


●悲しき館
山中にある大きな館、旧ロバート邸。
大昔、富豪ロバートが別荘として避暑地にしていた屋敷だといわれているが、恐ろしい『いわく』がついている。
ロバートがメイドと不倫関係にあると思い込み、疑心暗鬼に陥った奥方が館に居る者すべてを敵と見なして惨殺し、己も命を絶ったという『いわく』だ。
そのため、奥方の幽霊が出るとか、無実のメイドの呪いがかかっているとか、毎夜ロバートの断末魔が響くとか……そういう怪談話に事欠かないのである。
もちろん噂は噂であり、そんな怪奇現象は一切無かった。しかし肝試しなどで文化的価値のある屋敷が荒らされてはならじと、地権者によって厳しく人の出入りが管理されていた。
しかし……最近、妙なことが起こっている、と地権者からA.R.O.A.に訴えがあった。
屋敷から物音が聞こえるのだという。
だが人が侵入したような形跡は無い。
地権者が内部を調べようと玄関までは入ったのだが、そこに食い荒らされた動物の死骸が転がっていたのに仰天して、調査を断念したという。
もちろん、人を雇って調査もできるが、もしも館にオーガやデミ・オーガが住み着いたのであれば、無用な被害が出てしまう。よって、地権者はA.R.O.A.に通報したのである。
「今回の依頼は、館の内部調査をし、物音の主を探ってもらうというものだ」
そう言ってA.R.O.A.の職員は、依頼を受けたウィンクルム達に、推定される物音の主の正体について説明を始めた。
まずは、ゾンビ。ロバート邸の被害者の遺体が処理されておらず、何らかの理由で動き出したというもの。この場合、敵は強くないが、噛まれた場合は毒を受けるかもしれない。しかし倒せる相手なので、やっつけてしまってもかまわないだろう。
次に、リビングデッド。ゾンビと違い、角がある。リビングデッドは、オーガの力の影響によって遺体が動くものなので、オーガが傍にいる可能性が否定できない。行動は慎重にすべきだ。
もしくは、ゴブリンやコボルトなど。亜人が相手ならば、屋敷が傷つけられないうちに、適度に痛めつけて追い出せばよかろう。彼らが、デミ・オーガ化していると厄介だが……。数やデミ化の有無を見て、対応を考えた方がいいだろう。
最後に、オーガそのもの。ハイエナの頭部を持つDスケールオーガたる『ヤックハルス』はどこにでも住み着く。館の異音の主がヤックハルスだった場合は、むやみに戦闘せず戻る方がいいだろう。態勢を整えて、再度赴いた方がいい。
職員は、真剣な顔で繰り返した。
「今回は『物音の正体』を突き止めるだけでいい。だから無茶はしないでくれ。現場は山中だから、救護にも時間がかかる。危ないと思ったら撤退してくれよ」


●成功条件:旧ロバート邸の異音の調査
異音の主を退治すれば大成功ですが、大怪我をして帰還できなければ失敗です。
行動は慎重に。
●旧ロバート邸
山の中にあり、人通りはありません。
二階建てのお屋敷です。豪華な外観と内装で歴史を感じさせます。
お金をかけて建築しただけあって、崩れそうなところはありません。
しかし内部は埃まみれで蜘蛛の巣だらけ、ゴキブリなどの虫もいるかも。
電気や水道は通っていませんので、薄暗いですし、窓の無い部屋は真っ暗です。
●旧ロバート邸内部(左右は全て「向かって右・左」です)
・1階 中央
吹き抜けの玄関ホール(2階への大階段つき)
1階 右側
キッチン(裏口つき)、大食堂、倉庫(食料とリネン)
1階 左側
メイド部屋(窓なし)、ユニットバス(窓なし)、図書室
・2階 右側
主寝室、応接間
2階 左側
ゲストルーム、トイレ(窓なし)
●想定される敵の強さまとめ
・ゾンビ 弱いですが、数が自分達の2倍であれば厳しい
・リビングデッド やや弱いですが、数が自分達の倍だと厳しい。近くにオーガがいる可能性あり
・亜人(コボルト・ゴブリン) やや弱いですが、数が自分達の倍だと厳しい
