冷たい幸せの前の嵐(真名木風由 マスター) 【難易度:簡単】

プロローグ

 『あなた』達は、思った以上に盛況の催事場で目を瞬かせた。
 今日は、休日。
 何気なく見たデパートの広告に、かき氷の限定販売があるのを見、やってきたのだ。
 氷は冬に切り出され、夏まで保存される特別なものだそうで、職人の技もあってキーンとならないふわふわさが魅力だそうで、シロップだけでなく、練乳やフルーツなどのトッピングも拘り抜いているらしい。
 夏の暑さもあって、ここへ来たのだが、考えていることは皆同じらしい。
 少し待つかもしれないが、さて、どのかき氷にしようか。
 同じものにするか、別のものにして味をシェアし合うか。いや、それとも好きなものなのだし、思い切り食べる為に独占か。
 色々思惑はあったが、次の瞬間、試練が与えられる。
「おかあさあああああん」
 子供だ。
 涙する子供が『あなた』達にしがみついている。
 周囲を見回すが、母親らしき姿は見えない。
 催事場は広く、人も出ているから迷子になったというのは説明されるまでもなく理解出来るが……。
 とは言え、子供を振り解いてかき氷を楽しむというのも気が引ける。
 過剰に接し過ぎても誘拐と間違われるかもしれないと迷子センターを探そうとするが、泣く子供は言うことを聞かない。
 最終的に迷子センターへ連れて行くにしても宥める必要はあるだろう。
 1番いいのは、この騒ぎを聞きつけて親が飛んでくることだとは思うが、ひとまず、この子供はどうしようか。
 『あなた』達は、顔を見合わせた。

解説

●目的
・泣いている子供を宥める
・かき氷を楽しむ

男女4歳までの子がそれぞれ迷子です。(男女いずれかはランダムで決定されます)
子供を宥めている間に親が来ることもありますし、迷子センターへ連れて行くこともありますが、基本的に親を見つけることではなく、子供を宥めることが主体となります。
どのような形であっても、親が最終的に登場し、子供は無事に帰れますのでご安心ください。
子供を宥めた後、かき氷を楽しむこととなります。

●かき氷(人気商品より抜粋)
イチゴ 400jr
果実ぎっしりの濃厚なシロップにフリーズドライのイチゴとマシュマロがトッピングされています。
メロン 400jr
メロンをミキサーに掛けてたものをふわふわのかき氷の中に隠し、その上からシロップが掛けられてあります。
マンゴー 400jr
ミルク氷にやや粘度高めのマンゴーシロップを掛け、マンゴーとバニラアイスがトッピングされています。
抹茶あずき 500jr
和三盆糖で作られたシロップに甘さ控えめの小豆と白玉、氷の中には栗の甘露煮が入っています。
キャラメル 300jr
ミルク氷に甘さを抑えたキャラメルソースが掛けられています。

他にも色々あるようです。(300jr~500jrの範囲です)
※好みを書いた上でお任せ指定いただければ対応しますが、ジェール消費はこちらの任意となります。

●注意・補足事項
・子供は離れないので、宥めるのは確実となります。
・個別・グループ共にOK。グループの場合は共通タグを明記してください。
ただし、グループになった場合、その組の数の子供が迷子として登場しますので、負担はそこまで変わりません。
・別行動のウィンクルムとの接触はありません。
・ここまで来て食べずに帰るのは悲劇なので、食べて帰りましょう。

ゲームマスターより

こんにちは、真名木風由です。
今回は、夏らしくかき氷を楽しむ前に広い催事場にはよくある光景に遭遇していただきます。
子供が好きな人もそうでない人も宥めるのが得意な人もそうでない人も頑張ってください。
宥め方も決まりきったことはありませんので、子供が泣き止むようにしましょう。
間違っても、ますます泣き出すようなことはなさらないでくださいね。

それでは、お待ちしております。

リザルトノベル

◆アクション・プラン

羽瀬川 千代(ラセルタ=ブラドッツ)

