【例祭】涼やかな調べの夜(真名木風由 マスター) 【難易度:とても簡単】

プロローグ

 フェスタ・ラ・ジェンマ。
 4年に1度の大祭とあれば、スペクルム連邦の全土は祭りに活気づく。
 しかも、今回は女神ジェンマ直々に協力してくださるとのことで、ムーン・アンバー号が祭りの期間の間、ウィンクルムの為に運行する。
 各地の祭は、ウィンクルムだけでなく、皆の記憶に残るのではないか。
 不安要素はあれど、そんな期待が寄せられている。

 『あなた』達は、イベリン王家直轄領へ足を運んでいた。
 王家直轄領ということもあり、この地でも祭が開催されている。
 王立音楽堂が再建されたことで、音楽活動が発展しているこの地だからだろうか、気になるイベントを見つけて、足を運んだのだ。
 それは、『水の音楽会』というもの。
 水辺で行われるらしいこの音楽会は、ライトアップされた噴水があちこちにあるだけでなく、音階を計算し、ひとつの音楽を演奏しているかのような人工の滝が連続していたり、水を使った楽器の演奏会や実際に触れられるコーナーがあるという、水の音楽を楽しむものらしい。
 夏であるし、より涼やかになるのもいいだろう。
 『あなた』達は、静かに祭を楽しむのも悪くないと思ってやってきたのである。

 夜に輝く噴水、滝の音楽、水を使った楽器。
 どれもあまり馴染みがないものだからこそ、心が躍る。

 ふと、パンフレットにこう記されてあることに気づいた。
『休憩所の周囲の池は、ご縁の池。池の水面に自らの音を投げかけ、月が綺麗に揺らめいたら、縁にあなたの音が届いた証拠。これから仲良くしたい人やもっと仲良くしてみたい人がいる人は試してみてね』
 『あなた』は、ちらりとパートナーを見る。
 ……やってみてもいいかもしれない。

解説

●目的
・音楽会を楽しむ

順路は、噴水→滝→演奏会→楽器に触れられるコーナー→池に囲まれた休憩所(奥に水面に音を投げられる場所があります)→噴水となっています。
どこを重点的に見るかはお任せしますが、2つ程度に絞られることをお勧めします。

●時間帯
・夜

大体20時前後から来場しています。

●消費ジェール
・ここに来るまでに夕食を食べたので、500jr消費。

●注意・補足事項
・ウィンクルム以外にも足を運んでいる方がいらっしゃいます。人目がありますので、TPOには十分注意してください。
・祭りの中のイベントとして行われています。これら運行に支障を来たす行為、他の来場者の方にご迷惑が掛かる行為全般は採用出来かねますので、ご了承ください。
・他のウィンクルムとの絡みはほぼありませんが、会場内で見かけた、知っている顔に挨拶したという軽いものがさらっと出る場合もあります。(絶対ではありません)
・精霊に対して恋愛方向で進めたい場合は「1」、友愛・親愛方向で進めたい場合は「2」、これからの展開次第で決める場合は「3」をウィッシュプランで記載いただければ、そのように対応します。

ゲームマスターより

こんにちは、真名木風由です。
今回は、お祭りの一環で開催される、水を利用した音楽会に行くことになります。
ご縁の池はどちらかというと、あまり親密度が高くない方々向けとなっています。
始めたばかりの方や追加精霊と仲良くしたいけれど、既にいる精霊に恋している状態……、だから追加精霊とは友人として仲良くしたいといった方などにお勧めです。
既に精霊と深い絆で結ばれている方のご参加も大歓迎ですので、ご縁の池に向いていないからという遠慮はなさらないで大丈夫です!

賑やかさはありませんが、ゆっくり楽しんできてください。

それでは、お待ちしております。

リザルトノベル

◆アクション・プラン

蒼崎 海十(フィン・ブラーシュ)

  水を使った楽器か
触ってみたい(うずうず
フィンを急かすようにして触れられるコーナーへ
ウォーターフォンだ
効果音を表現するのに良く使われる楽器なんだ
棒を弓で弾いたり、マレットで叩いたり…色んな音が出て面白い
フィン、セッションしよう
別に上手い下手は関係ない
…俺が、フィンの音と合わせてみたいんだ

やっぱりフィンの音は優しい音だと思う

休憩所に移動
ご縁の池…フィンとの縁は結ばれてるって、実感してるし信じてるけど…
もっと…そう望むのって贅沢だろうか
俺が音を投げるなら、やはりそれは歌で
月よ 揺らめけ
願いを込めて歌う