・デミ化亜人 やや弱いですが、数が自分達より多いと厳しい
・オーガ 強いですが、全員が重傷覚悟で戦えば倒せるかもしれません
お世話になっております。あき缶でございます。
今回は、幽霊屋敷となっている山荘の探索です。
色々考えることが多い依頼ですので、難易度高め。
物音の正体さえ分かれば成功です。戦う必要はありません。
それでは、ちょっと不気味な屋敷探索、よろしくお願い申し上げます。


◆アクション・プラン
叶(桐華)
|
遮光可能な灯り持参。靴にも布とかで消音加工しておく 基本は団体行動で、一回から順番に捜索 部屋に入る前には中の音を確認 覗いてみて中が狭そうだったら入る人数を絞って立ち回りやすくしたい 見通しの効かない場所では特に周囲の音や匂いに警戒を ハタキ一本持ってって、蜘蛛の巣とかはそれで避ける 虫の類は気にならないけど、邪魔になりそうだし 敵がいるなら出来る限り倒しておきたいけど… 前衛少ないし、無理はしない 数が増えるようなら、自分たちと同数までを目安に それ以上は撤退を視野に リビングデッド・オーガは見かけたら戦わず撤退 万が一オーガと対峙した場合は躊躇わずにトランス状態に 逃げる時間稼ぎくらい、出来るでしょ |
|
【準備するもの】 懐中電灯、傷薬、長いロープ ロバート邸探索だけど… オーガが居るみたいだし気を引き締めねぇとな 今回は二手に分かれての探索 俺は叶と一緒に行くぜ 俺たちは右側を探索するぜ 1階が終わったら2階を探索って感じで かなり暗い場所には懐中電灯を使うぜ トランスはある程度強い敵の時にしかやらない… 人前でキスとか恥ずかしいしな! 基本キスは消極的な感じで 戦闘時は前に出て戦う ゾンビ、亜人に関しては8人以上 デミ化亜人は5匹以上 リビングデッド、オーガに関しては発見しだい撤退 脱出の際は玄関>裏口>窓の優先順位で 窓は最悪武器を使って壊してでも脱出するぜ もし、B班で戦闘音が聞こえたら助けにいくぜ! |
|
指針は情報を無事持ち帰ること ゾンビ・亜人は自分達の倍(20体~) デミ化亜人は自分達より数が多い(11体~)場合 オーガとリビングデッドは見かけたら撤退 それ以下の場合は討伐を試みる 【準備】 昼間の内に訪問 懐中電灯と足音対策のスニーカーを用意 時間制限なければ即戦闘に移れるようにトランスしておく 制限あるようなら戦闘前まで温存 ……これ本当にどうにかならんのか…… イグニス屈め、届かねえんだよ! 【探索】 物音を立てず、光量も最低限に絞って行動 異音や異臭がしないか注意して動く ドアなどを開ける前には中から物音がしないか確認 【戦闘】 逃走経路の確保を念頭に 仲間と対象を合わせ集中攻撃 逃走時は玄関>裏口>窓の順 |
|
悲しいいわくから屋敷を解放したい これ以上此処で犠牲者が出る事を、誰も望まないと思う 持ち物 懐中電灯 屋敷内では基本小声で、物音に耳を澄まし慎重に進む ノクトさん、初瀬さんと共に屋敷の左側を捜索 部屋の四方と天井へ電灯を向け安全確認 クローゼットなど敵が潜める大きさの物を開ける際は精霊に付いていてもらう 窓の開閉を確認し、玄関以外の退路を確保する 前衛で動き回って敵の気を逸らし、背後へ回れたら斬り付ける 誰かが危険な状態になった場合は躊躇なく庇う リビングデッドorオーガ遭遇で撤退 撤退時、敵に追われた場合はトランスし殿で距離を取りつつジョブスキルを使用 「怖くない訳じゃないよ…でも、信じているから」 |
|
調査とか戦闘がある依頼ははじめてだから、経験がある人に従ったほうがいいよね。 怪我したとき用に救急セットとか借りて持っていきたいな。 ミティスが医療知識あるから、応急処置はできると思うんだ。もちろんぼくも手伝うよっ。 捜索のとき、班分けするなら左側を探索する班でいくよー。一緒なのは千代さんと秀さんかな? あとは音をたてないように気をつけなきゃだね。敵がいないか聞き耳もたてながら行こう。 戦闘になったらミティスと前衛になるよ。ぼくも剣で敵の急所を狙って戦うつもり。 戦闘を回避するのは、ゾンビ・亜人はぼく達の倍以上、デミ化亜人はぼく達より数が多いとき、オーガ・リビングデッドは見かけたら、って感じかな。 |