  迷子、かな?勿論放っておけないよ

視線を合わせて優しく頭を撫でる
どうしたの?寂しくなっちゃったのかな
相槌打ち、落ち着いて貰えるまで粘り強く笑顔で対応

内緒なんだけれど、と手袋外し紋様を見せ
お兄ちゃん達はね…ウィンクルムなんだ
一緒にお母さんを探そう。頑張れるかな?
再会叶ったら背中を最後まで見送る

安心したら、何だかお腹が空いてきて
トッピング盛り沢山の極甘かき氷をお任せで注文
甘くて、口の中で溶ける優しい食感。美味しい!
途中で取り替えて味を交換しようか

さっきのラセルタさんは、なんだかお父さんって感じだったね
悪い意味じゃないよ!頼り甲斐があって、実は面倒見も良くって
俺もそんな風に頼って貰えるようになりたいな



アキ・セイジ(ヴェルトール・ランス)
  親が居なくなる寂しさは分かるので、何とかしたいと痛切に思う

迷子のお子さんが居ますよ、お母様何所ですか?と声を上げる
子供が不安がるといけないので、すぐやめて子供の横にしゃがむ

横から顔を覗き込む
手の中にテールチャームを隠して目の前に出し
ポンと手を開けてふわふわの毛玉を見せて一寸だけ虚を突く
ビックリして瞬間で泣くのが止まるか弱まったところで
「おかあさん一緒に探そう?」と優しく宥める
「強いな。泣かなずに探せるかな?」
アッタマールをひょこひょこ動かして声色作って
「大丈夫、すぐ見付かるがあがあ」
寂しそうなら貸してあげる

●カキ氷
マンゴー
母親の居ない自分は一寸切ない
ランスの悪戯に内心感謝
「アイスあげるよ」乗せ



セイリュー・グラシア(ラキア・ジェイドバイン)
  迷子かぁ。人が多いし、誘惑される品物が沢山あるからな!
ラキアと同じようにかがんで子供と目線を合わせるぜ。
雪だるステッキをコミカルに動かして、子供の興味を引く。「おいしくて冷たいかき氷、一緒に食べようか」
ここではぐれたならここで保護者捜した方がいいかも。
人が多いとアナウンスも良く聞こえないじゃん。
迷子の親って子供を見失ったあたりで青くなって捜すものなんだぜ。
「ラキアばかり可愛いのはズルイゾ」と俺もパペットを出す。楽しくおしゃべりしている間に親御さんを視線で捜すぜ。きっと名前呼んで捜してる。
見付けたら、かき氷を一緒に食べよ?

オレはマンゴーがいいな。
太陽の果物!バニラアイスもあって豪華だし!ウマー!



蒼崎 海十(フィン・ブラーシュ)
  お母さんと逸れちゃったのか
まずは何とか泣き止んで貰って、話を聞かないと
フィン、そのままで居てくれるか?
てぶくろ「ネコマタ」を着用し、フィンの背中の後ろに隠れ、手袋だけ見せ会話

にゃーは猫なんだにゃん
名前は…カイトにゃん
あなたの名前を教えてにゃん

どうして泣いてるにゃん?
カイトが力になるにゃん!

フィンの後ろからひょこっと顔を出して笑い掛ける

カイトと友達になろう…にゃん!

てぶくろ「ネコマタ」で握手
お母さんを探そう

無事お母さんが見つかったら手袋を外しかき氷にありつく

…手袋のせいだから(語尾にゃんの件
小さい頃さ、俺が泣いてたら…幼馴染がぬいぐるみを使って慰めてくれたの思い出して咄嗟に

今はフィンが居ればいい



セラフィム・ロイス(トキワ)
  特別のカキ氷?特別美味しいならきっと喜ぶ

いく。待ってタイガに連絡…あ、そうだ
そうだね戻ったつもりで楽しもうか


!?お母さん?僕が?いや迷子かどうしよう
(声、出さなきゃ。「この子のご両親いませんか」って
でも道の真ん中でそんな注目を浴びてしまう)

う、うん、こっちだ。トキワ手馴れてるね?
赤面)そんなことない!礼儀正しかったし大人しかったし(暗くて無口で…)
え…?
(でも懐かしいな。たまにしか会えなかったけどその度に嬉しくて)