フィンまで歌うなんて不意打ちで
夢の中で聞いたフィンの歌は…切ない思い出
今は…
揺れる月が全て物語ってる



瑪瑙 瑠璃(瑪瑙 珊瑚)
  (イメージとしては、水のオーケストラなのか。
演奏した後でも、楽器に触れられる機会もあるのは嬉しいな)

珊瑚と音楽会にて、席を探す。出来れば一番前の席がいいが……。
小さい子供やご年配の人がいたら席を立って譲ろう。
演奏中は黙って聞いたり、時には目を閉じて集中するように聞く。
微かに聞こえる音色も聞き漏らさないように。

演奏後、珊瑚と楽器の試奏コーナーに行き、触れるか順番を待つ。
(本当に触れられるんだな……)
演奏された楽器を見たり、手で触ったりしながら、感慨深くなる。
「すみません」
少しでいいので演奏していいか尋ねる。

「合わせてみるか?」
周りの目を気にしながらも珊瑚とアンサンブルを奏でる。
(演奏スキル使用)



柳 大樹(クラウディオ)
  周囲に配慮して小声で話す。

滝:
「へえ、見事なもんだね」(滝を眺め、耳を澄ます
ちゃんと音楽に聞こえる。手間かかってるなあ。
滝の高さとか、計算めんどそう。

「まあ、それなりに好きかな」(クラウを一瞥
それ専用に突き詰めて洗練されたものって、惹かれるし。
それで言えば、「任務に真面目過ぎるあんたの姿勢は好きな部類だよ」
「面白くはないけど」

他の滝も聴いてみよう、っと。

演奏会:
滝とはまた違った感じ。
結局は水だからかな。涼し気に聴こえる。

「クロちゃんて趣味とかあるの?」
「それ、たぶん趣味じゃない」日課だよ。(呆れ

なんとなく聞いただけだし、無いならいいや。
(俺も、少しは慣れたのかな)(隣を一瞥し、小さく息を漏らす



安宅 つぶら(カラヴィンカ・シン)
  カーラと出かけるのとか初めてじゃない?
大丈夫かなこのちびすけ…

色々見ていくけど、まずは噴水で行こっかねェ!
夜の噴水ってやっぱりムード増すよねェ
ライトアップの光が噴水の水でもっときらきらする感じ、カッコいいな
背景が暗い夜空っていうのも…あーはいはいダメ出し入りました!
虫も殺さないような顔から容赦なく毒舌が出るのホント慣れないわ無理だわー…

で、色々回って池へ、と
つぶらサンどれも面白かったんだけど、つぶらサンが感動する傍からカーラがその感動を抉ってくせいで正直疲れるわ…
えあ?どこに立てって?ここ?違う?…っておわああぁっ!?
(池にダイブでも、踏み止まっても可)
濡れ透け演出でもご希望だったかちびすけ?



スコット・アラガキ(イナフナイフ)
  彼に仲良くしろって言われなきゃ断った
俺の精霊は一人だけなのに
「そんなことないよ?」いけない、ちゃんと笑わないと

ずっと視線を感じてた
演奏に集中なんてできるわけない
こいつの眼は苦手だ
見つめられると胸がざわざわする

「あはっ。ざまァ見ろ」
隙を突いて逃げた先は休憩所
静けさに徐々に気分が冷えていく

ひとりはいやだ
ミストに会いたい
寂しさで気が狂う

ああもう誰でもいいから…
「たすけて」

「…うん。音に酔ったみたい」
何をほっとしてるんだ
彼と俺の時間を奪う邪魔者だぞ

「先に帰っていいよ。少し休めば治ると思う」
俺を見るな
ひ、ひとりに(して)(しないで)(どっち…)