●そなえあれば
うっそうと繁った木々の中にある洋館は、昼でも薄暗い。
突然ぬうっと現れたかのように思える重厚な造りの館は、確かに文化的に素晴らしい価値があるのだろうが、正直不気味さしか感じられなかった。
無人のはずの此処、旧ロバート邸から聞こえる物音の主を確かめるべく、ウィンクルム達は集ったのだが……。
「うぅ……雷でも鳴りそうな雰囲気だね……」
街中に在ればさほど大きい方でもない二階建ての洋館だが、どうにもそびえたつ様な印象を受ける。
ノクト・フィーリは肩をすぼめ眉を下げて、ミティス・クロノクロアも不安げに辺りを見回した。
ギャアギャアと烏らしき鳥の声も聞こえる。
この館で昔殺人があったといういわくを知っているだけに、尚更館が不気味だ。
「でも、だからこそ、これ以上犠牲者を出したくないんだ」
羽瀬川 千代は優しい顔を引き締め、己に言い聞かせるようにつぶやく。
「文化的に価値がある屋敷だろう? 俺様は中を早く見たい」
千代とは裏腹に、彼の精霊ラセルタ=ブラドッツは屋敷自体に興味があるようだ。
「オーガが居るかもしれねえんだろ? 気引き締めねぇとな。叶、同じ班だろ。宜しくな」
高原 晃司が不意に叶に声をかける。全員一緒に移動するつもりだった叶は、少し驚いた様子であった。
「え? 団体行動じゃなかったの? ……まぁいいけど。じゃあ二手に分かれるのかな」
初瀬=秀とイグニス=アルデバランも班分けすることは知らなかったらしく、一瞬戸惑ったようだが、
「皆様がそうされるのであれば、勿論従います」
イグニス達はすんなりと班分けに賛同した。
「……さて、オーガがいるかもしれないんなら、あーー……うー……」
さあ屋敷の中へ、というところで、秀が急にうめきだし、イグニスが慌てる。
「秀様? どうされました!?」
急に体調が悪くなったか、とイグニスが慌てて駆け寄るも、秀が搾り出すように言ったのは。
「トッ……」
「ト!?」
「トランスしておくか……」
であった。
「トランス……ッ!」
その単語を聞くなり笑顔満開になるイグニス。その反応が尚更恥ずかしいらしく、秀は頭を抱えて悶えている。
「す、すんのか……」
晃司が怯んだように呟く。極力ほっぺにチュウなんて行為は切羽詰らない限りやりたくない晃司だ。秀が勇者に見えた。
「しないよりはした方がいいだろ……うん……。にしてもこれどうにかならんのか!? ええい、イグニスかがめ! 届かねえんだよっ」
悶えつつもごもご言っていた秀だが、急に決心を起こしたか、自棄っぱちで叫ぶ。
「はい了解です!」
一人、喜色満面のイグニスは片膝をついて、頬を秀に差し出した。秀が怯むのにも負けず、イグニスは嬉しげに言う。
「さあいつでも! 行けます!! さあ!」
「ぐ、うぅう~~~……っ」
脂汗すら垂らしそうな表情で、それでも秀は頑張った。
がんばってインスパイアスペルを言った。
「顕現せよ、天球の焔!」
そして頬と唇が触れ合った。オーガを淘汰する光が溢れる。
「お、おおー」
周囲から拍手がもれる。
「……なんか、一仕事終わった気分だ……」
疲労しきった秀に、
「お前、すげえよ、まじで」
晃司は賞賛の言葉を贈る。
一方、イグニスは、
「何が出るか分かりませんが、秀様は私がお守りします!」
気合十分である。
一組トランス状態になった状態で、ようやく一同は預かってきた正門の鍵を使って、旧ロバート邸へと足を踏み入れる。
極力絞った灯りと、一部は靴に布まで巻くくらい配慮した足音・足捌きで、そおっとそおっと……。
●くらいやしきになにかいる
開いた扉は錘か風か、ひとりでに閉まった。