お母さんに会えてよかったね
!トキワまって


勝手に買わないで(息切れ)…もらうけど
うん、美味しいよ。氷もほどけて苺の果肉もあって濃厚だ
そう?意識してなかったんだけど昔はそうだったのかな


●昔と今
「催事場で特別なかき氷売ってるんだと。久々に一緒に行かねぇか」
「特別なかき氷?」
 トキワに誘われたセラフィム・ロイスが目を瞬かせると、トキワがデパートの広告を見せた。
 期間限定で、豪華なかき氷が色々楽しめるという催事をやっているらしい。
(特別美味しいならきっと喜ぶ)
 頭に過ぎるのは、美味しいと喜んで食べる太陽のような笑顔。
「行く。ちょっと待って」
「虎坊主は今日はバイトだろ」
 セラフィムが携帯電話を取り出そうとすると、トキワは読んでいたらしく、そう告げた。
 そういえば、そうだった。
「ま、出来た縁だし、再会も久々……今日は2人で楽しもう。……な?」
「そうだね。戻ったつもりで楽しもうか」
 そんな会話を交わして、ここへやってきたのだが。

 迷子。
 激しく泣いている迷子が、セラフィムの足にしがみついている。

「!? お母さん? 僕が? いや、迷子か……どうしよう」
 軽く混乱したセラフィムは、この子供の言う『おかあさん』も捜しているだろうと視線を巡らせるが、それらしい人物は見えない。
 声を出そうかと思うが、人の多さに少し躊躇う。
 その時だ。
「残念。お母さんとは別人だ」
 トキワが迷子に視線を合わせるように膝を着いていた。
 迷子が顔を向けると、「ほら、嬢ちゃん。かき氷やるから泣き止め?」と手を伸ばして頭を撫でる。
 混乱していたセラフィムも、迷子が女の子だと分かる位に落ち着いてきた。
 年の頃は、まだ4歳程度だろうか。
 はぐれてしまった不安でぐずぐず泣いており、トキワが名前を尋ねたり、はぐれた場所を聞いているものの、声にならないらしい。
「はは、仕方ねぇなあ」
 そう言いつつも、トキワは女の子をあやしにかかり、その間にセラフィムは迷子センターがどこにあるか見つけた店員に聞く。
 迷子センターで迷子放送を掛けてもらいつつ、動かない場所で待ってて貰った方がいいだろう。
 トキワはそうした話もしつつ、女の子をあやし───
「ライザ!」
 漸く女の子が泣き止み、移動する段階で店員が捜している母親を見つけたそうで、連れて来てくれた。
「もうはぐれるなよ?」
 トキワは女の子の頭を撫でた後、後姿で手をひらひら振って催事場へ入っていく。
 セラフィムが、「トキワ、手馴れてたね?」と追いついてきた。
「セラ坊に散々手を焼いたからなあ。お兄さん」
「そんなことない! 礼儀正しかったし大人しかったし」
「わ・か・れ」
 セラフィムの頭をぽすぽす叩くトキワ。
 トキワには、セラフィムが暗くて無口と自分を過小評価していることなどお見通しなのだ。
「ありがとう」
「……世話が焼けるのはまだまだ変わんねぇな」
 トキワが口の端を上げると、セラフィムが「けど……」と後ろを振り返ってこう言った。
「あの子、お母さんに会えて良かった。トキワのお陰だよね」
「……そうだな」
「髪の色と背丈位しか共通点なかったけど、ビックリした」
 女の子も迷子の不安で髪の毛と背丈だけでセラフィムにしがみついたらしい。
 トキワは、それはそれでちょっと複雑だった。

 一通り会場を巡った後、トキワは目をつけた店でイチゴとメロンを購入した。
「って、僕の意見は!?」
「ほらよ」
 勝手に買うなんてとセラフィムが抗議するが、トキワは事も無げにイチゴのかき氷を差し出す。
 反論する気も失せたセラフィムはトキワと共に近くのベンチへ腰掛け、かき氷を楽しむ。
「美味いか?」
「うん、美味しいよ。氷もふわふわだし、シロップもイチゴの果肉もあって濃厚。フリーズドライのイチゴが途中にもあったりして、宝探しみたい」
「イチゴ、好きだもんな」
 トキワにさらっと言われ、セラフィムが目を瞬かせる。
「そう? 意識してなかったんだけど……そうだったのかな」
「ああ」
 トキワがそう言うと、「でも子供の頃こんな豪華なかき氷食べた記憶がない」とセラフィムは言って食べる。
 可愛いが美形になったセラフィムは、要所で可愛いのかもしれない。
 もっとも、『虎坊主』の前では常に、かもしれないが。

