつきを先にやりながら、ミカはパパイヤへ声を掛けた。
「悪いな……。小さい頃から何か欲しいなんて一言も口にしたことないあいつが、初めて手に入れたいと思ったのがあいつなんだ。だから……」
すると、パパイヤが枝を伸ばして、ミカの頭を気遣うように撫でた。
「伝えとく」
いつきの大切な人に伝えたい言葉を察したミカは頬を緩め、自分を呼ぶいつきの声に応じて去った。
「ところで、さっきの大丈夫? 怪我してない? 心配してる訳じゃないけど」
「つれないなー、『俺のパートナー』なんだろ」
遅いと言いつつも、自分を案じるいつきへミカが笑った。
●彼はどこまでも男前
(攻撃しているようには見えない。違う感じがする……?)
サウセは、ウツボカズラに求愛されるフラルを見ていた。
頭に過ぎるのは、耳にした最近の事件のことだが……何が目的なのだろう?
(どうしてこうなった!)
一方、フラルは観賞していたウツボカズラを説明するプレートを見、すんごく必死に文面を追った。
『ウツボカズラには小さい哺乳類を捕食するような種類もあります。この温室では───』
まさかとは思うが……。
フラルは「すまん」とサウセに謝罪の言葉を投げかけた。
その謝罪で我に返ったサウセはフラルの視線の先にあった説明を見て、すーっと血の気が引いていった。(サウセに自覚はないだろうが、フラルから見ても仮面してるのに青ざめてると心配するレベルで)
「フ、フラルさんを放してください」
サウセが、フラルが食べられる一大事だと前に踏み出す。
フラルが自分の意見を言ってくれていると一瞬彼の成長を喜ぶが、そんな場合でもなかったと思い直す。
ウツボカズラはサウセを警戒し、自分を渡さないと蠢いている。
これはあれか、この子は僕のだから触らないで状態という奴だろうか。
茎でぐるぐる巻きにされて、捕らえたっぽい虫を捧げようとしてくれているんだが。
控えめに言っても、次第に消化するらしい虫の数が半端ないので、虫が苦手な者が見たら卒倒間違いなしである。
「駄目です。フラルさんは、捕食させる訳にはいきません……っ」
「サウセ、多分捕食路線はなさそうだ……」
フラルが自分の視界に入った捧げ物を指し示しながら、サウセへ教える。
とは言え、近づこうとしている時点で茎でぺしぺしされているサウセにはまだ捧げ物の実態が見えない。
「あと、こちらも今のサウセと同じ状態かもしれない」
フラルを渡さないという動き、捧げ物をあげるという動き……サウセの元に行かないでほしいという考えなら、納得がいく。
フラルに指摘されたサウセは、ウツボカズラをじっと見た。
(もしかして、逆に安心させたり愛でた方がいい……?)
それならば、とサウセは自分を叩こうとする茎へ手を伸ばした。
「可愛い茎が痛んでしまいますよ」
優しく撫でると、ウツボカズラの茎がぴくっと動いた。
どこか恥らうように茎がもじもじ動く。
フラルは褒められ慣れていない女性の動きを連想させると思い、言葉を重ねてみることにした。
「食虫植物は個性的な姿が愛されているな。お前も可愛いぞ。それに、捧げ物なんて、いじらしいな」
何かとても恥らっている様子。
可愛いと言えば可愛いし、喜んでいる姿は癒されると言えば癒されるが、サウセとしては(フラルさんを早く離してほしい)と仮面の下で解放を願っている。
が、やはりと言うべきか、フラルを拘束していた上にサウセからも撫でられたウツボカズラが瘴気の影響から脱するのは早かった。
案外、あっさりフラルは解放される。
「ありがとう。きっと、お前を見に来た人はその姿に癒されたり魅了されたりするだろう。恥らう姿も可愛いからな」
フラルがそう言って撫でてやると、ウツボカズラが茎でいやんいやんしている。
「無理しないで自分らしさを素直に表現するといいと思うが、皆がお前を見に来ているのだから、誰かを独占したら、お前が好きな誰かが嫉妬されてしまうぞ?」
茎でそういうものなのかという疑問のポーズを取るウツボカズラへ皆の為の存在を説くフラル。
サウセは、(アイドルみたいな話になっている気が)と思ったが黙っておき、了承を得てウツボカズラと別れることになった。
「すまなかったな」
ウツボカズラと十分に離れた所でフラルがサウセへ謝った。
「不用意にサウセを不安にさせてしまっただろう? もう大丈夫だ」
「いえ、私よりもフラルさんの方が大変でしたから……」
フラルは慰めてくれるように自分の頭を撫でてくれるけど、サウセはちょっと複雑で、逆に心配をかけてしまったとしょんもりした。
●誰が1番ブレてない?
(困った。大変困った……)
フィン・ブラーシュは、サラセニアの筒状の葉に寄り添われてそう思った。
(海十とデートだったのにな……)
そんな状況でも、フィンの頭の中は海十とのデート、妨害された分の延長時間はあるのだろうかという呑気なものであったりする。
さて、その蒼崎 海十はと言うと───
(俺のフィンに何を……)
本人が聞いたら涙を流して喜びそうなことを頭の中に過ぎらせていた。
(胸の奥からフツフツと何かが湧き上がる、これは何だ? ああ、フィンから離れろ、その位置は俺だろうが!!)