ばたむっ。
大きく聞こえる音に、一同はビクリと肩を揺らす。
確かに地権者が訴えていた通り、玄関ホールの扉近くには何かの遺体が食い荒らされた状態で放置されていた。地権者が確認した時から時間が経っていて、遺体は腐ってハエがたかっている。吐き気を催すレベルで悪臭がしていて、もはや元々何だったのか検分することも出来ない状態だった。
あまり近くに居たくもなくて、ウィンクルム達はホールの中ほどまで自然と移動した。遺体が門の近くにあるのに、ホールにはウィンクルム以外の足跡がまったくないのだが、それに気づく者は居なかった。
玄関ホールは若干の窓があったが、外に比べれば格段に暗く、そして黴と埃の臭いもぷんぷんする。
取り出したハタキで目の前の蜘蛛の巣を掃いながら、叶は周囲を見回す。
「……静かだね」
物音がするとはとても思えない静かな館だ。気配のようなものも無い。調度品などは当時のままらしく、大人しくも品のよいものが揃っている。
「ふむ、荒れているのかと思いきや、まるで時間が止まったようだな。埃さえなければ美しい洋館だ」
ラセルタは感心したように頷く。どの部屋にも鍵はかかっていないと聞いているが、周辺の管理はなるほどキチンとしていたらしい。だが、やはり黴や埃の臭い、それに食べ残しの腐臭はいただけない。吸うだけで健康を損ないそうだ。それに床には埃が雪のように積もっている。歩くたびに服も埃にまみれてしまいそうで不快だ。ラセルタは眉をひそめる。
一方、救急セットを抱えたノクトは、きょろきょろと仲間を見回していた。なにぶん、このようなオーガ関連かもしれないような依頼を受けるのは初めてなので、どう動けばよいのかピンとこない。周りに合わせておけば大丈夫だろうが、あんまり戦うのは気が進まない。
(痛いのはいやだな……)
自分だけではなく誰にも怪我して欲しくないのだ。特にミティスには。彼が怪我するくらいなら自分が負いたいとさえ思う。
晃司はオーガに恨みがあるので、実力さえ伴えば戦いたいようだが。
「それじゃあ、左側へ行くよ」
かすかな声で千代が言い、秀とノクトが同行する。
「それじゃ、こちらは右側かな」
叶が静かに、しかしすたすたと歩きだす。彼の靴には布が巻いてある。他の者よりは足音がしない。
ウィンクルムは二手に分かれて一階の探索を始める。
まだ件の物音は聞こえない。板張りの床に十人の足が触れれば、完全に音を消すことも出来ない。
この館に住まう何者かに知性があった場合、闖入者に気づくのも時間の問題だろう。
●がらーんとしたやしき
左側の探索はまずはメイド部屋からである。
秀がドアに耳をつけ、音がしないことを確認した上でドアを開ける。
「……何もない、かな?」
千代が中に入って、灯りを四方だけでなく天井にも向けた。メイド部屋だけあって、簡素な部屋だが、小さなクローゼットが儲けられているのに気づく。
「ラセルタさん、一緒に見て」
千代に呼ばれ、精霊は面倒そうに神人に近寄る。
クローゼットを開けてみたが、黴の臭いがする服が数枚ハンガーにかかっていただけだった。
「ふん、辛気臭い部屋だ。ろくなものが無い」
「メイド部屋が豪華なわけが無いよ……」
廊下の警備をするノクトは、骨のナイフを握る手が汗でぬめるのを感じていた。何が起こるかわからない不気味な洋館は、極度の緊張を強いてきて眩暈すらしそうだ。
「大丈夫だよ。私が居るから」
明らかに消耗している神人を見て、精霊は微笑んでみせる。少しでも励ましになれば、と彼なりに考えたのだ。
「何もなさそうでした。隣へ参りましょう」
部屋から出てきたイグニスに優しく言われ、ノクトは何事も無かったことに息を吐いた。
一方、右側班。
上機嫌で叶はハタキを振り回しながら、キッチンの中を調べまわしている。キッチンに続くドアを調べたが特に音などは聞こえなかったので、早速入室したのである。
「いやぁさすがお金持ちのお家だ。広いキッチンだしオーブンも立派だねえ」