●一仕事!
「迷子かぁ。人が多いし、誘惑も沢山あるからな」
 セイリュー・グラシアが周囲を見回し納得している時には、ラキア・ジェイドバインが迷子になった男の子と同じ目線になるようしゃがんだ。
「そっか、ママとはぐれちゃったんだね」
 ラキアもセイリューも背が高い。
 恐らく、母親はこのような長身ではないだろうが、母親を捜して不安な子供に正確な判断力を求めても仕方ないだろう。
 セイリューもラキアに倣うようにしゃがんで、男の子の目の高さに合わせる。
(3歳位か? なら!)
 セイリューは持っていた雪だるまステッキをコミカルに動かす。
 男の子が泣きながらも、雪だるまを見た。
(オレ達と争って食べてるみたいにかき氷を撮ったら面白いと思って持ってきたけど、まさか役に立つとは思わなかったぜ)
 折角だし、芸術になるような写真にならずとも記念に撮っておく為、セイリューとラキアはあれこれ持ってきていたのだ。
「美味しくて冷たいかき氷、一緒に食べようか」
「いっしょに?」
「だから、君のお名前聞きたいな?」
 雪だるまステッキとライバル的にかき氷を食べる構図用として持ってきていた精霊パペットへ手をいれ、可愛らしさを意識した声色でわきゅっと動かすラキア。
「おにいちゃん、そっくり!」
「でしょう?」
「ラキアばかりズルイゾ!」
 セイリューがもう片方の手に自身の姿に良く似た神人パペットを手に入れ、ズルイと抗議する仕草をする。
 警戒心はだいぶ解けているようだが、「誰と食べに来たの?」とラキアが話を向けると、「おかあさんときたの」とまたぐずりだした。
 かき氷の味はイチゴが好きという答えが素直だった分、この男の子の不安が大きいのだと分かる。
「大丈夫、ママはすぐに見つかるよ?」
 安心させるようにラキアが微笑む隣では、セイリューが立ち上がって周囲を見回している。
(ここを動かない方がいいかも)
 人が多いのもそうだが、捜すのに夢中になる余り、迷子放送を聞き逃す可能性がある。
 迷子を捜す親は、子供を見失った辺りで真っ青な顔で捜すものだからだ。
 巡回していた店員に子供の特徴を告げたセイリューは、再びしゃがむ。
「お兄ちゃん達も特別なかき氷食べに来たんだ。イチゴ以外だと何か美味しそうなのあった?」
「メロンとマンゴー……」
「メロンはオレも気になってたぜ!」
 ラキアと男の子の会話にセイリューも加わった。
 美味しそうだよね。
 男の子が不安にならないよう話をし、時折、パペットも交える。
 ぐずる時もあるが、セイリューもラキアも交替で周囲を見、母親がいないか捜した。
 そして───
「ロック!」
 ラキアと同じ位髪が長い女性が人ごみを掻き分けて走ってきた。
 途端、安心した男の子が大音量で泣き出し、母親にしがみつく。
 聞くと、巡回する店員から迷子の情報を聞き、もしやと思ったらしい。
「本当にありがとうございます。少し目を離した隙にいなくなってて……」
 セイリューが見立てた通り、催事場で必死に捜していたらしい母親は心の底から安堵しているようだ。
 ロックというらしい男の子が泣き止まない為、母親が「お気持ちだけで」と一緒に食べる申し出を辞退した為、2人は別れを告げて催事場へ入った。

「セイリュー、どれにする?」
「ラキアは?」
「俺はメロン。ロック君推薦」
「なら、オレはマンゴーがいいな!」
 そんな会話を交わして購入、2人はベンチへ。
 まずは、雪だるまステッキとパペット達が美味しそうと争うかのようにしている構図でかき氷の記念撮影。
 それが終われば───
「マンゴーヤバイ! シロップがムースみたいだ! バニラアイスもマンゴーもあって、豪華でウマー!」
「俺のメロンも食べてみる? ふわふわのかき氷の中のメロンも美味しいけど、シロップも果汁たっぷりだよ」
 太陽の果物の魅力凄いと笑うセイリューへ自身のかき氷を差し出すラキア。
「メロンもウマー!」
 一仕事終えたという顔で味わうセイリューがおかしくて、ラキアはくすくす笑った。