「優しいんだね」
いらいらする…
こいつにも、安心してる自分にも



●最初の1歩?
(カーラと出かけるのとか初めてじゃない?)
 安宅 つぶらは心の中で呟き、カラヴィンカ・シンを見た。
 しかし、(大丈夫かなこのちびすけ……)と思ってしまう辺りにつぶらのカラヴィンカ評が垣間見える。
「どれ、世間のセンスがわしにどれ程追いつけたか見てみるか」
 尊大としか思えない言葉。
 曰く、自分は演出家であるが自分を理解出来ない世間から退いてやったそうだが、どこまで本当なのかつぶらに確かめる術はない。
 何しろ、カラヴィンカの外見は7歳程度の少年でしかない。
 7歳の少年が何故そう言えるのか───カラヴィンカ自身がこうした理由だと言ったとしても過去のその瞬間を見なければ、つぶらにはそれが本当かどうかも判らない。
「順路通りだと、まずは噴水がお出迎えってねェ!」
 つぶらの目に映るのは、両脇に並ぶ噴水の壁。
 ライトアップされた噴水が夜に浮かび上がる様は、やはりムードが───
「……ハッ」
 隣のカラヴィンカが、嘲笑した。
 つぶらサンテンション下がってきたよー?
 噴水を抜けていくと、今度は音階を計算し、ひとつの音楽になっている人工の滝が連続している。
「本当に音楽みたいだなァ。さっきの噴水もライトアップの光と水がきらきらする感じがカッコいいと思ったけど」
「道化のような者がおれば、才能のない小僧共も少ない脳みそでどうにかなる」
 カラヴィンカにつぶらは負けず、言葉を続ける。
「背景が暗い夜道って言うのも……」
「幾つか仕組みは考えつくが、特段真新しくもない演出だな。王道という奴だよ。今更驚きには値しないな」
「あーはいはいダメ出し入りました!」
「耳が遠いようだな。わしは驚きに値せんと事実を言っただけだ」
 つぶらにカラヴィンカがそう返す。
 特に評価すべきものもないと歩調を速めれば───
「虫も殺さないような顔から容赦なく毒が出るのホント慣れないわ無理だわー……」
 背後からは、つぶらの嘆きが聞こえてきた。

 演奏会で演奏を聴いた後、2人は休憩所へやってきた。
「つぶらサンが感動する傍からカーラがその感動を抉ってくせいで正直疲れるわ……」
「道化、わしは楽器そのものを侮辱しておらんが」
 疲れているつぶらへカラヴィンカがさらりと返す。
 曰く、楽器は演出の為にあるものの、職人や演奏者の拘りひとつ理解出来ぬ者の演出などたかが知れているらしく、自分は寛大だから寧ろ小細工のない演奏会は評価してやってもいいそうだ。
(高慢レベルハイスコア)
 つぶらが一層の疲労を感じている隣では、カラヴィンカは眉ひとつ変えず池の中の休憩所の評価に忙しい。
「水面に映る月と共に恋人同士が画面に入れば砂を吐いて咽そうな構図だな!」
「恋人だけ来てる訳じゃなさそうだけどねェ。そのご縁の池だって、恋愛の縁だけが縁じゃないって書いてあるし」
「賢しげにわしに意見……おい、道化、あそこに立ってみろ」
 カラヴィンカから池が背景になるように指を指され、つぶらは不可解そうな顔をしつつ休憩所の壁がない部分に立つ。
「違うもっと左……1歩下がれ」
「ここ?違う?」
「違う! 行き過ぎだ戻れ!」
「もっと具体……っておわああぁっ!?」
 苛々するカラヴィンカに不服を言おうとして、つぶらはバランスを崩す。
 が、池に落ちては他の来場者に迷惑が掛かる。
 ただでさえ、カラヴィンカで迷惑を掛けているのだからとつぶらは根性で踏み止まった。
「濡れ透け演出でもご希望だったかちびすけ?」
「阿呆か、それなら生放送で事故を起こす方がまだ価値がある」
 バランスを崩したつぶらを気遣う所か呆れ果てて見送っていたカラヴィンカにそう言うもカラヴィンカは偉そうにそう言い放つ。
「わしの演出美がまだ理解できんようだな……」
 自身が天才過ぎる、早過ぎる天才と自画自賛しているカラヴィンカを見て、つぶらは思った。
(天災の間違いだよねェ)
 彼が口にする言葉はどこまで本当のものなのか。
 確かめる術がないつぶらは、今はただ振り回されるしかないのだ。

●始まりの歌
 スコット・アラガキの隣には、イナフナイフがいる。
 今日は、ナイフに誘われてここへやってきた。
「浮かない顔ですね。僕とじゃ不満ですか?」
「そんなことないよ?」
 ナイフの言葉を否定するようにスコットは笑顔を浮かべる。