「……静かにしろ」
桐華が呆れたように叶をたしなめる。足音や声量には気を使っているとはいえ、黙って歩けないものか。
「ん? 怖い? 僕が横に居るよ、桐華。二人なら怖くない怖くなーい」
「……ひと」
「独りでも怖くないとか言わなーい」
桐華の発言は、読みきっていた叶にキャンセルされてしまった。
「あ」
カサカサとタイルのシンクの上を歩むゴキブリさんに気づいた桐華。
そっと伸ばしかける手を、叶が真顔で止める。
「素手で潰すとかはやめてくださいね?」
「ちっ」
どうにも行動を読まれていて不愉快だ。桐華はますます眉根を寄せるのだった。そのうち眉間のしわがクセになってしまいそうである。
晃司は最初こそ、オーガが居るかもしれないのに、と二人の漫才寸前のやり取りを苦々しく見ていたが、おかげで陰鬱な屋敷の探索も捗ることに気づいて、特に何も言わないことにした。
「アイン、キッチンは何も無いみたいだ。次へいこうぜ」
廊下を警戒していたアインは頷き、廊下でも異常はなかったと告げた。
さんざん探索したが、一階には何も無かった。当時のままの調度品や美術品は、皆の眼を楽しませ、一種廃墟探訪のような気持ちになる。
叶達がホールに戻った時、既に千代達がいた。互いの完了状況を伝え合う術が無かったので、合流に時間がかかったのは仕方が無いが、見通しのよいホールは眼を配るべき箇所も多い。警戒を続けていた千代達は疲れている様子だった。
「どうだった?」
徒労に終わった探索結果を集合して話し合うウィンクルム達の声には力がない。緊張し続けていた為に、疲労もいつも以上だ。
「……一階にいないとなると、二階か……」
晃司は上を見上げて眉を寄せる。二階には窓があるとはいえ、高所からの飛び降りは危険だ。逃げ道が格段に少なくなる。
「あの」
そのとき、ふと千代が手を挙げた。
「気のせいかもしれないのだけど、さっき高原さん達を待っている間、辺りを警戒していた時……二階に気配を感じた気がしたんだ」
それはどんなものだと他の面々から口々に尋ねられたが、千代も気のせいかもしれないと思う一瞬の気配、詳しいことは何も分からなかった。
「とにかく、ここには居るんだろう。しかも一階じゃなく二階に」
秀が強引にまとめ、全員二階を調査すべく階段を昇る。
しっかりと建ててある階段は、大昔に作られたものだというのにきしみもしない。
階段を昇りきると、玄関ホールの遺体の腐臭は薄れていた。だがどんよりとした重い空気が漂っている。
「廊下には、何もいないみたい」
ノクトはランプを掲げて見通してみるが、明かりが届く範囲に動くものはいないようだった。
「もう一度分かれて調べよう」
アインが再び促し、ウィンクルム達は二班に分かれて二階の調査にかかった。
●かさかさかりかり
まず、左側すぐの部屋はゲストルームである。一階と同じく、秀が物音などがないか確認するためにドアに耳を当てた。
「おい、この部屋……何か居るぞ。音がする」
ドアに耳をつけた秀の言葉に、千代達は息を呑んだ。
カリカリ……ごそごそ……ぺちゃぺちゃ……。そんな不穏な音が聞こえる。
ならばすぐにドアをひき開けるのは得策ではない。まずは中をうかがうのがいいだろう。
細心の注意を払って、細く扉を開け、ノクト以外の神人たちは扉の向こうへ目を凝らした。
うっすら開けた扉の向こうに、蹲っている者が居る。経年劣化でボロボロになっているが、かろうじてメイド服であろう黒のワンピースを来た腐乱死体だ。純白を誇っていたであろう彼女のエプロンは既に色褪せ黄ばんで、埃で灰色に染まっている。
彼女はカリカリと何か骨らしきものを齧っていた。
千代は悲鳴を上げそうになる口を必死で押さえ、眼を凝らす。大丈夫、彼女は食事に夢中だ。まだこちらには気づいていない。
ふと骨を食い尽くしたか、彼女は顔を上げた。
その頭には、確かに角があった。
(!! リビングデッド!)