フィン同様ブレてなかった。
「……絶対にフィンは無事に取り戻す……!」
食虫植物の求愛から救うのでなければどんなに感動のラブストーリーになるのだろうか。
(海十の瞳が見たことない色……嫉妬してくれてる?)
が、フィンは胸をトゥンクと高鳴らせてるから、いいのだろう。
サラセニアが葉を動かし、フィンを渡さないように動く。
「フィンは……俺のものだ。返してくれ」
フィンの瞳が感動に輝いているが、海十からは見えない。
その為、海十の言葉は続いた。
「誰にも譲れない。俺もフィンのものだからだ。が、アンタもフィンに惚れているなら、ハイ、そうですかという訳にはいかないだろう。俺を殴るなり蹴るなり好きにしろ」
「海十、サラセニアに足はないと思うけど」
「気持ちの問題だ! それで気が済むなら、俺は受け止める。でも、フィンは返してほしい」
フィンが思わずツッコミ入れるのを海十は律儀に返しつつ、サラセニアへ説得を続ける。
(ん? サラセニアが何か考えている……?)
自分を守りつつも、何か考えているような動きだ。
何を考えているのだろうと思うが、今はそういう場合でもない。
さっきから、海十の言葉が嬉し過ぎて、状況がこうじゃなかったらもう飛びついて、キスしたい位で。
「頼む。別の相手を見つけて欲しい。この通りだ」
「(別の相手って別の被害者になるんじゃ)え、えと、サラセニアさん? 俺も海十のことが好きなんだ。パートナーで恋人同士。今日も君達を見る為に一緒に来た」
だから、どんなに求愛しても俺の心は変わらない。
そう言おうとして、フィンはサラセニアの沈黙が違う方向に変だということに気づいた。
フラれてショックというものでもなく、手に入らないなんて許せないというものでもなく。
あれ、何か、喜んでいる?
海十もサラセニアの反応が変だということに気づき、眉を顰める。
と、地表を張っていた茎が海十とフィンを捉えた。
驚愕するよりも早く、何か2人一緒にぴとっとくっつけられた。
その姿を見て、サラセニアがやたら喜んでいるような動きを見せる。
これは……そちら方向の嗜好に発達した方のようだ。
「フィン、無事で良かった……」
「これ、無事なのかな?」
身動き取れないので、自身の頭をフィンの肩に預けるだけの海十。
サラセニアの求愛を拒絶しても殴る殴らないの話に発展しないで済みそうだが、これはこれでサラセニアの今後が心配な気がする。
「サラセニアさん、拘束は好みじゃないかな。自分の腕で海十を抱きしめたいし……お願い」
フィンが頭を下げると、サラセニアは何やら納得して2人を解放してくれる。
瘴気も程よく取れているのか、凶暴な雰囲気はない。
「アンタ……イイヤツだな」
「(そういうものなのかな?)えと、ありがとう」
2人でサラセニアを撫でると、喜ぶ姿は乙女みたいだけど多分実態は乙女とは違う。
「アンタは俺達には出来ない方法で人を癒す力がある。ここで人を癒して欲しいんだ。その、たまに2人連れの男性を連れてくるから!」
「ぶっ」
海十の意見にフィンが噴いた。
が、本人はフィンの頭を撫でつつも凄い真面目だ。
「そうだね。君だけの魅力で俺達を癒してほしいな」
賛成しつつも、フィンは管理事務所にこのサラセニアには美形の男性達が愛を紡ぐ絵をよく見せるよう言い含めることを決意した。
●手に入れたくて
「食べちゃいたい程愛しいって奴でしょうか」
イナフナイフの言葉の先にいるのは、スコット・アラガキ。
ウツボカズラへ頭突っ込んでいる、いや、突っ込まされた?
「こんな所で死にたくないよ。食べても美味しくないと思うし、話を聞ふっ! あははは……!」
スコットの訴えが途中で笑い声に変わる。
ウツボカズラの茎がスコットの背中を宥めるようにナデナデしたからだ。
いきなり絡まれたと思ったら頭を突っ込まされ、捕食(というか、底に捕食された先客がいる)されそうになるというコアかつ最悪の事態なのに!