 いけない。
 ちゃんと笑わないと。
 だって───仲良くしろよって言われたから。

(俺の精霊は、たった1人だけなのに)
 なのに。
 どうして、どうして、隣にこいつがいるんだ。
(笑わないと)
 『彼』は仲良くしろと言った。
 だから、断らずにここへ来たけれど───
(何故、俺を見る……)
 その瞳は、まるで鏡のように静謐で、何もない。
 まるで、自分の本心を暴くかのように。
 演奏会の調べなど頭に入ってこない。
 ナイフは演奏会の最中であってもこちらを時折見る。
 感情が見えない視線を感じて、集中することなど出来ない。
(こいつの眼は苦手だ)
 見つめられると胸がざわざわする。
「あはっ。ざまァ見ろ」
 ナイフが少し目を離した隙にスコットは彼を置いて先へ進もうとする。
 その時、楽器の音色が耳に残るように響く。
 嗜める『彼』の『声』のように。

 ざわり。

 浮き上がった気持ちを氷水の中に突き落とされたような感覚。
 池に囲まれた休憩所を通り過ぎることなく、腰を落ち着かせると、奥で多少賑やかなやり取り(言うまでもなくつぶらとカラヴィンカだが)が他人事に思える位彼の中では静かで、それ故に嗜める『彼』の声のような音が鳴り止まない。

 『彼』は、ここにいない。

『黙っていれば男前なんだから、黙ってろ』
『でも喋らなくちゃ仲良くなれないよ?』

 『彼』が、ここにはいない。

 それを頭以上に感覚で認識し───スコットは、寒くないのに寒い身体を抱きしめ震えた。

「逃げられてもた」
 舌をペロッと出したナイフは、スコットが姿を消したこと自体は疑問に思わなかった。
『いい演奏でしたね。心が洗われました。水だけに』
『そうだね』
『楽器体験ですって。寄ってきましょうよ』
『うん』
 スコットは笑ってはいるが、強い興味を覚える自分とは違うというのはこのやり取りだけでも判る。
 袖を引いて連れて行ったが、ほんの少し夢中になった隙を見たのだろう。
 どこに行ったのだろうか。
 先に行ったとは思うが───
 周囲を見回し捜すが、どこか浮世離れした大きな子供はどこにも見当たらない。

 独りはいやだ
 ───会いたい、どこにいるの?

 『声』が、聞こえたような気がした。
 自分ではない『彼』がいない寂しさに怯えているかのような『声』が。
(精霊の勘ですかね)
 ナイフは自分でも気づかない間に歩調を速め、やがて、『声』の主以外は見えないかのように走り出す。

 た す け て

「こちらにいたんですか。置き去りにされたかと思いました」
 スコットが顔を上げた時、目の前にはナイフがいた。
 息こそ弾んでないが、ナイフの髪が少し乱れているような気がする。
「凄い汗。気分でも悪いんですか?」
「……うん。音に酔ったみたい、だから」
 何気ない様子のナイフに問われ、スコットはそう返す。
 同時に、自身へ苛立った。
 安堵していると自覚したからだ。
 目の前のこいつがいるから、『彼』と俺の時間は奪われるのに。
 『邪魔者』でしかないのに。
「先に帰っていいよ。少し休めば治るから」
「病人を放っておけませんよ」
 スコットにそう言ってナイフは隣に座った。
「優しいんだね」
 それだけ言って、スコットは黙る。

 俺を見るな。そっとしておいてくれ。

 独りにしないで。

 誰でもいい?
 そうじゃない?

 解らない、解らない!!
 『音』が鳴り止まない!!

 その時だ。
 スコットの隣から、口笛が聞こえてきた。
 ナイフが奏でているのだ。
 巧いかどうかとか奏でている歌は何かなんてスコットには判らない。
(苛々する)
 が、スコットは何も言わず耳を傾ける。

 こいつは苛立つ。
 俺自身にも苛立つ。

 『音』が止んで、安心しているなど!