●俺だけの方法
「よしよし、心細いよね」
 フィン・ブラーシュは、2歳位の女の子に視線を合わせるようにしゃがんだ。
「お母さんと逸れたみたいだな」
 蒼崎 海十もしゃがみ、まずは泣き止んで貰った方がいいかと眉を寄せる。
 見た所、2歳位……自分の名前をきちんと言えるかどうか分からない。
(どうすれば泣き止むかな……)
 フィンがうんうん考えていると、海十がバッグの中をごそごそ探し始める。
「フィン、そのままでいてくれるか?」
 海十がそう言ってフィンの背中に隠れたので、フィンは海十に秘策でもあるのかと首を傾げる。
 やがて───
「にゃーは猫なんだにゃん」
 視線を移すと、猫の手が見える。
「名前は……カイトにゃん」
 フィンの時間一時停止。

 あの手袋を着けたんだよな。
 猫カフェの猫に見せたら、どういう反応を示すか見てみようとかそんなノリで持ち出したんだよな。
 けど、これは犯罪だ、やばい。
 海十が俺以外の前で身に着けないように言わないと。
 可愛過ぎる、やばい。
 このままでは俺が不審者になってしまう。

 ※フィンの上記思考は、0.1秒の間に処理されました。

「どうして泣いてるにゃん? カイトが力になるにゃん!」
 海十が、鎮火傾向になりつつも泣き止まない女の子を励ましに掛かる。
 咳払いをして自らを落ち着かせたフィンもバッグの中からてぶくろ「ネコマタ」を出し、装着する。
「フィンも力になる……にゃん♪」
 狙っているタイミングで語尾に「にゃん」とつかず、フィンは自主的につけた。
 もふもふとした肉球ある手で涙を拭ってあげると、女の子はやっと泣き止む。
 同時に、海十もフィンの背中からひょこっと顔を出して、笑い掛けた。
「カイトと友達になろう……にゃん!」
 あ、今自主的につけた。
 フィンが海十への萌えで内心悶絶していると、海十は女の子と握手をしている。
 いつも呼ばれている名前位は言えるかもと尋ねようとした、その時だ。
「アーシェ!」
 フィンと同じ青空色の瞳をした母親がこちらへ走ってきた。
 ほっとする思いでてぶくろ「ネコマタ」を外し、2人で母親に事の次第を説明する。
「ありがとうございました」
「いえいえ。……見つかって良かったね」
 感謝する母親にフィンが応じ、2人は女の子へ別れを告げる。
「油断出来ない」
「何が?」
「何でもない」
 海十が瞳の色だけでフィンを選んでしがみつく女の子の将来に気を引き締める。
 が、フィンは海十の返答を勘違いし、「迷子にならないよう手を繋ごうか」と海十の手を繋ぐのだった。

 海十とフィンは催事場を一通り巡った後、かき氷を選んだ。
「美味しそうだね」
 フィンが海十のかき氷を見て感想を漏らす。
 海十が選んだのは、蜂蜜レモンのかき氷だ。
 といっても、蜂蜜レモンのシロップではなく、レモンのシロップをかけたかき氷に濃厚なバニラソフトを乗せ、その上に蜂蜜が掛けられているというものだ。
「フィンだって」
 海十が、フィンのかき氷を見る。
 フィンのかき氷は、コーヒー。
 コーヒーを凍らせてかき氷にし、そこへバニラソフトとコーヒーソフトが飾られてあるというもの。
「海十が淹れてくれるコーヒー程じゃないよ」
 フィンが笑うと、海十は顔を真っ赤にさせる。
「ところで、さっきはビックリした」
「……手袋の所為だから」
 海十は赤い顔を背け、それから昔を懐かしむように呟いた。
「子供の頃さ、俺が泣いてたら……幼馴染がぬいぐるみを使って慰めてくれたのを思い出したから、咄嗟に」
「今度海十が凹むことがあったら、俺がぬいぐるみで慰めるよ」
「対抗しなくていいよ。今は、フィンがいてくれるだけでいい」
 海十がフィンに苦笑する。
「俺が海十を元気にする。俺にしか出来ない方法で。だから───あーんして?」
 フィンが自身のかき氷をスプーンで掬い、海十へ差し出す。
 シェアしようとは言ったけれど、これを受けるということは、まさか!?
 海十は固まったが、「溶けちゃうよ」と急かされて受け入れる。
 コーヒーのかき氷は、ほろ苦いのに甘かった。