撤退条件だ。千代と秀は慌てて顔をドアから離し、出来る限りそうっと扉を閉めるも、小さくきしむ音と共に、ドアが閉まるカチャンと小さな音がした。
部屋の中からガタン! と大きな物音がする。
ガチャガチャと暴れまわるドアノブを見ながら、必死で全員でドアを押す。
しかしリビングデッドの力は強い。ドアは今にも開きそうだ。
ノクトとミティスが構える。戦闘になれば前衛をつとめる約束だ。
初めての戦闘にノクトの足が震える。二体のリビングデッド、勝ち目はあるが、無事に終わるかどうかは定かではない。
だが、
「無駄な戦闘は無用だ。正体は割れた。あとは脱出するだけだ。これを使え!」
ラセルタがどこからか花瓶の置き台だろうか、重そうな大きい木製の台を引きずってきて、メイドリビングデッドが出てこようとしているドアに置く。調度品を傷つけるのは忍びないが、緊急時だ。少しの間ならバリケードになるだろう。
「でも、叶さんたちは?!」
とノクトが言いかけた途端、廊下を警戒していたアインに促され、応接室の中から物音に気づいた三人が走ってきた。
「なにごとだ?」
「リビングデッドです!」
ミティスの答えに、質問者のアインの顔色が変わる。
「おい、バリケードもう保たねえぞ!」
秀が言った途端、イグニスが鋭く注意を促す。
主寝室の扉が開いて、ふらりふらりと貴婦人らしいドレスをまとった肉の崩れた生き物が出てこようとしている。
「こっちにもいたか」
桐華が眉をひそめる。
まだ四人は応接室までしか調べていなかったので、主寝室の貴婦人には気づかなかったのだ。
「ちっ、逃げるぞ。全員揃ってるな!?」
晃司の問いに誰も否定の声は上げない。一目散に玄関を目指す。
貴婦人の足は遅い。駆け下りれば逃げ切れる。
アインが階段に足をかけた瞬間、ガタンッとラセルタが作った急場しのぎのバリケードが倒れ、メイドの生ける死体がとうとう廊下に現れた。
「急ごう!」
千代が叫ぶ。相手に気づかれている以上、もう音を気にしている場合ではない。
もたもたしていると背後が階段という不利な状況下で、リビングデッドに挟み撃ちされる。
「さあ、神人の皆様は先に行ってください!」
イグニスが自らしんがりを買って出る。他の精霊達もいつでも神人を守れるように、武器を構えながらの撤退を始めた。
ウィンクルム達は階段を駆け下り、ホールを突っ切り、扉の取っ手へと手をかけるなり、重厚なる扉を引きあける。
もちろん、二体のリビングデッドだ。全員で戦えば時間はかかったとしても危なげなく勝利を収めることが出来るだろう。
しかし、リビングデッドは普通のゾンビではない。オーガの力で再び動くことを許された死体なのだ。戦っている最中にオーガに後ろから奇襲でもされれば、命に関わるのである。
だからウィンクルムはわき目も振らず館から脱出した。
扉を抜ける瞬間、振り向いた者は気づいた。
階段の上から、光る眼がこちらをじっと見ていたことを。
それが、巨大なハイエナの頭であったことを。
つまり——この旧ロバート邸には、リビングデッドを従えたオーガが住んでいる——。
リビングデッドはただ食欲だけの生き物だ。リビングデッドがあの玄関の遺体を食べて放置したのなら、足跡が残っているだろう。
しかし、遺体の周りには足跡がなかった。オーガが二階で食事をし、ゴミを捨てるかのように階段から放り投げたに違いない。あの遺体はオーガの食べかすなのだ。
神人達がしっかりとオーガを見る前に、しんがりをつとめたイグニスが扉を閉めて、鍵を確実にかけた。
だがまだ精霊達は武器を下ろさない。扉を息を呑んで注視している。
「…………追っては来ないようですね……」
数分ほど固まったように一同は動けなかったが、イグニスの一言で、ホッとしたように肩の力を抜いた。
「……くそっ」
自分にもっと力があれば、ここでオーガ退治も出来たのに。晃司は己の無力さを嘆いた。
これ以上、ここに居ても仕方が無い。ウィンクルム達は帰路に着く。
しかし、依頼はこなせた。またオーガと自信をもって対峙できるまでになったとき、まだここにオーガが居れば、戦う日も来るだろう。
悔しさも残るがウィンクルム達は、誰も怪我をしなかったことを喜び合うことにした。
遠雷が聞こえる。山の天気が崩れ始めたのだろう。
うっそうと繁る森の中、陰鬱な雲の下、恐ろしい館は今も……。



エピソード情報 |
|
|---|---|
| マスター | あき缶 |
| エピソードの種類 | アドベンチャーエピソード |
| 男性用or女性用 | 男性のみ |
| エピソードジャンル | 恐怖 |
| エピソードタイプ | ショート |
| エピソードモード | ノーマル |
| シンパシー | 使用不可 |
| 難易度 | 難しい |
| 参加費 | 1,000ハートコイン |
| 参加人数 | 5 / 2 ~ 5 |
| 報酬 | 通常 |
| リリース日 | 04月02日 |
| 出発日 | 04月09日 00:00 |
| 予定納品日 | 04月19日 |

2014/04/08-23:09
班分け了解だ。んじゃあ探索は右側左側ってな感じで秀の意見を参考にさせてもらうな。
取り急ぎ返事だけ失礼!