 ナイフの口笛が演奏会で聴いた恋の歌であることすら───今のスコットには判らない。
 だが。
 ここから、彼らは始まる。

●重なる──
 瑪瑙 瑠璃と瑪瑙 珊瑚は、演奏会の席を探して歩いていた。
 噴水も人工の滝も見事なものだったが、水を使った楽器での演奏会に興味があったのだ。
 有名な所で言えばグラスハープかもしれないが、カンリンバと呼ばれるものもあるとか。水を直接打つ水太鼓といったものもあるらしいが、氷を直接打つものや水の落下音を利用したものもあるらしい。
 瑠璃が想像した水のオーケストラとは、少し違う楽器での演奏会であるようだ。
「オレ、聞くより演奏する方が好きやさー」
「俺も」
 演奏会の後は是非、体験……出来れば2人でセッションしたいものだ。
 珊瑚の言葉に頷き、瑠璃は見つけた席へ腰を下ろす。
 理想は1番前だったが、フェスタ・ラ・ジェンマだけあり大勢の人が訪れている。
 ウィンクルムの為だけに開催されているイベントではない為、他にも来場者はおり、自分達だけが演奏会を独占している訳でもない。
 子供や年配の者がいれば譲るつもりではあるが、座ることが出来たから、それでよしとするか。
 瑠璃と珊瑚がそう顔を見合わせると、ちょうど時間が来て演奏会が始まった。

 コップに水が入ったグラスハープはそれぞれのコップの水の量を調整することで音階を調節し、音楽を奏でている。
 水に腰まで浸かった演奏者達が水面を叩き、それが意外に音楽になり、グラスハープの音とは異なる力強い音を奏でる。
 氷を叩いて音とするものもあったが、1番目を引いたのは、カンリンバ。
 こちらも流水音を利用した楽器であるが、水の量や水を入れている『モノ』の材質を変えることで音を調整している。
 素朴な音であるのに、水が流れる音は時に情景が頭に思い浮かぶ。
 元々、水の音に耳を傾けることで水に苦しむ人々を想い、水が生命の存在であると心で感じようという趣旨で生み出された楽器だそうだから、様々な情景が思い浮かぶのは当然のことかもしれない。

「くりや沢山ぬ人んかい触れてほしい楽器ぐゎーやさ(これは沢山の人に触れてほしい楽器だな)」
「ああ。皆それぞれ奏でてほしい。それも音楽だよな」
 珊瑚に瑠璃も頷く。
 音を合わせよう……それも音楽だろうが、この楽器はそういう目的で生み出されていない。
 自分達がずっとそこで奏でるより、より多くの人に触れて貰い、その音を共有することが大事だ。
 だからこそ、触れられるコーナーという設置なのだろう。
 演奏して欲しくて、設置されたのではなく、触れてその音を感じてほしい。その感じたことを大切にして欲しい。
 楽器を奏でるからこそ、彼らは楽器が本来の意味で用いられる喜びを知っている。
 瑠璃も珊瑚も目を閉じ、そっと手を繋ぐ。
 グラスハープの響く音も水面を叩く力強い音も軽やかに響く氷の音も───全て、流れゆく音のカンリンバへ行き着いていく。

 演奏会も終わり、実際に触れられるコーナーへと移動した。
 触れるのはグラスハープとカンリンバの2種だそうで、大勢の人が試しに奏でてみたいと係員から教わりながら音を出してみる。
「やっぱ実際触ると違うな!」
「ああ。水の量だけで音が違う。分かってたつもりだが、こうして並べられると改めて実感する」
 人前とあり標準語に切り替えて話す珊瑚に応じ、瑠璃もグラスハープを叩いてみる。
 聴くのもいい。
 けれど、やはり触れて奏でてみると、心が躍る。
 瑠璃も珊瑚も楽しみにしていただけあり、演奏会と同じ配置のグラスハープを奏でてみる。
「流石に水太鼓とか氷のは無理だろうなぁ」
「水太鼓は水に浸かるの前提だし、氷も演奏用以外の確保は難しそうだからな」
 それが残念と言う珊瑚に瑠璃は軽く肩を竦める。
 けれど、2人にとってはカンリンバが本命でもあった。
「……近くで聞くと、素朴な中に優しさがあるな」
「瑠璃のは春の雪解け水みたいな音だな」
「珊瑚のは?」
「海の細波みたいな音」
 互いのカンリンバを奏で、流れる水の音楽に耳を傾ける。
 音は重ねずとも、水の音は日々を重ねてくれる。
 この重なりが、強い絆を生みますように。