「しぇ、背中はらめえ! 弱いかりゃあ!」
「(いいことを聞きました)ひとまず、貴重なので記念撮影を」
やっと見つけたスマホを取り出すと、スコットも入れて、変顔作ったナイフはスマホで自撮り。
(内容はともかく)2人揃った初めての写真だ。
「写真撮ってないで助けてよお!」
普段は無垢に隠して明らかに自分を好んでいないスコットが助けを求めている。
大柄な身体をじたばたさせ、ウツボカズラから逃れようと必死だ。
「彼が窒息してしまいますよ。死に至る愛など、愛ではない」
頭を離すよう宥めつつ、2人の思い出(ナイフ談)はしっかり残そうと撮影の手は止めない。
ウツボカズラに解放される頃、スコットはちょっと疲れていた。
「今の求愛だったんだ……」
でも、解放されたけど諦めてないみたい。
そして、ナイフは撮影しまくっている。
「精霊である僕には分かります。彼が顔で笑って心で泣いているのを! 愛の押しつけなど暴力と変わりません。強引な男は嫌われます」
ナイフの説得はとても素晴らしい。
ただ、スマホで撮影しながら言ってるから、こう、頷くのに抵抗が出来ると言うか。
が、ナイフは撮影し続けようと秘めた想いがあるから説得するのだ!
ウツボカズラが茎でスコットの腕を触り、縋りつこうとしている。
「ウツボくん、ファーストキスを奪ったから調子に乗っていやがるのでは?」
「初めてなわけないでしょ?」
ナイフの言葉にスコットが呆れる。
動物性蛋白質をこよなく愛する弟系マッチョ……ファーストキスは済ませていたか!
「大体俺……そうか、これ言えばいいんだ」
何かを言い掛けたが、不意に思いついたスコットがウツボカズラの茎をやんわり退けた。
「俺、彼女いるから。君の気持ちには応えられない。ごめんね」
神人であるスコットを頭から突っ込んだだけあって、ウツボカズラの瘴気の影響脱出は大変早かったらしく、乱暴もなく茎で泣く仕草を見せ始める。
スコットは慰めるように葉を撫で、元気を出すように言った。
「この温室もデートスポットだし、色んな意味で悪い虫がいると思う。ここで、その悪い虫を退治する植物系ヒーロー、あれ、ヒロインかな? とにかく正義の味方を目指すなんてどう?」
ウツボカズラが首を傾げるような(実際首はない)仕草を見せる。
スコットはにこっと笑ってみせた。
「きっとファンがつくし、新しい恋も見つかるかもね」
そうなのかな、とウツボカズラがくねくね迷っている。
スコットはあとひと押しとナイフを見た。
「君からも……何固まってるの?」
「イエナンデモ」
スコットは自分の提案に硬直したのかと思ったが、実際は違う。
(覚悟してたとは言え、キスだの彼女だの本人の口から聞くときっついわ。さっき言いかけたのだってもしかして……)
いや、その先は考えない方がいい。
ナイフを戦力外と判断したスコットがウツボカズラを説得し、管理事務所へ似た植物がいないか確認することを約束して別れる。
(でも僕は、必ず……)
見つめる先は、スコット。
スコットはナイフの視線を感じながら、気づかない振りをする。
(……ああ。また見られてる)
肌に視線が絡みつくみたいで、ぞわぞわする。
けれど、ないことに出来ない。
その瞳が、鏡みたいだから。
スマホでまた撮影されている。
まるで、俺の心を捉えるかのように。
その愛を振り払えているのかどうか、気づかないスコットには分からない。
やがて、管理事務所が見えてくる。
自我を持った植物達を温室の一角に集める対応をすると聞き、スコット達も皆と同じように安堵して休日へ戻っていくのだった。
| 名前:スコット・アラガキ 呼び名:アラガキさん |
名前:イナフナイフ 呼び名:― |



エピソード情報 |
|
|---|---|
| マスター | 真名木風由 |
| エピソードの種類 | アドベンチャーエピソード |
| 男性用or女性用 | 男性のみ |
| エピソードジャンル | 日常 |
| エピソードタイプ | ショート |
| エピソードモード | ノーマル |
| シンパシー | 使用不可 |
| 難易度 | 簡単 |
| 参加費 | 1,000ハートコイン |
| 参加人数 | 5 / 2 ~ 5 |
| 報酬 | 通常 |
| リリース日 | 09月10日 |
| 出発日 | 09月16日 00:00 |
| 予定納品日 | 09月26日 |

2015/09/15-23:53
たった今ぎりぎり提出!良かった間に合った……
みんな頑張ってパートナー取り戻してね、お疲れ様でした!
2015/09/15-00:48
クキザキ・タダカとゼク=ファルだ。
今回は別行動になるが、よろしく頼む。
ハイビスカスを重点的に観賞しているかと思う。
……珍しいことに遭遇しそうな気がしているが。
2015/09/15-00:47
2015/09/15-00:19
2015/09/14-23:55
2015/09/14-23:55
いやぁ、大変な事になっちゃったね!
果たして大丈夫なのか、ドキドキしつつ、プラン提出済だよ。
あ、ちなみに俺がサラセニアに求愛される予定です。
皆の無事を祈ってるよ!
2015/09/14-01:24
2015/09/14-01:24
蒼崎海十です。パートナーはフィン。
皆様、宜しくお願い致します。
なんて厄介な植物なんだ…!
早く何とかしないと…!
2015/09/13-07:05
おはよう。オレはフラル。
相棒はマキナでトリックスターのサウセ。
よろしくな。
食虫植物が見たくてウツボカズラのところに行ってみたのだが、まさかあんなことに…。