2014/04/08-22:11
トランス時間については特に制限ない?かな?
班分けもぼくのほうは異存ないよー。
高原さんのとおり、ミティスのカウンターを狙ってもいきかもだし、戦闘のときは前に立つよ。
あと、廊下待機もぼくのほうでしたほうがいいかな。
2014/04/08-11:32
班分けするなら
A:桐華・アイン(前衛のテンペストダンサー+HPの多い方のガンナー)
B:ラセルタ・ミティス・イグニス(前衛職の薄さを数で補う)
みたいにして、例えばAは右側、Bは左側を捜索、
各班から必ず一人は廊下待機で異変があったらすぐに察知できるよう備える、って案を考えたんだが…
脱出経路は玄関>裏口>窓の順な。
2階なら高さ的にギリギリ行けそうか……?
とりあえず屋敷に入る前にトランスしておくことにしたが制限時間とかあるのか?
2014/04/08-09:45
んー、まあぼくのことは気にしなくていいよー。
調査とか戦闘がある依頼ははじめてだから、みんなに従ったほうがいいだろうしね。
一応一般スキルで医療もってるから、怪我しても応急処置くらいはできると思うよ。
救急セットも借りておこうかな。
2014/04/08-03:52
3連投すまねぇ!
とりあえずメンバー一覧と精霊のジョブをあげてみる
アイン(プレストガンナー)
桐華(テンペストダンサー)
イグニス(エンドウィザード)
ラセルタ(プレストガンナー)
ミティス(ライフビショップ)
少なくとも俺と千代は別れてた方がいいかな?
これはあくまでもノクトのやり方を無視しちまう感じになっちまうが
あえてミティスを前衛に置く事でシャイニングアローでのカウンターを誘発させるって事もできるかもしれねぇが…ここはまだ未知数なんでそこはお任せする
今回は範囲もいねぇしメンツは前衛後衛がある程度分かれてればどのような編成でもいいと思うぜ。
2014/04/08-03:38
っとすまんー文字数超過するとは思わなかった
戦闘は基本家の中だから場所によっては狭くて戦いにくい場合もあるよなー…
分かれる前提の話をするのであれば先にメンバー分けをした方がいいと思うぜ
出発日もそれほどないしな
んじゃあ敵の数等はそんな感じでいいかな
リビングデッド確認しだい逃げるって感じもOKだ
脱出経路に関しては玄関でも裏口でも平気な気がするな
玄関は最悪オーガが待ち受けてる可能性もあるが…
窓に関しては開閉できなくても最悪壊すって言う手もあるが
飛び降りれる高さなのかが気になる所だな
後は窓ない部屋は基本真っ暗って明記してあるから懐中電灯は必須だな
2014/04/08-03:38
ノクトのできるだけ戦闘を避けるのが戦いをそもそもしないのかでちょっと判断に迷う所だが…戦わないっていうのは俺は反対だな。
調査の前提で戦闘は免れねぇしそもそもそこで逃げてたら向こうも追いかけてくるだろう
相手次第だろうがやっぱ降りかかる火の粉は払っておくぐらいはしておくべきだと俺は思う
あと山奥だから最悪携帯や通信機が使えないだろうけど
二手に分かれたとき一方が戦闘を開始した時点で銃撃や物音がするだろうから
それを聞き次第向かうってのもいいかもしれねぇな
希望的観測を言えば挟撃できる可能性もあるだろうし
あと、一応分かってると思うがスキルを使う際はトランスしてねぇと使えねぇから注意な
2014/04/08-03:15
俺も今回は無理にオーガ、リビングデッドを追う必要はないと思います。
安全第一に団体行動、撤退基準も承知しました。
次の機会に生かせるよう調査を頑張りたいです。
あとは脱出時の経路ですね…玄関、裏口、それから窓がある部屋から脱出という手もあります。
どの部屋からも行きやすいのは玄関だと思いますが、短絡的でしょうか…?