●互いの音
「ウォーターフォン以外にも結構あって驚いた」
 演奏会も終わり、今度は実際に触れてみたいと思う蒼崎 海十は、フィン・ブラーシュを急かすように歩く。
 ウォーターフォンも水を使用する楽器で、演奏方法の多彩さから色々な音を出すことが可能で効果音作成にも使われる。
 そうした話をする海十は、活き活きしてるとフィンは思う。
「何だよ、人の顔を見てニヤニヤして」
「活き活きしてる海十が可愛いと思って」
「……家で、言おう」
 止せではなく、家でという辺りに海十の譲歩が見える。
 演奏会の楽器にウォーターフォンはなく、これから向かうコーナーでもグラスハープとカンリンバの2種類のみ触れられるらしいが。
「カンリンバは、興味深いと思った。初めて見たし聞いたし」
「構造は単純でも、そこに想いを込めて生み出された楽器なら……いい音を奏で続けてほしい」
 そう話す海十の顔は、やっぱり綺麗で。
 フィンはさっきまで微笑ましく思っていた彼の横顔を眩しそうに見つめた。

 海十がフィンを急かしたこともあり、演奏会が終わって比較的早くコーナーへと移動し、楽器に触れられることが出来た。
「何か、水門が開いて乾いた土の上に恵みを齎す……みたいな光景が頭に浮かぶかな」
「こっちは、井戸に水が落ちる感じの音」
 フィンがカンリンバを奏でながらそう言うと、隣の海十もカンリンバの音に耳を傾けて自分が感じたイメージを伝えてみる。
 交換して音を奏でてみると、お互いの感想に納得しながらも自分が感じた感想を口にしてみたり。
「感性に影響される楽器かも」
「水の音でイメージする情景も人によって違うよね」
「それがこの楽器の可能性でもあります。大切にしていただき、普段から水について考えていただければと」
 海十とフィンの会話に係員が微笑む。
 こうした楽器が多くの人の心の音に感銘を与えられたら……きっと、世界はもっと優しくなるのでは。
 そんなことを思った。

 カンリンバを奏でた後、グラスハープのコーナーへ移動。
 こちらはコップに入った水の量で音を調整している為、カンリンバよりも音階がある。
「時間があればセッションしたいけど……人が多いから、止めておこう。フィンの音と合わせたかったけど」
「機会ならこれから幾らでもあるよ。海十が俺を離さなければ、俺はずっと海十の傍にいるんだし」
「ずっと一緒なら、これからもあるだろうし、いいか」
 直後、海十は、フィンの反応で自分が言った意味がどういう意味かに気づいて顔を赤くした。

 休憩所へ移動すると、ご縁の池の案内に気づいた。
 カップルが試すことも多いらしいが、仕事関係の縁などを求めて試す者もいるらしい。
(俺は……実感してるし、信じてるけど)
 海十はフィンの顔をちらっと見る。
 縁があるからこそ、今があり、フィンが隣にいる───でも、もっとフィンとの縁を望みたくて。
(贅沢だろうけど)
 海十が試すことが出来る場所へ膝を着くと、水面に歌って歌い始めた。

 『あの時』解き放った歌と同じ歌を。

(最近、俺は試練を受けている)
 フィンは、そう思っている。
 海十が水面に向かってその歌を歌う意味は───自分をより望んでくれるから。
 彼が音を投げるなら、それは歌。
 力強くて心地よい彼そのものの……ずっと包まれていたいと思う。

(月よ、揺らめけ)
 願いを込めて歌う歌……脳裏に過ぎったのは、あの『夢』のこと。
 海十の歌を受けて月が揺らめいた時、海十の隣にフィンが膝を着く。
(フィン……?)
 けれど、フィンはあの時と同じように歌い始めた。

 出会いに意味があるならば
 共に往く、共に生きる

 愛してる

 歌う直前の言葉も解き放った歌も全てこの胸の中にある。
 切ない想い出を呼び起こすフィンの歌声は、不意打ち。
(フィンの『音』は、優しい)
 技術なんていい、フィンと一緒がいい。
 昔があるから、今がある。
 互いの為だけの音は……揺れる月が全て物語っていて。
 水面に揺れる月がとても綺麗だから、一緒に歌って帰ろう。