●過ぎる思いと彼の気遣い
「迷子のお子さんがいますよ。お母様はどちらですか?」
 その寂しさは解るとアキ・セイジは周囲へ声を上げた。
 すると、親ではないが、店員がやってくる。
 催事である為に迷子が多いらしい。
「あ、暫くここで面倒見ますので、出来たら一刻も早くお母さんを」
 ヴェルトール・ランスが「どうしたのかな?」と3歳位の女の子の頭を撫でながら、何人かの店員に依頼する。
 視線を合わせるようにしゃがんだ彼は、子供が好きだ。
 そのこともあり、泣いた子供を誰かに任せてかき氷を楽しむという選択肢はないようだ。
 何とかしてあげたいと痛切に思っていたアキとしては、そういうヴェルトールに助かる思いで彼の隣にしゃがむ。
 催事場へ捜しに行く店員の他、その店員と連絡を取り合ってくれる店員が傍にいるが、ヴェルトールは「よしよし怖くないぞ」と優しく言葉を掛けている。
(子供が好きなだけあって、掛ける言葉も分かっているみたいだな)
 アキはヴェルトールの言葉を聞きながら、そう思う。
 元々ホストという彼は話し上手の聞き上手だ。
 接客のような態度では泣いている子供をあやすのは難しいと思っているのか、ホストのような振る舞いではなく、親しみ易いお兄さんを心掛けているように見える。
「そっか、リーちゃんって言うのかー」
 ヴェルトールは頭を撫でて、宥めに掛かっている。
(何か、興味引くものはないか……)
 アキはカバンを探していると、パピュッペをイメージしたふわふわのテールチャームを見つけた。
 以前ショコランドへ足を運んだ際にこのカバンを使用して、このテールチャームが入れっ放しになっていたかもしれない。
 実際どうだったかと記憶の糸を手繰り寄せるよりも、今は目の前のこの子が大事だ。
 アキは手の中にテールチャームを隠し、ヴェルトールに撫でられている女の子の目の前へ手を出す。
「ほら」
 優しくと自身に言い聞かせ、アキは手を開く。
 その瞬間、ポンッとふわふわのテールが姿を現し、女の子が目を瞬かせる。
 涙が一瞬止まったのを見逃さず、アキとヴェルトールはタイミングを計って女の子へ手を差し伸べる。
「一緒に捜そう?」
 まずはゆっくり話を聞かないと。
 アキの申し出に合わせるようにヴェルトールが口を開こうとすると───
「見つかったそうです」
 催事場を巡回していた店員が母親を見つけたそうで、待機している店員へ連絡を入れてくれたようだ。
「一緒に待っていようか」
「尻尾、触ってみる?」
 女の子はこくこく頷き、ふわふわの尻尾へ手を伸ばす。
 綻んだ女の子に、「いい子だね。泣かないで待っていられる?」とアキがアヒル特務隊「ポカポカ・アッタマール」をお友達紹介として女の子へ見せる。
 こちらも以前出かけた際に持ち出していたものがそのままになっていたらしく、興味が引けるのではないかと思ったのだ。
「まほーつかい?」
「そう、まほーつかい」
 女の子の問いにアキが答えると、ヴェルトールが「魔法使いは俺!」と会話に加わってくる。
「先にお母さん見つけてみる?」
「ほんと?」
「ホントホント!」
 ヴェルトールが笑って、女の子を抱っこした。
 女の子がアキと同じ黒髪の母親を見つけるのは、この後すぐ。

 母親と合流した女の子と別れた2人は、かき氷を購入した。
「マンゴーのかき氷、美味しいな。程よい甘さだ」
 呟くアキは別れ際の女の子(リーンという名だった)の顔を思い出していた。
 あの子は母親と一緒で嬉しそうだが、自分は───
「セーイジ」
「どうした、ラン───」
 肩を叩かれ、顔を向けると、アキの頬にヴェルトールの指がぷにっと刺さった。
 ヴェルトールには、お見通しだったようだ。
 アキは内心、察して敢えて悪戯してくれた彼に感謝し、バニラアイスを「あげる」とヴェルトールのメロンのかき氷に移す。
「セイジも食べなきゃ勿体無い。あーん♪」
 彼の様子に内心安堵するヴェルトールがバニラアイスを掬ってアキへ差し出すと、アキは笑ってそれに応じた。