裏口と窓に関しては、捜索の際に開閉可能か確認しておこうと思います。
2014/04/08-00:31
ん、僕も安全第一に賛成。
基本は団体行動、敵の数に関しては、晃司君や秀君の言ってくれてる基準がいいかなぁ。
リビングデッドかオーガを見かけたら、逃げる、で良いと思う。
昼間なら、廊下とか窓のある部屋ぐらいなら灯りなしでも大丈夫かな。
必要な時にだけ点灯って形で、良いと思う。
2014/04/07-11:26
そうだな……行動指針としちゃ晃司の案でいいと思う。
ゾンビ・亜人は自分達の倍(20体~)、デミ化亜人は自分達より数が多い。(11体~)
オーガと、個人的にはリビングデッドも見かけたら撤退したいところだな。
リビングデッド討伐中にオーガに乱入されでもしたら目も当てられん。
探索だが、基本物音は立てず灯りも可能な限り絞る。
物音と、ゾンビやリビングデッドなら臭いでわからんもんかね……?
ドアを開ける前には中から音がしないか確認した方が良さそうだな。
2014/04/06-20:30
挨拶遅れちゃった。ごめんね。
ノクトだよ、よろしくねっ。
パートナーはライフビジョップのミティスだよー。
といってもまだ使えるのカウンターのスキルだけだからなんとも…うーん?
ぼくとしては戦闘はできるだけ避けたいかなあ。
倒せそうな敵でも、戦ってたら他のが来てー…とかなったら困るし。
探索はみんなで一塊か、二手にわかれるかーだよね。
わかれるなら1階と2階で、かな?
2014/04/06-20:16
俺は安全性重視でいいと思う。
俺たちはまだレベルも低いしやれる事も少ないしな
それに今回は後衛が殆どな状態で無理は禁物だと思う
あとは脱出の経路は確保した方がいいかな?
何か見た感じ窓が少ない家っぽいし
あと共通認識は作っておきたいから早めに作っておくか
基本はこちらよりも数が2倍…敵によってこちらの人員より多かった場合には撤退
あとはリビングデッドを見た時点で逃げるか
それともオーガを確認した時点で撤退かな?
オーガを倒したいって奴は言ってくれれば加勢はするぜ?
俺としてもオーガは憎いからな
2014/04/05-21:34
羽瀬川 千代です、宜しくお願いします。
パートナーのラセルタさんはプレストガンナーで後衛になります。
恐らく昼間の調査になるかと思いますが、山中にある邸ですし早めに調査を終えたいですね。
時間を掛けずに捜索をするなら、6:4に分かれて同じ階を捜索する案が良いと思います。
通信機などを借りておけば、危険な時にすぐ助けにも行けますし。
ただ、廊下で戦闘になった際は乱戦になる可能性が否めませんが…時間か安全か、どちらを取るかですね。
2014/04/05-16:38
はいなお邪魔様ー。カナっていいます。
パートナーは頼れる前衛テンペストダンサー君。
後ろに回る子が多そうな感じだし、働かせてやってちょーだい。
捜索は、廊下は団体で歩きつつ、部屋ごとに6(廊下警戒):4(部屋捜索)に分かれるとか?
広さ的な懸念で、ちょっと人数絞りたいかなって。
そんで、部屋の中で敵に遭遇した際は廊下に出てきた方が立ち回りやすいかなぁって思ってるけど…印象的にどんなもんだろ。
2014/04/05-11:18
初瀬だ、よろしく頼む。
そうだな……捜索の方法、光源なんかの問題、いろいろ話すことは多そうだ。
10人全員で行動は目立ちそうだが……もし分けるなら6:4で、
目の届く範囲(同じ階の別の部屋)を手分けして、がよさそうか?
うちも相方のイグニスがエンドウィザードだからな、後衛の火力担当になると思う
つってもスキルは1発が限度だがな…
恐らく俺が前衛になる予定だ
2014/04/05-04:25
晃司だ。よろしくな!
さて、敵は不確定だから散会行動よりも団体行動の方がいいとは思うんだが
敵の数、どの敵がでたら等の撤退のタイミングも話し合う必要がありそうだな
ちなみにアインはプレストガンナーなんで後衛での射撃になると思う
前衛が必要であれば俺が前にでるぜ