●いつか解る日を願う
「へえ、見事なもんだね」
 柳 大樹は音階が計算された人工の滝を眺め、耳を澄ます。
「こういったものを好むのか?」
 クラウディオが大樹に尋ねると、「まあ、それなりに好きかな」と大樹は彼を一瞥して返した。
 尚、2人の会話は、周囲に配慮をした声音だ。
 ちゃんと音楽に聞こえるよう手間をかけた滝ならば、人の話し声で邪魔されたりしないように聞いてほしいというのを大樹が予めクラウディオに言ったからだ。
 パンフレットの写真や実際に目視して、歩行に影響が出ないことを確認していたクラウディオは相変わらずと言えばそうだが、大樹の声に合わせて声のトーンを調節してくれている。
「それ専用に突き詰めて洗練されたものって、惹かれるし」
 滝の高さとかの計算面倒そうと呟く大樹は、滝から自分へ視線を移したクラウディオが「それ専用……」と小さく呟いて、ひとつ瞬きをした。
「任務に真面目過ぎるあんたの姿勢は好きな部類だよ。面白くはないけど」
「そうか」
 クラウディオは大樹の評価を淡々と受け入れる。
 先程、拾われ、任務の為だけに育てられた過去を感慨もなく思い出し、すぐさま意識を切り替えたのだが、大樹は単純ではなく難しい。
(私は任務を行えばいい)
 他の滝を聴いてみようと歩く大樹を見ながら、クラウディオは心の中で呟いた。

 滝が終わると、開けた場所となった。
 ここが、水を使った楽器による演奏会を行う場所なのだろう。
「先程の滝もだが、水で演奏が出来るのか」
「さっきだって、音違ったでしょ。音の違いを聞き分けるのだって大事じゃないの?」
「任務では命取りだな」
「そういう意味じゃないけど」
 クラウディオの言葉に大樹が溜め息をつく。
(大樹は難しい)
 クラウディオがそう思っていると、演奏会が始まった。
「滝とはまた違った感じ。でも、どちらも水だからかな。涼しげだよね」
 大樹の感想はクラウディオにはよく分からないものだったが、大樹にとってはいいものなのだろう。
 ならば、それはそれで大事にすべきものだ。
「楽器に触れることも出来る場所があるらしいね。好きな人は実際触ってみたいだろうし」
「そういうものか」
「そういうもの。……クロちゃんって趣味とかあるの?」
 大樹がクラウディオに話を向けてみる。
 何か趣味があれば、その趣味に例えて説明すれば伝わり易いのではないかと思ったのだが。
「『趣味』……確か、好んで自発的に行うことだったな」
 クラウディオはそう言うと、「好んでいるかは不明だが」と前置いてから、訓練と答えてきた。
 『趣味』に関する見解の時点で嫌な予感がしていた大樹は、ある種予想通りの答えに呆れるしかない。
「それ、多分趣味じゃない」
「自発的に行っているが」
「日課だよ」
「どう違う?」
 クラウディオは、ガチで分かっていない様子だ。
 この様子からして、趣味はないと思った方がいいだろう。
 いや、趣味を考えたことなんてないかもしれない。
「何となく聞いただけだし、ないならいいや」
 大樹は会話をそう切り上げ、新しく始まった音楽に耳を傾け始める。
 暫くクラウディオは大樹を見ていたが、倣うように演奏者へ顔を向けた。
 視線だけ少し動かし、クラウディオを見る。
(俺も、少しは慣れたのかな)
 そうでなければ、任務以外にも目を向ければ、とか、お守り作ろうとか思わないし、貰ったお守りを財布にも入れない。
(面白くはないけど、嫌いじゃないよ)
 くそ真面目でむかつく時もあるけど、気に入っている所でもあるから。
 だが、人の心は単純ではないから、大樹は小さく息を漏らすのだ。

 漏らした吐息はクラウディオの耳に届く。
 話題に興味をなくして演奏に集中している大樹が何を思っているかクラウディオにはよく解らない。
(解らずとも、大樹が楽しめるならいい)
 心の中で呟いた彼は、懐にあるお守りに何となく触れる。
 貰った時、心なしか騒いだことを思い出し、『あれ』が解れば、大樹の問いに答えられるような気がした。

 涼やかな調べは、やがて未来を奏でる。



依頼結果:成功
MVP
名前:柳 大樹
呼び名:大樹
  名前:クラウディオ
呼び名:クラウ、クロちゃん

 

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター 真名木風由
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 男性のみ
エピソードジャンル イベント
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 とても簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 5 / 2 ~ 5
報酬 なし
リリース日 08月20日
出発日 08月26日 00:00
予定納品日 09月05日