●成長とささやかな希望
 連日の猛暑もあって、羽瀬川 千代と共にやっていたラセルタ=ブラドッツは催事場の混雑に若干辟易していた。
 で、この迷子である。
「迷子、かな? 放っておけないよ」
 大の子供好きの千代は4歳位の男の子に視線を合わせ、その頭を優しく撫でる。
「どうしたの? 寂しくなっちゃったのかな」
(お人好しめ、迷子は娯楽施設の風物詩だろうに)
 ラセルタはそう思うが、ここで見捨てられないからこそ『千代』であるとも思う。
(巡回している店員がいる所を見ると、迷子が多発しているようだな)
 ラセルタが周囲を見ている間も、千代は男の子の話に相槌を打ち、辛抱強く話を聞いている。
 けれど、それを感じさせないよう笑顔を崩さない対応は、粘り強ささえある。
「そっか。ルークっていうんだ」
 何とか名前を聞き出した千代は、「内緒なんだけれどね?」とシッと指を口元に立ててから、手袋を外して紋様を見せる。
「ママがゆってた! えっと、うーんくるーむ!」
「そう、お兄ちゃん達はウィンクルムなんだ」
「……そうだ。故に俺様達が力添えしてやろう」
 合わせるタイミングを察したラセルタが千代に続く。
「一緒にお母さん捜そう? 頑張れるかな?」
「うん! がんばる!」
 涙を拭ったルークより笑顔を向けられ、ラセルタは「特別だ」と手招きした。
「たかーい!」
 ラセルタに肩車して貰ったルークは大はしゃぎ。
「このつのからビームってでないの?」
「こら、角はハンドルのように掴むものではないのだぞ! ビームも出ない!」
 ラセルタは、言葉とは裏腹に楽しそうだ。
 その場でくるりと回ったりするのも、千代の孤児院の子供達のお陰で意外に慣れており、得意と言えなくとも子供を余計泣かせるようなことはしない。
 楽しそうに笑うのが目立ったのだろうか、千代によく似た髪色の母親が駆け寄ってきた。
「ご迷惑をお掛けしました」
「無事に会えて良かったです」
 千代が母親に応対している間にルークを下ろしたラセルタは、周囲へ「騒がせたな」とフォローの言葉を忘れない。
 母親と共に去っていくルークの背中を見送る千代をラセルタは見る。
 ほっとしたような横顔が彼らしく、ラセルタは口の端を小さく上げた。

「安心したら、何だかお腹が空いてちゃったんだよね」
 笑う千代の手には、ゴージャスと言って差し支えないかき氷がある。
 ふわふわのかき氷の上にシロップではなく、バニラのソースが掛けられている。彩りよく飴細工や種類豊富なフルーツが散りばめられ、添えられているソフトクリームは何と杏仁豆腐らしい。
 対するラセルタのかき氷は、洋梨のもの。
 果実をすり潰して作ったというシロップは、他のシロップと印象が異なる。
 洋梨のソフトクリームの層もあるこのかき氷には洋梨も添えられており、ラセルタは満足そうだ。
「冷たくて、甘くて、優しい食感……美味しい!」
「俺様が味わうに相応しい」
 とても甘いかき氷に幸せそうな千代の隣でラセルタもご満悦。
「途中で取り替えて味を交換しようか」
「いや」
 ラセルタは事も無げにこう言った。
「それを一口捧げ、俺様を労うことを許す」
「ラセルタさんったら」
 千代は口を開けて待機するラセルタに苦笑を零し、一口捧げ、許された労いの言葉を投げることにした。
「さっきのラセルタさんは、何だかお父さんって感じだったね。頼り甲斐があって、実は面倒見も良くって……俺もそんな風に頼って貰えるようになりたいな」
 悪い意味ではないと言う千代は、そう微笑する。
 甘いかき氷を堪能したラセルタは、「……千代は、神人らしくなったようだな」と呟く。
「以前はウィンクルムであっても自分は一般人だと言っていたが、今は己が成すべき役割や振る舞いへ昇華させ始めたように見える」
「そうかな」
「だが───俺様としては、ずっと頼っていてくれて構わんぞ?」
 ラセルタが自分のかき氷をスプーンで掬って千代へ差し出す。
 少し照れたように微笑む千代は、ラセルタの「あーん」を受け入れたのだった。



依頼結果:大成功
MVP
名前:羽瀬川 千代
呼び名:千代
  名前:ラセルタ=ブラドッツ
呼び名:ラセルタさん

 

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター 真名木風由
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 男性のみ
エピソードジャンル ハートフル
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 5 / 2 ~ 5
報酬 なし
リリース日 08月12日
出発日 08月18日 00:00
予定納品日 08月28日

参加者

会議室


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