参加者

会議室

  • [14]瑪瑙 瑠璃

    2015/08/25-21:53 

    つぶらさん、イナフナイフさんは初めまして。
    挨拶が遅れましたが、瑪瑙瑠璃と相方の珊瑚です。
    どうぞよろしくお願いします。

    音を投げるというのは、自分も他の皆さんと同じ意見です。
    池に向かって音を奏でる、自分の声を発する、すると、月が水面に揺れる……そう考えています。

    珊瑚:
    尻太鼓は、わからねぇけど面白そうだな。
    やってもいいけど、周りの目(特に親子連れ)に気を付けろよー。

    瑠璃:
    自分達は音楽会と、その後に楽器に触れるコーナーという所へ行く予定です。
    皆さんがどこをメインに楽しむかわかりませんが、明日はお互い楽しみましょう。

  • [13]瑪瑙 瑠璃

    2015/08/25-21:44 

  • [12]蒼崎 海十

    2015/08/25-21:32 

  • [11]蒼崎 海十

    2015/08/25-21:32 

    尻太鼓…(斬新だなと思っている)

    フィン:
    海十、そこ、笑うとこだから!(ツッコミ)

    俺達もプラン提出済だよ。
    良い一時になりますように!

  • [10]安宅 つぶら

    2015/08/25-21:21 

    …揺れるんじゃない? 多分?(目逸らし)
    だいじょーぶ、つぶらサン多分もっとドイヒーな目に遭ってる予定だから…あんにゃろう。
    いなちんも上手くいくといいね!

    皆が素敵な時間を過ごせますよーにっ

  • [9]スコット・アラガキ

    2015/08/25-17:25 

    イナフナイフ:
    楽器という手もあるのですね。尻太鼓でも揺れるんかな…。

    つぶらん、試してみませんか。
    ジェンマさんに張っ倒されそうなので僕はやりません(きりっ)

    プランは提出済みです。
    ご縁の池に向かわれる方は、水面の月が応えてくれるといいですね。

  • [8]安宅 つぶら

    2015/08/25-01:59 

    >答えてくれた皆
    ありがとう助かったよ!
    イナフナイフは何となく今後いなちんて呼んでみたいかなーってのは置いといて。
    そうだね、声じゃなくて普通に音楽とかでもいいのかも!
    色々考えてみるよー!

  • [7]蒼崎 海十

    2015/08/25-00:36 

  • [6]蒼崎 海十

    2015/08/25-00:35 

    蒼崎海十です。パートナーはフィン。
    皆様、宜しくお願い致します!

    俺も『音を投げる』のイメージ、皆さんと同じような認識でした。
    声だったり楽器の音色だったり…『音』で水面の月を揺らすのかなって…。
    どんな音がどんな波紋を描くのか、楽しみです。

  • [5]柳 大樹

    2015/08/24-22:22 

    柳大樹でーす。よろしくー。
    水の音楽会ね。なかなか楽しそう。

    >音を投げる
    俺も大体イナフナイフさんと同じ認識だった。
    『月が綺麗に揺らめいたら』とかあるし。
    物投げたら綺麗には揺らめかないんじゃないかなあ、と。

  • [4]スコット・アラガキ

    2015/08/23-21:31 

    イナフナイフ:
    石版がどーたらでアラガキさんちの子になりました、新人のイナフナイフです。
    長いのでナイフやらいなちんやらええように呼んだってください。
    アイコンがアラガキさんなのは技術的なぷろぶれむです。たぶん。

    水辺の音楽会。さぞ涼しげな調べを聴けるのでしょうね。今からわくわくなのです。
    アラガキさん、気に入ってくれるといいんですけど。

    >音を投げる
    演奏会が主題目のイベントですし、手を叩くやら歌うやら、じゃないですかね?
    こう、水面に向かって音を発するイメージでした。
    つぶらさんの言うように「言葉を投げる」のもありな気がします。声も音ですもんね。

  • [3]安宅 つぶら

    2015/08/23-03:01 

    音…縁…もしかして言葉とかって意味かねェ…?

  • [2]安宅 つぶら

    2015/08/23-02:58 

    新人ウィンクルムの片割れつぶらサンだよ!
    相方との初めてのイベントに不安しか…いやいや楽しんでみせる!

    でね、ちょっと皆に聞きたいんだけど…池で「音を投げる」って、つまり何をどうすればいいのかギモンに思っちゃって。
    文字通り音の鳴る物を池にブン投げる…のは流石に違う気がしてちょっと困ってる所なんだよ。
    こういう場所だし、あんまり的外れな事して誰かに迷惑かけちゃうのもアレだしさ。
    よろしくお願いしまァす!

  • [1]瑪瑙 瑠璃

    2015/08/23-00:35 


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